JP6388310B2 - セメント添加剤 - Google Patents
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Description
しかしながら、両親媒性のリグニン誘導体がその用途に充分に適しているといえる程の性能を発揮するものとはなっていない。そのため、親水性が要求される用途の一つであるセメント添加剤用途においては、セメント減水性等の性能を高め、当該用途において際立った性能を発揮できるようにする工夫の余地があった。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明のリグニン誘導体は、リグニン部位とポリアルキレングリコール部位とを必須とする。これらの部位以外にその他の構造部位を有していてもよい。
これらのリグニンの中でもアルカリリグニン、酢酸リグニン、オルガノソルブルリグニン、爆砕リグニンは、蒸解に硫黄含有化合物を用いないことから、硫黄臭の発生がない点で有利である。
これらの中でも、木質系のものが分散性能の点で好ましく、針葉樹や広葉樹のものがさらに好ましく、特に、針葉樹のものが好ましい。
リグニン中の硫黄元素の含有率は、後述する実施例に記載の測定機器、測定条件で元素分析によって測定することができる。
上記アルキレンオキサイドの平均付加モル数とは、ポリアルキレングリコール部位を構成する1つのポリアルキレングリコール鎖において付加しているアルキレンオキサイドのモル数の平均値を意味する。
上記アルキレンオキサイドの平均付加モル数が10以下であれば、セメント添加剤の減水性能が充分なものとはならず、セメントの適正な分散性を得るために必要なセメント添加剤の純分添加量が多くなる。該添加量は、セメント添加剤の減水性能の指標となり、少ないほど減水性能が優れると評価される。多量に使用されるセメントに対して、該添加量がわずかでも少なくなれば大きな効果が認められることになる。
またセメント分散性の保持性能については、上記アルキレンオキサイドの平均付加モル数が11以上であることが好ましく、より好ましくは13以上、更に好ましくは15以上、特に好ましくは20以上、一層好ましくは25以上である。保持性能の観点から上限としては、上記アルキレンオキサイドの平均付加モル数は100以下であることが好ましく、より好ましくは75以下、更に好ましくは60以下、特に好ましくは50以下、一層好ましくは40以下、より一層好ましくは30以下である。
なお、ポリアルキレングリコール部位は、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物に由来する構造となっていればよく、そのような構造を構成するための原料が特定されるものではないが、上記化合物から構成されることが好ましい。その場合、これらの化合物は、化合物中のアルキレンオキサイドの平均付加モル数が10を超えるものである。
上記モル比率が上記範囲よりも小さいと、セメント添加剤としての性能を充分に発揮できず、該用途に適さないものとなる。上記範囲よりも大きいと、セメントの適正な分散性を得るために必要なセメント添加剤の純分添加量が多くなる。
上記ポリアルキレングリコール部位とリグニン部位とのモル比率は、好ましくは、1.0〜13であり、より好ましくは1.5〜12であり、更に好ましくは2〜11であり、特に好ましくは2.5〜10であり、最も好ましくは3〜9である。
上記ポリアルキレングリコール部位とリグニン部位とのモル比率は、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
本発明のリグニン誘導体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は1.0〜3.5である。
上記分子量分布が上記範囲よりも小さいと、分子量分布曲線がシャープなものとなり過ぎ、セメント添加剤としての製造が困難となる。上記範囲よりも大きいと、セメントの適正な分散性を得るために必要なセメント添加剤の純分添加量が多くなる。
本発明のリグニン誘導体の分子量分布は、好ましくは1.0〜2.0であり、より好ましくは1.0〜1.8であり、更に好ましくは1.0〜1.6である。リグニン誘導体の数平均分子量、分子量分布は、GPCを用い、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明のリグニン誘導体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、リグニンとポリアルキレングリコール含有化合物とを反応させる製造方法が挙げられる。
このような、リグニン部位とポリアルキレングリコール部位とを必須とするリグニン誘導体の製造方法であって、上記製造方法は、リグニンとポリアルキレングリコール含有化合物とを反応させる工程を含むリグニン誘導体の製造方法もまた本発明の1つである。
上記ポリアルキレングリコール含有化合物の反応基としては、リグニンの水酸基と反応することができる限り制限されないが、例えば、グリシジル基、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、アミノ基等が挙げられ、反応性の観点から、好ましくはグリシジル基、水酸基である。
上記(1)の反応生成物には、副生成物として、二官能のグリシジルエーテル系化合物の有する2つのグリシジル基と2分子のアルコキシド化合物とが反応し生成するエポキシ基を有しない化合物や未反応の二官能のグリシジルエーテル系化合物が含まれる。この反応生成物とリグニンとを反応させてリグニン誘導体を合成した場合には、未反応の二官能のグリシジルエーテル系化合物が架橋剤として作用し、リグニン誘導体の分子量分布が大きくなるおそれがある。上記(2)の反応においては、このような副反応が起きず、完全単官能型エポキシポリアルキレングリコール化合物を合成することができ、分子量分布の小さいリグニン誘導体を合成することができる。
上記エピハロヒドリンとしては、上述の化合物を用いることができ、好ましくは収率向上の観点から、エピクロロヒドリンである。
さらに、溶媒としては、一般的な合成に使用される有機溶媒を用いることができ、好ましくはアセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、テトラヒドロフランである。
上記(2)の反応の好ましい条件として、反応温度は、50℃〜150℃、より好ましくは50℃〜80℃、反応時間は、60分〜600分、より好ましくは180分〜360分である。
例えば、リグニンをアルカリ水溶液に溶解し、アルカリ性条件下で遊離したリグニン中の水酸基(リグニン−OH)をグリシジルエーテル系化合物中のエポキシ基と反応させることにより、リグニン誘導体を調製することができる。リグノセルロース系バイオマスをアルカリ蒸解した後に得られる。
黒液を、上記リグニンのアルカリ水溶液として用いることもできる。
以下、本発明のリグニン誘導体は、両親媒性リグニン誘導体ともいう。
本発明のリグニン誘導体をセメント添加剤として使用する場合は、水溶液の形態で使用してもよいし、又は、乾燥させたものを粉体化して使用してもよい。乾燥させる場合、凍結乾燥機等の従来使用されている乾燥方法により完全に乾燥させてもよい。また、粉体化した本発明のセメント添加剤を予めセメント粉末やドライモルタルのような水を含まないセメント組成物に配合して、左官、床仕上げ、グラウトなどに用いるプレミックス製品として使用してもよいし、セメント組成物の混練時に配合してもよい。
上記ポリカルボン酸を構成する不飽和カルボン酸系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸系単量体;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸等のジカルボン酸系単量体、これらのジカルボン酸無水物及びこれらの塩等が挙げられる。
上記(ポリ)アルキレングリコール鎖としては、特に限定されないが、上述のアルキレンオキサイドから構成される高分子鎖((ポリ)アルキレンオキサイド)であることが好ましい。
上記ポリカルボン酸系減水剤の特性については、本発明のセメント添加剤と併用して分散性を向上し、減水性能を発揮できるものであれば特に限定されるものではない。
上記ポリカルボン酸系減水剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい
本発明のセメント添加剤はまた、その他のセメント添加剤として、特開2013−53010号公報に記載されているようなその他のセメント添加剤を併用することができる。
また、本発明のセメント添加剤とポリカルボン酸系減水剤又はオキシカルボン酸系化合物と他のセメント添加剤とを用いる場合、本発明のセメント添加剤の必須成分であるリグニンとポリカルボン酸系減水剤又はオキシカルボン酸系化合物と他のセメント添加剤との質量割合は、1〜98/1〜98/1〜98であることが好ましい。より好ましくは、5〜90/5〜90/5〜90であり、更に好ましくは、10〜90/5〜85/5〜85であり、特に好ましくは、20〜80/10〜70/10〜70である。
本発明のセメント添加剤とオキシアルキレン系消泡剤とを併用する場合、オキシアルキレン系消泡剤の配合割合は、本発明のセメント添加剤の必須成分であるリグニン誘導体の固形分の質量に対して0.01〜20質量%であることが好ましい。
また、本発明のセメント添加剤とオキシアルキレン系消泡剤とAE剤との3成分を併用する場合、オキシアルキレン系消泡剤の割合は、上記と同様であり、AE剤の割合は、本発明のセメント添加剤の必須成分であるリグニン誘導体の固形分の質量に対して0.001〜2質量%であることが好ましい。
本発明のセメント添加剤と分離低減剤とを併用する場合、本発明のセメント添加剤の必須成分であるリグニンと分離低減剤との質量割合は、10/90〜99.99/0.01であることが好ましい。より好ましくは50/50〜99.9/0.1である。本発明のセメント添加剤と分離低減剤とを含むセメント組成物は、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材として好適に用いることができる。
装置:Waters社製、Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー社製
・TSKguard column α
・TSKgel α―3000
・TSKgel α―4000
・TSKgel α―5000
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters社製、Waters 2414)
溶離液:100mMホウ酸水溶液14304gに50mM水酸化ナトリウム水溶液96gとアセトニトリル3600gを混合した溶媒
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール[ピークトップ分子量(Mp)300000、200000、107000、50000、27700、11840、6450、1470、1010、400]
較正曲線:上記ポリエチレングリコールのMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
測定時間:60分
試料液注入量:100μL(試料濃度0.5wt%の溶離液調製溶液)
リグニンの硫黄元素含有率は、以下の測定方法により測定した。
測定機器:vario EL cube(エレメンタール社製、CHNSO全自動元素分析計)
測定条件:
測定モード CHNS
燃焼管設定温度1150℃、還元管設定温度850℃
燃焼管充填剤:酸化タングステン
還元管充填剤:還元銅
測定ガスフローメーター:MFC−TCD 約230ml/min
ヘリウムガスフローメーター:Fiow He 230ml/min
試料量:約2mg、スズボート包み込み
検出器:TCD
以下の条件により蒸解を行い、リグニンを含む黒液を得た。
木材:スギ(Cryptomeria japonica)材
蒸解温度:170℃、蒸解時間:2h
活性アルカリ(水酸化ナトリウム)添加率(活性アルカリ(酸化ナトリウム)換算):19.5%(木材に対する割合)
AQ(アントラキノン)添加率:0.1%(木材に対する割合)
液比:5L/kg
パルプ収率:44%
パルプ中の残留リグニン含有率:2.8%
上記蒸解により得られた強アルカリ性水溶液である黒液に対して、約30%の硫酸水溶液を添加し、撹拌しながらpHを2.0に調製し、沈殿を生じせしめた。遠心分離により 沈殿物を回収し、蒸留水を用いて洗浄した。沈殿は、濾過、もしくは遠心分離で回収し、風乾後、減圧乾燥した。乾燥物を乳鉢で軽く粉砕し、精製リグニンを得た。精製リグニンの数平均分子量(Mn)は12600、重量平均分子量(Mw)は16000であった。精製リグニンの中の硫黄元素の含有率は、精製リグニン100質量%に対して0.2質量%であった。
温度計、攪拌機、還流管を備えたガラス製反応容器に、テトラヒドロフランを50.0部、濃度60%の水素化ナトリウム2.0部を仕込んだ。
エチレンオキサイドの平均付加モル数が25であるメトキシポリエチレングリコール(メトキシPEG(25モル)ともいう。)50.0部にテトラヒドロフラン50.0部を加え、充分に均一化した後、氷冷した反応容器に添加した。その後10分間、攪拌した。
次に、反応容器を氷冷しながら、エピクロロヒドリン16.4部を添加し、反応容器を70℃に加温した。加温開始から5時間で加温をやめ、反応終了とした。反応容器を氷冷し、1.5部の水を加え、未反応の水素化ナトリウムを失活させた。
得られた反応物を濃縮するため、エバポレーターにより、テトラヒドロフラン、未反応のエピクロロヒドリンを留去した。
得られた反応物の濃縮液を、ジエチルエーテル400.0部にゆっくりと滴下し、生じた沈殿物を減圧ろ過し、室温で乾燥することで、実施例1〜4及び比較例5のリグニン誘導体の製造に用いる単官能型エポキシPEGを得た。
温度計、攪拌機、還流管を備えたガラス製反応容器に、テトラヒドロフランを10.0部、濃度60%の水素化ナトリウム1.0部を仕込んだ。
エチレンオキサイドの平均付加モル数が50であるメトキシポリエチレングリコール(メトキシPEG(50モル)ともいう。)50.0部にテトラヒドロフラン100.0部を加え、充分に均一化した後、氷冷した反応容器に添加した。その後10分間、攪拌した。
次に、反応容器を氷冷しながら、エピクロロヒドリン7.0部を添加し、反応容器を70℃に加温した。加温開始から5時間で加温をやめ、反応終了とした。反応容器を氷冷し、0.8部の水を加え、未反応の水素化ナトリウムを失活させた。
得られた反応物を濃縮するため、エバポレーターにより、テトラヒドロフラン、未反応のエピクロロヒドリンを留去した。
得られた反応物の濃縮液を、ジエチルエーテル400.0部にゆっくりと滴下し、生じた沈殿物を減圧ろ過し、室温で乾燥することで、実施例5〜10のリグニン誘導体の製造に用いる単官能型エポキシPEGを得た。
温度計、攪拌機、還流管を備えたガラス製反応容器に、テトラヒドロフランを60.0部、濃度60%の水素化ナトリウム5.1部を仕込んだ。
エチレンオキサイドの平均付加モル数が10であるメトキシポリエチレングリコール(メトキシPEG(10モル)ともいう。)60.0部にテトラヒドロフラン60.0部を加え、充分に均一化した後、氷冷した反応容器に添加した。その後10分間、攪拌した。
次に、反応容器を氷冷しながら、エピクロロヒドリン38.4部を添加し、反応容器を70℃に加温した。加温開始から5時間で加温をやめ、反応終了とした。反応容器を氷冷し、3.9部の水を加え、未反応の水素化ナトリウムを失活させた。
得られた反応物を濃縮するため、エバポレーターにより、テトラヒドロフラン、未反応のエピクロロヒドリンを留去した。
得られた反応物の濃縮液を、ジエチルエーテル400.0部にゆっくりと滴下し、生じた沈殿物を減圧ろ過し、室温で乾燥することで、比較例1〜4のリグニン誘導体の製造に用いる単官能型エポキシPEGを得た。
温度計、攪拌機、還流管を備えたガラス製反応容器に、テトラヒドロフランを10.0部、濃度60%の水素化ナトリウム1.0部を仕込んだ。
エチレンオキサイドの平均付加モル数が90であるメトキシポリエチレングリコール(メトキシPEG(90モル))90.0部にテトラヒドロフラン180.0部を加え、充分に均一化した後、氷冷した反応容器に添加した。その後10分間、攪拌した。
次に、反応容器を氷冷しながら、エピクロロヒドリン7.0部を添加し、反応容器を70℃に加温した。加温開始から5時間で加温をやめ、反応終了とした。反応容器を氷冷し、0.8部の水を加え、未反応の水素化ナトリウムを失活させた。
得られた反応液は遠心分離を行い、生成した塩を取り除いた。
塩を取り除いた反応液を、ジエチルエーテル720.0部にゆっくりと滴下し、生じた沈殿物を減圧ろ過し、室温で乾燥することで、実施例11、12のリグニン誘導体の製造に用いる単官能型エポキシPEGを得た。
温度計、攪拌機、還流管を備えたガラス製反応容器に、精製リグニン32.7部と製造例1で得られた単官能型エポキシPEG4.9部を、20%水酸化ナトリウム溶液151.2部に溶解させた。容器を70℃に加温し、3時間反応させ、実施例1の両親媒性リグニン誘導体を得た。
得られたサンプルのGPC測定結果から、実施例1の両親媒性リグニン誘導体の単官能型エポキシPEGの反応率は、99.0%であり、サンプル固形分中の、実施例1の両親媒性リグニン誘導体の純分濃度は50.8%であった。
温度計、攪拌機、還流管を備えたガラス製反応容器に、精製リグニン18.6部(固形分92.6%、リグニン純分88.0%)を2M水酸化ナトリウム水溶液30.3部(NaOH 2.4部)及び蒸留水75.7部に溶解させ、製造例4で得られた単官能型エポキシPEG(以下、EPEGともいう)18.8部を添加した。容器を70℃に加温し、3時間反応させ、両親媒性リグニン11を得た。得られたサンプルのGPC測定結果から、実施例11の両親媒性リグニンの単官能型エポキシPEGの反応率は85%であり、サンプル固形分中の、両親媒性リグニンの純分濃度は82%であった。さらに、両親媒性リグニン11におけるリグニン由来の構造部位とEPEG由来の構造部位との質量比は、49:51であった。リグニン由来の構造部位とEPEG由来の構造部位との質量比は後述する算出方法により求めた。
温度計、攪拌機、還流管を備えたガラス製反応容器に、精製リグニン13.5部(固形分92.6%、リグニン純分88.0%)を2M水酸化ナトリウム水溶液22.0部(NaOH 1.8部)及び蒸留水55.0部に溶解させ、製造例4で得られた単官能型エポキシPEG(以下、EPEGともいう)23.2部を添加した。容器を70℃に加温し、3時間反応させ、両親媒性リグニン12を得た。得られたサンプルのGPC測定結果から、実施例12の両親媒性リグニンの単官能型エポキシPEGの反応率は90%であり、サンプル固形分中の、両親媒性リグニンの純分濃度は86%であった。さらに、両親媒性リグニン12におけるリグニン由来の構造部位とEPEG由来の構造部位との質量比は、35:65であった。リグニン由来の構造部位とEPEG由来の構造部位との質量比は後述する算出方法により求めた。
(グリシジルエーテル系化合物の調製)
エチレンオキサイドの平均付加モル数が13のポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、デナコールEX−841)24部をアセトン20部に加え、攪拌しながら50℃に加熱した。次に、ナトリウムエトキシド1.36部をエタノール12部に溶解し、これを50℃に加熱した。50℃に加熱されたグリシジルエーテル系化合物アセトン溶液に、ナトリウムエトキシド溶液を20分かけて滴下し、さらに同温度で10分間攪拌した。溶液を酢酸で中和した後、ロータリエバポレーターで溶媒を除去し、デシケーター内で真空乾燥を24時間行い、エトキシにより単官能化されたグリシジルエーテル系化合物(エトキシ−(2−ヒドロキシ)−プロポキシ−ポリエチレングリコールグリシジルエーテル)を得た。
上記の18.0部のアルカリリグニン1N水酸化ナトリウム水溶液に、上記の方法で調製した単官能のグリシジルエーテル系化合物を33.3部加えた。溶液を70℃に加熱し、3時間攪拌して反応させた。反応を、酢酸を加えてpHを4にすることで終了させ、比較例6のリグニン誘導体を得た。
リグニン誘導体におけるポリアルキレングリコール部位とリグニン部位とのモル比率は、下記式(4)に基づき、原料となる精製リグニンとポリアルキレングリコール含有化合物の合計100質量%に対するリグニンとポリアルキレングリコール(以下、PAGともいう。)含有化合物の仕込み比率(質量%)(以下、仕込み組成比ともいう。)と反応率(%)からリグニンとPAGの仕上がりの組成比(質量%)を求め、この組成比(質量%)をモル比に換算することにより求めることができる。なお、精製リグニンの反応率は100%である。
PAG反応率は、下記式(5)に基づき、(a)〜(c)の数値を用いて算出することができる。図1にGPC RIチャートの例を示す。図中、(1)と(2)との面積の差が、反応したPAGの量に相当する。
(a)各種原料の仕込み重量
(b)原料リグニンのGPC RIチャートにおける、10〜32分までの面積100%に対する10〜25分における面積比率
(c)両親媒性リグニン誘導体のGPC RIチャートにおける、10〜32分までの面積100%に対する10〜25分における面積比率
なお、図1のGPC RIチャートにおいては、面積が0のところを省略し、溶出時間15分から示している。
なお、PAGの反応率の測定方法としては、GPCのRI面積比より算出する方法の他に、紫外可視分光光度計により、リグニン中のフェノール性水酸基の数を、反応前後で測定しその測定値より算出する方法等があるが、本願では、上記GPCによる方法により測定した。
以下のようにしてモルタルを調製し、初期のモルタル空気量(以下、単に空気量ともいう。)及び0打フロー値を測定した。結果を表3及び4に示す。また、表3及び4の結果の一部をグラフ化したものを図2に示す。
なお、モルタル試験では消泡剤としてMA−404(BASFポゾリス社製)を有姿で25質量%対各成分固形分となる量を、各成分に添加した。
モルタルフロー試験は、温度が20℃±1℃、相対湿度が60%±10%の環境下で行った。
モルタル配合は、C/S/W=500/1350/250(g)とした。
ただし、
C:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
S:セメント強さ試験用標準砂(セメント協会製)
W:実施例1〜12、比較例1〜6のサンプル、及び、消泡剤のイオン交換水溶液
Wとして、表3及び4に示した添加量の各成分を量り採り、消泡剤MA−404を有姿で各成分の固形分に対して25質量%加え、更にイオン交換水を加えて所定量とし、充分に均一溶解させた。表3及び4において、各成分の添加量は、セメント質量に対する各成分の固形分の質量%で表されている。
ホバート型モルタルミキサー(型番N−50;ホバート社製)にステンレス製ビーター(撹拌羽根)を取り付け、C、Wを投入し、1速で30秒間混練した。更に1速で混練しながら、Sを30秒かけて投入した。S投入終了後、2速で30秒間混練した後、ミキサーを停止し、15秒間モルタルの掻き落としを行い、その後、75秒間静置した。75秒間静置後、更に60秒間2速で混練を行い、モルタルを調製した。
モルタルを混練容器からポリエチレン製1L容器に移し、スパチュラで20回撹拌した後、直ちにフロー測定板(30cm×30cm)に置かれたミニスランプコーン(マイクロコンクリートスランプコーン、JIS−A−1173に記載) (上端内径50mm、下端内径100mm、高さ150mm)フローコーン(JIS−R−5201(1997年改正)に記載)に半量詰めて15回つき棒で突き、更にモルタルをフローコーンのすりきりいっぱいまで詰めて15回つき棒で突き、最後に不足分を補い、ミニスランプコーンの表面をならした。その後、直ちにフローコーンを垂直に引き上げ、広がったモルタルの直径(最も長い部分の直径(長径)及び前記長径に対して90度をなす部分の直径)を2箇所測定し、その平均値を0打フロー値とした。
なお、0打フロー値は、数値が大きいほど、分散性能が優れている。
モルタル評価より得られたデータをもとに、純分換算添加量とフロー値とをプロットし、適正フロー値である220mmになるのに必要な純分換算添加量を算出し、結果を表5に示した。実施例1〜12のリグニン誘導体を用いたセメント添加剤は、比較例1〜6のリグニン誘導体を用いたセメント添加剤に比べて、より少量の使用で高いセメント分散効果を発揮することが確認された。
実施例2で得られたセメント添加剤と比較例7として市販のリグニンスルホン酸(ポゾリスNo.8、BASFポゾリス社製)を用いて、所定のスランプフロー値を得るための添加剤添加量と混練直後、混練20分後、40分後、60分後のスランプフロー値及び空気量を評価し、結果を表6及び図3に示した。実施例2のリグニン誘導体を用いたセメント添加剤は、比較例7のセメント添加剤に比べて、高い分散保持性能を発揮することが確認された。
<コンクリート組成物における配合>
単位セメント量:366.0kg/m3
単位水量:174kg/m3(添加剤、消泡剤等の混和剤を含む。)
単位細骨材量:790.0Kg/m3
単位粗骨材量:968kg/m3
水/セメント比(W/C):47.5%
骨材量比(s/a):45.0%
セメント:太平洋セメント製、普通ポルトランドセメント
細骨材:大井川産川砂、君津産山砂
粗骨材:青梅産砕石
上記コンクリート原料、配合により、練り混ぜ量が30Lとなるようにそれぞれの材料を計量し、パン型ミキサーを使用して下記に記載の方法によって材料の混練を実施した。
まず細骨材、粗骨材及びセメントを10秒間混練した後、セメント混和剤を含む所定量の水道水を加えて90秒間混練し、コンクリート組成物を得た。
重合体と消泡剤とを用いて調製した。所定量のリグニン誘導体水溶液を量り採り、消泡剤には市販のオキシアルキレン系消泡剤(BASFポゾリス社製、マイクロエア404)を用い、空気量が3〜6%(体積%)となるように調整した。
上記スランプフロー値の測定は、JIS−A−1101(2005年改正)の方法により行った。
上記モルタル空気量(初期空気量)の測定は、JIS−A−1128(2005年改正)の方法により行った。モルタルを500mLのガラス製メスシリンダーに約200mL詰め、径8mmの丸棒で突き、手で軽く振動させて粗い気泡を抜いた。更にモルタルを約200mL加えて同様に気泡を抜いた後、モルタルの体積と質量を測り、各材料の密度から空気量を計算した。
実施例2及び4で得られたセメント添加剤と比較例7として市販のリグニンスルホン酸(ポゾリスNo.8、BASFポゾリス社製)について、乾燥収縮低減性能を評価した。上記コンクリート試験の方法により得られたコンクリート組成物について、JIS−A−1132の方法により供試体を作成し、JIS−A−1129(2009年改正)の方法により一定期間保存した後の供試体の長さの変化を測定した。上記供試体を20±2℃、湿度60±5%で保存し、保存開始時の供試体の長さ100%に対する8週間保存後の供試体の長さの変化率を表7に示した。
実施例2、4を用いた場合、市販のリグニンスルホン酸(BASFポゾリス社製 ポゾリスNo.8)である比較例7を用いた場合より、長さの変化率が低く、乾燥収縮低減性が確認された。
Claims (4)
- リグニン部位とポリアルキレングリコール部位とを必須とするリグニン誘導体を含むセメント添加剤であって、
該リグニン誘導体は、ポリアルキレングリコール部位を構成するアルキレンオキサイドの平均付加モル数が10を超え、ポリアルキレングリコール部位とリグニン部位とのモル比率が0.1〜20であり、かつ、数平均分子量が6000〜20万、分子量分布が1.0〜3.5である
ことを特徴とするセメント添加剤。 - 前記ポリアルキレングリコール部位を構成するアルキレンオキサイドの平均付加モル数は、30以上であることを特徴とする請求項1に記載のセメント添加剤。
- 前記ポリアルキレングリコール部位とリグニン部位とのモル比率は、1.0〜13であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセメント添加剤。
- 前記リグニン誘導体の分子量分布は、1.0〜2.0であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセメント添加剤。
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