JP2014047257A - 熱硬化性リグニン組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】比較的低温での加熱でも硬化が可能な熱硬化性リグニン組成物、及びこのようなリグニン組成物を容易に得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、アルカリ蒸解の際に生じるリグニンを含む溶液に、酸化物、酸及び塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤を添加して得られ、pHが10以下、不揮発分が70質量%以下である熱硬化性リグニン組成物である。当該熱硬化性リグニン組成物のpHは4以上が好ましい。また、上記添加剤が、単核オキソ酸若しくは単核オキソ酸塩又は水溶液中で単核オキソ酸若しくは単核オキソ酸塩を形成する化合物であることが好ましい。
【選択図】なし
【解決手段】本発明は、アルカリ蒸解の際に生じるリグニンを含む溶液に、酸化物、酸及び塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤を添加して得られ、pHが10以下、不揮発分が70質量%以下である熱硬化性リグニン組成物である。当該熱硬化性リグニン組成物のpHは4以上が好ましい。また、上記添加剤が、単核オキソ酸若しくは単核オキソ酸塩又は水溶液中で単核オキソ酸若しくは単核オキソ酸塩を形成する化合物であることが好ましい。
【選択図】なし
Description
本発明は、熱硬化性リグニン組成物及びその製造方法に関する。
リグニンは、地球上でセルロースについで豊富に存在するバイオマスとして知られ、持続可能資源として注目されてきた。しかし、アルカリ蒸解法で得られるリグニンの多くは燃焼利用されており、材料用途としての利用は十分には進んでいない。
リグニンを材料として利用する技術としては、木材抽出リグニンをイオン交換処理や膜透化処理によって酸性にした接着剤組成物や、イネ科植物リグニンを接着剤として用い、加熱加圧により得られるボードが提案されている(特開昭61−62574号公報及び特開平10−305409号公報参照)。しかし、上記接着剤組成物は酸化反応により硬化させるものであり、熱硬化と比べて時間を要する。一方、上記ボードの製造は180℃以上で熱硬化されており、リグニンは170℃程度で分解が激しくなるため、上記温度での加熱の際にはガスの発生が生じる。また、上記ボードの製造において、180℃未満の加熱では熱硬化が不十分となるとされている。
このような中、熱硬化材料として有用なリグニンを得る方法として、バイオマスを高温高圧下で分解処理し、この分解処理物から溶解性の差を利用して特定のリグニン誘導体を抽出するリグニン誘導体の製造方法が開発されている(特開2011−32492号公報参照)。しかし、この製造方法は、高温高圧を要すると共に複数の処理工程を経る必要があり、コスト高となるという不都合を有する。
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、比較的低温での加熱でも硬化が可能な熱硬化性リグニン組成物、及びこのようなリグニン組成物を容易に得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、
アルカリ蒸解の際に生じるリグニンを含む溶液に、酸化物、酸及び塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤を添加して得られ、
pHが10以下、不揮発分が70質量%以下である熱硬化性リグニン組成物である。
アルカリ蒸解の際に生じるリグニンを含む溶液に、酸化物、酸及び塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤を添加して得られ、
pHが10以下、不揮発分が70質量%以下である熱硬化性リグニン組成物である。
当該熱硬化性リグニン組成物は、例えば170℃以下といった比較的低温の加熱でも熱硬化が可能である。当該熱硬化性リグニン組成物が上記効果を有する理由は定かではないが、例えば以下の理由が推察される。すなわち、アルカリ蒸解の際に生じるリグニンは熱硬化性官能基を有すると共に、溶液中で会合体を形成していると考えられる。この液体に特定の添加剤を添加しpHを下げることで、熱硬化性官能基の反応を抑制しつつ、リグニンを解離させることができると考えられる。さらに、不揮発分を70質量%以下とすることで解離したリグニン同士の再会合が抑制され、熱硬化性官能基が十分に機能するため、優れた熱硬化性が発揮されると考えられる。
当該熱硬化性リグニン組成物のpHは4以上が好ましい。このようなpHとすることで粘性の上昇等も抑えられ、より優れた熱硬化性を発揮することができる。
上記添加剤が、単核オキソ酸若しくは単核オキソ酸塩又は水溶液中で単核オキソ酸若しくは単核オキソ酸塩を形成する化合物であることが好ましい。上記添加剤としては、ホウ素系化合物又はアンモニウム塩も好ましい。このような添加剤を用いることで、pHの調整等が容易になり、熱硬化性等も高めることができる。
上記リグニンが草本系バイオマス由来であるとよい。草本系バイオマス由来のリグニンを用いることで、熱硬化性を更に高めることができる。
上記アルカリ蒸解が、硫化ナトリウムを使用しない蒸解であるとよい。このような蒸解で得られたリグニンを用いることで、当該熱硬化性リグニン組成物の臭気を抑え、熱硬化性を高めることもできる。
アルカリ蒸解の際に生じるリグニン、
酸化物、酸及び塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤、並びに
溶媒
を含有し、
pHが10以下、不揮発分が70質量%以下である熱硬化性リグニン組成物も本発明に含まれる。
酸化物、酸及び塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤、並びに
溶媒
を含有し、
pHが10以下、不揮発分が70質量%以下である熱硬化性リグニン組成物も本発明に含まれる。
上記課題を解決するためになされた別の発明は、
アルカリ蒸解の際に生じるリグニンを含む溶液に酸化物、酸及び塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤を添加し、上記溶液のpHを10以下とする工程
を有する不揮発分が70質量%以下の熱硬化性リグニン組成物の製造方法である。
アルカリ蒸解の際に生じるリグニンを含む溶液に酸化物、酸及び塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤を添加し、上記溶液のpHを10以下とする工程
を有する不揮発分が70質量%以下の熱硬化性リグニン組成物の製造方法である。
当該製造方法によれば、比較的低温での硬化が可能な熱硬化性リグニン組成物を容易に得ることができる。
以上説明したように、本発明の熱硬化性リグニン組成物は、比較的低温での加熱での硬化が可能であり、熱硬化性樹脂等として用いることができる。また、本発明の製造方法によれば、このようなリグニン組成物を容易に得ることができる。従って、本発明によれば材料用途として工業的に十分活用されていないリグニンの有効活用を図ることができる。
以下、本発明の熱可塑性リグニン組成物及びその製造方法の実施の形態について詳説する。
<熱硬化性リグニン組成物>
本発明の熱硬化性リグニン組成物は、アルカリ蒸解の際に生じるリグニンを含む溶液に、特定の添加剤を添加して得られるものである。すなわち、本発明の熱硬化性リグニン組成物は、上記リグニン、特定の添加剤及び溶媒を含有する。
本発明の熱硬化性リグニン組成物は、アルカリ蒸解の際に生じるリグニンを含む溶液に、特定の添加剤を添加して得られるものである。すなわち、本発明の熱硬化性リグニン組成物は、上記リグニン、特定の添加剤及び溶媒を含有する。
(リグニンを含む溶液)
上記リグニンを含む溶液は、アルカリ蒸解の際に生じるいわゆる黒液又はこの黒液に由来する溶液である。上記黒液とは、リグニンと溶媒(通常水)とを含む溶液であり、蒸解の際に生じる他の成分等がさらに含まれていてもよい。上記リグニンを含む溶液は、上記黒液そのものであってもよいし、この黒液の濃縮物、この濃縮物又は固形物の希釈物であってもよい。上記希釈物を用いる場合の希釈液(溶媒)としては、水、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒などを挙げることができる。これらの中でも、コストや得られる溶液の粘性の点から水が好ましい。
上記リグニンを含む溶液は、アルカリ蒸解の際に生じるいわゆる黒液又はこの黒液に由来する溶液である。上記黒液とは、リグニンと溶媒(通常水)とを含む溶液であり、蒸解の際に生じる他の成分等がさらに含まれていてもよい。上記リグニンを含む溶液は、上記黒液そのものであってもよいし、この黒液の濃縮物、この濃縮物又は固形物の希釈物であってもよい。上記希釈物を用いる場合の希釈液(溶媒)としては、水、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒などを挙げることができる。これらの中でも、コストや得られる溶液の粘性の点から水が好ましい。
上記アルカリ蒸解とは、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリを用いた蒸解方法をいい、例えば、クラフト法(通常、水酸化ナトリウム及び硫化ナトリウムを使用)、ソーダ法(通常、水酸化ナトリウムを使用)、ソーダアントラキノン法(通常、水酸化ナトリウム及びアントラキノンを使用)等の方法がある。すなわち、上記リグニンとしては、クラフトリグニン、ソーダリグニン、ソーダアントラキノンリグニン等を一種又は二種以上を混合して用いることができる。
これらのアルカリ蒸解の中でも、硫化ナトリウムを使用しない蒸解であるとよい。このような蒸解で得られたリグニンを用いることで、当該熱硬化性リグニン組成物の熱硬化性をより高めることができる。この理由は定かではないが、硫化ナトリウムを用いた蒸解により得られたリグニンはスルフィド結合により高分子化されており、添加剤を用いても会合状態が解かれにくいことなどが推測される。また、このようなリグニンは、通常硫黄を含有していないため臭気が比較的低く、工業的利用価値が高い。このようなリグニンとしては、上述したソーダリグニンやソーダアントラキノンリグニン等が挙げられ、これらの中でもソーダリグニンが好ましい。
上記リグニンとしては、草本系バイオマス由来である草本系リグニンが好ましく、草本系ソーダリグニンがより好ましい。上記草本系バイオマスとしては、コットン、亜麻、トウモロコシ、バガス、籾藁、稲藁、麦藁、竹、コウリャン茎、ケナフ、ココナッツヤシ殻、ビート絞り粕等が挙げられる。これらの中でも、入手のし易さ等の点から、稲藁及び麦藁由来のリグニンが好ましい。草本系リグニンは、木本植物から得られるリグニンには存在しないH核(p−ヒドロキシフェニル核)を有する。このH核はオルト位に置換基を有していないため、草本系リグニンを用いることで、当該リグニン組成物がより優れた熱硬化性、及びその他の反応性を発揮することができると考えられる。
(添加剤)
上記添加剤は、酸化物、酸及び塩からなる群より選ばれる少なくとも一種である。上記添加剤は、これらの化合物の一種又は二種以上を混合して用いることができる。上記添加剤は、溶液(当該熱硬化性リグニン組成物)のpHが10以下、好ましくは4以上10以下となるような量で添加されている。
上記添加剤は、酸化物、酸及び塩からなる群より選ばれる少なくとも一種である。上記添加剤は、これらの化合物の一種又は二種以上を混合して用いることができる。上記添加剤は、溶液(当該熱硬化性リグニン組成物)のpHが10以下、好ましくは4以上10以下となるような量で添加されている。
上記酸化物としては、特に限定されず、酸化マグネシウム、酸化ホウ素、二酸化硫黄、五酸化二リン、二酸化炭素等を挙げることができる。これらの中でも、水溶性の酸化物が好ましく、酸性酸化物がより好ましく、酸化ホウ素がさらに好ましい。このような酸化物を用いることで、リグニンの低分子量化(会合状態の解離)が効果的に図られる。
上記酸としては、ホウ酸、リン酸、硫酸、塩酸、硝酸、ギ酸、酢酸、乳酸、酒石酸等を挙げることができる。これらの中でも、弱酸(ホウ酸、酢酸、リン酸等)が好ましく、ホウ酸がさらに好ましい。このような酸を用いることで、リグニンの低分子量化(会合状態の解離)が効果的に図られる。
上記塩としては、弱酸強塩基からなる塩、強酸弱塩基からなる塩、弱酸弱塩基からなる塩等を挙げることができる。具体的には、硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩、炭酸塩、カルボン酸塩、アンモニウム塩、炭酸水素塩、硫酸水素塩、カルボン酸水素塩等が挙げられ、アンモニウム塩が好ましい。アンモニウム塩を用いることで、リグニンの低分子量化(会合状態の解離)が効果的に図られる。
上記アンモニウム塩としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、ホウ酸アンモニウム及び酢酸アンモニウムが好ましく、特に低分子量成分が得られ易い点から、炭酸アンモニウム及びホウ酸アンモニウムが好ましい。
上記添加剤としては、単核オキソ酸若しくは単核オキソ酸塩又は水溶液中で単核オキソ酸若しくは単核オキソ酸塩を形成する化合物が好ましい。上記単核オキソ酸とは、一般式XOn(OH)m(nは、0又は自然数である。mは自然数である。)で表される化合物をいう。Xは、炭素、ホウ素、窒素、リン等の任意の原子であるが、炭素、硫黄及びホウ素が好ましい。nは、0〜2の整数が好ましい。また、mは、2又は3が好ましい。上記単核オキソ酸としては、ホウ酸、炭酸、リン酸、硫酸等を挙げることができる。また、水溶液中で単核オキソ酸を形成する化合物としては、二酸化炭素(炭酸を形成)、五酸化二リン(リン酸を形成)、酸化ホウ素(ホウ酸を形成)等を挙げることができる。単核オキソ酸塩としては、これらのアンモニウム塩、ナトリウム塩等を挙げることができるが、アンモニウム塩が好ましい。
上記添加剤として、単核オキソ酸若しくは単核オキソ酸塩又は水溶液中で単核オキソ酸若しくは単核オキソ酸塩を形成する化合物を用いることで、pHの調整等が容易になり、熱硬化性等も高めることができる。この理由は定かではないが、単核オキソ酸から遊離される陰イオンが、低分子リグニンに対して適当なサイズとなるため、リグニンの会合状態を解離した後、例えるなら錯体を形成するように低分子リグニンをこの陰イオンが安定した状態で囲い、再会合を抑制することなどが考えられる。
上記添加剤としては、ホウ素系化合物も好ましい。ホウ素系化合物を用いることで、当該熱硬化性リグニン組成物の熱硬化性等を高めることができる。ホウ素系化合物とは、ホウ素原子を含む化合物をいい、例えばホウ酸、ホウ酸塩、ホウ酸エステル、酸化ホウ素、ホウ砂などが挙げられる。ホウ酸塩としては、例えばメタホウ酸、四ホウ酸等の金属塩、アンモニウム塩等が挙げられ、具体的にはホウ酸亜鉛、四ホウ酸ナトリウム、ホウ酸アンモニウムなどが挙げられる。これらの中でも、ホウ酸、ホウ酸塩、酸化ホウ素及びホウ砂が好ましく、ホウ酸、ホウ酸アンモニウム及び酸化ホウ素がより好ましい。これらのホウ素系化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(他の添加剤)
当該熱硬化性リグニン組成物は、上記添加剤以外の添加剤が含まれていてもよい。上記他の添加剤としては、充填材、他の熱硬化性樹脂、アルカリ蒸解の際に生じる他の成分等を挙げることができる。
当該熱硬化性リグニン組成物は、上記添加剤以外の添加剤が含まれていてもよい。上記他の添加剤としては、充填材、他の熱硬化性樹脂、アルカリ蒸解の際に生じる他の成分等を挙げることができる。
(pH)
当該熱硬化性リグニン組成物のpHは10以下であり、4以上であることが好ましい。pHが10を超えるとリグニン組成物は熱硬化しない。一方、pHが4未満ではリグニンの分子量、粘度が上昇し、取扱性等が低下する。
当該熱硬化性リグニン組成物のpHは10以下であり、4以上であることが好ましい。pHが10を超えるとリグニン組成物は熱硬化しない。一方、pHが4未満ではリグニンの分子量、粘度が上昇し、取扱性等が低下する。
(不揮発分)
当該熱硬化性リグニン組成物における不揮発分の含有量は、70質量%以下である。不揮発分が70質量%を超えると熱硬化しない。この理由としては、不揮発分量が多いと、リグニンの熱硬化性官能基同士が組成物中で再会合し、官能基が十分に機能しないことなどが考えられる。
当該熱硬化性リグニン組成物における不揮発分の含有量は、70質量%以下である。不揮発分が70質量%を超えると熱硬化しない。この理由としては、不揮発分量が多いと、リグニンの熱硬化性官能基同士が組成物中で再会合し、官能基が十分に機能しないことなどが考えられる。
この不揮発分の含有量の下限としては、特に制限されないが、例えば5質量%以上であり、10質量%以上が好ましい。不揮発分の含有量が上記下限未満の場合は、硬化成分が少なく、強度や成型性の低下等が生じる場合がある。
(組成物)
当該熱硬化性リグニン組成物は、熱硬化性を有し、例えば170℃、さらには160℃以下といった比較的低温の加熱でも熱硬化が可能である。従って、当該熱硬化性リグニン組成物は、熱硬化性樹脂、熱硬化性接着剤等として好適に用いることができる。
当該熱硬化性リグニン組成物は、熱硬化性を有し、例えば170℃、さらには160℃以下といった比較的低温の加熱でも熱硬化が可能である。従って、当該熱硬化性リグニン組成物は、熱硬化性樹脂、熱硬化性接着剤等として好適に用いることができる。
当該熱硬化性リグニン組成物の粘度(20℃、6rpm)としては、特に制限されないが、100mPa・s以上5,000mPa・s以下が好ましく、200mPa・s以上2,500mPa・s以下がより好ましい。このような範囲の粘度とすることで、取扱性、熱硬化性、硬化後の強度等とをバランスよく高めることができる。
当該熱硬化性リグニン組成物は、例えば他の熱硬化性樹脂と混合して用いてもよい。他の熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、フラン樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
<熱硬化性リグニン組成物の製造方法>
当該熱硬化性リグニン組成物は、
アルカリ蒸解の際に生じるリグニンを含む溶液に酸化物、酸及び塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤を添加し、上記溶液のpHを10以下とする工程
を有する製造方法により得ることができる。当該製造方法によれば、比較的低温での硬化が可能な熱硬化性リグニン組成物を容易に得ることができる。
当該熱硬化性リグニン組成物は、
アルカリ蒸解の際に生じるリグニンを含む溶液に酸化物、酸及び塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤を添加し、上記溶液のpHを10以下とする工程
を有する製造方法により得ることができる。当該製造方法によれば、比較的低温での硬化が可能な熱硬化性リグニン組成物を容易に得ることができる。
上記リグニンを含む溶液及び添加剤については、上述したとおりである。
上記添加物の添加方法は、特に限定されず、公知の方法で行えばよい。なお、濃度等の不均一化を抑制するため、溶液を撹拌させながら添加剤を添加させることが好ましい。
上記添加の際の溶液の温度(pHを調整するときの溶液の温度)としては、50℃以下が好ましい。50℃を超える温度で添加すると、リグニンの高分子化が促進される場合がある。また、同様の観点から、添加剤添加(pH調整)後の溶液(組成物)の保管の際の温度としては、35℃以下が好ましく、25℃以下がさらに好ましい。
上記添加(及び必要に応じて混合)の際の圧力は通常、常圧である。添加後、減圧により不揮発分の調製を行ってもよい。添加剤添加(pH調整)後の加圧は、高分子化が促進されるおそれがあり好ましくない。
なお、当該製造方法は、上記添加工程の前又は後に、必要に応じて、溶液の不揮発分を70質量%以下に調整する工程を有していてもよい。この不揮発分の調整方法は特に限定されず、溶媒の添加、不揮発分の除去等によって行えばよい。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、本実施例によってなんら限定されるものではない。なお、得られたリグニン組成物の物性は、下記試験法により測定した。
(試験法)
熱硬化性‥160℃熱板上にリグニン組成物を載せ、金属製のへらを押しつけ、へらや熱板上に樹脂状の硬化物が貼り付くかを確認した。樹脂状の硬化物が貼り付くものを熱硬化性有り(○)、貼り付かないものを熱硬化性無し(×)とした。
不揮発分‥JIS K6910に基づき、測定した。
数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)‥東ソー株式会社製ゲル濾過クロマトグラフSC−8020シリーズビルドアップシステム(カラム:G2000HXL+G4000HXL、検出器:UV254nm、キャリヤー:テトラヒドロフラン1ml/min、カラム温度38℃)の測定により、リグニン組成物のTHF可溶成分について、標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を求めた。
低分子率‥上記ゲル濾過クロマトグラフにおいて、保持時間18分〜19.5分までの面積%を0分から19.5分までの面積%にて除して、低分子ピークの比率を求めた。
水素イオン濃度(pH)‥JIS K6910に基づき測定した。
粘度‥B型粘度計を用いて、JIS K 7117−1に準じ、20℃、6rpmの条件にて測定した。
熱硬化性‥160℃熱板上にリグニン組成物を載せ、金属製のへらを押しつけ、へらや熱板上に樹脂状の硬化物が貼り付くかを確認した。樹脂状の硬化物が貼り付くものを熱硬化性有り(○)、貼り付かないものを熱硬化性無し(×)とした。
不揮発分‥JIS K6910に基づき、測定した。
数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)‥東ソー株式会社製ゲル濾過クロマトグラフSC−8020シリーズビルドアップシステム(カラム:G2000HXL+G4000HXL、検出器:UV254nm、キャリヤー:テトラヒドロフラン1ml/min、カラム温度38℃)の測定により、リグニン組成物のTHF可溶成分について、標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を求めた。
低分子率‥上記ゲル濾過クロマトグラフにおいて、保持時間18分〜19.5分までの面積%を0分から19.5分までの面積%にて除して、低分子ピークの比率を求めた。
水素イオン濃度(pH)‥JIS K6910に基づき測定した。
粘度‥B型粘度計を用いて、JIS K 7117−1に準じ、20℃、6rpmの条件にて測定した。
[実施例1]
「原料リグニン」(ハリマ化成提供、麦藁パルプソーダ黒液濃縮物)18gを水72gに溶かし、リグニンを含む溶液とした。この後、室温にて上記溶液にホウ酸5gを添加、混合し、リグニン組成物を得た。
「原料リグニン」(ハリマ化成提供、麦藁パルプソーダ黒液濃縮物)18gを水72gに溶かし、リグニンを含む溶液とした。この後、室温にて上記溶液にホウ酸5gを添加、混合し、リグニン組成物を得た。
[実施例2〜4]
ホウ酸を表1に記載の塩としたこと以外は、実施例1と同様にしてリグニン組成物を得た。
ホウ酸を表1に記載の塩としたこと以外は、実施例1と同様にしてリグニン組成物を得た。
[実施例5〜6]
ホウ酸添加量を表1に記載の量としたこと以外は、実施例1と同様にしてリグニン組成物を得た。
ホウ酸添加量を表1に記載の量としたこと以外は、実施例1と同様にしてリグニン組成物を得た。
[比較例1]
ホウ酸をシュウ酸カリウムとしたこと以外は、実施例1と同様にしてリグニン組成物を得た。
ホウ酸をシュウ酸カリウムとしたこと以外は、実施例1と同様にしてリグニン組成物を得た。
[実施例7]
「原料リグニン」(ハリマ化成提供、麦藁パルプソーダ黒液濃縮物)39gを水85gに溶かし、リグニンを含む溶液とした。この後、室温にて上記溶液に1規定硫酸を5ml添加、混合し、リグニン組成物を得た。
「原料リグニン」(ハリマ化成提供、麦藁パルプソーダ黒液濃縮物)39gを水85gに溶かし、リグニンを含む溶液とした。この後、室温にて上記溶液に1規定硫酸を5ml添加、混合し、リグニン組成物を得た。
[実施例8〜9]
水と硫酸の添加量を表2に記載の量としたこと以外は、実施例7と同様にしてリグニン組成物を得た。
水と硫酸の添加量を表2に記載の量としたこと以外は、実施例7と同様にしてリグニン組成物を得た。
[比較例2]
「原料リグニン」(ハリマ化成提供、麦藁パルプソーダ黒液濃縮物)39gを水90gに溶かし、リグニン組成物とした。
「原料リグニン」(ハリマ化成提供、麦藁パルプソーダ黒液濃縮物)39gを水90gに溶かし、リグニン組成物とした。
[実施例10]
「原料リグニン」(ハリマ化成提供、麦藁パルプソーダ黒液濃縮物)18g、水9g及びホウ酸5gを室温にて混合し、リグニン組成物を得た。
「原料リグニン」(ハリマ化成提供、麦藁パルプソーダ黒液濃縮物)18g、水9g及びホウ酸5gを室温にて混合し、リグニン組成物を得た。
[実施例11及び比較例3]
水の添加量を表3に示す量としたこと以外は、実施例10と同様にして、リグニン組成物を得た。
水の添加量を表3に示す量としたこと以外は、実施例10と同様にして、リグニン組成物を得た。
[評価]
上記実施例及び比較例で得られたリグニン組成物のpH、数平均分子量、重量平均分子量、低分子率、不揮発分及び熱硬化性について上記試験法にて測定又は評価した。実施例7〜9及び比較例2で得られたリグニン組成物については、さらに粘度を測定した。評価結果を表1〜3に示す。
上記実施例及び比較例で得られたリグニン組成物のpH、数平均分子量、重量平均分子量、低分子率、不揮発分及び熱硬化性について上記試験法にて測定又は評価した。実施例7〜9及び比較例2で得られたリグニン組成物については、さらに粘度を測定した。評価結果を表1〜3に示す。
表1〜3に示されるように、実施例1〜11のリグニン組成物は、160℃といった比較的低温での加熱においても熱硬化性を有する。一方、pHが10を超える比較例1及び2、並びに不揮発分が70質量%を超える比較例3のリグニン組成物は、熱硬化性を有さない。
本発明のリグニン組成物は、合板用の接着剤や成形材料の母体など、熱硬化性材料として利用することができる。
Claims (9)
- アルカリ蒸解の際に生じるリグニンを含む溶液に、酸化物、酸及び塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤を添加して得られ、
pHが10以下、不揮発分が70質量%以下である熱硬化性リグニン組成物。 - pHが4以上である請求項1に記載の熱硬化性リグニン組成物。
- 上記添加剤が、単核オキソ酸若しくは単核オキソ酸塩又は水溶液中で単核オキソ酸若しくは単核オキソ酸塩を形成する化合物である請求項1又は請求項2に記載の熱硬化性リグニン組成物。
- 上記添加剤が、ホウ素系化合物である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の熱硬化性リグニン組成物。
- 上記添加剤が、アンモニウム塩である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の熱硬化性リグニン組成物。
- 上記リグニンが草本系バイオマス由来である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の熱硬化性リグニン組成物。
- 上記アルカリ蒸解が、硫化ナトリウムを使用しない蒸解である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の熱硬化性リグニン組成物。
- アルカリ蒸解の際に生じるリグニン、
酸化物、酸及び塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤、並びに
溶媒
を含有し、
pHが10以下、不揮発分が70質量%以下である熱硬化性リグニン組成物。 - アルカリ蒸解の際に生じるリグニンを含む溶液に酸化物、酸及び塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤を添加し、上記溶液のpHを10以下とする工程
を有する不揮発分が70質量%以下の熱硬化性リグニン組成物の製造方法。
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