JP3584437B2 - Mn−Znフェライトの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軟磁性を有する酸化物磁性材料特にMn −Zn フェライトの製造方法に係り、より詳しくはスイッチング電源トランス、フライバックトランス、偏向ヨークなどに用いられる低損失材、各種インダクタンス素子、EMI対策用インピーダンス素子、電波吸収材等としての使用に向けて好適なMn −Zn フェライトの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
軟磁性を有する代表的な酸化物磁性材料としては、Mn −Zn フェライトがある。このMn −Zn フェライトは、従来一般には50 mol%よりも多いFe2O3 、平均的には52〜55 mol%のFe2O3 と、10〜24 mol%の ZnOと、残部 MnOとを含有する基本成分組成を有しており、通常は、Fe2O3 、ZnO 、MnO の各原料粉末を所定の割合で混合した後、仮焼、粉砕、成分調整、造粒、成形等の各工程を経て所定の形状とし、しかる後、窒素を流すことにより酸素濃度を大幅に下げた還元性雰囲気中で、1200〜1400℃に3〜4時間保持する焼成処理を行って製造されていた。ここで、還元性雰囲気中で焼成する理由は、50 mol%以上となる多量のFe2O3 を含んでいることから、大気中で焼成すると十分に緻密化が進まず、良好な軟磁性が得られなくなるためである。また、Fe3+ の還元で生成するFe2+ は正の結晶磁気異方性を有し、Fe3+ の負の結晶磁気異方性を打ち消して軟磁性を高める効果があるが、大気中で焼成したのでは、このような還元反応によるFe2+ の生成も期待できなくなるためである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記した緻密化は焼成に際しての昇温時の酸素濃度に、Fe2+ の生成は焼成後の降温時の酸素濃度にそれぞれ依存することが知られており、したがって、焼成時の酸素濃度の設定を誤ると、良好な軟磁性を確保することは困難となる。そこで従来は、実験的に下記(1) 式を確立し、この(1) 式に従って焼成時の酸素濃度を管理するようにしていた。
log Po2=−14540 /(T+273 )+b …(1)
ここで、Tは温度(℃)、Po2は酸素濃度(−)、bは定数であり、従来は、この定数bとして7〜8程度を採用していた。この定数bが7〜8ということは、焼成中の酸素濃度を狭い範囲に制御しなければならないことを意味し、これにより、従来は、焼成処理が極めて面倒になり、製造コストも嵩むという問題があった。
【0004】
一方、Mn −Zn フェライトを磁心材料として用いる場合、使用する周波数が高くなるに従って渦電流が流れ、これによる損失が大きくなる。したがって、磁心材料として使用できる周波数の上限を高めるには、その電気抵抗をできるだけ大きくする必要があるが、上記した一般的なMn −Zn フェライトにおける電気抵抗は、上記したFe3+ とFe2+ との間(イオン間)での電子の授受もあって、1Ωmよりも小さい値となり、使用できる周波数も数百 kHz程度が限界で、1MHz を超える高周波域では透磁率(初透磁率)が著しく低下して、軟磁性材料としての特性を失ってしまう、という問題もあった。
【0005】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、大きな電気抵抗を有して、1MHz を超える高周波域での使用にも十分に耐えるMn −Zn フェライトを容易かつ安価に得ることができる製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、第1の発明は、Fe2O3 44.0〜50.0 mol %(ただし、50.0 mol %は除く)、 ZnO 4.0〜26.5 mol%、TiO 2 または TiO 2 と SnO 2 との合計0.1〜8.0mol%、残部 MnOの組成となるように成分調整した混合粉末を用いて成形を行った後、大気中で焼成および焼成後の冷却を行い、150Ωm以上の電気抵抗を確保することを特徴とする。
【0007】
また、第2の発明は、Fe2O3 44.0〜50.0 mol %(ただし、50.0 mol %は除く)、 ZnO 4.0〜26.5 mol%、TiO 2 または TiO 2 と SnO 2 との合計0.1〜8.0mol%、 CuO 0.1〜16.0 mol%、残部 MnOの組成となるように成分調整した混合粉末を用いて成形を行った後、大気中で焼成および焼成後の冷却を行い、150Ωm以上の電気抵抗を確保することを特徴とする。
【0008】
さらに、第3または第4の発明は、上記第1または第2の発明と同じ成分組成の混合粉末を用いて成形を行った後、前記 (1)式中の定数bとして、6〜21の範囲内の任意の値を用いて求めた酸素濃度の雰囲気中で、焼成および焼成後の冷却を行い、1MHzで1500以上の初透磁率を確保することを特徴とする。この場合、 300℃より低い温度では、酸素濃度によらず、酸化または還元の反応を無視できるので、前記雰囲気の調整は、焼成後の冷却が 300℃まで進む時点まで行えば十分である。ただし、この(1)式において酸素濃度P o 2 が 0.21 (大気圧)を超える場合は、 0.21 を雰囲気制御の目標とする。
【0009】
Mn −Zn フェライトにおける鉄成分はFe3+ およびFe2+ として存在するが、TiおよびSnは、このFe3+ から電子を受け取ってFe2+ を生成させることが知られている。したがって、これらを含有させることにより大気中または酸素を適当量含む雰囲気中で焼成してもFe2+ を生成することができる。本第1乃至第4の発明においては、基本成分中に占めるTiO 2 または TiO 2 と SnO 2 との合計の含有量を 0.1〜8.0mol%とすることで、Fe2+ の生成量を制御してFe3+ とFe2+ との共存比を最適化し、正負の結晶磁気異方性を相殺することにより、良好な軟磁性を得ることを可能にしている。また、本第1乃至第4の発明によれば、価数の安定なTi4+ およびSn4+ が多く存在するため、Fe3+ とFe2+ との間での電子のやり取りはほとんど阻止され、従来よりも格段に大きい(103 倍程度)電気抵抗が得られようになる。ただし、TiO 2 または TiO 2 と SnO 2 との合計の含有量が 0.1 mol%未満ではその効果が小さく、8.0mol%より多いと初透磁率が低下するので、上記範囲 0.1〜8.0mol%とした。
【0010】
本第1乃至第4の発明は、上記したようにFe2O3 を50 mol %未満に抑えているので、大気中または酸素を適当量含む雰囲気中で焼成しても十分に緻密化が進み、所望の軟磁性が得られるようになる。しかし、このFe2O3 が少なすぎると初透磁率の低下を招くので、少なくとも44.0 mol%は含有させるようにする。
ZnO は、キュリー温度や飽和磁化に影響を与えるが、あまり多いとキュリー温度が低くなって実用上問題となり、逆に少なすぎると飽和磁化が減ってしまうため、上記範囲 4.0〜26.5 mol%とするのが望ましい。
本第2および第4の発明は、上記したようにCuO を含有するが、このCuO は、低温焼成を可能にする効果がある。ただし、その含有量があまり少ないと前記した効果が小さく、逆に多すぎると初透磁率が低下してしまうため、上記範囲 0.1〜16.0 mol%とするのが望ましい。
【0011】
本第1乃至第4の発明は、副成分としてCaO 、SiO2、ZrO2、 Ta2O5、HfO2、 Nb2O5およびY2O3のうちの1種また2種以上を微量含有させることができる。これら副成分は、結晶粒界を高抵抗化させる作用がある。
また、副成分としてV2O5、 Bi2O3、 In2O3、 PbO、MoO3および WO3のうちの1種または2種以上を含有させることができる。これらの副成分はいずれも低融点酸化物で、焼結を促進する作用がある。
さらに、副成分としてCr2O3 および Al2O3のうちの1種または2種を含有させてもよいものである。これら副成分は初透磁率の温度特性を改善する効果がある。
【0012】
本第3および第4の発明は、上記したように焼成後の冷却を、前記 (1)式中の定数bとして6〜21の範囲内の任意の値を用いて求めた酸素濃度の雰囲気中で行うようにするが、この (1)式における定数bとして、21より大きい値を選択した場合は、実質大気と同じ雰囲気となるので、酸素濃度を規定する意味はなくなる。また、得られるMn −Zn フェライトの低周波における初透磁率を高くするには、この定数bとして、できるだけ小さな値を選択するのが望ましいが、6より小さくなると電気抵抗が小さくなり過ぎ、高周波域における初透磁率が悪化するので、6以上に設定する。
【0013】
【発明の実施の形態】
Mn −Zn フェライトの製造に際しては、予め主成分としてのFe2O3 、ZnO 、TiO 2 、 SnO 2 、CuO 、MnO 等の各原料粉末を所定の比率となるように秤量し、これらを混合して混合粉末を得、次に、この混合粉末を、必要に応じて仮焼、微粉砕する。前記仮焼温度は、目標組成によって多少異なるが、850 〜950 ℃の温度範囲内で適宜の温度を選択することができる。また、混合粉末の微粉砕には汎用のボールミルを用いることができる。そして、この微細な混合粉末に、所望により上記種々の副成分の粉末を所定の比率で添加混合し、目標成分の混合粉末を得る。その後は、通常のフェライト製造プロセスに従って造粒、成形を行い、さらに、 900〜1300℃で焼成を行う。なお、前記造粒は、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、グリセリン等のバインダーを添加する方法を、また成形は、例えば、80MPa 以上の圧力を加えて行う方法をそれぞれ採用することができる。
【0014】
しかして、上記焼成および焼成後の冷却は、大気中で行っても、前記 (1)式に基いて規定される(ただし、定数は6〜21の範囲)酸素濃度の雰囲気中で行ってもよいものであるが、酸素を含む雰囲気中で行う場合は、焼成炉中に窒素ガス等の不活性ガスを流して酸素濃度を制御するのが望ましい。この場合、前記 (1)式で与えられる定数bは、6〜21の広い範囲で任意の値を選択することができるので、容易に酸素濃度の制御を行うことができる。
【0015】
このようにして得られたMn −Zn フェライトは、TiO 2 または TiO 2 と SnO 2 とを主成分として含有するので、電気抵抗が従来のMn −Zn フェライトに比べて著しく増大(103 倍程度)する。
また、一般に軟磁性フェライトにおける初透磁率μの限界は、そのフェライトを使用する周波数f(MHz) に反比例し、下記(2) 式で与えられる値で見積るようにしているが、本Mn −Zn フェライトによれば、1MHz で1500〜2000、5MHz で 300〜400 の見積りどおりの初透磁率μを得ることができ、1MHz を超える高周波向けの磁心材料、電波吸収材として好適となる。
μ=K/f(K=1500〜2000) …(2)
【0016】
【実施例】
実施例1
Fe2O3 が48.0 mol%、TiO2またはSnO2が2.0 mol%、残部が MnOとZnO とでモル比26:25となるように各原料粉末をボールミルにて混合した後、空気中、 900℃で2時間仮焼し、さらにボールミルにて20時間粉砕して、混合粉末を得た。次に、この混合粉末を先の組成となるように成分調整し、さらにボールミルにて1時間混合した後、この混合粉末にポリビニルアルコールを加えて造粒し、80MPa の圧力で外径18mm,内径10mm,高さ4mmのトロイダル状コア(成形体)を成形した。その後、成形体を焼成炉に入れ、窒素を流すことにより、前記(1) 式中の定数bを8として求められる酸素濃度となるように雰囲気を調整し、1300℃で3時間焼成および焼成後の冷却を行い、表1に示すような試料1−2および1−3を得た。
【0017】
また、比較のため、Fe2O3 が52.5 mol%、 MnOが24.2 mol%、ZnO が23.3 mol%となるように各原料粉末をボールミルにて混合した後、空気中、 900℃で2時間仮焼し、さらにボールミルにて20時間粉砕して、混合粉末を得た。次に、この混合粉末を先の組成となるように成分調整すると共に、副成分としてCaO を0.05mass%加え、さらにボールミルにて1時間混合した。次に、この混合粉末にポリビニルアルコールを加えて造粒し、80MPa の圧力で外径18mm,内径10mm,高さ4mmのトロイダル状コアを成形した。その後、成形体を焼成炉に入れ、窒素を流すことにより、前記(1) 式中の定数bを7.7として求められる酸素濃度となるように雰囲気を調整し、1300℃で3時間焼成および焼成後の冷却を行って、従来と同じくFe2O3 が50 mol%よりも多い試料1−1を得た。
【0018】
そして、上記のようにして得た各試料1−1〜1−3について、蛍光X線分析によって最終的な成分を確認すると共に、100kHz,1MHz ,5MHz での初透磁率および電気抵抗を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
表1に示す結果より、Fe2O3 が50.0 mol%よりも多い試料1−1に対し、Fe2O3 が50.0 mol %未満の試料1−2および1−3は、104 オーダーの大きな電気抵抗を有し、これに応じて1MHz 、5MHz の高周波域での初透磁率も著しく高くなっている。一方、試料1−1の初透磁率は、周波数5MHz で1となって、軟磁性材料としての特性を全く失っている。
【0021】
実施例2
Fe2O3 が48.0 mol%、TiO2が2.0mol%、 CuOが0〜20.0 mol%、残部が MnOとZnO とでモル比26:25となるように各原料粉末をボールミルにて混合した後、空気中、 900℃で2時間仮焼し、さらにボールミルにて20時間粉砕して、混合粉末を得た。次に、この混合粉末を先の組成となるように成分調整し、さらにボールミルにて1時間混合した。次に、この混合粉末にポリビニルアルコールを加えて造粒し、80MPa の圧力で外径18mm,内径10mm,高さ4mmのトロイダル状コアを成形した。その後、各成形体を焼成炉に入れ、窒素を流すことにより、前記(1) 式中の定数bを8として求められる酸素濃度となるように雰囲気を調整し、 900〜1300℃で3時間焼成および焼成後冷却を行い、表2に示すような試料2−1〜2−4を得た。
そして、このようにして得た各試料2−1〜2−4について、最終的な成分を蛍光X線分析によって確認すると共に、1MHz での初透磁率を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
【0023】
表2に示す結果より、 CuOを全く含まない試料2−1では、1000以上の高い初透磁率を得るのに焼成温度を1200℃以上の高温に設定しなければならないが、 CuOを適量含有させた試料2−2および2−3は、焼成温度を1000℃程度に低く設定しても1000以上の高い初透磁率が得られている。しかし、 CuOを比較的多量(20.0 mol%)に含有する試料2−4は、1200℃以上の高温焼成を行った場合に初透磁率が大きく低下するばかりか、比較的低い温度(1100℃)で焼成しても1500を超える高い初透磁率を得ることはできず、 CuOを適量含有させることが、最適焼成温度の低下並びに高周波域での初透磁率の向上に有効であることが分かった。
【0024】
実施例3
Fe2O3 が48.0 mol%、TiO2が 2.0 mol%、 CuOが0または 8.0 mol%、残部が MnOとZnO とでモル比26:25となるように各原料粉末をボールミルにて混合した後、空気中、 900℃で2時間仮焼し、さらにボールミルにて20時間粉砕して、混合粉末を得た。次に、この混合粉末を先の組成となるように成分調整し、さらにボールミルにて1時間混合した。次に、この混合粉末にポリビニルアルコールを加えて造粒し、80MPa の圧力で外径18mm,内径10mm,高さ4mmのトロイダル状コアを成形した。その後、各成形体を焼成炉に入れ、窒素を流すことにより、前記(1) 式中の定数bを5.5〜21の範囲で種々に変化させて求められる酸素濃度となるように調整した雰囲気中または大気中で、1300℃または1100℃(1100℃は CuOを含むもののみ)で3時間焼成および焼成後冷却を行い、表3に示すような試料3−1〜3−7を得た。
そして、このようにして得た各試料3−1〜3−7について、最終的な成分を蛍光X線分析によって確認すると共に、100kHz,1MHz ,5MHz での初透磁率および電気抵抗を測定した。それらの結果を表3に示す。なお、表3には、実施例1の試料1−2の結果も併記している。また、本実施例3で得た試料3−3および3−5と、前記実施例1で得た試料1−2および試料1−1については、周波数を広範囲に変えて初透磁率の変化を調査した。その結果を図1に示す。
【0025】
【表3】
【0026】
表3に示す結果より、(1) 式中の定数bを6以上とした酸素濃度の雰囲気中で焼成を行った試料3−2〜3−4、3−6並びに1−2、および大気中で焼成を行った試料3−5および3−7は、いずれも電気抵抗が大きく、これに応じて1MHz 、5MHz の高周波域での初透磁率も高くなっている。中でも、大気中で焼成を行った試料3−5および3−7は、他の雰囲気中で焼成を行ったものに比し、電気抵抗、高周波域での初透磁率共に高くなっている。一方、前記定数bを5.5とした酸素濃度の雰囲気中で焼成を行った比較試料3−1は、1MHz 、5MHz の高周波域での初透磁率が最も低くなっている。
【0027】
また、図1に示す結果より、試料3−3、3−5、1−2および比較試料1−1共に、周波数が 500kHz 程度までは周波数が変化しても初透磁率がほとんど変化しないものの、比較試料1−1は、周波数が500kHzを超えると急激に初透磁率が低下し、周波数が5000kHz (5MHz )では初透磁率1まで下がっている。
【0028】
実施例4
Fe2O3 が48.0 mol%、TiO2が 2.0 mol%、 CuOが0または 8.0 mol%、残部が MnOとZnO とでモル比26:25となるように各原料粉末をボールミルにて混合した後、空気中、 900℃で2時間仮焼し、さらにボールミルにて20時間粉砕して、混合粉末を得た。次に、この混合粉末を先の組成となるように成分調整し、副成分としてMoO3を0.05mass%、CaO を0.05mass%、ZrO2を0.10mass%またはAl2O3 を0.15mass%加え、さらにボールミルにて1時間混合した。次に、この混合粉末にポリビニルアルコールを加えて造粒し、80MPa の圧力で外径18mm,内径10mm,高さ4mmのトロイダル状コアを成形した。その後、各成形体を焼成炉に入れ、窒素を流すことにより、前記(1) 式中の定数bを8として求められる酸素濃度となるように雰囲気を調整し、1300℃または1100℃(1100℃は CuOを含むもののみ)で3時間焼成および焼成後冷却を行い、表4に示すような試料4−1〜4−4を得た。
そして、このようにして得た各試料4−1〜4−4について、最終的な成分を蛍光X線分析によって確認すると共に、100kHz,1MHz ,5MHz での初透磁率および電気抵抗を測定した。それらの結果を表4に示す。
【0029】
【表4】
【0030】
表4に示す結果より、副成分としてMoO3、CaO 、ZrO2、Al2O3 等を微量添加することで、各周波数レベルで高い初透磁率が得られ、これら副成分が初透磁率の向上に寄与することが分かった。
【0031】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明に係るMn −Zn フェライトの製造方法によれば、TiO 2 または TiO 2 と SnO 2 とを含有させてFe2O3 を50 mol %未満に抑えた特有の成分を有する混合粉末の使用により、大気中または酸素を適当量含む雰囲気中で焼成しても、100kHz程度の低周波域から1MHz を超える高周波域までの広帯域での使用に耐えるMn −Zn フェライトを安定して得ることができる。また、焼成に際して面倒な雰囲気管理を必要としないので、焼成に要するコストが低減し、磁心材料、電波吸収材等に向けて有用なMn −Zn フェライトを安価に提供できるものとなる。
特に、混合粉末にCuO を含有させた場合は、低温焼成が可能になって、焼成に要するコストがより一層低減し、Mn −Zn フェライトの低コスト化に大きく寄与するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明試料および比較試料の初透磁率の周波数特性を示すグラフである。
Claims (4)
- Fe2O3 44.0〜50.0 mol %(ただし、50.0 mol %は除く)、 ZnO 4.0〜26.5 mol%、TiO 2 または TiO 2 と SnO 2 との合計0.1〜8.0mol%、残部 MnOの組成となるように成分調整した混合粉末を用いて成形を行った後、大気中で焼成および焼成後の冷却を行い、150Ωm以上の電気抵抗を確保することを特徴とするMn −Zn フェライトの製造方法。
- Fe2O3 44.0〜50.0 mol %(ただし、50.0 mol %は除く)、 ZnO 4.0〜26.5 mol%、TiO 2 または TiO 2 と SnO 2 との合計0.1〜8.0mol%、 CuO 0.1〜16.0 mol%、残部 MnOの組成となるように成分調整した混合粉末を用いて成形を行った後、大気中で焼成および焼成後の冷却を行い、150Ωm以上の電気抵抗を確保することを特徴とするMn −Zn フェライトの製造方法。
- Fe2O3 44.0〜50.0 mol %(ただし、50.0 mol %は除く)、 ZnO 4.0〜26.5 mol%、TiO 2 または TiO 2 と SnO 2 との合計0.1〜8.0mol%、残部 MnOの組成となるように成分調整した混合粉末を用いて成形を行った後、下記の式で規定される酸素濃度の雰囲気中で焼成および少なくとも 300℃までの焼成後の冷却を行い、1MHzで1500以上の初透磁率を確保することを特徴とするMn −Zn フェライトの製造方法。
log Po2=−14540 /(T+273 )+b
ただし、T:温度(℃)、酸素濃度(−)で 0.21 (大気圧)以下、b:6〜21の範囲から選択した定数 - Fe2O3 44.0〜50.0 mol %(ただし、50.0 mol %は除く)、 ZnO 4.0〜26.5 mol%、TiO 2 または TiO 2 と SnO 2 との合計0.1〜8.0mol%、 CuO 0.1〜16.0 mol%、残部 MnOの組成となるように成分調整した混合粉末を用いて成形を行った後、下記の式で規定される酸素濃度の雰囲気中で焼成および少なくとも 300℃までの焼成後の冷却を行い、1MHzで1500以上の初透磁率を確保することを特徴とするMn −Zn フェライトの製造方法。
log Po2=−14540 /(T+273 )+b
ただし、T:温度(℃)、酸素濃度(−)で 0.21 (大気圧)以下、b:6〜21の範囲から選択した定数
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