JP2970030B2 - 積層セラミックコンデンサとその製造方法およびそれに用いる外部電極用ペースト - Google Patents

積層セラミックコンデンサとその製造方法およびそれに用いる外部電極用ペースト

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種電気機器に利用さ
れる積層セラミックコンデンサとその製造方法およびそ
れに用いる外部電極用ペーストに関するもので、特に、
比較的安価に製造できる卑金属内部電極の積層セラミッ
クコンデンサとその製造方法およびそれに用いる外部電
極用ペーストに関するものである。
【0002】
【従来の技術】卑金属内部電極の積層セラミックコンデ
ンサは、電子部品に対する低コスト化の要望から、パラ
ジウム,白金,銀−パラジウム等の貴金属を内部電極と
する従来の積層セラミックコンデンサに変わるものとし
て、次第に実用化されつつある。
【0003】そして、この卑金属内部電極の積層セラミ
ックコンデンサについては、その誘電体材料,内部電極
材料,外部電極材料,製造方法およびそれらの構成につ
いて、種々の提案がされている。
【0004】例えば、誘電体材料としてBaTiO3
CaZrO3,BaCO3およびMnO2などのような耐
還元性材料を用い、内部電極材料としてニッケル粒子を
含むインキを用い、外部電極材料として、ニッケル微粉
末と、硼珪酸バリウムガラスおよびアルミノ珪酸バリウ
ムガラスから選択されたガラスフリットと、MnO2
の混合物を含む有機ビヒクルよりなるペーストを用い、
内部電極パターンを印刷した誘電体生シートを積み重ね
た未焼成の積層体の端部、つまり内部電極の露出部分
を、上記の外部電極材料で被覆したのち、これを共焼成
(同時焼成)する製造方法により、卑金属内部電極の積
層セラミックコンデンサを作成する方法が提案されてい
る(特開昭55−105318号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記の未焼成の積層体
の端部、つまり内部電極の露出部分を、外部電極材料で
被覆したのち、これを共焼成(同時焼成)する製造方法
は、積層体を焼成したのち、外部電極を形成する方法に
比べて、より経済的であり、内部電極と外部電極との接
続がより確実であるという利点がある。
【0006】しかしながら、上記に外部電極材料として
示された、ニッケル微粉末と、硼珪酸バリウムガラスお
よびアルミノ珪酸バリウムガラスから選択されたガラス
フリットと、MnO2との混合物を含む有機ビヒクルよ
りなるペーストを、外部電極材料として用いた場合に
は、この材料がガラスフリットにより誘電体セラミック
との接合を行うものであり、ガラスフリットを含有して
いるため、次のような欠点がある。
【0007】すなわち、ガラスフリットの軟化温度が、
誘電体セラミックの焼結温度に比較して低温度であるた
めに、同時焼成した場合、ガラスフリットが誘電体セラ
ミック中に拡散し、このために材料組成によっては誘電
体セラミックの焼結性が阻害され、誘電体セラミックの
焼結不足による変形、機械的強度の劣化、コンデンサ特
性の劣化を引き起こすという問題がある。また、ガラス
フリットを含有しているため、内部電極と外部電極との
接続性が、金属成分のみの場合に比較してやや劣るとい
う問題がある。
【0008】本発明は上記問題点に鑑みてなされたもの
で、未焼成の積層体の端部、つまり内部電極の露出部分
を、外部電極材料で被覆したのち、これを同時焼成する
ニッケル内部電極の積層セラミックコンデンサの製造方
法に適した外部電極材料、これを用いたニッケル内部電
極の積層セラミックコンデンサおよびその製造方法を提
供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明の積層セラミックコンデンサの外部電極用ペ
ーストは、内部電極と誘電体とを交互に積層し切断した
未焼成の積層体の、上記内部電極の露出端面に塗布し、
これを焼成して、上記積層体の焼結と上記内部電極に接
続される外部電極の形成とを同時に行うための使用に適
し、無機成分を、少なくとも酸化ニッケルの粉末とニッ
ケルの粉末の混合物としたものである。
【0010】また、本発明の積層セラミックコンデンサ
は、上記の積層セラミックコンデンサ用外部電極材料を
用いることにより、内部電極と誘電体とを交互に積層し
た積層体と、上記内部電極に接続される外部電極とを備
え、上記内部電極がニッケルからなり、上記外部電極
が、上記積層体と同時焼成したニッケルからなり、上記
誘電体の上記外部電極との接合部近傍には酸化ニッケル
の拡散層を有する構造としたものである。
【0011】さらに、本発明の積層セラミックコンデン
サの製造方法は、内部電極となるニッケル粉末ペースト
膜と誘電体セラミック生シートとを交互に積層し、これ
を所定形状に切断して積層体を作成し、上記積層体の上
記内部電極となるニッケル粉末ペースト膜の露出端面
に、無機成分が、少なくとも酸化ニッケルの粉末とニッ
ケルの粉末の混合物からなるペーストを塗布し、これを
焼成して、上記積層体の焼結と上記内部電極に接続され
る外部電極の形成とを同時に行うものである。
【0012】
【作用】本発明は上記したように、外部電極用ペースト
を、無機成分を、少なくとも酸化ニッケルの粉末とニッ
ケルの粉末の混合物としたものであり、この外部電極材
料を用いることにより、内部電極と誘電体とを交互に積
層した積層体と外部電極とを同時焼成した場合に、酸化
ニッケルの大部分は焼成雰囲気中により還元されてニッ
ケルの金属皮膜となり、酸化ニッケルの一部が誘電体中
に拡散して外部電極との接合部近傍には酸化ニッケルの
拡散層が形成される。このために、内部電極と外部電極
との間、誘電体と外部電極との間のいずれにおいても良
好な接合が得られる。
【0013】これにより、未焼成の積層体の端部、つま
り内部電極の露出部分を、外部電極材料で被覆したの
ち、これを同時焼成する方法によるニッケル内部電極の
積層セラミックコンデンサの製造を可能にしたものであ
り、従来用いられてきたガラスフリットを含有している
外部電極材料と異なり、誘電体セラミックの焼結不足に
よる変形、機械的強度の劣化、コンデンサ特性の劣化等
の問題がなく、また内部電極と外部電極との良好な接続
が得られ、高品質で安価な積層セラミックコンデンサが
得られる。
【0014】
【実施例】以下、本発明の一実施例の積層セラミックコ
ンデンサとその製造方法およびそれに用いる外部電極用
ペーストについて説明する。
【0015】本実施例の積層セラミックコンデンサの構
成について、その製造方法とともに以下に詳細に説明す
る。
【0016】まず、耐還元性の誘電体材料の組成とし
て、BaTiO3を主成分とし、これに添加物としてB
aZrO3,MnO2およびDy23等を加えた酸化物の
混合粉末を用いた。この混合粉末をポリブチルアルコー
ル樹脂系バインダとともに有機溶剤中に分散してセラミ
ックスラリーとした。このセラミックスラリーをドクタ
ーブレード法等によりキャリアフィルムの片面に塗布
し、これを乾燥し、100mm×100mm程度の大きさに
切断してセラミックグリーンシートを作成した。
【0017】このセラミックグリーンシートの表面に、
ニッケル粉末と有機バインダと溶剤とからなる内部電極
ペーストを、所定のパターン形状でスクリーン印刷し
た。なお、内部電極の印刷は、積層ののち、切断して複
数個の積層セラミックコンデンサを得ることを意図して
おり、そのために内部電極となるペーストの形成は、独
立した矩形のパターンを縦横に整列させて形成した。
【0018】次に、内部電極となるペーストを形成した
セラミックグリーンシートを、一定寸法で交互にずらし
て積層し、加圧圧着したのち、切断して、両端面から内
部電極部分が交互に露出した積層セラミックコンデンサ
のグリーンチップとした。
【0019】次に、このグリーンチップをおがくず中で
強制振動させて角体の稜線部分の面取りをした。
【0020】また、ニッケル粉末と有機バインダと溶剤
とこれに種々の無機添加物を加えて各種の外部電極用ペ
ーストを作製した。
【0021】そして、上記の面取りをしたグリーンチッ
プの内部電極部分が交互に露出した両端面に、上記の各
種の外部電極用ペーストを浸漬法により塗布した。塗布
後、120℃で10分間乾燥した。乾燥後の塗布膜厚
は、10μmから50μmとなるよう形成した。
【0022】これを、大気中で20時間,最高温度35
0℃,2時間で加熱処理して、脱バインダ処理をした。
そののち、ニッケルに対して還元雰囲気中、具体的に
は、600℃以上でニッケルの平衡酸素分圧の100分
の1の酸素濃度にコントロールした雰囲気中で15時
間,最高温度1300℃,2時間で加熱処理して焼成し
て焼結体とし、積層セラミックコンデンサの完成状態を
得た。
【0023】図1に上記により得られた積層セラミック
コンデンサを示しており、1は誘電体、2はニッケル内
部電極、3はニッケル外部電極である。
【0024】なお、本実施例では、面取りをグリーンチ
ップで行ったが、焼成後に行ってもよい。
【0025】上記で得られた積層セラミックコンデンサ
各50個について、外観検査および静電容量等の電気特
性の測定検査を行った。なお、電気特性については、外
部電極を形成しないで得た焼結体にインジウム・ガリウ
ム合金を塗布して測定した値と比較して、静電容量,誘
電正接,絶縁抵抗のいずれかにおいて異常値のものは不
良とした。それぞれの外部電極用ペーストの組成とその
結果について下記の(表1)に示す。
【0026】
【表1】
【0027】(表1)において、試料番号1から10は
比較例であり、試料番号11から17は本発明の実施例
である。また、(表1)中における無機添加物としての
誘電体粉には、上記で説明したB2TiO3を主成分とす
る粉末を用いた。
【0028】(表1)に示した結果から明らかなよう
に、本発明の実施例の試料番号11から17の積層セラ
ミックコンデンサ、つまり、外部電極用ペーストとして
無機成分を、少なくとも酸化ニッケルの粉末とニッケル
の粉末の混合物としたものは、誘電体とニッケル外部電
極との接合部近傍には酸化ニッケルの拡散層が形成さ
れ、誘電体とニッケル外部電極との接合が良好で、無機
添加物の誘電体への拡散による焼結体の変形という悪影
響もなく、内部電極との接続が良好で電気特性にも異常
がなく、また誘電体と電極との接合強度や電極膜の形成
状態も良く、極めて良好な積層セラミックコンデンサが
得られた。
【0029】ここで、誘電体とニッケル外部電極との接
合部近傍について、X線マイクロアナライザーにより分
析した結果、誘電体中に酸化ニッケルが拡散した拡散層
が形成されていることを確認した。また、この拡散層の
形成は、焼成雰囲気の条件によっても影響され、焼成温
度600℃から1300℃までの昇温過程において、酸
素濃度がニッケルの平衡酸素分圧の10万分の1では、
十分な拡散層の形成がなかった。
【0030】一方、比較例については、無機添加物とし
てガラスフリットやMnO2,SiO2を用いた場合に
は、これらの無機添加物が誘電体中へ拡散し、誘電体の
焼結が阻害され、誘電体とニッケル外部電極との接合部
近傍で焼結収縮が小さく、焼結体の変形という問題があ
った。また、無機添加物として誘電体粉を用いた場合に
は、添加量を多くすることにより多少は接合強度が改善
されるが十分ではなく、添加量を多くすることにより内
部電極との接続不良も発生し、実用に耐え得るものでは
なかった。
【0031】なお、本実施例では、焼成した焼結体を積
層セラミックコンデンサの完成状態としたが、はんだ付
け性を向上させる目的で、上記のニッケル外部電極の上
にスズ鉛合金等のめっき皮膜を形成してもよい。
【0032】
【発明の効果】以上のように本発明は、積層セラミック
コンデンサの外部電極用ペーストとして、無機成分を、
少なくとも酸化ニッケルの粉末とニッケル粉末の混合物
としたものである。
【0033】そして、この電極材料を用いることによ
り、ニッケルを内部電極とした積層セラミックコンデン
サにおいて、誘電体と外部電極との接合部近傍には酸化
ニッケルの拡散層が形成され、誘電体と外部電極との接
合が良好で、無機添加物の誘電体への拡散による焼結体
の変形という悪影響もなく、内部電極との接続が良好で
電気特性にも異常がなく、また誘電体と電極との接合強
度や電極膜の形成状態も良く、極めて良好な積層セラミ
ックコンデンサが得られる。
【0034】これにより、未焼成の積層体の端部、つま
り内部電極の露出部分を、外部電極材料で被覆したの
ち、これを同時焼成する方法によるニッケル内部電極の
積層セラミックコンデンサの製造を可能にしたものであ
り、従来用いられていたガラスフリットを含有している
外部電極材料と異なり、誘電体セラミックの焼結不足に
よる変形、機械的強度の劣化、コンデンサ特性の劣化等
の問題がなく、高品質で安価な積層セラミックコンデン
サが得られ、その工業的価値は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における積層セラミックコン
デンサの断面図
【符号の説明】
1 誘電体 2 ニッケル内部電極 3 ニッケル外部電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI H01G 4/30 311 H01G 1/147 C

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】内部電極となるニッケル粉末ペースト膜と
    誘電体セラミック生シートとを交互に積層した積層体
    と、前記内部電極となるニッケル粉末ペースト膜の露出
    端面と電気的に接続されるように設けられた外部電極と
    を備え、前記外部電極は無機成分が少なくとも酸化ニッ
    ケルの粉末とニッケルの粉末の混合物からなるペースト
    が塗布されて形成されるとともに、前記積層体と同時焼
    成されて形成されることを特徴とする積層セラミックコ
    ンデンサ。
  2. 【請求項2】内部電極となるニッケル粉末ペースト膜と
    誘電体セラミック生シートとを交互に積層し、これを所
    定形状に切断して積層体を作成し、上記積層体の上記内
    部電極となるニッケル粉末ペースト膜の露出端面に、無
    機成分が、少なくとも酸化ニッケルの粉末とニッケルの
    粉末の混合物からなるペーストを塗布し、これを焼成し
    て、上記積層体の焼結と上記内部電極に接続される外部
    電極の形成とを同時に行う積層セラミックコンデンサの
    製造方法。
  3. 【請求項3】内部電極と誘電体とを交互に積層し切断し
    た未焼成の積層体の、上記内部電極の露出端面に塗布
    し、これを焼成して、上記積層体の焼結と上記内部電極
    に接続される外部電極の形成とを同時に行うために使用
    され、無機成分が、少なくとも酸化ニッケルの粉末とニ
    ッケルの粉末の混合物からなる積層セラミックコンデン
    サの外部電極用ペースト。
  4. 【請求項4】無機成分が、酸化ニッケルの粉末とニッケ
    ルの粉末と誘電体粉末との混合物からなる請求項3記載
    の積層セラミックコンデンサの外部電極用ペースト。
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