JP2018178024A - リグニン由来のエポキシ樹脂の製造方法、リグニン由来のエポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物及びその硬化物 - Google Patents

リグニン由来のエポキシ樹脂の製造方法、リグニン由来のエポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物及びその硬化物 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、木質バイオマスを塩基存在下で加熱処理して得られるリグニンの効率的なエポキシ樹脂の製造方法、該製造方法で合成されたエポキシ樹脂、そのエポキシ樹脂組成物及び硬化物を提供する。【解決手段】木質バイオマスを塩基存在下で加熱処理して得られるリグニンから、アルコールと水の混合溶媒に溶解する成分を抽出し、抽出した成分にエピハロヒドリンを反応させるエポキシ樹脂の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、リグニン由来のエポキシ樹脂の製造方法、リグニン由来のエポキシ樹脂、これを用いたエポキシ樹脂組成物及びその硬化物に関する。
近年、環境問題の観点からカーボンニュートラルな資源としてバイオマス(動植物から得られる再生可能な有機性資源)が注目されている。例えば、糖質原料やデンプン原料といった食糧にもなる可食性バイオマスを用いたバイオエタノールの製造が挙げられるが、この場合は食糧との競合が問題となっている。一方、非可食性バイオマスは、食糧との競合が無いため、工業原料としての活用が期待されている。非可食性バイオマスの一つであるリグノセルロースバイオマスの代表例は、針葉樹、広葉樹等の木質バイオマスであり、それらを原料とした化成品の開発は、従来の石油由来の化成品開発に比べて難易度は高いものの社会的需要が大きく、実用化に向けて盛んに研究開発されている分野である。
リグノセルロースバイオマスは、セルロース、ヘミセルロース、リグニンから構成されている。その中でリグニンは、セルロースを繋ぎ合わせる接着分子の役割を担っており、フェニルプロパン骨格がランダムに重合した化合物で、非常に複雑な構造を有している。通常リグニンは、分子量が1万を超える巨大分子となるため、その詳細な構造解析は、未だ達成されていない。そのため、リグニンを化成品の原料としての利用は非常に難しく、これまでは燃料や分散剤としての利用に限られていた。
しかし、近年の社会的背景を受けて、リグニンは構造内に芳香族化合物を豊富に含む事から、新たな資源として、樹脂などの化学工業製品としての利用が模索され始めている。その一つとして、リグニンにはフェノール性の水酸基が含まれているため、フェノール樹脂等の樹脂原料として期待されている。
また、フェノール性の水酸基にグリシジル基を挿入した、リグニン由来のエポキシ樹脂も、応用用途の候補の一つとなっている。しかしながら、前記の通り原料とするリグニンは複雑な構造の混合物であり、高分子量成分も多く含むため、木質の分解により得られたリグニンを精製操作なしにエポキシ樹脂の原料として用いても、効率良くグリシジル化物を得る事は難しい。とは言え、リグニンに対して多段階に渡る複雑な精製操作や、大掛かりな装置を使用した精製操作を適用してしまうと、コスト高になり実用化が困難になると共に、精製操作にエネルギーを要する事になり、環境負荷が向上してしまう。そのため実用化を考えると、簡便な操作でリグニンを精製し、機能性の高いエポキシ樹脂へと変換する必要がある。
リグニン由来のエポキシ樹脂化の取組みの歴史は古く、例えば特許文献1には、アルカリリグニンと、石油由来のフェノールを混合した条件で、鉱酸を用いてソルボリシスを進行させた後に、エピクロルヒドリンと反応させて得られるリグニン・エポキシ樹脂接着剤の製造方法が報告されている。しかし本法で合成されたリグニン由来のエポキシ樹脂では、石油由来のフェノールを併用するため、生成物のバイオマス比率が低くなってしまい、カーボンニュートラルな資源としての価値は低いと言わざるを得ない。また、本法で開示されているリグニン由来のエポキシ樹脂は、リグニンがどの程度グリシジル化されているか不明であり、効率的なエポキシ化法とは言い難い。
また、特許文献2、3には、イネ科植物由来のリグニンをエポキシ化した例が報告されている。しかしながら、イネ科植物のリグニンは、特に日本国内において処理量が低く、大量の原料調達に難がある。また、イネ科植物リグニン由来のエポキシ樹脂は、針葉樹、広葉樹等の木質バイオマスに含まれるリグニン由来のエポキシ樹脂に比べて、合成が容易である反面、硬化物の耐熱性等の樹脂特性が劣る傾向にある。
特許文献4、5、6には、リグニンに石油由来のフェノールを付加した化合物(リグノフェノール)のエポキシ化物に関する記載がある。しかし、これらの材料は、大量の酸を用いた変性段階を必要とすると共に、フェノールを付加させた分だけ生成物のバイオマス比率が下がるため、比較的環境負荷が高い製品である。
さらに特許文献7、8などには、水蒸気爆砕法を用いて得られるリグニンを原料としたエポキシ化物、特許文献9、10、11などには、高温高圧条件下で木質バイオマスを処理して得られるリグニンを原料としたエポキシ化物に関する報告がある。しかし、これらのリグニンは、リグニンの処理にコストがかかると共に、初期の設備投資が嵩むため、実用化に向けてのハードルが高い。
以上のように、リグニン由来のエポキシ樹脂は盛んに検討されているものの、木質バイオマス由来であり、製紙プロセスなどで用いる既存設備を用いて生産可能なリグニンを原料としたエポキシ樹脂に関しては、未だ効率的な精製法及びエポキシ化法が確立されていない。そのため、リグニン由来のエポキシ樹脂の実用化に向けて、リグニンの精製〜合成のシステム構築が、強く求められていた。
特開平5−4429号公報 特開2011−144340号公報 特開2012−236811号公報 特許第4015035号公報 特開2009−263549号公報 特開2011−99083号公報 特開2006−066237号公報 特開2005−199209号公報 特開2009−084320号公報 特開2012−201645号公報 特開2012−201828号公報
本発明の課題は、木質バイオマスを塩基存在下で高温処理して得られるリグニンの効率的なエポキシ樹脂の製造方法と、該製造方法で合成されたリグニン由来のエポキシ樹脂を提供することである。
本発明は、以下に記載のエポキシ樹脂に関する。
[1]木質バイオマスを塩基存在下で加熱処理して得られるリグニンから、アルコールと水の混合溶媒に溶解する成分を抽出し、抽出した成分にエピハロヒドリンを反応させるエポキシ樹脂の製造方法。
[2]前記木質バイオマスが、広葉樹である前項[1]に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
[3]前記リグニンが、ソーダアントラキノンリグニン又はクラフトリグニンである前項[1]又は[2]に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
[4]前記アルコールが、炭素数3以下のアルコールである前項[1]〜[3]のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
[5]前記木質バイオマスを塩基存在下で加熱処理して得られるリグニンのウェットケーキに、アルコールを添加して、溶解する成分を抽出する前項[1]〜[4]のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
[6]前記木質バイオマスを塩基存在下で加熱処理して得られるリグニンのウェットケーキに、アルコールを添加して、溶解する成分を抽出し、該抽出液にエピハロヒドリンを添加する前項[5]に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
[7]前項[1]〜[6]のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂の製造方法で合成されたエポキシ樹脂。
[8]前項[7]に記載のエポキシ樹脂と、硬化剤及び/又は硬化促進剤を含有するエポキシ樹脂組成物。
[9)前項[8]に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
本発明では、木質バイオマスを比較的簡便な処理をして得られるリグニンを、効率良くエポキシ樹脂に変換する製造法を開示しているため、高機能なリグニン由来のエポキシ樹脂を低コストで得ることができる。また、該エポキシ樹脂を用いた、樹脂組成物やプリプレグ、硬化物等を提供することができる。そのため、これまで未活用資源であったリグニン由来のマテリアルの実用化に貢献でき、従来の石油由来の化合物とは異なる特性を持つ化学製品を社会に提供できると共に、二酸化炭素排出の抑制等の効果も期待できる。
本発明のリグニン由来のエポキシ樹脂の製造方法は、木質バイオマスを塩基存在下で加熱高温処理して得られるリグニンと、アルコールと水の混合溶媒に溶解する成分を抽出し、抽出した成分にエピハロヒドリンを反応させてエポキシ樹脂を製造することを特徴とする。
本発明における木質バイオマスとは、木質系リグノセルロースを意味し、いわゆる一般的な樹木や木材を指す。木質系リグノセルロースは、裸子植物である針葉樹と、被子植物である広葉樹に分類され、具体的には、マツ、スギ、ヒノキ、マキ、イチイなどの針葉樹や、ユーカリ、ブナ、ヤナギ、アカシア、ダグラスファー、ラジアータパインなどの広葉樹などが挙げられる。これらの木質バイオマスは、単一の樹木を原料としても良いし、同じ分類の樹木であれば2種類以上を組み合わせた物を原料としても良い。また、本発明で用いる木質バイオマスには、広葉樹がより好ましく用いられる。
本発明の原料であるリグニンには、前記木質バイオマスを塩基存在下で高温処理して、分離されるリグニンを用いる。例えば、木粉やウッドチップを、水酸化ナトリウム水溶液等の塩基中に加え、さらに必要な添加剤を加えた後に、100〜200℃の高温で処理した後に、固形分として残るパルプを除き、得られた黒液を硫酸等の酸で中和したり、炭酸ガスを吹き込む、いわゆるリグノブースト処理をしたりして、原料リグニンを得ることができる。具体的には、アルカリ蒸解、ソーダアントラキノン蒸解(ソーダAQ蒸解)、クラフト蒸解、アルカリ酸素蒸解、アルカリ過酸化水素蒸解などの処理を経て得られるリグニンなどが挙げられ、いずれも利用可能であるが、本発明ではアルカリ蒸解、ソーダアントラキノン蒸解、クラフト蒸解から得られるアルカリリグニン、ソーダアントラキノンリグニン、クラフトリグニンなどがより好ましく用いられ、ソーダアントラキノンリグニン、クラフトリグニンが特に好ましく用いられる。特に、アルカリ蒸解、ソーダアントラキノン蒸解、クラフト蒸解等は、既存の製紙工場の設備で実施することができるため、他の蒸解方法に比べて低コストで蒸解可能と考えられ、経済的観点から考えても、好ましいリグニンである。
本発明の原料であるリグニンは、蒸解後のリグニンからアルコールと水の混合溶媒に溶解する成分を抽出して用いる(本特許で、「抽出」と表現する場合には、ろ過などで不溶分を取り除く操作を含むものとする)。用いるアルコールは、水と混和する物であれば特に制限はないが、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、1−プロパノール、エチレングリコール、プロプレングリコール、グリセロール、メトキシエタノール、メトキシプロパノールなどが挙げられ、炭素数3以下のアルコールであるタノール、エタノール、イソプロパノール、1−プロパノール、メトキシエタノール等がより好ましい。また、溶媒の回収等を考えると、沸点が90℃以下のアルコールが特に好ましい。アルコールと水の混合比率は、通常10:1〜1:10であるが、好ましくは10:2〜2:10であり、より好ましくは10:3〜3:10であり、特に好ましくは10:5〜5:10である(比率は、アルコールの重量:水の重量を意味する)。
リグニンを抽出する際は、乾燥体のリグニンに対してアルコールと水の混合溶媒を添加しても良いし、ウェットケーキのリグニン(含水状態のリグニン)に対してアルコールを添加する方法でも良い。通常、蒸解後に取出されたリグニンは、含水状態であるため、リグニンを乾燥させるコストやエネルギーを抑制するためにも、ウェットケーキのリグニン(含水状態のリグニン)に対してアルコールを添加する方法が、より好ましい。リグニンのウェットケーキを原料に用いる場合は、その含水率を測定し、適当な比率になる様にアルコールを添加する。その際に、アルコールと水の比率を調整するために、さらに水を添加しても良い。抽出の際に用いるアルコールと水の総量は、乾燥体もしくはウェットケーキのいずれのリグニンを原料に用いるかに関わらず、正味のリグニン重量(乾燥した状態のリグニン重量)に対して、通常0.5〜10倍量であり、好ましくは1〜8倍量であり、より好ましくは1〜4倍量である。
本発明の原料であるリグニンは、必要に応じて追加の前処理や精製をし、樹脂原料としてより好ましい性質を持つリグニンに変換しても良い。前処理や精製としては、好ましい成分のみの分画や、低分子量化、溶媒抽出、再結晶、再沈殿、化学的変性などが挙げられる。但し、コスト及びエネルギー使用量を考えると、より簡便な処理であることが好ましい。
本発明の原料である、アルコールと水の混合溶媒で抽出後のリグニンは、固体状態にして用いても良いし、溶液状態のまま次の反応に用いても良い。アルコールと水の混合溶媒で抽出後のリグニンを固体状態にする場合には、加熱減圧下で溶媒を留去する方法や、水などの貧溶媒を更に添加して固体を析出される方法(再結晶、再沈殿)などが考えられる。しかし、コスト及びエネルギー使用量を考えると、固体状態にして用いるよりも、溶液状態のまま次の反応に用いる方法が、より好ましい。
アルコールと水の混合溶媒で抽出後のリグニンを、溶液状態のまま次の反応に用いる場合は、抽出溶液に後述のエピハロヒドリンを加え、その後のエポキシ化反応を進行させる。その際に、エピハロルヒドリンを一定量加えると、混合溶液が有機層と水層の2層に分離するので、有機層のみを分離して用いる方法がより好ましい。有機層と水層を分離する事で、余剰の水を系外に分離できると共に、蒸解後のリグニンに残存している酸や無機塩、水溶性の糖などを、取り除く効果もある。
本発明のエポキシ樹脂を得る反応において用いるエピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、α−メチルエピクロルヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等が好ましく挙げられ、特に、工業的に入手が容易なエピクロルヒドリンが好ましい。エピハロヒドリンの使用量は、本発明のビスフェノール化合物の水酸基1モルに対し通常2〜100モルであり、経済性を考慮すると好ましくは2〜40モルであり、より好ましくは2〜20モルである。
通常エポキシ樹脂は、アルカリ金属水酸化物や触媒の存在下で、フェノール化合物とエピハロヒドリンとを付加させ、次いで生成した1,2−ハロヒドリンエーテル基を閉環させてエポキシ化する反応により得られる。本発明において、アルコールと水の混合溶媒で抽出後のリグニンを、溶液状態のまま次の反応に用いる場合は、前記の通り抽出溶液にエピハロヒドリンを加え、有機層のみを分離した後に、必要なアルカリ金属水酸化物や触媒などを加えてエポキシ化を進行させる。エポキシ化反応に使用できるアルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が好ましく挙げられ、これらは固形物をそのまま使用しても、あるいはその水溶液を使用してもよい。水溶液を使用する場合は、該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に、減圧下又は常圧下で連続的に留出させた水及びエピハロヒドリンの混合液から分液により水を除去し、エピハロヒドリンのみを反応系内に連続的に戻す方法でもよい。アルカリ金属水酸化物の使用量は、原料とするリグニンの水酸基1モルに対して通常0.9〜3.0モルであり、好ましくは1.0〜2.5モルであり、より好ましくは1.0〜2.0モルであり、特に好ましくは1.1〜1.7モルである。また、エポキシ化反応において、特にフレーク状の水酸化ナトリウムを用いることで、水溶液とした水酸化ナトリウムを使用するよりも得られるエポキシ樹脂に含まれるハロゲン量を顕著に低減させることが可能となる。さらにこのフレーク状の水酸化ナトリウムは、反応系内に分割添加されることが好ましい。分割添加を行なうことで、反応温度の急激な上昇を防ぐことができ、これにより不純物である1,3−ハロヒドリン体やハロメチレン体の生成を防止することができる。
エポキシ化反応を促進するために、触媒を用いることができる。用いることができる触媒としては、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムミマイド、テトラメチルアンモニウムヨージド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムヨージド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムヨージド、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩や塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム等の無機塩が好ましい例として挙げられ、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨージド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムヨージド、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムがより好ましく、テトラメチルアンモニウムヨージド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムヨージドが特に好ましい。これらの触媒は、単一の触媒のみを用いても良く、二種類以上の触媒を組み合わせて用いても良い。4級アンモニウム塩の使用量としては、原料の水酸基1モルに対し通常0.1〜15gであり、好ましくは0.2〜10gである。
また、エポキシ化反応の際に、追加で溶媒を添加しても良い。添加する溶媒は、特に制限はないが、例えばエタノール、ジプロピレングリコール、γブチロラクトン、1,6−ヘキサンジオール、N,N−ジメチルホルムアミド、イソプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタノール、N−メチルピロリドン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、ジオキサングリセロールトリアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられ、好ましくはエタノール、イソプロパノール、ジプロピレングリコール、ヘキサンジオールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類などの溶媒であり、より好ましくはエタノール、イソプロパノール、ジプロピレングリコール、ヘキサンジオールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類などの溶媒であり、さらに好ましくはエタノール、イソプロパノール、ジプロピレングリコールなどの炭素数3以下のアルコール類、メチルエチルケトンなどの炭素数4以下のケトン類などの溶媒である。これらの溶媒は、単一の溶媒のみを用いても良く、二種類以上の溶媒を組み合わせて用いても良い。用いる溶媒量は、エピクロルヒドリンの重量に対して通常0.1〜50倍量であり、好ましくは0.15〜10倍量であり、より好ましくは0.15〜5倍量であり、特に好ましくは0.15〜1倍量である。
反応温度は通常30〜95℃であり、好ましくは35〜90℃である。反応時間は通常0.5〜10時間であり、好ましくは1〜8時間である。反応終了後、反応物を水洗後、又は水洗無しに加熱減圧下で反応液からエピハロヒドリンや溶媒等を除去する。また得られたエポキシ樹脂中に含まれるハロゲン量をさらに低減させるために、回収したエポキシ樹脂をトルエン、メチルイソブチルケトン、アセトンなどの溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて反応を行ない、閉環を確実なものにすることも出来る。この場合、アルカリ金属水酸化物の使用量は、原料の水酸基1モルに対して通常0.01〜0.3モルであり、好ましくは0.05〜0.2モルである。反応温度は通常50〜120℃、反応時間は通常0.5〜2時間である。
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、さらに加熱減圧下で溶媒を留去することにより本発明のエポキシ樹脂が得られる。また、本発明のエポキシ樹脂が結晶として析出する場合は、大量の水に生成した塩を溶解した後に、本発明のエポキシ樹脂の結晶を濾取してもよい。
本発明のエポキシ樹脂の製造方法で得られるエポキシ樹脂は、構造の特定が不可能であるリグニンを原料としているため、その構造を決定するのは極めて困難である。得られるエポキシ樹脂は、極めて複雑な構造の混合物であるため、NMRなどの分析手法を用いても、グリシジル基、メトキシ基及び幾つかの芳香族基と脂肪族置換基に由来するブロードなシグナルが得られるばかりであり、到底化合物を決定する事はできない。但し、前述の通り、グリシジル基に由来するブロードなピークを観察する事はできるため、エポキシ化の進行の有無は、判別する事ができる。
本発明のエポキシ樹脂のエポキシ当量は150〜500g/eq.であることが好ましく、200〜450g/eq.であることがより好ましく、250〜400g/eq.であることが特に好ましくい。エポキシ当量が上記範囲内にあるとき、硬化物の耐熱性、電気信頼性、吸水性に優れたエポキシ樹脂を得ることができる。エポキシ当量が500g/eq.を越えている場合、エポキシの環が閉環しきらず、官能基を有さない化合物が多く含まれることが予想されるため、好ましくない。またこれら閉環しきらなかった化合物の多くには塩素が含有されている場合が多く、電子材料用途としては高温多湿条件での塩素イオンの遊離及びそれによる配線の腐食が懸念されることから好ましくない。
また、エポキシ樹脂に残存している全塩素としては5000ppm以下が好ましく、より好ましくは3000ppm以下であり、特に2000ppm以下であることが好ましい。塩素量による悪影響については前述同様である。
本発明のエポキシ樹脂は軟化点を有する樹脂状の形態を有する。ここで、軟化点としては55〜250℃が好ましく、60〜200℃であることが特に好ましい。軟化点が低すぎると保管時のブロッキングが問題となるおそれがあり、低温で取り扱いをしないといけない等のおそれがある。一方、軟化点が高すぎる場合、他の樹脂との混練の際に、ハンドリングが悪くなる等の問題が生じるおそれがある。
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物について記載する。本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明のエポキシ樹脂を必須成分として含有する。また、本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明のエポキシ樹脂を単独で用いても良く、他のエポキシ樹脂と併用して用いても良い。
併用できる他のエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF 、ビスフェノールS、ビフェノール、ビスフェノールAD及びビスフェノールI等)やフェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン及びジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド及びシンナムアルデヒド等)との重縮合物、キシレン等の芳香族化合物とホルムアルデヒドの重縮合物とフェノール類との重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物(ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン及びイソプレン等)との重合物、フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン及びベンゾフェノン等)との重縮合物、フェノール類と芳香族ジメタノール類(ベンゼンジメタノール及びビフェニルジメタノール等)との重縮合物、フェノール類と芳香族ジクロロメチル類(α,α’−ジクロロキシレン及びビスクロロメチルビフェニル等)との重縮合物、フェノール類と芳香族ビスアルコキシメチル類(ビスメトキシメチルベンゼン、ビスメトキシメチルビフェニル及びビスフェノキシメチルビフェニル等)との重縮合物、ビスフェノール類と各種アルデヒドの重縮合物、並びにアルコール類等をグリシジル化したグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等が挙げられるが、通常用いられるエポキシ樹脂であればこれらに限定されるものではない。これらは、1種類のみ使用しても、2種以上を併用してもよい。
他のエポキシ樹脂を併用する場合、本発明のエポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂成分に占める本発明のエポキシ樹脂の割合は10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。ただし、本発明のエポキシ樹脂をエポキシ樹脂組成物の改質剤として使用する場合は、全エポキシ樹脂中で1〜30質量%となる割合で添加する。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、必要により硬化剤を添加しても良い。硬化剤の具体例としては、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物及びフェノール系化合物、本発明で用いる原料リグニン等が挙げられる。これら他の硬化剤の具体例を下記(a)〜(e)に示す。
(a)アミン系化合物 ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン及びナフタレンジアミン等
(b)酸無水物系化合物 無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルヘキサヒドロ無水フタル酸等
(c)アミド系化合物 ジシアンジアミド、若しくはリノレン酸の2 量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂等、
(d)フェノール系化合物多価フェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン及び1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等);フェノール類(例えば、フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン及びジヒドロキシナフタレン等)と、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド及びフルフラール等)、ケトン類(p−ヒドロキシアセトフェノン及びo−ヒドロキシアセトフェノン等)、若しくはジエン類(ジシクロペンタジエン及びトリシクロペンタジエン等)との縮合により得られるフェノール樹脂;前記フェノール類と、置換ビフェニル類(4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル及び4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル等)、若しくは置換フェニル類(1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル) ベンゼン及び1,4−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等)等との重縮合により得られるフェノール樹脂;前記フェノール類及び/又は前記フェノール樹脂の変性物; テトラブロモビスフェノールA及び臭素化フェノール樹脂等のハロゲン化フェノール類
(e)その他イミダゾール類、BF3−アミン錯体、グアニジン誘導体
これらの硬化剤の中では、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン及びナフタレンジアミンなどのアミン系化合物、並びにカテコールとアルデヒド類、ケトン類、ジエン類、置換ビフェニル類又は置換フェニル類との縮合物などの、活性水素基が隣接している構造を有する硬化剤が、エポキシ樹脂の配列に寄与するため好ましい。硬化剤は単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。本発明のエポキシ樹脂組成物において、硬化剤の使用量は、全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.5〜2当量が好ましく、0.6〜1.5当量が特に好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要により硬化促進剤を添加しても良い。硬化促進剤の具体例としては、トリフェニルホスフィン、ビス(メトキシフェニル)フェニルフォスフィン等のフォスフィン類、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル,4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリスジメチルアミノメチルフェノール、ジアザビシクロウンデセン等の3級アミン類、テトラブチルアンモニウム塩、トリイソプロピルメチルアンモニウム塩、トリメチルデカニルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩などの4級アンモニウム塩、トリフェニルベンジルフォスフォニウム塩、トリフェニルエチルフォスフォニウム塩、テトラブチルフォスフォニウム塩などの4級フォスフォニウム塩(4級塩のカウンターイオンはハロゲン、有機酸イオン、水酸化物イオンなど、特に指定は無いが、特に有機酸イオン、水酸化物イオンが好ましい)、オクチル酸スズ等の金属化合物等が例示される。これらの硬化促進剤の使用量は、エポキシ樹脂100質量部当たり、通常0.2〜5質量部、好ましくは、0.2〜4質量部である。
本発明のエポキシ樹脂組成物は必要に応じて無機充填材を含有させることができる。本発明のエポキシ樹脂組成物が含有する無機充填材は、公知のものであれば何ら制限はない。無機充填材の具体例としては、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化チタン、酸化亜鉛、炭化タングステン、アルミナ、酸化マグネシウム等の無機粉末充填材、合成繊維、セラミックス繊維等の繊維質充填材、着色剤等が挙げられる。これら無機充填材の形状は、粉末(塊状、球状)、単繊維、長繊維等いずれであってもよい。本発明のエポキシ樹脂組成物における無機充填材の使用量は、エポキシ樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対して通常2〜1000質量部である。これら無機充填材は1種のみを使用しても、2種類以上を併用してもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じてシランカップリング剤、離型剤及び顔料等種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂並びに各種熱可塑性樹脂等を添加することができる。熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の具体例としては、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、マレイミド樹脂、シアナート樹脂、イソシアナート化合物、ベンゾオキサジン化合物、ビニルベンジルエーテル化合物、ポリブタジエン及びこの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物、インデン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリエチレン、ジシクロペンタジエン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂、又は熱可塑性樹脂は本発明のエポキシ樹脂組成物中において60質量% 以下を占める量が用いられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記各成分を均一に混合することにより得られる。本発明のエポキシ樹脂組成物は従来知られているのと同様の方法で容易にその硬化物とすることが出来る。例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物の必須成分であるエポキシ樹脂、硬化剤、並びに必要により硬化促進剤、配合剤、各種熱硬化性樹脂や各種熱可塑性樹脂等を、必要に応じて押出機、ニーダ又はロール等を用いて均一になるまで充分に混合して得られた本発明のエポキシ樹脂組成物を、溶融注型法あるいはトランスファー成型法やインジェクション成型法、圧縮成型法などによって成型し、さらにその融点以上で2〜10時間加熱することにより本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を得ることが出来る。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は溶媒を含むワニスとすることもできる。該ワニスは、例えば、本発明のエポキシ樹脂と硬化剤を含み、必要に応じて熱伝導率が20W/m・K以上の無機充填材などのその他の成分を含む混合物を、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、グルタル酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル等のエステル類、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ及びソルベントナフサ等の石油系溶媒等の有機溶媒と混合することにより得ることが出来る。溶媒の量はワニス全体に対し通常10〜95質量%、好ましくは15〜85質量%である。上記のようにして得られるワニスをガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維及び紙などの繊維基材に含浸させた後に加熱によって溶媒を除去すると共に、本発明のエポキシ樹脂組成物を半硬化状態とすることにより、本発明のプリプレグを得ることが出来る。尚、ここで言う「半硬化状態」とは、反応性の官能基であるエポキシ基が一部未反応で残っている状態を意味する。該プリプレグを熱プレス成型して硬化物を得ることが出来る。
以下、本発明を実施例でさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。
なお、製造したエポキシ化合物の収量は、以下に定義する回収率で評価した。
・回収率
回収率(%)=(得られたエポキシ樹脂の重量)/(原料リグニンの重量)×100
(原料に付加したグリシジル基の分だけ生成物の重量が増えるため、回収率は100%以上になる場合がある。)
エポキシ当量(一部で「EEW」と略す)は以下の条件で測定した。
・エポキシ当量(EEW)
JIS K−7236に記載された方法で測定し、単位はg/eq.である。
硬化物のガラス転位点(Tg)は、以下の条件で測定した。
・ガラス転移温度(DMA):JISK−7244に準拠
動的粘弾性測定器:TA−instrumets製、DMA−2980
測定温度範囲:−30℃〜250℃
温速度:2℃/分
試験片サイズ:2mm×50mmに切り出した物を使用した(厚み約50μm)。
解析条件Tg:DMA測定に於けるTanδのピーク点(tanδMAX)をTgとした。
(評価試験1)
ユーカリのチップを用い、蒸解時にアントラキノン0.1重量%を追加した以外は、特開2016−060750の実施例1(1)及び(2)に記載の方法に準じて塩基存在下、高温処理を行い、リグニンケーキを作製し、60℃の熱風乾燥器で乾燥させ、ソーダアントラキノン蒸解したユーカリリグニン乾燥体を得た。
フラスコに、前記のソーダアントラキノン蒸解したユーカリリグニン乾燥体を5重量部と、イソプロパノール10重量部(リグニンに対して2倍量)及び水5重量部(リグニンに対して1倍量)を加え、常温で5時間撹拌した。撹拌後の様子を確認し、リグニンの溶解が確認された場合:○、リグニンが僅かに溶解した場合:△、リグニンが全く溶解しなかった場合:×、としてリグニンの溶解度を評価した(表1 溶解試験)。
次に、前記リグニン溶液を、桐山漏斗を用いて吸引ろ過した。その際に、通液性が良くろ過にかかる時間が30分以内の場合:○、目詰まりが発生してろ過にかかる時間が30分以上の場合:×、としてろ過性を評価した(表1 ろ過性評価)。
最後に、溶解試験及びろ過性評価の双方が良好であり、エポキシ樹脂原料としての前処理として好適である場合:○、どちらか一方でも不具合があり、エポキシ樹脂原料としての前処理として適当でない場合:×、として総合評価とした(表1 総合評価)。
評価結果は、それぞれ表1に記載した。
(評価試験2〜17)
イソプロパノール10重量部及び水5重量部に代えて、表1にそれぞれ記載した溶媒を用いた以外は、評価試験例1と同様の操作を行い、評価試験2〜17を実施し、結果を表1に纏めた。但し、リグニンがほとんど溶解せず、溶解試験が×となった場合は、ろ過性評価を実施しなかった(未実施の場合は、表1に−と記載した)。
(表1)
Figure 2018178024
表1の結果より、イソフロパノール、エタノール、メタノールなどのアルコールと、水との混合溶媒でリグニンを抽出すると、良好に抽出することができる(評価試験1〜5)が、イソプロパノール、エタノールなどのアルコールのみを用いた場合や、水のみを用いた場合は、リグニンが十分に溶解せず、抽出が不可能であることが確認できる(評価試験6〜8)。また、アルコール以外の親水性溶媒である、アセトンやアセトニトリルで同様の試験を実施しても、いずれも満足にリグニンを抽出することができず(評価試験9〜14)、酢酸エチル、トルエン、ヘキサンなどの親油性の溶媒を用いても抽出が不可能であること(評価試験15〜17)が確認できる。従って、アルコールと水の混合溶媒が、リグニンの抽出に優れた溶媒系であることが確認できる。
(実施例1)
反応容器に、前記で得られたソーダアントラキノン蒸解したユーカリリグニン乾燥体を10重量部と、イソプロパノール(イソプロピルアルコール「IPA」とも表す)20重量部と、水20重量部を加えて、常温で5時間撹拌した。その後、反応混合物をろ過し、ろ液にエピクロルヒドリン90重量部を加え、しばらく撹拌した後、有機層と水層に分かれるまで放置し、有機層のみを取り出した。
得られたリグニン溶液に、テトラエチルアンモニウムブロミド0.5重量部を加え、加熱還流条件下で5時間撹拌した。その後、内温を60℃に下げた後、水酸化ナトリウム3.2重量部を加えて1時間撹拌した。
得られた反応混合物に水を加え、有機層と水層に分離した後に水層を除去し、さらに水を加えて有機層を洗浄した。有機層をロータリーエバポレータで減圧濃縮し、得られた黒色生成物をアセトン100重量部に再度溶解させ、30%水酸化ナトリウム水溶液0.8重量部を加えて、加熱還流条件下で2時間撹拌した。得られた反応混合物に、酢酸エチルと水を加え、洗浄操作を3回繰り返した。
有機層をロータリーエバポレータで減圧濃縮し、さらに高温(150℃)で残留溶媒を除去し、本発明のエポキシ樹脂(7.8重量部、回収率78%)を得た。 得られた化合物のエポキシ当量(EEW)は、364g/eq.であった。また、得られた化合物のH−NMRを測定したところ、2.5−2.9ppm、3.1−3.5ppm、4.0−4.3ppm(重DMSO)にグリシジル基由来と考えられる、ブロードなシグナルが観察された。また、13C−NMRを測定したところ、43.8ppm、50.9ppm、74.4ppm(重DMSO)に、グリシジル基由来と考えられるシグナルが観察された。
(実施例2)
イソプロパノールの代わりにエタノール(「EtOH」と略す)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2のエポキシ樹脂を得た。回収率は55%、エポキシ当量(EEW)は322g/eq.であった。
(実施例3)
加える水の量を10重量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例3のエポキシ樹脂を得た。回収率は55%、エポキシ当量(EEW)は363g/eq.であった。
(比較例1)
反応容器に、前記のソーダアントラキノン蒸解したユーカリリグニン乾燥体を10重量部と、エピクロルヒドリン90重量部、テトラエチルアンモニウムブロミド0.5重量部を加え、加熱還流条件下で5時間撹拌した。その後、内温を60℃に下げた後、水酸化ナトリウム3.2重量部を加えて1時間撹拌した。 得られた反応混合物に水を加え、有機層と水層に分離した後に水層を除去し、さらに水を加えて有機層を洗浄した。有機層をロータリーエバポレータで減圧濃縮し、得られた黒色生成物をアセトン100重量部に再度溶解させ、30%水酸化ナトリウム水溶液0.8重量部を加えて、加熱還流条件下で2時間撹拌した。得られた反応混合物に、酢酸エチルと水を加え、洗浄操作を3回繰り返した。
有機層をロータリーエバポレータで減圧濃縮し、さらに高温(150℃)で残留溶媒を除去し、本発明に記載のエポキシ樹脂(4.1重量部、回収率41%)を得た。得られた化合物のエポキシ当量(EEW)は、780g/eq.であった。
(表2)
Figure 2018178024
(実施例4)
ソーダアントラキノン蒸解したユーカリリグニン乾燥体を、ソーダアントラキノン蒸解したユーカリリグニンのウェットケーキ(含水率50%)とし、イソプロパノール20重量部と水20重量部を添加したところを、イソプロパノール20重量部のみの添加に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2のエポキシ樹脂を得た。回収率は60%、エポキシ当量(EEW)は360g/eq.であった。
(実施例5)
実施例1で得られたエポキシ樹脂とフェノールノボラック樹脂(明和化成株式会社製H−1、水酸基当量103g/eq.)を1対1の比率で混合し、メチルエチルケトンに溶解させ、1wt%のトリフェニルホスフィンを加えて、本発明のエポキシ樹脂組成物を作製した。その後に、溶媒を110℃で10分間乾燥させ、さらに150℃1時間及び175℃4時間加熱して、本発明の硬化物を作成した。
得られた本発明の硬化物のガラス転移温度(Tg)をDMAで測定したところ、193℃であった。
(実施例6)
硬化剤として用いたフェノールノボラック樹脂を、ソーダアントラキノン蒸解したユーカリリグニンのアセトン抽出物(水酸基当量180g/eq.)に代えた以外は、実施例5と同様の操作を行い、本発明の硬化物を作成した。
得られた本発明の硬化物のガラス転移温度(Tg)をDMAで測定したところ、208℃であった。
表1の結果を受けて、アルコールと水の混合溶媒に溶解する成分を抽出し、抽出した成分にエピハロヒドリンを反応させて、本発明のエポキシ樹脂を製造したところ、良好な回収率及びエポキシ当量でエポキシ樹脂を得ることができた(実施例1〜3)。さらに、得られたエポキシ樹脂と、硬化剤を配合し、本発明のエポキシ樹脂硬化物を作製して、ガラス転位点を測定したところ、測定値は200℃程度であり、優れた耐熱性を有していることが判明した。
以上の結果から、本発明のリグニンを原料とするエポキシ樹脂の製造法は、非常に有用であり、該製造方法で得られたエポキシ樹脂及びその硬化物は、優れた特性を有していると言える。













Claims (9)

  1. 木質バイオマスを塩基存在下で加熱処理して得られるリグニンから、アルコールと水の混合溶媒に溶解する成分を抽出し、抽出した成分にエピハロヒドリンを反応させるエポキシ樹脂の製造方法。
  2. 前記木質バイオマスが、広葉樹である請求項1に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
  3. 前記リグニンが、ソーダアントラキノンリグニン又はクラフトリグニンである請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
  4. 前記アルコールが、炭素数3以下のアルコールである請求項1乃至3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
  5. 木質バイオマスを塩基存在下で加熱処理して得られるリグニンのウェットケーキに、アルコールを添加して、溶解する成分を抽出する請求項1乃至4のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
  6. 木質バイオマスを塩基存在下で加熱処理して得られるリグニンのウェットケーキに、アルコールを添加して、溶解する成分を抽出し、該抽出液にエピハロヒドリンを添加する請求項5に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
  7. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の製造方法で合成されたエポキシ樹脂。
  8. 請求項7に記載のエポキシ樹脂と、硬化剤及び/又は硬化促進剤を含有するエポキシ樹脂組成物。
  9. 請求項8に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。








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