JP5769930B2 - 分散剤 - Google Patents

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Description

本発明は、リグニン誘導体を含有する分散剤及びその用途に関する。
リグニンは、樹木中に存在する天然高分子物質であり、木材の約30%を占めており、クラフトパルプ製造における廃液(クラフトパルプ廃液)、亜硫酸パルプ製造における廃液(亜硫酸パルプ廃液)などに多く含まれている。リグニンは、近年の環境負荷低減の観点から、バイオマス資源のひとつとして注目される傾向にある。
クラフトパルプ廃液中に含まれているクラフトリグニン、亜硫酸パルプ廃液中に含まれるリグニンスルホン酸は異なった物性を有しており、様々な用途に使用されている。
特に、クラフトリグニンを亜硫酸塩とホルムアルデヒドによりスルホメチル化したものや、リグニンスルホン酸又はリグニンスルホン酸の塩を部分的に脱スルホン化したものや限外濾過処理によって精製したものは、リグニン系分散剤として、染料、セメント、無機及び有機顔料、石膏、石炭−水スラリー、農薬、窯業など広範囲な工業分野で多用されている。
しかしながら、従来のリグニン系分散剤は、例えば染料用分散剤として使用した場合には分散性が充分でないために、染色布にリグニンが残留し染色布を着色汚染してしまうという欠点を有している。また、ポリエステル繊維等の染色のような高温染色用に、高温での分散安定性が求められていた。
また、リグニン系分散剤を土木・建築の分野に大量に使用されているセメント組成物の分散剤として使用した場合には、現在普及している高性能AE減水剤ほどの減水率を発揮することができないという欠点を有している。
さらに、掘削泥水に使用されるリグニン系分散剤(リグニン系添加材(添加剤))は、高温での分散性が乏しいなどの欠点を有している。
これらの欠点を解決するために、特許文献1(特開2002−146028号公報)には、スルホン基量及びカルボキシル基量、ならびに分子量が制御されたリグニン変性物の染料分散剤としての用途が開示されている。また、特許文献2(特開平01−145358号公報)には、リグニンスルホン酸をアクリル系やビニル系のモノマーで変性した、分子量分布が所定範囲の誘導体の、セメント分散剤としての用途が開示されている。さらに、特許文献3(米国特許第4,322,301号明細書)には、油田掘削用泥水分散安定剤として、アクリル酸とリグニンスルホン酸塩とのグラフト共重合体が開示されている。
特開2002−146028号公報 特開平01−145358号公報 米国特許第4,322,301号明細書
しかしながら、前述した従来のリグニン系分散剤の性能は不十分であった。
そこで、本発明は、近年の環境負荷低減の観点から、バイオマス資源としてのリグニンの有効利用を図ることを目的とする。具体的には、セメント、染料、油田掘削用泥水など用途を問わず各種の被分散体の分散性を向上させ得るリグニン誘導体を提供することを目的とする。
本発明者らはこれらの目的を達成するために検討を重ねた結果、リグニンスルホン酸系化合物と水溶性単量体との反応物であるリグニン誘導体が、高い分散性を示すことを見出し、上記目的が達成されることを見出した。
すなわち本発明は下記の発明を提供するものである。
〔1〕リグニンスルホン酸系化合物と水溶性単量体との反応物であるリグニン誘導体を含有する分散剤。
〔2〕前記リグニン誘導体がアニオン性官能基を有する上記〔1〕に記載の分散剤。
〔3〕前記リグニン誘導体がポリアルキレンオキシド鎖を有する上記〔1〕又は〔2〕に記載の分散剤。
〔4〕セメント分散剤である上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の分散剤。
〔5〕油田掘削用泥水分散安定剤である上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の分散剤。
〔6〕染料分散剤である上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の分散剤。
〔7〕リグニンスルホン酸系化合物に水溶性単量体を反応させる工程を含む、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の分散剤の製造方法。
本発明の分散剤は、従来のリグニン由来の分散剤に比べて、高い分散性能を発揮することができる。本発明の分散剤は、セメント分散剤として用いることにより分散性能を発揮して、高い流動性を維持させることができ、また、リグニン系分散剤の欠点である高い空気連行性を抑えることができる。また、石油掘削用泥水用途としては、従来よりも高い分散性が発揮され、中でも熱特性に優れるので、高温でも高い分散性を発揮することができる。
図1は、実施例1で得られたリグニン誘導体のUVで測定したGPCチャートである。 図2は、比較例1で得られたポリカルボン酸系分散剤のUVで測定したGPCチャートである。
本発明の分散剤は、リグニン誘導体を含有する。リグニン誘導体は、リグニンスルホン酸系化合物との反応物である。
本発明において、リグニンスルホン酸系化合物とは、リグニンのヒドロキシフェニルプロパン構造の側鎖α位の炭素が開裂してスルホン基が導入された骨格を有する化合物である。上記骨格部分の構造を式(1)に示す。
Figure 0005769930
リグニンスルホン酸系化合物は、上記一般式(1)で示される化合物の修飾物であってもよい。修飾方法は特に限定されないが、加水分解、アルキル化、アルコキシル化、スルホン化、硫酸化、アルコキシ硫酸化、スルホメチル化、アミノメチル化、脱スルホン化など化学的に変性修飾する方法;リグニンスルホン酸系化合物を限外濾過により分子量分画する方法が例示される。このうち、化学的な変性修飾の方法としては、加水分解、アルコキシル化、脱スルホン化およびアルキル化から選ばれる1または2以上の反応が好ましい。
リグニンスルホン酸系化合物は、塩の形態を取りうる。塩としては例えば、一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩ならびに有機アンモニウム塩が挙げられ、このうち、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、カルシウム・ナトリウム混合塩などが好ましい。
リグニンスルホン酸系化合物の製造方法及び由来は特に限定されず、天然物や合成品などいずれをも用いることができる。リグニンスルホン酸系化合物は亜硫酸パルプの廃液の主成分のひとつであり、亜硫酸パルプ廃液由来のものを用いることもできる。
リグニンスルホン酸系化合物(変性リグニンスルホン酸系化合物)は、市販品に豊富に含まれているので、本発明においてはこれを用いてもよい。市販品としては、サンエキス252(日本製紙ケミカル社製)、サンエキスC(日本製紙ケミカル社製)、パールレックスNP(日本製紙ケミカル社製)などが例示される。
本発明において、リグニン誘導体は、上述のとおり、リグニンスルホン酸系化合物と水溶性単量体との反応物である。リグニンスルホン酸系化合物は、水溶性単量体由来の構成単位と反応する官能基をその構成単位として有している。リグニンスルホン酸系化合物由来の構成単位としては、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、スルホン基、芳香環、エーテル結合、アルキル鎖などが挙げられる。水溶性単量体由来の構成単位とは、後述する水溶性単量体の化学構造の一部である化学構造を意味する。
通常、リグニンスルホン酸系化合物は亜硫酸パルプ廃液変性物中に存在しており、このリグニンスルホン酸系化合物には水溶性単量体由来の構成単位と反応し得る構成単位が少なくとも1種類以上含まれている。
本発明において、リグニン誘導体は、その分子中にアニオン性官能基及び/又はポリアルキレンオキシド鎖を有していてもよい。これにより得られる分散剤の分散性が向上する点から望ましい。
アニオン性官能基とは、水中でアニオンの形態をとる官能基を意味し、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホニル基、リン酸基等が例示される。このうち、カルボキシル基、スルホニル基が好ましい。アニオン性官能基は、リグニン誘導体のうち、水溶性単量体由来の構成単位に含まれていてもよいし、リグニンスルホン酸系化合物を構成する部分に含まれていてもよいし、両者に含まれていてもよい。
なお、分子中のアニオン性官能基は、NMR、MS等の機器分析により、定量・定性的に観測することができる。
ポリアルキレンオキシド鎖とは、アルキレンオキシドの繰り返し構造を有する鎖を意味し、2種類以上のアルキレンオキシドが存在する場合は、これらのアルキレンオキシドがブロック体及び/又はランダム体になっていてもよい。アルキレンオキシドとしては、炭素原子数2〜18のものが例示され、具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどが例示され、エチレンオキシド、プロピレンオキシドが好ましい。ポリアルキレンオキシド鎖は、リグニン誘導体のうち、リグニンスルホン酸系化合物に由来の構成部分に含まれていてもよいし、水溶性単量体に由来する構成部分に含まれていてもよいし、両者に含まれていてもよく、後者に含まれることが好ましい。
なお、分子中のポリアルキレンオキシド鎖は、NMR、MS等の機器分析により、定量・定性的に観測することができる。
リグニン誘導体の製造は、リグニンスルホン酸系化合物および水溶性単量体を反応させる方法、すなわち、リグニンスルホン酸系化合物と水溶性単量体由来の構成単位とが化学的に結合するような方法を適宜採用すればよい。通常は、リグニンスルホン酸系化合物に水溶性単量体を重合させる方法が例示される。言い換えれば、リグニンスルホン酸系化合物中の官能基(例えば、フェノール性ヒドロキシル基やアルコール性ヒドロキシル基、チオール基など)と、水溶性単量体中の官能基とを結合させるような方法、あるいはリグニンスルホン酸系化合物のラジカル発生点と、ラジカル重合性を有する水溶性単量体を反応させる方法を適宜採用すればよい。
なお、製造の際、リグニンスルホン酸系化合物は、粉末乾燥処理などが行われたものを用いることもできる。粉末状であることにより取り扱いが容易となる。
本発明において、水溶性単量体とは、水溶性を示す化合物を意味する。水溶性単量体は、亜硫酸パルプ廃液、すなわち亜硫酸パルプ廃液の主成分と反応しうる化合物であればよい。すなわち、上記したリグニンスルホン酸系化合物に含まれる官能基(例えば、フェノール性ヒドロキシル基やアルコール性ヒドロキシル基、チオール基など)と化学反応により結合しうる化合物であればよい。化学反応の形式も特に限定されず、ラジカル重合、イオン重合、配位重合、縮合重合、加水分解を伴う反応、脱水を伴う反応、酸化を伴う反応、還元を伴う反応、中和を伴う反応などが例示される。水溶性単量体とは、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン基、ニトロキシル基、カルボニル基、リン酸基、アミノ基、エポキシ基などのイオン性官能基、その他極性基を少なくとも1種類以上有する化合物が挙げられる。これらの水溶性単量体は単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
水溶性単量体としては下記〔A〕〜〔D〕に列挙したものを使用することができる。これらの水溶性単量体は、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
以下の表記において、「(メタ)アクリル酸」及び「(メタ)アクリレート」は、アクリル酸(アクリレート)又はメタクリル酸(メタアクリレート)を意味するものとする。また、「(メタ)アクリル」はアクリル又はメタアクリルを、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイル又はメタアクリロイルを、「(メタ)アクリロキシ」はアクリロキシ又はメタアクリロキシを、「(メタ)アリル」はアリル又はメタアリルを、それぞれ意味するものとする。
以下の表記において、「(ポリ)アルキレン」はアルキレン及びポリアルキレンを意味するものとする。また、「(ポリ)エチレン」はエチレン及びポリエチレンを、「(ポリ)プロピレン」はプロピレン及びポリプロピレンを、「(ポリ)ブチレン」はブチレン及びポリブチレンを、それぞれ意味するものとする。
〔A〕不飽和カルボン酸又はその誘導体:
〔A−1〕不飽和モノカルボン酸類、及び、その一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩若しくは有機アンモニウム塩類。本明細書における不飽和カルボン酸類の好ましい例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが例示され、アクリル酸又はメタクリル酸が挙げられる;
〔A−2〕不飽和ジカルボン酸類、及びその無水物、一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩若しくは有機アンモニウム塩類。本明細書における不飽和ジカルボン酸類の好ましい例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸などが挙げられる;
〔A−3〕不飽和ジカルボン酸類(上記〔A−2〕参照)と、炭素原子数1〜30のアルコールとの、ハーフエステル、ジエステル類;
〔A−4〕不飽和ジカルボン酸類(上記〔A−2〕参照)と、炭素原子数1〜30のアミンとの、ハーフアミド及びジアミド類;
〔A−5〕炭素原子数1〜30のアルコールや炭素原子数1〜30のアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと、不飽和ジカルボン酸類(上記〔A−2〕参照)とのハーフエステル及びジエステル類;
〔A−6〕不飽和ジカルボン酸類(上記〔A−2〕参照)と、炭素原子数2〜18のグリコールとの、又はこれらのグリコールを2〜500モル付加させたポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類。例えば、トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類など;
〔A−7〕不飽和モノカルボン酸類(上記〔A−1〕参照)と炭素原子数1〜30のアルコールとのエステル類:例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリル酸、メチルクロトネート、エチルクロトネート、プロピルクロトネートなど;
〔A−8〕炭素原子数1〜30のアルコールに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールと、不飽和モノカルボン酸類(上記〔A−1〕参照)とのエステル類;
〔A−9〕炭素原子数1〜30のアルコールや炭素原子数1〜30のアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと、不飽和モノカルボン酸類(上記〔A−1〕参照)とのハーフエステル、ジエステル類:具体例を以下に示す。
・(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル((ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート);
・トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;
・ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;
〔A−10〕マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコール又はこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類。
〔B〕不飽和スルホン酸類、ならびに、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アンモニウム塩。本明細書において不飽和スルホン酸類の好ましい例としては、ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−アリルオキシ−1−プロパンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
〔C〕上記〔A〕及び〔B〕以外の不飽和結合を有する化合物:
〔C−1〕(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの不飽和アミド類;
〔C−2〕(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリルなどの不飽和シアン類;
〔C−3〕酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの不飽和エステル類;
〔C−4〕(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジンなどの不飽和アミン類;
〔C−5〕(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテルなどのアリル類;
〔C−6〕N−ビニルコハクイミド、N−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニル化合物;
〔C−7〕ビニルエーテル類;例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなど;
〔C−8〕エチレンイミンやプロピレンイミンなどのアルキレンイミン類。
〔D〕アルキレンオキシド類
〔D−1〕アルキレンオキシド:例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなど;
〔D−2〕不飽和アルコールへの、炭素原子数2〜18のグリコール又はこれらのグリコールを2〜500モル付加させた付加物。本明細書において不飽和アルコールの好ましい例としては、アリルアルコール、メタリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オールなどが挙げられる。アルキレンオキシド付加化合物類としては、(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、アルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルなどが例示される。
水溶性単量体としては、アニオン性官能基及び/又はアルキレンオキシド鎖を有するものが、アニオン性官能基及びアルキレンオキシド鎖を両方有するものがより好ましい。これにより、得られる分散剤の分散性、中でも高温下での分散性がより向上され得る。
上記〔A〕〜〔D〕に列挙されるラジカル重合性を有する水溶性単量体のうち、上記〔A〕及び〔D〕が好ましい。上記〔A〕に列挙されるラジカル重合性を有する水溶性単量体としては〔A−1〕、〔A−2〕又は〔A−9〕に列挙されるラジカル重合性を有する水溶性単量体が好ましい。
〔A−9〕の化合物としては、下記一般式(2)で表される化合物がより好ましい。これにより、得られる分散剤の分散性を向上させることができる。
Figure 0005769930
(一般式(2)中、R1は水素原子又は炭素原子数1〜8のアルキル基を、R2Oはオキシアルキレン基を、lは1〜500の整数を、R3は水素原子又は炭素原子数1〜30の炭化水素基をそれぞれ示す。)
前記一般式(2)中、R1は水素原子又は炭素原子数1〜8のアルキル基を示し、水素原子又は炭素原子数1〜2のアルキル基を示すことが好ましい。
2Oはオキシアルキレン基(アルキレングリコール)を示す。R2Oとしてのオキシアルキレン基は、炭素原子数が2〜18のオキシアルキレン基を示すことが好ましく、オキシアルキレン基はオキシエチレン基(エチレングリコール)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール)を示すことがより好ましい。R2Oの繰り返しが2以上の場合(lが2以上の整数を示す場合)、各R2Oは同一であってもよいし、相互に異なる炭素原子数のオキシアルキレン基が混在していてもよい。各R2Oとして相互に異なる炭素原子数のオキシアルキレン基が混在している場合に各オキシレン基の付加の形態は特に限定されず、ブロック状の付加であってもよく、ランダム状の付加であってもよい。
lはオキシアルキレン基(R2O)の平均付加モル数を示し、1〜500の整数を示し、好ましくは1〜100、より好ましくは1〜80、さらに好ましくは1〜50を示す。本明細書において平均付加モル数とは単量体1モルに付加しているアルキレングリコール単位のモル数の平均値を意味する。
3は水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を示し、水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基を示すことが好ましく、水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を示すことがさらに好ましく、水素原子又はメチル基を示すことが最も好ましい。R3としてのアルキル基の炭素原子数は上記範囲内であると、得られる分散剤の分散性を高く維持することができる。
本発明において、一般式(2)で表される化合物としては、具体的には、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(アルキレンオキシド部分がプロピレンオキシドとエチレンオキシドのブロック又はランダム付加となっているもの)、ヒドロキシエチルモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル類などがある。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、親水性、疎水性のバランスから、このうち、アルコキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましく、メトキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートがより好ましい。
アルコキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレートにおける平均付加モル数(一般式(2)中のl)は、1〜500であるが、通常は1〜100、好ましくは1〜80、さらに好ましくは1〜50である。
一般式(2)で示される化合物の製造方法は特に限定されない。例えば、(ポリ)アルキレンオキサイドを(メタ)アクリル酸とエステル化させて製造することが可能である。
〔D−2〕のラジカル重合性を有する水溶性単量体としては、ポリアルキレングリコールモノアリルエーテル系単量体が好ましく、一般式(3)で表される化合物がより好ましい。
Figure 0005769930
(一般式(3)中、R4は水素原子又は炭素原子数1〜8のアルキル基を、R5Oはオキシアルキレン基を、mは1〜500の整数を、nは0〜5の整数を、R6は水素原子又は炭素原子数1〜8の炭化水素基をそれぞれ示す。)
前記一般式(3)中、R4は、水素原子又は炭素原子数1〜8のアルキル基を示し、好ましくは水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を示し、さらに好ましくは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を示す。具体的には一般式(3)のうちH2C=C(R4)(CH2−の部分がアリル基、メタリル基、3−メチル−3−ブテン−1−オールの残基等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
5Oはオキシアルキレン基を示す。R5Oとしてのオキシアルキレン基は、炭素原子数が2〜18のオキシアルキレン基を示すことが好ましく、オキシアルキレン基はオキシエチレン基(エチレングリコール)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール)であることが好ましい。R5Oの繰り返しが2以上の場合(mが2以上の整数を示す場合)、各R5Oは同一であってもよいし相互に異なる炭素原子数のオキシアルキレン基が混在していてもよい。各R5Oとして相互に異なる炭素原子数のオキシアルキレン基が混在している場合に各オキシレン基の付加の形態は特に限定されず、ブロック状の付加であってもよく、ランダム状の付加であってもよい。
mはオキシアルキレン基(R5O)の平均付加モル数であり、1〜500の整数を示し、好ましくは1〜100、より好ましくは2〜80、最も好ましくは2〜50を示す。nはアルキル基の繰り返し数であり、0〜5の整数を示し、好ましくは0〜4、より好ましくは0〜3、もっとも好ましくは0〜2を示す。
6は水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を示し、水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基を示すことが好ましく、水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を示すことがさらに好ましく、水素原子又はメチル基を示すことが最も好ましい。R6としてのアルキル基の炭素原子数が大きいと、得られる分散剤の分散性が低下するおそれがある。
一般式(3)で示される化合物としては、具体的には、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アリルエーテル、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アリルエーテル、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール(メタ)アリルエーテルなどの(ポリ)アルキレングリコールモノアリルエーテルが挙げられ、単独で用いても2種以上を併用してもよい。親水性、疎水性のバランスの観点から、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルを用いることが好ましい。
(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルの平均付加モル数(一般式(2)中のm)が1〜100、好ましくは2〜80、最も好ましくは2〜50である。
本発明において、一般式(3)で示される化合物の製造方法は特に限定されない。例えば、アリルアルコール、メタリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等の不飽和アルコールに、アルキレンオキサイドを付加(例えば1〜500モル)して製造することが可能である。
一方〔A−1〕及び〔A−2〕の水溶性単量体としては、一般式(4)で表される化合物がより好ましい。
Figure 0005769930
(一般式(4)中、R7、R8、R9はそれぞれ独立して、水素原子、メチル基又は−(CH2nCOOM (nは、0〜2の整数を示す。)を、Mは水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基をそれぞれ示す。)
前記一般式(4)中、R7、R8、R9は水素原子、メチル基又は−(CH2nCOOMを示す。R7、R8、R9は共通していてもよいし、異なっていてもよい。ここでnは、0〜2の整数を示す。R7、R8、R9は水素原子又はメチル基を示すことが好ましく、R7及びR9が両方水素であり、R8はメチル基であることがより好ましい。また、一般式(4)中のMは水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を示し、水素原子を示すことが好ましい。
一般式(4)で示される化合物として、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等のカルボン酸類、又はこれらの塩、例えば、一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩を挙げることができる。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中で、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及び/又はその塩が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸及び/又はこれらの塩がより好ましく、アクリル酸及び/又はメタクリル酸がさらにより好ましい。
本発明における水溶性単量体としては、一般式(2)で表される化合物、一般式(3)で表される化合物、一般式(4)で表される化合物が好ましく、一般式(2)で表される化合物及び/又は一般式(3)で表される化合物と、一般式(4)で表される化合物とを用いることがさらに好ましく、一般式(2)で表される化合物又は一般式(3)で表される化合物と、一般式(4)で表される化合物とを用いることがさらにより好ましい。これにより、得られる分散剤の分散性を向上させることができる。
また、リグニン誘導体の製造の際の重合反応においては、必要に応じて水溶性単量体のほかに該単量体以外の化合物を1種又は2種以上併せて用いてもよい。水溶性単量体以外の化合物としては、下記の〔E−1〕〜〔E−8〕を用いることもできる。
〔E−1〕スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等のビニル芳香族類;
〔E−2〕1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;
〔E−3〕ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等のジエン類;
〔E−4〕ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;
〔E−5〕トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;
〔E−6〕メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル等のビニルエーテル又はアリルエーテル類;
〔E−7〕ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン−ビス−(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−メタクリレート)等のシロキサン誘導体;
〔E−8〕アリルフェノールなどの芳香族アリル類。
このうち、〔E−8〕アリルフェノールなどの芳香族アリル類を用いることが好ましく、アリルフェノールがさらに好ましく、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの3及び3’位をアリル置換した化合物がさらにより好ましい。
本発明において、一般式(2)で示される化合物及び/又は一般式(3)で表される化合物、一般式(4)で表される化合物、ならびに化合物(E)を用いる場合の、それぞれの含有割合は、水溶性単量体を100重量%とした場合、一般式(2)で表される化合物及び/又は一般式(3)で表される化合物:一般式(4)で表される化合物:一般式(2)で表される化合物及び/又は一般式(3)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物との合計=0.05〜99.0重量%:0〜99.0重量%:0〜50重量%となる比率であることが好ましい。
なお、リグニン誘導体の化学構造を、一般式などで一律に特定することは困難である。その理由は、リグニン誘導体を構成するリグニンスルホン酸系化合物の骨格であるリグニンが非常に複雑な分子構造をしているためである。
リグニン誘導体の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、好ましくは1,000〜500,000、より好ましくは20,000〜300,000、さらに好ましくは5,000〜150,000である。なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)にてポリエチレングリコール換算する公知の方法にて測定できる。
GPCの測定条件は特に限定されるものではないが、以下の条件を例示することができる。
測定装置;東ソー製
使用カラム;Shodex Column OH−pak SB−806HQ、SB−804HQ、SB−802.5HQ
溶離液;0.05mM硝酸ナトリウム/アセトニトリル 8/2(v/v)
標準物質;ポリエチレングリコール(東ソー製、GLサイエンス製)
検出器;示差屈折計(東ソー製)
本発明において、リグニン誘導体を構成するリグニンスルホン酸系化合物と水溶性単量体との比率は特には限定されないが、リグニンスルホン酸系化合物/水溶性単量体(重量%)が、好ましくは99〜0.1/1.0〜99.9(重量%)、より好ましくは、90〜0.5/10.0〜99.5(重量%)、さらに好ましくは1.0〜70/30.0〜99.0(重量%)である。水溶性単量体の比率が1.0重量%未満であると、得られるリグニン誘導体は、元来リグニン骨格が有する性能、すなわち分散性を向上させる効果を十分発現しないことがある。一方、水溶性単量体の比率が99.9重量%を超えると、高分子量物となり、分散性能よりも凝集性を示すため、分散性能が劣ることがある。
リグニン誘導体を製造(合成)する方法としては、リグニンスルホン酸系化合物と水溶性単量体とを反応させる方法であればよい。例えば、リグニンスルホン酸系化合物が有する官能基(例えば、フェノール性ヒドロキシル基やアルコール性ヒドロキシル基、チオール基など)と、水溶性単量体とを化学反応させる方法が挙げられる。反応の形式としては、ラジカル重合、イオン重合などが例示される。具体的に例えば、リグニンスルホン酸系化合物にラジカル開始剤を作用させるなどして水素ラジカルを引き抜き、ラジカルを発生させ、そこに少なくとも1種類の水溶性単量体をラジカル重合させることによって得ることができる。また、反応生成物をさらに、ホルムアルデヒドや多官能性の架橋剤を用いて架橋してこれをリグニン誘導体として用いることも可能である。
反応温度は、用いる溶媒によって適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、通常0℃〜200℃、好ましくは45℃〜120℃である。また、水溶性単量体として、低沸点の化合物(例えば、エチレンオキシドやエチレンイミンなど)を用いる場合には、反応速度を向上させるために、オートクレーブを用いて加圧下で反応させることが好ましい。
亜硫酸パルプ廃液に水溶性単量体を反応させる際には、必要に応じて溶液重合及び塊状重合のいずれの重合形式もとりうる。溶液重合の場合には、溶媒を用いることができる。
使用される溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの脂肪族炭化水素;酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いても2種以上を併用(例えば、水−アルコール混合溶剤など)してもよい。
これらのうち、水及び低級アルコールからなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましく、その中でも水を用いることがより好ましい。これにより、原料単量体及び得られる共重合体の溶解性の面及び脱溶媒工程を省略できる。なお、水溶性単量体として、例えば、前記した無水マレイン酸などを用いる場合、不活性溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;など)を用いると、酸無水物の開裂を避けることができるので好ましい。
リグニン誘導体の合成は、リグニンスルホン酸系化合物、水溶性単量体や、必要に応じて用いられる成分(前記〔E〕の単量体ならびに重合開始剤)を、各々反応容器に連続滴下して行われうる。また、重合開始剤を用いる場合には重合開始剤以外の原料の混合物と重合開始剤とを各々反応容器に連続滴下してもよい。また、溶液重合により反応を行う場合には、反応容器に溶媒を仕込み、重合開始剤以外の原料と溶媒の混合物と、重合開始剤溶液を各々反応容器に連続滴下してもよいし、重合開始剤以外の原料の一部又は全部を反応容器に仕込み、重合開始剤を連続滴下してもよい。
リグニン誘導体の合成に使用され得る重合開始剤は特には限定されないが、溶媒として水を用いる場合には下記の重合開始剤を用いることができる。
過酸化水素;
過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;
t−ブチルハイドロパーオキサイドなどの水溶性有機過酸化物;
2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩などのアゾアミジン化合物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリルなどの環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリルなどのアゾニトリル化合物などの水溶性アゾ系開始剤;
また、溶媒として、低級アルコール、芳香族単炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル類又はケトン類を用いる際、或いは、重合形式が塊状重合の場合には、下記のような重合開始剤を用いることができる。
ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシドなどのパーオキシド;
t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシドなどのハイドロパーオキシド;
アゾビスイソブチロニトリルなどの芳香族アゾ化合物。
これらの重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、重合開始剤の使用量は、水溶性単量体の種類や量などに応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、使用される全水溶性単量体に対して、好ましくは0.01モル%〜50モル%、より好ましくは1モル%〜20モル%である。
リグニン誘導体の合成の際、上記重合開始剤以外の促進剤(還元剤)を併用することができる。促進剤(還元剤)としては、以下のものが例示される。
亜硫酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属亜硫酸塩;
メタ二亜硫酸塩、次亜リン酸ナトリウム;
硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、モール塩などのFe塩、及びそれらの水和物(硫酸鉄(II)・7水和物など);
ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L−アスコルビン酸又はその塩、L−アスコルビン酸エステル、エリソルビン酸又はその塩などの促進剤(還元剤)。
重合開始剤と促進剤(還元剤)の好ましい組み合わせとしては、過酸化水素とFe(II)塩との組み合わせ、又は、過酸化水素と有機系還元剤との組み合わせが例示される。有機系還元剤としては、L−アスコルビン酸又はその塩、L−アスコルビン酸エステル、エリソルビン酸又はその塩、エリソルビン酸エステルなどが好適である。なお、促進剤(還元剤)の使用量は、特に限定されるものではないが、使用する重合開始剤に対して、好ましくは0.1モル%〜500モル%、より好ましくは0.1モル%〜200モル%、さらに好ましくは0.1モル%〜100モル%である。
また、リグニン誘導体の合成の際には、上記の重合開始剤や促進剤(還元剤)以外の促進剤として、アミン化合物などを単独で使用、又は併用することもできる。なお、促進剤の使用量は、特に限定されるものではない。
リグニン誘導体の合成における反応温度は、用いる溶媒や、重合開始剤によって適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。通常0℃〜150℃の範囲で行われ、より好ましくは30℃〜120℃、さらに好ましくは50℃〜100℃である。
また、リグニン誘導体の合成においては、必要に応じて連鎖移動剤を用いて分子量を調整することができる。使用され得る連鎖移動剤としては、親水性連鎖移動剤、疎水性連鎖移動剤、これら以外の連鎖移動剤が例示され、これらの1種類を単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
親水性連鎖移動剤:
メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、及び2−メルカプトエタンスルホン酸などのチオール系化合物;
イソプロピルアルコールなどの2級アルコール;
亜リン酸、次亜リン酸及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウムなど)、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸及びその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムなど)の低級酸化物及びその塩など。
疎水性連鎖移動剤:
ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチルなどの炭素原子数3以上の炭化水素基を有するチオール系連鎖移動剤。
上記以外の連鎖移動剤として、(メタ)アリルスルホン酸及びその塩類などの連鎖移動性の高い単量体を用いることもできる。これらを用いることにより、分子量を調整することができる。連鎖移動剤としては、親水性連鎖移動剤が好ましく、チオール系化合物がより好ましく、3−メルカプトプロピオン酸がさらにより好ましい。
連鎖移動剤の使用量は、水溶性単量体の種類や量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、使用する全水溶性単量体に対して、好ましくは0.1モル%〜50モル%、より好ましくは1モル%〜20モル%である。
前記リグニン誘導体の合成においては、反応を安定に進行させることが好ましい。そのために、溶液重合により反応させる場合には、使用する溶媒の25℃における溶存酸素濃度を、好ましくは5ppm、より好ましくは0.01ppm〜4ppm、さらに好ましくは0.01ppm〜2ppm、最も好ましくは0.01ppm〜1ppmの範囲に調節し得る。なお、溶存酸素濃度の調節は、重合反応槽で行ってもよく、予め溶存酸素濃度を調節したものを用いてもよい。
反応中のpHを適当な数値となるように調整することは、制限されない。水溶性単量体として、エステル系単量体(構造中にエステルを含む単量体、例えば一般式(2)で表される化合物など)を使用する場合の亜硫酸パルプ廃液変性物のpHは、該変性物中のエステル結合を不安定化させるおそれを回避するため、8以上に調整されることが好ましい。
pH調整は、pHを上げたい場合は、例えば、一価金属又は二価金属の水酸化物や炭酸塩などの無機塩;アンモニア;有機アミン;などの塩基性物質を用いることができる。また、pHを下げたい場合は、リン酸、硫酸、硝酸、アルキルリン酸、アルキル硫酸、アルキルスルホン酸、(アルキル)ベンゼンスルホン酸などの酸性物質を用いることができる。これらのpH調整物質は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。中でも、これらのpH調整物質のうち、pH緩衝作用がある物質が好適であり、例えば、リン酸塩(りん酸水素2ナトリウムなど)、クエン酸塩などが好適である。
このようにして得られた反応物は、そのままでも分散剤の主成分として使用できるが、必要に応じてpHを調整して使用することができる。pH調整に用いるものに限定はないが、pHを上げたい場合は、一価金属又は二価金属の水酸化物や炭酸塩などの無機塩;アンモニア;有機アミン;などの塩基性物質を用いることができる。また、pHを下げたい場合は、リン酸、硫酸、硝酸、アルキルリン酸、アルキル硫酸、アルキルスルホン酸、(アルキル)ベンゼンスルホン酸などの酸性物質を用いることができる。これらのpH調整物質は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。中でも、これらのpH調整物質のうち、pH緩衝作用がある物質が好適であり、例えば、リン酸塩(りん酸水素2ナトリウムなど)、クエン酸塩などがより好適である。
溶液重合による反応の場合には、反応終了後、必要に応じて、濃度調整を行うこともできる。
本発明において、リグニンスルホン酸系化合物との反応物であるリグニン誘導体を有することで優れた分散性を発現し、種々の用途に使用することができるので、分散剤の有効成分として有用である。分散剤の用途としては、キレート剤、洗浄剤、凝集剤、増粘剤、コーティング剤、塗料、接着剤、吸水性樹脂などが挙げられる。
本発明の分散剤を使用して分散させる被分散体は、特に限定されるものではないが、種々の有機物質や無機物質が挙げられる。
有機物質の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
フォストイエロー、ジスアゾイエロー、ジスアゾオレンジ、ナフトールレッド、銅フタロシアニン系顔料、リンモリブデンタングステン酸塩、タンニン酸塩、カタノール、タモールレーキ、イソインドリノンエローグリーニッシュ、イソインドリニンエトーレディシュ、キナクリドン、ジオキサジンバイオレット、ペリノンオレンジ、ペリレンバーミリオン、ペリレンスカレーット、ペリレンレッド、ペリレンマルーンなどの有機顔料;
ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、フッ素樹脂などの合成樹脂;
ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛・ステアリン酸カルシウム複合体、ステアリン酸鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛などの金属石鹸など。
有機物質の平均粒子径は、一般的には100μm以下、好ましくは0.1μm〜50μmである。これらの有機物質は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
無機物質の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
カオリン、ケイ酸アルミニウム、クレー、タルク、マイカ、ケイ酸カルシウム、セリサイト、ベントナイトなどのケイ酸塩;
炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸鉛などの炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩;
ストロンチウムクロメート、ピグメントイエローなどのクロム酸塩;
モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸マグネシウムなどのモリブデン酸塩;
アルミナ、酸化アンチモン、酸化チタニウム、酸化コバルト、四酸化三鉄、三酸化二鉄、四酸化三鉛、一酸化鉛、酸化クロムグリーン、三酸化タングステン、酸化イットリウムなどの金属酸化物;
水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化鉄、メタチタン酸などの金属水酸化物;
炭化ケイ素、炭化タングステン、炭化ホウ素、炭化チタンなどの金属炭化物;
窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、チタン酸バリウム、サチンホワイト、カーボンブラック、グラファイト、クロムイエロー、硫化水銀、ウルトラマリン、パリスブルー、チタニウムイエロー、クロムバーミリオン、リトポン、アセト亜ヒ酸銅、ニッケル、銀、パラジウム、チタン酸ジルコン酸鉛など。
無機物質の平均粒子径は、一般的には100μm以下、好ましくは0.1μm〜50μmである。これらの無機物質は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
また、被分散体の形状としては、特に限定されるものではないが、粉体状、粒子状、顆粒状、繊維状、平板状などが挙げられる。
本発明の分散剤を用いて被分散体(例えば上記の有機物質及び/又は無機物質)を分散させる場合に用い得る分散媒としては、特に限定されるものではないが、例示すると次のとおりである。
水;
灯油、軽油、ケロシンなどの燃料油類;
ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソオクタンなどの脂肪族炭化水素類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾールなどの芳香族炭化水素類;
エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコールなどのアルコール類;
酢酸エチル、ジオクチルフタレートなどのエステル類;
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、カルビトール、モノグライム、ジグライム、テトラグライム、メチルセルソルブ、ブチルセルソルブなどのエーテル類;
ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールなどのジオール類;
1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ジクロロエチレン、クロロジフルオロメタンなどのハロゲン化炭化水素類;
メチルイソアミルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;
ターピネオール、流動パラフィン、ミネラルスピリット、N−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドン、グリセリンなど。
これらの分散媒のうち、水が好適である。これらの分散媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本発明の分散剤を分散媒とともに使用する場合、その方法は、特に限定されるものではない。例えば、本発明の分散剤を分散媒と混合してから被分散体を添加してもよく、本発明の分散剤を分散媒に被分散体と同時に又は逐次に添加してもよい。或いは、予め分散媒に被分散体を混合してから本発明の分散剤を後から添加してもよい。
本発明の分散剤の使用量としては、被分散体の種類や量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、被分散体100重量部に対して、好ましくは0.01重量部〜10重量部、より好ましくは0.1重量部〜5重量部である。分散媒の使用量は、通常、被分散体100重量部に対して、20重量部〜1,000重量である。
本発明の分散剤における有効成分である、リグニン誘導体の含有量は、分散剤の全重量に対して、好ましくは25重量%〜100重量%、より好ましくは50重量%〜100重量%である。本発明の分散剤は、その目的を損なわない程度に、本発明における有効成分であるリグニン誘導体以外に公知の他の添加剤を配合することができる。
本発明の分散剤は、前述した種々の用途に利用することができるが、セメント分散剤、油田掘削用泥水分散剤、染料分散剤として利用することが好ましく、セメント分散剤としての利用がより好適である。そこで、以下に、本発明の分散剤をセメント分散剤として使用する場合について詳しく説明する。
本発明の分散剤をセメント分散剤として使用する場合の形態は特に制限されない。例えば、水溶液の形態で使用してもよいし、又は、粉体の形態で使用してもよい。粉体化の方法としては例えば、カルシウム、マグネシウムなどの二価金属の水酸化物で中和して多価金属塩とした後に乾燥させる方法、シリカ系微粉末などの無機粉体に担持して乾燥させる方法、乾燥装置(例えばドラム型乾燥装置、ディスク型乾燥装置又はベルト式乾燥装置など)の支持体上に薄膜状に乾燥固化させた後に粉砕する方法、スプレードライヤーによって乾燥固化させる方法などが例示される。また、本発明の分散剤(粉体)をセメント分散剤として使用する場合、分散剤を予めセメント粉末やドライモルタルのような水を含まないセメント組成物に配合して、左官、床仕上げ、グラウトなどに用いるプレミックス製品としてもよいし、セメント組成物の混練時に配合してもよい。
本発明の分散剤をセメント分散剤として使用する場合の被分散体としては、各種水硬性材料が例示される。水硬性材料は、セメントや石膏などの材料とそれ以外とに分類されるが、そのいずれであってもよい。本発明の分散剤は、セメント分散剤として、上記水硬性材料と水とともに水硬性組成物を構成し得る。水硬性組成物は、さらに必要に応じて、細骨材(砂など)や粗骨材(砕石など)を含み得る。水硬性材料の具体例としては、例えば、セメントペースト、モルタル、コンクリート、プラスターなどが挙げられる。
前記水硬性組成物の中では、水硬性材料としてセメントを使用するセメント組成物(本発明の分散剤、セメント及び水を必須成分として含有する組成物)が最も一般的であり、本発明の好ましい実施形態の1つである。
セメント組成物に使用され得るセメントは、特に限定されるものではないが、具体的には以下のもが挙げられる。
ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩、及びそれぞれの低アルカリ形);
各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント);
白色ポルトランドセメント;
アルミナセメント;
超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント);
グラウト用セメント;
油井セメント;
低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント);
超高強度セメント;
セメント系固化材;
エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の1種以上を原料として製造されたセメント)など。
セメント組成物には、上記セメント以外の成分を添加してもよい。かかる成分としては以下のものが挙げられる。
微粉体(高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末など);
石膏;
骨材(砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質などの耐火骨材など)など。
前記セメント組成物においては、その1m3あたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比(質量比)は特に限定されず、貧配合から富配合まで幅広く使用可能である。単位水量は、好ましくは100kg/m3〜185kg/m3、より好ましくは120kg/m3〜175kg/m3である。使用セメント量は、好ましくは200kg/m3〜800kg/m3、より好ましくは250kg/m3〜800kg/m3である。水/セメント比(重量比)は、好ましくは0.15〜0.7、より好ましくは0.25〜0.65である。
本発明の分散剤は、高減水率領域、すなわち、水/セメント比(重量比)の低い領域(例えば0.15〜0.5)のセメント組成物においても使用可能である。さらに、単位セメント量が多く水/セメント比が小さい高強度コンクリートや、使用セメント量(単位セメント量)が少ない(例えば、約300kg/m3以下)の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
前記セメント組成物において、本発明の分散剤の配合量は、例えば、水硬セメントを用いるモルタルやコンクリートなどに使用する場合には、固形分換算で、セメントの質量に対して、好ましくは0.01重量%〜10.0重量%、より好ましくは0.02重量%〜7.0重量%、さらに好ましくは0.05重量%〜5.0重量%である。このような配合量とすることにより、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上などの各種の好ましい諸効果がもたらされる。本発明の分散剤の配合量が0.01重量%未満であると、分散性能を充分に発揮することができないことがある。逆に、本発明の分散剤の配合量が10.0重量%を超えると、分散性を向上させる効果が実質的に飽和して頭打ちとなり経済性の面からも不利となり得ることに加え、硬化遅延や強度低下など、モルタル及びコンクリートの諸性状に悪影響を与えてしまうことがある。
上記セメント組成物は、高減水率領域においても高い分散性と分散保持性能を有する。そして、低温時においても十分な初期分散性と粘性低減性とを発揮し、優れたワーカビリティを有する。従って上記セメント組成物は、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品(プレキャストコンクリート)用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等として有効である。さらに、中流動コンクリート(スランプ値が22cm〜25cmのコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50cm〜70cmのコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材などの高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートとしても有効である。
本発明の分散剤をセメント分散剤として用いる場合には、その有効成分であるリグニン誘導体を含んでいればよく、さらに他のセメント分散剤の有効成分や他のコンクリート用添加剤の有効成分を含んでいてもよいし、また本発明の分散剤を他のセメント分散剤や他のコンクリート用添加剤と併用することも可能である。
前記他のセメント分散剤の有効成分や他のコンクリート用添加剤の有効成分としては、例えば、以下に列挙したものを使用することができる。
リグニンスルホン酸塩;
ポリオール誘導体;
ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;
メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリスチレンスルホン酸塩;
特開平1−113419号公報に記載のような、アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物などのアミノスルホン酸系化合物;
特開平7−267705号公報に記載のような、(a)成分として、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系化合物と(メタ)アクリル酸系化合物との共重合体及び/又はその塩と、(b)成分として、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系化合物と無水マレイン酸との共重合体及び/又はその加水分解物、並びに/或いは、その塩と、(c)成分として、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系化合物とポリアルキレングリコール系化合物のマレイン酸エステルとの共重合体及び/又はその塩;
特許第2508113号公報に記載のような、A成分として、(メタ)アクリル酸のポリアルキレングリコールエステルと(メタ)アクリル酸(塩)との共重合体からなる成分と、B成分として、特定のポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールを含む一般式で特定される化合物からなる成分と、C成分として、特定の界面活性剤からなる成分とからなる組成物;
特開昭62−216950号公報に記載のような、(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル又はポリエチレン(プロピレン)グリコールモノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、ならびに、(メタ)アクリル酸(塩)のそれぞれからなる構成単位を含むビニル共重合体;
特開平1−226757号公報に記載のような、(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、及び(メタ)アクリル酸(塩)を水溶液重合させて得られる水溶性ビニル共重合体;
特公平5−36377号公報に記載のような、(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)もしくはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)、ならびに、(メタ)アクリル酸(塩)から得られる共重合体;
特開平4−149056号公報に記載のような、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルとマレイン酸(塩)とのそれぞれから形成される単量体単位を有する共重合体;
特開平5−170501号公報に記載のような、(メタ)アクリル酸のポリエチレングリコールエステルに由来する構成単位(メタ)アリルスルホン酸(塩)に由来する構成単位、(メタ)アクリル酸(塩)に由来する構成単位、及びアルカンジオールモノ(メタ)アクリレートやポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートに由来し分子中にアミド基を有するα,β−不飽和単量体をラジカル重合して得られる重合体ブロックを含む構成単位で構成されたグラフト共重合体;
特開平6−191918号公報に記載のような、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸(塩)、ならびに、(メタ)アリルスルホン酸(塩)もしくはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)を水系ラジカル共重合して得られる水溶性ビニル共重合体;
特公昭58−38380号公報に記載のような、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、マレイン酸系単量体、及びこれらの単量体と共重合可能な単量体を用いて得られる共重合体;
特公昭59−18338号公報に記載のような、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、及びこれらの単量体と共重合可能な単量体を用いて得られる共重合体をアルカリ性物質で中和して得られる共重合体;
特開昭62−119147号公報に記載のような、スルホン酸基を有するポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル及び必要によりこれと共重合可能な他の単量体を用いて得られる重合体、又はこれをアルカリ性物質で中和して得られた重合体;
特開平6−271347号公報に記載のような、アルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体と、末端にアルケニル基を有するポリオキシアルキレン誘導体とのエステル化反応物;
特開平6−298555号公報に記載のような、アルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体と、末端にヒドロキシ基を有するポリオキシアルキレン誘導体とのエステル化反応物;
特開昭62−68806号公報に記載のような、3−メチル−3−ブテン−1−オールなどの特定の不飽和アルコールにエチレンオキシドなどを付加したアルケニルエーテル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、及びこれらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体、又はその塩などのポリカルボン酸(塩)。
これらの他のセメント分散剤の有効成分や他のコンクリート用添加剤の有効成分は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
また、他のセメント分散剤及び他のコンクリート用添加剤の例としては、水溶性高分子、高分子エマルジョン、空気連行剤、セメント湿潤剤、膨張剤、防水剤、遅延剤、増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、効果促進剤、消泡剤、AE剤、分離低減剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤その他の界面活性剤などが例示される。これらは単独で使用してもよく、2種以上を用いてもよい。これらの添加剤としては、下記の(1)〜(11)に例示するようなものが挙げられる。
(1)水溶性高分子物質:
ポリアクリル酸又はその塩(例えばナトリウム塩)、ポリメタクリル酸又はその塩(例えばナトリウム塩)、ポリマレイン酸又はその塩(例えばナトリウム塩)、アクリル酸・マレイン酸共重合物又はその塩(例えばナトリウム塩)などの不飽和カルボン酸重合物;
メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの非イオン性セルロースエーテル類;
メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの多糖類のアルキル化誘導体又はヒドロキシアルキル化誘導体を骨格とする多糖誘導体であって、一部若しくは全部のヒドロキシ基の水素原子が、炭素原子数8〜40の炭化水素鎖を部分構造として有する疎水性置換基と、スルホン酸基又はそれらの塩を部分構造として有するイオン性親水性置換基とで置換されてなる多糖誘導体;
酵母グルカンやキサンタンガム、β−1.3グルカン類(直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、一例を挙げれば、カードラン、パラミロン、パキマン、スクレログルカン、ラミナランなど)などの微生物醗酵によって製造される多糖類;
ポリアクリルアミド;
ポリビニルアルコール;
デンプン;
デンプンリン酸エステル;
アルギン酸ナトリウム;
ゼラチン;
分子内にアミノ基を有するアクリル酸のコポリマー及びその四級化合物など。
(2)高分子エマルジョン:
(メタ)アクリル酸アルキルなどの各種ビニル単量体の共重合物など。
(3)オキシカルボン酸系化合物以外の硬化遅延剤:
グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース、キシロース、アピオース、リボース、異性化糖などの単糖類、二糖、三糖などのオリゴ糖、デキストリンなどのオリゴ糖、又はデキストランなどの多糖類、これらを含む糖蜜などの糖類;
ソルビトールなどの糖アルコール;
ケイフッ化マグネシウム;
リン酸及びその塩又はホウ酸エステル類;
アミノカルボン酸及びその塩;
アルカリ可溶タンパク質;
フミン酸;
タンニン酸;
フェノール;
グリセリンなどの多価アルコール;
アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などのホスホン酸及びその誘導体など。
(4)早強剤・促進剤:
塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウムなどの可溶性カルシウム塩;
塩化鉄、塩化マグネシウムなどの塩化物;
硫酸塩;
水酸化カリウム;
水酸化ナトリウム;
炭酸塩;
チオ硫酸塩;
ギ酸及びギ酸カルシウムなどのギ酸塩;
アルカノールアミン;アルミナセメント;
カルシウムアルミネートシリケートなど。
(5)オキシアルキレン系以外の消泡剤:
燈油、流動パラフィンなどの鉱油系消泡剤;
動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物などの油脂系消泡剤;
オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物などの脂肪酸系消泡剤;
グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックスなどの脂肪酸エステル系消泡剤;
オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類などのアルコール系消泡剤;
アクリレートポリアミンなどのアミド系消泡剤;
リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェートなどのリン酸エステル系消泡剤;
アルミニウムステアレート、カルシウムオレエートなどの金属石鹸系消泡剤;
ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサンなどのポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油などのシリコーン系消泡剤など。
(6)AE剤:
樹脂石鹸;
飽和又は不飽和脂肪酸
ヒドロキシステアリン酸ナトリウム
ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、
ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩;
蛋白質材料;
アルケニルスルホコハク酸;
α−オレフィンスルホネートなど。
(7)その他界面活性剤:
オクタデシルアルコールやステアリルアルコールなどの、分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール;
アビエチルアルコールなどの分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール;
ドデシルメルカプタンなどの分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン;
ノニルフェノールなどの分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール;
ドデシルアミンなどの分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン;
ラウリン酸やステアリン酸などの分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸に、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキシド誘導体類;
アルキル基又はアルコキシ基を置換基として有してもよい、スルホン基を有する2個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;
上記以外の各種アニオン性界面活性剤;
アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライドなどの各種カチオン性界面活性剤;
各種ノニオン性界面活性剤;
各種両性界面活性剤など。
(8)防水剤:
脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコーン、パラフィン、アスファルト、ワックスなど。
(9)防錆剤:
亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛など。
(10)ひび割れ低減剤:
ポリオキシアルキルエーテルなど。
(11)膨張材:
エトリンガイト系、石炭系など。
本発明の分散剤は、上記の他のセメント分散剤や他のコンクリート用添加剤以外に、オキシカルボン酸系化合物を併用することができる。オキシカルボン酸系化合物を含有させることにより、高温の環境下においても、より高い分散保持性能を発揮することができる。
オキシカルボン酸系化合物としては、炭素原子数4〜10のオキシカルボン酸又はその塩が好ましく、具体的には、例えば、グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸や、これらのナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミンなどの無機塩又は有機塩などが挙げられる。これらのオキシカルボン酸系化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのオキシカルボン酸系化合物のうち、グルコン酸又はその塩が好適である。貧配合コンクリートの場合には、分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤としてリグニンスルホン酸塩系の分散剤を使用し、オキシカルボン酸系化合物としてグルコン酸又はその塩を使用することが好ましい。
本発明の分散剤と、上記の他のセメント分散剤及び他のコンクリート用添加剤からなる他の添加剤から選ばれる1種又は2種以上の化合物とを併用する場合、本発明の分散剤と当該他の添加剤との配合比率(すなわち、固形分換算による本発明の分散剤/当該他の添加剤:重量比)は、好ましくは1〜99/99〜1、より好ましくは5〜95/95〜5、さらに好ましくは10〜90/90〜10、さらにより好ましくは20〜80/80〜20である。また、本発明のリグニン誘導体(分散剤)とオキシカルボン酸系化合物とを併用する場合、本発明の分散剤とオキシカルボン酸系化合物との配合比率(すなわち、固形分換算における本発明の分散剤/オキシカルボン酸系化合物:重量比)は、好ましくは1〜99/99〜1、より好ましくは5〜95/95〜5、さらに好ましくは10〜90/90〜10、さらにより好ましくは20〜80/80〜20である。さらに、本発明の分散剤、上記他の添加剤及びオキシカルボン酸系化合物の3成分を併用する場合、本発明の分散剤、上記他の添加剤及びオキシカルボン酸系化合物の配合比率(すなわち、固形分換算による本発明の分散剤/従来公知のセメント分散剤/オキシカルボン酸系化合物:重量比)は、好ましくは1〜98/1〜98/1〜98、より好ましくは5〜90/5〜90/5〜90、さらに好ましくは10〜90/5〜85/5〜85、さらにより好ましくは20〜80/10〜70/10〜70である。
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限されるものではなく、前・後記述の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、例中特に断りの無い限り%は重量%を、また、部は重量部を示す。
[実施例1]
リグニン誘導体(1)の製造
温度計、撹拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水76g、メトキシポリオキシエチレンモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数13個)39.8g、メタクリル酸10.2g及びサンエキス252(リグニンスルホン酸ナトリウム、日本製紙ケミカル社製)119gを仕込み、撹拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。液温が100℃に達した後、硫酸鉄(II)2.1gを添加し、直ちに、30%過酸化水素水溶液25.3gを1g/1分で反応容器に連続滴下した。さらに、温度を100℃に保持した状態で1時間反応させることにより、重量平均分子量62,300の共重合体水溶液からなる本発明のリグニン誘導体(1)を得た。得られたリグニン誘導体(1)のGPCチャートを(波長230nmにおいて紫外線吸収度検出器により測定)を図1に示す。なお、図1において、縦軸は検出強度を表し、横軸は保持時間を表す。
[実施例2]
リグニン誘導体(2)の製造
温度計、撹拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水50.7g、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数10個)29.9g、アクリル酸10.1g及びサンエキス252(リグニンスルホン酸ナトリウム、日本製紙ケミカル社製)178.6gを仕込み、撹拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。液温が100℃に達した後、30%過酸化水素水溶液4.3gを1g/1分で反応容器に連続滴下し、直ちに、L−アスコルビン酸0.4g及び連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸0.7gを混合した連鎖移動剤水溶液22.8gとを滴下開始した。さらに、温度を100℃に保持した状態で1時間反応させることにより、重量平均分子量26,600の共重合体水溶液からなる本発明のリグニン誘導体(2)を得た。
[実施例3]
リグニン誘導体(3)の製造
温度計、撹拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水97g、メトキシポリオキシエチレンモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数13個)39.8g、メタクリル酸10.2g及びサンエキスC(リグニンスルホン酸カルシウム変性物、日本製紙ケミカル社製)98gを仕込み、撹拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で75℃に昇温した。液温が75℃に達した後、硫酸鉄(II)2.1gを添加し、直ちに、30%過酸化水素水溶液25.3gを1g/1分で反応容器に連続滴下した。さらに、温度を75℃に保持した状態で1時間反応させることにより、重量平均分子量44,100の共重合体水溶液からなる本発明のリグニン誘導体(3)を得た。
[実施例4]
リグニン誘導体(4)の製造
温度計、撹拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水222.6g、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数30個)34.0g、アクリル酸3.5g及びパールレックスNP(高純度高分子リグニンスルホン酸ナトリウム変性物、日本製紙ケミカル社製)126.3gを仕込み、撹拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。液温が100℃に達した後、硫酸鉄(II)0.1gを添加し、直ちに、30%過酸化水素水溶液14.4gを1g/1分で反応容器に連続滴下した。さらに、温度を100℃に保持した状態で1時間反応させることにより、重量平均分子量39,300の共重合体水溶液からなる本発明のリグニン誘導体(4)を得た。
[実施例5]
リグニン誘導体(5)の製造
温度計、撹拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水65.75g、ポリエチレングリコールモノアクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数8個)42.4g及びサンエキス252(リグニンスルホン酸ナトリウム、日本製紙ケミカル社製)101.0gを仕込み、撹拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。液温が100℃に達した後、硫酸鉄(II)0.85gを添加し、直ちに、30%過酸化水素水溶液12.8gを1g/1分で反応容器に連続滴下した。さらに、温度を100℃に保持した状態で1時間反応させることにより、重量平均分子量55,700の共重合体水溶液からなる本発明のリグニン誘導体(5)を得た。
[実施例6]
リグニン誘導体(6)の製造
温度計、撹拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水215.1g、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数30個)34.0g、アクリル酸3.5g及びパールレックスNP(変性高純度高分子リグニンスルホン酸ナトリウム、日本製紙ケミカル社製)126.3gを仕込み、撹拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した。液温が60℃に達した後、30%過酸化水素水溶液14.3gを1g/1分で反応容器に連続滴下し、直ちに、L−アスコルビン酸0.2g及び連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸0.5gを混合した連鎖移動剤水溶液11.3gを滴下開始した。さらに、温度を60℃に保持した状態で1時間反応させることにより、重量平均分子量47,000の共重合体水溶液からなる本発明のリグニン誘導体(6)を得た。
[比較例1]
ポリカルボン酸系分散剤(a)の製造
実施例1において、サンエキス252を使用しないこと以外はすべて同様の操作を行うことにより、重量平均分子量21,100の共重合体水溶液からなる比較のポリカルボン酸系分散剤(a)を得た。得られたポリカルボン酸系分散剤(a)のGPCチャートを(波長230nmにおいて紫外線吸収度検出器により測定)を図2に示す。なお、図2において、縦軸は検出強度を表し、横軸は保持時間を表す。
図1と図2との紫外線にて測定したGPCチャートを見ると、リグニンスルホン酸ナトリウムと水溶性単量体との反応物であるリグニン誘導体(1)の保持時間29分近辺のポリマーの紫外線吸収が、比較の、水溶性単量体の構成単位のみからなるポリカルボン酸系分散剤(a)の保持時間29分近辺のポリマーの紫外線吸収に比べて、はるかに大きいことがわかる。このことから、リグニン誘導体(1)は、水溶性単量体に由来するポリマー骨格に紫外線吸収の大きな芳香環を含むリグニンスルホン酸骨格が導入されていることがわかる。そして、本発明の新規なリグニン誘導体はまた、ポリアルキレンオキシド鎖とアニオン性官能基とを有することも明らかである。
このように、リグニン誘導体(1)においては、リグニンスルホン酸にメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート及びメタクリル酸由来の構成単位が導入されているので、ポリエチレンオキシド鎖と、アニオン性官能基(カルボキシル基、スルホニル基、ヒドロキシル基など)を有することも明らかである。
[比較例2]
リグニン誘導体(b)の製造
特表2008−514402号公報の記載にしたがって、温度計、撹拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水98.7g、ポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3ブテニル)エーテル(エチレンオキシドの平均付加モル数50個)152.4g、アクリル酸0.3g及びクラフトリグニン(アルドリッチ社製、商品番号:37095−9)2.1gを仕込み、撹拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃に昇温した。液温が58℃に達した後、30%過酸化水素水溶液0.5gを水6.3gで希釈した水溶液を加え、直ちに、アクリル酸9.2gを水21.5gで希釈したモノマー水溶液と、L−アスコルビン酸0.2g及び連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸0.4gを混合した連鎖移動剤水溶液32.6gとを滴下開始した。モノマー水溶液は3時間、連鎖移動剤水溶液は3時時間30分かけて滴下した。連鎖移動剤水溶液を滴下終了後、2時間引き続いて58℃に温度を維持し、重量平均分子量33,000の共重合体水溶液からなる比較のリグニン誘導体(b)を得た。
[比較例3]
リグニン系分散剤(c)の製造
従来のリグニン系分散剤(c)として、サンフローSCL(リグニンスルホン酸変性物、日本ケミカル社製)を用いた。
表1に、実施例1〜6で得られたリグニン誘導体(1)〜(6)、比較例1で得られたポリカルボン酸系分散剤(a)、比較例2で得られたリグニン誘導体(b)及び比較例3で得られたリグニン系分散剤(c)について、水溶性単量体、重量平均分子量をそれぞれ示す。
Figure 0005769930
表1の脚注
MPEMA:メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート
PEAL:ポリエチレングリコールモノアリルエーテル
PEAA:ポリエチレングリコールモノアクリレート
PEME:ポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3ブテニル)エーテル
MAA:メタクリル酸
AA:アクリル酸
[実施例7〜12及び比較例4〜6]
モルタル試験
実施例1〜6のリグニン誘導体(1)〜(6)と、比較例1のポリカルボン酸系分散剤(a)、比較例2のリグニン誘導体(b)及び比較例3の従来のリグニン系分散剤(c)とで、モルタルフロー値を比較した。
試験に使用した材料及び配合は、セメント:普通ポルトランドセメント三種(宇部三菱セメント株式会社製、太平洋セメント株式会社製、株式会社トクヤマ製)等量混合656g、比重3.16;水:水道水315g(表2に示した所定量の分散剤ならびに消泡剤(フローリック社製、商品名:プロナール753の1%水溶液を16.4g含む);細骨材:砕石砕砂1069g、比重2.63、表面水0.3%、石灰砕砂718g、比重2.65、表面水0.3%の配合割合に従った。モルタルは細骨材、セメント、水及び表2に示したセメント分散剤を投入してモルタルミキサーによる機械練りで調製した。その後、底面の直径20cm、上面の直径10cm、高さ30cmの中空円筒のミニスランプコーンに詰め、ミニスランプコーンを垂直に持ち上げた際のテーブルに広がったモルタルの直径を2方向について測定し、この平均をフロー値とした。なお、モルタルのフロー値は、数値が大きいほど分散性が高いことを示し、添加量が少ないものほど分散性が高いことを示す。
また、空気量については、円筒形容器にモルタルを充填した後、充填されたモルタル重量を測定し、以下の(数式1)により算出した。
(数式1)
空気量(%)=(充填されたモルタル重量/空気量0%のモルタル重量)×100
なお、上記(数式1)中、空気量0%のモルタル重量は、水、セメント、砂の比重からモルタルの比重(計算値)を求めた上で、以下の(数式2)により算出した。
(数式2)
空気量0%のモルタル重量=モルタルの比重(計算値)×円筒形容器の体積
モルタル試験の結果を表2に示す。
Figure 0005769930
表2の脚注
添加量(重量%):セメント重量に対する重量%
表2から以下のことが明らかである。リグニン誘導体(1)と、ポリカルボン酸系分散剤(a)を用いて得られたモルタルのフロー値を同一添加率どうしで比較すると、前者のほうがフロー値が高かった。また、比較のリグニン誘導体(b)とリグニン系分散剤(1)〜(6)とを比較しても、後者の方が高いフロー値を示していた。このことから、本発明のリグニン誘導体は、高い分散性能を持つことがわかる。
さらに、リグニン誘導体(1)〜(6)は、従来のリグニン系分散剤(c)と比べて大幅に空気量が低くなっており、リグニン系分散剤の欠点である高い空気連衡性を抑えることができていることが明らかである。
[実施例13]
リグニン誘導体(7)の製造
温度計、撹拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水65.7g、メトキシポリオキシエチレンモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数13個)2.5g、メタクリル酸0.6g及びサンエキス252(リグニンスルホン酸ナトリウム、日本製紙ケミカル社製)148.8gを仕込み、撹拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した。液温が60℃に達した後、硫酸鉄(II)・7水和物0.01gを添加し、直ちに、30%過酸化水素水溶液4.4gを水1.9gで希釈した開始剤溶液を1g/1分で反応容器に連続滴下した。さらに、温度を75℃に昇温させたのち、硫酸鉄(II)・7水和物32.0gを添加して、75℃に保持した状態で1時間反応させることにより共重合体の水溶液を得た。この液をりん酸水素2ナトリウムでpH4に調整し、重量平均分子量81,800の水溶液からなる本発明のリグニン誘導体(7)を得た。
[実施例14]
リグニン誘導体(8)の製造
温度計、撹拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水321.8g、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数10個)8.9g、アクリル酸2.3g及びサンエキス252(リグニンスルホン酸ナトリウム、日本製紙ケミカル社製)110gを仕込み、硫酸を用いてpH2.5に調整した。その後、撹拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した。液温が60℃に達した後、硫酸鉄(II)・7水和物0.02gを添加し、直ちに、30%過酸化水素水溶液10.9gを水4.7gで希釈した開始剤溶液を1g/1分で反応容器に連続滴下した。さらに、温度を75℃に昇温させたのち、硫酸鉄(III)68.5gを添加して、75℃に保持した状態で1時間反応させることにより共重合体の水溶液を得た。この液をりん酸水素2ナトリウムでpH4に調整し、重量平均分子量66,100の水溶液からなる本発明のリグニン誘導体(8)を得た。
[比較例7]
リグニン系分散剤(d)
従来のリグニン系油田掘削用泥水分散剤(d)として、サンエキスFE(日本ケミカル社製)を用いた。
[実施例15〜16及び比較例8]
高温特性試験
本発明のリグニン誘導体(7)〜(8)と、比較例7のリグニン系分散剤(d)とで、高温履歴を経た泥水様組成物の粘度を比較した。
試験に使用した泥水様組成物は、ベントナイト100部;水:純水500部(表3に示した所定量の分散剤を含む);pH調整剤:30%水酸化カリウム水溶液にてpH11±へ調整した配合に従った。この泥水様組成物をホモジナイザーで撹拌した後を作泥直後とし、B型粘計にて作泥直後、25℃における粘度を測定した。その後、泥水様組成物を恒温槽中で90℃、4時間静置させた後、ホモジナイザーで再び撹拌した高温履歴をうけた泥水様組成物の25℃における粘度を測定した。なお、粘度値は、数値が低いものほど分散性が高いことを示し、高温履歴後の粘度値が低いものほど、高温における分散(熱特性)に優れることを示す。高温特性試験の結果を表3に示す。
Figure 0005769930
表3の脚注
添加量(重量%):ベントナイト重量に対する重量%
表3から明らかなように、作泥直後においては、分散剤を添加していないブランクと比較して、リグニン誘導体(7)〜(8)及びリグニン系分散剤(d)のいずれの粘度も低下しており、分散性能を発揮していることがわかる。比較のリグニン系分散剤(d)は、作泥直後においては高い分散性を発揮したが、高温履歴(90℃、4時間)を経過した後の粘度は、リグニン誘導体(7)〜(8)よりも大幅に高い値を示した。このことから、高温における分散性能は、リグニン誘導体(7)〜(8)の方が高いことがわかった。以上の結果より、本発明のリグニン誘導体は、高温においても良好な分散性を発揮でき、高温特性を含め温度条件に限らず優れた分散性を有することが明らかとなった。

Claims (6)

  1. リグニンのヒドロキシフェニルプロパン構造の側鎖α位の炭素が開裂してスルホン基が導入された骨格を有する化合物であるリグニンスルホン酸系化合物とポリアルキレンオキシド鎖を有する水溶性単量体を少なくとも含む水溶性単量体との反応物であるポリアルキレンオキシド鎖を有するリグニン誘導体を含有する分散剤。
  2. 前記リグニン誘導体がアニオン性官能基を有する請求項1に記載の分散剤。
  3. セメント分散剤である請求項1又は2に記載の分散剤。
  4. 油田掘削用泥水分散剤である請求項1又は2に記載の分散剤。
  5. 染料分散剤である請求項1又は2に記載の分散剤。
  6. 前記リグニンスルホン酸系化合物にポリアルキレンオキシド鎖を有する水溶性単量体を反応させる工程を含む、請求項1又は2に記載の分散剤の製造方法。
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