JP3012296B2 - リグノセルロース物質の液化溶液の製造法 - Google Patents

リグノセルロース物質の液化溶液の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は木材などリグノセルロース物質を直接ポリエ
チレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセ
リン、エチレングリコールなどに液化・溶解することに
より種々の樹脂原料として有用な木材液化溶液を効率よ
く製造する方法に関する。
周知の通り再生可能資源である森林資源のより一層有
効な利用方法の開発が現在強く望まれており、また一方
パルプ工業や木材工業など、木材を原料とする工業分野
では木質系廃棄物の有効利用方法の確立が急がれてい
る。更にはまた農産廃棄物である稲ワラ、モミガラなど
リグノセルロース物質の利用も充分でなく、その利用法
の開発が望まれており、本発明はこのようなリグノセル
ロースの有効利用法に関するものである。
〔従来の技術〕
木材を含むリグノセルロース物質の利用の一環とし
て、水酸基の一部に少なくとも1種の置換基を導入する
ことによって化学修飾した木材(化学修飾木材)など化
学修飾リグノセルロース物質を有機溶剤に液化・溶解
し、得られた木材液化・溶液を種々の樹脂原料として利
用することが提案されている(特公昭63−1992号)。し
かしこの場合には溶媒に用いた化合物は高分子反応性を
有するものとは言えず、成形物を調製したり、あるいは
樹脂化のためには液化・溶解に用いた溶媒を揮散させた
り、第3物質を更に溶解させて用いる必要があった。次
いで化学修飾木材を液化乃至溶解する溶剤として、フェ
ノール類が見出され、フェノール類−ホルムアルデヒド
系樹脂を得る技術が開発され、更にその液化・溶解の際
にフェノリシスを併起させ、液化、溶解条件を緩やかな
ものとすると共に、溶液特性の優れたフェノール類・ホ
ルムアルデヒド樹脂系の接着剤とする技術、繊維化する
技術、発泡体とする技術が開発され特許出願がなされて
いる(特公昭63−67564号、特開昭60−206883号、特公
平2−6851号、特開昭61−171744号等)。引き続き化学
修飾木材を多価アルコール類に液化・溶解させる技術が
見出され、液化・溶解により得られた樹脂液より、ポリ
ウレタン系、エポキシ系、その他の樹脂の成形物、発泡
体、或いは接着剤を製造する技術が開発され、特許出願
がなされている(特開昭61−171701号、特開昭61−1717
63号、特開昭61−215675〜9号等)。
他方化学修飾木材の化学修飾の度合いと液化・溶解性
に関する検討から化学修飾を全く行わない無処理木材な
どリグノセルロース物質を、フェノール類又はビスフェ
ノール類の存在下で200〜260℃の高温、加圧下で加熱す
ることにより容易に液化・溶解させ得ることが見出され
た(特開昭61−261358号)。引き続き同様に無処理の木
材などリグノセルロース物質を多価アルコール類、ケト
ン類に液化・溶解しうることも知られた(特開昭62−79
230号)。また木材などのリグノセルロース物質に塩素
化などハロゲンによる前処理を施し、次にフェノール化
合物などの液化・溶解剤を含む処理液中で200〜260℃の
高温で液化・溶解処理することによりリグノセルロース
物質液化溶液を効率よく、安価に製造しうることも提案
されている(特開昭63−17961号)。そしてこれら木材
を化学修飾することなしにフェノール類や多価アルコー
ル類、ポリエチレングリコールなどに高温で加熱し、液
化溶解して得た溶液から接着剤や発泡体を調製する技術
も見出されてきている(特開平1−45440号、特開平1
−158021号、特開平1−158022号)。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし乍ら従来の方法では無処理木材を液化・溶解す
るに際しては200〜260℃、好ましくは250〜260℃という
高温度での加熱処理を要し、且つ液化・溶解を耐圧装置
で行う必要があり、反応時の圧力も多くの場合に30〜50
気圧にも達するといった問題点を持つものとなってい
る。
本発明が解決しようとする課題は、常圧でのより低い
温度を用いて無処理木材をポリエチレングリコール、ポ
リプロピレングリコール、グリセリン、エチレングリコ
ールなど、多価アルコール類に液化・溶解させる方法を
提供することである。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は木材などリグノセルロース物質を酸触媒の存
在下、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコ
ール、グリセリン、エチレングリコールなど多価アルコ
ールの1種又は2種以上の混合物の存在下で100〜200℃
という比較的低い温度で常圧下加熱することにより木材
などリグノセルロース物質の溶液状物乃至ペースト状物
が得られるという新しい事実に基づいて完成されたもの
である。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリ
コール、グリセリン、エチレングリコール等多価アルコ
ールは水酸基を複数個含むという点で反応性の化合物で
あり、各種の樹脂化反応に用い得るものであると共に、
木材などリグノセルロース物質もその主成分に水酸基を
多量に有し、場合によっては樹脂化反応に組み込まれ得
るものであるということから、本発明で得られる木材な
どのリグノセルロース物質液状化物は種々の樹脂原料と
なりうる液化・溶解系であり、多くの利用、応用の可能
性を有しているものである。
〔発明の作用並びに構成〕
本発明に於いて出発原料として用いるリグノセルロー
ス物質は、木粉、木材繊維、木材チップや単板くずなど
の木材を粉砕したもの、及びワラやモミガラなどの植物
繊維素、GP、TMP(サーモメカニカルパルプ)、古紙等
の紙、パルプ類など各種のものが含まれ、従来この種分
野に於いて使用されてきたものがいずれも使用される。
この際の木材の種類としては各種のものが広く包含さ
れ、代表例としては例えば、マカンバ、シトカスプルー
ス、スギ、アカマツ、ポプラ、ラワン等が例示できる。
また粉砕物の粒度は充分に液化・溶解しうる程度で良
い。
本発明で用いる多価アルコール類は2価以上のアルコ
ールであり、例えばポリエチレングリコール、ポリプロ
ピレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、
1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど多く
のものが包含され、特にポリエチレングリコール、グリ
セリン、エチレングリコールが好ましい。
液化・溶解に際しては上記の多価アルコール類を各々
単独で用いても良く、またそれらの2種以上を適宜に混
合して用いることもできる。更に溶液の粘度を低めた
り、液化・溶解を助長する目的で液化・溶解時に最初か
ら或いはその途中で水或いは1価アルコール類、アセト
ン、酢酸エチルなどの有機溶媒の1種又は2種以上を添
加、共存させることも可能である。これら有機溶媒は通
常多価アルコール100重量部に対し1〜10、好ましくは
5〜6重量部程度添加される。この際の1価アルコール
としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−
ブチルアルコール等が例示できる。
本発明に於いては通常多価アルコール類100重量部に
対して木材などのリグノセルロース物質を10〜1000重量
部の割合で加えることが好ましい。10重量部以下でも液
状物を得ることは可能であるが、樹脂化を目的とする場
合などでは特に好適とは言い難い。またあまり多量加え
ると液化が不充分となる傾向がある。
尚本発明で言う液化・溶解反応とは、木材などリグノ
セルロースが多価アルコール類と反応して固相から液相
へと液化することを言う。本発明に於いてはこの反応は
特に酸触媒の存在化で常圧で行うものである。酸触媒と
しては、鉱酸、有機酸、更にはルイス酸でも良く、例え
ば硫酸、塩酸、トルエンスルホン酸、フェノールスルホ
ン酸、塩化アルミニウム、塩化亜鉛や三フッ化ホウ素な
どが好ましいものとして例示される。反応温度は100〜2
00℃、好ましくは100〜200℃未満、特に好ましくは150
〜160℃である。液化反応中適宜撹拌を行うことが好ま
しい。この撹拌により懸濁液にトルクを付加して、液化
・溶解の能率を高めることができる。液化・溶解は15分
〜数時間で達成させる。このようにして得られた木材な
どリグノセルロース物質の液状化物中の木材などリグノ
セルロース物質濃度はその溶液の利用目的によって異な
るが、重量比で最大約90%までの範囲である。
溶解のための装置としてはこの反応を実施できる装置
であれば良く、通常耐酸性の高い内壁と還流装置を備え
たものを使用することが望ましく、特に液化・溶解の初
期には反応系物質全体が良く混和し、その後期には充分
な撹拌が可能な装置や反応期間を通じてそのような混和
と撹拌が効率的に行われ得るような装置を用いると液化
・溶解を助長し、反応条件を緩和することができるので
望ましい。
本発明に於いてはまたリグノセルロース物質に予め前
処理を施してから、本反応に供することもできる。この
前処理により更に容易に液化・溶解せしめることができ
る。この前処理は特開昭63−17961号に開示のハロゲン
による前処理がいずれも有効に適用できる。
〔効果〕
本発明に依れば従来不可能と考えられていた無処理木
材などリグノセルロース物質の多価アルコール類への液
化溶液を100〜200℃、好ましくは200℃未満という温度
で常圧の反応で得ることができる。木材などがポリエチ
レングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリ
ン、エチレングリコールなどと酸触媒存在下で100〜200
℃、特に150〜160℃という中温で常圧下加熱されるだけ
で、液化・溶解し、木材の液化収率90数%を含む高い収
率で液状物が得られるということは実に驚くべき新事実
であり、本発明者により初めて見出されたものである。
またこのような常圧で比較的低温で行うために液化した
リグノセルロースが再縮合することも極めて少なくな
り、その収率も向上するという効果も併せて得られる。
このように本発明の方法は極めて容易に液化溶液を得る
ことができるものであり、工業化に適し極めて実用的で
あり、木材などのリグノセルロース原料の有効利用に極
めて有用である。
〔実 施 例〕
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
実施例1 乾燥マカンバ木粉(20〜80メッシュ)3gを予めその全
量に対し4重量%量の硫酸を均一に混合したポリエチレ
ングコール(PEG400)9gと共に、還流コンデンサーを備
えたガラスフラスコに投入し、150℃の油浴中に静置
し、60分間撹拌することなしに反応させた。反応終了後
油浴から引き上げ冷却し、1,4−ジオキサン150mlを加え
て希釈した。次いでガラス繊維濾紙(TOYO GA100)を
用いて上記の希釈反応液を濾過し、液化物と不溶解残渣
とを分離した。不溶解残渣は更に1,4−ジオキサンを用
いて数回洗浄し、予備乾燥の後105℃で4時間乾燥し、
秤量して不溶解残渣率を求めた。得られた不溶解残渣率
は10.6%であった。
実施例2〜17 実施例1に於いてその条件を第1表に示す所定の条件
として液化溶解を行った。結果を第1表に示す。
第1表から明らかな通り過度の液化・溶解時間は、不
溶解残渣を却って増大させ、一旦低分子化された木材成
分の再縮合が起こることを示唆している。
比較例1 実施例1に於いて触媒だけを加えず、その他は実施例
1と同様に処理した。結果を第1表に併記する。その結
果得られた木材の不溶解残渣率は97.5%であり、この温
度で触媒を加えないで処理する場合には木材の液化・溶
解は全く進まないことが判明した。
実施例18 乾燥マカンバ木粉(20〜80メッシュ)3gを予めその全
量に対し4重量%量の硫酸を均一に混合したポリエチレ
ングリコール(PEG400)とグリセリンとの2:1重量比の
混液9gと共に、還流コンデンサーを備えたガラスフラス
コに投入し、150℃の油浴中に静置し、60分間撹拌する
ことなしに反応させた。反応終了後油浴から引き上げ冷
却し、1,4−ジオキサン150mlを加えて希釈した。次いで
ガラス繊維濾紙(TOYO GA100)を用いて上記の希釈反
応液を濾過し、液化物と不溶解残渣とを分離した。不溶
解残渣は更に1,4−ジオキサンを用いて数回洗浄し、予
備乾燥の後105℃で4時間乾燥し、秤量して不溶解残渣
率を求めた。得られた不溶解残渣率は4.80%であった。
この結果を第2表に示す。この第2表から実施例1と比
較するとPEG400の一部をグリセリンに置き換えることに
より木材の液化・溶解をより大きく進めうることが知ら
れる。
実施例19〜34 実施例18に於いて第2表に示す所定の条件を採用して
同様に木材の液化・溶解を行った。結果を第2表に示
す。第1表と第2表の比較からグリセリンなど低分子量
多価アルコールを併用することにより反応時間が増大し
ても不溶解残渣量は一様に減少する結果が得られ、過度
の液化条件下での木材成分の縮合反応が抑制されること
が判る。
比較例2 触媒のみを加えずに実施例18と同様に木材の液化・溶
解をPEG400とグリセリンとの2:1重量比の混液に対して
行った。その結果を第2表に併記する。この結果得られ
た木材の不溶解残渣率は98.10%であり、このような混
液を用いても触媒を加えずに150℃で処理する場合には
木材の液化・溶解は全く進まないことが知られた。
実施例35 乾燥シトカスプルース(20〜80メッシュ)3gを予めそ
の全量に対し3重量%の硫酸を均一に混合したポリエチ
レングリコール(PEG400)9gと共に撹拌器と還流コンデ
ンサーとを備えたガラスフラスコに投入し、150℃の油
浴中に静置し、60分間撹拌下に反応させた。反応終了後
油浴から引き上げ冷却し、1,4−ジオキサン150mlを加え
て希釈した。次いでガラス繊維濾紙(TOYO GA100)を
用いて上記の希釈した反応液を濾過し、液化物と不溶解
残渣とを分離した。不溶解残渣は更に1,4−ジオキサン
を用いて数回洗浄し、予備乾燥の後105℃で4時間乾燥
し、秤量して不溶解残渣量を求めた。得られた不溶解残
渣率は8.56%であった。この結果を第3表に示す。この
結果を実施例1と比較すると、硫酸触媒量が少ないにも
拘らず不溶解残渣量が少なくなっており、木材の種類に
よる液化・溶解の起こり易さの違い及び撹拌による液化
・溶解反応の促進とを示すものとなっている。
実施例36〜47 実施例35に於いて第3表に示す所定の条件で液化・溶
解を行った。結果を第3表に示す。
フロントページの続き (72)発明者 栗本 康司 大阪府大阪市福島区大開4丁目1番186 号 レンゴー株式会社中央研究所内 (56)参考文献 特開 昭61−171701(JP,A) 特開 昭62−79230(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08H 5/04 C08B 1/00

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】リグノセルロース物質を酸触媒及び多価ア
    ルコールの存在下で100℃〜200℃で加熱することを特徴
    とするリグノセルロース物質の液化溶液の製造法。
  2. 【請求項2】上記多価アルコールが脂肪族多価アルコー
    ル、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオー
    ルの少なくとも1種であり、且つ加熱温度が100〜200℃
    未満である請求項(1)に記載の製造法。
  3. 【請求項3】酸触媒が有機酸、無機酸及びルイス酸の少
    なくとも1種である請求項(1)に記載の液化溶液の製
    造法。
  4. 【請求項4】多価アルコールがポリエチレングリコー
    ル、ポリプロピレングリコール、グリセリン及びエチレ
    ングリコールの少なくとも1種である請求項(1)に記
    載の液化溶液の製造法。
  5. 【請求項5】リグノセルロース物質をハロゲンで予め前
    処理を施す請求項(1)〜(3)のいずれかに記載の液
    化溶液の製造法。
  6. 【請求項6】多価アルコールが分子量の比較的大きい多
    価アルコールと分子量の比較的小さい多価アルコールの
    2種類以上を併用する混合溶媒である請求項(1)に記
    載の液化溶媒の製造法。
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