JP3259717B2 - 積層型インダクタ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、積層型インダク
タ、特に、ノイズフィルタ等として使用される積層型イ
ンダクタに関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、積層型インダクタを高周波信号
ラインのノイズフィルタとして使用する場合、磁性体層
に低透磁率材料が用いられる。しかしながら、低透磁率
材料からなる積層型インダクタは、高周波信号の波形に
リンキングを発生させ易いという問題があった。

【０００３】この対策として、従来より、図５に示すよ
うな積層型インダクタ１が提案されている。該積層型イ
ンダクタ１は、磁性体層に高透磁率材料を用いた高透磁
率コイル部２と、磁性体層に低透磁率材料を用いた低透
磁率コイル部３とを積み重ねて一体的に焼成して構成し
ている。高透磁率コイル部２に配置されたコイル導体４
〜６と低透磁率コイル部３に配置されたコイル導体７〜
９とは、ビアホール（図示せず）を介して電気的に直列
に接続され、螺旋状コイルＬを形成している。螺旋状コ
イルＬの一端（コイル導体９）は外部電極１１に接続
し、他端（コイル導体４）は外部電極１２に接続してい
る。

【０００４】また、図６に示すような積層型インダクタ
２１も提案されている。該積層型インダクタ２１は、磁
性体層に高透磁率材料を用いた高透磁率コイル部２２
と、磁性体層に低透磁率材料を用いた低透磁率コイル部
２３とを、非磁性体材料からなる中間部２４を間に挟ん
で積み重ねて一体的に焼成して構成している。高透磁率
コイル部２２に配置されたコイル導体２５〜２８と低透
磁率コイル部２３に配置されたコイル導体２９〜３２と
は、ビアホール（図示せず）を介して電気的に直列に接
続され、螺旋状コイルＬを形成している。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところで、従来の積層
型インダクタ１，２１において、高透磁率コイル部２，
２２で発生した磁界Ｈ１と低透磁率コイル部３，２３で
発生した磁界Ｈ２とが相互干渉すると、ノイズ除去効果
を十分に発揮することができない。このため、磁界Ｈ１
とＨ２の相互干渉を防止するため、図５に示した積層型
インダクタ１は、高透磁率コイル部２に配置されたコイ
ル導体４〜６と低透磁率コイル部３に配置されたコイル
導体７〜９との間の距離Ｄを大きくしている。しかし、
距離Ｄを大きくすると、積層型インダクタ１が大型化す
るという問題が生じる。

【０００６】一方、図６に示した積層型インダクタ２１
は、磁界Ｈ１とＨ２の相互干渉を防止するため、高透磁
率コイル部２２と低透磁率コイル部２３の間に中間部２
４を配設している。しかし、コイル部２２，２３の材料
である磁性体と中間部２４の材料である誘電体とを一体
的に焼成することは、両者が物理的構造や熱収縮率が著
しく異なるため高度な技術力を必要とし、製造工程管理
が煩雑であった。

【０００７】そこで、本発明の目的は、焼成作業が容易
で、かつ、小型の積層型インダクタを提供することにあ
る。

【０００８】

【課題を解決するための手段】以上の目的を達成するた
め、本発明に係る積層型インダクタは、（ａ）相対的に
透磁率が低い材料からなる磁性体層とコイル導体とを積
み重ねて構成した低透磁率コイル部と、（ｂ）相対的に
透磁率が高い材料からなる磁性体層とコイル導体とを積
み重ねて構成した高透磁率コイル部とを備え、（ｃ）前
記低透磁率コイル部と前記高透磁率コイル部とを積み重
ね、前記低透磁率コイル部のコイル導体と前記高透磁率
コイル部のコイル導体を電気的に直列に接続して螺旋状
コイルを形成すると共に、前記低透磁率コイル部のコイ
ル導体の巻回方向と前記高透磁率コイル部のコイル導体
の巻回方向とを逆向きにしたこと、を特徴とする。

【０００９】

【作用】低透磁率コイル部と高透磁率コイル部の場合
は、磁性体材料同士の接合であるため、良好な接合が得
られる。また、低透磁率コイル部のコイル導体の巻回方
向と高透磁率コイル部のコイル導体の巻回方向とが逆向
きであるため、低透磁率コイル部で発生する磁界と高透
磁率コイル部で発生する磁界が相互干渉しにくくなる。

【００１０】

【発明の実施の形態】以下、本発明に係る積層型インダ
クタの実施形態について添付図面を参照して説明する。
図１に示すように、積層型インダクタ４１は、コイル導
体６３，６４，６５，６６をそれぞれ表面に設けた、高
透磁率材料を用いた絶縁性の磁性体シート４３〜４６
と、コイル導体６７，６８，６９，７０，７１をそれぞ
れ表面に設けた、低透磁率材料を用いた絶縁性の磁性体
シート４８〜５２等にて構成されている。磁性体シート
４２〜４６は、例えば、高透磁率のフェライト粉末を含
有した絶縁性ペーストをシート状にして製作される。同
様に、磁性体シート４７〜５２は、例えば、低透磁率の
フェライト粉末を含有した絶縁性ペーストをシート状に
して製作される。

【００１１】コイル導体６３〜７１は、磁性体シート４
３〜５１にそれぞれ設けたビアホール７５ａ〜７５ｉを
介して電気的に直列に接続され、螺旋状コイルＬとされ
る。この螺旋状コイルＬは、コイル導体６３〜６６が反
時計回り方向に巻回しているのに対して、コイル導体６
７〜７１が時計回り方向に巻回している。コイル導体６
３の引出し端６３ａは、磁性体シート４３の右辺に露出
している。コイル導体７１の引出し端７１ａは磁性体シ
ート５２の左辺に露出している。

【００１２】以上の磁性体シート４２〜５２は、図１に
示すように、順に積み重ねられて圧着された後、一体的
に焼成されることにより、図２に示す積層体８０とされ
る。このとき、各シート４２〜５２は全て磁性体材料で
あるため、図６に示した従来の積層型インダクタ２１の
異種材料を接合する場合と比較して、接合性が良くな
る。

【００１３】積層体８０の左右の端面にはそれぞれ外部
電極８１，８２が形成されている。外部電極８２にはコ
イル導体６３の引出し端６３ａが接続され、外部電極８
１にはコイル導体７１の引出し端７１ａが接続される。

【００１４】この積層型インダクタ４１は、図３に示す
ように、相対的に高透磁率の磁性体シート４２〜４６を
積み重ねて構成した高透磁率コイル部７８と、相対的に
低透磁率の磁性体シート４７〜５２を積み重ねて構成し
た低透磁率コイル部７９とが、誘電体からなる中間部を
間に挟むことなく、直接に積層されている。従って、中
間部を必要としない分だけ、小型の積層型インダクタ４
１を得ることができる。

【００１５】そして、高透磁率コイル部７８のコイル導
体６３〜６６が低周波ノイズを除去し、低透磁率コイル
部７９のコイル導体６７〜７１が高周波ノイズを除去す
る。このとき、高透磁率コイル部７８のコイル導体６３
〜６６の巻回方向と低透磁率コイル部７９のコイル導体
６７〜７１の巻回方向とが逆向きであるので、高透磁率
コイル部７８で発生した磁界Ｈ１と低透磁率コイル部７
９で発生した磁界Ｈ２とが相互干渉しない。従って、高
透磁率コイル部７８のインピーダンス特性と低透磁率コ
イル部７９のインピーダンス特性がそれぞれ独立して作
用する。この結果、高透磁率コイル部７８は低周波ノイ
ズ除去効果を十分に発揮し、低透磁率コイル部７９は高
周波ノイズ除去効果を十分に発揮することができる。

【００１６】因みに、積層型インダクタ４１の外部電極
８１，８２間のインピーダンス特性を図４に示す（実線
８７参照）。なお、図４において、点線８５は高透磁率
コイル部７８のインピーダンス特性を示し、点線８６は
低透磁率コイル部７９のインピーダンス特性を示してい
る。実線８７から、中間周波数帯（図４に円Ａで表示）
においても、インピーダンスの増加が抑えられているこ
とが分かる。これは、高透磁率コイル部７８及び低透磁
率コイル部７９でそれぞれ発生した磁界Ｈ１，Ｈ２が高
透磁率コイル部７８と低透磁率コイル部７９の境界付近
で相互に反発し、磁界Ｈ１の低透磁率コイル部７９への
漏れや磁界Ｈ２の高透磁率コイル部７９への漏れが抑え
られるからである。比較のために、高透磁率コイル部７
８のコイル導体６３〜６６の巻回方向と低透磁率コイル
部７９のコイル導体６７〜７１の巻回方向とを同方向に
した積層型インダクタのインピーダンス特性が、一点鎖
線８８にて表示されている。

【００１７】なお、本発明に係る積層型インダクタは前
記実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内
で種々に変更することができる。例えば、螺旋状コイル
の巻回数、コイル導体の形状等は仕様に合わせて種々の
ものが採用される。

【００１８】さらに、前記実施形態は、それぞれコイル
導体が形成された磁性体シートを積み重ねた後、一体的
に焼成するものであるが、必ずしもこれに限定されな
い。磁性体シートは予め焼成されたものを用いてもよ
い。また、以下に説明する製法によってインダクタを作
成してもよい。印刷等の方法によりペースト状の磁性体
材料にて磁性体層を形成した後、その磁性体層の表面に
ペースト状の導電性材料を塗布してコイル導体を形成す
る。次に、ペースト状の磁性体材料を前記コイル導体の
上から塗布してコイル導体が内蔵された磁性体層とす
る。同様にして、コイル導体間を電気的に接続しつつ、
順に重ね塗りすることにより積層構造を有するインダク
タが得られる。

【００１９】

【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明に
よれば、低透磁率コイル部と高透磁率コイル部とを直接
に接合するので、磁性体材料同士の接合となり、良好な
接合が得られる。そして、誘電体からなる中間部を間に
挟むことなく、低透磁率コイル部と高透磁率コイル部を
接合するので、小型の積層型インダクタを得ることがで
きる。また、低透磁率コイル部のコイル導体の巻回方向
と高透磁率コイル部のコイル導体の巻回方向とが逆向き
であるため、低透磁率コイル部で発生する磁界と高透磁
率コイル部で発生する磁界が相互干渉しにくくなる。従
って、高透磁率コイル部のインピーダンス特性と低透磁
率コイル部のインピーダンス特性がそれぞれ独立して作
用する。この結果、高透磁率コイル部は低周波ノイズ除
去効果を十分に発揮し、低透磁率コイル部は高周波ノイ
ズ除去効果を十分に発揮することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明にかかる積層型インダクタの一実施形態
の構成を示す分解斜視図。

【図２】図１に示した積層型インダクタの外観斜視図。

【図３】図２に示した積層型インダクタの模式断面図。

【図４】図２に示した積層型インダクタのインピーダン
ス特性を示すグラフ。

【図５】従来の積層型インダクタを示す模式断面図。

【図６】従来の別の積層型インダクタを示す模式断面
図。

【符号の説明】

４１…積層型インダクタ ４２〜４６…高透磁率の磁性体シート ４７〜５２…低透磁率の磁性体シート ６３〜７１…コイル導体 ７８…高透磁率コイル部 ７９…低透磁率コイル部 Ｌ…螺旋状コイル

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) H01F 17/00,41/04

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 相対的に透磁率が低い材料からなる磁性
   体層とコイル導体とを積み重ねて構成した低透磁率コイ
   ル部と、 相対的に透磁率が高い材料からなる磁性体層とコイル導
   体とを積み重ねて構成した高透磁率コイル部とを備え、 前記低透磁率コイル部と前記高透磁率コイル部とを積み
   重ね、前記低透磁率コイル部のコイル導体と前記高透磁
   率コイル部のコイル導体を電気的に直列に接続して螺旋
   状コイルを形成すると共に、前記低透磁率コイル部のコ
   イル導体の巻回方向と前記高透磁率コイル部のコイル導
   体の巻回方向とを逆向きにしたこと、 を特徴とする積層型インダクタ。