JP2009079198A - 新規のリグニンフェノール系樹脂及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 未反応物の含有量が少なく、かつ安価な新規のリグニンフェノール系樹脂を提供することを目的とする。
また、かかる新規のリグニンフェノール系樹脂の製法であって、かつ未反応フェノールと未反応リグニンの残存が少なく収率の高いリグニンフェノール系樹脂の製造方法を提供する
【解決手段】 リグニン原料とフェノール類及び前記フェノール類に対し0.1〜5モルのテルペンとを反応させていることを特徴とするリグニンフェノール系樹脂である。
また、リグニン原料とフェノール及び前記フェノール類に対し0.1〜5モルのテルペンとを反応させることを特徴とするリグニンフェノール系樹脂の製造方法である。

Description

本発明は、新規のリグニンフェノール系樹脂とその製造方法に関する。
リグニンは、植物中にセルロースの次に多く含まれる物質で、地球上に膨大な量存在し、石油系原料に変わる資源としての利用が期待されている。
リグニンとフェノールが反応して得られる樹脂(以下、リグニンフェノール樹脂という)は公知であり、フェノール樹脂に替わる植物系合成樹脂として工業化の取り組みがなされている。
酸触媒によるリグニンフェノール樹脂として、例えば、特許文献1、特許文献2などがある。これらは、製造において未反応フェノールと未反応リグニンが多く残存し、樹脂の収率が低くコストが高いという問題がある。また、このリグニンフェノール樹脂は、未反応物が多いため用途が限定されているか、精製に多大なコストを要するため高価である。例えば、特許文献1では、熱硬化性樹脂成形品や塗料など未反応物が含まれていても構わない用途に限定されている。また、特許文献2では、精製工程が非常に煩雑でコストが高い。
一方、本発明者は、アルカリ触媒によるイネ科植物リグニンを使用したリグニンフェノール樹脂からなる接着剤を開発した(特許文献3)。この場合は、未反応フェノールが残存しないが、未反応リグニンは多く残存する。そのため、未反応リグニンが混在したまま使用できる熱硬化性接着剤の用途に限定している。
特公昭61−2697号公報 特許第3654527号 特許第3361819号
本発明は、未反応物の含有量が少なく、かつ安価な新規のリグニンフェノール系樹脂を提供することを目的とする。
また、本発明は、かかる新規のリグニンフェノール系樹脂の製造方法であって、未反応フェノールと未反応リグニンの残存が少なく、収率の高いリグニンフェノール系樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は鋭意研究により、リグニンフェノール樹脂の製造において、植物系物質であるテルペンを使用することにより、未反応フェノールと未反応リグニンが減少し、樹脂の収率が飛躍的に向上することを見出した。
すなわち、本発明は、リグニン原料とフェノール類及び前記フェノール類に対し0.1〜5モルのテルペンとを反応させていることを特徴とするリグニンフェノール系樹脂である。
また本発明は、リグニン原料とフェノール類及び前記フェノール類に対し0.1〜5モルのテルペンとを反応させることを特徴とするリグニンフェノール系樹脂の製造方法である。
本発明で使用されるリグニン原料は、リグニンを含有するあらゆる原料が対象であり、木材や草本類の砕片、粉末を使用しても構わないが、特に、パルプ廃液またはそれを精製したリグニン原料が好ましく、パルプ廃液を精製したリグニン原料がより好ましい。パルプ廃液を精製したリグニン原料は、リグニンの純度が高い方が良いのは当然であるが、通常工業的に産出されるリグニン原料はある程度の不純物を含んでいる。パルプ廃液を精製したリグニン原料の、好ましいリグニンの純度は40%以上、より好ましい純度は60%以上である。この純度は、リグニン原料の固形分全体に対するリグニン分の重量%である。
パルプ廃液を精製したリグニンにおいて、蒸解法の種類はソーダ法、クラフト法、メカニカルパルプ化法、亜硫酸法などがあげられるが、特にソーダ法によるものが好ましい。また、亜硫酸法によるものは、リグニンがスルホン化されるためあまり好ましくない。
また、リグニン原料が含有するリグニンの植物の種類としては、あらゆる植物のリグニンが対象となるが、特にイネ科植物リグニンが好ましい。イネ科植物のリグニンは、他の植物リグニンよりも反応点が多く樹脂化反応に有利である。かかるイネ科植物として、稲、麦、竹、サトウキビ、アシ、コウリャンなどがあげられる。
本発明で使用されるフェノール類は、フェノール、クレゾール,レゾルシノール等あらゆるフェノール類が対象となるが、性能とコスト面からフェノールを使用するのが特に好ましい。その使用量は、使用するリグニン原料が含有するリグニンに対して5〜200重量%であるのが好ましく、特に40〜100重量%であるのが好ましい。この使用量は、200重量%を超えても差し支えないが、コスト高になるばかりで物性の向上は望めない。
本発明で使用されるテルペンは、d−リモネン、α−ピネン、β−ピネン、δ−3カレン、β−フェランドレン、ジテルペンなどあらゆるテルペンが対象となるが、性能とコスト面から特にd−リモネン、α−ピネン、β−ピネンが好ましい。
その使用量は、フェノールに対するモル比で0.1〜5の範囲が好ましい。この使用量は5を超えると未反応テルペンが増大し好ましくない。
リグニン原料とフェノール類及びテルペンの反応において、通常、触媒として酸が使用される。かかる酸としてあらゆる物が対象となるが、硫酸、硝酸、リン酸、塩酸などの無機酸の使用が好ましく、特に性能、コストの面で硫酸の使用が好ましい。
酸の使用量は、使用する酸の種類によって異なるが、通常、リグニン原料に対して0.5〜500重量%使用するのが好ましく、2〜200重量%がより好ましい。
酸の使用量は、反応温度とより関連が深い。反応温度が、40〜80℃と比較的低温の場合には酸の使用量は多く必要で、リグニン原料に対して50〜500重量%が好ましく、60〜200重量%がより好ましい。反応温度が、70〜150℃と高温の場合には酸の使用量は少なく、リグニン原料に対して0.5〜100重量%が好ましく、2〜20%がより好ましい。
本発明において、酸は水に希釈して使用しても良い。その場合の、酸の濃度は50%以上が好ましい。
リグニン原料、フェノール類、テルペンの反応のさせ方として、リグニン原料、フェノール類、テルペンを同時に反応させる方法、リグニン原料とフェノール類を反応させた後にテルペンを反応させる方法、リグニン原料とテルペンを反応させた後にフェノール類を反応させる方法、フェノール類とテルペンを反応させた後にリグニン原料を反応させる方法があげられるが、特にリグニン原料とフェノール類を反応させた後にテルペンを反応させる方法がより好ましい。この方法によれば、未反応リグニンと未反応フェノールを最も効果的に減少できる。
リグニン原料とフェノール類を反応させた後にテルペンを反応させる方法について、より詳しく説明する。
この方法では、まずリグニン原料とフェノール類とを酸触媒下で40〜150℃の温度で20分〜5時間反応させる。これにより、リグニンとフェノール類が共重合してリグニンフェノール樹脂が生成する。この中には、未反応リグニン、未反応フェノール、リグニン由来の糖またはその分解物と無機塩類などが混在している。
次に、この中にテルペンを添加して反応を続ける。テルペンは酸触媒下で、フェノール類、リグニン及びリグニンフェノール樹脂のフェノール骨格と共重合反応する。反応条件は、40〜100℃の温度で20分〜3時間反応させるのが好ましい。これにより、未反応リグニン、未反応フェノールは減少し、とりわけ未反応フェノールはほとんど無くなる。
本発明において、ホルムアルデヒドを併用することもできる。ホルムアルデヒドは、リグニン、フェノール類、テルペンと共重合反応に加わり、脱水縮合してメチレン基となり、生成物であるリグニンフェノール樹脂の一部を構成する。
ホルムアルデヒドを使用する場合の好ましい使用量は、フェノール類に対して2モル以下であり、より好ましくは0.5〜1.5モルである。
次に、本発明の製造方法によって得られるリグニンフェノール系樹脂について説明する。このリグニンフェノール系樹脂は、未反応物の含有量が少ないので、幅広い用途で使用できる。例えば、アセトンやメタノールなどの有機溶剤に溶かして使用することができ、常温硬化性の接着剤、含浸剤等に使用することができる。
本発明によれば次のような効果がある。
(1)本発明のリグニンフェノール系樹脂は、未反応物の含有量が少なくかつ安価であ る。
(2)本発明のリグニンフェノール系樹脂は、未反応物の含有量が少ないので幅広い用 途に利用できる。
(3)本発明のリグニンフェノール系樹脂の製造方法によれば、未反応フェノールと未 反応リグニンの残存が少ない。
(4)本発明のリグニンフェノール系樹脂の製造方法によれば、収率が高くコスト面で 有利である。
(5)本発明のリグニンフェノール系樹脂の製造方法によれば、未反応フェノールがほ とんど残存せず、環境面で有利である。
(6)本発明のリグニンフェノール系樹脂の製造方法によれば、リグニンフェノール系 樹脂の精製が容易である。
(7)本発明のリグニンフェノール系樹脂の製造方法によれば、非石油系資源であるリ グニンとテルペンを使用しており環境保護に役立つ。
本発明を実施するための最良の形態
次に実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
実施例及び比較例では、リグニン原料として、ソーダ蒸解法による麦ワラパルプ廃液を精製したリグニン純度65%のものを使用した。
生成物の未反応フェノールを計測するために、試料をゲルろ過クロマトグラフィーを使用して、検量線との比較により定量を行った。
比較例
冷却器と攪拌機付きの反応容器にリグニン原料100重量部、フェノール40重量部及び75%硫酸(98%硫酸を水で希釈したもの)80重量部を仕込み、80℃で2時間反応させた。その後、冷却して反応を終了し、リグニンフェノール樹脂を含む生成物を得た。この生成物中の末反応フェノールを計測した所、未反応フェノールの量は12重量部であった。
次に、洗浄水を300重量部添加し攪拌、2時間放置した後、ろ過して水を除去し樹脂分を回収した。これに再び洗浄水300重量部を加え、更に40%水酸化ナトリウムを添加しph4まで中和した後、再度、攪拌、2時間放置した後、ろ過して樹脂分を回収した。この操作によって、リグニン原料由来の糖類、糖分解物、無機塩類の大部分は洗浄水と共に除去された。次に、樹脂分を、120℃で送風乾燥して、固形物90重量部を得た。
続いて、この固形物に500重量部のアセトンを添加してよく混合した後、ろ過してアセトン可溶分と不溶分に分離した。ここで、アセトン可溶分がリグニンフェノール樹脂であり収量66重量部、またアセトン不溶分は未反応リグニンであり収量23重量部であった。
実施例
冷却器と攪拌機付きの反応容器にリグニン原料100重量部、フェノール40重量部及び75%硫酸(98%硫酸を水で希釈したもの)80重量部を仕込み、比較例と同様の方法で反応させ、リグニンフェノール樹脂を含む生成物を得た。
次に、テルペンとしてD−リモネンをフェノールに対して0.5モルすなわち29重量部、常温で30分かけて滴下した後昇温して、80℃で1時間反応させた。その後、冷却して反応を終了し、本発明のリグニンフェノール系樹脂を含む生成物を得た。この生成物中の未反応フェノールを計測した所、未反応フェノールの量は0.6重量部であった。
次に、比較例と同様の方法で樹脂分を洗浄、ろ過し、更に、樹脂分を120℃で送風乾燥して、固形物126重量部を得た。
続いて、この固形物に500重量部のアセトンを添加してよく混合した後、ろ過してアセトン可溶分と不溶分に分離した。ここで、アセトン可溶分が本発明のリグニンフェノール系樹脂であり収量114重量部、またアセトン不溶分は未反応リグニンであり収量11重量部であった。

Claims (4)

  1. リグニン原料とフェノール類及び前記フェノール類に対し0.1〜5モルのテルペンとを反応させていることを特徴とするリグニンフェノール系樹脂。
  2. リグニン原料とフェノール類及び前記フェノール類に対し0.1〜5モルのテルペンとを反応させることを特徴とするリグニンフェノール系樹脂の製造方法。
  3. 前記リグニン原料が、イネ科植物リグニンを含有することを特徴とする請求項2記載のリグニンフェノール系樹脂の製造方法。
  4. リグニン原料とフェノール類とを酸触媒下で反応させた後、前記フェノール類に対し0.1〜5モルのテルペンを添加し酸触媒下で反応させることを特徴とする請求項2または3のいずれかに記載のリグニンフェノール系樹脂の製造方法
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