JP3121119B2 - 積層セラミックコンデンサの外部電極の形成方法 - Google Patents

積層セラミックコンデンサの外部電極の形成方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、積層セラミックコンデ
ンサの外部電極の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、積層セラミックコンデンサは、
六面体であるセラミック体と、セラミック体内部に設け
られ、内部をセラミック層状に区切る複数枚の内部電極
と、セラミック体の一対の側端面に設けられ、内部電極
と導通する外部電極とを有する。
【0003】このようなコンデンサでは、内部電極と外
部電極との接触を確実に行うことが重要であるため、内
部電極を設けた積層セラミック体を焼成した後、内部電
極をセラミック体の側端面から十分露出させるためにバ
レル研磨を施し、次いでセラミック体の側端面に外部電
極を形成している。このことを図を参照してもう少し詳
しく説明すると、まず図2の(a)、(b)に示すよう
に、焼成済みの積層セラミック体10内においては複数
枚(ここでは3枚)の内部電極11(a〜c)はセラミ
ック体10の側端面から交互に延びるが、(b)から分
かるように焼成後には内部電極11(a〜c)がセラミ
ック体10の側端面から十分に露出していないことがあ
る。この例では、3枚の内部電極の全てが露出不十分で
あることを示している。
【0004】このため、セラミック体10にバレル研磨
を施して、内部電極11(a〜c)を十分露出させる。
研磨後のセラミック体10の断面を示すのが図3であ
る。しかし、研磨してもまだ十分にセラミック体10の
側端面から現出していない内部電極11b、11cもあ
る。この状態で次に外部電極をセラミック体10の側端
面に形成すると、図4又は図5に示すような結果にな
る。
【0005】図6に示す外部電極20は、通常の方法で
形成されたものであり、例えばAg又はAg/Pd粉末
と、ガラスフリットと、結合剤とからなるペーストを塗
布し、これを750〜850℃で焼付け、ニッケルメッ
キ(更にハンダ又はスズメッキを施す場合もある)を施
したものである。一方、図7に示す外部電極30は、本
願出願人の先願に係る、例えば特願平2−211511
号(特開平3−225810号)、特願平3−1261
04号に記載されている方法を用いることにより、即ち
スパッタリング、真空蒸着又はプラズマ溶射によって設
けられた3〜4層の構造からなるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図6及
び図7を見れば明らかなように、図6では内部電極11
aは露出が十分であり、外部電極20と確実に接触して
いるが、内部電極11bはいわゆるオープン状態とな
り、外部電極20と殆ど接触しておらず、内部電極11
cはルーズコンタクト状態であり、接触が不完全であ
る。又、図7では内部電極11aは外部電極30に完全
に接触しているが、内部電極11b、11cはいずれも
オープン状態であり、外部電極30との接触が不確実で
ある。
【0007】このように内部電極と外部電極との接触不
良(オープン状態等)が起こるのは、積層セラミック体
が外部電極の形成に供される段階で内部電極の露出が不
十分であるからであり、これは、バレル研磨の不十分、
内部電極の過薄、内部電極の露出部分での欠落、内部電
極へのセラミック被覆等に起因し、静電容量の損失、誘
電正接の増大等の不具合を発生させてしまう。特に、温
度補償用コンデンサは静電容量の許容差及び誘電正接の
許容差が小さいため、上記不具合が生ずると製品の歩留
りが悪くなる。
【0008】従って、本発明の目的は、外部電極自体の
形成方法がどのようであれ、内部電極と外部電極との接
触が確実に行われる積層セラミックコンデンサの外部電
極の形成方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明の積層セラミックコンデンサの外部電極の形
成方法は、内部に複数枚の内部電極を有する積層セラミ
ック体を、内部電極材と異なる拡散係数を持つ金属粉末
と、内部電極材及び金属粉末に対して難反応性で且つ耐
高温性のセラミック粉末とを混合した粉体中に入れて熱
処理し、その後にセラミック体の一対の側端面に外部電
極を設けることを特徴とする。
【0010】この形成方法によれば、金属粉末とセラミ
ック粉末との混合粉体中に積層セラミック体を入れて熱
処理(500〜900℃)を行うことで、金属粉末と積
層セラミック体の内部電極材との間で拡散が起こり、こ
の拡散によって内部電極が実質的に長くなって、セラミ
ック体の側端面から十分露出するようになり、内部電極
のオープン状態等が発生しなくなり、内部電極と外部電
極との接触が確実になる。そしてセラミック粉末は、熱
処理中に、金属粉末が互いに接触・焼結して粒子が固ま
るのを防止すると共に、内部電極材と金属粉末と間の拡
散をコントロールする作用をする。
【0011】本発明の形成方法で使用する金属粉末は、
内部電極材と異なる拡散係数を持つものであればよく、
例えばAg、Ag/Pdがある。セラミック粉末は、内
部電極材及び金属粉末と反応し難く、しかも熱処理温度
(500〜900℃)に対する耐性に優れたものを用
い、それにはジルコニア粉末、アルミナ粉末等が例示さ
れる。又、内部電極材としては、Pd、Ag/Pd、A
g等がある。
【0012】
【実施例】以下、本発明の外部電極の形成方法を実施例
に基づいて説明する。まず、Pdインクを用いてスクリ
ーン印刷法で誘電体セラミックシート上に内部電極を通
常よりも薄く形成したものを所定枚数だけ積み重ね、こ
の積層体を熱加圧して接着した後、指定の寸法に切断
し、脱バインダー及び焼成を行う。ここまでで得られた
積層セラミック体の内部構造は、図2の(b)に示すよ
うに、一部の内部電極はセラミック体の側端面から露出
していない。次いで、積層セラミック体をメデアと共に
バレル研磨する。この研磨によっても、セラミック体の
内部電極は、図3に示すように側端面からまだ十分に露
出していないのがある。
【0013】次に、金属粉末として粒径約1μmのAg
粉末を10〜50wt%、及びセラミック粉末として粒
径約100μmのZrO2 (ジルコニア)粉末を50〜
90wt%の割合で混合する。両粉末の混合割合は全体
で100wt%になるように調製する。この混合粉体に
対して前記積層セラミック体を50wt%の比で混在さ
せ、これをセラミック、ステンレス、インコネル(商標
名)等の耐熱容器(例えばムライト質のセラミック製耐
熱容器)に入れる。この状態を図1に示す。この図1
で、耐熱容器5内に入れたAg粉末2とZrO2 粉末3
との混合粉体中に積層セラミック体1が埋没している。
図1では、便宜上1個のセラミック体しか示していない
が、実際には複数個のセラミック体を混合粉体中に混在
させる。
【0014】続いて、酸化雰囲炉に耐熱容器を配置し、
常温から最高温度(823℃)まで30℃/分の昇温率
で上げ、最高温度にて8分間保持した後、同じく30℃
/分の降温率で下げることにより、熱処理を行う。熱処
理後、フルイを用いて積層セラミック体をAgやZrO
2 から分離する。そして、通常の方法、又は前記先願に
記載されている方法で、積層セラミック体の一対の側端
面に外部電極を形成する。外部電極は、通常の方法で作
製した場合には図4のような形状になり、前記先願記載
の方法で形成すると図5に示すような形状になる。
【0015】ここで、熱処理によって生ずる拡散につい
て若干述べる。上記実施例では金属粉末にAg、内部電
極材にPdを使用しており、両者の間でAgからPdへ
の拡散が起こる。拡散距離LはL=2×(D×t)1/2
〔D:拡散係数(cm2 /s)、t:温度(K)〕で与
えられる。拡散係数DはD=D0 exp(−Q/RT)
〔Q:活性エネルギー(cal/mol)、R:気体定
数(1.986cal/mol・K)、T:温度
(K)〕であるから、AgとPdの拡散係数の差だけ拡
散することになる。この場合、温度tが高いほど拡散距
離Lが長くなることから、拡散距離Lのコントロールは
可能である。 <実験例> 実施例1〜4として、上記の如くAg粉末とZrO2
末とを用いた熱処理を行い、続いて前記先願の特願平2
−211511号に記載された方法で外部電極を作製し
てなる温度補償用セラミックコンデンサにおいて、内部
電極の露出、静電容量の合格率、熱処理後のAg解コウ
を調べ、その結果を表1に記した。なお、比較例1とし
て、熱処理を行わずに上記公報記載の方法で外部電極を
形成したコンデンサについても同様に調べた。
【0016】但し、実施例及び比較例において、コンデ
ンサの内部電極材はPdを使用し、コンデンサのサイズ
は2.0×1.25×1.0mmに統一した。
【0017】
【表1】
【0018】この表1から、熱処理を行ったコンデンサ
では、内部電極が十分に露出し、静電容量の合格率も高
いことが分かる。なお、金属粉末にAgを使用した場
合、この実験例ではコンデンサとして一応使用可能なA
g粉末の混合割合は10〜25wt%(ZrO2 粉末で
いうと90〜75wt%)程度であるが、熱処理温度や
熱処理時間を適当に変えれば、この限りではない。
【0019】上記実施例では、内部電極材にPd、金属
粉末にAgを使用し、AgからPdに拡散が進行するも
のであるが、この逆であってもよい。即ち、内部電極材
にAg、金属粉末にPdを用いれば、内部電極材から金
属粉末中への拡散が行われる。
【0020】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の積層セラ
ミックコンデンサの外部電極の形成方法は、金属粉末と
セラミック粉末との混合粉体中に積層セラミック体を入
れて熱処理を行い、その後に外部電極を形成するため、
下記の効果を有する。 (1)焼成後の積層セラミック体において内部電極の露
出が十分でなくても、熱処理によって内部電極の露出度
合いが良くなり、内部電極と外部電極の接触が確実にな
る。 (2)焼成後の積層セラミック体において内部電極の露
出が十分でなくても、熱処理によって内部及び外部電極
の接触が良好になり、設計どおりの静電容量が得られ
る。 (3)(1)、(2)より、製品の歩留りが向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の形成方法を説明するための図である。
【図2】内部電極を有する積層セラミック体の斜視図、
及びその斜視図の線A−Aにおける断面図である。
【図3】図2に示す積層セラミック体をバレル研磨した
後の断面図である。
【図4】積層セラミック体に、本発明の形成方法を用い
て外部電極を形成した場合の一例の断面図である。
【図5】積層セラミック体に、本発明の形成方法を用い
て外部電極を形成した場合の別例の断面図である。
【図6】図3に示す積層セラミック体に、通常の方法で
外部電極を形成した断面図である。
【図7】図3に示す積層セラミック体に、本願出願人の
先願に記載された方法で外部電極を形成した断面図であ
る。
【符号の説明】 1 積層セラミック体 2 Ag粉末(金属粉末) 3 ZrO2 粉末(セラミック粉末) 5 耐熱容器 11(a〜c) 内部電極
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−34623(JP,A) 特開 平3−152914(JP,A) 特開 平3−225810(JP,A) 特開 平4−352309(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01G 4/00 - 4/40 H01G 13/00 - 13/06

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】内部に複数枚の内部電極を有する積層セラ
    ミック体を、内部電極材と異なる拡散係数を持つ金属粉
    末と、内部電極材及び金属粉末に対して難反応性で且つ
    耐高温性のセラミック粉末とを混合した粉体中に入れて
    熱処理し、その後に積層セラミック体の一対の側端面に
    外部電極を設けることを特徴とする積層セラミックコン
    デンサの外部電極の形成方法。
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