JP3108803B2 - Mn−Znフェライト - Google Patents

Mn−Znフェライト

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JP3108803B2 JP11029993A JP2999399A JP3108803B2 JP 3108803 B2 JP3108803 B2 JP 3108803B2 JP 11029993 A JP11029993 A JP 11029993A JP 2999399 A JP2999399 A JP 2999399A JP 3108803 B2 JP3108803 B2 JP 3108803B2
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    • C04B35/26Shaped ceramic products characterised by their composition; Ceramics compositions; Processing powders of inorganic compounds preparatory to the manufacturing of ceramic products based on oxide ceramics based on ferrites
    • C04B35/2658Other ferrites containing manganese or zinc, e.g. Mn-Zn ferrites

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軟磁性を有する酸
化物磁性材料に係り、より詳しくはスイッチング電源用
トランス、ロータリートランス、偏向ヨークなどに用い
られる低損失材、各種インダクタンス素子、EMI対策
に用いられるインピーダンス素子等の電子部品、あるい
は電波吸収材に用いて好適なMn −Zn フェライトに関
する。
【0002】
【従来の技術】軟磁性を有する代表的な酸化物磁性材料
としては、Mn −Zn フェライトがある。このMn −Z
n フェライトは、従来一般には50 mol%よりも多いFe2O
3 、平均的には52〜55 mol%のFe2O3 と、10〜24 mol%
の ZnOと、残部 MnOとを含有する基本成分組成となって
いる。そして通常は、Fe2O3 、ZnO 、MnO の各原料粉末
を所定の割合で混合した後、仮焼、粉砕、成分調整、造
粒、成形の各工程を経て所定の形状とし、しかる後、窒
素を流すことにより酸素濃度を低く抑えた還元性雰囲気
中で、1200〜1400℃に3〜4時間保持する焼成処理を行
って製造される。ここで、還元性雰囲気中で焼成する理
由は、Fe2O3 が50 mol%より多い場合に、大気中で焼成
すると十分に緻密化が進まず、良好な軟磁性が得られな
くなるためである。また、Fe3+ の還元で生成するFe
2+ は正の結晶磁気異方性を有し、Fe3+ の負の結晶磁
気異方性を打ち消して軟磁性を高める効果があるが、大
気中で焼成したのでは、このような還元反応も期待でき
ないためである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、Mn −Zn
フェライトを磁心材料として用いる場合、使用する周波
数領域が高くなるに従って渦電流が流れ、これによる損
失が大きくなる。したがって、磁心材料として使用でき
る周波数の上限を高めるには、その電気抵抗をできるだ
け大きくする必要があるが、上記した一般的なMn −Z
n フェライトにおける電気抵抗は、上記したFe3+ とF
e2+ との間(イオン間)での電子の授受もあって、1Ω
mより小さい値となり、使用できる周波数も数百 kHz程
度が限界で、これを超える周波数領域では透磁率(初透
磁率)が著しく低下して、軟磁性材料としての特性を全
く失ってしまう、という問題があった。
【0004】なお、一部では、Mn −Zn フェライトの
電気抵抗を高めるため、上記主成分に対する副成分とし
てCaO 、SiO2等を添加して結晶粒界を高抵抗化すると共
に、1200℃程度の低温焼成を行って結晶粒径を5μm程
度に小さくして結晶粒界の割合を増やす対策を採ってい
るが、このような対策でも,1Ωmを超える電気抵抗を
得ることは困難で、根本的な対策とはならない。
【0005】本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなさ
れたもので、その目的とするところは、大きな電気抵抗
を有して、1MHz を超える高周波領域での使用にも十分
に耐えるMn −Zn フェライトを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の1つは、基本成分組成が、Fe2O3 44.0〜5
0.0 mol%(ただし、50.0 mol%は除く)、ZnO 4.0〜2
6.5 mol%、TiO2およびSnO2のうちの1種または2種 0.
1〜8.0mol%、残部 MnOであり、かつ 150Ωm以上の電
気抵抗を有することを特徴とする。
【0007】また、本発明の他の1つは、上記基本成分
組成に対し副成分として、 CaO 0.005〜0.200 mass%お
よびSiO2 0.005〜0.050 mass%のうちの1種または2種
を含有させたことを特徴とする。
【0008】上記2つの発明は、所望により、さらに以
下に述べる副成分を含有させた組成とすることができ
る。その1つは、副成分として、V2O5 0.010〜0.200 ma
ss%、 Bi2O3 0.005〜0.100 mass%、 In2O3 0.005〜0.
100 mass%、 PbO 0.005〜0.100 mass%、MoO3 0.001〜
0.050 mass%、 WO3 0.001〜0.050 mass%のうちの1種
または2種以上を含有させた組成である。他の1つは、
副成分として、ZrO2 0.010〜0.200 mass%、 Ta2O5 0.0
10〜0.200 mass%、HfO2 0.010〜0.200 mass%、 Nb2O5
0.010〜0.200 mass%、Y2O3 0.010〜0.200 mass%のう
ちの1種または2種以上を含有させた組成である。さら
に他の1つは、副成分として、 Cr2O3 0.020〜0.300 ma
ss%および Al2O30.020〜0.300 mass%のうちの1種ま
たは2種を含有させた組成である。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明は、1MHz を超える高周波
領域での使用にも十分に耐えるMn −Zn フェライトを
提供するため、既存のMn −Zn フェライトの基本成分
であるFe2O3 、ZnO 、MnO の他に、新たにTiO2およびSn
O2のうちの1種または2種を含有させるようにしたもの
で、その基本成分組成は、Fe2O344.0〜50.0 mol%(た
だし、50.0 mol%は除く)、 ZnO 4.0〜26.5 mol%、Ti
O2およびSnO2のうちの1種または2種 0.1〜8.0 mol
%、残部 MnOとなっている。
【0010】Mn −Zn フェライトにおける鉄成分はF
e3+ およびFe2+ として存在するが、TiおよびSnは、こ
のFe3+ から電子を受け取ってFe2+ を生成させること
が知られている。したがって、これらを含有させること
により大気中で焼成してもFe2+ を生成することができ
る。本発明においては、基本成分組成中に占めるTiO2
よび/またはSnO2の含有量を 0.1〜8.0 mol%とするこ
とで、Fe2+ の生成量を制御してFe3+ とFe2+ との存
在比を最適化し、正負の結晶磁気異方性を相殺すること
により、優れた軟磁性を得ることを可能にしている。ま
た、本発明によれば、価数の安定なTi4+ およびSn4+
が多く存在するため、Fe3+ とFe2+ との間での電子の
やり取りはほとんど阻止され、従来よりも格段に大きい
(103 倍程度)電気抵抗が得られようになる。ただし、
TiO2および/またはSnO2の含有量が 0.1 mol%未満では
その効果が小さく、 8.0 mol%より多いと初透磁率が低
下するので、上記範囲 0.1〜8.0 mol%とした。
【0011】上記したように、本発明は大気中で焼成し
ても十分な軟磁性が得られるように、Fe2O3 を50 mol%
未満に抑えて緻密化を促進する必要がある。しかし、こ
のFe2O3 が少なすぎると初透磁率の低下を招くので、少
なくとも44.0 mol%は含有させるようにする。ZnO は、
キュリー温度や飽和磁化に影響を与えるが、あまり多い
とキュリー温度が低くなって実用上問題となり、逆に少
なすぎると飽和磁化が減ってしまうため、上記範囲 4.0
〜26.5 mol%とするのが望ましい。
【0012】CaO およびSiO2は、前記したように結晶粒
界を高抵抗化することが知られているが、Mn −Zn フ
ェライトの焼結を促進する働きがあることも知られてい
る。したがって、上記した基本成分組成にCaO 、SiO2
副成分として加えることは高密度な磁性材料を得る上で
効果的となるが、所望の効果を得るにはCaO およびSiO2
を0.005 mass%以上含有させる必要がある。しかし、あ
まり多すぎると異常粒成長が起こってしまうため、CaO
は0.200 mass%に、SiO2は0.050 mass%にそれぞれ上限
を抑えるのが望ましい。
【0013】本発明は、副成分としてV2O5、 Bi2O3、 I
n2O3、 PbO、MoO3および WO3の1種または2種以上を含
有させてもよいものである。これらの副成分はいずれも
低融点酸化物で、焼結を促進する作用がある。ただし、
それらの含有量が少ないとその効果が小さく、逆に多す
ぎると異常粒成長が起こってしまうため、V2O5は 0.010
〜0.200 mass%、 Bi2O3、In2O3 、PbO は0.005 〜0.10
0 mass%、 WO3は 0.001〜0.050 mass%とするのが望ま
しい。
【0014】本発明は、副成分としてZrO2、 Ta2O5、Hf
O2、 Nb2O5およびY2O3の1種または2種以上を含有させ
てもよいものである。これら副成分はいずれも高融点酸
化物で、粒成長を抑制する作用がある。結晶粒が小さく
なると電気抵抗が増大するので、これら副成分を適量含
させることで、高周波領域における初透磁率を改善す
ることができる。ただし、それらの含有量が少ないとそ
の効果が小さく、逆に多すぎると初透磁率が低下してし
まうため、これらの含有量はいずれも 0.010〜0.200 ma
ss%とするのが望ましい。
【0015】本発明は、副成分としてCr2O3 および Al2
O3のうちの1種または2種を含有させてもよいものであ
る。これら副成分は初透磁率の温度特性を改善する効果
があるが、あまり少ないとその効果が小さく、逆に多す
ぎると初透磁率が低下してしまうため、これらの含有量
は 0.020〜0.300 mass%とするのが望ましい。
【0016】Mn −Zn フェライトの製造に際しては、
予め主成分としてのFe2O3 、ZnO 、TiO2および/または
SnO2およびMnO の各原料粉末を所定の比率となるように
秤量し、これらを混合して混合粉末を得、次に、この混
合粉末を仮焼、微粉砕する。前記仮焼温度は、目標組成
によって多少異なるが、850 〜950 ℃の温度範囲内で適
宜の温度を選択することができる。また、混合粉末の微
粉砕には汎用のボールミルを用いることができる。そし
て、この微細な混合粉末に、所望により上記種々の副成
分の粉末を所定の比率で添加混合し、目標組成の混合粉
末を得る。その後は、通常のフェライト製造プロセスに
従って造粒、成形を行い、さらに焼成を行って焼成体を
得る。前記造粒は、ポリビニルアルコール、ポリアクリ
ルアミド、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、
グリセリン等のバインダーを添加して行い、また成形
は、例えば、80MPa 以上の圧力を加えて行い、さらに焼
成は、空気中で、例えば1000〜1300℃の温度に適宜の時
間保持する方法で行う。
【0017】このようにして得られたMn −Zn フェラ
イトは、TiO2および/またはSnO2を主成分として含有す
るので、電気抵抗が従来のMn −Zn フェライトに比べ
て著しく増大(103 倍程度)する。また、一般に軟磁性
フェライトにおける初透磁率μの限界は、そのフェライ
トを使用する周波数f(MHz) に反比例し、μ=K/f
(K=1500〜2000)なる式で与えられる値で見積るよう
にしているが、本Mn −Zn フェライトによれば、5MH
z においても見積りどおりの初透磁率 300〜400 を得る
ことができ、1MHz を超える高周波向けの磁心材料、電
波吸収材として好適となる。
【0018】
【実施例】実施例1 Fe2O3 が42.0〜52.0 mol%、TiO2またはSnO2が 2.0 mol
%、残部が MnOとZnOとでモル比26:25となるように各
原料粉末をボールミルにて混合した後、空気中、 900℃
で2時間仮焼し、さらにボールミルにて20時間粉砕し
て、混合粉末を得た。次に、この混合粉末を先の組成と
なるように成分調整し、さらにボールミルにて1時間混
合した。次に、この混合粉末にポリビニルアルコールを
加えて造粒し、80MPa の圧力で外径18mm,内径10mm,高
さ4mmのトロイダル状コアを成形し、その後、各成形体
を焼成炉に入れ、空気中で、1300℃で3時間焼成し、表
1に示すような試料1−1〜1−7を得た。
【0019】また、比較のため、Fe2O3 が52.5 mol%、
MnOが24.2 mol%、ZnO が23.3 mol%となるように各原
料粉末をボールミルにて混合した後、空気中、 900℃で
2時間仮焼し、さらにボールミルにて20時間粉砕して、
混合粉末を得た。次に、この混合粉末を先の組成となる
ように成分調整すると共に、副成分としてCaO 0.050mas
s%と SiO2 0.010 mass%とを加え、さらにボールミル
にて1時間混合した。次に、この混合粉末にポリビニル
アルコールを加えて造粒し、80MPa の圧力で外径18mm,
内径10mm,高さ4mmのトロイダル状コアを成形し、その
後、成形体を焼成炉に入れ、窒素雰囲気中で、1200℃で
3時間焼成し、従来と同じくFe2O3 が50mol%よりも多
い試料1−8を得た。
【0020】そして、上記のようにして得た各試料1−
1〜1−8について、蛍光X線分析によって最終的な成
分組成を確認すると共に、焼成体密度、500kHz並びに5
MHzでの初透磁率、電気抵抗および1MHz ,50mTにおけ
る磁心損失を測定した。それらの結果を表1に一括して
示す。
【0021】
【表1】
【0022】表1に示す結果より、Fe2O3 が50.0 mol%
よりも多い試料1−1(比較試料)に対し、Fe2O3 が5
0.0 mol%以下の試料1−2〜1−7は、いずれも十分
に密度が高く、また電気抵抗、500kHzおよび5MHz での
初透磁率共に著しく高くなっており、しかも磁心損失は
小さくなっている。試料1−2〜1−7の中では、Fe 2 O
3 が50.0 mol%の試料1−2よりも48.0 mol%の試料1
−3および1−7の方が、初透磁率が比較的高くなって
いる。また、比較試料としての試料1−6は、Fe2O3
44.0 mol%以下と少なくなっているため、500kHzおよび
5MHz での初透磁率が本発明試料に比べてかなり低くな
っている。また、従来と同じくFe2O3 が50 mol%よりも
多い試料1−8は、5MHz での初透磁率が、真空での透
磁率のレベル1まで下がっており、軟磁性材料としての
特性を完全に失っている。
【0023】実施例2 Fe2O3 が48.0 mol%、TiO2またはSnO2が0〜10.0 mol
%、 残部が MnOとZnOとでモル比26:25となるように各
原料粉末をボールミルにて混合した後、空気中、 900℃
で2時間仮焼し、さらにボールミルにて20時間粉砕し
て、混合粉末を得た。次に、この混合粉末を先の組成と
なるように成分調整し、さらにボールミルにて1時間混
合した。次に、この混合粉末にポリビニルアルコールを
加えて造粒し、80MPa の圧力で外径18mm,内径10mm,高
さ4mmのトロイダル状コアを成形し、その後、各成形体
を焼成炉に入れ、空気中で、1300℃で3時間焼成し、表
2に示すような試料2−1〜2−7を得た。そして、こ
のようにして得た各試料2−1〜2−7について、最終
的な成分組成を蛍光X線分析によって確認すると共に、
5MHz での初透磁率および1MHz ,50mTにおける磁心損
失を測定した。それらの結果を表2に示す。また、本発
明試料1−3、2−3、2−4、2−5および2−7に
ついては、1MHz ,50mTにおける磁心損失の温度特性も
測定した。それらの結果を図1に示す。
【0024】
【表2】
【0025】表2に示す結果より、TiO2を全く含まない
試料2−1(比較試料)に対し、TiO2を適量含んだ本発
明試料1−3、2−2〜2−5並びにSnO2を適量含んだ
本発明試料2−7は、何れも著しく初透磁率が高く、か
つ磁心損失が著しく小さくなっている。また、TiO2を比
較的多量(10.0 mol%)に含有する試料2−6(比較試
料)は、TiO2を全く含まない比較試料2−1に比べて初
透磁率が高く、かつ磁心損失が小さくなっているもの
の、本発明試料1−3、2−1〜2−5並びに2−7に
比べれば、初透磁率が低く、かつ磁心損失が大きくなっ
ている。
【0026】また、図1に示す結果より、例えば、TiO2
=2.0mol%の試料1−3は温度変化が少なく、インダク
タンス素子用フェライト、インピーダンス素子用フェラ
イトとして有効に活用できる。また、TiO2= 4.0〜8.0m
ol%を含む本発明試料1−3、2−3〜2−5並びに2
−7は、磁心損失が最低値を示す温度が40〜80℃の範囲
でばらついているが、使用する温度に応じてこれらを使
い分けることで、特に低損失フェライトとして有効に活
用できる。
【0027】実施例3 Fe2O3 が48.0 mol%、 MnOが25.5 mol%、ZnO が24.5 m
ol%、TiO2が 2.0 mol%となるように(実施例1の試料
1−3と同じ)各原料粉末をボールミルにて混合した
後、空気中、 900℃で2時間仮焼し、さらにボールミル
にて20時間粉砕して、混合粉末を得た。次に、この混合
粉末を先の組成となるように成分調整し、副成分として
CaO またはSiO2を表4に示すように種々の量加え、さら
にボールミルにて1時間混合した。次に、この混合粉末
にポリビニルアルコールを加えて造粒し、80MPa の圧力
で外径18mm,内径10mm,高さ4mmのトロイダル状コアを
成形し、その後、各成形体を焼成炉に入れ、空気中で、
1300℃で3時間焼成し、表3に示すような試料3−1〜
3−6を得た。そして、このようにして得た各試料3−
1〜3−6について、最終的な成分組成を蛍光X線分析
によって確認すると共に、焼成体密度と5MHz での初透
磁率を測定した。それらの結果を表3に示す。
【0028】
【表3】
【0029】表3に示す結果より、CaO またはSiO2を適
量含有させた試料3−1、3−2、3−4および3−5
(本発明試料)では、これらを全く含まない試料1−3
(実施例1の本発明試料)に対し、いずれも密度および
初透磁率が改善されている。しかし、CaO またはSiO2
多めに含有させた試料3−3および3−6(比較試料)
では、前記した本発明試料に比べて、密度は向上するが
初透磁率は低くなっている。
【0030】実施例4 実施例3と同じ基本成分組成の混合粉末に、副成分とし
てV2O5、 Bi2O3、 In2O3、 PbO、MoO3、WO3 を所定量加
え、その後、実施例3と同じ条件で混合、造粒、成形お
よび焼成を行い、表4に示すような試料4−1〜4−1
4を得た。そして、このようにして得た各試料4−1〜
4−14について、最終的な成分組成を蛍光X線分析に
よって確認すると共に、焼成体密度と5MHz での初透磁
率を測定した。それらの結果を表4に示す。
【0031】
【表4】
【0032】表4に示す結果より、V2O5、 Bi2O3、 In2
O3、 PbO、MoO3、WO3 を適量含有させた試料4−1、4
−2、4−4、4−5、4−7〜4−10、4−12〜
4−14(本発明試料)では、これらを全く含まない試
料1−3(実施例1の本発明試料)に対し、いずれも密
度および初透磁率が改善されている。しかし、これら副
成分を多めに含有させた試料4−3、4−6、4−11
(比較試料)では、前記した本発明試料に比べて、密度
は向上するが初透磁率は低くなっている。
【0033】実施例5 実施例3と同じ基本成分組成の混合粉末に、副成分とし
てZrO2、 Ta2O5、HfO2、Nb2O5 、Y2O3を所定量加え、そ
の後、実施例3と同じ条件で混合、造粒、成形および焼
成を行い、表5に示すような試料5−1〜5−9を得
た。そして、このようにして得た各試料5−1〜5−9
について、最終的な成分組成を蛍光X線分析によって確
認すると共に、結晶粒径、5MHz での初透磁率および電
気抵抗を測定した。それらの結果を表5に示す。
【0034】
【表5】
【0035】表5に示す結果より、ZrO2、 Ta2O5、Hf
O2、Nb2O5 、Y2O3を適量含有させた試料5−1、5−
2、5−4〜5−9(本発明試料)は、これらを全く含
まない試料1−3(実施例1の本発明試料)の結晶粒径
14μmに対し、その結晶粒径が5〜8μmと小さくな
っており、これに伴って初透磁率も改善されている。し
かし、試料5−3のように副成分が多めに含有されてい
るもの(比較試料)では、結晶粒径は小さくなるもの
の、初透磁率の改善効果は認められない。
【0036】実施例6 実施例3と同じ基本成分組成の混合粉末に、副成分とし
てCr2O3 、Al2O3 を所定量加え、その後、実施例3と同
じ条件で混合、造粒、成形および焼成を行い、表6に示
すような試料6−1〜6−6を得た。そして、このよう
にして得た各試料6−1〜6−6について、最終的な成
分組成を蛍光X線分析によって確認すると共に、結晶粒
径、5MHz での初透磁率および相対温度係数を測定し
た。なお、相対温度係数は初透磁率の温度特性を表す指
標で、次式で与えられる。 相対温度係数=(μ2 −μ1 )/μ1 2/(T2 −T1 ) ただし μ1 :温度T1 (通常は20℃)における初透磁
率 μ2 :温度T2 における初透磁率 それらの結果を表6に示す。
【0037】
【表6】
【0038】表6に示す結果より、Cr2O3 、Al2O3 を適
量含有させた試料6−1、6−2、6−4〜6−6(本
発明試料)は、これらを全く含まない試料1−3(実施
例1の本発明試料)の結晶粒径に対し、相対温度係数が
小さくなっており、温度特性が改善されている。しか
し、試料6−3のように副成分が多めに含有されている
もの(比較試料)では、相対温度係数が小さくなってい
るものの、初透磁率が低下している。
【0039】
【発明の効果】以上、説明したように、本発明に係るM
n −Zn フェライトによれば、従来のMn −Zn フェラ
イトに比べて格段に大きな電気抵抗と優れた初透磁率と
を得ることができ、1MHz を超える高周波領域での使用
にも十分に耐えるものとなって、高周波向けの磁心材
料、電波吸収材として好適となる。また、本発明に係る
Mn −Zn フェライトは、TiO2、SnO2の含有によりFe2O
3が50 mol%未満のMn −Zn フェライトにおいても大
気中での焼成が可能になっているので、製造性の改善、
製造コストの低減に大きく寄与するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁心損失に及ぼす温度とTiO2、SnO2含有量の影
響を示すグラフである。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−262404(JP,A) 特開 昭60−132301(JP,A) 特開 昭60−132302(JP,A) 特開 平7−86022(JP,A) 特開 平9−180925(JP,A) 特開 平11−199235(JP,A) V.P.Microshkin et al.,”Electrical C onductivity of Man ganese−Zinc Ferros pinels”,Phys.stat. sol.,Vol.66,1981,pp. 503−507 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01G 49/00 C04B 35/38 H01F 1/34 REGISTRY(STN)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基本成分組成が、Fe2O3 44.0〜50.0 mol
    (ただし、50.0mol%は除く)、 ZnO 4.0〜26.5 mol
    %、TiO2およびSnO2のうちの1種または2種 0.1〜8.0m
    ol%、残部 MnOであり、かつ 150Ωm以上の電気抵抗を
    有することを特徴とするMn −Zn フェライト。
  2. 【請求項2】 副成分として、 CaO 0.005〜0.200 mass
    %およびSiO2 0.005〜0.050 mass%のうちの1種または
    2種を含有することを特徴とする請求項1に記載のMn
    −Zn フェライト。
  3. 【請求項3】 副成分として、V2O5 0.010〜0.200 mass
    %、 Bi2O3 0.005〜0.100 mass%、 In2O3 0.005〜0.10
    0 mass%、 PbO 0.005〜0.100 mass%、MoO30.001〜0.0
    50 mass%、WO3 0.001 〜0.050 mass%のうちの1種ま
    たは2種以上を含有することを特徴とする請求項1また
    は2に記載のMn −Zn フェライト。
  4. 【請求項4】 副成分として、ZrO2 0.010〜0.200 mass
    %、 Ta2O5 0.010〜0.200 mass%、HfO2 0.010〜0.200
    mass%、 Nb2O5 0.010〜0.200 mass%、Y2O30.010〜0.2
    00 mass%のうちの1種または2種以上を含有すること
    を特徴とする請求項1または2に記載のMn −Zn フェ
    ライト。
  5. 【請求項5】 副成分として、 Cr2O3 0.020〜0.300 ma
    ss%および Al2O3 0.020〜0.300 mass%のうちの1種ま
    たは2種を含有することを特徴とする請求項1または2
    に記載のMn −Zn フェライト。
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