JPWO2018047772A1 - リグニン含有樹脂組成物の製造方法及びリグニン含有樹脂成形品 - Google Patents
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Abstract
Description
また、特許文献2には、水と炭素数4〜8の脂肪族アルコールから選ばれる少なくとも1種のアルコールとの混合溶媒である第1の溶媒中において、草本系バイオマスを原料として、所定の条件の下で処理した後に該第1の溶媒が二相分離する温度において分液するアルコール相からアルコールを除去して得られるリグニンに、該第1の溶媒に含まれる前記アルコールを除く有機溶媒の単独又は該有機溶媒と水との混合溶媒である第2の溶媒を添加し、該第2の溶媒に該リグニンを溶解させた溶液から該第2の溶媒を除去して得られる精製リグニンと、該精製リグニンと反応可能な官能基を有するリグニン反応性化合物とを含有する樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物は、加工性、強度及び耐熱性が良好である。
すなわち本発明は、以下の[1]〜[6]である。
[1]リグニン含有材料中のリグニンを分離する処理によって、可溶化したリグニンと可溶化したリグニンを溶解する溶媒とを含むリグニン含有溶液を得る工程(A)、リグニン含有溶液に樹脂を添加してリグニン−樹脂含有溶液を得る工程(B)、及びリグニン−樹脂含有溶液から溶媒を除去する工程(C1)を含むリグニン含有樹脂組成物の製造方法。
[2]リグニン含有材料中のリグニンを分離する処理によって、可溶化したリグニンと可溶化したリグニンを溶解する溶媒とを含むリグニン含有溶液を得る工程(A)、リグニン含有溶液に樹脂を添加してリグニン−樹脂含有溶液を得る工程(B)、及びリグニン−樹脂含有溶液に水及び双極子モーメントが0.25d以下の炭化水素から選ばれる少なくとも1種の溶媒を混合する工程(C2)を含むリグニン含有樹脂組成物の製造方法。
[3]リグニン含有材料が、植物系バイオマス、植物系バイオマスを糖化する過程で得られる糖化残渣及び植物系バイオマスを糖化する過程で得られる副生成物からなる群から選択される少なくとも1種である上記[1]又は[2]に記載のリグニン含有樹脂組成物の製造方法。
[4]リグニン含有材料中のリグニンを分離する処理が、オルガノソルブ法、加圧熱水法、水蒸気爆砕法、アンモニア処理法、アンモニア爆砕法、酸処理法、アルカリ処理法、酸化分解法、熱分解法及びマイクロ波加熱法からなる群から選択される少なくとも1種の方法により行われる上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載のリグニン含有樹脂組成物の製造方法。
[5]樹脂が、ノボラック系フェノール樹脂及びレゾール系フェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種のフェノール樹脂である上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載のリグニン含有樹脂組成物の製造方法。
[6]上記[1]〜[5]のいずれか1つに記載のリグニン含有樹脂組成物の製造方法によって得られたリグニン含有樹脂組成物を用いてなるリグニン含有樹脂成形品。
本発明の第1の実施形態に係るリグニン含有樹脂組成物の製造方法について、以下に説明する。
[リグニン含有樹脂組成物の製造方法]
本発明の第1の実施形態に係るリグニン含有樹脂組成物の製造方法は、リグニン含有材料中のリグニンを分離する処理によって、可溶化したリグニンと可溶化したリグニンを溶解する溶媒とを含むリグニン含有溶液を得る工程(A)、リグニン含有溶液に樹脂を添加してリグニン−樹脂含有溶液を得る工程(B)、及びリグニン−樹脂含有溶液から溶媒を除去する工程(C1)を含む。以下、可溶化したリグニンを可溶化リグニンと呼ぶ。これにより、樹脂と混合するために、固化した可溶化リグニンを溶媒に再び溶解させる必要がないので、効率的に、リグニン含有樹脂組成物を製造することができる。また、可溶化リグニンを固化させずに樹脂と混合することができるために、樹脂に対して可溶化リグニンを、分子レベルでより均一に混合することができる。これにより、樹脂組成物の加工性及び樹脂組成物の硬化物の強度等の樹脂組成物の特性がより良好になる。
工程(A)では、リグニン含有材料中のリグニンを分離する処理によって、可溶化したリグニンと可溶化したリグニンを溶解する溶媒とを含むリグニン含有溶液を得る。
リグニンは、プロピルフェノールとその誘導体とを構造ユニットとし、これらが三次元的に結合した化合物である。
リグニン含有材料は、例えば、植物系バイオマス、リグニン含有樹脂、植物系バイオマスを糖化する過程で得られる副生成物、及びパルプ製造過程で得られる副生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種であってもよい。さらに、リグニン含有材料としては、上述したものの他、セルロース系バイオマスを糖化する過程で得られる糖化残渣、及びパルプ製造過程で得られる黒液が挙げられる。セルロース系バイオマスを糖化する過程で、セルロース及びヘミセルロースを加水分解して糖を取り出した残りの残渣は、リグニンを主成分とする固体である。このため、この残渣をリグニン含有材料として用いることができる。入手容易性や本発明において適用する製造方法との適合性の観点から、好ましいリグニン含有材料は、植物系バイオマス、植物系バイオマスを糖化する過程で得られる糖化残渣及び植物系バイオマスを糖化する過程で得られる副生成物からなる群から選択される少なくとも1種である。
リグニン含有材料中のリグニンを分離する処理は、例えば、オルガノソルブ法、加圧熱水法、水蒸気爆砕法、アンモニア処理法、アンモニア爆砕法、酸処理法、アルカリ処理法、酸化分解法、熱分解及びマイクロ波加熱法からなる群から選択される少なくとも1種の方法により行われる。樹脂の溶解性に優れた溶媒を得られる点及び溶媒を容易に除去できる点から、リグニンを分離する処理は、オルガノソルブ法、水蒸気爆砕法、酸処理法及びアルカリ処理法からなる群から選択される少なくとも1種の方法により行われることが好ましく、オルガノソルブ法がより好ましい。
有機溶媒は、飽和または不飽和の、直鎖アルコール及び分岐アルコールのいずれであってもよい。その他、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラヒドロフラン等のエーテル類であってもよい。また、有機溶媒は単独でも、複数を混合したものでもよい。
中でも、メタノール、エタノール、プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、アセトン及びテトラヒドロフランから選らばれる少なくとも1種が好ましく、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノール、エタノール、ペンタノール、ヘキサノール及びアセトンから選ばれる1種以上であることがより好ましく、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノール、エタノール及びアセトンから選ばれる少なくとも1種であることがさらに好ましく、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノールであることがさらに好ましく、1−ブタノールであることが特に好ましい。
上記有機溶媒と水との混合溶媒を用いる際には、有機溶媒としては、上述したものを用いることができ、好ましいものも同様である。水としては、例えば、水道水、工業用水、イオン交換水、蒸留水等を用いることができる。
工程(B)では、リグニン含有溶液に樹脂を添加してリグニン−樹脂含有溶液を得る。
工程(B)で用いる樹脂は、可溶性リグニンを溶解している溶媒に溶解する樹脂であれば、特に限定されるものではなく、熱硬化性樹脂でもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。しかし、リグニン含有樹脂組成物に好適な用途の成形品を成形する成形方法を考えると、好ましい樹脂は熱硬化性樹脂である。工程(B)で用いる樹脂には、例えばノボラック系フェノール樹脂、レゾール系フェノール樹脂等のフェノール樹脂を使用することができる。また、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、アルキド樹脂等の他の一般的な熱硬化性樹脂やポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、ポリスチレン系エラストマー、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアクリル系樹脂(ポリメチルメタクリレート樹脂等)、ポリ塩化ビニル樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、テレフタル酸とエチレングリコール、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールの組み合わせのポリエステルに代表される低融点ポリエステル樹脂(PET、PBT等)、ポリ乳酸及び/又はポリ乳酸を含む共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリフェニレンオキサイド樹脂(PPO)、ポリケトン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ポリアミドエラストマー等、及びこれらと他のモノマーとの共重合体等の他の一般的な熱可塑性樹脂も用いることができる。
リグニンと同様に、フェノール性水酸基を有しており、リグニンと反応することができ、リグニンの希釈剤としても使用可能であることから、上記樹脂の中でフェノール樹脂が好ましく、ノボラック系フェノール樹脂及びレゾール系フェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種のフェノール樹脂がより好ましい。
工程(C1)では、リグニン−樹脂含有溶液から溶媒を除去する。溶媒を除去する方法としては、例えば、加熱しながら、リグニン−樹脂含有溶液の雰囲気を減圧状態又は真空状態にし、溶媒を揮発させる方法、リグニン−樹脂含有溶液を中和するあるいはリグニン−樹脂含有溶液に貧溶媒(水、炭化水素等)を添加することで生じる固形分を固液分離する方法、及び溶媒を揮発させる方法と固液分離する方法を組み合わせる方法がある。
<リグニン反応性化合物>
上記樹脂の他に、リグニンと反応可能な官能基を有するリグニン反応性化合物をリグニン含有樹脂組成物に含有させることが可能である。リグニンと反応可能な官能基を有する化合物としては、例えば(i)フェノール化合物と親電子置換反応を生じる化合物(工程(B)で用いる樹脂を除く)、(ii)エポキシ基を有する化合物(上記工程(B)で用いる樹脂を除く)、及び(iii)イソシアネート基を有する化合物(工程(B)で用いる樹脂を除く)等が挙げられる。
リグニンは、フェノール性の構造単位を有することから、フェノール樹脂及びエポキシ樹脂等のベース樹脂原料、エポキシ樹脂の添加剤(硬化剤)、熱可塑性樹脂の添加剤等として適用できる。
なお、工程(B)においてリグニン反応性化合物を樹脂とともに添加してもよいし、工程(B)と工程(C1)との間にリグニン反応性化合物を添加する工程を設けてもよいし、工程(C1)の後にリグニン反応性化合物を添加してもよい。なお、工程(C1)の後に、リグニン−樹脂含有溶液から溶媒を除去して得られたリグニン含有樹脂にリグニン反応性化合物を添加する方法として、例えば、リグニン含有樹脂及びリグニン反応性化合物の混合物を、混練機を用いて混練する方法がある。
フェノール化合物と親電子置換反応を生じる化合物としては、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド供与硬化剤化合物、及びホルムアルデヒド等価化合物等が挙げられる。商業的には、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサホルムアルデヒド、及びパラホルムアルデヒドを用いることができる。一例として、ヘキサメチレンテトラミンである場合には、リグニン及び樹脂、並びにヘキサメチレンテトラミンは、下記の含有量であることが好ましい。
すなわち、リグニン及び樹脂の合計の含有量は、リグニン含有樹脂組成物中30質量%以上98質量%以下であることが好ましく、ヘキサメチレンテトラミンの含有量は、リグニン含有樹脂組成物中2質量%以上50質量%以下であることが好ましい。ヘキサメチレンテトラミンの含有量が上記範囲であると、外観及び物性の良好な硬化物が得られる。この観点から、ヘキサメチレンテトラミンの含有量は、リグニン含有樹脂組成物中5質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。
樹脂としてフェノール樹脂を用いる場合には、リグニンの含有量はリグニン含有樹脂組成物中5質量%以上90質量%以下であり、フェノール樹脂を10質量%以上95質量%以下含む樹脂混合物の含有量は、リグニン含有樹脂組成物中30質量%以上98質量%以下であり、ヘキサメチレンテトラミンの含有量は、リグニン含有樹脂組成物中2質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
エポキシ基を有する化合物は、いわゆるエポキシ樹脂と称される範疇に属するものである。一例としては、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールAと称される)、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールFと称される)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールSと称される)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、レゾルシン、サリゲニン、トリヒドロキシジフェニルジメチルメタン、テトラフェニロールエタン、これらのハロゲン置換体及びアルキル基置換体、ブタンジオール、エチレングリコール、エリスリット、ノボラック、グリセリン、ポリオキシアルキレン等のヒドロキシル基を分子内に2個以上含有する化合物とエピクロルヒドリン等から合成されるグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;該ヒドロキシル基を分子内に2個以上含有する化合物とフタル酸グリシジルエステル等から合成されるグリシジルエステル系エポキシ樹脂;アニリン、ジアミノジフェニルメタン、メタキシレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の第一又は第二アミンとエピクロロヒドリン等から合成されるグリシジルアミン系エポキシ樹脂等のグリシジル基を含むエポキシ樹脂;エポキシ化大豆油、エポキシ化ポリオレフィン、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド等々のグリシジル基を含まないエポキシ樹脂が挙げられる。これらの中でもリグニンと化学構造が類似して相溶性の良好なクレゾールノボラック型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
フェノール性水酸基/エポキシ基が1に近いと、いずれかの官能基の未反応分が減少し、外観が良好で、強度も維持しやすい。この観点から、リグニン中のフェノール性水酸基/エポキシ基は、より好ましくは、0.8以上1.2以下であり、さらに好ましくは、0.9以上1.1以下である。
硬化促進剤の含有量は、リグニン含有樹脂組成物中0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。硬化促進剤の含有量が、上記範囲であると反応性に優れ、耐熱性及び強度にも優れた樹脂組成物を得ることができる。この観点から、硬化促進剤の含有量は、リグニン含有樹脂組成物中0.3質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。
なお、工程(B)において硬化促進剤を樹脂とともに添加してもよいし、工程(B)と工程(C1)との間に硬化促進剤を添加する工程を設けてもよいし、工程(C1)の後に硬化促進剤を添加してもよい。なお、工程(C1)の後に、リグニン−樹脂含有溶液から溶媒を除去して得られたリグニン含有樹脂に硬化促進剤を添加する方法として、例えば、リグニン含有樹脂及び硬化促進剤の混合物を、混練機を用いて混練する方法がある。
イソシアネート基を有する化合物は、ポリイソシアネート、またはポリイソシアネートとポリオールを反応させて得られるものである。ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI(MDI−CR)、カルボジイミド変性MDI(液状MDI)等の芳香族ポリイソシアネート及びノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4’−メチレン−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の脂肪族ポリイソシアネートや、ブロックイソシアネートを挙げることができる。これらの中でも、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いることが好ましい。
この観点から、リグニン中のフェノール性水酸基とアルコール性水酸基との合計と、イソシアネート化合物中のイソシアネート基の当量比(フェノール性水酸基とアルコール性水酸基との合計/イソシアネート基)は、より好ましくは、0.85以上1.15以下であり、さらに好ましくは0.9以上1.1以下である。
なお、工程(B)において硬化促進剤を樹脂とともに添加してもよいし、工程(B)と工程(C1)との間に硬化促進剤を添加する工程を設けてもよいし、工程(C1)の後に硬化促進剤を添加してもよい。なお、工程(C1)の後に、リグニン−樹脂含有溶液から溶媒を除去して得られたリグニン含有樹脂に硬化促進剤を添加する方法として、例えば、リグニン含有樹脂及び硬化促進剤の混合物を、混練機を用いて混練する方法がある。
リグニン含有樹脂組成物に充填材をさらに含有させてもよい。充填材は、無機充填材であっても有機充填剤であってもよい。
無機充填材としては、例えば、球状又は破砕状の溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ粉末、アルミナ粉末、ガラス粉末、ガラス繊維、ガラスフレーク、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、アルミナ、水和アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化チタン、酸化亜鉛、炭化タングステン、酸化マグネシウム等が挙げられる。
また有機充填材としては炭素繊維、アラミド繊維、紙粉、セルロース繊維、セルロース粉、籾殻粉、果実殻・ナッツ粉、キチン粉、澱粉等が挙げられる。
無機充填材及び有機充填材は単独あるいは複数の組み合わせで含有されてよく、その含有量は目的に応じて決定される。無機充填材及び/又は有機充填材が含有される場合には、無機充填材及び/又は有機充填剤の含有量が適量であることが良好な物性や成形性を得るために望ましい。この観点から、無機充填材及び/又は有機充填剤の含有量は、リグニン含有樹脂組成物中、その含有量の上限値は、0質量%超400質量%であることが好ましく、より好ましくは、0質量%以上300質量%以下であり、さらに好ましくは、0質量%以上250質量%以下である。
なお、工程(B)において充填材を樹脂とともに添加してもよいし、工程(B)と工程(C1)との間に充填材を添加する工程を設けてもよいし、工程(C1)の後に充填材を添加してもよい。なお、工程(C1)の後に、リグニン−樹脂含有溶液から溶媒を除去して得られたリグニン含有樹脂に充填材を添加する方法として、例えば、リグニン含有樹脂及び充填材の混合物を、混練機を用いて混練する方法がある。
本発明のリグニン含有樹脂組成物を用いて製造される成形品の特性を損ねない範囲で各種添加剤をリグニン含有樹脂組成物に含有させることができる。また、目的に応じてさらに、相溶化剤、界面活性剤等をリグニン含有樹脂組成物に含有させることができる。
界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等の直鎖脂肪酸、またロジン類との分岐・環状脂肪酸等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
さらに、上述したものの他にリグニン含有樹脂組成物が含有可能な添加剤としては、可撓化剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤、チキソトロピー性付与剤、離型剤、酸化防止剤、可塑剤、低応力化剤、カップリング剤、染料、光散乱剤、少量の熱可塑性樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
なお、工程(B)において上述の添加剤を樹脂とともに添加してもよいし、工程(B)と工程(C1)との間に上述の添加剤を添加する工程を設けてもよいし、工程(C1)の後に上述の添加剤を添加してもよい。
本発明の第1の実施形態のリグニン含有樹脂成形品は、本発明の第1の実施形態のリグニン含有樹脂組成物を用いてなる。上述したように、本発明の第1の実施形態のリグニン含有樹脂組成物の製造方法によって得られたリグニン含有樹脂組成物は、強度が優れているため、本発明の第1の実施形態のリグニン含有樹脂成形品は優れた強度を有する。
また、熱可塑性樹脂成形品として、例えば、特開2014−15579号公報、国際公開第2016/104634号等に挙げられる従来公知の手法を用いて得られる樹脂組成物の成形品は、電気電子製品、情報通信機器、OA機器、機械、自動車、産業資材、建材分野などに用いることができる。
本発明の第1の実施形態のリグニン含有樹脂成形品を製造するためのリグニン含有樹脂成形品の製造方法は、例えば、本発明の第1の実施形態のリグニン含有樹脂組成物の製造方法によって得られたリグニン含有樹脂組成物を所定形状に成形する工程を含む。上述したように、本発明の第1の実施形態のリグニン含有樹脂組成物は優れた加工性を有するので、本発明の第1の実施形態のリグニン含有樹脂組成物を用いることによって、リグニン含有樹脂成形品を容易に製造することができる。
所定形状に成形する方法としては、樹脂組成物を成形できれば特に限定されない。例えば、樹脂組成物が熱硬化性樹脂組成物である場合は、所定形状に成形する方法には、圧縮成形法、射出成形法、トランスファー成形法、中型成形、FRP成形法等が挙げられる。また、樹脂組成物が熱可塑性樹脂組成物である場合は、所定形状に成形する方法には、押出成形法、射出成形法等が挙げられる。
本発明の第2の実施形態に係るリグニン含有樹脂組成物の製造方法について、以下に説明する。
[リグニン含有樹脂組成物の製造方法]
本発明の第2の実施形態に係るリグニン含有樹脂組成物の製造方法は、リグニン含有材料中のリグニンを分離する処理によって、可溶化したリグニンと可溶化したリグニンを溶解する溶媒とを含むリグニン含有溶液を得る工程(A)、リグニン含有溶液に樹脂を添加してリグニン−樹脂含有溶液を得る工程(B)、及びリグニン−樹脂含有溶液と、リグニン−樹脂含有溶液に水及び双極子モーメントが0.25d以下の炭化水素から選ばれる少なくとも1種の溶媒とを混合する工程(C2)を含む。以下、可溶化したリグニンを可溶化リグニンと呼ぶ。これにより、第1の実施形態の場合と同様に、樹脂と混合するために、固化した可溶化リグニンを溶媒に再び溶解させる必要がないので、効率的に、リグニン含有樹脂組成物を製造することができる。また、可溶化リグニンを固化させずに樹脂と混合することができるために、樹脂に対して可溶化リグニンを、分子レベルでより均一に混合することができる。これにより、樹脂組成物の加工性及び樹脂組成物の硬化物の強度等の樹脂組成物の特性がより良好になる。
本発明の第2の実施形態に係るリグニン含有樹脂組成物の製造方法における工程(A)及び工程(B)は、本発明の第1の実施形態に係るリグニン含有樹脂組成物の製造方法における工程(A)及び工程(B)と同様であるので、本発明の第2の実施形態に係るリグニン含有樹脂組成物の製造方法における工程(A)及び工程(B)の説明は省略する。
なお、上述のリグニン反応性化合物等を工程(B)においてリグニン反応性化合物を樹脂とともに添加してもよいし、工程(B)と後述の工程(C2)との間に上述のリグニン反応性化合物等を添加する工程を設けてもよいし、後述の工程(C3)または工程(C4)の後に上述のリグニン反応性化合物等を添加してもよい。
工程(C2)では、リグニン−樹脂含有溶液に水及び双極子モーメントが0.25d以下の炭化水素から選ばれる溶媒の少なくとも1種の溶媒を混合する。当該工程(C2)は、リグニン−樹脂含有溶液中のリグニンを精製する工程に該当する。当該処理工程を経ることにより、リグニン−樹脂含有溶液中のリグニンは精製リグニンとなる。なお、混合方法は、リグニン−樹脂含有溶液と上記溶媒とが均一に混合できれば、特に限定されない。混合に用いられる装置には、例えば、エッジランナー、撹拌混合機、ロールミル、コーンミル、フラットストーンミル、スピードラインミル、ボールミル、ビーズミル、サンドグラインドミル、パールミル、アトライター、縦型ミキサー、ニーダー、高速かき混ぜ機(ディゾルバー)等が挙げられる。
水としては、例えば、水道水、工業用水、イオン交換水、蒸留水等を用いることができる。
双極子モーメントが0.25d以下の炭化水素としては、炭素数が5〜8である、飽和鎖状炭化水素、不飽和鎖状炭化水素、飽和環式炭化水素又は不飽和環式炭化水素が好ましい。炭化水素の双極子モーメントが0.25dを超えると、精製効率低下し、リグニンの耐熱性が悪くなるため好ましくない。ここで、「双極子モーメント」とは、Winmostar MOPAC AMI (MOP6W70)により算出される値である。かかる炭化水素として使用可能な化合物の一例を、その双極子モーメント値と共に以下に示す。
水及び双極子モーメントが0.25d以下の炭化水素から選ばれる少なくとも1種の溶媒の量は、特に限定されないが、リグニン−樹脂含有溶液に混合する上記溶媒の量は、リグニン−樹脂含有溶液に対して容量で、好ましくは1倍以上50倍以下、より好ましくは1倍以上40倍以下、さらに好ましくは1倍以上30倍以下、特に好ましくは2倍以上20倍以下、最も好ましくは2倍以上15倍以下である。リグニン−樹脂含有溶液と混合する際の、水及び双極子モーメントが0.25d以下の炭化水素から選ばれる少なくとも1種の溶媒の量が容量で1倍未満であると、リグニン−樹脂含有溶液に含まれる軽質成分を十分に除去することができない。一方で、水及び双極子モーメントが0.25d以下の炭化水素から選ばれる少なくとも1種の溶媒の量が容量で50倍を超えると、効率よく目的の精製リグニンを回収することができない。なお、複数種の炭化水素溶媒を用いる場合には、上記溶媒の量とは、水と複数種の炭化水素溶媒の合計量を意味する。
具体的には、工程(C2)においては、リグニン−樹脂含有溶液に含まれるリグニンから軽質成分および重質成分を分離させることができる。軽質成分としては、例えば、バニリン等のフェノール類、フルフラール等の糖過分解物等が挙げられるが、特に限定されない。重質成分としては、例えば、重量平均分子量10000以上のリグニン等が挙げられるが、特に限定されない。
本発明の第2の実施形態においては、工程(C2)により得られる混合溶液が二相であるか一相であるかによって、以下の工程(C3)または(C4)を行うことが好ましい。
本発明の第2の実施形態のリグニン含有樹脂成形品は、本発明の第2の実施形態のリグニン含有樹脂組成物を用いてなる。本発明の第2の実施形態のリグニン含有樹脂成形品は、本発明の第1の実施形態のリグニン含有樹脂成形品と同様に優れた強度を有する。さらに、例えば、リグニン−樹脂含有溶液に水及び双極子モーメントが0.25d以下の炭化水素から選ばれる少なくとも1種の溶媒を混合して、リグニン含有樹脂組成物中のリグニンは精製されるので、より精製されたリグニンを含有するリグニン含有樹脂成形品を得ることができる。なお、本発明の第2の実施形態のリグニン含有樹脂成形品の説明は、本発明の第1の実施形態のリグニン含有樹脂成形品の説明と共通するので、本発明の第2の実施形態のリグニン含有樹脂成形品の説明は省略する。
上述の工程(A)で、リグニン含有材料中のリグニンを可溶化させる場合、可溶化したリグニンと可溶化したリグニンを溶解する溶媒とを含むリグニン含有溶液の他に、副産物として、セルロース含有固形物が得られる場合がある。このセルロース含有固形物を用いてグルコースを製造することができる。以下、一実施形態のグルコースの製造方法を説明する。
酵素糖化処理とは、セルロース及びセルロースを分解して得られるセルロース分解物を酵素で加水分解してグルコースに変換する処理である。酵素糖化処理の条件は、例えば下記のとおりである。
セルロース含有固形物に含まれるセルロース及びセルロースを分解して得られるセルロース分解物に対して作用する酵素を、セルロース含有固形物100質量部に対して、0.1質量部以上200質量部以下とすることができる。また、酵素糖化処理に用いる酵素活性は、100U/g以上10000U/g以下とすることができる。さらに、酵素糖化処理における処理温度は、30℃以上70℃以下であれば、酵素が活性化し、糖化率を向上させることができる。酵素糖化処理における処理時間は、12時間以上168時間以下であれば、酵素が活性化し、糖化率を向上させることができる。
また、上述の工程(A)で副産物として得られるセルロース含有固形物は、他の方法によって得られるセルロース含有固形物に比べて、解繊されやすい状態になっている。このため、用途展開がしやすいという利点を有する。
上述の工程(A)で副産物として得られるセルロース含有固形物から、公知の手法を用いてエタノール、ブタノール、アセトンなどを得ることができる。
また、上述の工程(A)で副産物として得られるセルロース含有固形物からは、セルロースナノファイバー等の樹脂強化繊維・化学繊維代替としてのゴム及びタイヤ補強材、カルボキシメチルセルロース、オリゴ糖等の食品添加物、乳酸、コハク酸等の化学品を得ることができる。
また、本発明の第1及び第2の実施形態に係るリグニン含有樹脂成形品の製造方法は、それぞれ、本発明のリグニン含有樹脂成形品の製造方法の1つの実施形態に過ぎないので、本発明の第1及び第2の実施形態に係るリグニン含有樹脂成形品の製造方法は、本発明のリグニン含有樹脂成形品の製造方法を限定しない。
[リグニン含有樹脂の製造例]
<製造例1>
原料であるバガスに水を加えて固形物濃度10質量%程度の原料スラリーとした。
原料スラリーを、反応器(圧力容器)に供給し、超臨界状態又は亜臨界状態まで加熱した。加熱温度は170℃であった。
ここで得られた固形分と、1−ブタノール濃度34質量%で調製した水及び1−ブタノールの混合溶媒とを、内容積0.92LのSUS(ステンレス)製回分式装置に入れた。溶媒の合計量は、315gであった。原料仕込み濃度は、原料/溶媒=1/10として行った。
SUS製回分式装置の装置内を窒素でパージした後、200℃まで昇温し、2時間処理を行った。処理時間は、200℃に達してからの経過時間とした。また、熱電対にて処理温度を測定した。
処理終了後、SUS製回分式装置を冷却し、温度が室温付近まで下がった後、中味を全て取り出した。処理後、固形分と液相とを濾別した。
固形分に200gの水を加え、30分間攪拌後、固形分と液相とを濾別した。当該操作を3回繰り返し、セルロース含有固形物を得た。
液相は分液漏斗により、水相と1−ブタノール相とに液/液分離して、可溶化したリグニンと可溶化したリグニンを溶解する1−ブタノールを含むリグニン含有溶液(リグニン固形分3.5g)を得た。リグニン含有溶液にノボラック型フェノール樹脂(PR−53195(住友ベークライト株式会社製))1.9gを添加し、溶媒をエバポレーター(70℃、水浴)で除去した後、125℃の条件で真空乾燥して、リグニン含有樹脂を得た。
水と1−ブタノールの混合溶媒を1−ブタノール濃度50質量%で調製した以外は、製造例1と同様の操作によりリグニン含有樹脂を得た。
1−ブタノール濃度34質量%で調製した水及び1−ブタノールの混合溶媒の代わりにエタノール濃度50質量%で調製した水及びエタノールの混合溶媒を用いた以外は、製造例1と同様の操作を行った。なお、固液分離後のリグニン含有溶液は一相であったため、フェノール樹脂を添加後、エバポレーターで有機溶媒を除去することで、溶解度の低下により水中に沈殿した固形分を濾過により、固液分離した後、125℃の条件で真空乾燥して、リグニン含有樹脂を得た。
混合溶媒の有機溶媒として、エタノールの代わりにアセトンを用いた以外は、製造例3と同様の操作によりリグニン含有樹脂を得た。
混合溶媒の有機溶媒として、1−ブタノールの代わりに2−メチル−1−プロパノールを用いた以外は、製造例1と同様の操作によりリグニン含有樹脂を得た。
原料であるバガスを、超臨界状態又は亜臨界状態まで加熱処理をせずに、そのまま、水及び1−ブタノールの混合溶媒を用いて処理した以外は、製造例1と同様の操作によりリグニン含有樹脂を得た。
原料であるバガス30gと純水160gを、内容積0.92LのSUS製回分式装置に導入し、内容物を200rpmで攪拌しながら、200℃まで昇温し、2時間処理を行った。処理時間は、200℃に達してからの経過時間とした。また、熱電対にて温度を測定した。次いで、固形分と液相とを濾別した。この固形分をアセトン200mlに一晩浸漬し、固形分と液相とを濾別することでアセトン可溶部(リグニン固形分4.2g)を回収した。次いで、前記アセトン可溶部にノボラック型フェノール樹脂(PR−53195(住友ベークライト株式会社製))2.3gを添加し、溶媒をエバポレーター(70℃、水浴)で除去した後、125℃の条件で真空乾燥して、リグニン含有樹脂を得た。
原料であるバガスを適当な大きさにカットし、水蒸気爆砕装置の3Lの耐圧容器に入れ、3.5MPaの水蒸気を圧入し、3分間保持した。その後バルブを急速に開放することで爆砕処理物を得た。洗浄液のpHが6以上になるまで得られた爆砕処理物を水により洗浄して水溶性成分を除去した。得られた固形分100gにアセトン1000mlを加え、3時間攪拌した後、固形分と液相とを濾別することでアセトン可溶部(リグニン固形分4.0g)を回収した。次いで、前記アセトン可溶部にノボラック型フェノール樹脂(PR−53195(住友ベークライト株式会社製))2.2gを添加し、溶媒をエバポレーター(70℃、水浴)で除去した後、125℃の条件で真空乾燥して、リグニン含有樹脂を得た。
原料であるバガス120gに60gのp−クレゾールを収着させ、300mLの72%硫酸を加え、内容積0.92LのSUS製回分式装置に導入し、30℃、1時間で処理した。酸を除去した後、沈殿を乾燥させ、アセトン600mLで抽出し(リグニン固形分5.0g)、ノボラック型フェノール樹脂(PR−53195(住友ベークライト株式会社製))2.7gを添加後、ジエチルエーテルを用いて精製した。次いで、125℃の条件で真空乾燥して、リグニン含有樹脂を得た。
原料であるバガス30gを、95質量%の酢酸300gおよび硫酸0.9gと混合し、還流下において4時間処理した。処理後、固形分と液相とを濾別することで液相(リグニン固形分4.2g)を回収した。次いで、ノボラック型フェノール樹脂(PR−53195(住友ベークライト株式会社製))2.3gを添加し、エバポレーターを用いて液相中の酢酸を除去し、体積が1/10になるまで濃縮した後、その濃縮液の10倍量(質量基準)の水を添加し、濾過することにより、リグニン含有樹脂を得た。
ノボラック型フェノール樹脂の代わりにレゾール型フェノール樹脂(TD−2040C(DIC株式会社製))を用いた以外は、製造例1と同様の操作によりリグニン含有樹脂を得た。
ノボラック型フェノール樹脂の添加量を11.4gに変えた以外は、製造例1と同様の操作によりリグニン含有樹脂を得た。
リグニン含有溶液にノボラック型フェノール樹脂を添加しないで、1−ブタノールをエバポレーター(70℃、水浴)で除去して、リグニンを得た。
<軟化点>
製造例1〜10、12により得られたリグニン含有樹脂及び比較製造例1により得られたリグニンを、JIS K2207に準じて、環球法試験器を用いて、軟化点を測定した。結果を第2表に示す。
<成形性>
製造例1〜10、12により得られたリグニン含有樹脂を85質量部(リグニンおよびフェノール樹脂(PR−53195:住友ベークライト株式会社製)の比は表2参照)、ヘキサメチレンテトラミン15質量部、及び無機充填材40質量部を乳鉢に入れ、室温にて粉砕しつつ混合した後、オープンロール混練機を用いて100℃で混合したときの混合性を下記指標に基づき、評価した。また、比較製造例1により得られたリグニン55質量部、フェノール樹脂30質量部、ヘキサメチレンテトラミン15質量部及び無機充填材40質量部を乳鉢に入れ、室温にて粉砕しつつ混合した後、オープンロール混練機を用いて100℃で混合したときの混合性も下記指標に基づき、評価した。
結果を第2表に示す。
A…混合容易 B…やや混合困難 C…混合困難(均一に混ぜるのに時間を要する。)
製造例1〜10、12と比較製造例1とを比べてわかるように、リグニンとフェノール樹脂を予め溶液混合し均一にしておくことで、成形性が向上することがわかった。
[ヘキサメチレンテトラミンを含んでなる樹脂成形品の評価]
製造例1〜12のリグニン含有樹脂及び比較製造例1のリグニンを用いて樹脂成形品を作製し、物性を評価した。
第3表、第4表に示す配合比で各成分を乳鉢に入れ、室温にて粉砕し、混合後、オープンロール混練機を用いて100℃にて5分間混合した後、室温まで冷却して樹脂組成物を得た。樹脂組成物を乳鉢で粉砕し、離型剤を塗布したアルミ板の間に挟み、真空プレス機を用いて、減圧下で100〜150℃にて60分間成形した。成形後、200℃にて120分間硬化処理し、成形品を得た。
得られた成形品から5mm×50mm×1mmの試料を切り出し、インストロン5566を用いて、3点曲げモード、スパン30mm、速度2mm/分の条件で、曲げ強度を測定した。
フェノール樹脂:TD−2040C(DIC株式会社):レゾール型フェノール樹脂
無機充填材1:ガラス繊維 GF CS3E479S(日東紡績株式会社製)
実施例1、12と比較例1、2とを比べてわかるように、同じ配合比率であれば、リグニンとフェノール樹脂を熱溶融で混合した樹脂組成物の硬化物よりも、リグニンとフェノール樹脂をリグニン含有溶液中で混合した樹脂組成物の硬化物の方が、成形品の曲げ強度が優れることがわかった。
[エポキシ化合物を含んでなる樹脂組成物の評価]
製造例1〜10、比較製造例1のリグニン含有樹脂を用いて第5表に示す成分の含有量(質量部)の樹脂成形品を作製し、物性を評価した。
第5表に示す配合比で各成分を乳鉢に入れ、室温にて粉砕し、混合後、オープンロール混練機を用い100℃にて5分間混合した後、室温まで冷却して樹脂組成物を得た。樹脂組成物を乳鉢で粉砕し、離型剤を塗布したアルミ板の間に挟み、真空プレス機を用いて、減圧下で150℃にて60分間成形した。成形後、200℃にて120分間硬化処理し、成形品を得た。
上述の方法により、曲げ強度を測定した。
重クロロホルム、ピリジン、シクロヘキサノール(内部標準)を混合した溶媒をリグニンに加え、さらに、誘導体化試薬として2−chloro−4,4,5,5−tetramethyl−1,3,2−dioxaphospholaneを添加し、50℃、1時間加熱した。その後、以下の測定条件で31PNMR測定を実施した。
・パルス幅:30°
・繰り返し時間:2秒
・測定範囲:−60〜200ppm
・積算回数:200回
内部標準であるシクロヘキサノール由来シグナルを145.2ppmとし、150.0〜145.5ppmを脂肪族水酸基(Alc−OH)、144.7〜136.6ppmを芳香族水酸基(Ph−OH)として帰属し、積分値から脂肪族水酸基量(mol/g)及び芳香族水酸基量(mol/g)を算出した。
上記で算出したリグニンのフェノール性水酸基当量及びリグニンの含有量と、エポキシ樹脂の仕様に記載されているエポキシ樹脂のエポキシ基当量及びエポキシ樹脂の含有量とに基づいて、リグニン中のフェノール性水酸基(ph−OH)と、エポキシ基を有する化合物中のエポキシ基(EPO)の当量比を算出した。
エポキシ樹脂2:エピクロン N695(DIC株式会社製)(エポキシ基当量:4.65×10−3mol/g)
硬化促進剤:キュアゾール 2PZ−CN(四国化成株式会社製)
無機充填材2:ガラス繊維:JAFT591(旭ファイバーグラス株式会社製)
実施例13と比較例3とを比べてわかるように、同じ配合比率であれば、リグニンとフェノール樹脂を熱溶融で混合した樹脂組成物の硬化物よりも、リグニンとフェノール樹脂をリグニン含有溶液中で混合した樹脂組成物の硬化物の方が、成形品の曲げ強度が優れることがわかった。
[イソシアネート化合物を含んでなる樹脂組成物の評価]
製造例1〜6のリグニン含有樹脂を用いて第6表に示す成分の含有量(質量部)の樹脂成形品を作製し、物性を評価した。
第6表に示す配合比で各成分を乳鉢に入れ、室温にて粉砕し、混合後、オープンロール混練機を用い100℃にて5分間混合した後、室温まで冷却して、樹脂組成物を得た。樹脂組成物を乳鉢で粉砕し、離型剤を塗布したアルミ板の間に挟み、真空プレス機を用いて、減圧下で100℃にて60分間成形した。成形後、150℃にて60分間硬化処理し、成形品を得た。
上述の方法により、曲げ強度を測定した。
ガラス転移温度の測定は固体粘弾性法によって測定した。得られた成形品から5mm×30mm×1mmの試料を切り出し、DMA8000(パーキンエルマージャパン株式会社製)を用いて、0℃〜300℃、若しくは限界最低弾性率に達するまで昇温温度2℃/分、1Hzで測定を行った。得られたtanδのピーク温度をガラス転移温度(Tg)とした。
上記で算出したリグニンのフェノール性水酸基当量及びアルコール性水酸基当量の合計及びリグニンの含有量と、イソシアネート化合物の仕様に記載されているイソシアネート化合物のイソシアネート基当量及びイソシアネート化合物の含有量とに基づいて、リグニン中のフェノール性水酸基(ph−OH量)とアルコール性水酸基(Alc−OH量)との合計と、イソシアネート化合物中のイソシアネート基の当量(NCO量)比を算出した。
イソシアネート:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート試薬(イソシアネート基量8.00×10−3mol/g)
硬化促進剤:ジラウリン酸ジブチルすず(IV)試薬
アミノシラン:γ−アミノプロピルトリエトキシシラン 東レダウ株式会社製「SH6020」
無機充填材3:溶融シリカ 電気化学工業株式会社製「FD940」
リグニンとフェノール樹脂をリグニン含有溶液中で混合したリグニン樹脂組成物の成形品が十分な曲げ強度を示すことがわかった。
[得られたセルロース含有固形物の評価方法]
<酵素糖化処理>
リグニン含有樹脂の製造例1〜3で得られたセルロース含有固形物1g(乾燥重量)を50mL遠沈管に投入し、121℃、20分間滅菌処理を行った。同様の滅菌処理を実施した酢酸緩衝液を液量が約20mL、pH5となるように、遠沈管に加え、その後、第7表に示す酵素量(ナガセケムテックス(株)製、セルライザーACE)を投入した。当該遠沈管を50℃の恒温槽中、120rpmで、72hr振盪した。
[前処理]
前処理として、ウィレーミルを用いて試料となる原料を粉砕し、105℃で乾燥した。
セルロース含有固形物の試料の適量を量りとり、72%硫酸を加え、30℃において、随時撹拌しながら1時間放置した。この反応液を純水と混釈しながら耐圧瓶に完全に移し、オートクレーブにて120℃で1時間処理した後、ろ液と残渣とを、ろ別した。ろ液中のグルコースについては、高速液体クロマトグラフ法により定量を行った。
糖(グルコース)は高速液体クロマトグラフ(HPLC)にて分析した。
(i)測定条件
カラム:昭和電工株式会社製 Shodex SP−G(ガードカラム)+SP0810
移動相:蒸留水(HPLCグレード)
検出器:RI(セル内60℃)
カラム温度:80℃
注入量:50μL
検量線用標準試料:東京化成工業株式外は製 D−(+)−グルコース、D−(+)−キシロース
(ii)試料調製
ピペッターを用いて、10mLバイアル瓶に試料(溶液)を0.2mL採取する。
蒸留水を1.8mL添加し、よく混合する(10倍希釈)。
バイアル瓶に採取する。
検量線を用いて、グルコース濃度(g−グルコース/L)を算出する。
糖化率(%)=酵素糖化液中のグルコース量(g)/セルロース含有固形物中のグルコース量(g)×100
Claims (6)
- リグニン含有材料中のリグニンを分離する処理によって、可溶化したリグニンと該可溶化したリグニンを溶解する溶媒とを含むリグニン含有溶液を得る工程(A)、
前記リグニン含有溶液に樹脂を添加してリグニン−樹脂含有溶液を得る工程(B)、及び
前記リグニン−樹脂含有溶液から前記溶媒を除去する工程(C1)を含むリグニン含有樹脂組成物の製造方法。 - リグニン含有材料中のリグニンを分離する処理によって、可溶化したリグニンと該可溶化したリグニンを溶解する溶媒とを含むリグニン含有溶液を得る工程(A)、
前記リグニン含有溶液に樹脂を添加してリグニン−樹脂含有溶液を得る工程(B)、及び
前記リグニン−樹脂含有溶液に水及び双極子モーメントが0.25d以下の炭化水素から選ばれる少なくとも1種の溶媒を混合する工程(C2)含むリグニン含有樹脂組成物の製造方法。 - 前記リグニン含有材料が、植物系バイオマス、植物系バイオマスを糖化する過程で得られる糖化残渣及び植物系バイオマスを糖化する過程で得られる副生成物からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載のリグニン含有樹脂組成物の製造方法。
- 前記リグニン含有材料中のリグニンを分離する処理が、オルガノソルブ法、加圧熱水法、水蒸気爆砕法、アンモニア処理法、アンモニア爆砕法、酸処理法、アルカリ処理法、酸化分解法、熱分解法及びマイクロ波加熱法からなる群から選択される少なくとも1種の方法により行われる請求項1〜3のいずれか1項に記載のリグニン含有樹脂組成物の製造方法。
- 前記樹脂が、ノボラック系フェノール樹脂及びレゾール系フェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種のフェノール樹脂である請求項1〜4のいずれか1項に記載のリグニン含有樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のリグニン含有樹脂組成物の製造方法によって得られたリグニン含有樹脂組成物を用いてなるリグニン含有樹脂成形品。
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