JP2011099083A - エポキシ樹脂 - Google Patents
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Abstract
【課題】 植物成分リグニンを使用して、安価で耐熱性の優れたエポキシ樹脂とエポキシ樹脂用硬化剤を提供することを目的とする。
また、本発明はかかるエポキシ樹脂とエポキシ樹脂用硬化剤の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 アルカリ蒸解法によるパルプ廃液から回収したイネ科植物リグニンとフェノール類とを酸触媒下で反応させてなるリグニンフェノール樹脂にエピクロロヒドリンを反応させていることを特徴とするエポキシ樹脂である。
また、アルカリ蒸解法によるパルプ廃液から回収したイネ科植物リグニンとフェノール類とを酸触媒下で反応させたリグニンフェノール樹脂であることを特徴とするエポキシ樹脂用硬化剤である。
また、アルカリ蒸解法によるパルプ廃液から回収したイネ科リグニンとフェノール類とを、重量比でイネ科リグニン:フェノール=100:20〜100の割合で使用し、酸触媒をイネ科植物リグニンに対して0.2〜5重量%使用して反応させ、反応後中和し、次いで減圧蒸留によって未反応フェノールを除去し、水洗して精製したリグニンフェノール樹脂を、アルカリ触媒下エピクロロヒドリンと反応させることを特徴とするエポキシ樹脂の製造方法である。
また、アルカリ蒸解法によるパルプ廃液から回収したイネ科リグニンとフェノール類とを、重量比でイネ科リグニン:フェノール=100:20〜100の割合で使用し、強酸触媒をイネ科植物リグニンに対して0.2〜5重量%使用して反応させ、反応後中和し、次いで減圧蒸留によって未反応フェノールを除去し、水洗いして精製することを特徴とするエポキシ樹脂用硬化剤の製造方法である。
また、本発明はかかるエポキシ樹脂とエポキシ樹脂用硬化剤の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 アルカリ蒸解法によるパルプ廃液から回収したイネ科植物リグニンとフェノール類とを酸触媒下で反応させてなるリグニンフェノール樹脂にエピクロロヒドリンを反応させていることを特徴とするエポキシ樹脂である。
また、アルカリ蒸解法によるパルプ廃液から回収したイネ科植物リグニンとフェノール類とを酸触媒下で反応させたリグニンフェノール樹脂であることを特徴とするエポキシ樹脂用硬化剤である。
また、アルカリ蒸解法によるパルプ廃液から回収したイネ科リグニンとフェノール類とを、重量比でイネ科リグニン:フェノール=100:20〜100の割合で使用し、酸触媒をイネ科植物リグニンに対して0.2〜5重量%使用して反応させ、反応後中和し、次いで減圧蒸留によって未反応フェノールを除去し、水洗して精製したリグニンフェノール樹脂を、アルカリ触媒下エピクロロヒドリンと反応させることを特徴とするエポキシ樹脂の製造方法である。
また、アルカリ蒸解法によるパルプ廃液から回収したイネ科リグニンとフェノール類とを、重量比でイネ科リグニン:フェノール=100:20〜100の割合で使用し、強酸触媒をイネ科植物リグニンに対して0.2〜5重量%使用して反応させ、反応後中和し、次いで減圧蒸留によって未反応フェノールを除去し、水洗いして精製することを特徴とするエポキシ樹脂用硬化剤の製造方法である。
Description
本発明は植物成分リグニンを原料とするエポキシ樹脂に関する。
エポキシ樹脂は、主剤であるエポキシ樹脂と硬化剤からなるが、フェノールとホルムアルデヒドを酸触媒下で共重合させて得たノボラック樹脂は、エポキシ樹脂の原料としても、又硬化剤としても利用されている。
一方、植物成分リグニンは石油に代わる樹脂原料として期待されており、その酸触媒下でのフェノールとの反応物(以下、リグニンフェノール樹脂という)はノボラック樹脂にかわるものとして検討されている。又、そのエポキシ樹脂への利用も検討されている。しかし、リグニンは一般的に石油化学原料に比べると反応性が低く、非常にきびしい条件でないと反応しないので、製造コストが非常に高かった。
例えば、特許文献1、2、3では、植物粉等リグニンを含有する材料を大過剰の強酸存在下でフェノール類と反応させたリグニンフェノール樹脂が提案されている。また、特許文献4では、かかるリグニンフェノール樹脂(文献によれば、リグノフェノール)をエポキシ化する技術が開示されている。
これらの技術は、リグニンとフェノールの反応物を得る際、植物原料の何倍もの量の酸触媒を使用する。ノボラック樹脂の場合、酸触媒の使用量は樹脂原料の1%程度にすぎない。これと比較するとこれらのリグニンフェノール樹脂は、ノボラック樹脂の数百倍以上の酸触媒が必要であり、コストが高いことは明白である。また、反応後に残存する酸触媒は水洗いだけでは容易に除去できない。更に、未反応物が多くその除去、精製のため多量の有機溶剤が必要である。
例えば、特許文献1、2、3では、植物粉等リグニンを含有する材料を大過剰の強酸存在下でフェノール類と反応させたリグニンフェノール樹脂が提案されている。また、特許文献4では、かかるリグニンフェノール樹脂(文献によれば、リグノフェノール)をエポキシ化する技術が開示されている。
これらの技術は、リグニンとフェノールの反応物を得る際、植物原料の何倍もの量の酸触媒を使用する。ノボラック樹脂の場合、酸触媒の使用量は樹脂原料の1%程度にすぎない。これと比較するとこれらのリグニンフェノール樹脂は、ノボラック樹脂の数百倍以上の酸触媒が必要であり、コストが高いことは明白である。また、反応後に残存する酸触媒は水洗いだけでは容易に除去できない。更に、未反応物が多くその除去、精製のため多量の有機溶剤が必要である。
本発明者の一部は、先に、テルペンを併用した安価なリグニンテルペンフェノール共重合樹脂を開発した(特許文献5)。しかし、これは市販のテルペンフェノール樹脂を代替するもので用途が限定されており、エポキシ樹脂原料として使用するのは困難である。
また、特許文献5では比較例において、テルペンを使用しない場合のリグニンフェノール樹脂の製法を開示しているが、酸の使用量はリグニンに対して50%以上とやはり相当多く、単純な水洗いだけでの精製は困難である。そのため過剰のアセトンを添加し不溶分を除去し、可溶分を回収、そしてアセトンを留去して製品を得なければならない。
また、特許文献5では比較例において、テルペンを使用しない場合のリグニンフェノール樹脂の製法を開示しているが、酸の使用量はリグニンに対して50%以上とやはり相当多く、単純な水洗いだけでの精製は困難である。そのため過剰のアセトンを添加し不溶分を除去し、可溶分を回収、そしてアセトンを留去して製品を得なければならない。
一方、植物原料を高温高圧処理や爆砕して得たリグニンを、フェノール類を使用することなく、直接エポキシ樹脂化させる方法が開示されている(特許文献6、7)。しかし、このようなリグニンは製造するのに特殊で高価な設備を必要とし、エネルギーコストが高く、収率も低い。かかるリグニンは、ノボラック型エポキシ樹脂を製造するのに必要な石油系原料よりもはるかに高価である。
一方、特許文献8では、植物原料を爆砕した後にアルコール抽出して得たリグニンを、リグニンフェノール樹脂化することなく、直接エポキシ樹脂の硬化剤として使用する技術が開示されている。しかし、このリグニンは、製造するために特殊で高価な設備を必要とし、エネルギーコストが高く、収率が低い。そのため、従来のエポキシ樹脂用硬化剤に比べはるかに高価である。
本発明は、植物成分リグニンを使用して、安価で耐熱性の優れたエポキシ樹脂とその硬化剤を提供することを目的とする。
また、本発明はかかるエポキシ樹脂とその硬化剤の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明はかかるエポキシ樹脂とその硬化剤の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、リグニンをリグニンフェノール樹脂化し更にそれをエポキシ樹脂化する方法において、アルカリ蒸解法によるパルプ廃液から回収したイネ科リグニンを使用して、極めて効率の良い低コストな製造方法を開発した。この方法によれば、例えば、従来リグニンフェノール樹脂を精製する工程で不可欠であった有機溶剤の使用は一切不要で、単純な水洗いだけで良い。
そして、かかる製造方法で得られたリグニンフェノール樹脂をエポキシ化すると安価で従来のノボラック型エポキシ樹脂よりも耐熱性の優れたエポキシ樹脂が得られること、またかかる製造方法で得られたリグニンフェノール樹脂はエポキシ樹脂の硬化剤としても使用でき、エポキシ樹脂硬化物に高い耐熱性を付与することを見出し課題を解決するに至った。
そして、かかる製造方法で得られたリグニンフェノール樹脂をエポキシ化すると安価で従来のノボラック型エポキシ樹脂よりも耐熱性の優れたエポキシ樹脂が得られること、またかかる製造方法で得られたリグニンフェノール樹脂はエポキシ樹脂の硬化剤としても使用でき、エポキシ樹脂硬化物に高い耐熱性を付与することを見出し課題を解決するに至った。
すなわち本発明は、アルカリ蒸解法によるパルプ廃液から回収したイネ科植物リグニンとフェノール類とを酸触媒下で反応させてなるリグニンフェノール樹脂にエピクロロヒドリンを反応させていることを特徴とするエポキシ樹脂である。
また本発明は、アルカリ蒸解法によるパルプ廃液から回収したイネ科植物リグニンとフェノール類とを酸触媒下で反応させたリグニンフェノール樹脂であることを特徴とするエポキシ樹脂用硬化剤である。
また本発明は、アルカリ蒸解法によるパルプ廃液から回収したイネ科植物リグニンとフェノール類とを、重量比でイネ科植物リグニン:フェノール=100:20〜100の割合で使用し、酸触媒をイネ科植物リグニンに対して0.2〜5重量%使用して反応させ、反応後中和し、次いで減圧蒸留によって未反応フェノールを除去し、水洗して精製したリグニンフェノール樹脂を、アルカリ触媒下エピクロロヒドリンと反応させることを特徴とするエポキシ樹脂の製造方法である。
また本発明は、アルカリ蒸解法によるパルプ廃液から回収したイネ科植物リグニンとフェノール類とを、重量比でイネ科植物リグニン:フェノール=100:20〜100の割合で使用し、酸触媒をイネ科植物リグニンに対して0.2〜5重量%使用して反応させ、反応後中和し、次いで減圧蒸留によって未反応フェノールを除去し、水洗して精製することを特徴とするエポキシ樹脂用硬化剤の製造方法である。
以下、本発明を詳細に説明する。
また本発明は、アルカリ蒸解法によるパルプ廃液から回収したイネ科植物リグニンとフェノール類とを酸触媒下で反応させたリグニンフェノール樹脂であることを特徴とするエポキシ樹脂用硬化剤である。
また本発明は、アルカリ蒸解法によるパルプ廃液から回収したイネ科植物リグニンとフェノール類とを、重量比でイネ科植物リグニン:フェノール=100:20〜100の割合で使用し、酸触媒をイネ科植物リグニンに対して0.2〜5重量%使用して反応させ、反応後中和し、次いで減圧蒸留によって未反応フェノールを除去し、水洗して精製したリグニンフェノール樹脂を、アルカリ触媒下エピクロロヒドリンと反応させることを特徴とするエポキシ樹脂の製造方法である。
また本発明は、アルカリ蒸解法によるパルプ廃液から回収したイネ科植物リグニンとフェノール類とを、重量比でイネ科植物リグニン:フェノール=100:20〜100の割合で使用し、酸触媒をイネ科植物リグニンに対して0.2〜5重量%使用して反応させ、反応後中和し、次いで減圧蒸留によって未反応フェノールを除去し、水洗して精製することを特徴とするエポキシ樹脂用硬化剤の製造方法である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるアルカリ蒸解法とは、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを触媒として使用するあらゆるパルプ蒸解法が対象になるが、特にクラフト法とソーダ法が好ましい。
また本発明におけるパルプ廃液とは、パルプを蒸解する工程でパルプと分離されて排出される液で通称黒液とよばれるものである。
本発明におけるアルカリ蒸解法によるパルプ廃液から回収したイネ科植物リグニンとは、稲ワラ、麦ワラ、竹、アシ、コウリャン等イネ科植物を原料としてアルカリ蒸解法によってパルプを製造する時のパルプ廃液から回収したリグニンのことである。
また本発明におけるパルプ廃液とは、パルプを蒸解する工程でパルプと分離されて排出される液で通称黒液とよばれるものである。
本発明におけるアルカリ蒸解法によるパルプ廃液から回収したイネ科植物リグニンとは、稲ワラ、麦ワラ、竹、アシ、コウリャン等イネ科植物を原料としてアルカリ蒸解法によってパルプを製造する時のパルプ廃液から回収したリグニンのことである。
本発明において、イネ科植物リグニンは、精製してリグニン純度を80%以上にしたものが好ましく、90%以上にしたものがより好ましい。
黒液から回収したリグニンは、通常アルカリ触媒を中和してできた塩類や植物成分の分解によって生じた糖類やヒドロキシ酸等を含んでいる。本発明におけるリグニンの純度とは、そのような不純物を除いた純料なリグニン分重量の全体量に対する重量%である。
リグニン純度が低いと液に混和しにくく、そのため後述するフェノール類、酸触媒の使用量を多くしなければならない。リグニンの精製は、アルカリ性のパルプ廃液に過剰の酸を添加して酸性とし酸に不溶であるリグニンのみを沈殿させるという簡単な方法で行うことができ、後述するフェノール類との反応にかかるコストに比べてはるかに低い。従って、リグニン純度の高いものを使用する方が、コスト的にも有利である。
黒液から回収したリグニンは、通常アルカリ触媒を中和してできた塩類や植物成分の分解によって生じた糖類やヒドロキシ酸等を含んでいる。本発明におけるリグニンの純度とは、そのような不純物を除いた純料なリグニン分重量の全体量に対する重量%である。
リグニン純度が低いと液に混和しにくく、そのため後述するフェノール類、酸触媒の使用量を多くしなければならない。リグニンの精製は、アルカリ性のパルプ廃液に過剰の酸を添加して酸性とし酸に不溶であるリグニンのみを沈殿させるという簡単な方法で行うことができ、後述するフェノール類との反応にかかるコストに比べてはるかに低い。従って、リグニン純度の高いものを使用する方が、コスト的にも有利である。
本発明で使用されるフェノール類は、フェノール、クレゾール,レゾルシノール等あらゆるフェノール類が対象となるが、性能とコスト面からフェノールを使用するのが特に好ましい。その使用量は、使用するリグニン原料が含有するリグニンに対して20〜100重量%であるのが好ましく、特に30〜60重量%であるのが好ましい。この使用量は、100重量%を超えても差し支えないが、コスト高になるばかりで物性の向上は望めない。
本発明の製法は、まず、前記イネ科リグニンとフェノール類とを酸触媒を使用して反応させリグニンフェノール樹脂を得る。この反応で触媒として使用される酸は、あらゆる物が対象となるが、硫酸、硝酸、塩酸などの無機の強酸の使用が好ましく、特に性能、コストの面で硫酸の使用が好ましい。
酸の使用量は、リグニンに対して0.2〜5重量%使用するのが好ましく、0.5〜3重量%がより好ましい。
本発明の製法によれば、イネ科植物リグニンは、前述のとおり少量のフェノール類と酸の添加で容易に液化する。特許文献1,2,3,4で大過剰の酸を必要とするもう一つの理由は、原料であるリグニン含有材料を液相に混和させるための溶媒の役割を果たすためである。アルカリ蒸解によって単離されたイネ科植物リグニンは、フェノール性水酸基が多くしかもその両オルソ位にメトキシ基が無くフェノールと化学構造が非常によく似ているので、フェノール類とよく混和する。本発明の製法は、このようなアルカリ蒸解法によるパルプ廃液から回収したイネ科植物リグニンの特性をうまく利用し、最小限のフェノール類と酸の添加で、リグニンフェノール樹脂をつくることを可能にする。
酸の使用量は、リグニンに対して0.2〜5重量%使用するのが好ましく、0.5〜3重量%がより好ましい。
本発明の製法によれば、イネ科植物リグニンは、前述のとおり少量のフェノール類と酸の添加で容易に液化する。特許文献1,2,3,4で大過剰の酸を必要とするもう一つの理由は、原料であるリグニン含有材料を液相に混和させるための溶媒の役割を果たすためである。アルカリ蒸解によって単離されたイネ科植物リグニンは、フェノール性水酸基が多くしかもその両オルソ位にメトキシ基が無くフェノールと化学構造が非常によく似ているので、フェノール類とよく混和する。本発明の製法は、このようなアルカリ蒸解法によるパルプ廃液から回収したイネ科植物リグニンの特性をうまく利用し、最小限のフェノール類と酸の添加で、リグニンフェノール樹脂をつくることを可能にする。
前記イネ科植物リグニンとフェノール類の反応温度は100〜200℃が好ましく、110〜150℃がより好ましい。また、反応時間は30分〜3時間程度が好ましい。
本発明において、ホルムアルデヒドを併用することもできる。ホルムアルデヒドは、リグニン、フェノール類と共重合反応に加わり、脱水縮合してメチレン基となり、生成物であるリグニンフェノール樹脂の一部を構成する。
ホルムアルデヒドを使用する場合その使用量は、フェノール類に対して2モル以下であり、好ましくは1モル以下である。
ホルムアルデヒドを使用する場合その使用量は、フェノール類に対して2モル以下であり、好ましくは1モル以下である。
上記反応終了後、アルカリを添加して酸触媒を中和し、次いで昇温し減圧蒸留して未反応フェノールを除去する。減圧蒸留の条件は特に限定しないが、温度は150℃以上、圧力は60mmHg以下が好ましい。回収した未反応フェノールは、次の生産にそのまま利用することができる。
次に、水を添加して攪拌し生成したリグニンフェノール樹脂を洗浄する。この洗浄によって、リグニン中の不純物や中和によって生じた塩が除去される。本発明の製法によれば従来法のような有機溶剤を使用した精製、分離の工程は不要である。
尚、このリグニンフェノール樹脂中には、少量の未反応リグニンが残存しているが、未反応リグニンも一緒にエポキシ化されるので差し支えない。
このようにして得られたリグニンフェノール樹脂は、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤としてそのまま使用できる。
次に、水を添加して攪拌し生成したリグニンフェノール樹脂を洗浄する。この洗浄によって、リグニン中の不純物や中和によって生じた塩が除去される。本発明の製法によれば従来法のような有機溶剤を使用した精製、分離の工程は不要である。
尚、このリグニンフェノール樹脂中には、少量の未反応リグニンが残存しているが、未反応リグニンも一緒にエポキシ化されるので差し支えない。
このようにして得られたリグニンフェノール樹脂は、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤としてそのまま使用できる。
次に、上記リグニンフェノール樹脂からエポキシ樹脂を作る方法であるが、リグニンフェノール樹脂に大過剰のエピクロロヒドリンを加え、アルカリ触媒下で反応させる方法が用いられる。
相間移動触媒としてテトラメチルアンモニウム(TBAB)を用い、80℃で2時間の条件でエピクロロヒドリンを付加した後冷却し、20%の水酸化ナトリウム水溶液を10℃以下に保ちながら滴下して閉環させる2段階で、エポキシを形成させる方法も有効である。
相間移動触媒としてテトラメチルアンモニウム(TBAB)を用い、80℃で2時間の条件でエピクロロヒドリンを付加した後冷却し、20%の水酸化ナトリウム水溶液を10℃以下に保ちながら滴下して閉環させる2段階で、エポキシを形成させる方法も有効である。
次に、本発明のエポキシ樹脂について説明する。
本発明のエポキシ樹脂は、耐熱性が非常に優れており、本発明のエポキシ樹脂に硬化剤を添加して得た樹脂硬化物はガラス転移点が高い。また、本発明のエポキシ樹脂は、従来のノボラック型エポキシ樹脂と同等の力学的強度性能を有する。
樹脂硬化物の耐熱性は使用する硬化剤によっても異なるが、本発明のエポキシ樹脂は、硬化剤を添加させて得た樹脂硬化物のガラス転移温度が動的粘弾性測定法で通常120℃以上であり、好ましくは150℃以上、より好ましくは170℃以上である。
本発明のエポキシ樹脂は、耐熱性が非常に優れており、本発明のエポキシ樹脂に硬化剤を添加して得た樹脂硬化物はガラス転移点が高い。また、本発明のエポキシ樹脂は、従来のノボラック型エポキシ樹脂と同等の力学的強度性能を有する。
樹脂硬化物の耐熱性は使用する硬化剤によっても異なるが、本発明のエポキシ樹脂は、硬化剤を添加させて得た樹脂硬化物のガラス転移温度が動的粘弾性測定法で通常120℃以上であり、好ましくは150℃以上、より好ましくは170℃以上である。
本発明のエポキシ樹脂は、硬化剤として脂肪族や芳香族のアミン類、ポリフェノール化合物、ノボラック樹脂、酸無水物など一般のエポキシ樹脂用硬化剤を使用することができるが、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤を使用すると、より耐熱性が向上する。
次に、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤について説明する。
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、エポキシ樹脂硬化物に優れた耐熱性を付与する。すなわち、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤を使用すると、樹脂硬化物のガラス転移点が高くなり、また熱分解しにくくなる。
本発明の硬化剤を使用したエポキシ樹脂硬化物の耐熱性は使用するエポキシ樹脂の種類によって当然異なるが、樹脂硬化物のガラス転移温度が動的粘弾性測定法で通常120℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは170℃以上である。
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、エポキシ樹脂硬化物に優れた耐熱性を付与する。すなわち、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤を使用すると、樹脂硬化物のガラス転移点が高くなり、また熱分解しにくくなる。
本発明の硬化剤を使用したエポキシ樹脂硬化物の耐熱性は使用するエポキシ樹脂の種類によって当然異なるが、樹脂硬化物のガラス転移温度が動的粘弾性測定法で通常120℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは170℃以上である。
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、市販のビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等あらゆるタイプのエポキシ樹脂に使用できるが、本発明のエポキシ樹脂に使用するとより耐熱性が向上する。
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基とリグニンフェノール樹脂のフェノール性水酸基が等量で行うのが一般的であるが、当量で±20%の範囲で加減することもできる。
必要とされる特性に応じてほかのエポキシ樹脂硬化剤を併用することも可能である。
必要とされる特性に応じてほかのエポキシ樹脂硬化剤を併用することも可能である。
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤を用いてエポキシ樹脂を硬化させる場合、硬化促進剤を使用することができる。硬化促進剤としては、2−エチル−4−メチルイミダゾール及び1−シアノ−2−エチル−4−メチルイミダゾール等とその誘導体、ベンジルジメチルアミン等の3級アミン、トリフェニルフォスフィン(TPP)のカリボール塩等の誘導体など、フェノール樹脂型エポキシ樹脂の硬化促進剤として一般的に使用されているものを用いることができる。
硬化促進剤の使用量は、エポキシ樹脂と硬化剤であるリグニンフェノール樹脂全量を100重量部とした場合、0.1〜3重量部の範囲、好ましくは0.2〜2重量部の範囲で用いることができる。
硬化促進剤の使用量は、エポキシ樹脂と硬化剤であるリグニンフェノール樹脂全量を100重量部とした場合、0.1〜3重量部の範囲、好ましくは0.2〜2重量部の範囲で用いることができる。
本発明のエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂用硬化剤は、接着剤、成形材料、構造材料、半導体封止材、プリント配線板等の電子材料等の従来のエポキシ樹脂が使用されるあらゆる用途で使用することができる。
特に耐熱性が必要とされる電気製品、自動車部材等の用途に適している。
特に耐熱性が必要とされる電気製品、自動車部材等の用途に適している。
本発明によれば次のような効果がある。
(1)本発明のエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂用硬化剤は、安価である。
(2)本発明のエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂用硬化剤は、パルプ廃液から回収されたリグニンを使用するので、パルプ廃液による環境汚染の問題解決に貢献する。
(3)本発明のエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂用硬化剤は、パルプ廃液から回収されたリグニンを使用するので未利用のバイオマス資源の活用に貢献する。
(4)本発明のエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂用硬化剤は、植物成分であるリグニンを主原料とし石油化学原料の使用を大幅に減らしたカーボンニュートラルなものであり、地球温暖化の防止に貢献する。
(5)本発明の製造方法によれば、安価にエポキシ樹脂とエポキシ樹脂用硬化剤を製造できる。
(6)本発明の製造方法によれば、未反応物の残留が少なく、又有機溶剤も必要としないので環境面で有利である。
(7)本発明のエポキシ樹脂は耐熱性が優れる。
(8)本発明のエポキシ樹脂用硬化剤はエポキシ樹脂硬化物に高い耐熱性を付与する。
(9)本発明のエポキシ樹脂は力学的強度特性が優れている。
(1)本発明のエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂用硬化剤は、安価である。
(2)本発明のエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂用硬化剤は、パルプ廃液から回収されたリグニンを使用するので、パルプ廃液による環境汚染の問題解決に貢献する。
(3)本発明のエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂用硬化剤は、パルプ廃液から回収されたリグニンを使用するので未利用のバイオマス資源の活用に貢献する。
(4)本発明のエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂用硬化剤は、植物成分であるリグニンを主原料とし石油化学原料の使用を大幅に減らしたカーボンニュートラルなものであり、地球温暖化の防止に貢献する。
(5)本発明の製造方法によれば、安価にエポキシ樹脂とエポキシ樹脂用硬化剤を製造できる。
(6)本発明の製造方法によれば、未反応物の残留が少なく、又有機溶剤も必要としないので環境面で有利である。
(7)本発明のエポキシ樹脂は耐熱性が優れる。
(8)本発明のエポキシ樹脂用硬化剤はエポキシ樹脂硬化物に高い耐熱性を付与する。
(9)本発明のエポキシ樹脂は力学的強度特性が優れている。
次に実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
実施例及び比較例において、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性を調べるためにガラス転移温度を測定した。
ガラス転移温度は、動的粘弾性測定法で昇温速度5℃/分にて測定した。
実施例及び比較例において、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性を調べるためにガラス転移温度を測定した。
ガラス転移温度は、動的粘弾性測定法で昇温速度5℃/分にて測定した。
(本発明のエポキシ樹脂用硬化剤)
300cc三ツ口セパラブルフラスコに攪拌機、温度計、冷却管を装着し、ソーダ法によるパルプ廃液から回収し精製した純度90%の麦ワラリグニン100g、フェノール40g及び98%硫酸1.5gを仕込み、よく攪拌しながら昇温し130℃で2時間反応させた。リグニンはフェノール、硫酸とよく混和し攪拌後20分以内に液化した。
次に、温度を100℃以下にしてから40%水酸化ナトリウム水溶液を3.5g添加して触媒を中和し、再び昇温して200℃、40mmHgで減圧蒸留を行い未反応フェノールを回収した。回収したフェノールは8gであった。
次に冷却すると、反応物は固化しはじめ、強固な塊となった。常温になった所で生成物を砕いてフラスコから取り出した。この生成物を更に粉砕して粉末化し再びフラスコに入れ過剰の水を添加し、よく攪拌し洗浄して精製した。洗浄後80℃で送風乾燥して、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤であるリグニンフェノール樹脂130gを得た。
300cc三ツ口セパラブルフラスコに攪拌機、温度計、冷却管を装着し、ソーダ法によるパルプ廃液から回収し精製した純度90%の麦ワラリグニン100g、フェノール40g及び98%硫酸1.5gを仕込み、よく攪拌しながら昇温し130℃で2時間反応させた。リグニンはフェノール、硫酸とよく混和し攪拌後20分以内に液化した。
次に、温度を100℃以下にしてから40%水酸化ナトリウム水溶液を3.5g添加して触媒を中和し、再び昇温して200℃、40mmHgで減圧蒸留を行い未反応フェノールを回収した。回収したフェノールは8gであった。
次に冷却すると、反応物は固化しはじめ、強固な塊となった。常温になった所で生成物を砕いてフラスコから取り出した。この生成物を更に粉砕して粉末化し再びフラスコに入れ過剰の水を添加し、よく攪拌し洗浄して精製した。洗浄後80℃で送風乾燥して、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤であるリグニンフェノール樹脂130gを得た。
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤の性能を調べるために、エポキシ樹脂の硬化試験を行った。エポキシ樹脂として市販のビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量190)を使用した。
本発明の硬化剤と前記エポキシ樹脂を100:110の割合でメチルエチルケトンに溶解し、硬化促進剤として1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールを、エポキシ樹脂と硬化剤を合わせた重量に対して1重量%添加した。
このワニスをフィルム上にキャストして、60℃の温度で3時間かけてメチルエチルケトンを除去した。
続いて、テフロンの型に充填し、真空プレス中で140℃で2時間+170℃で3時間加熱し硬化させた。樹脂は加熱時に溶融して流動性を示した後、硬化した。樹脂硬化物の機械物性は、曲げ強度が160MPa、曲げ弾性率は4.5GPaであった。
樹脂硬化物のガラス転移温度は、165℃であった。
本発明の硬化剤と前記エポキシ樹脂を100:110の割合でメチルエチルケトンに溶解し、硬化促進剤として1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールを、エポキシ樹脂と硬化剤を合わせた重量に対して1重量%添加した。
このワニスをフィルム上にキャストして、60℃の温度で3時間かけてメチルエチルケトンを除去した。
続いて、テフロンの型に充填し、真空プレス中で140℃で2時間+170℃で3時間加熱し硬化させた。樹脂は加熱時に溶融して流動性を示した後、硬化した。樹脂硬化物の機械物性は、曲げ強度が160MPa、曲げ弾性率は4.5GPaであった。
樹脂硬化物のガラス転移温度は、165℃であった。
(本発明のエポキシ樹脂用硬化剤)
実施例1で得た本発明のエポキシ樹脂用硬化剤を使用して、市販のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200)を使用してそれ以外は実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂の硬化試験を行った。これによって得られた樹脂硬化物の機械物性は、曲げ強度が170MPa、曲げ弾性率は4.6GPaであった。また、樹脂硬化物のガラス転移温度は動的粘弾性測定法で190℃であった。
実施例1で得た本発明のエポキシ樹脂用硬化剤を使用して、市販のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200)を使用してそれ以外は実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂の硬化試験を行った。これによって得られた樹脂硬化物の機械物性は、曲げ強度が170MPa、曲げ弾性率は4.6GPaであった。また、樹脂硬化物のガラス転移温度は動的粘弾性測定法で190℃であった。
(本発明以外のリグニンフェノール樹脂を硬化剤として使用した場合の比較)
機械パルプ化法によるパルプ廃液から回収し精製した純度90%の麦ワラリグニンを使用して、最初実施例1と同じ仕込割合でリグニンフェノール樹脂を合成しようとしたがリグニンが混和しないので、硫酸の量を10gに増量し反応後中和に使用する40%水酸化ナトリウム水溶液の量を23gに増量する以外は実施例1と同じ方法でリグニンフェノール樹脂を合成した所、精製したリグニンフェノール樹脂を78g得た。また、回収した未反応フェノールは20gであった。
次に、このリグニンフェノール樹脂を硬化剤として、実施例2と同じ方法で市販のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200)の硬化試験を行った所、樹脂硬化物の機械物性は、曲げ強度が105MPa、曲げ弾性率は3.4GPa、ガラス転移温度は92℃であった。
以上、アルカリ蒸解法以外のパルプ化法によると、イネ科植物リグニンを使用しても、本発明の実施例と比べ、リグニンフェノール樹脂の収量は少なく、またエポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度は低かった。
機械パルプ化法によるパルプ廃液から回収し精製した純度90%の麦ワラリグニンを使用して、最初実施例1と同じ仕込割合でリグニンフェノール樹脂を合成しようとしたがリグニンが混和しないので、硫酸の量を10gに増量し反応後中和に使用する40%水酸化ナトリウム水溶液の量を23gに増量する以外は実施例1と同じ方法でリグニンフェノール樹脂を合成した所、精製したリグニンフェノール樹脂を78g得た。また、回収した未反応フェノールは20gであった。
次に、このリグニンフェノール樹脂を硬化剤として、実施例2と同じ方法で市販のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200)の硬化試験を行った所、樹脂硬化物の機械物性は、曲げ強度が105MPa、曲げ弾性率は3.4GPa、ガラス転移温度は92℃であった。
以上、アルカリ蒸解法以外のパルプ化法によると、イネ科植物リグニンを使用しても、本発明の実施例と比べ、リグニンフェノール樹脂の収量は少なく、またエポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度は低かった。
(本発明以外のリグニンフェノール樹脂を硬化剤として使用した場合の比較)
特許文献4の比較例で開示されているテルペンを使用しない場合のリグニンフェノール樹脂の製法に準拠してリグニンフェノール樹脂を合成した。
実施例1と同じ反応装置に、ソーダ法によるパルプ廃液から回収し精製した純度65%の麦ワラリグニン100g、フェノール40g及び75%硫酸(98%硫酸を水で希釈したもの)80gを仕込み、80℃で2時間反応させた。その後、冷却して反応を終了し、リグニンフェノール樹脂を含む生成物を得た。この生成物中の未反応フェノールは、ゲルろ過クロマトグラフィーを使用して定量した所12gであった。
次に、この生成物を1lのフラスコに移し洗浄水を添加し攪拌、2時間放置した後、ろ過して水を除去して樹脂分を回収した。これに再び洗浄水を加え、更に40%水酸化ナトリウムを添加しph4まで中和した後、再度、攪拌、2時間放置した後、ろ過して樹脂分を回収した。この操作によって、リグニン原料由来の糖類、糖分解物、無機塩類の大部分は洗浄水と共に除去された。次に、樹脂分を、120℃で送風乾燥して、固形物65gを得た。
続いて、この固形物に500gのアセトンを添加してよく混合した後、ろ過してアセトン可溶分と不溶分に分離した。
アセトン可溶分を回収し、120℃で送風乾燥して、リグニンフェノール樹脂48gが得られた。
次に、このリグニンフェノール樹脂を硬化剤として、実施例2と同じ方法で市販のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200)の硬化試験を行った所、樹脂硬化物の機械物性は、曲げ強度が120MPa、曲げ弾性率は3.9GPa、ガラス転移温度は104℃であった。
以上、特許文献4で開示されている方法によると、本発明の実施例と比べ、リグニンフェノール樹脂の収量は少なく、またエポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度は低かった。
特許文献4の比較例で開示されているテルペンを使用しない場合のリグニンフェノール樹脂の製法に準拠してリグニンフェノール樹脂を合成した。
実施例1と同じ反応装置に、ソーダ法によるパルプ廃液から回収し精製した純度65%の麦ワラリグニン100g、フェノール40g及び75%硫酸(98%硫酸を水で希釈したもの)80gを仕込み、80℃で2時間反応させた。その後、冷却して反応を終了し、リグニンフェノール樹脂を含む生成物を得た。この生成物中の未反応フェノールは、ゲルろ過クロマトグラフィーを使用して定量した所12gであった。
次に、この生成物を1lのフラスコに移し洗浄水を添加し攪拌、2時間放置した後、ろ過して水を除去して樹脂分を回収した。これに再び洗浄水を加え、更に40%水酸化ナトリウムを添加しph4まで中和した後、再度、攪拌、2時間放置した後、ろ過して樹脂分を回収した。この操作によって、リグニン原料由来の糖類、糖分解物、無機塩類の大部分は洗浄水と共に除去された。次に、樹脂分を、120℃で送風乾燥して、固形物65gを得た。
続いて、この固形物に500gのアセトンを添加してよく混合した後、ろ過してアセトン可溶分と不溶分に分離した。
アセトン可溶分を回収し、120℃で送風乾燥して、リグニンフェノール樹脂48gが得られた。
次に、このリグニンフェノール樹脂を硬化剤として、実施例2と同じ方法で市販のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200)の硬化試験を行った所、樹脂硬化物の機械物性は、曲げ強度が120MPa、曲げ弾性率は3.9GPa、ガラス転移温度は104℃であった。
以上、特許文献4で開示されている方法によると、本発明の実施例と比べ、リグニンフェノール樹脂の収量は少なく、またエポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度は低かった。
(市販のノボラック樹脂を硬化剤として使用した場合の比較)
硬化剤としてノボラック樹脂(フェノライトTD−2131、DIC社製)を使用して、実施例1と同じ方法で市販のビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量190)の硬化試験を行った所、樹脂硬化物の機械物性は、曲げ強度が150MPa、曲げ弾性率は4.2GPa、ガラス転移温度は134℃であった。
硬化剤としてノボラック樹脂(フェノライトTD−2131、DIC社製)を使用して、実施例1と同じ方法で市販のビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量190)の硬化試験を行った所、樹脂硬化物の機械物性は、曲げ強度が150MPa、曲げ弾性率は4.2GPa、ガラス転移温度は134℃であった。
(市販のノボラック樹脂を硬化剤として使用した場合の比較)
比較例3と同じ硬化剤を使用し、それ以外は実施例2と同じ方法で市販のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の硬化試験を行った所、樹脂硬化物の機械物性は、曲げ強度が165MPa、曲げ弾性率は4.5GPa、ガラス転移温度は170℃であった。
以上、市販のノボラック樹脂を使用するよりも本発明の硬化剤を使用する方が、樹脂硬化物のガラス転移点が20℃以上高くなった。
逆に本発明以外のリグニンフェノール樹脂を硬化剤として使用した場合は、樹脂硬化物のガラス転移点は市販のノボラック樹脂より低い結果となった。
比較例3と同じ硬化剤を使用し、それ以外は実施例2と同じ方法で市販のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の硬化試験を行った所、樹脂硬化物の機械物性は、曲げ強度が165MPa、曲げ弾性率は4.5GPa、ガラス転移温度は170℃であった。
以上、市販のノボラック樹脂を使用するよりも本発明の硬化剤を使用する方が、樹脂硬化物のガラス転移点が20℃以上高くなった。
逆に本発明以外のリグニンフェノール樹脂を硬化剤として使用した場合は、樹脂硬化物のガラス転移点は市販のノボラック樹脂より低い結果となった。
(本発明のエポキシ樹脂)
実施例1と同じ方法で得たリグニンフェノール樹脂130gと大過剰量のエピクロロヒドリン300gを1リットルの四つ口フラスコ中に仕込み、攪拌モーター、温度計、滴下ロート、還流冷却管を取り付けた。約110℃の油浴中にフラスコを入れ、攪拌しながら温度を100℃に維持した。次いで、40%水酸化ナトリウム水溶液200gを2時間かけて滴下した。滴下終了後さらに1時間攪拌を続け、反応を終了した。反応物中からエバポレーターを用いて未反応のエピクロロヒドリンと水を80℃で減圧しながら留去し、本発明のエポキシ樹脂165gを得た。このエポキシ樹脂のエポキシ当量は310であった。
実施例1と同じ方法で得たリグニンフェノール樹脂130gと大過剰量のエピクロロヒドリン300gを1リットルの四つ口フラスコ中に仕込み、攪拌モーター、温度計、滴下ロート、還流冷却管を取り付けた。約110℃の油浴中にフラスコを入れ、攪拌しながら温度を100℃に維持した。次いで、40%水酸化ナトリウム水溶液200gを2時間かけて滴下した。滴下終了後さらに1時間攪拌を続け、反応を終了した。反応物中からエバポレーターを用いて未反応のエピクロロヒドリンと水を80℃で減圧しながら留去し、本発明のエポキシ樹脂165gを得た。このエポキシ樹脂のエポキシ当量は310であった。
本発明のエポキシ樹脂の性能を調べるために、エポキシ樹脂の硬化試験を行った。硬化剤として市販のノボラック樹脂(フェノライトTD−2131、DIC社製)を使用した。
本発明のエポキシ樹脂と前記硬化剤を150:100の割合でメチルエチルケトンに溶解し、硬化促進剤として1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールを、エポキシ樹脂と硬化剤を合わせた重量に対して1重量%添加した。
このワニスをフィルム上にキャストして、60℃の温度で3時間かけてメチルエチルケトンを除去した。
続いて、テフロンの型に充填し、真空プレス中140℃で2時間+170℃で3時間加熱し硬化させた。樹脂は加熱時に溶融して流動性を示した後、硬化した。樹脂硬化物の機械物性は、曲げ強度が160MPa、曲げ弾性率は4.5GPaであった。
樹脂硬化物のガラス転移温度は、動的粘弾性測定法で昇温速度5℃/分にて測定したところ185℃であった。
本発明のエポキシ樹脂と前記硬化剤を150:100の割合でメチルエチルケトンに溶解し、硬化促進剤として1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールを、エポキシ樹脂と硬化剤を合わせた重量に対して1重量%添加した。
このワニスをフィルム上にキャストして、60℃の温度で3時間かけてメチルエチルケトンを除去した。
続いて、テフロンの型に充填し、真空プレス中140℃で2時間+170℃で3時間加熱し硬化させた。樹脂は加熱時に溶融して流動性を示した後、硬化した。樹脂硬化物の機械物性は、曲げ強度が160MPa、曲げ弾性率は4.5GPaであった。
樹脂硬化物のガラス転移温度は、動的粘弾性測定法で昇温速度5℃/分にて測定したところ185℃であった。
(本発明のエポキシ樹脂)
実施例3で得た本発明のエポキシ樹脂に、実施例1で得た本発明のエポキシ樹脂用硬化剤を使用してそれ以外は実施例3と同じ方法でエポキシ樹脂の硬化試験を行った。
これによって得られた樹脂硬化物の機械物性は、曲げ強度が165MPa、曲げ弾性率は4.6GPaであった。
また、樹脂硬化物のガラス転移温度は210℃であった。
実施例3で得た本発明のエポキシ樹脂に、実施例1で得た本発明のエポキシ樹脂用硬化剤を使用してそれ以外は実施例3と同じ方法でエポキシ樹脂の硬化試験を行った。
これによって得られた樹脂硬化物の機械物性は、曲げ強度が165MPa、曲げ弾性率は4.6GPaであった。
また、樹脂硬化物のガラス転移温度は210℃であった。
クラフト法によるパルプ廃液から回収し精製した純度90%の麦ワラリグニンを使用する以外は実施例1と同じ方法でリグニンフェノール樹脂を合成した所、精製したリグニンフェノール樹脂を132g得た。また、回収した未反応フェノールは7gであった。
次に、このリグニンフェノール樹脂132gから、実施例3と同じ方法でエポキシ樹脂を合成した所、本発明のエポキシ樹脂170gを得た。このエポキシ樹脂のエポキシ当量は295であった。
次に、このリグニンフェノール樹脂132gから、実施例3と同じ方法でエポキシ樹脂を合成した所、本発明のエポキシ樹脂170gを得た。このエポキシ樹脂のエポキシ当量は295であった。
このエポキシ樹脂の性能を調べるために、実施例3と同じ方法でエポキシ樹脂の硬化試験を行った所、樹脂硬化物の機械物性は、曲げ強度が165MPa曲げ弾性率は4.6GPaであった。また、ガラス転移温度は189℃であった。
(本発明以外のリグニンフェノール樹脂型エポキシ樹脂との比較)
比較例1と同じ方法で得たリグニンフェノール樹脂78gを使用して、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂を合成した所、91gのエポキシ樹脂が得られ、そのエポキシ当量は460であった。
このエポキシ樹脂の性能を調べるために、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂の硬化試験を行った所、樹脂硬化物の機械物性は曲げ強度が110MPa、曲げ弾性率は3.8GPaであった。また、ガラス転移温度は95℃であった。
以上、アルカリ蒸解法以外のパルプ化法によるイネ科植物リグニンを使用した比較例1の場合は、本発明の実施例と比較してエポキシ樹脂の収率が低い。またエポキシ樹脂の耐熱性が低い。
比較例1と同じ方法で得たリグニンフェノール樹脂78gを使用して、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂を合成した所、91gのエポキシ樹脂が得られ、そのエポキシ当量は460であった。
このエポキシ樹脂の性能を調べるために、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂の硬化試験を行った所、樹脂硬化物の機械物性は曲げ強度が110MPa、曲げ弾性率は3.8GPaであった。また、ガラス転移温度は95℃であった。
以上、アルカリ蒸解法以外のパルプ化法によるイネ科植物リグニンを使用した比較例1の場合は、本発明の実施例と比較してエポキシ樹脂の収率が低い。またエポキシ樹脂の耐熱性が低い。
(本発明以外のリグニンフェノール樹脂型エポキシ樹脂との比較)
比較例2と同じ方法で得たリグニンフェノール樹脂48gを使用して、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂を合成した所、59gのエポキシ樹脂が得られ、そのエポキシ当量は360であった。
このエポキシ樹脂の性能を調べるために、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂の硬化実験を行った所、樹脂硬化物の機械物性は曲げ強度が148MPa曲げ弾性率は4.1GPaであった。また、ガラス転移温度は動的粘弾性測定法で108℃であった。
以上、特許文献5に準拠した比較例2によれば、1バッチあたりで得られるエポキシ樹脂の収率は、本発明の半分以下であり、精製のために過剰のアセトンを使用しなければならない。また、得られたエポキシ樹脂の耐熱性は、本発明のエポキシ樹脂より低い。
比較例2と同じ方法で得たリグニンフェノール樹脂48gを使用して、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂を合成した所、59gのエポキシ樹脂が得られ、そのエポキシ当量は360であった。
このエポキシ樹脂の性能を調べるために、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂の硬化実験を行った所、樹脂硬化物の機械物性は曲げ強度が148MPa曲げ弾性率は4.1GPaであった。また、ガラス転移温度は動的粘弾性測定法で108℃であった。
以上、特許文献5に準拠した比較例2によれば、1バッチあたりで得られるエポキシ樹脂の収率は、本発明の半分以下であり、精製のために過剰のアセトンを使用しなければならない。また、得られたエポキシ樹脂の耐熱性は、本発明のエポキシ樹脂より低い。
Claims (8)
- アルカリ蒸解法によるパルプ廃液から回収したイネ科植物リグニンとフェノール類とを酸触媒下で反応させてなるリグニンフェノール樹脂にエピクロロヒドリンを反応させていることを特徴とするエポキシ樹脂
- 前記エポキシ樹脂に硬化剤を添加させて得た樹脂硬化物のガラス転移温度が動的粘弾性測定法で120℃以上であることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂
- アルカリ蒸解法によるパルプ廃液から回収したイネ科植物リグニンとフェノール類とを酸触媒下で反応させたリグニンフェノール樹脂であることを特徴とするエポキシ樹脂用硬化剤
- 前記硬化剤でエポキシ樹脂を硬化させて得た樹脂硬化物のガラス転移温度が動的粘弾性測定法で120℃以上であることを特徴とする請求項3に記載のエポキシ樹脂用硬化剤
- アルカリ蒸解法によるパルプ廃液から回収したイネ科植物リグニンとフェノール類とを重量比でイネ科植物リグニン:フェノール=100:20〜100の割合で使用し、酸触媒をイネ科植物リグニンに対して0.2〜5重量%使用して反応させ、反応後中和し、次いで減圧蒸留によって未反応フェノールを除去し、水洗して精製したリグニンフェノール樹脂を、アルカリ触媒下エピクロロヒドリンと反応させることを特徴とするエポキシ樹脂の製造方法
- 前記イネ科植物リグニンの純度が80%以上である請求項5に記載の方法
- アルカリ蒸解法によるパルプ廃液から回収したイネ科植物リグニンとフェノール類とを重量比でイネ科植物リグニン:フェノール=100:20〜100の割合で使用し、酸触媒をイネ科植物リグニンに対して0.2〜5重量%使用して反応させ、反応後中和し、次いで減圧蒸留によって未反応フェノールを除去し、水洗して精製することを特徴とするエポキシ樹脂用硬化剤の製造方法
- 前記イネ科植物リグニンの純度が80%以上である請求項7に記載の方法
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