JP3168962B2 - 電 池 - Google Patents

電 池

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JP3168962B2
JP3168962B2 JP30215097A JP30215097A JP3168962B2 JP 3168962 B2 JP3168962 B2 JP 3168962B2 JP 30215097 A JP30215097 A JP 30215097A JP 30215097 A JP30215097 A JP 30215097A JP 3168962 B2 JP3168962 B2 JP 3168962B2
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幸治 坂田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電池用電極とこれを
用いた電池に関し、特に容量が大きく、サイクル特性に
優れ、大きなパワー密度が得られるものである。
【0002】
【従来の技術】以下酸化還元反応をするものを活物質と
し、この活物質と、必要に応じて導電性付与剤(導電性
補助剤)、バインダーを含む活物質層を有するものを電
極と称することとする。近年、ポリアセチレン、ポリア
ニリンなどの導電性高分子が、電気化学的にドーピン
グ、脱ドーピングすることを利用して、軽量で高出力密
度の二次電池を構成しようという研究が盛んに行われて
いる。例えばポリアニリンを利用した電池では、正極に
ポリアニリン、負極にリチウム金属を用いた二次電池が
提案されている。このタイプの電池の正極、負極の充電
時の反応は以下の式(1),(2)で与えられる。
【0003】
【化1】
【0004】前記式(1)で示される正極反応において
は、ドーパンドアニオンのドープ、脱ドープ反応が電池
反応(酸化還元反応)として利用され、ここでは例えば
ClO4 - がドーパントアニオンとして利用されてい
る。nはドープ率を表し、例えばポリアニリンの場合、
0.5が最大であることが知られている。つぎに前記式
(1)、式(2)で示される反応式から、正極、負極そ
れぞれの容量(mAh/g)を算出する方法について説
明する。正負極の活物質の容量(mAh/g)は、次の
式(3)で与えられる。
【0005】
【数1】
【0006】ポリアニリンの場合、分子量(高分子の場
合はモノマーユニットの分子量)は92g、反応関与電
子数は、前記(1)式からドープ率を50%として0.
5個なので、容量は144mAh/gと計算される。一
般に導電性高分子のドープ、脱ドープの酸化還元反応は
可逆性が良い。これは、高分子マトリックス(導電性高
分子)が無機材料に比べて比較的柔軟な構造を有してい
るため、高分子マトリックス中へのドーパントのドー
プ、脱ドープの際、高分子マトリックスの体積の増大、
減少が可逆性良く生じるためである。
【0007】このようにポリアニリンなどの導電性高分
子を活物質として電極に利用した二次電池においては、
以下のような3つの問題点が指摘されている。第1の問
題点は、この種の電池は、充放電サイクルに伴い、活物
質が十分可逆性を有しているのに、電池(電極)として
はサイクル性を失う場合があることである。
【0008】その理由を図1を用いて説明する。図1は
集電体1と、この上に設けられた活物質2とカーボンな
どの導電性付与剤3がバインダーで成形された活物質層
からなる電極の構成を示す説明図である。電池反応は電
解質と活物質2との間で生じ、電子は活物質2に接触す
る集電体1あるいは導電性付与剤3を介して伝達され
る。したがって良好なサイクル性を得るためには、活物
質2の酸化還元反応の可逆性のみならず、導電性付与剤
3、集電体1、活物質2間の電子伝導性が維持されてな
ければならない。
【0009】導電性高分子を活物質2に利用した場合、
電池反応、すなわち充放電反応に伴い、活物質2の体積
の膨張収縮が生じる。つまりドーパントアニオンの高分
子マトリックス(活物質2(導電性高分子))へのドープ
(充電)時に体積が膨張、脱ドープ(放電)時に体積が
収縮する。すると体積の膨張、収縮のない集電体1との
接触面での界面抵抗が大きくなり、電子伝導性が失わ
れ、結果として活物質2の可逆性が確保されているにも
関わらず、電池(電極)としてはサイクル性を失うこと
になる。
【0010】第2の問題点は、体積あたりの容量が小さ
いということである。その理由は、導電性高分子を活物
質とした電極はその密度が小さいため、重量当たりの容
量に比べて体積当たりの容量は、他の無機材料系活物質
と比べて小さくなってしまうからである。表1は無機材
料系活物質と高分子系活物質(有機物)の重量当たりと
体積当たりの容量を比較したものである。
【0011】
【表1】
【0012】表1中、LiCoO2、LiMn24は無
機材料系活物質の一例、ポリアニリンは高分子系活物質
(有機物)の一例である。表1から分かるように、高分
子系活物質の重量当たりの容量は無機材料系活物質と比
較して遜色ないが、密度が小さいため、体積当たりの容
量は小さくなってしまう。
【0013】第3の問題点はパワー密度である。電池
(電極)のパワー密度は、活物質の酸化還元反応速度と
電解質中の反応関与イオンの拡散速度で決定されるが、
一般的には後者の方が遅いため、電解質中のイオン拡散
速度に支配される。電解質中のイオン拡散速度は、イオ
ン半径が小さい方が速い。したがって、前記(1)式で
示したようなドーパントアニオンのドープ、脱ドープを
利用した電池反応においては、比較的イオン半径の大き
いClO4 -のようなイオンを利用するため、イオン拡散
速度が遅くなりパワー密度が小さくなってしまう。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】よって本発明の課題
は、活物質として導電性高分子を用いた電極と、これを
用いた二次電池において、容量が大きく、サイクル性に
優れ、パワー密度の大きいものを得ることにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
に、本発明の電池は、電極を構成する正負極の少なくと
も一方の電極に、活物質として含窒素化合物高分子と低
分子のキノン類化合物とからなる複合物が含まれている
電池用複合電極を用い、キノン類化合物の酸化還元反応
に寄与するプロトン源を含む電解液を用いたことを特徴
とする。前記複合物における含窒素化合物高分子:キノ
ン類化合物のモル比が、0.25:0.75〜0.7
5:0.25であると好ましい。本発明の電池において
は、含窒素化合物高分子の粉末とキノン類化合物の粉末
とを混合し、これを活物質とした電池用複合電極を用い
ることができる。あるいは、含窒素化合物高分子を、キ
ノン類化合物の溶液中に含浸し、これを活物質とした電
池用複合電極を用いることができる。さらに、低分子の
キノン類化合物存在下で重合反応させて得た含窒素化合
物高分子と該キノン類化合物とからなる複合物を活物質
とした電池用複合電極を用いることもできる。また、前
記プロトン源を含む電解液としてプロトン源を添加した
水溶液を用いることができ、また、この水溶液としてパ
ラトルエンスルホン酸水溶液を用いることができる。あ
るいは、前記プロトン源を含む電解液として、プロトン
源を添加した非水溶液を用いることもでき、この非水溶
液としてトリクロロ酢酸を添加したプロピオンカーボネ
ートを用いることもできる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下図1を利用して本発明の電池
に用いる電池用複合電極について説明する。本発明の電
極は、例えば集電体1の上に、活物質2と導電性付与剤
3とともにバインダーが混合され、成形された活物質層
が設けられたものである。そしてこのような電極が、正
負極のうち少なくとも一方の電極として用いられ、電解
質(電解液)とセパレータを介して、もう一方の電極と
対向配置されて電池が構成される。
【0017】本発明において前記集電体1は、金属、あ
るいはカーボンなど電子伝導性を有する導電性付与剤が
配合されたポリスチレンなどの高分子材料からなる導電
性シートなどが用いられる。前記活物物質2は、キノン
類化合物と含窒素化合物高分子との複合物(混合物)か
らなる複合活物質である。このように複合活物質が用い
られているので、本発明の電極を電池用複合電極(単に
複合電極、あるいは電極という場合もある)とよぶ。活
物質2に配合される含窒素化合物高分子としては、ポリ
アニリン、ポリピリジン、ポリピリミジンなどの芳香環
含窒素化合物高分子などを例示することができる。キノ
ン類化合物としてはベンゾキノン、アントラキノンなど
のキノン基を有する化合物などを例示することができ
る。
【0018】複合活物質において、含窒素化合物高分
子:キノン類化合物のモル比は、0.25:0.75〜
0.75:0.25、好ましくは0.33:0.66〜
0.66:0.33とされる。含窒素化合物のモル分率
が0.25未満であるとサイクル性が改善されないこと
があり、0.75をこえると容量が低下する場合があ
る。
【0019】このような電極において、キノン類化合物
としてベンゾキノン、含窒素化合物高分子としてポリア
ニリンを例にとり、電極反応(酸化還元反応)を説明す
る。図2はベンゾキノンとポリアニリンからなる活物質
を用いた複合電極の酸化還元反応を示している。図2に
示すように、複合電極中のベンゾキノンは、近接するポ
リアニリンと酸化還元反応するので、酸化還元反応が促
進されると考えられている。このとき複合電極中のベン
ゾキノンは、ポリアニリンと水素結合を生じており、こ
れにより電極中に固定化され、電解液中への拡散が抑制
されている。
【0020】含窒素化合物高分子の添加によるキノン類
化合物の電解液中への拡散抑制効果を調べるために、活
物質としてベンゾキノン(キノン類化合物)を単独で用
いたベンゾキノン単独電極と、ポリアニリン(含窒素化
合物高分子)をベンゾキノンと複合した活物質を用いた
ポリアニリン複合電極を作製し、それぞれを純水中に放
置し、経時的に伝導度の変化を測定した結果を図3に示
す。図3のグラフからわかるように、ポリアニリン複合
電極では、伝導度の変化がキノン単独電極に比べて緩や
かである。これは、ポリアニリン複合電極では、ポリア
ニリンの窒素原子がベンゾキノンのキノン基と水素結合
して、本来水溶性のベンゾキノンが電極に固定されてい
るのに対し、ベンゾキノン単独電極では経時的に電極か
らベンゾキノンの拡散が生じているためである。
【0021】このような構成により、本発明の電池にお
いては以下のような3つの作用効果が得られる。 1 サイクル性の改善 第1の作用効果は、活物質(高分子マトリックス(導電
性高分子))の体積変化を小さくするためにプロトン反
応を利用すること、および含窒素高分子化合物の複合に
よるキノン類化合物の電解液中への離脱の抑制によっ
て、サイクル性が改善されることである。すなわち酸化
還元反応に関与するイオンサイズが大きいと、活物質で
ある高分子マトリックス(導電性高分子)の体積変化が
大きい。高分子マトリックス(活物質)の体積変化が大
きいと、活物質のサイクル性が保持されているのに、集
電体などの活物質と接触する部位の接触抵抗が増大し、
電池(電極)としてサイクル寿命が失われることにな
る。
【0022】この点を改善するためには、イオンサイズ
の小さいプロトンを利用することが有効である。プロト
ンはイオンサイズが小さいため、高分子マトリックス内
部におけるプロトン吸脱着による高分子マトリックスの
体積変化が抑制され、その結果活物質に接触する集電体
などとの接触抵抗増大を抑制することが可能である。本
発明においてはプロトンを利用する物質として、含窒素
化合物高分子、キノン類化合物を用い、両者を複合する
ことにより、サイクル性の優れた電池(電極)を得るこ
とができる。
【0023】さらにキノン類化合物単独電極の場合、サ
イクルを重ねる毎にキノン類化合物の電解液中への拡
散、電極からの離脱が生じ、この結果容量が減少し、十
分なサイクル性が得られない。そこで含窒素化合物高分
子を添加すると、含窒素化合物高分子の窒素原子とキノ
ン基酸素との水素結合により、キノン類化合物の電解液
中への離脱が抑制され、サイクル性が改善される。
【0024】2 容量の改善 第2の作用効果は、2電子反応をするキノン類化合物を
電極活物質に利用できるため、容量が増大することであ
る。すなわち前記(3)式によれば、容量を大きくする
ためには、反応関与電子数を多くするか、分子量を小さ
くする方法が有効である。キノン類化合物は、下記
(4)式にベンゾキノンを例として示すように、1分子
あたり2電子反応をするため、1電子反応の多くの材
料、例えばポリアニリンなどと比べて非常に大きな容量
をもっている。
【0025】
【化2】
【0026】例えばこの式(4)に示されるベンゾキノ
ンは、分子量が108である。前記(3)式から計算す
れば、重量当たりの容量は499mAh/g、体積当た
りの容量は520mAh/dm3にも達する。この値は
表1で示した無機材料系活物質と比べても遜色がない。
【0027】しかしながら、キノン類化合物は電子伝導
性を持たず、また低分子のため電池電極中の活物質とし
て用いた場合、経時的に電解液中に拡散してしまう。す
なわち、キノン類化合物単独の活物質を用いた電極から
構成された電池は、初期性能に対する性能劣化が著しく
なる。したがって、大容量を有するキノン類化合物を活
物質として利用するためには、キノン類化合物を電極中
に固定する必要がある。
【0028】そこで、本発明においてはキノン類化合物
を含窒素化合物と複合することにより、キノン類化合物
のキノン基酸素と含窒素化合物高分子の窒素原子との間
に水素結合が生じ、低分子のキノン類化合物を、高分子
の含窒素化合物高分子に結合させて、電極中に固定化す
ることが可能となる。したがってキノン類化合物の電解
液中への拡散を抑制して、大容量のキノン類化合物を利
用した電極と、これを用いた大容量の二次電池を得るこ
とができる。
【0029】3 パワー密度の改善 第3の作用効果は、電解質中のイオン拡散速度の大きな
プロトンを反応イオンとして利用すること、および含窒
素化合物の複合によるキノン類化合物の酸化還元反応の
促進によって、パワー密度が改善されることである。す
なわちパワー密度を改善するためには、電解質中のイオ
ン拡散速度を早くすることが必要である。このため、イ
オン半径の小さいプロトンを利用することが望ましい。
これは、プロトンがアルカリ金属、アルカリ土類金属イ
オンなどよりも拡散係数が大きいためである。したがっ
てプロトンを利用すれば大きなパワー密度を有する電池
を得ることができる。
【0030】ここで、プロトンを利用する酸化還元材料
として、含窒素化合物高分子のみでは容量が小さい。ま
たキノン類化合物は容量は大きいが、上述のように単独
では電解液中へのキノン類化合物の拡散が生じ、電池性
能を経時的に保つことができない。そこで両化合物を複
合化することにより、含窒素化合物高分子にキノン類化
合物を固定させ、キノン類化合物の電解液中への拡散を
抑制し、プロトンの早いイオン拡散速度により大きなパ
ワー密度を得ることができる。さらには含窒素化合物高
分子の複合により、前記(4)式に示したキノン類化合
物の酸化還元反応が促進される。これは、含窒素化合物
高分子の窒素原子がキノン基と相互作用するためで、こ
の結果酸化還元反応、すなわち電池用電極としての充放
電反応が促進され、さらにパワー密度が改善される。
【0031】
【実施例】以下、実施例を示して本発明に用いる電池用
複合電極と、これを用いた電池の具体的な製造方法とと
もに、その作用効果を明らかにする。本発明の電池用複
合電極は、以下に示す実施例1、2、3の製造方法のい
ずれによっても製造することができる。
【0032】<実施例1> (含窒素化合物高分子とキノン類化合物との複合活物質
の作製)1Mのアニリン水溶液に、2Mのパラトルエン
スルホン酸鉄エタノール溶液を滴下し、室温で5時間放
置し、アニリンを重合した。この溶液を真空濾過した後
メタノールで洗浄し、パラトルエンスルホン酸がドーピ
ングされた黒色のポリアニリン(含窒素化合物高分子)
を得た。このポリアニリンの導電率を、四端子法で測定
したところ、15S/cmであった。つぎにこのポリア
ニリンの理論容量を計算するために、元素分析をしたと
ころ、ポリアニリンのドープ率は0.37であり、理論
容量は、前記(3)式から106.6mAh/gを得
た。つぎにこの粉末状のポリアニリン1molと、粉末
状のベンゾキノン(キノン類化合物)1molを、メノ
ウ乳鉢中で混合した。この複合方法を表2中では混合法
と称する。こうして得られた複合活物質の理論容量は3
07mAh/gであった。
【0033】(正極用電極の作製)このポリアニリン/
ベンゾキノン複合活物質と、導電性付与剤であるカーボ
ンと、バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVD
F)を、重量比60:20:20の割合でメノウ乳鉢中
で混合した後、さらにノルマルメチルピロリドン(NM
P)を加え、混合を続け、PVDFが完全に溶解したこ
とを確認し、スクリーン印刷法で縦、横各2cmのサイ
ズで導電性シート(集電体)上に印刷した。つぎにこれ
を80℃の真空恒温槽に入れ、50torr以下で1時
間放置しNMPを揮発させた。こうして得られた活物質
層の厚みは100μm、重量は42mgであった。この
正極用電極(電池用複合電極)の理論容量は7.75m
Ahであった。この電極をベルジャー内のガラス製ビー
カーの中に入れ、40torr以下で30分放置した
後、電解液として1Mパラトルエンスルホン酸水溶液を
注入し、電極中に含浸した。
【0034】(負極用電極の作製)負極用電極は、ポリ
ピリジンを活物質として用いること以外、正極と同様の
方法で作製した。集電体上に印刷形成された活物質層の
厚みは80μm、重量は31mgであった。得られた負
極用電極の理論容量は、10.72mAhであった。
【0035】(電池の組立)正極および負極用電極を、
二枚、プロピレンカーボネート製のセパレータを介し、
1Mのパラトルエンスルホン酸(pTS)水溶液中で対
向させ電池を組み立てた。この電池を3組作製し、以下
の3通りの充放電試験を実施した。この電池の理論容量
は、正極、負極の理論容量のうち、小さい方の容量で規
定されることから、正極容量と同じ7.75mAhであ
った。
【0036】(電池性能の測定)得られた電池の特性を
測定するため、以下の3つの充放電試験を実施した。結
果を表2にまとめて示す。 1 容量の測定 電池に0.8Vの定電圧を1時間通電した後、1C放電
の条件下で0.1Vまで放電させ、放電カーブから出現
容量を求めた。 2 サイクル性の測定 電池に0.8Vの定電圧を印加した後、1C放電を行
い、0.4Vまで放電した。この操作を繰り返し、サイ
クル毎に放電容量を測定し、初回容量(初期容量)と比
較した。 3 パワー密度の測定 電池に0.8Vの定電圧を印加した後、放電電流を0.
1C,1C,10C,100Cと増加させ、放電容量を
測定し、0.1C放電時の容量と比較した。
【0037】<比較例1>比較例1は、正極活物質中に
ポリアニリンを含まないこと以外は、実施例1と同様の
方法で電池を組み立て、同様の充放電試験を実施し、結
果を表2に示した。
【0038】<比較例2>比較例2は、正極活物質中に
ベンゾキノンを含まないこと以外は実施例1と同様の方
法で電池を組み立て、同様の充放電試験を実施し、結果
を表2に示した。
【0039】<実施例2>実施例1と同様の方法でポリ
アニリンを合成し、活物質としてポリアニリンのみが含
まれる活物質層を集電体上に設けた。つぎにこれを1M
のベンゾキノン水溶液中に浸漬し、室温で2時間放置し
た後、引き上げ、真空中で水を揮発させ、ポリアニリン
とベンゾキノンとの複合活物質を形成し、複合電極とし
た。この複合方法を表2中では浸漬法と称する。こうし
て得られた電極を正極用とし、負極には実施例1と同様
の方法でポリピリジンを活物質にした電極を用い、実施
例1と同じ構造の電池に組み立て、実施例1と同様の充
放電試験を実施し、結果を表2に示した。このように、
含窒素化合物高分子とキノン類化合物を複合する方法と
して、粉末状の含窒素化合物高分子とキノン類化合物を
混合する他に、含窒素化合物高分子、あるいはこれを含
む活物質層をキノン類化合物溶液中に浸漬することによ
っても複合活物質が得られ、本発明の複合電極を作製す
ることができ、同様の効果を得ることができる。
【0040】<実施例3>重合溶液中にベンゾキノンを
1Mの濃度で含ませてポリアニリンを重合させ、ポリア
ニリンとベンゾキノンの複合物を得た他は、実施例1と
同様の条件で電極を作製した。この複合方法を表2中で
は重合法と称する。こうして得られた電極を正極用と
し、負極には実施例1と同様の方法でポリピリジンを活
物質にした電極を用い、実施例1と同じ構造の電池に組
み立て、実施例1と同様の充放電試験を実施し、結果を
表2に示した。このように、含窒素化合物高分子とキノ
ン類化合物を複合する方法として、含窒素化合物高分子
重合時に、キノン類化合物が同時に存在した状態で重合
させても複合活物質を得ることができ、これを用いて複
合電極を構成すれば同様の効果を得ることができる。
【0041】<実施例4>粉末状のポリピリジン(含窒
素化合物高分子)1molと粉末状のアントラキノン
(キノン類化合物)1molをメノウ乳鉢中で混合した
(混合法)。このポリピリジン/アントラキノン複合粉
末(複合活物質)と、導電性付与剤であるカーボンと、
バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)
を、重量比60:20:20の割合でメノウ乳鉢中で混
合した後、さらにノルマルメチルピロリドン(NMP)
を加えて混合を続け、PVDFが完全に溶解したことを
確認した後、スクリーン印刷法で縦、横各2cmの活物
質層を導電性シート(集電体)上に印刷した。つぎにこ
れを80℃の真空恒温槽に入れ、50torr以下で1
時間放置し、NMPを揮発させて負極用の電極とした。
この負極と、正極として比較例1と同様の方法でポリア
ニリンを活物質にした電極を用い、実施例1と同じ構造
の電池に組み立て、同様の充放電試験を実施し、結果を
表2に示した。このように、含窒素化合物高分子として
ポリアニリンの他に、ポリピリジンなどの芳香環中に窒
素を含む化合物を用いても同様の効果が得られる。
【0042】<実施例5>実施例1と同様の方法で正
極、負極電極を形成した。これらを1Mのトリフロロ酢
酸(CF3COOH)を含むフロピレンカーボネート
(PC)溶液(電解液)中で、セパレーターを介して対
向させて電池を組み立て、実施例1と同様の充放電試験
を実施し、結果を表2に示した。表2から、本発明の複
合電極は、水溶液系の電解液のみならず、非水溶液系に
プロトン源を添加した溶液系でも同様の効果が得られる
ことがわかる。放電レートが水溶液系と比較して小さい
が、これは水溶液と有機系電解液(非水溶液系電解液)
とのイオン導電率の違いに起因するものであり、同じ有
機電解液を用いた電池を構成した、以下に示す比較例3
と比べれば高い放電レートが得られていることがわか
る。
【0043】<比較例3>比較例1と同じ方法で正極、
負極電極を形成し、これを1Mのトリフロロ酢酸(CF
3COOH)を含むプロピレンカーボネート溶液(電解
液)中でセパレーターを対向させ電池を組み立て、実施
例1と同様の充放電試験を実施し、結果を表2に示し
た。
【0044】表2の結果より、比較例とくらべて、本発
明に係る実施例においては容量、サイクル数、放電レー
トにおいて、総合的に優れたものが得られることが明ら
かである。
【0045】
【表2】
【0046】<実施例6>ポリアニリン(含窒素化合物
高分子)とベンゾキノン(キノン類化合物)とのモル比
をかえて、実施例1と同様の方法で電池を組み立てて、
同様の充放電試験を実施し、初回容量(初期容量)と、
100サイクル後の容量を測定した。結果を理論容量と
ともに図4のグラフに示す。図4において、横軸はポリ
アニリンとベンゾキノンとの複合活物質におけるポリア
ニリンのモル分率を示し、ゼロは活物質が全てベンゾキ
ノンで構成されている場合(比較例2に対応する)、
0.5は活物質に含まれるポリアニリンとベンゾキノン
がモル比で1:1の場合(実施例1に対応する)、1は
活物質が全てポリアニリンで構成されている場合(比較
例1に対応する)である。理論容量は、前記式(3)で
示されている重量あたりの容量(mAh/g)である。
例えばポリアニリンのモル分率がゼロのとき、理論容量
はベンゾキノンの容量、すなわち499mAh/g、ポ
リアニリンのモル分率が1のとき、理論量はポリアニリ
ンの容量、すなわち106mAh/gである。
【0047】このグラフより、理論容量はポリアニリン
のモル分率の増大にともなって減少するが、実際に出現
する初期容量は、ポリアニリンのモル分率がゼロから
0.66(2/3)まではほぼ一定で、これよりも増大
すると徐々に減少する。しかしポリアニリンのモル分率
が0.75程度までは、比較的大きな初期容量が得られ
ている。
【0048】また、初期容量と100サイクル後の容量
との差、すなわち容量の減少率をみると、ポリアニリン
のモル分率が増大すると、この減少率が小さくなること
がわかる。これは、比較例2(活物質がベンゾキノンの
みの電極を用いた場合)において、初期容量に対して6
0%の容量を保持するサイクル数が100であるのに対
し、比較例1(活物質がポリアニリンのみの電極を用い
た場合)において、初期容量に対して60%の容量を保
持するサイクル数が1000であることにもよく一致し
ている。
【0049】グラフより、この減少率を小さくするため
にはポリアニリンのモル分率を0.25以上、好ましく
は0.33以上とするとよいことがわかる。したがっ
て、ポリアニリンとベンゾキノンとの複合活物質を用い
た複合電極、およびこれを用いた電池において、ポリア
ニリンのモル分率を0.25〜0.75、好ましくは
0.33〜0.66とすると、大きな容量とサイクル性
を確保することができる。
【0050】
【発明の効果】本発明においては、以下のような効果を
奏することができる。第1の効果は、活物質(高分子マ
トリックス(導電性高分子))の体積変化を小さくするこ
とができるプロトン反応を利用すること、および含窒素
高分子化合物の複合によるキノン類化合物の電解液中へ
の離脱の抑制によって、サイクル性が改善されることで
ある。第2の効果は、2電子反応をするキノン類化合物
を電極活物質に利用できるため、容量が増大することで
ある。第3の効果は、電解質中のイオン拡散速度の大き
なプロトンを反応イオンとして利用すること、および含
窒素化合物の複合によるキノン類化合物の酸化還元反応
の促進によって、パワー密度が改善されることである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 電極の構成を表す説明図(断面図)である。
【図2】 ポリアニリン(含窒素化合物高分子)とベン
ゾキノン(キノン類化合物)の相互作用を表す説明図で
ある。
【図3】 ポリアニリン(含窒素化合物高分子)の添加
によるベンゾキノン(キノン類化合物)の水溶液中への
拡散抑制効果を表すグラフである。
【図4】 実施例6のポリアニリン(含窒素化合物高分
子)とベンゾキノン(キノン類化合物)のモル比を変化
させた場合の、理論容量、および初期容量と100サイ
クル後の容量の測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
2…活物質
フロントページの続き (72)発明者 坂田 幸治 東京都港区芝五丁目7番1号 日本電気 株式会社内 (72)発明者 岡田 志奈子 東京都港区芝五丁目7番1号 日本電気 株式会社内 (56)参考文献 特開 平6−124708(JP,A) 特開 昭64−30178(JP,A) 特開 平6−215775(JP,A) 特開 平8−298136(JP,A) 特開 昭60−47379(JP,A) 特開 平6−211836(JP,A) 特開 平5−283078(JP,A) 特開 平5−279458(JP,A) 特開 平11−67211(JP,A) 特開 平11−126610(JP,A) 特開 平6−56989(JP,A) 特開 平10−154512(JP,A) 特開 平8−321307(JP,A) 特開 平4−87258(JP,A) 特開 昭59−196568(JP,A) 特開 昭55−161376(JP,A) 特開 平4−147511(JP,A) 特開 昭61−200669(JP,A) 特開 平10−289617(JP,A) 特開 平10−106579(JP,A) 特許3039484(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 4/60 H01M 4/02 H01M 10/36

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電極を構成する正負極の少なくとも一方
    の電極に、活物質として含窒素化合物高分子と低分子の
    キノン類化合物とからなる複合物が含まれている電池用
    複合電極を用い、キノン類化合物の酸化還元反応に寄与
    するプロトン源を含む電解液を用いたことを特徴とする
    電池。
  2. 【請求項2】 前記複合物における含窒素化合物高分
    子:キノン類化合物のモル比が0.25:0.75〜
    0.75:0.25であることを特徴とする請求項1記
    載の電池
  3. 【請求項3】 含窒素化合物高分子の粉末とキノン類化
    合物の粉末とを混合し、これを活物質とした電池用複合
    電極を用いたことを特徴とする請求項1または2に記載
    の電池。
  4. 【請求項4】 含窒素化合物高分子を、キノン類化合物
    の溶液中に含浸し、これを活物質とした電池用複合電極
    を用いたことを特徴とする請求項1または2に記載の電
    池。
  5. 【請求項5】 低分子のキノン類化合物存在下で重合反
    応させて得た含窒素化合物高分子と該キノン類化合物と
    からなる複合物を活物質とした電池用複合電極を用いた
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の電池。
  6. 【請求項6】 前記プロトン源を含む電解液がプロトン
    源を添加した水溶液であることを特徴とする請求項1〜
    5のいずれか一項に記載の電池。
  7. 【請求項7】 前記プロトン源を添加した水溶液がパラ
    トルエンスルホン酸水溶液であることを特徴とする請求
    項6に記載の電池。
  8. 【請求項8】 前記プロトン源を含む電解液がプロトン
    源を添加した非水溶液であることを特徴とする請求項1
    〜5のいずれか一項に記載の電池。
  9. 【請求項9】 前記プロトン源を添加した非水溶液がト
    リフロロ酢酸を添加したプロピオンカーボネートである
    ことを特徴とする請求項8に記載の電池。
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