JP2004238539A - リグニン系架橋体とその製造方法 - Google Patents

リグニン系架橋体とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】このような状況に鑑み再生可能な資源であるリグノセルロース系資源に由来するリグニン含有材料を用いて、親水性の架橋体を構築すること。
【解決手段】以下の(a)〜(d): (a)フェノール化合物により溶媒和されたリグニン含有材料に酸を添加し混合して得られるリグニンのフェノール化合物であるリグニン一次誘導体、(b)(a)のリグニン一次誘導体に対してカルボキシアルキル基、ハイドロキシアルキル基、エポキシ基、カルボキシル基から選択される1種あるいは2種以上が導入されたリグニン二次誘導体、(c)(a)のリグニン一次誘導体をアルカリ処理して得られるリグニン二次誘導体、(d)(a)のリグニン誘導体に対してアルカリ処理と、カルボキシルアルキル基、ハイドロキシアルキル基、エポキシ基、カルボキシル基から選択される1種あるいは2種以上の官能基の導入反応とが施されたリグニン二次誘導体、からなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン誘導体が、親水性の架橋性化合物により架橋した架橋とする。
【選択図】図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リグニンにフェノール化合物を導入して得られるリグニン誘導体の利用に関し、特に、親水性のリグニン系架橋体を製造する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
リグニンは、植物系高分子として知られているが、現状においては、試薬や化成品としてわずかではあるが市販されているに過ぎない。リグニンとは総称名であり、流通されているリグニンは、主としてパルプ工業から排出されるリグニン誘導体であるクラフトリグニンやリグノスルホン酸である。他に、パルピング技術から派生したリグニン誘導体として、ソルボリシスリグニン(オートハイドロリシス、アルコーリシス、酢酸蒸煮等の処理されたリグニン)、蒸煮爆砕リグニン、木材を褐色腐朽菌(糸状菌)分解処理後に抽出されたリグニン誘導体などがある。さらに、実験室レベルのものとしては、硫酸リグニン(クラーソンリグニン)、ジオキサンリグニン、ミルウッドリグニン(MWL)などと呼ばれるリグニンがある。
【0003】
リグニンは、本来、植物体内に存在する時点において多様性に富むが、リグニンを植物体から分離する上記各種分離方法によっても分離されたリグニンの分子的特性が大きく異なることがよく知られている。
いずれのリグニン誘導体もフェノール系高分子であるため水に対する親和性は低く、これらの利用技術研究は、フェノール樹脂やウレタン樹脂などのような不融不溶巨大高分子化への樹脂化、これらの添加剤としての研究開発がほとんどであり、しかも、いまだ実現されてはいない。これらのリグニン誘導体のうち、水溶性誘導体であるリグノスルホン酸がセメントなどの分散剤として使用されているに過ぎない(特許文献1)。
また、酢酸リグニンとポリエチレングリコールジグリシジルエーテルとの架橋体が吸水性ゲルを構成することが報告されている(非特許文献1)。しかしながら、このゲルの吸水性は架橋体自重の2〜5倍と非常に低いものとなっている。
フェノール樹脂やエポキシ樹脂に代表される化学合成品で芳香族化合物を用いた3次元ネットワークポリマーにおいても、その一般的特性は高耐久、高耐水性等であると認識されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−53444号公報
【非特許文献1】
第45回リグニン討論会 要旨集(2000)p.139〜p.142
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況に鑑み再生可能な資源であるリグノセルロース系資源に由来するリグニン含有材料を用いて、親水性の架橋体を構築することを、その目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、特定のリグニン誘導体を用いることにより、高芳香族性、かつ優れた特性を有する親水性架橋体を構築できることを見出し、本発明を完成した。
本発明者らは、リグニン含有材料からフェノール化合物を用いて誘導される特定のリグニンの一次誘導体あるいはこの一次誘導体のさらなる誘導体である二次誘導体を親水性架橋性化合物によって架橋することにより、低架橋時には、リグニン誘導体が水溶化し、高架橋時には、優れた吸水特性が得られることを見出した。すなわち、本発明によれば以下の手段が提供される。
【0007】
(1)リグニン系架橋体であって、
以下の(a)〜(d):
(a)フェノール化合物により溶媒和されたリグニン含有材料に酸を添加し混合して得られるリグニンのフェノール化合物であるリグニン一次誘導体、
(b)(a)のリグニン一次誘導体に対してカルボキシアルキル基、ハイドロキシアルキル基、エポキシ基、カルボキシル基から選択される1種あるいは2種以上が導入されたリグニン二次誘導体、
(c)(a)のリグニン一次誘導体をアルカリ処理して得られるリグニン二次誘導体、
(d)(a)のリグニン誘導体に対してアルカリ処理と、カルボキシルアルキル基、ハイドロキシアルキル基、エポキシ基、カルボキシル基から選択される1種あるいは2種以上の官能基の導入反応とが施されたリグニン二次誘導体、
からなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン誘導体が、親水性の架橋性化合物により架橋されて形成される、架橋体。
(2) 前記フェノール化合物はp−クレゾールである、(1)記載の架橋体。
(3)前記リグニン誘導体は、(b)のリグニン誘導体であって、カルボキシアルキル基が導入された二次誘導体である、(1)又は(2)に記載の架橋体。
(4)前記親水性架橋性化合物は、2官能基以上のグリシジル基を備えるエーテル系化合物である、(1)〜(3)のいずれかに記載の架橋体。
(5)前記親水性架橋性化合物は、2官能基以上のグリシジル基を有するポリアルキレングリコールである、(4)に記載の架橋体。
(6)前記リグニン含有材料は、木本類植物及び/又は草本類植物に由来するリグノセルロース系材料である、(1)〜(5)のいずれかに記載の架橋体。
(7)リグニン系架橋体であって、
(e)アルカリリグニン、オルガノソルブリグニン、リグノスルホン酸、ソルボリシスリグニン、蒸煮爆砕リグニン、糸状菌処理木材、硫酸リグニン、ジオキサンリグニン及びミルドウッドリグニンからなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン一次誘導体、及び
(d)(e)のリグニン誘導体に対してカルボキシアルキル基、ハイドロキシアルキル基、エポキシ基及びカルボキシル基からなる群から選択される1種あるいは2種以上が導入されたリグニン二次誘導体、
からなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン誘導体が、親水性の架橋性化合物により架橋されて形成される、架橋体。
(8)前記架橋体は、水を含有する架橋反応媒体によって架橋されて形成される、(1)〜(7)のいずれかに記載の架橋体。
(9)前記架橋反応媒体はアルカリを含有する、(8)記載の架橋体。
(10)前記1種あるいは2種以上のリグニン誘導体と、多糖類、オリゴ糖類、及びこれらの糖類に対してカルボキシアルキル基、ハイドロキシアルキル基、エポキシ基及びカルボキシル基からなる群から選択される1種あるいは2種以上が導入されて得られる糖類誘導体からなる群から選択される1種あるいは2種以上の糖類化合物とが前記架橋性化合物により架橋されて形成される、(1)〜(9)のいずれかに記載の架橋体。
(11)吸水性架橋体である、(1)〜(10)のいずれかに記載の架橋体。
(12)両親媒性架橋体である、(1)〜(10)のいずれかに記載の架橋体。
(13)リグニン系架橋体の製造方法であって、
以下の(a)〜(d):
(a)フェノール化合物により溶媒和されたリグニン含有材料に酸を添加し混合して得られるリグニンのフェノール化合物であるリグニン一次誘導体、
(b)(a)のリグニン一次誘導体に対してカルボキシアルキル基、ハイドロキシアルキル基、エポキシ基及びカルボキシル基からなる群から選択される1種あるいは2種以上が導入されたリグニン二次誘導体、
(c)(a)のリグニン一次誘導体をアルカリ処理して得られるリグニン二次誘導体、
(d)(a)のリグニン誘導体に対してアルカリ処理と、カルボキシルアルキル基、ハイドロキシアルキル基、エポキシ基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種あるいは2種以上の導入反応とが施されたリグニン二次誘導体、
二次誘導体、
から選択される1種あるいは2種以上のリグニン誘導体と親水性架橋性化合物とを水を含有する架橋反応媒体下で架橋させる工程を備える、方法。
(14)前記架橋反応媒体はアルカリを含有する、(13)記載の方法。
(15)前記架橋性化合物は、2官能基以上のグリシジル基を備えるエーテル系化合物である、(13)又は(14)のいずれかに記載の方法。
(16)前記架橋性化合物は、2官能基以上のグリシジル基を有するポリアルキレングリコールである、(13)又は(14)に記載の方法。
(17)前記架橋性化合物を前記リグニン誘導体と架橋するのに十分な量を供給して架橋させてゲル状の架橋体を生成させる、(13)〜(16)のいずれかに記載の方法。
(18)ゲル状架橋体を生成させる際、架橋反応時間を調整して得られた架橋体の吸水倍率を調整する、(17)記載の方法。
(19)前記架橋反応工程後、反応系から分離したゲル状架橋体に過剰の水を供給して吸水させる工程を備える、(17)又は(18)に記載の方法。
(20)前記リグニン含有材料は、木本類植物及び/又は草本類植物に由来する1種あるいは2種以上のリグノセルロース系材料である、(13)〜(19)のいずれかに記載の方法。
(21)リグニン系架橋体の製造方法であって、
(e)アルカリリグニン、オルガノソルブリグニン、リグノスルホン酸、ソルボリシスリグニン、蒸煮爆砕リグニン、糸状菌処理木材、硫酸リグニン、ジオキサンリグニン及びミルドウッドリグニンからなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン一次誘導体、及び
(f)(e)のリグニン誘導体に対してカルボキシアルキル基、ハイドロキシアルキル基、エポキシ基、カルボキシル基から選択される1種あるいは2種以上が導入されたリグニン二次誘導体、
からなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン誘導体と親水性架橋性化合物とを水を含有する架橋反応媒体下で架橋させる工程を備える、方法。
(22)前記1種あるいは2種以上のリグニン誘導体と、多糖類、オリゴ糖類、及びこれらの糖類に対してカルボキシアルキル基、ハイドロキシアルキル基、エポキシ基及びカルボキシル基から選択される1種あるいは2種以上の官能基が導入されて得られる糖類誘導体からなる群から選択される1種あるいは2種以上の糖類化合物、とを前記架橋性化合物により架橋させて架橋体を得る、(13)〜(21)のいずれかに記載の方法。
【0008】
【発明を実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のリグニン系架橋体は、以下の(a)〜(d)のリグニン誘導体の1種あるいは2種以上を親水性架橋性化合物により架橋して得られる。
(a)フェノール化合物により溶媒和されたリグニン含有材料に酸を添加し混合して得られるリグニンのフェノール化合物の一次誘導体
(b)(a)のリグニン一次誘導体に対してカルボキシアルキル基、ハイドロキシアルキル基、グリシジルエーテル基、及びカルボキシル基から選択される1種あるいは2種以上が導入されたリグニン二次誘導体
(c)(a)のリグニン一次誘導体をアルカリ処理して得られるリグニン二次誘導体
(d)(a)のリグニン誘導体に対してアルカリ処理と、カルボキシルアルキル基、ハイドロキシアルキル基、エポキシ基、カルボキシル基から選択される1種あるいは2種以上の導入反応とが施されたリグニン二次誘導体
【0009】
あるいは、本発明のリグニン系架橋体は、以下の(e)及び(f)から選択される1種あるいは2種以上を親水性架橋性化合物により架橋して得られる。
(e)アルカリリグニン、オルガノソルブリグニン、リグノスルホン酸、ソルボリシスリグニン、蒸煮爆砕リグニン、糸状菌処理木材、硫酸リグニン、ジオキサンリグニン及びミルドウッドリグニンからなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン一次誘導体、及び
(d)(e)のリグニン誘導体に対してカルボキシアルキル基、ハイドロキシアルキル基、エポキシ基及びカルボキシル基からなる群から選択される1種あるいは2種以上が導入されたリグニン二次誘導体、
からなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン誘導体が、親水性の架橋性化合物により架橋されて形成される、架橋体。
【0010】
以下、各種リグニン誘導体について説明し、次いで、架橋体について説明する。
(リグニン一次誘導体)
本発明において用いる一つのリグニン一次誘導体は、リグニン含有材料をフェノール化合物で溶媒和後、酸を添加し混合して得られるリグニンのフェノール化合物であるリグニン誘導体(以下、このリグニン一次誘導体を、特に、リグノフェノール系誘導体あるいはリグノフェノール系一次誘導体ということがある。)である。この反応過程によりリグニンのアリールプロパンユニットのベンジル位(側鎖C1位、以下、単にC1位という。)にフェノール化合物がグラフト(導入)されたリグニン誘導体を得ることができる。フェノール化合物は、そのフェノール性水酸基に対してオルト位あるいはパラ位にて前記C1位の炭素原子に結合する。この結果、1,1−ビス(アリール)プロパンユニットがリグニン中に形成される。この反応において、フェノール化合物は、前記C1位に対して選択的に導入されるため、出発原料であるリグニン含有材料におけるC1位における様々な結合を開放し、リグニンマトリックスの多様性を低減し、また、低分子量化することができる。さらに、この結果、従来のリグニンにはなかった各種溶媒への溶解性、熱流動性、熱可塑性など各種の特性を発現することが既に知られている。
なお、ここで、フェノール化合物で溶媒和するとは、液体のフェノール化合物にリグニン含有材料を浸漬する等して溶媒和する他、液体あるいは固体のフェノール化合物を当該フェノール化合物が溶解する溶媒に溶解させたものをリグニン含有材料に適用後、溶媒を留去することでリグニン含有材料にフェノール化合物を収着することによっても達成することができる。
【0011】
本発明者らはこれまでの研究により、濃酸による炭水化物の膨潤に基づく組織構造の破壊と、フェノール化合物によるリグニンの溶媒和とを組み合わせてリグニンの不活性化を抑制しつつ、リグノセルロース系材料を炭水化物とリグノフェノール誘導体とに分離する方法を開発している(特開平2−233701号)。この方法で得られたリグノフェノール誘導体の活用法としては、例えば、セルロース系ファイバー等の成形材料に適用し成形体を作製することが報告されている(特開平9−278904号)。かかるリグノフェノール誘導体は、1,1−ビス(アリール)プロパンを高頻度構成単位として有するリグニン系ポリマーであって、高粘結性を潜在的に有していることがわかっている(特開平9−278904号)。
さらに、かかるリグノフェノール誘導体は、メチロール化することにより架橋性を付与でき、リニアあるいはネットワーク状の架橋構造を構築できると同時に、アルカリ処理によって、再び低分子化して溶媒中に溶解されることも、本発明者らにより見出されている(特開2001−261839号公報)。
また、これらの他、リグノフェノール誘導体に関するより一般的な記載及びその製造プロセスについては、国際公開WO99/14223号公報、特開2001−64494号公報、特開2001−261839号公報、特開2001−131201号公報、特開2001−342353号公報、特開2002−105240号公報において記載されている(これらの特許文献に記載の内容は、全て引用により本明細書中に取り込まれるものとする)。
【0012】
このプロセスによりリグノセルロース系材料からリグノフェノール誘導体を得るシステムにおける構造変換プロセスの一例を図1に示す。
この構造変換プロセスは、図1に示すように、リグノセルロース系材料を予めフェノール化合物で溶媒和しておいた上で、当該リグノセルロース系材料を酸と接触させることにより、リグニンのアリールプロパンユニットのリグニンの複合状態を緩和させ、同時に、天然リグニンのアリールプロパンユニットのC1位(ベンジル位)に選択的に前記フェノール誘導体をグラフティングさせ、リグノフェノール誘導体を生成させ、同時にセルロースとリグノフェノール誘導体とに分離できる。このプロセスにおける構造変換の一例を、図2に示す。
【0013】
リグノフェノール誘導体は、それ自体、リグノセルロース系材料などのリグニン含有材料から反応、分離して得られるリグニン由来のポリマーの混合物である。このため、得られるポリマーにおける導入フェノール誘導体の量や分子量は、原料となるリグニン含有材料のリグニン構造および反応条件により変動する。
【0014】
(リグニン含有材料)
本発明におけるリグニン含有材料には、天然リグニンを含有するリグノセルロース系材料を含む。リグノセルロース系材料は、木質化した材料、主として木材である各種材料、例えば、木粉、チップの他、廃材、端材、古紙などの木本類植物資源に付随する農産廃棄物や工業廃棄物を挙げることができる。また用いる木本類の種類としては、スギ、ヒノキなどの針葉樹、ブナなどの広葉樹等、任意の種類のものを使用することができる。さらに、ケナフ、ジュート、イネ、タケなどの各種草本類植物、それに関連するイネワラ、モミガラなどの農産廃棄物や工業廃棄物なども使用できる。
【0015】
(フェノール化合物)
フェノール化合物としては、1価のフェノール化合物、2価のフェノール化合物、または3価のフェノール化合物などを用いることができる。
1価のフェノール化合物の具体例としては、1以上の置換基を有していてもよいフェノール、1以上の置換基を有していてもよいナフトール、1以上の置換基を有していてもよいアントロール、1以上の置換基を有していてもよいアントロキノンオールなどが挙げられる。
2価のフェノール化合物の具体例としては、1以上の置換基を有していてもよいカテコール、1以上の置換基を有していてもよいレゾルシノール、1以上の置換基を有していてもよいヒドロキノンなどが挙げられる。
3価のフェノール化合物の具体例としては、1以上の置換基を有していてもよいピロガロールなどが挙げられる。
本発明においては1価のフェノール化合物、2価のフェノール化合物及び3価のフェノール化合物のうち、1種あるいは2種以上を用いることができる。フェノール化合物の導入割合を高くするには、単環のフェノール化合物を用いることが好ましい。好ましくは、p−クレゾール、フェノール、p−エチルフェノールである。また、得られるリグニン誘導体の水親和性を高めるには、フェノール化合物の導入比率を高めるか、あるいは、2価以上のフェノール化合物を用いることが好ましい。好ましくはカテコール、ピロガロールを用いることができる。
【0016】
1価から3価のフェノール化合物が有していてもよい置換基の種類は特に限定されず、任意の置換基を有していてもよいが、好ましくは、電子吸引性の基(ハロゲン原子など)以外の基であり、例えば、炭素数が1〜4、好ましくは炭素数が1〜3の低級アルキル基含有置換基である。低級アルキル基含有置換基としては、例えば、低級アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、低級アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基など)である。また、アリール基(フェニル基など)の芳香族系の置換基を有していてもよい。また、水酸基含有置換基であってもよい。
【0017】
これらのフェノール化合物は、そのフェノール性水酸基に対してオルト位あるいはパラ位の炭素原子がリグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素に結合することにより、1,1−ビス(アリール)プロパンユニットが形成されることになる。したがって、少なくとも1つの導入サイトを確保するには、オルト位及びパラ位のうち、少なくともひとつの位置に置換基を有していないことが好ましい。
フェノール化合物のフェノール性水酸基のオルト位炭素原子が前記C1位に結合して形成されたユニットをオルト位結合ユニットといい、フェノール化合物のフェノール性水酸基のパラ位炭素原子が前記C1位に結合して形成されたユニットをパラ位結合ユニットという。図3に、オルト位結合ユニット及びパラ位結合ユニットの一例として、フェノール化合物として、それぞれp−クレゾールと、2,6−ジメチルフェノールを用いて形成されるユニットを示す。
【0018】
以上のことから、本発明では、無置換フェノール誘導体の他、少なくとも一つの無置換のオルト位あるいはパラ位を有する各種置換形態のフェノール誘導体の1種あるいは2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0019】
オルト位結合ユニットとパラ位結合ユニットとは、例えば、後述するアルカリ処理工程において異なる機能を発現する。オルト位結合ユニットは、緩和なアルカリ処理により導入されたフェノール化合物におけるフェノール性水酸基を消失させるとともにアリールクマラン構造を当該ユニットにおいて生成し、強いアルカリ処理によりアリール基移動に伴って分子形態が変動される。いずれにおいても、オルト位結合ユニットは、アルカリ処理による効率的なリグノフェノール誘導体の低分子化に寄与する。
一方、パラ位結合ユニットは、アルカリ処理によりアリールクマラン構造やその後の分子形態変動を生じず、当該ユニット部位における低分子化には寄与しない。したがって、アルカリ処理耐性を付与する機能を有するといえる。
【0020】
また、リグノフェノール誘導体において、使用するフェノール化合物の種類を選択することにより、得られるリグノフェノール誘導体への後段の二次誘導体化工程での官能基の導入位置や導入頻度を調節し、結果として架橋体における構造制御が可能となる。
【0021】
また、オルト位結合ユニットを有するリグノフェノール誘導体を得るには、少なくとも一つのオルト位(好ましくは全てのオルト位)に置換基を有していないフェノール化合物を用いる。また、少なくとも一つのオルト位(2位あるいは6位)が置換基を有さず、パラ位(4位)に置換基を有するフェノール化合物(典型的には、2,4位置換1価フェノール誘導体)が好ましい。最も好ましくは、全てのオルト位が置換基を有さず、パラ位に置換基を有するフェノール化合物(典型的には、4位置換1価フェノール化合物)である。したがって、4位置換フェノール化合物及び2,4位置換フェノール化合物を1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0022】
パラ位結合ユニットを有するリグノフェノール誘導体を得るには、パラ位に置換基を有していないフェノール化合物(典型的には、2位(あるいは6位)置換1価フェノール化合物)が好ましく、より好ましくは、同時に、オルト位(好ましくは、全てのオルト位)に置換基を有するフェノール化合物(典型的には2,6位置換1価フェノール化合物)を用いる。すなわち、2位(あるいは6位)置換フェノール化合物及び2、6位置換フェノールのうち1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0023】
フェノール誘導体の好ましい具体例としては、p−クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2−メトキシフェノール(Guaiacol)、2,6−ジメトキシフェノール、カテコール、レゾルシノール、ホモカテコール、ピロガロール及びフロログルシノールなどが挙げられる。p−クレゾールを用いることにより、高い導入効率を得ることができる。
【0024】
(酸)
リグニン含有材料と接触させる酸としては、特に限定しないで、リグノフェノール誘導体を生成しうる範囲で各種無機酸や有機酸を使用することができる。したがって、硫酸、リン酸、塩酸などの無機酸の他、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ギ酸などを使用することができる。リグニン含有材料としてリグノセルロース系材料を使用する場合には、セルロースを膨潤させる作用を有していることが好ましい。例えば、65重量%以上の硫酸(好ましくは、72重量%の硫酸)、85重量%以上のリン酸、38重量%以上の塩酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ギ酸などを挙げることができる。好ましい酸は、85重量%以上(好ましくは95重量%以上)のリン酸、トリフルオロ酢酸又はギ酸である。また、リグノフェノール誘導体を高収率で得るには、65重量%以上の硫酸(好ましくは、72重量%の硫酸)が好ましい。
【0025】
リグニン含有材料中のリグニンを、リグノフェノール誘導体に変換し、分離する方法としては各種方法が採用できる。
例えば、図1に示すように、リグニン含有材料に、液体状のフェノール誘導体(上記で説明したもの、例えば、p−クレゾール)を浸透させ、リグニンをフェノール誘導体により溶媒和させ、次に、リグノセルロース系材料に酸(上記で説明したもの、例えば、72%硫酸)を添加し混合して、セルロース成分を溶解する。この方法によると、リグニンが低分子化され、同時にその基本構成単位のC1位にフェノール化合物が導入されたリグノフェノール誘導体がフェノール化合物相に生成される。このフェノール化合物相から、リグノフェノール誘導体が抽出される。リグノフェノール誘導体は、リグニン中のベンジルアリールエーテル結合が開裂して低分子化されたリグニンの低分子化体の集合体として得られる。
図2は、アリールプロパンユニットを有する天然リグニンに対して相分離処理を行うことにより、本発明におけるリグノフェノール誘導体が得られることを示している。
【0026】
フェノール化合物相からのリグノフェノール誘導体の抽出は、例えば、次の方法で行うことができる。すなわち、フェノール化合物相を、大過剰のエチルエーテルに加えて得た沈殿物を集めて、アセトンに溶解する。アセトン不溶部を遠心分離により除去し、アセトン可溶部を濃縮する。このアセトン可溶部を、大過剰のエチルエーテルに滴下し、沈殿区分を集める。この沈殿区分から溶媒留去し、リグノフェノール誘導体を得る。なお、粗リグノフェノール誘導体は、フェノール化合物相やアセトン可溶区分を単に減圧蒸留により除去することによって得ることができる。
【0027】
また、リグニン含有材料に、固体状あるいは液体状のフェノール化合物を溶解した溶媒(例えば、エタノールあるいはアセトン)を浸透させた後、溶媒を留去(フェノール誘導体の収着)した場合も、先の方法と同様、リグノフェノール誘導体が生成される。この方法においては、生成したリグノフェノール誘導体は、液体フェノール化合物にて抽出分離することができる。あるいは、全反応液を過剰の水中に投入し、不溶区分を遠心分離にて集め、脱酸後、乾燥する。この乾燥物にアセトンあるいはアルコールを加えてリグノフェノール誘導体を抽出する。さらに、この可溶区分を第1の方法と同様に、過剰のエチルエーテル等に滴下して、リグノフェノール誘導体を不溶区分として得ることもできる。以上、リグノフェノール誘導体の調製方法の具体例を説明したが、これらに限定されるわけではなく、これらに適宜改良を加えた方法で調製することもできる。
【0028】
以下に、リグノセルロース系材料から得られるリグノフェノール誘導体の有する全体的、一般的性質を挙げる。ただし、本発明におけるリグノフェノール誘導体を、以下の性質を有するものに限定する趣旨ではない。
(1)重量平均分子量が2000〜20000程度である。
(2)分子内に共役系をほとんど有さずその色調は極めて淡色である。典型的には淡いピンク系白色粉末である。
(3)針葉樹由来で約170℃、広葉樹由来で約130℃に固−液相転移点を有する。
(4)メタノール、エタノール、アセトン、ジオキサン、ピリジン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドなどに容易に溶解する。
なお、リグノフェノール誘導体においては、C1位へのフェノール化合物の導入形態は、そのフェノール性水酸基を介して導入されているものもあることが知られている。また、得られるリグノフェノール誘導体においては、通常、フェノール化合物がグラフトされていないアリールプロパンユニットも残存している。
【0029】
これらの一次誘導体に対して、カルボキシアルキル基、ハイドロキシアルキル基、エポキシ基、及びカルボキシル基のいずれかあるいは2種以上を導入することにより二次誘導体を得ることができる。以下、リグニン一次誘導体が上記(a)のリグニン一次誘導体である場合の二次誘導体化について説明する。
【0030】
(カルボキシアルキル基の導入)
カルボキシルアルキル基は、リグニン一次誘導体中のアルコール性あるいはフェノール性水酸基に導入され、一次誘導体をカルボキシアルキル化リグニン二次誘導体とする。カルボキシアルキル化は、一般に、アルカリ存在下に、モノハロゲノアルキルカルボン酸と反応させることにより達成することができる。リグニン誘導体のカルボキシアルキル化法は従来公知の各種方法を採用することができる。カルボキシアルキル基としては、アセチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、カルボキシブチル基等を挙げることができる。
例えば、リグニン一次誘導体を、この誘導体を分散できるイソプロパノールなどの有機溶媒で分散し、その後、アルカリ水溶液を加え、必要に応じてさらにイソプロパノールなどの有機溶媒を加えて得られた不均一混合溶液をモノクロロ酢酸などのモノハロゲノ酢酸(カルボキシアルキル化剤)を添加し、攪拌等しながら反応させることができる。また、リグニン一次誘導体を予めアルカリ溶液に浸漬した後、この浸漬物を有機溶媒に分散して、その後反応させることもできる。
なお、アルカリとしては、一般に用いられるアルカリ試薬でよいが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物のような強アルカリが好適に用いられる。また、リグニン一次誘導体等を分散する有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化物、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類等が挙げられ、これらは単独であるいは2種以上混合して使用される。これらの中でも、アルコール類、ケトン類、エーテル類等の極性有機溶媒の1種又は2種以上の組合せが良く、さらに好ましくは、イソプロパノール、アセトン、1,4−ジオキサンが用いられる。
【0031】
モノハロゲノアルキルカルボン酸は、次の一般式〔I〕で表わされるものが好ましく用いられる。
XRCOOH 〔I〕
(上式中、X及びRはそれぞれ以下のものを表わす。
X:F、Cl、Br、I等のハロゲン原子、R:炭素数1〜12の直鎖及び分枝を有するアルキル基。)
上記化合物中、特にXがCl又はBr原子で、Rが炭素数1〜5の直鎖及び分枝を有するアルキル基であるものが好ましい。
【0032】
上記モノハロゲノアルキルカルボン酸の使用量は、リグニンの水酸基量以上あれば良く、水酸基あたり、約1〜3モルであることが好ましい。モノハロゲノアルキルカルボン酸の添加方法としては、固体のまま及び/又はこの有機溶媒の溶液として、一括あるいは連続滴下で添加すれば良い。好ましいのは、有機溶媒の溶液として0.5〜3時間かけた連続滴下の方法であり、特に1〜2時間で連続滴下することが好ましい。また、モノハロゲノアルキルカルボン酸の添加終了後、その温度で0.5〜5時間(より好ましくは1〜4時間)反応を続けることが好適である。なお、モノハロゲノアルキルカルボン酸による反応にあたり、反応液を40℃〜60℃程度の範囲で加熱することが好ましい。
【0033】
カルボキシアルキル化二次誘導体は、固形生成物の他一部溶解した状態とで得られる。固形生成物は、反応終了後、ろ過等により固形の生成物を分離採取し、この固形生成物を水に溶解させ、希鉱酸、例えば希塩酸、希硫酸等の酸で中性に中和した後、電気透析で脱塩し、凍結乾燥等して得ることができる。また、溶解生成物は、上記ろ液中の有機溶媒を留去し、溶解物を乾固させ、この乾固物を中和前の固形生成物に添加することにより、両者を回収することができる。
【0034】
(ハイドロキシアルキル基の導入)
ハイドロキシアルキル化二次誘導体は、一次誘導体を、アルカリ条件下でハイドロキシアルキル化剤と反応させて、リグニン一次誘導体中のフェノール性水酸基のオルト位及び/又はパラ位に架橋性基を導入することにより、得ることができる。
すなわち、本二次誘導体は、用いる一次誘導体のフェノール性水酸基を解離しうる状態下において、一次誘導体に反応試薬を混合して反応させることによって得られる。一次誘導体のフェノール性水酸基が解離しうる状態は、通常、適当なアルカリ溶液中において形成される。使用するアルカリの種類、濃度及び溶媒は一次誘導体のフェノール性水酸基が解離するものであれば、特に限定されない。例えば、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を使用できる。
【0035】
このような条件下において、ハイドロキシアルキル基はフェノール性水酸基のオルト位又はパラ位に導入されるので、用いたフェノール誘導体の種類や組み合わせによって、この基の導入位置がおおよそ決定される。すなわち、オルト位及びパラ位において2置換されている場合には、導入フェノール核には架橋性基は導入されず、リグニン母体側のフェノール性芳香核に導入されることになる。母体側のフェノール性芳香核は、主として一次誘導体のポリマー末端に存在するため、主としてポリマー末端に架橋性基が導入された二次誘導体が得られる。
また、オルト位及びパラ位において1置換以下の場合には、導入フェノール核とリグニン母体のフェノール性芳香核に架橋性基が導入されることになる。したがって、ポリマー鎖の端末の他、その長さにわたって架橋性基が導入され、多官能性の二次誘導体が得られる。
【0036】
したがって、2置換フェノール誘導体と1置換以下のフェノール誘導体とを組み合わせることで、架橋性を調節することができる。本発明においては、2,4−ジメチルフェノール及び/又は2,6−ジメチルフェノールに代表される2置換フェノール化合物が用いられている場合、二次誘導体にリニアポリマー形成能が付与される。また、p−クレゾールに代表される1置換以下のフェノール化合物が用いられている場合、二次誘導体にネットワークポリマー形成能が付与される。2置換フェノール誘導体と1置換以下フェノール誘導体とを組み合わせて用いることにより、ネットワーク性を調節することができる。
【0037】
一次誘導体に導入するハイドロキシアルキル基の種類は特に限定されない。リグニン母体側の芳香核、あるいは、導入フェノール誘導体の芳香核に導入可能なものであればよい。当該基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシバレルアルデヒド基等を挙げることができる。また、ハイドロキシアルキル化剤としては、求核性であって、結合後に、ハイドロキシアルキル基を形成できるものであればよく、たとえば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、グルタルアルデヒド類やエチレンオキサイドや、プロピレンオキサイドのオキサイド類を挙げることができる。
【0038】
一次誘導体と当該試薬とを混合するに際して、ハイドロキシアルキル基を効率よく導入する観点からは、試薬をリグノフェノール誘導体中のリグニンのアリールプロパン単位の芳香核及び/又は導入フェノール核の1モル倍以上添加することが好ましい。より好ましくは、10モル倍以上であり、さらに好ましくは20モル倍以上である。
【0039】
次に、アルカリ液中にリグノフェノール誘導体と本試薬が存在する状態で、必要によりこの液を加熱することにより、ハイドロキシアルキル基がフェノール核に導入される。加熱条件は、ハイドロキシアルキル基が導入される限り、特に限定されないが、40〜100℃が好ましい。40℃未満では試薬の反応率が非常に低く好ましくなく、100℃より高いと試薬自身の反応などリグニンへのハイドロキシアルキル基導入以外の副反応が活発化するので好ましくない。より好ましくは、50〜80℃であり、例えば約60℃が特に好ましい。反応は、反応液を冷却等することにより停止し、適当な濃度の塩酸等により酸性化(pH2程度)し、洗浄、透析などにより酸、未反応の試薬を除去する。透析後凍結乾燥などにより試料を回収する。必要であれば、五酸化二リン上で減圧乾燥する。
【0040】
こうして得られるプレポリマーは、第一のユニットや第二のユニットを含む1,1−ビス(アリール)プロパンユニットやリグニンのアリールプロパンユニット内のフェノール性水酸基に対するオルト位および/またはパラ位に架橋性基を有するようになる。
【0041】
(エポキシ化)
エポキシ基を、一次誘導体中のフェノール性水酸基及び/又はアルコール性水酸基に導入することにより、エポキシ化リグニン二次誘導体を得ることができる。エポキシ化により、高い架橋性反応性を付与することができる。
エポキシ化には、アルカリ下、エピハロヒドリンなどの1つのエポキシ基を有するグリシジル化剤と反応させることにより得ることができ、従来公知の各種方法を採用することができる。グリシジル化剤としては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリンなどの他、β−メチルエピブロモヒドリン、β−メチルエピクロロヒドリン、β−エチルエピクロルヒドリン等を用いることができる。なお、グリシジル化剤によるエポキシ化は、フェノール性水酸基に対して反応性が高いため、フェノール性水酸基が優先的にエポキシ化される。
【0042】
エポキシ化は、例えば、リグニン一次誘導体をエピクロロヒドリンなどのグリシジル化剤に溶解し、55℃〜60℃程度の減圧下で還流し、この反応系にアルカリ溶液を滴下しつつ、還流脱水反応を行い、反応終了後、遠心分離し、上澄み液を減圧エバポレータにて濃縮し、シクロヘキサンなどの有機溶媒中に滴下し、沈殿物として分離することができる。
【0043】
(カルボキシル化)
カルボキシル化リグニン二次誘導体は、一次誘導体をカルボキシル化剤と反応させ、リグニン一次誘導体中のフェノール性水酸基及び/又はアルコール性水酸基、及び僅かに存在する共役二重結合に多価カルボキシル基を導入することにより、得ることができる。カルボキシル化により、高い架橋性反応性を付与することができる。
カルボキシル化剤には、多塩基酸無水物などを用いることができ、多塩基酸無水物の種類は特に限定されない。好ましくは、無水コハク酸、オクテニル無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、トリメリット酸等の二塩基酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は芳香族四塩基酸二無水物等の多塩基酸無水物が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。リグニン一次誘導体と多塩基酸無水物は、50℃〜170℃の温度下で、リグニン一次誘導体中の水酸基に対し、多塩基酸無水物を0.5〜1.5モル反応させることが好ましい。
カルボキシル化二次誘導体は、例えば、リグニン一次誘導体を無水マレイン酸と良く混合し、90℃程度の密閉容器内で2時間反応し、反応終了後、反応系をベンゼンなどの有機溶剤に投入し、沈殿物として、遠心分離などで洗浄し、分離することができる。
【0044】
(アルカリ処理)
アルカリ処理は、リグニン一次誘導体あるいは二次誘導体を、アルカリと接触させることにより行う。好ましくは加熱する。アルカリ処理においては、オルト位結合ユニットにおいて、導入されたフェノール化合物のフェノキシドイオンによるC2位炭素の攻撃が生じる。すなわち、一旦この反応が生じれば、C2アリールエーテル結合が開裂する。
例えば、緩和なアルカリ処理では、一次誘導体が第一のユニットを有する場合、当該導入フェノール誘導体の当該フェノール性水酸基が開裂し、生じたフェノキシドイオンが、C2アリールエーテル結合を構成するC2位を分子内求核反応的にアタックして、当該エーテル結合を開裂させて低分子化することができる。
C2アリールエーテル結合の開裂により、リグニンの母核にフェノール性水酸基が生成されることになり、当該分子内求核反応により、導入フェノール核が、それが導入されたフェニルプロパン単位とクマラン骨格を形成した構造(アリールクマラン単位)が発現される。
これらの結果、フェノール誘導体側にあったフェノール性水酸基が、リグニン母核側に移動されたことになる。
このため、オルト位結合ユニットを有するリグノフェノール誘導体においては、このユニットの存在部位において(1)C2アリールエーテル結の開裂による低分子化、(2)アリールクマラン構造の発現、(3)C2アリールエーテル結合で結合されていたリグニン母核側におけるフェノール性水酸基が発現する。
【0045】
当該アルカリ処理は、具体的には、リグノフェノール誘導体の架橋体をアルカリ溶液に溶解し、一定時間反応させ、必要であれば、加熱することにより行う。この処理に用いることのできるアルカリ溶液は、リグノフェノール誘導体中の導入フェノール誘導体のフェノール性水酸基を解離させることができるものであればよく、特に、アルカリの種類及び濃度、溶媒の種類等は限定されない。アルカリ下において前記フェノール性水酸基の解離が生じれば、隣接基関与効果により、クマラン構造が形成されるからである。例えば、p−クレゾールを導入したリグノフェノール誘導体では、水酸化ナトリウム溶液を用いることができる。例えば、アルカリ溶液のアルカリ濃度範囲は0.5〜2Nとし、処理時間は1〜5時間程度とすることができる。また、アルカリ溶液中のリグノフェノール誘導体は、加熱されることにより、容易にクマラン構造を発現する。加熱に際しての、温度、圧力等の条件は、特に限定することなく設定することができる。例えば、アルカリ溶液を100℃以上(例えば、140℃程度)に加熱することによりリグノフェノール誘導体の架橋体の低分子化を達成することができる。さらに、アルカリ溶液を加圧下においてその沸点以上に加熱してリグノフェノール誘導体の架橋体の低分子化を行ってもよい。
【0046】
なお、同じアルカリ溶液で同濃度においては、加熱温度が120℃〜140℃の範囲では、加熱温度が高い程、C2−アリールエーテル結合の開裂による低分子化が促進されることがわかっている。また、該温度範囲で、加熱温度が高い程、リグニン母体由来の芳香核由来のフェノール性水酸基が増加し、導入されたフェノール誘導体由来のフェノール性水酸基が減少することがわかっている。したがって、低分子化の程度及びフェノール性水酸基部位のC1位導入フェノール誘導体側からリグニン母体のフェノール核への変換の程度を、反応温度により調整することができる。すなわち、低分子化が促進され、あるいは、より多くのフェノール性水酸基部位がC1位導入フェノール誘導体側からリグニン母体へ変換されたアリールクマラン体を得るには80〜140℃程度の反応温度が好ましい。
【0047】
C1フェノール核の隣接基関与によるC2−アリールエーテルの開裂は、上述したようにアリールクマラン構造の形成を伴うが、リグノフェノール誘導体の架橋体の低分子化は、必ずしもアリールクラマンが効率よく生成する条件下(140℃付近)で行う必要はなく、材料によって、あるいは目的によってより高い温度(例えば170℃付近)で行うこともできる。この場合、一旦生成したクラマン環は開裂し、導入フェノール誘導体側にフェノール性水酸基が再生される結果、140℃処理物とは特性の異なるよりフェノール活性が高い素材を誘導することができる。
【0048】
以上のことから、アルカリ処理における加熱温度は、特に限定されないが好ましくは80℃以上200℃以下である。80℃を大きく下回ると、反応が十分に進行せず、200℃を大きく越えると好ましくない副反応が派生しやすくなるからである。
【0049】
クラマン構造の形成とそれに伴う低分子化のための処理の好ましい一例としては、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液をアルカリ溶液として用い、オートクレーブ内140℃で加熱時間60分という条件を挙げることができる。特に、この処理条件は、p−クレゾール又は2,4−ジメチルフェノールで誘導体化したリグノフェノール誘導体に好ましく用いられる。
【0050】
以上の各種官能基導入反応の1種あるいは2種以上をリグニン一次誘導体に対して行うことにより、1種あるいは2種以上の官能基を備えるリグニン二次誘導体を得ることができる。また、リグニン一次誘導体に対して、アルカリ処理を行うことにより、上記したアルカリ処理構造を備えるリグニン二次誘導体を得ることができる。また、リグニン一次誘導体に対して、各種官能基導入反応の1種あるいは2種以上とアルカリ処理とを行うことにより、1種あるいは2種以上の官能基とアルカリ処理構造とを備える、リグニン二次誘導体を得ることができる。
【0051】
なお、本発明のリグニン一次誘導体としては、各種工業リグニンなどを用いることもできる。これらの工業リグニンは、上記(e)のリグニン一次誘導体を包含する。
かかるリグニン一次誘導体としては、高圧の飽和水蒸気で処理し瞬時に圧力を開放して木材を粉砕することによって得られる蒸煮爆砕リグニン、水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムの混合水溶液を蒸解液として高温で木材チップを蒸解することで得られるクラフトリグニン、木粉をアルコールで煮沸することで得られるアルコール可溶性リグニン、木粉を中性又は弱アルカリ性の重亜硫酸塩溶液で高温で蒸煮することで得られるリグニンスルホン酸、木粉を振動式ボールミルで微粉砕し含水ジオキサンで抽出することで得られるミルドウッドリグニン(MilledWood Lignin)、リグニンをpH2、100℃で亜硝酸を使ってニトロ化したニトロリグニン、またブラウンス天然リグニン、過ヨウ素酸リグニン、硫酸リグニン、塩酸リグニン、銅アンモニアリグニン、ジオキサンリグニン、チオグリコール酸リグニン、加水分解リグニン等の木材から得られるリグニンの他、稲等の草木から得られるリグニンが挙げられる。特に好ましくは、アルカリリグニン、オルガノソルブリグニン、リグノスルホン酸、ソルボリシスリグニン、蒸煮爆砕リグニン、糸状菌処理木材、硫酸リグニン、ジオキサンリグニン、ミルドウッドリグニンを挙げることができる。これらは1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、これらのリグニン一次誘導体に、前記したカルボキシアルキル化、ハイドロキシアルキル化、エポキシ化及びカルボキシル化を施してリグニン二次誘導体を得ることができる。とくに、カルボキシルアルキル化が好ましい。これらのリグニン一次誘導体に対する各種官能基の導入は、上記したリグニン一次誘導体に用いた方法をそのままあるいは適宜改変することにより可能である。
【0052】
(架橋体)
本発明の架橋体は、これらのリグニン一次誘導体及び二次誘導体の1種あるいは2種以上に対して、親水性の架橋性化合物を作用させることにより、得ることができる。図4に、本発明の架橋体製造プロセスの一例を示す。
親水性の架橋性化合物としては、親水性であって、2以上の架橋性基を備える化合物を用いることができる。好ましくは、当該架橋性化合物が水あるいはアルカリ水溶液に対して十分な溶解性を有することが好ましい。少なくとも、反応系において供給される水あるいはアルカリ水溶液に溶解する程度の水溶性を備えることが好ましい。
架橋性基としては、少なくとも2官能基性であればよいが、3官能基以上の多官能基性であってもよい。エポキシ基、具体的にはグリシジル基を備えることが好ましい。また、架橋性化合物は、架橋性基以外の部分において、親水性を備えることが好ましく、2以上のエーテル結合を備える直鎖部位を架橋性基の連結部分として備えていることが好ましい。かかる親水性の直鎖部位としてはポリアルキレングリコールとすることが好ましい。アルキレン基としては、炭素数が1〜5の低級アルキレン基であることが好ましく、より好ましくは、炭素数が2〜3のアルキレン基である。また、アルキレン基は分枝していてもよいが、直鎖であることが好ましい。
ポリアルキレン基の重合度はおおよそ30以下であることが好ましい。重合度は、アルキレン基の種類によっても異なるが、たとえば、アルキレン基がエチレン基であるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルの場合、1以上25以下であることが好ましく、より好ましくは、1以上である。また、22以下であることがより好ましい。
また、アルキレン基がプロピレン基であるポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルの場合には、1以上10以下であることが好ましく、さらに1以上であることが好ましく、また、3以下であることが好ましい。
【0053】
リグニン誘導体と親水性架橋性化合物との架橋反応は、水の存在下、リグニン誘導体と本架橋性化合物とを反応させる。反応系には、水が存在することが必要である。水の存在下にて架橋させることにより、水を取り込んだ架橋体がゲルとして反応系から現出することになる。
反応媒体は、蒸留水や酸水溶液であってもよいが、好ましくは、アルカリ水溶液である。蒸留水や酸水溶液では、架橋反応が進行するものの遅いからである。また、アルカリ水溶液の場合、アルカリ濃度により架橋反応時間が異なり、低濃度では、ゲル化時間が長くなり、高濃度ではゲル化時間が短くなる傾向がある。したがって、アルカリ濃度により、反応系に応じて最適なゲルを得るための架橋反応時間を調整することができる。ひいては、好ましいゲル(すなわち、吸水性の高いゲル)を容易に得ることができるという利点がある。
【0054】
使用するアルカリ水溶液の濃度は特に限定しないが、好ましくは、0.1N以上3N以下程度であり、より好ましくは、0.2N以上であり、また、より好ましくは、2N以下である。0.1N未満であると、架橋速度が遅すぎてゲル化までの時間が長すぎるからであり、3Nを超えると架橋速度が速すぎてゲル化までの時間が早すぎるとともに、急激なゲル化により高吸水率あるいは安定した吸水率を得るための反応停止のタイミングの調節が困難だからである。0.2N未満ではゲル化までの時間が長く、2Nを超えると反応停止タイミングを図るのが困難であるからである。より好ましくは、0.5N以上1N以下である。当該範囲内において広い架橋性化合物濃度にて好ましいゲル化速度を得ることができるからである。なお、使用するアルカリの種類は特に限定しないで、通常用いられる有機あるいは無機アルカリ試薬を使用することができる。例えば、KOH、NaOHなどの無機アルカリが挙げられる。
【0055】
使用する反応媒体に対して、リグニン誘導体が完全に溶解することが好ましいが、かならずしも完全に溶解することが必要ではなく、不溶解区分を有していてもよい。また、溶解時のリグニン濃度が高く、スラリー状となっていてもよい。
例えば、リグニン誘導体1gに対して、水、酸水溶液、あるいはアルカリ水溶液は、2ml以上10ml以下で反応させることができる。好ましくは、3ml以上であり、また、好ましくは、7ml以下である。最も好ましくは、4ml以上6ml以下である。
【0056】
リグニン誘導体を水やアルカリ水溶液などの反応媒体に溶解あるいは分散した後、架橋性化合物を加えて、所定温度で攪拌しながら、架橋反応を進行させる。反応温度は、特に限定しないが、20℃程度でも反応が進行し、反応時間が長くなるが、反応系からゲルとして吸水性架橋体を得ることができる。一方、80℃を超えて加熱すると、特にアルカリ条件下においては、リグニン誘導体の低分子化が生じる。したがって、架橋反応と低分子化反応とが競合し、反応制御が困難となるおそれがある。以上のことから、反応温度は、20℃以上80℃以下であることが好ましく、より好ましくは、40℃以上60℃以下である。
【0057】
使用する架橋性化合物の親水性部分の長さにより、架橋体の吸水率が変化する。例えば、ポリエチレングリコールの親水性部分を有する架橋性化合物(ジグリシジル基含有)は、重合度が2以上13以下の範囲において重合度の増加とともに吸水率は増加している。したがって、当該親水性部分は吸水性に大きく寄与しているものと考えられる。
使用する架橋性化合物の添加量は特に限定しないが、リグニン誘導体中に含まれる官能基に対して、使用する架橋性化合物中の架橋性基が0.5倍モル量以上とすることができる。すなわち、リグニン誘導体中に含まれる反応する官能基が2モルの場合、1モルの架橋性基を供給するように架橋性化合物を供給すればよい。2官能基性の架橋性化合物の場合、0.5モルの化合物を供給すればよい。なお、リグニン誘導体中に反応性基の量は、NMRスペクトル、IRスペクトル、電位差滴定などにより測定することができる。
架橋性化合物の添加量が多いと、架橋度が高く(結果として、架橋体としての回収率は高くなる)、最大吸水率の低い架橋体が得られる傾向があり、架橋性化合物の添加量が少ないと、架橋度が低く(架橋体としての回収率は低くなる)、最大吸水率の高い架橋体が得られる傾向がある。
リグニン誘導体中に含まれる反応官能基に対して、0.5モル倍以上30モル倍以下の架橋性基を有する架橋性化合物を添加することが好ましい。0.5モル倍未満であると、十分な架橋が達成されないため吸水性を示す架橋体は得られ難く、逆に、吸水特性を持たない水溶性架橋体を得る場合には、0.5モル倍未満が好ましい。一方、30モル倍以上を超えると、架橋反応で架橋性基の開環によって生じた新たな反応性官能基(水酸基など)は、その周辺の過剰な架橋性化合物の存在のために、高頻度で架橋性化合物と結合し架橋することになり、結果的にゲルの回収率と架橋密度が増大、架橋によって架橋体分子内部に生じる吸水保持のための空隙が緻密に硬直化し、吸水率の低くなるためである。また、より好ましい架橋性化合物添加量は、リグニン誘導体中の反応官能基に対して0.65モル以上14以下である。
【0058】
リグニン誘導体と架橋性化合物との架橋反応が進行することにより、架橋密度が徐々に高くなり、ある時点において、ゲル化し、さらに架橋が進行し、その後、架橋反応がもはや進行しなくなる。
架橋体は、架橋反応の進行過程のいずれかの時点で、反応液をろ過等することにより、分離することができる。る。本発明の反応系においては、架橋が進行する過程において、急激にゲル化を生じる。すなわち、架橋進行過程において、ある反応時間において明確にゲル化を生じ、急激に粘度が上昇する傾向がある。このような現象は、一般に、架橋性化合物と反応する官能基の導入形態の規則性の高さによることが多く、本発明においては、リグニン誘導体の構造の規則性の高さとその官能基の導入率の高さによるものと推測される。
また、吸水率は、架橋の進行過程のある時点で最大値をとり、その後、低下する。すなわち、ゲル化開始直後に高い最大吸水倍率を示し、ゲル化及び架橋の進行に伴い、吸水倍率が低下する。これは、ゲル化開始時は、ネットワークが粗であり、水を十分に保持できるが、架橋が進行するとネットワークが緻密になり、水を保持しにくくなるからであると推測される。したがって、ゲル化時あるいはその直後に架橋反応を停止することにより吸水性の高い架橋体を得ることができる。
既に述べたように、架橋性化合物の量により、架橋の進行過程におけるゲル形成過程が大きく異なる。したがって、吸水倍率の高い架橋体を得るには、架橋性化合物の添加量や反応停止時間に着目して、ゲル化を調節することが好ましい。
【0059】
本発明において得られる吸水性架橋体は、吸水倍率が数十倍〜数百倍にも達し、従来のリグニン由来の吸水性架橋体に比して高い吸水倍率の吸水性架橋体を容易に得ることができる。
ここで吸水倍率とは、架橋体による吸水が平衡化するまで行なわれた状態における吸水重量と脱水(乾燥)させて得られる乾燥重量から得ることができる。すなわち、吸水倍率は、平衡吸水重量を乾燥重量で除してえられる数値である。
吸水倍率は、例えば、次の方法で得ることができる。架橋反応を所定時間行いゲル化した反応溶液を80メッシュナイロン製スクリーンにてろ過して架橋体を分離し、この分離した架橋体を数回水で水性が中性になるまで適数回水で洗浄後、再度大過剰の水で浸漬し、数時間後、再度メッシュナイロン製スクリーンにてろ過し、この分離洗浄及び浸漬操作を架橋体の水吸収が平行に達するまで繰り返し行い、この吸水した架橋体(ゲル)の重量を測定する。次いで、このゲルを凍結乾燥等にて乾燥させ、その乾燥重量を測定し、当該乾燥重量に対するゲル重量を吸水倍率とすることができる。また、使用したリグニン誘導体量に対する乾燥重量の割合をゲル化率(回収率)とすることができる。
【0060】
例えば、フェノール化合物としてp−クレゾールを用いて、ブナ等のリグノセルロース系材料(脱脂木粉等)をリグニン含有材料として得られたリグニン一次誘導体については、20倍以上の上記吸水倍率を容易に得ることができる。また、この一次誘導体をカルボキシアルキル化(典型的にはカルボキシメチル化)した二次誘導体については、容易に数十倍から数百倍、少なくとも20倍から最大1000倍程度の吸水倍率を得ることができる。なお、吸水倍率の測定方法は、吸水が平衡化するまで架橋体に吸水させた状態における吸水倍率であれば、ここに記載の方法以外の方法を採用することができる。
したがって、本発明の架橋体としては、吸水倍率が少なくとも20倍以上である。さらに、好ましくは、100倍以上とすることができ、より好ましくは、300倍以上である。また、本発明の架橋体として特に好ましい吸水倍率は400倍以上600倍以下である。
【0061】
また、強度の高い架橋体(吸水倍率の低い架橋体と同義である)を得るには、あるいは架橋体の回収率を高めるには、吸水倍率の調整と同様に、架橋性化合物の添加量や反応停止時間に着目して、ゲル化を調節することが好ましい。十分な架橋性化合物の存在下、架橋度及び回収率は十分に架橋反応時間を長くとることにより最大化することができる。
【0062】
特に、カルボキシアルキル基(特にカルボキシメチル基など)及び/又はカルボキシル基が導入されたリグニン二次誘導体にあっては、それ自体水溶性も高いことから、好ましい吸水性架橋体を得ることができる。
また、p−クレゾールをフェノール化合物として用いた場合には、フェノール化合物の導入効率が高いことから、フェノール性水酸基あるいはフェノール性水酸基のオルト位あるいはパラ位に導入される上記官能基量も増大するため、高い官能基の導入効率が得られ、この結果、高い架橋反応性を有する二次誘導体が得られ、結果として、ゲル化到達時間が早く、あるいは、架橋密度が高く強度のあるゲルを得ることができる。
【0063】
ゲル化到達前の架橋過程においては、本架橋体は、架橋が粗であるため、水を拘束あるいは保持できないため、水溶性の架橋体として存在する。また、最終的な架橋度が低い場合においては、ゲル化が生じない。ゲル化前あるいはゲル化しない反応系中の架橋体は、反応溶液を透析膜によって透析し、未反応のエチレングリコールジグリシジルエーテル及び触媒を取り除くことにより得ることができる。透析後、架橋体は,凍結乾燥等により乾燥され、乾燥重量が測定される。使用したリグニン誘導体量に対する乾燥重量の割合として架橋体回収率を得ることができる。
【0064】
リグニン誘導体の重量平均分子量が700〜1500程度の場合には、架橋反応時間を十分確保しても、水を保持するようなネットワーク構造が構築されにくく、水溶性のままであることもある。このような低分子のリグニン誘導体は、アルカリ処理を施した二次誘導体として容易に得ることができる。
また、このような水溶性の架橋体は、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、メタノール、エタノール、クロロホルム、ピリジンなどの有機溶媒及びこれら有機溶媒を含む混合溶媒にも溶解することができる。例えば、リグノフェノール系一次誘導体を170℃でアルカリ処理(0.5NNaOH下、60分)したリグニン二次誘導体(リグニン含有材料:ブナ木粉、フェノール化合物:p−クレゾール使用)にあっては、メタノール、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、ピリジン等に溶解する。
【0065】
架橋体は、1種あるいは2種以上のリグニン誘導体のほか、多糖類、オリゴ糖類、及びこれらの糖類に対してカルボキシアルキル基、ハイドロキシアルキル基、グリシジルエーテル基及びカルボキシル基から選択される1種あるいは2種以上の官能基が導入されて得られる糖類誘導体からなる群から選択される1種あるいは2種以上の糖類化合物と前記架橋性化合物とを架橋させた架橋体と混合することもできる。この架橋体組成物によれば、リグニン系架橋体と糖類化合物の架橋体との双方の性質を兼ね備えることができる。なお、多糖類及び/叉はオリゴ糖に対して上記各種官能基は従来公知の方法により導入することができる。
【0066】
また、リグニン誘導体と糖類化合物とをあわせて、前記親水性架橋性化合物と架橋させて架橋体を得ることもできる。この共重合体様架橋体によれば、リグニン系架橋体と糖類化合物の架橋体との双方の性質を兼ね備えさせることができる。
【0067】
このようにして得られた架橋体は、吸水性架橋体の場合、従来公知の吸水材料として用いることができる。当該吸水材料は、植物資源由来であるために、環境への悪影響を抑制しつつ、植物資源の循環利用を促進することができる。
また、吸水したゲル状体を脱水することにより再度、吸水性を保持した架橋体を再生することができ、当該架橋体は、繰り返し吸水材料用途に用いることができる他、さらなる化学修飾(アルカリ処理、各種官能基導入反応)を施すことにより、次用途への逐次利用が可能となっている。
【0068】
特に、架橋体に使用したリグニン誘導体がオルト位置換ユニットを備えている場合には、吸水したゲル状体を、そのままアルカリ処理することにより、架橋体を構成部分であるリグニン誘導体を低分子化することも可能である。
さらに、リグニン誘導体は各種吸着性能を有し、吸着剤としても機能する。したがって、汚染物質や有害物質を含む被吸着物質を吸着したリグニン誘導体を架橋剤を用いて、ゲル化することにより、これらの被吸着物質をゲル内に取り込むことができる。例えば、被吸着物質を吸着したリグニン誘導体を水系媒体下で架橋反応を進行させることにより、水系媒体中の被吸着物質をゲル内に分離回収することができる。
あるいは、有用な物質を吸着させたリグニン誘導体をゲル化させることにより、当該有用物質を保持したゲルを得ることができる。
【0069】
以上説明した本発明の実施形態によれば、本発明には、以下の態様も包含されることが明らかである。
(1)リグニン系架橋体であって、
以下の(a)〜(d):
(a)フェノール化合物により溶媒和されたリグニン含有材料に酸を添加し混合して得られるリグニンのフェノール化合物のリグニン一次誘導体、
(b)(a)のリグニン一次誘導体に対してカルボキシアルキル基、ハイドロキシアルキル基、エポキシ基、及びカルボキシル基からなる群から選択される1種あるいは2種以上が導入されたリグニン二次誘導体、
(c)(a)のリグニン一次誘導体をアルカリ処理して得られるリグニン二次誘導体、
(d)(a)のリグニン誘導体に対してアルカリ処理と、カルボキシルアルキル基、ハイドロキシアルキル基、エポキシ基、及びカルボキシ基からなる群から選択される1種あるいは2種以上の導入反応とが施されたリグニン二次誘導体、
二次誘導体、
から選択される1種あるいは2種以上のリグニン誘導体と親水性架橋性化合物とを架橋させて得られ、吸水倍率が200倍以上のリグニン系架橋体。
(2)前記吸水倍率が、400倍以上600倍以下の(1)記載のリグニン系架橋体。
(3)リグニン系架橋体であって、
以下の(a)〜(d):
(a)フェノール化合物により溶媒和されたリグニン含有材料に酸を添加し混合して得られるリグニンのフェノール化合物の一次誘導体、
(b)(a)のリグニン一次誘導体に対してカルボキシアルキル基、ハイドロキシアルキル基、エポキシ基、及びカルボキシル基からなる群から選択される1種あるいは2種以上が導入されたリグニン二次誘導体、
(c)(a)のリグニン一次誘導体をアルカリ処理して得られるリグニン二次誘導体、
(d)(a)のリグニン誘導体に対してアルカリ処理と、カルボキシルアルキル基、ハイドロキシアルキル基、エポキシ基、及びカルボキシ基からなる群から選択される1種あるいは2種以上の導入反応とが施されたリグニン二次誘導体、
二次誘導体、
から選択される1種あるいは2種以上のリグニン誘導体と親水性架橋性化合物とを架橋させて得られる、吸水倍率が200倍以上のハイドロゲル。
(4)前記リグニン誘導体が吸着可能な物質を保持する、(3)記載のハイドロゲル。
【0070】
【実施例】
以下、本発明を具体化して実施例について説明する。なお、これらの実施例は本発明を具体的に説明するものであって、本願発明を拘束するものではない。
(実施例1)
リグニン一次誘導体(リグノクレゾール)の調製
アセトン脱脂した木粉(ブナ、イネワラ、モミガラ、ケナフ、タケ)25gにリグニンあたり3mol倍量のp−クレゾールを収着させた。この収着木粉の全量に72%硫酸100mlを加え、1時間攪拌しながら30℃で反応させた後、反応系を大過剰の水に投入し、不溶解沈殿物を遠心分離にて分離し、硫酸と未反応のクレゾールを取除くまで完全に洗浄し、五酸化リン上で減圧乾燥させた。これらにアセトン500mlを加え、一昼夜攪拌後、不溶物を遠心分離にて取除き、エバポレーターで濃縮後、大過剰のジエチルエーテルに滴下し、その不溶解沈殿物を遠心分離、洗浄し、各種のリグノフェノール系一次誘導体(リグノクレゾール)として五酸化リン上で減圧乾燥後、定量した。
【0071】
(実施例2)
アルカリ処理によるリグニン二次誘導体の調製
実施例1で調製したリグノクレゾールをリグニン一次誘導体とし、その20gを、0.5N水酸化ナトリウム水溶液400mlに完全溶解させ、これをオートクレーブに投入し、140℃(0.25MPa)および170℃(0.68MPa)にて1時間処理した。反応終了後、冷却し、1N塩酸にて中和した。沈殿物を遠心分離にて回収、水にて洗浄し、凍結乾燥後、アルカリ処理物を得た。
【0072】
(実施例3)
カルボキシアルキル化リグニン二次誘導体の調製
実施例1で調製したリグノクレゾール1gを容器に取り、予めイソプロピルアルコール4gで分散させ、40%水酸化ナトリウム水溶液6.25gを加え、十分静置した。これにイソプロピルアルコール12gを加え、この不均一混合溶液を攪拌下、50℃に維持し、モノクロロ酢酸(リグノクレゾール中の水酸基あたり約1.3mol)をイソプロピルアルコール4gに溶解させた溶液を1時間かけて添加し、その後さらに、50℃で2時間攪拌した。反応終了後、反応系は水酸化ナトリウムを含むリグニン二次誘導体の沈殿物と一部溶解した二次誘導体とを含むアルコール溶液に分離され、この沈殿物とアルコール溶液とをろ別し、アルコール溶液をエバポレータにて留去し、溶解物を乾固させた。次に、沈殿物を水に溶解し、これに少量の水で溶解させた乾固物を加え、1N塩酸にて中和した。このとき生じた沈殿物を遠心分離にて分離洗浄し、取り除き、上澄み液及び洗浄液を回収し、透析にて脱塩、凍結乾燥し、水溶性カルボキシメチル化リグニン二次誘導体を得た。
【0073】
(実施例4)
ハイドロキシアルキル化リグニン二次誘導体の調製
実施例1で調製したリグノクレゾール2.5gを容器に取り、1N水酸化ナトリウム水溶液6.25mlを加え、完全に溶解させた。これを25℃のバス中で激しく攪拌しながらプロピレンオキサイド37.5mlを徐々に加え、容器を密栓し、1時間攪拌した。反応終了後、容器を解放し、さらに1時間以上48℃〜50℃にて過剰のプロピレンオキサイドを揮発させた。冷却後、1N塩酸にて中和し、沈殿物を遠心分離によって回収し、沈殿物が分離されなくなるまで水で洗浄、凍結乾燥し、ハイドロキシプロピル化リグニン二次誘導体を得た。
【0074】
(実施例5)
エポキシ化リグニン二次誘導体の調製
実施例1で調製したリグノクレゾール2.5gをエピクロロヒドリン150mlに完全溶解させ、温度計、滴下ロート、水分離装置を取付けたセパラブルフラスコに投入した。反応容器は、アスピレータを用いて減圧し、55℃〜60℃にて還流させた。このとき、反応系は、1.33×10−2MPaに減圧調節された。還流が安定した後、20%水酸化ナトリウム水溶液1.25gを滴下ロートより30分間かけ滴下した。滴下後、さらに1時間30分、還流脱水反応を行った。反応終了後、反応系を常温に冷却し、滴下時に清々した不溶解沈殿物を除去するため、遠心分離した。この上澄みを減圧エバポレータにて濃縮後、大過剰のシクロヘキサン中に滴下し、得られた沈殿物を遠心分離した。さらに、沈殿物は遠心分離を用い、シクロヘキサンにて洗浄され、溶媒留去後、五酸化リン上にて減圧乾燥し、これをグリシジルエーテル化リグノクレゾールとして調製した。
【0075】
(実施例6〜11)
各種架橋体の調製
以下の実施例においては、各種条件下で架橋体を調製し、架橋体の回収率及び吸水倍率を測定した。以下、架橋反応の基本操作について説明するとともに、各実施例に個別条件を記載する。
(架橋反応方法)
架橋反応のスキームを図5に示す。
リグニン誘導体に水又はアルカリ水溶液を加え、完全に溶解させた。この溶液に親水性架橋性化合物を添加し、所定温度にて攪拌下、架橋反応させた。所定時間終了後、十分に架橋された架橋体においては、この段階で架橋しゲル化する。ゲル化した場合には、水を吸収し、膨潤したリグニン架橋体を80メッシュナイロン製スクリーンにてろ過し、分離した。分離した架橋体を数回水で洗浄後、再度大過剰の水で浸漬し、数時間後、再度メッシュナイロン製スクリーンにてろ過した。この分離洗浄の操作を架橋体の水吸収が十分に平衡に達するまで繰り返し行った。水吸収が十分に平衡に達した架橋体の重量を測定した。その後、リグニン架橋体を凍結乾燥にて乾燥させ、架橋体ハイドロゲルの吸水倍率を算出した。また、使用したリグニン誘導体に対する乾燥重量の割合を回収率として算出した。なお、吸水倍率は、既に説明したように、平衡吸水重量を架橋体の乾燥重量で除した数値とした。
一方、反応終了後、リグニン誘導体の架橋が行われず、ゲルが生じなかった場合、すなわち、メッシュナイロン製スクリーンにてろ過できなかった場合、反応溶液は透析膜によって透析され、未反応の架橋性化合物及び触媒が取り除かれた。透析終了後、架橋体を凍結乾燥によって乾燥し、その乾燥重量を測定した。使用したリグニン誘導体に対する乾燥重量の割合を回収率として算出した。
【0076】
(実施例6)
架橋反応におけるリグニン誘導体の種類の影響
リグニン誘導体として、実施例1で調製したリグノクレゾール、実施例3で調製したカルボキシメチル化リグニン二次誘導体を用い、架橋性化合物としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを用い、各種架橋体を調製した。また、アルカリリグニン(アルドリッチ社製、製品番号;8068−05−1)、カルボキシメチル化アルカリリグニン(アルドリッチ社製、製品番号;102962−28−7)、オルガノソルブリグニン(アルドリッチ社製、製品番号;8068−03−9)、カルボキシメチルセルロース(和光純薬工業株式会社製、製品番号;039−01335)についても、架橋体を調製した。リグニン誘導体の使用量、アルカリ水溶液の濃度と使用量、架橋性化合物の使用量、架橋反応温度、架橋反応時間、回収率及び吸水倍率を図6に示す。
なお、各試料の架橋反応は、各同じ反応条件(アルカリ添加濃度、架橋剤添加濃度、反応温度)下でそれぞれ6から8サンプル行われ、条件反応溶液を目視にて観察し、ゲル化(急激な粘性増大)開始から計時的に10分間隔で反応時間を設定し、各反応を停止させ、直ちに分離洗浄操作を行った。得られた架橋体が、最も高い吸水倍率を示したサンプルの架橋反応時間を各試料の架橋反応時間とし、吸水倍率とした。
なお、使用した各架橋性化合物は、1ml中、エポキシ当量として10.2×10−3(eq/ml)含んでいた。
【0077】
図6に示すように、リグニン一次誘導体であるリグノクレゾールとそのカルボキシメチル化体の他、アルカリリグニンのカルボキシメチル化誘導体が高い吸水倍率を示した。このことから、リグニン一次誘導体あるいはこの一次誘導体及び他のリグニン誘導体のカルボキシメチル化は吸水性ゲルの作製に有効であることがわかった。
【0078】
(実施例7)
架橋反応におけるリグニン誘導体の由来植物の影響
リグニン誘導体として、実施例1で調製した各種リグノクレゾールについて実施例3で調製したカルボキシメチル化リグニン二次誘導体を用い、架橋性化合物としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを用い、各種架橋体を調製した。リグニン誘導体の使用量、アルカリ水溶液の濃度と使用量、架橋性化合物の使用量、架橋反応温度、架橋反応時間、回収率及び吸水倍率を図7に示す。
なお、各試料の架橋反応は、各同じ反応条件(アルカリ添加濃度、架橋剤添加濃度、反応温度)下でそれぞれ6から8サンプル行われ、条件反応溶液を目視にて観察し、ゲル化(急激な粘性増大)開始から計時的に10分間隔で反応時間を設定し、各反応を停止させ、直ちに分離洗浄操作を行った。得られた架橋体が、最も高い吸水倍率を示したサンプルの架橋反応時間を各試料の架橋反応時間とし、吸水倍率とした。
なお、使用した各架橋性化合物は、1ml中、エポキシ当量として10.2×10−3(eq/ml)含んでいた。
【0079】
図7に示すように、ブナなど木本植物由来のリグニン誘導体に限らず、イネワラ、モミガラなどの草本植物の農産副産物由来のリグニン誘導体、及びケナフ、竹などの草本植物由来のリグニン誘導体を用いた架橋体であっても、良好な回収率と吸水倍率とを発現することが明らかであった。
【0080】
(実施例8)
架橋反応におけるリグニン誘導体に対する導入官能基の影響
リグニン誘導体として、実施例1で調製したブナ由来リグノクレゾール、当該ブナ由来リグノクレゾールについて、実施例2〜5によりそれぞれ得られた各種リグニン二次誘導体を用い、架橋性化合物としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを用い、各種架橋体を調製した。リグニン誘導体の使用量、アルカリ水溶液の濃度と使用量、架橋性化合物の使用量、架橋反応温度、架橋反応時間、回収率及び吸水倍率を図8に示す。
なお、各試料の架橋反応は、各同じ反応条件(アルカリ添加濃度、架橋剤添加濃度、反応温度)下でそれぞれ6から8サンプル行われ、条件反応溶液を目視にて観察し、ゲル化(急激な粘性増大)開始から経時的に10分間隔で反応時間を設定し、各反応を停止させ、直ちに分離洗浄操作を行った。得られた架橋体が、最も高い吸水倍率を示したサンプルの架橋反応時間を各試料の架橋反応時間とし、吸水倍率とした。
なお、使用した各架橋性化合物は、1ml中、エポキシ当量として10.2×10−3(eq/ml)含んでいた。
【0081】
図8に示すように、170℃でアルカリ低分子化処理したリグニン二次誘導体を除いては、いずれも、ゲル化し高い吸水倍率を示した。なかでも、カルボキシメチル化が有効であることが明らかであった。
一方、アルカリ低分子化処理したリグニン二次誘導体にあっては、その架橋体は水溶性として誘導された。このことは、IRスペクトルから、架橋にともなって導入された架橋性化合物のメチレン基の吸収、エーテル結合に由来する吸収が認められていることからも明らかである。これらのことから、低分子化されたリグニン一次誘導体は、分子が小さいため、架橋が進行してもゲルになるほどに分子量が増大しない。さらには、架橋体の架橋結合は、リグニン誘導体の同一分子内に存在する官能基同士が架橋性化合物を介して架橋する分子内架橋と、異なるリグニン誘導体分子に存在する官能基同士が架橋点になる分子間架橋の二種類の架橋形態があり、架橋体内部にはこれらの架橋形態が混在する。そのため、低分子化されたリグニン一次誘導体は、分子が小さく、同一分子内の架橋点が少なく、結果として得られる架橋体の架橋形態は、リグニン誘導体の分子間架橋の頻度が高くなる。すなわち、分子間架橋頻度の高い低分子化されたリグニン一次誘導体の架橋体が水溶性を示すことから、リグニン誘導体分子内部における分子内架橋が架橋体の吸水倍率に大きく寄与しているといえる。この分子内架橋の頻度を調節することによって、架橋体の吸水特性を任意に変化させることも可能である。
【0082】
(実施例9)
架橋性化合物の添加量の影響
リグニン誘導体として、実施例3で調製したカルボキシメチル化リグニン二次誘導体を用い、架橋性化合物としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを用いて架橋体を調製した。なお、リグニン誘導体の使用量、アルカリ水溶液の種類と量、架橋性化合物の使用量、架橋反応温度、架橋反応時間、回収率及び吸水倍率を図9に示す。
なお、図9に示す各試料のうち、試料1〜4については、複数の架橋反応時間を設定して各架橋反応時間における回収率及び吸水倍率とを測定し、これらの結果から得られた最大の吸水倍率を示す架橋反応時間についての結果を示す。なお、試料1〜4についての各架橋反応時間における回収率及び吸水倍率の結果を図10に示す。
試料5〜14については、各同じ反応条件(アルカリ添加濃度、架橋剤添加濃度、反応温度)下でそれぞれ6から8サンプル行われ、条件反応溶液を目視にて観察し、ゲル化(急激な粘性増大)開始から計時的に10分間隔で反応時間を設定し、各反応を停止させ、直ちに分離洗浄操作を行った。得られた架橋体が、最も高い吸水倍率を示したサンプルの架橋反応時間を各試料の架橋反応時間とし、吸水倍率とした。反応溶液を目視にて観察し、ゲル化開始直後までの時間を架橋反応時間とし、直ちに分離洗浄操作を行った。
なお、使用した架橋性化合物は、1ml中、エポキシ当量として10.2×10−3(eq/ml)含んでいた。
【0083】
図10に示すように、架橋性化合物の量が増大すると、最終的な回収率が高まる一方、得られる最大吸水倍率が低くなる傾向が明らかであった。逆に、架橋性化合物の量が減少すると、回収率は高くないが、得られる最大吸収倍率が大きくなること、及び一定の吸水倍率を確保できる架橋反応時間帯が長くなることがわかった。
これらのことから、高い吸水倍率の架橋体を得るには、あるいは一定以上の吸水倍率の架橋体を安定的に得るには、架橋性化合物添加量の調節が重要であることがわかった。
【0084】
また、図9の試料5〜8に示すように、架橋性化合物の添加量は、0.05ml、すなわち、リグニン誘導体中のエポキシ基と反応可能な官能基モル数の約0.5倍モルに相当する添加量で、ゲル化可能であることがわかった。
試料5〜11の結果によれば、同じ架橋性化合物を添加した場合には、アルカリ量が少ない方が、高い吸水倍率が得られることがわかった(試料5と9、試料7と11との比較から)。
また、試料9〜14の結果によれば、反応温度を70℃とすることにより、50℃とする場合に比較して、ゲル化までの架橋反応時間が短くなることが明らかであった。
【0085】
(実施例10)
架橋反応における架橋性化合物の種類の影響
リグニン誘導体として、実施例3で調製したカルボキシメチル化リグニン二次誘導体を用い、架橋性化合物としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテル及びポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルを用い、そのポリアルキレングリコール鎖の重合度(n)を異ならせて、各種架橋体を調製した。リグニン誘導体の使用量、アルカリ水溶液の種類と量、架橋性化合物の種類と使用量、架橋反応温度、架橋反応時間、回収率及び吸水倍率を図11に示す。
なお、各試料の架橋反応は、各同じ反応条件(アルカリ添加濃度、架橋剤添加濃度、反応温度)下でそれぞれ6から8サンプル行われ、条件反応溶液を目視にて観察し、ゲル化(急激な粘性増大)開始から計時的に10分間隔で反応時間を設定し、各反応を停止させ、直ちに分離洗浄操作を行った。得られた架橋体が、最も高い吸水倍率を示したサンプルの架橋反応時間を各試料の架橋反応時間とし、吸水倍率とした。
なお、使用した各架橋性化合物は、1ml中、エポキシ当量としてポリエチレングリコールグリシジルエーテル:n=1;10.2×10−3(eq/ml)、n=2;9.3×10−3(eq/ml)、n=4;6.2×10−3(eq/ml)、n=9;4.2×10−3(eq/ml)、n=13;3.0×10−3(eq/ml)、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル:n=1;7.0×10−3(eq/ml)、n=2;6.4×10−3(eq/ml)、n=3;6.0×10−3(eq/ml)含んでいた。
【0086】
図11に示すように、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル及びポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルのいずれであっても、リグニン誘導体の架橋剤として使用できること、及び重合度を選択することにより、ゲル化可能であり、架橋体の吸水特性を任意に変化させられ得ることがわかった。
また、試料15〜19(ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル)の結果によれば、鎖長が長いほど、ゲルの吸水倍率が増加したことから、吸水倍率の調節には架橋性化合物の親水性鎖の長さ、すなわち、重合度を調節することが有効であることがわかった。
また、試料20〜22(ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル)の結果によれば、重合度が1の場合が、最も吸水倍率が高いゲルが得られる。しかし、試料15〜19に比べ、試料20〜22の回収率は低く、重合度が3の場合には、架橋体は水溶化した。重合度が3の場合にも、その架橋体のIRスペクトルは、架橋にともなって導入された架橋性化合物のメチレン基の吸収、エーテル結合、エステル結合に由来する吸収が認められていることからも架橋体の形成は明らかであった。架橋体が総体として親水性が増しているために水溶性になったが、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルはポリエチレングリコールジグリシジルエーテルと異なり、そのアルキレン鎖に側鎖としてメチル基があり、架橋体の吸水倍率に寄与する分子内架橋によって形成される吸水保持空隙が、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルによる架橋体と比べ、疎水性の高い空隙構造になり、吸水保持能力が低くなったと考えられる。逆に言い換えれば、架橋性化合物の親水性鎖を長くし、より親水性を高める側差を導入することにより、架橋体はより高吸水性を示すことが推測された。
【0087】
(実施例11)
架橋反応におけるアルカリ濃度の影響
リグニン誘導体として、実施例3で調製したカルボキシメチル化リグニン二次誘導体を用い、架橋性化合物としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを用い、アルカリ濃度を異ならせて、各種架橋体を調製した。リグニン誘導体の使用量、アルカリ水溶液の濃度と使用量、架橋性化合物の使用量、架橋反応温度、架橋反応時間、回収率及び吸水倍率を図12に示す。
なお、各試料の架橋反応は、各同じ反応条件(アルカリ添加濃度、架橋剤添加濃度、反応温度)下でそれぞれ6から8サンプル行われ、条件反応溶液を目視にて観察し、ゲル化(急激な粘性増大)開始から計時的に10分間隔で反応時間を設定し、各反応を停止させ、直ちに分離洗浄操作を行った。得られた架橋体が、最も高い吸水倍率を示したサンプルの架橋反応時間を各試料の架橋反応時間とし、吸水倍率とした。
なお、使用した各架橋性化合物は、1ml中、エポキシ当量として10.2×10−3(eq/ml)含んでいた。
【0088】
図12に示すように、反応系におけるアルカリ濃度が高まるにつれ、ゲル化までの架橋反応時間が減少することが明らかであった。また、試料23〜26においては、アルカリ濃度が大きく変動しているにもかかわらず、吸水倍率が400〜650程度の範囲に収まっていることから、反応速度について変化が大きいものの、吸水倍率がおおよそ安定した架橋体が得られることがわかった。一方、試料27においては、顕著に吸水倍率が低下しており、本実施例においては試料26と試料27との間において、アルカリ濃度の臨界濃度が存在することがわかった。
【0089】
【発明の効果】
本発明によれば、再生可能な資源であるリグノセルロース系資源に由来するリグニン含有材料を用いて、高芳香族性かつ親水性の架橋体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】リグノフェノール系誘導体を得る構造変換プロセスの一例を示す図である。
【図2】図1に示す構造変換プロセスにおける構造変換の一例を示す図である。
【図3】オルト位結合ユニットとパラ位結合ユニットとを示す図である。
【図4】架橋体製造プロセスの一例を示す図である。
【図5】架橋反応のスキームの一例を示す図である。
【図6】架橋反応におけるリグニン誘導体の種類の影響を示す図である。
【図7】架橋反応におけるリグニン誘導体の由来植物の影響を示す図である。
【図8】架橋反応におけるリグニン誘導体に対する導入官能基の影響を示す図である。
【図9】架橋性化合物の添加量の影響を示す図である。
【図10】試料1〜4についての各架橋反応時間における回収率及び吸水倍率の結果を示す図である。
【図11】架橋反応における架橋性化合物の種類の影響を示す図である。
【図12】架橋反応におけるアルカリ濃度の影響を示す図である。
【図13】架橋反応における温度の影響を示す図である。

Claims (22)

  1. リグニン系架橋体であって、
    以下の(a)〜(d):
    (a)フェノール化合物により溶媒和されたリグニン含有材料に酸を添加し混合して得られるリグニンのフェノール化合物の一次誘導体、
    (b)(a)のリグニン一次誘導体に対してカルボキシアルキル基、ハイドロキシアルキル基、エポキシ基、カルボキシル基から選択される1種あるいは2種以上が導入されたリグニン二次誘導体、
    (c)(a)のリグニン一次誘導体をアルカリ処理して得られるリグニン二次誘導体、
    (d)(a)のリグニン誘導体に対してアルカリ処理と、カルボキシルアルキル基、ハイドロキシアルキル基、エポキシ基、カルボキシル基から選択される1種あるいは2種以上の官能基の導入反応とが施されたリグニン二次誘導体、
    からなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン誘導体が、親水性の架橋性化合物により架橋されて形成される、架橋体。
  2. 前記フェノール化合物はp−クレゾールである、請求項1記載の架橋体。
  3. 前記リグニン誘導体は、(b)のリグニン誘導体であって、カルボキシアルキル基が導入された二次誘導体である、請求項1又は2に記載の架橋体。
  4. 前記親水性架橋性化合物は、2官能基以上のグリシジル基を備えるエーテル系化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の架橋体。
  5. 前記親水性架橋性化合物は、2官能基以上のグリシジル基を有するポリアルキレングリコールである、請求項4に記載の架橋体。
  6. 前記リグニン含有材料は、木本類植物及び/又は草本類植物に由来するリグノセルロース系材料である、請求項1〜5のいずれかに記載の架橋体。
  7. リグニン系架橋体であって、
    アルカリリグニン、オルガノソルブリグニン、リグノスルホン酸、ソルボリシスリグニン、蒸煮爆砕リグニン、糸状菌処理木材、硫酸リグニン、ジオキサンリグニン及びミルドウッドリグニンからなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン誘導体、及び
    前記リグニン含有材料に対してカルボキシアルキル基、ハイドロキシアルキル基、エポキシ基、カルボキシル基から選択される1種あるいは2種以上が導入されたリグニン誘導体、からなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン誘導体が、親水性の架橋性化合物により架橋されて形成される、架橋体。
  8. 前記架橋体は、水を含有する架橋反応媒体によって架橋されて形成される、請求項1〜7のいずれかに記載の架橋体。
  9. 前記架橋反応媒体はアルカリを含有する、請求項8記載の架橋体。
  10. 前記1種あるいは2種以上のリグニン誘導体と、多糖類、オリゴ糖類、及びこれらの糖類に対してカルボキシアルキル基、ハイドロキシアルキル基、エポキシ基、カルボキシル基から選択される1種あるいは2種以上が導入されて得られる糖類誘導体からなる群から選択される1種あるいは2種以上の糖類化合物とが前記架橋性化合物により架橋されて形成される、請求項1〜9のいずれかに記載の架橋体。
  11. 吸水性架橋体である、請求項1〜10のいずれかに記載の架橋体。
  12. 両親媒性架橋体である、請求項1〜10のいずれかに記載の架橋体。
  13. リグニン系架橋体の製造方法であって、
    以下の(a)〜(d):
    (a)フェノール化合物により溶媒和されたリグニン含有材料に酸を添加し混合して得られるリグニンのフェノール化合物の一次誘導体、
    (b)(a)のリグニン一次誘導体に対してカルボキシアルキル基、ハイドロキシアルキル基、エポキシ基、及びカルボキシル基からなる群から選択される1種あるいは2種以上が導入されたリグニン二次誘導体、
    (c)(a)のリグニン一次誘導体をアルカリ処理して得られるリグニン二次誘導体、
    (d)(a)のリグニン誘導体に対してアルカリ処理と、カルボキシルアルキル基、ハイドロキシアルキル基、エポキシ基、及びカルボキシ基からなる群から選択される1種あるいは2種以上の導入反応とが施されたリグニン二次誘導体、
    二次誘導体、
    から選択される1種あるいは2種以上のリグニン誘導体と親水性架橋性化合物とを水を含有する架橋反応媒体下で架橋させる工程を備える、方法。
  14. 前記架橋反応媒体はアルカリを含有する、請求項13記載の方法。
  15. 前記架橋性化合物は、2官能基以上のグリシジル基を備えるエーテル系化合物である、請求項13又は14のいずれかに記載の方法。
  16. 前記架橋性化合物は、2官能基以上のグリシジル基を有するポリアルキレングリコールである、請求項13又は14に記載の方法。
  17. 前記架橋性化合物を前記リグニン誘導体と架橋するのに十分な量を供給して架橋させてゲル状の架橋体を生成させる、請求項13〜16のいずれかに記載の方法。
  18. ゲル状架橋体を生成させる際、架橋反応時間を調整して得られた架橋体の吸水倍率を調整する、請求項17記載の方法。
  19. 前記架橋反応工程後、反応系から分離したゲル状架橋体に過剰の水を供給して吸水させる工程を備える、請求項17又は18に記載の方法。
  20. 前記リグニン含有材料は、木本類植物及び/又は草本類植物に由来する1種あるいは2種以上のリグノセルロース系材料である、請求項13〜19のいずれかに記載の方法。
  21. リグニン系架橋体の製造方法であって、
    アルカリリグニン、オルガノソルブリグニン、リグノスルホン酸、ソルボリシスリグニン、蒸煮爆砕リグニン、糸状菌処理木材、硫酸リグニン、ジオキサンリグニン及びミルドウッドリグニンからなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン誘導体、及び
    前記リグニン含有材料に対してカルボキシアルキル基、ハイドロキシアルキル基、エポキシ基、カルボキシル基から選択される1種あるいは2種以上が導入されたリグニン誘導体、からなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン誘導体と親水性架橋性化合物とを水を含有する架橋反応媒体下で架橋させる工程を備える、方法。
  22. 前記1種あるいは2種以上のリグニン誘導体と、多糖類、オリゴ糖類、及びこれらの糖類に対してカルボキシアルキル基、ハイドロキシアルキル基、エポキシ基及びカルボキシル基から選択される1種あるいは2種以上の官能基が導入されて得られる糖類誘導体からなる群から選択される1種あるいは2種以上の糖類化合物、とを前記架橋性化合物により架橋させて架橋体を得る、請求項13〜21のいずれかに記載の方法。
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