JP5256679B2 - リグニン誘導体及びその二次誘導体 - Google Patents
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すなわち、下記に記載の本発明(1)〜(6)により達成される。
(1) バイオマスを溶媒存在下におき、これらを高温高圧下で撹拌する処理を経ることにより、前記バイオマスを分解して得られるリグニン誘導体であって、前記リグニン誘導体はフェノール性水酸基とアルコール性水酸基をモル比として9:1から8:2の比率で有するものであることを特徴とするリグニン誘導体。
(2) 前記リグニン誘導体は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量が300〜2,000である第(1)項に記載のリグニン誘導体。
(3) 前記リグニン誘導体のOH当量は、100〜200である第(2)項に記載のリグニン誘導体。
(4) 前記バイオマスは、リグニンを含有する植物または植物由来の物質である第(1)項〜第(3)項のいずれか1項に記載のリグニン誘導体。
(5) 第(1)項〜第(4)項のいずれか1項に記載のリグニン誘導体に、反応性基を導入したリグニン二次誘導体。
(6) 前記反応性基は、エポキシ基である第(5)項に記載のリグニン二次誘導体。
リグニン誘導体の製造方法の具体例としては、まず、前記バイオマスを一定の大きさに調整し、次いで、これを、溶媒、任意に触媒、と共に、撹拌機及び加熱装置付の耐圧容器に入れて、加熱及び加圧をしながら、撹拌して、前記バイオマスの分解処理を行う。次いで、耐圧容器の内容物をろ過して、ろ液を除去し、水不溶分を水で洗浄、分離する。次いで、前記水不溶分を、リグニンが可溶な溶媒、例えば、アセトンなどに浸漬して、リグニン誘導体をアセトンに抽出して、前記アセトンを留去することにより、リグニン誘導体を得ることができる。
また、本発明においては、OH当量と分子量は独立に制御が可能であり、例えば、処理温度にかかわらず、短時間処理によりOH当量(主にフェノール性水酸基)が200前後と大きいものが得られ、長時間処理により100前後で飽和して小さなOH当量が得られる。
以下に、それぞれの反応性基の導入方法の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
例えば、エポキシ基を導入する場合、前記リグニン誘導体をエピクロロヒドリンに溶解し、減圧還流下、NaOHなどの塩基触媒を添加することで得られる。
また、ビニル基を導入する場合、ハロゲン化アリルまたはハロゲン化ビニルベンジル等のビニル基を含むハロゲン化合物と、前記リグニン誘導体を、溶剤に溶解し、加熱攪拌下でNaOHなどの塩基触媒を添加することで得られる。
エチニル基を導入する場合は、ハロゲン化プロパルギルまたはハロゲン化フェニルアセチレン等のエチニル基を含むハロゲン化合物と、前記リグニン誘導体を、溶剤に溶解し、加熱攪拌下でNaOHなどの塩基触媒を添加することで得られる。
さらに、マレイミド基を導入する場合、パラクロロニトロベンゼンを、前記リグニン誘導体のフェノール性OH基に反応させ、エーテル結合を介して結合したポリニトロ化リグニンを得る。次いで、ポリニトロ化リグニンを還元することで、ポリアミノ化リグニンに変換し、無水マレイン酸と反応させることで、マレイミド基を持つリグニン二次誘導体が得られる。
シアネート基を導入する場合、前記リグニン誘導体と、ハロゲン化シアネートを、溶剤に溶解し、加熱攪拌下でNaOHなどの塩基触媒を添加することで得られる。
また、イソシアネート基を導入する場合、リグニンを無水マレイン酸で処理することで、リグニンのOH基をカルボキシル基に変換し、ジフェニルリン酸アジド存在下加熱することで得られる。
このような用途として具体的には、自動車、電気部品、電子部品、半導体に用いられる成形材料、封止材料、積層板、FRP用樹脂等が例示される。
実際の使用においては、前記リグニン誘導体は、単独でフェノール樹脂の用途に使用することや、他のフェノール樹脂と混合して使用することも可能である。
さらには、前記反応性基として、ビニル基を導入した場合、ラジカル、カチオン及びアニオン等の硬化性の樹脂として使用することができ、さらには、前記反応性基として、前記エチニル基、マレイミド基、シアネート基、イソシアネート基などを導入した場合、これらの反応性基を有する公知の樹脂として用いることができ、これらの樹脂は、前記各種用途に使用することができる。
孟宗竹粉(60メッシュアンダー)15gと純水80gを、300mlオートクレーブに導入し、内容物を300rpmで攪拌しながら、8.0MPa、300℃で120分間処理して、孟宗竹を分解した。次いで、分解物をろ過し、純水で洗浄することで、水不溶部10.0gを分離した。この水不溶部をアセトン200mlに一晩浸漬し、ろ過することでアセトン可溶部を回収した。次いで、前記アセトン可溶部より、アセトンを留去後、乾燥することで、リグニン誘導体2.7gを得た。ここで得られたものについて、1H−NMRにより測定した結果から、7から8ppmに芳香環、3.5から4ppm付近にメトキシ基、0.5から3ppmにかけてアルキル基のピークが見られ、リグニン誘導体であることを確認した。
また、上記で得られたリグニン誘導体中のフェノール性OH基とアルコール性OH基のモル比(以下P/A比)は以下の方法で決定した。上記で得られたリグニン誘導体1.0gを、無水酢酸/ピリジン(1/3容量比)混合溶液4.0gを用いて、前記リグニン誘導体をアセチル化した。この反応溶液より、未反応の無水酢酸およびピリジンを留去し、乾燥して得られたアセチル化したリグニン誘導体を用いて、1H−NMRにより測定した。アセチル基由来のプロトンの積分比(フェノール性OH基に結合したアセチル基由来:2.2〜2.6ppm、アルコール性OH基に結合したアセチル基由来:1.6〜2.2ppm)から、モル比を決定したところ、前記P/A比は9.0:1.0であった。
また、上記で得られたリグニン誘導体の分子量は、テトラヒドロフランを溶離液として、ポリスチレン換算のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したところ、数平均分子量(Mn)=560、分子量分布(Mw/Mn)=1.18であった。
実施例1において、処理温度300℃を150℃に変更した他は、実施例1と同様に行い、リグニン誘導体3.5gを得た。ここで得られたリグニン誘導体を、実施例1と同様にして評価のところ、OH当量=122、P/A比=8.8:1.2、Mn=1800、Mw/Mn=1.82であった。
実施例1において、処理温度300℃を200℃に、処理圧力を8.0MPaから1.5MPaに変更した他は、実施例1と同様に行い、リグニン誘導体3.2gを得た。ここで得られたリグニン誘導体を、実施例1と同様にして評価のところ、OH当量=124、P/A比=8.9:1.1、Mn=1000、Mw/Mn=2.02であった。
実施例1において、処理温度300℃を400℃に、処理圧力を8.0MPaから25MPaに変更した他は、実施例1と同様に行い、リニン誘導体2.1gを得た。ここで得られたリグニン誘導体を、実施例1と同様にして評価のところ、OH当量=131、P/A比=9.0:1.0、Mn=280、Mw/Mn=1.80であった。
実施例1において、処理時間120分を30分に変更した他は、実施例1と同様に行い、リグニン誘導体3.2gを得た。ここで得られたリグニン誘導体を、実施例1と同様にして評価のところ、OH当量=202、P/A比=8.9:1.1、Mn=620、Mw/Mn=1.35であった。
実施例1において、処理時間120分を60分に変更した他は、実施例1と同様に行い、リグニン誘導体3.6gを得た。ここで得られたリグニン誘導体を、実施例1と同様にして評価のところ、OH当量=171、P/A比=8.5:1.5、Mn=570、Mw/Mn=1.24であった。
実施例1において、溶媒の純水をフェノールに変更した他は、実施例1と同様に行い、リグニン誘導体5.2gを得た。ここで得られたリグニン誘導体を、実施例1と同様にして評価のところ、OH当量=102、P/A比=9.0:1.0、Mn=680、Mw/Mn=1.53であった。
攪拌装置、冷却器、滴下ロートの付いた100mlの三つ口フラスコに、実施例1と同様にして得たリグニン誘導体1.2gと、エピクロロヒドリン100.0gを導入し、100mmHgの圧力下で減圧還流しながら、20%濃度のNaOH水溶液2.0gを30分かけて滴下した。その後、90分間減圧還流状態を保持して反応混合物を得た。反応混合物は、不溶部を濾過して取り除き、エピクロロヒドリン可溶部を単離した。このエピクロロヒドリン可溶部からエピクロロヒドリンを留去し、乾燥することで、リグニン二次誘導体(エポキシ化リグニン)0.8gを得た。
上記で得られたリグニン二次誘導体の構造を1H−NMRで確認したところ、リグニン誘導体のピークに加えて2.7、2.9、3.3、3.5、3.9ppmにエポキシ基由来のピークが観測された。
リグニン二次誘導体の分子量は、ポリスチレン換算のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したところ、Mn=600、Mw/Mn=1.67であった。
リグニン二次誘導体のエポキシ基導入率は、1H−NMRで測定のところ、30%であった。
攪拌装置、冷却器、滴下ロートの付いた100mlの三つ口フラスコに、実施例1と同様にして得たリグニン誘導体1.2gとN,N’−ジメチルホルムアミド100mlを導入し、20%濃度のNaOH水溶液2.0gを添加し、混合した。この混合溶液を60℃に加熱、攪拌しながら、臭化アリル1.3gを30分間かけて滴下し、さらに60℃で90分間攪拌を続け、反応させた。反応混合物をメチルイソブチルケトン(MIBK)に溶解させた後、MIBK溶液を水で洗浄後、溶剤を留去乾燥することで、リグニン二次誘導体(アリル化リグニン)0.8gを得た。得られたリグニン二次誘導体を実施例8と同様にして評価のところ、Mn=610、官能基導入率は45%であった。
非特許文献1(K. Mikame, M. Funaoka, Polym. J., 38, 585−591, 2006J)を参考に、リグノフェノール誘導体を以下の方法で合成した。孟宗竹粉10gを、500ml容ビーカーにとり、p−クレゾールのアセトン溶液(リグニンC9単位当たり3モル倍量のフェノール誘導体を含む)を加え、ガラス棒で撹拌し、24時間静置させた。その後、アセトンを完全に留去して、p−クレゾール収着木粉を得た。この竹粉に対して、72wt%硫酸100mlを加え、30℃で、1時間激しく撹拌した後、混合物を、大過剰の水に投入、不溶解区分を回収、脱酸し、乾燥して、リグノフェノール誘導体を得た。このリグノフェノール誘導体を、実施例1と同様にして評価のところ、Mn=3600、OH当量=143g/eq、P/A比=5.8:4.2であった。
非特許文献2(Kadota, K. Hasegawa, M. Funaoka Journal of Network Polymer. Japan, 27, 118−125, 2006)を参考に、比較例1で得たリグノフェノール誘導体を以下の方法でエポキシ化した。攪拌装置、冷却器、滴下ロートの付いた100mlの三つ口フラスコに、比較例1で得たリグノフェノール誘導体1.4gとエピクロロヒドリン100.0gを導入し、100mmHgに減圧還流しながら、20%NaOH水溶液1.0gを30分かけて滴下した。その後、90分間減圧還流状態を保持した。反応混合物から不溶部を濾過して除き、エピクロロヒドリン可溶部からエピクロロヒドリンを留去、乾燥することで、エポキシ化リグノフェノール1.3gを得た。得られたリグニン二次誘導体を実施例8と同様にして評価のところ、Mn=2400、エポキシ基導入率は19%であった。
Claims (6)
- バイオマスを溶媒存在下におき、これらを高温高圧下で撹拌する処理を経ることにより、前記バイオマスを分解して得られるリグニン誘導体であって、前記リグニン誘導体はフェノール性水酸基とアルコール性水酸基をモル比として9:1から8:2の比率で有するものであることを特徴とするリグニン誘導体。
- 前記リグニン誘導体は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量が300〜2,000である請求項1に記載のリグニン誘導体。
- 前記リグニン誘導体のOH当量は、100〜200である請求項2に記載のリグニン誘導体。
- 前記バイオマスは、リグニンを含有する植物または植物由来の物質である請求項1〜3のいずれか1項に記載のリグニン誘導体。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のリグニン誘導体に、反応性基を導入したリグニン二次誘導体。
- 前記反応性基は、エポキシ基である請求項5に記載のリグニン二次誘導体。
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