JP2013227469A - リグニン樹脂組成物、リグニン樹脂成形材料およびリグニン誘導体の製造方法 - Google Patents

リグニン樹脂組成物、リグニン樹脂成形材料およびリグニン誘導体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】植物由来成分を主材料とし、流動性および硬化後の機械的特性に優れたリグニン樹脂組成物、成形性および硬化後の機械的特性に優れたリグニン樹脂成形材料、および、前記リグニン樹脂組成物に用いられるリグニン誘導体を効率よく製造可能なリグニン誘導体の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のリグニン樹脂組成物は、バイオマスを分解して得られたリグニン誘導体と、架橋剤と、を含むものである。このうち、リグニン誘導体は、極性溶媒に溶解する第1のリグニン誘導体と、極性溶媒に不溶な第2のリグニン誘導体と、を含む。また、第1のリグニン誘導体および第2のリグニン誘導体は、バイオマスまたはその処理物を極性溶媒で処理したとき、極性溶媒に溶解するものの少なくとも一部を第1のリグニン誘導体とし、極性溶媒に不溶であるものの一部を第2のリグニン誘導体としたものであるのが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、リグニン樹脂組成物、リグニン樹脂成形材料およびリグニン誘導体の製造方法に関するものである。
樹皮、間伐材、建築廃材等の木質系廃材(バイオマス)は、これまでその多くが廃棄処分されている。しかしながら、地球環境保護が重要課題になりつつあり、その観点から、木質系廃材の再利用、リサイクルが検討され始めている。
一般的な木質の主要成分は、セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンである。このうち、約30%の割合で含まれるリグニンは、芳香環や、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基を豊富に含む構造を有しているため、樹脂原料としての利用が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。
このようにリグニンを樹脂原料として利用するためには、木質系廃材からリグニンを単離する必要がある。
特許文献1には、木粉に液体状のフェノール誘導体を浸透させ、木粉中のリグニンをフェノール誘導体により溶媒和させ、次いで、濃酸を添加してセルロース成分を溶解することにより、リグニンを溶媒和したフェノール誘導体と、セルロース成分を溶解した濃酸との2相に分離し、このうちフェノール誘導体相からリグニンフェノール誘導体を抽出する方法が開示されている。
また、特許文献1には、木粉にフェノール誘導体を溶解した溶媒を浸透させた後、溶媒を留去し、その後、残存した木粉に濃酸を添加することにより、フェノール誘導体により溶媒和されたリグニンを得る方法が開示されている。
そして、得られたリグニン誘導体と架橋剤とを混合することにより、熱硬化性のリグニン樹脂組成物が得られる(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2には、得られたリグニン樹脂組成物が優れた流動性を有し、成形体の製造に用いられることが記載されている。
成形体の製造には、例えば、熱硬化性のリグニン樹脂組成物と充填材とを含む成形材料が用いられる。
しかしながら、充填材の添加量を高めたり、成形時間を短縮するために硬化触媒を添加した成形材料を低圧トランスファー成形する際、あるいは成形型の形状が複雑な場合等においては、成形材料の流動性をさらに向上させる必要があった。
特開2001−261839号公報 特開2009−227890号公報
本発明の目的は、植物由来成分を主材料とし、流動性および硬化後の機械的特性に優れたリグニン樹脂組成物、成形性および硬化後の機械的特性に優れたリグニン樹脂成形材料、および、前記リグニン樹脂組成物に用いられるリグニン誘導体を効率よく製造可能なリグニン誘導体の製造方法を提供することにある。
このような目的は、下記(1)〜(18)の本発明により達成される。
(1) バイオマスを分解して得られたリグニン誘導体と、架橋剤と、を含むリグニン樹脂組成物であって、
前記リグニン誘導体は、極性溶媒に溶解する第1のリグニン誘導体と、前記極性溶媒に不溶な第2のリグニン誘導体と、を含むことを特徴とするリグニン樹脂組成物。
(2) 前記架橋剤は、下記式(1)で表される化合物を含むものである上記(1)に記載のリグニン樹脂組成物。
Z−(CHOR) (1)
[式(1)中のZはメラミン残基、尿素残基、グリコリル残基、イミダゾリジノン残基および芳香環残基のうちのいずれか1種である。また、mは2〜14の整数を表す。また、Rは独立して炭素数1〜4のアルキル基または水素原子である。ただし、−CHORは、メラミン残基の窒素原子、尿素残基の1級アミノ基の窒素原子、グリコリル残基の2級アミノ基の窒素原子、イミダゾリジノン残基の2級アミノ基の窒素原子および芳香環残基の芳香環の炭素原子のいずれかに直接結合している。]
(3) 前記化合物は、下記式(2)〜(5)のうちのいずれかで表されるものである上記(2)に記載のリグニン樹脂組成物。
Figure 2013227469
[式(2)中、XはCHORまたは水素原子であり、Rは独立して炭素数1〜4のアルキル基または水素原子である。また、nは1〜3の整数を表す。]
Figure 2013227469
[式(3)中、Rは独立して炭素数1〜4のアルキル基または水素原子である。]
Figure 2013227469
[式(4)中、Rは独立して炭素数1〜4のアルキル基または水素原子である。]
Figure 2013227469
[式(5)中、Rは独立して炭素数1〜4のアルキル基または水素原子である。]
(4) 前記化合物は、下記式(6)または(7)で表される化合物である上記(3)に記載のリグニン樹脂組成物。
Figure 2013227469
[式(6)中、nは1〜3の整数を表す。]
Figure 2013227469
[式(7)中、nは1〜3の整数を表す。]
(5) 前記架橋剤は、キヌクリジンおよびピジンのうちの少なくとも1種を含むものである上記(1)に記載のリグニン樹脂組成物。
(6) 前記第1のリグニン誘導体および前記第2のリグニン誘導体は、バイオマスまたはその処理物を前記極性溶媒で処理したとき、前記極性溶媒に溶解するものの少なくとも一部を前記第1のリグニン誘導体とし、前記極性溶媒に不溶であるものの一部を前記第2のリグニン誘導体としたものである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のリグニン樹脂組成物。
(7) 前記リグニン誘導体は、バイオマスを亜臨界水下で分解して得られたものである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のリグニン樹脂組成物。
(8) 前記第1のリグニン誘導体の含有率をAとしたとき、前記第2のリグニン誘導体の含有率は、0.01A〜2Aである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のリグニン樹脂組成物。
(9) 当該リグニン樹脂組成物は、さらに、温度に応じて前記架橋剤の架橋反応の有無または架橋反応の速度を異ならせる潜在性触媒を含む上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のリグニン樹脂組成物。
(10) 当該リグニン樹脂組成物は、さらに、加熱により酸性物質を放出する化合物を含む上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のリグニン樹脂組成物。
(11) 前記酸性物質を放出する化合物は、加熱により2以下の解離定数pKaを有する酸性物質を放出する化合物である上記(10)に記載のリグニン樹脂組成物。
(12) 前記酸性物質を放出する化合物は、120〜150℃で加熱することにより2以下の解離定数pKaを有する酸性物質を放出する化合物である上記(11)に記載のリグニン樹脂組成物。
(13) 前記酸性物質を放出する化合物は、芳香族スルホン酸シクロヘキシル類である上記(10)ないし(12)のいずれかに記載のリグニン樹脂組成物。
(14) 前記芳香族スルホン酸シクロヘキシル類は、ベンゼンスルホン酸シクロヘキシル類である上記(13)に記載のリグニン樹脂組成物。
(15) 前記ベンゼンスルホン酸シクロヘキシル類は、シクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、3−メチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、3,5−ジメチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、4−ブチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、2−ヒドロキシシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート及び4−ヒドロキシシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネートからなる群から選択される少なくとも1種である上記(14)に記載のリグニン樹脂組成物。
(16) 上記(1)ないし(15)のいずれかに記載のリグニン樹脂組成物と、充填材と、を含むことを特徴とするリグニン樹脂成形材料。
(17) バイオマスを溶媒存在下におき、これらを高温高圧下で分解処理する第1の工程と、
前記第1の工程により得られた処理物中の固形成分を極性溶媒で処理し、前記極性溶媒に対する不溶分と溶解液とを分離する第2の工程と、
前記溶解液を乾燥させ、溶質を回収する第3の工程と、
前記回収した溶質と、前記不溶分の一部と、を混合し、リグニン誘導体を得る第4の工程と、を有することを特徴とするリグニン誘導体の製造方法。
(18) 前記極性溶媒は、ケトン類または低級アルコール類である上記(17)に記載のリグニン誘導体の製造方法。
本発明によれば、流動性および硬化後の機械的特性に優れたリグニン樹脂組成物が得られる。
また、本発明によれば、成形性および硬化後の機械的特性に優れたリグニン樹脂成形材料が得られる。
また、本発明によれば、上記リグニン樹脂組成物に用いられるリグニン誘導体を効率よく製造することができる。
以下、本発明のリグニン樹脂組成物、リグニン樹脂成形材料およびリグニン誘導体の製造方法について好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<リグニン樹脂組成物>
本発明のリグニン樹脂組成物は、バイオマスを分解して得られるリグニン誘導体と、架橋剤と、を含むものであって、樹脂原料となり得るものである。そして、リグニン誘導体として、極性溶媒に溶解する第1のリグニン誘導体と、極性溶媒に不溶な第2のリグニン誘導体と、を含むものを用いる。
このようなリグニン樹脂組成物は、第1のリグニン誘導体と第2のリグニン誘導体とを含んでいるため、溶融粘度が低く流動性に富んでいるとともに、硬化後の機械的特性に優れたものとなる。このため、樹脂原料として最適なリグニン樹脂組成物が得られる。
以下、リグニン樹脂組成物の各成分について順次説明する。
(リグニン誘導体)
まず、リグニン誘導体について説明する。リグニンは、セルロースおよびヘミセルロースとともに、植物体の骨格を形成する主要成分であり、かつ、自然界に最も豊富に存在する物質の一つである。リグニン誘導体は、フェノール誘導体を単位構造とする化合物であり、この単位構造は、化学的および生物学的に安定な炭素−炭素結合や炭素−酸素−炭素結合を有するため、化学的な劣化や生物的分解を受け難い。このため、リグニン誘導体は、樹脂原料として有用とされる。
本発明に用いられるリグニン誘導体は、バイオマスを分解して得られたものである。バイオマスとは、植物または植物の加工品であるが、これらは光合成の過程で大気中の二酸化炭素を取り込み固定化してなるものであるため、大気中の二酸化炭素の増加抑制に寄与している。このため、バイオマスを工業的に利用することによって、地球温暖化の抑制に寄与することができる。
リグニン誘導体の具体例としては、下記式(8)で表わされるグアイアシルプロパン構造、下記式(9)で表わされるシリンギルプロパン構造、下記式(10)で表わされる4−ヒドロキシフェニルプロパン構造等が挙げられる。なお、針葉樹類からは主にグアイアシルプロパン構造が、広葉樹類からは主にグアイアシルプロパン構造およびシリンギルプロパン構造が、草本類からは主にグアイアシルプロパン構造、シリンギルプロパン構造および4−ヒドロキシフェニルプロパン構造がそれぞれ抽出される。
Figure 2013227469
また、本発明におけるリグニン誘導体は、水酸基に対して芳香環のオルト位およびパラ位の少なくとも一方が無置換になっているものが好ましい。このようなリグニン誘導体は、芳香環への親電子置換反応により硬化剤が作用する反応サイトを多く含み、水酸基での反応において立体障害が低減できることになるため、反応性に優れたものとなる。
また、リグニン誘導体は、上記基本構造の他、リグニン誘導体に官能基を導入したもの(リグニン二次誘導体)であってもよい。
リグニン二次誘導体が有する官能基としては、特に限定されないが、例えば2個以上の同じ官能基が互いに反応し得るもの、または他の官能基と反応し得るものが好適である。具体的には、エポキシ基、メチロール基の他、炭素−炭素不飽和結合を有するビニル基、エチニル基、マレイミド基、シアネート基、イソシアネート基等が挙げられる。このうち、メチロール基を導入した(メチロール化した)リグニン誘導体が好ましく用いられる。このようなリグニン二次誘導体は、メチロール基同士の自己縮合反応により自己架橋が生じるとともに、上記架橋剤中のアルコキシメチル基や水酸基に対して確実に架橋する。その結果、特に均質で剛直な骨格を有し、機械的特性に優れた硬化物が得られる。
ここで、本発明に用いられるリグニン誘導体は、極性溶媒に溶解する第1のリグニン誘導体と、この極性溶媒に不溶な第2のリグニン誘導体と、を含んでいる。極性溶媒に溶解する第1のリグニン誘導体は、分子量が相対的に小さく、1分子あたりの架橋反応点の数が多い。このため、リグニン樹脂組成物の溶融流動性および架橋密度を高め、成形性や硬化後の機械的特性の向上に寄与する。一方、極性溶媒に不溶な第2のリグニン誘導体は、分子量が相対的に大きく、樹脂組成物中に存在することによって充填材(フィラー)のような機能を有するため、例えば樹脂組成物へのチキソ性の付与や硬化物における亀裂の進展を抑制し靭性を高める等の機械的特性の向上に寄与する。したがって、第1のリグニン誘導体と第2のリグニン誘導体の双方を含むことにより、それぞれが異なる側面から成形性と硬化後の機械的特性の向上に相乗的効果をもたらす。その結果、本発明のリグニン樹脂組成物によれば、成形性と機械的特性に優れた樹脂製品を得ることができる。
また、上述したように、第2のリグニン誘導体を付与することでチキソ性が付与されるため成形時の高せん断領域では高流動性であり、低せん断領域では低流動性であるため、その結果、本発明のリグニン樹脂組成物は、布帛や紙等の芯材に対して優れた保持性を示すとともに、複雑な形状の成形型にも隙間なく充填可能な樹脂原料として有用なものとなる。
第1のリグニン誘導体を溶解し、第2のリグニン誘導体を溶解しない極性溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノールのような低級アルコール類、フェノール、クレゾールのようなフェノール類、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、テトラヒドロフランのようなエーテル類、アセトニトリルのようなニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミドのようなアミド類等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
これらの中でも低級アルコール類およびケトン類のうちの1種または2種の混合物が好ましく用いられ、ケトン類がより好ましく用いられる。極性溶媒としてこれらを用いることにより、上記効果がより増強されるように、第1のリグニン誘導体と第2のリグニン誘導体とを確実に分けることができる。すなわち、上記極性溶媒を用いることにより、上述した相乗的効果を最大化されるように、第1のリグニン誘導体と第2のリグニン誘導体とを設定することができる。
なお、本発明のリグニン樹脂組成物中のうち、第1のリグニン誘導体の含有率をAとしたとき、第2のリグニン誘導体の含有率は0.01A〜2Aであるのが好ましく、0.05A〜1.5Aであるのがより好ましく、0.1A〜0.9Aであるのがさらに好ましい。第1のリグニン誘導体と第2のリグニン誘導体の比率を前記範囲内に設定することにより、リグニン樹脂組成物の流動性と硬化後の機械的特性とを高度に両立させることができる。
また、第1のリグニン誘導体のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたポリスチレン換算の数平均分子量は200以上1000未満であるのが好ましく、300以上900以下であるのがより好ましい。一方、第2のリグニン誘導体のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたポリスチレン換算の数平均分子量は1000以上2000以下であるのが好ましく、1100以上1900以下であるのがより好ましい。
さらに、本発明におけるリグニン誘導体のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたポリスチレン換算の数平均分子量は200以上2000以下であるのが好ましく、300以上1800以下であるのがより好ましい。このような数平均分子量のリグニン誘導体は、その流動性と硬化後の機械的特性とをより硬度に両立させるものとなる。
なお、第1のリグニン誘導体および第2のリグニン誘導体は、バイオマスまたはその処理物を極性溶媒で処理したとき、極性溶媒に溶解するものの少なくとも一部を第1のリグニン誘導体とし、極性溶媒に不溶であるものの一部を第2のリグニン誘導体としたものである。このような第1のリグニン誘導体および第2のリグニン誘導体は、それぞれ同一の出発原料から抽出されたものであるため、互いに分子量等が異なっていて極性溶媒に対する溶解性が異なるものの、分子構造が同じあるいは非常に似ているため、相互の親和性が高い。したがって、第1のリグニン誘導体と第2のリグニン誘導体とを混合させるときに、ムラなく均一に混合することができ、均質なリグニン樹脂組成物が得られる。
また、本発明におけるリグニン誘導体は、H−NMR分析に供されたとき、得られる化学シフトのスペクトルにおいて、芳香族プロトンに帰属するピークの積分値が、脂肪族プロトンに帰属するピークの積分値の15〜50%程度であるのが好ましく、15〜45%程度であるのがより好ましく、20〜40%程度であるのがさらに好ましく、20〜35%程度であるのが特に好ましい。これにより、リグニン誘導体の硬化後の機械的特性に寄与する反応性と芯材等への含浸性に寄与する溶融性または溶媒への溶解性とをより高度に両立することができる。
なお、前記比率が前記下限値を下回ると、架橋反応を生じる反応サイトあるいは反応性基を導入するための反応サイトが脂肪族基で置換されていて架橋反応点が少なくなるため、リグニン誘導体を架橋させたとき、架橋物の物性が低下するおそれがある。一方、前記比率が前記上限値を上回ると、リグニン誘導体の溶融性または溶媒への溶解性が低下し、リグニン樹脂組成物の流動性が低下するおそれがある。
また、芳香族プロトンおよび脂肪族プロトンは、H−NMR分析の化学シフトのスペクトルにおいて、離れた位置にピークを生じるため、ピークの分離が可能であり、ピークの同定および積分値の算出を行うことができる。
具体的には、分析の基準物質としてテトラメチルシランを用いた場合、一般的には、芳香族プロトンに帰属するピークは6〜8ppm付近に位置する。また、脂肪族プロトンに帰属するピークは0.5〜5ppm付近に位置することとなる。
なお、上述した芳香族プロトンに帰属するピークの積分値、および、脂肪族プロトンに帰属するピークの積分値は、それぞれバイオマスの処理条件により調整することができる。例えば、バイオマスの処理温度や処理圧力を高めたり、処理時間を長くしたりすることにより、芳香族プロトンに帰属するピークの積分値が大きくなる傾向が強いと考えられる。
(架橋剤)
次に、架橋剤について説明する。
本発明のリグニン樹脂組成物に含まれる架橋剤は、リグニン誘導体を架橋し得るものであれば特に限定されないが、下記式(1)で表される化合物を含むものが好ましい。
Z−(CHOR) (1)
[式(1)中のZはメラミン残基、尿素残基、グリコリル残基、イミダゾリジノン残基および芳香環残基のうちのいずれか1種である。また、mは2〜14の整数を表す。また、Rは独立して炭素数1〜4のアルキル基または水素原子である。ただし、−CHORは、メラミン残基の窒素原子、尿素残基の1級アミノ基の窒素原子、グリコリル残基の2級アミノ基の窒素原子、イミダゾリジノン残基の2級アミノ基の窒素原子および芳香環残基の芳香環の炭素原子のいずれかに直接結合している。]
このような化合物を含むリグニン樹脂組成物は、硬化後の機械的特性に優れるとともに、硬化物の耐久性および外観の向上に寄与する。これは、架橋剤中に含まれる上記式(1)で表される化合物が、多官能性の架橋点を形成し得るため、リグニン誘導体を高密度かつ均一に架橋し、均質で剛直な骨格を形成するからである。剛直な骨格によって硬化物の機械的特性および耐久性が向上するとともに、膨れや亀裂等の発生が抑制されるため硬化物の外観も向上することとなる。
また、上記架橋剤は、自硬化性を有するとともに、リグニン誘導体との間で共架橋構造を形成し得るものである。このため、リグニン樹脂組成物の硬化物は、その特性がリグニン誘導体と架橋剤との相溶性が良好であり均質性が高くなる。したがって、リグニン樹脂組成物の流動性と硬化物の機械的特性との両立という観点から配合比率の最適化を図ることができ、寸法精度および機械的特性に優れた樹脂製品が得られる。
さらには、上記架橋剤は架橋反応時における揮発成分の発生が穏やかであるため、揮発成分が硬化物の外部に放出されるのに伴って生じる膨れや亀裂等の不具合を抑えることができる。その結果、外観に優れた樹脂製品が得られる。
なお、上記架橋剤は、リグニン樹脂組成物の流動性の向上に寄与する。これは、上記架橋剤の融点が低く、加熱時に組成物の粘性が低下すること、および、上記架橋剤が比較的遅架橋性であり、加熱されたときに徐々に架橋反応が進むためであると考えられる。
また、−CHORは、前述したようにメラミン残基の窒素原子、尿素残基の1級アミノ基の窒素原子、グリコリル残基の2級アミノ基の窒素原子、イミダゾリジノン残基の2級アミノ基の窒素原子および芳香環残基の芳香環の炭素原子のうちのいずれかに直接結合しているが、同一の窒素原子または炭素原子に2つ以上の「−CHOR」が結合している場合、そのうちの少なくとも1つの「−CHOR」が含む「R」はアルキル基であるのが好ましい。これにより、リグニン誘導体を確実に架橋させることができる。
なお、本明細書においてメラミン残基とは、下記式(A)で表されるメラミン骨格を有する基のことをいう。
Figure 2013227469
また、本明細書において尿素残基とは、下記式(B)で表される尿素骨格を有する基のことをいう。
Figure 2013227469
また、本明細書においてグリコリル残基とは、下記式(C)で表されるグリコリル骨格を有する基のことをいう。
Figure 2013227469
また、本明細書においてイミダゾリジノン残基とは、下記式(D)で表されるイミダゾリジノン骨格を有する基のことをいう。
Figure 2013227469
また、本明細書において芳香環残基とは、芳香環(ベンゼン環)を有する基のことをいう。
また、上記式(1)で表される化合物としては、特に、下記(2)〜(5)のうちのいずれかで表される化合物が好ましく用いられる。これらは、リグニン誘導体中のフェノール骨格に含まれる芳香環上の架橋反応点に対して反応しリグニン誘導体を確実に架橋するとともに、官能基同士の自己縮合反応により自己架橋を生じる。その結果、特に均質で剛直な骨格を有し、機械的特性、耐久性および外観に優れた硬化物が得られる。
Figure 2013227469
[式(2)中、XはCHORまたは水素原子であり、Rは独立して炭素数1〜4のアルキル基または水素原子である。また、nは1〜3の整数を表す。]
Figure 2013227469
[式(3)中、Rは独立して炭素数1〜4のアルキル基または水素原子である。]
Figure 2013227469
[式(4)中、Rは独立して炭素数1〜4のアルキル基または水素原子である。]
Figure 2013227469
[式(5)中、Rは独立して炭素数1〜4のアルキル基または水素原子である。]
また、上記式(2)で表される化合物としては、特に、下記式(6)または(7)で表される化合物が好ましく用いられる。これらは、リグニン誘導体中のフェノール骨格に含まれる芳香環上の架橋反応点に対して反応しリグニン誘導体を特に確実に架橋するとともに、官能基同士の自己縮合反応により自己架橋を生じる。その結果、とりわけ均質で剛直な骨格を有し、機械的特性、耐久性および外観に優れた硬化物が得られる。
Figure 2013227469
[式(6)中、nは1〜3の整数を表す。]
Figure 2013227469
[式(7)中、nは1〜3の整数を表す。]
なお、上記式(1)で表される化合物の具体例としては、スミカノール507A(田岡化学工業製)、2,4,6−トリス[ビス(メトキシメチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン(東京化成工業製)、ニカラックMW−30HM、ニカラックMW−390、ニカラックMW−100LM、ニカラックMX−750LM、ニカラックMX−290、ニカラックMX−280、ニカラックMX−270(いずれも三和ケミカル製)等が挙げられる。
また、上記式(1)で表される化合物のうち、Zがメラミン残基、尿素残基、グリコリル残基およびイミダゾリジノン残基のうちのいずれかであるものとしては、例えば、特開2005−43883号公報の化16、化18に記載された化合物等が挙げられる。
また、上記式(1)で表される化合物のうち、Zが芳香環残基であるものとしては、例えば、特開2005−37925号公報の化21〜化26に記載された化合物や、特開2005−43883号公報の化17に記載された化合物等が挙げられる。
一方、上記架橋剤は、上記式(1)で表される化合物に代えて、またはこの化合物とともに、キヌクリジンおよびピジンのうちの少なくとも1種の化合物を含むものであってもよい。このような架橋剤を含む硬化物は、機械的強度に優れるとともに、耐久性および外観の高いものとなる。これは、キヌクリジンおよびピジンがリグニン誘導体を高密度かつ均一に架橋し、均質で剛直な骨格を形成するからである。
なお、キヌクリジンおよびピジンにリグニン誘導体からのプロトンが付加すると、カルボカチオンが生じる。このカルボカチオンはリグニン誘導体に反応してメチレン結合を形成する。このようにして上述した均質で剛直な骨格が形成される。
また、架橋剤には、上記化合物以外の架橋剤成分を含んでいてもよいが、その場合でもその添加量は、上記化合物より少なくなるよう設定される。上記化合物以外の架橋剤成分としては、例えば、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ化グリセリン、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油のようなエポキシ樹脂、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートのようなイソシアネート化合物、リグニン誘導体の芳香環に対し親電子置換反応して架橋し得る化合物として、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラールのようなアルデヒド類、ポリオキシメチレンのようなアルデヒド源、ヘキサメチレンテトラミンの他、レゾール型フェノール樹脂等の通常のフェノール樹脂で公知の架橋剤、リグニン誘導体の芳香環に対し親電子置換反応して架橋し得る化合物等を挙げることができる。そして、架橋剤中における上記化合物の含有率は架橋反応前において80質量%以上であるのが好ましい。また、リグニン誘導体100質量部に対して上記化合物は5〜60質量部であるのが好ましく、10〜50質量部であるのがより好ましい。
さらに、上記化合物以外の架橋剤成分としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールのようなイミダゾール類、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノナン−5−エンのようなアニオン系重合触媒、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレートのようなスルホニウム塩、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、フェニルジアゾニウムテトラフルオロボレートのようなジアゾニウム塩といったカチオン系重合触媒等が挙げられる。
また、後述するようにリグニン誘導体に反応性官能基が導入されている場合、上記化合物に加え、その反応性官能基の種類に応じた架橋剤成分を適宜選択して用いるようにしてもよい。
具体的には、反応性官能基がエポキシ基である場合、例えば、ノボラック型フェノール樹脂のようなフェノール樹脂、フェノール性水酸基を有するリグニン化合物、ジエチレントリアミン、m−キシリレンジアミン、N−アミノエチルピペラジンのようなアミン系化合物、無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸のような酸無水物、ジシアンジアミド、グアニジン類、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等の一般的なエポキシ樹脂用硬化剤が挙げられる。
また、反応性官能基がイソシアネート基である場合、架橋剤成分としては、例えば、フェノール樹脂、リグニン分解物、ポリビニルアルコール、ポリアミン系化合物等の一般的なイソシアネート樹脂用硬化剤が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
また、反応性官能基がビニル基である場合、架橋剤成分としては、例えば、ブチルリチウム、ナトリウムエトキシドのようなアニオン系重合開始剤、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル(BPO)のようなラジカル重合開始剤等の一般的なビニル基含有化合物の重合開始剤が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
また、反応性官能基がエチニル基である場合、架橋剤成分としては、例えば、5塩化モリブデン、5塩化タングステン、ノルボルナジエンロジウムクロリドダイマー等の一般的なエチニル基含有化合物の重合触媒が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
また、反応性官能基がマレイミド基である場合、架橋剤成分としては、例えば、BPOのようなパーオキサイド、前述したアニオン系重合開始剤等の一般的なマレイミド基含有化合物の重合開始剤が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
また、反応性官能基がシアネート基である場合、架橋剤成分としては、例えば、ナフテン酸コバルトのような金属触媒等の一般的なシアネート基含有化合物の重合触媒が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
なお、これらの架橋剤成分を含む場合も、架橋剤中における上記化合物の含有率は架橋反応前において80質量%以上に設定するのが好ましい。
(潜在性触媒)
また、上記架橋剤に加え、温度に応じて架橋剤の架橋反応の有無または架橋反応の速度を異ならせる潜在性触媒を含んでいてもよい。このような潜在性触媒を含むことにより、本発明のリグニン樹脂組成物は、加熱されたときに架橋剤の架橋反応を開始させたり、あるいは、架橋反応の反応速度を高めたりすることができるものとなる。これにより、上記組成物を賦形する際には架橋反応を生じさせないあるいは反応速度が遅くなるようにし、賦形が完了した時点で温度を上昇させ、架橋反応を生じさせたりあるいは反応速度が速くなるようにすることができる。その結果、均質で機械的特性、耐久性および外観に優れた成形物が得られる。
上記潜在性触媒としては、例えば、加熱により酸性物質を放出する化合物が挙げられる。この酸性物質は、上記架橋剤による架橋反応を促進させるよう作用する。これにより、加熱したときの硬化速度が速くなり、樹脂成形品の外観が向上するとともに樹脂成形品の製造効率を高めることができる。
また、加熱により酸性物質を放出する化合物は、加熱により2以下の解離定数pKaを有する酸性物質を放出する化合物であるのが好ましい。潜在性触媒としてこのような酸性物質が放出される化合物を含むことにより、架橋剤による架橋反応を特に促進させることができる。
2以下の解離定数pKaを有する酸性物質としては、例えば、シュウ酸(pKa=1.3)、p−トルエンスルホン酸(pKa=1.7)等が挙げられる。
また、このような酸性物質を放出する化合物としては、例えば、シクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、2−メチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、3−メチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、4−メチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、4−ブチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、4−シクロヘキシルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、2,6−ジメチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、2,4−ジメチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、3,4−ジメチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、3,5−ジメチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、2−ヒドロキシシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、4−ヒドロキシシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、シクロヘキシル=4−ビフェニルスルホネート及び4,4’−ビシクロヘキシル=ビス(4−メチルベンゼンスルホネート)のようなベンゼンスルホン酸シクロヘキシル類、シクロヘキシル=1−ナフタレンスルホネート及びシクロヘキシル=2−ナフタレンスルホネートのようなナフタレンスルホン酸シクロヘキシル類といった各種の芳香族スルホン酸シクロヘキシル類等が挙げられる。このような芳香族スルホン酸シクロヘキシル類は、酸性物質を安定的に放出する一方、架橋剤による架橋反応を阻害し難いことから、潜在性触媒として有用である。
また、これらの中でも特にベンゼンスルホン酸ヘキシル類が好ましく用いられ、さらには、シクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、3−メチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、3,5−ジメチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、4−ブチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、2−ヒドロキシシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、および4−ヒドロキシシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネートからなる群から選択される少なくとも一種がより好ましく用いられ、とりわけシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネートがさらに好ましく用いられる。これらのベンゼンスルホン酸ヘキシル類によれば、上記芳香族スルホン酸シクロヘキシル類がもたらす効果がより顕著なものとなる。
また、上述した化合物において酸性物質が放出される加熱温度は120〜150℃程度であるのが好ましい。このような温度範囲は、リグニン誘導体と架橋剤とを含むリグニン樹脂組成物を硬化する処理の温度に非常に近いため、例えばこの温度範囲より低温でリグニン樹脂組成物を成形し、その後、この温度範囲まで昇温することによって、優れた成形性と硬化後の機械的特性とを高度に両立させることができる。
(その他の成分)
なお、本発明のリグニン樹脂組成物は、リグニン誘導体や架橋剤以外にその他の樹脂成分を含んでいてもよい。具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂成分を含むことにより、樹脂成分の相対的な溶融粘度が低下するため、リグニン樹脂組成物の流動性が向上する。なお、これらの樹脂成分を含む場合、架橋反応前においてリグニン誘導体の含有率が好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上になるよう調整される。
本発明のリグニン樹脂組成物は、上記の成分以外に、必要に応じて、メトキシナトリウム、t−ブトキシカリウムのようなアルカリ金属塩、酢酸カルシウムのようなアルカリ土類金属塩、Na2O、K2Oのようなアルカリ金属酸化物、CaO、BaOのようなアルカリ土類金属酸化物といった硬化促進剤を含んでいてもよい。
また特に、反応性基としてエポキシ基を有するリグニン二次誘導体を含む場合には、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールのようなイミダゾール類、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノナン−5−エン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミンのような3級アミン類、トリフェニルホスフィン、テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート等を含んでいてもよい。
また、反応性基として、メチロール基、ビニル基、エチニル基、マレイミド基、シアネ−ト基等を有するリグニン二次誘導体を含む場合には、例えば、前記重合触媒を含んでいてもよい。
さらに、必要に応じて各種添加剤を含んでいてもよい。
かかる添加剤としては、例えば、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシランのようなシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤のような各種カップリング剤、カーボンブラック、ベンガラのような着色剤、ポリエチレンワックス、高級脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、ケトン・アミン類、水素硬化油のような合成ワックス、パラフィンワックス、モンタンワックスのような天然ワックス、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛のような高級脂肪酸およびその金属塩類、パラフィンのような離型剤、シリコーンオイル、シリコーンゴムのような低応力化成分、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、フォスファゼンのような難燃剤、酸化ビスマス水和物のような無機イオン交換体、内部離型剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせたものが用いられる。
また、リグニン樹脂組成物が離型剤を含む場合、離型剤の含有量は、リグニン誘導体100質量部に対して0.01〜10質量部であるのが好ましく、0.1〜5質量部であるのがより好ましい。なお、離型剤の含有量が前記未満である場合、リグニン樹脂組成物を成形型に充填して成形したとき、離型性が不十分となるおそれがあり、一方、離型剤の含有量が前記上限値を上回る場合、リグニン樹脂組成物の硬化性が低下するおそれがある。
<リグニン樹脂成形材料>
本発明のリグニン樹脂成形材料は、本発明のリグニン樹脂組成物と充填材とを含むものであって、樹脂成形材料となるものである。
このようなリグニン樹脂成形材料は、溶融粘度が低く成形性に富んでいるとともに、硬化後の機械的特性に優れたものとなる。このため、寸法精度および機械的特性の高い樹脂成形品が得られる。
充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、クレー、アルミナ、マイカ、ガラス繊維のような無機充填材、木粉、パルプ、粉砕布、熱硬化性樹脂硬化物粉のような有機充填材等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
この場合、充填材の含有量は、樹脂材料100質量部に対して、10〜900質量部であるのが好ましく、20〜500質量部であるのがより好ましい。
<リグニン誘導体の製造方法>
次に、本発明のリグニン樹脂組成物に用いられるリグニン誘導体の製造方法の実施形態について説明する。
本発明のリグニン誘導体の製造方法は、[1]バイオマスを溶媒存在下におき、これらを高温高圧下で分解処理する第1の工程と、[2]第1の工程により得られた処理物中の固形成分を極性溶媒で処理し、極性溶媒に対する不溶分と溶解液とを分離する第2の工程と、[3]溶解液を乾燥させ、溶質を回収する第3の工程と、[4]回収した溶質と、第2の工程で分離した不溶分の一部と、を混合し、リグニン誘導体を得る第4の工程と、を有する。以下、各工程について順次説明する。
[1]
まず、バイオマスを溶媒存在下におき、高温高圧下で分解処理する(第1の工程)。バイオマスとは、前述したように植物または植物の加工品であるが、この植物としては、例えば、ブナ、白樺、ナラのような広葉樹、スギ、マツ、ヒノキのような針葉樹、竹、稲わらのようなイネ科植物、椰子殻等が挙げられる。
そして、分解処理にあたり、バイオマスをブロック状、チップ状、粉末状等に粉砕しておくことが好ましい。その場合、粉砕後の大きさが100μm〜1cm程度であるのが好ましく、200〜1000μm程度であるのがより好ましい。このような大きさのバイオマスを用いることにより、液中でのバイオマスの分散性を高めるとともに、バイオマスの分解処理を効率よく行うことができる。
第1の工程において用いる溶媒としては、例えば、水の他、メタノール、エタノールのようなアルコール類、フェノール、クレゾールのようなフェノール類、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル類、アセトニトリルのようなニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミドのようなアミド類等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合溶媒が用いられる。
また、溶媒としては特に水が好ましく用いられる。水を用いることにより、リグニン誘導体の意図しない変性が抑制されるとともに、分解処理に伴って発生する廃液が水性であることから、環境負荷を最小限に抑えることができる。溶媒の使用量としては、バイオマスに対して多いほどよいが、好ましくはバイオマスに対して1〜20質量倍程度であるのが好ましく、2〜10質量倍程度であるのがより好ましい。
次に、溶媒存在下においたバイオマスを高温高圧下で分解処理する。これにより、バイオマスは、リグニン、セルロース、ヘミセルロース、およびそれらの分解物やその他の反応物等に分解される。
高温高圧環境の生成においては、オートクレーブのような耐圧容器が用いられる。また、この耐圧容器としては、加熱手段や撹拌手段を備えているものが好ましく用いられ、高温高圧下でバイオマスを撹拌するようにするのが好ましい。また、必要に応じて容器内の温度など圧力に影響を与える要因とは独立に加圧する手段を備えていてもよい。かかる手段としては、例えば、容器内にアルゴンガス等の不活性ガスを導入する手段等が挙げられる。
分解処理における条件は、処理温度が150〜400℃であるのが好ましく、180〜350℃であるのがより好ましく、220〜320℃であるのがさらに好ましい。処理温度が前記範囲内であれば、分解後に得られるリグニン誘導体の分子量を最適化することができる。すなわち、第1のリグニン誘導体と第2のリグニン誘導体の比率が最適化され、流動性と硬化後の機械的特性とを両立するリグニン樹脂組成物が得られる。
また、分解処理における処理時間は、480分以下であるのが好ましく、30〜360分であるのがより好ましい。処理時間が前記範囲内であれば、分解後に得られるリグニン誘導体の芳香族プロトンと脂肪族プロトンの比率が適切な値となり、かつ、リグニン樹脂組成物の流動性と硬化後の機械的特性とを高度に両立させることができる。
さらに、分解処理における圧力は、1〜40MPaであるのが好ましく、1.5〜25MPaであるのがより好ましく、3〜20MPaであるのがさらに好ましい。圧力が前記範囲内であれば、バイオマスの分解効率を格段に高めることができ、その分、処理時間の短縮化を図ることができる。
なお、溶媒中には、必要に応じて、分解処理を促進する触媒を添加するようにしてもよい。この触媒としては、例えば、炭酸ナトリウムのような無機塩基類や過酸化水素のような酸化性物質等が挙げられる。これらの触媒の添加量は、溶媒中の濃度で0.05〜10質量%程度であるのが好ましく、0.1〜5質量%程度であるのがより好ましい。
さらに、分解工程の前処理として、バイオマスと前記溶媒とを十分に撹拌し、両者をなじませる工程を行うのが好ましい。これにより、バイオマスの分解を特に最適化することができる。撹拌温度は、0〜150℃程度であるのが好ましく、10〜130℃程度であるのがより好ましい。また、撹拌時間は、1〜120分程度であるのが好ましく、5〜60分程度であるのがより好ましい。さらに、撹拌方法としては、ボールミル、ビーズミル等の各種ミル、撹拌翼を備えた撹拌機等を用いた方法、ホモジナイザー、ジェットポンプなどによる水流攪拌を用いた方法等が挙げられる。
また、分解処理において用いる溶媒は、亜臨界または超臨界の状態(条件)で用いられるのが好ましい。亜臨界または超臨界の状態にある溶媒は、触媒等の特別な添加成分なしにバイオマスの分解処理を促進することができる。このため、煩雑な分離プロセスを用いずに、バイオマスを短時間で分解処理することが可能となり、リグニン誘導体の製造コストの低減および製造工程の簡略化を図ることができる。
一例として、水の臨界温度は約374℃、臨界圧力は約22.1MPaである。
[2]
次に、耐圧容器内の処理物を濾過する。そして濾液を除去し、濾別した固形成分を回収する。そして、回収した固形成分を、リグニンが可溶な溶媒に浸漬する。リグニンが可能な溶媒に浸漬した固形成分は、溶媒に溶解する成分(可溶分)と溶媒に不溶な成分(不溶分)とに分離する(第2の工程)。
リグニンが可溶な溶媒としては、各種極性溶媒が用いられ、特にメタノール、エタノール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類を含むものが好ましく用いられる。これらの極性溶媒を用いることにより、回収した固形成分から、極性溶媒に溶解するリグニン誘導体とこの極性溶媒に不溶なリグニン誘導体とを分離して抽出することができる。
浸漬時間は、特に限定されないが、1〜48時間程度であるのが好ましく、2〜30時間程度であるのがより好ましい。また、浸漬時に溶媒の沸点以下で加温することも可能である。
[3]
次に、浸漬工程により得られた処理物を濾過する。そして濾液(溶解液)からリグニンが可溶な溶媒を留去し、乾燥させた溶質(可溶分)を回収する(第3の工程)。
一方、濾過により、処理物から不溶分も回収される。
[4]
次に、回収した溶質と、第2の工程において分離させた不溶分の一部と、を混合する。これにより、回収した溶質が第1のリグニン誘導体であり、第2の工程において分離させた不溶分の一部が第2のリグニン誘導体であるリグニン誘導体が得られる(第4の工程)。
なお、このように極性溶媒で処理し、可溶分と不溶分とに分けた後、再び混合するようにしたことで、リグニン誘導体以外の成分の含有率を低下させることができる。このような成分として、例えば極性溶媒に不溶であるセルロース等が挙げられる。セルロースは、前述した工程において、亜臨界水のような高温高圧下で分解して溶媒中に溶解し、固形成分であるリグニン誘導体と分離させるが、一部、完全に溶解せずに固形成分に混入する未分解セルロースが存在する。このような未分解セルロースは、極性溶媒に対して不溶であることから、第2のリグニン誘導体に混入して回収されることとなる。
本発明では、第2の工程において分離させた不溶分の一部を、第2の工程において分離させた可溶分に混合するようにしたため、このような分離、再混合を経ない場合に比べて、最終的に得られるリグニン樹脂組成物における未分解セルロース等の含有量を減少させることができる。その結果、リグニン誘導体の含有量が相対的に上昇するため、リグニン樹脂組成物において硬化後の成形体の吸湿性低下や耐熱性のさらなる向上を図ることができる。
また、極性溶媒を用いることにより、第1のリグニン誘導体と第2のリグニン誘導体とが凝集し、絡み合っている場合でも、これらを確実に分離することができる。したがって、極性溶媒中で分離させた第1のリグニン誘導体と第2のリグニン誘導体とを再混合することにより、リグニン樹脂組成物中におけるリグニン誘導体の空間的な分子量分布の均一化を図ることができる。
なお、リグニン二次誘導体を得る際には、抽出されたリグニン誘導体に対して反応性官能基を含む化合物を接触させることにより、リグニン誘導体に反応性官能基を導入することができる。
反応性官能基を導入する方法としては、例えば、リグニン誘導体と反応性官能基を含む化合物とを混合する方法が用いられ、混合後、必要に応じて触媒等を添加するようにしてもよい。
具体的には、エポキシ基を導入する場合、リグニン誘導体とエピクロロヒドリンと溶媒とを混合し、これに減圧還流下で水酸化ナトリウム等の塩基触媒を添加すればよい。
また、ビニル基を導入する場合、リグニン誘導体とハロゲン化アリルまたはハロゲン化ビニルベンジル等のビニル基を含むハロゲン化合物と溶媒とを混合し、これに加熱攪拌下で水酸化ナトリウム等の塩基触媒を添加すればよい。
また、エチニル基を導入する場合、リグニン誘導体とハロゲン化プロパルギルまたはハロゲン化フェニルアセチレン等のエチニル基を含むハロゲン化合物と溶媒とを混合し、これに加熱攪拌下で水酸化ナトリウム等の塩基触媒を添加すればよい。
また、シアネート基を導入する場合、リグニン誘導体とハロゲン化シアネートと溶媒とを混合し、これに加熱攪拌下で水酸化ナトリウム等の塩基触媒を添加すればよい。
また、マレイミド基を導入する場合、リグニン誘導体とパラクロロニトロベンゼンとを混合する。これにより、リグニン誘導体のフェノール性水酸基にクロロ基が反応し、エーテル結合を介して結合したポリニトロ化リグニンが得られる。次いで、ポリニトロ化リグニンを還元することで、ポリアミノ化リグニンに変換され、さらに無水マレイン酸と反応させることで、マレイミド基が導入される。
また、イソシアネート基を導入する場合、リグニン誘導体と無水マレイン酸とを混合することで、リグニン誘導体中の水酸基がカルボキシル基に変換される。その後、混合物をジフェニルリン酸アジド存在下で加熱することにより、イソシアネート基が導入される。
なお、反応性官能基を導入するのは、リグニン誘導体のうち、極性溶媒に溶解する第1のリグニン誘導体と極性溶媒に不溶な第2のリグニン誘導体の双方であっても、いずれか一方であってもよい。
<リグニン樹脂組成物の製造方法>
次に、本発明のリグニン樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明のリグニン樹脂組成物を製造する方法の1つとしては、リグニン誘導体と架橋剤とを含む組成物を有機溶媒に溶解することによりワニスとして調製する方法が挙げられる。
有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、キノリン、シクロペンタノン、キシレン、m−クレゾール、クロロホルム等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。また、ワニス中の固形分濃度は、特に制限されないが、一例として30〜85質量%程度とされ、好ましくは40〜75質量%程度とされる。
なお、必要に応じて、希釈剤を添加するようにしてもよい。希釈剤としては、例えば、ブチルセロソルブ、カルビトール、酢酸ブチルセロソルブ、酢酸カルビトール、エチレングリコールジエチルエーテル、α−テルピネオール等の比較的沸点の高い有機溶媒が挙げられる。
さらには、その他の添加剤を含んでいてもよい。
かかる添加剤としては、例えば、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシランのようなシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤のような各種カップリング剤、カーボンブラック、ベンガラのような着色剤、ポリエチレンワックス、高級脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、ケトン・アミン類、水素硬化油のような合成ワックス、パラフィンワックス、モンタンワックス、ステアリン酸のような天然ワックス、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛のような高級脂肪酸およびその金属塩類、パラフィンのような離型剤、シリコーンオイル、シリコーンゴムのような低応力化成分、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、フォスファゼンのような難燃剤、酸化ビスマス水和物のような無機イオン交換体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせたものが用いられる。
なお、上記組成物を有機溶媒に溶解した後、スリーワンモーター等を用いた混合機により混合してワニスを調製することができる。
また、上記組成物を有機溶媒に溶解せずに、熱板や、加圧ニーダー、ロール、コニーダー、二軸押し出し機等の混練機等を用い、得られた混合物が硬化する温度未満で加熱溶融混練してもよい。具体的な加熱温度は、選択する組成に応じて若干異なるが、好ましくは50〜130℃程度とされる。得られた混合物を冷却したものを粉砕することにより、顆粒状のリグニン樹脂成形材料が得られる。
また、樹脂組成物中に前述した充填材を添加するようにしてもよい。
このようなリグニン樹脂組成物およびリグニン樹脂成形材料は、加熱成形されることにより、リグニン誘導体が架橋剤で架橋され、硬化する。これにより、樹脂製品(樹脂成形品)が得られる。
このプロセスでは、脱アルコール反応や脱水反応に伴う縮合反応により、架橋剤とリグニン誘導体の架橋反応点とが架橋するものと考えられる。
さらに、リグニン誘導体がメチロール化されている場合、脱水縮合反応が生じ、架橋剤とメチロール基とが架橋するとともに、架橋剤同士やリグニン誘導体同士が自己縮合する。
以上のような反応により、リグニン樹脂組成物およびリグニン樹脂成形材料が硬化する際、上記反応に伴う揮発成分の発生が穏やかであるため、膨れやボイド等の不具合を効果的に抑えることができる。
加熱成形時の温度は、100〜280℃程度であるのが好ましく、120〜250℃程度であるのがより好ましく、138〜182℃程度であるのがさらに好ましい。また、加圧しつつ加熱成形する場合、その圧力は、0.5〜20MPa程度であるのが好ましく、1〜10MPa程度であるのがより好ましく、6.5〜9.0MPa程度であるのがさらに好ましい。
以上、本発明について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、リグニン樹脂組成物やリグニン樹脂成形材料には任意の成分が添加されていてもよい。また、リグニン誘導体の製造方法では、任意の目的の工程が追加されていてもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.リグニン樹脂組成物および積層板の製造
(実施例1)
(1)リグニン樹脂組成物の調製
まず、水と杉のオガ粉に対し300℃、9MPaの亜臨界水下で30分間分解処理を行った。そして、得られた処理物を濾過し、濾別された固形成分を回収した。
次いで、固形成分をアセトンに浸漬し、アセトンに対する不溶分と可溶分とに分離させた。処理物を濾過し、濾別された溶解液と不溶分とをそれぞれ回収した。
次いで、溶解液を乾燥させ、溶質を回収した。
次いで、回収した溶質(第1のリグニン誘導体)と、先に回収していた不溶分(第2のリグニン誘導体)の5質量%と、を混合し、リグニン誘導体を得た。なお、第1のリグニン誘導体の含有率をAとしたとき、第2のリグニン誘導体の含有率は0.12Aであった。
次いで、得られたリグニン誘導体100質量部に対してヘキサメトキシメチルメラミン(東京化成品工業社製試薬一級)を40質量部添加したものをメタノールに溶解し、固形分40質量%のワニスを得た。なお、ヘキサメトキシメチルメラミンは架橋剤成分であり、上記式(7)で表される化合物(ただし、n=1)である。
(2)積層板の作製
次いで、晒しパルプ紙(坪量160g/m)に上記ワニスを含浸させ、加熱乾燥させた。これにより、リグニン樹脂量50質量%であるプリプレグを得た。
次いで、プリプレグを5枚積層し、温度150℃、圧力100kg/cmで30分間プレスすることにより積層板を得た。
(実施例2)
あらかじめ分離した不溶分の再添加量を、不溶分全体の10質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして積層板を得た。なお、第1のリグニン誘導体の含有率をAとしたとき、第2のリグニン誘導体の含有率は0.23Aであった。
(実施例3)
あらかじめ分離した不溶分の再添加量を、不溶分全体の20質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして積層板を得た。なお、第1のリグニン誘導体の含有率をAとしたとき、第2のリグニン誘導体の含有率は0.47Aであった。
(実施例4)
あらかじめ分離した不溶分の再添加量を、不溶分全体の30質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして積層板を得た。なお、第1のリグニン誘導体の含有率をAとしたとき、第2のリグニン誘導体の含有率は0.70Aであった。
(実施例5)
あらかじめ分離した不溶分の再添加量を、不溶分全体の40質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして積層板を得た。なお、第1のリグニン誘導体の含有率をAとしたとき、第2のリグニン誘導体の含有率は0.93Aであった。
(実施例6)
あらかじめ分離した不溶分の再添加量を、不溶分全体の50質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして積層板を得た。なお、第1のリグニン誘導体の含有率をAとしたとき、第2のリグニン誘導体の含有率は1.17Aであった。
(実施例7)
あらかじめ分離した不溶分の再添加量を、不溶分全体の70質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして積層板を得た。なお、第1のリグニン誘導体の含有率をAとしたとき、第2のリグニン誘導体の含有率は1.63Aであった。
(実施例8)
亜臨界水下での分解処理条件を180℃、3MPaに変更した以外は実施例2と同様にして積層板を得た。
(実施例9)
架橋剤成分をヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルに変更するとともに、添加量を表1に示すように変更した以外は、実施例2と同様にして積層板を得た。なお、ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルは、上記式(6)で表される化合物(ただし、n=1)である。
(実施例10)
架橋剤成分をペンタメトキシメチルメラミン(三和ケミカル社製MX−750LM)に変更するとともに、添加量を表1に示すように変更した以外は、実施例2と同様にして積層板を得た。なお、ペンタメトキシメチルメラミンは、下記式(11)で表される化合物である。
Figure 2013227469
(実施例11)
架橋剤成分をヘキサメチレンテトラミンに変更した以外は、実施例2と同様にして積層板を得た。なお、ヘキサメチレンテトラミンは、リグニン誘導体100質量部に対して10質量部の割合で添加した。
(実施例12)
ワニスに、加熱によりp−トルエンスルホン酸(pKa=1.7)を放出する化合物としてシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネートを2質量部添加した以外は、実施例2と同様にして積層板を得た。なお、シクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネートの酸放出温度は138℃である。
(実施例13)
ワニスに、加熱によりp−トルエンスルホン酸(pKa=1.7)を放出する化合物として4−ブチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネートを2質量部添加した以外は、実施例2と同様にして積層板を得た。なお、4−ブチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネートの酸放出温度は144℃である。
(実施例14)
抽出したリグニン誘導体をアルカリ水溶液中でホルムアルデヒドと接触させ、メチロール基が導入されたリグニン二次誘導体を得た。そして、このメチロール基が導入されたリグニン二次誘導体を用いてワニスを調製した以外は、実施例2と同様にして積層板を得た。
(実施例15)
まず、攪拌機および冷却管を備えた3つ口フラスコに、抽出したリグニン誘導体と、エピクロロヒドリンを導入し、100mmHg(1.3×10Pa)の圧力下で減圧還流しながら、20質量%の濃度の水酸化ナトリウム水溶液2gを30分かけて滴下した。その後、90分間減圧還流状態を保持して反応処理物を得た。
次いで、反応処理物から不溶分を濾過して取り除き、エピクロロヒドリン可溶部を単離した。そして、このエピクロロヒドリン可溶部からエピクロロヒドリンを留去し、乾燥させることで、エポキシ基が導入されたリグニン二次誘導体を得た。
その後、得られたリグニン二次誘導体を用いてワニスを調製した以外は、実施例2と同様にして積層板を得た。
(実施例16)
エピクロロヒドリンに代えてアリルプロミドを用いるようにし、ビニル基が導入されたリグニン二次誘導体を得た後、これを用いてワニスを調製するようにした以外は、実施例15と同様にして積層板を得た。
(実施例17)
ワニスに液状エポキシ樹脂を添加するようにした以外は、実施例2と同様にして積層板を得た。なお、エポキシ樹脂の添加量は、リグニン樹脂/エポキシ樹脂の比率(質量比)が70/30となるようにした。また、架橋剤として上記式(7)で表される化合物28質量部に加え、トリフェニルホスフィンを添加した。なお、トリフェニルホスフィンの添加量は、樹脂材料100質量部に対して1質量部とした。
(実施例18)
ワニスに液状フラン樹脂を添加するようにした以外は、実施例2と同様にして積層板を得た。なお、フラン樹脂の添加量は、リグニン樹脂/フラン樹脂の比率(質量比)が70/30となるようにした。
(実施例19)
極性溶媒をアセトンからメタノールに変更するとともに、あらかじめ分離した不溶分の再添加量を不溶分全体の15質量%に変更した以外は、実施例2と同様にして積層板を得た。なお、第1のリグニン誘導体の含有率をAとしたとき、第2のリグニン誘導体の含有率は0.35Aであった。
(実施例20)
(1)リグニン樹脂組成物の調製
まず、水と杉のオガ粉に対し300℃、9MPaの亜臨界水下で30分間分解処理を行った。そして、得られた処理物を濾過し、濾別された固形成分を回収した。
次いで、固形成分をアセトンに浸漬し、アセトンに対する不溶分と可溶分とに分離させた。処理物を濾過し、濾別された溶解液と不溶分とをそれぞれ回収した。
次いで、溶解液を乾燥させ、溶質を回収した。
次いで、回収した溶質(第1のリグニン誘導体)と、先に回収していた不溶分(第2のリグニン誘導体)の全部と、を混合し、リグニン誘導体を得た。なお、第1のリグニン誘導体の含有率をAとしたとき、第2のリグニン誘導体の含有率は2.00Aであった。
次いで、得られたリグニン誘導体100質量部に対してヘキサメトキシメチルメラミン(東京化成品工業社製試薬一級)を40質量部添加したものをメタノールに溶解し、固形分40質量%のワニスを得た。
(2)積層板の作製
次いで、実施例1と同様にして積層板を得た。
(実施例21)
極性溶媒をアセトンからメタノールに変更した以外は、実施例20と同様にして積層板を得た。
(実施例22)
亜臨界水下でのバイオマスの分解処理の温度を160℃、圧力を3MPaとした以外は、実施例2と同様にして積層板を得た。
(実施例23)
亜臨界水下でのバイオマスの分解処理の温度を330℃、圧力を9MPaとした以外は、実施例2と同様にして積層板を得た。
(実施例24)
架橋剤成分をニカラックMX−290(三和ケミカル製、上記式(3)で表される化合物のRをCHとしたものに相当。)に変更した以外は、実施例4と同様にして積層板を得た。
(実施例25)
架橋剤成分をニカラックMX−280(三和ケミカル製、上記式(4)で表される化合物のRをCHとしたものに相当。)に変更した以外は、実施例4と同様にして積層板を得た。
(実施例26)
架橋剤成分をニカラックMX−270(三和ケミカル製、上記式(5)で表される化合物のRをCHとしたものに相当。)に変更した以外は、実施例4と同様にして積層板を得た。
(実施例27)
架橋剤成分を下記式(12)で表される化合物に変更した以外は、実施例4と同様にして積層板を得た。
Figure 2013227469
(実施例28)
架橋剤成分を下記式(13)で表される化合物に変更した以外は、実施例4と同様にして積層板を得た。
Figure 2013227469
(実施例29)
架橋剤成分をキヌクリジンに変更した以外は、実施例4と同様にして積層板を得た。
(実施例30)
架橋剤成分をピジンに変更した以外は、実施例4と同様にして積層板を得た。
(比較例1)
(1)リグニン樹脂組成物の調製
まず、水と杉のオガ粉に対し300℃、9MPaの亜臨界水下で30分間分解処理を行った。そして、得られた処理物を濾過し、濾別された固形成分を回収した。
次いで、固形成分をアセトンに浸漬し、アセトンに対する不溶分と可溶分とに分離させた。処理物を濾過し、濾別された溶解液と不溶分とをそれぞれ回収した。
次いで、溶解液を乾燥させ、溶質を回収した。
次いで、回収した溶質(第1のリグニン誘導体)100質量部に対してヘキサメチレンテトラミンを10質量部添加したものをメタノールに溶解し、固形分40質量%のワニスを得た。
(2)積層板の作製
次いで、晒しパルプ紙(坪量160g/m)に上記ワニスを含浸させ、加熱乾燥させた。これにより、リグニン樹脂量50質量%であるプリプレグを得た。
次いで、プリプレグを5枚積層し、温度150℃、圧力9.8MPaで30分間プレスすることにより積層板を得た。
(比較例2)
(1)フェノール樹脂組成物の調製
ホルムアルデヒド(F)とフェノール(P)とを反応モル比(F/P)1.3で反応させて得られた脱水縮合型のレゾール型フェノール樹脂を得た。そして、これをそのままフェノール樹脂ワニスとした。
(2)積層板の作製
次いで、比較例1と同様にして積層板を得た。
(比較例3)
極性溶媒をアセトンからメタノールに変更した以外は、比較例1と同様にして積層板を得た。
以上、各実施例および各比較例における積層板の製造条件を表1〜3に示す。なお、表1〜3における略称は、以下に示す化合物に対応している。
HMMM:ヘキサメトキシメチルメラミン
HMMPME:ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテル
PMMM:ペンタメトキシメチルメラミン
HMTA:ヘキサメチレンテトラミン
CH4MBS:シクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート
4BCH4MBS:4−ブチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート
MX−290:ニカラックMX−290
MX−280:ニカラックMX−280
MX−270:ニカラックMX−270
2.リグニン誘導体の評価(NMR分析による評価)
各実施例および各比較例で得られたリグニン誘導体について、H−NMR分析による化学シフトのスペクトルを取得し、脂肪族プロトンに帰属する複数のピークの積分値に対する芳香族プロトンに帰属する複数のピークの積分値の割合を算出し、算出結果を表1〜3に示す。
3.樹脂溶融粘度の評価
各実施例および各比較例で使用した樹脂ワニスを減圧下50℃で脱溶媒して樹脂組成物の固形分を単離し、得られた固形分の150℃における溶融粘度を測定した。そして、以下に示す評価基準にしたがって評価した。評価結果を表1〜3に示す。
<溶融粘度の評価基準>
◎◎:最低溶融粘度が3Pa・s未満である
◎:最低溶融粘度が3Pa・s以上5Pa・s未満である
○:最低溶融粘度が5Pa・s以上15Pa・s未満である
△:最低溶融粘度が15Pa・s以上30Pa・s未満である
×:最低溶融粘度が30Pa・s以上である
なお、樹脂固形分の溶融粘度の測定には、アレス粘弾性測定装置(TAインスツルメンツジャパン社製)を用いた。また、治具としてφ20mmのパラレルプレートを用い、ギャップを1mmに設定した。そして、150℃において1Hzで歪みを変化させて歪み依存性を測定することにより測定した。
4.積層板の評価
各実施例および各比較例で得られた積層板について、JIS K 6911に準拠して曲げ強さを測定した。そして、比較例2で得られた積層板における曲げ強さを1としたときの各積層板における曲げ強さの相対値を、以下の評価基準にしたがって評価した。評価結果を表1〜3に示す。
<曲げ強さの評価基準>
◎◎:相対値が1.5以上である
◎:相対値が1.2以上1.5未満である
○:相対値が0.9以上1.2未満である
△:相対値が0.7以上0.9未満である
×:相対値が0.7未満である
5.成形体の評価
各実施例および各比較例で使用したリグニン樹脂組成物100質量部に、シリカ粉末(電気化学社製、平均粒径15μm)150質量部を配合し、得られた混合物を熱ロールにより温度90℃で5分間混練した。その後、シート状になった混練物を冷却し、さらに粉砕することにより、平均粒径3mmの顆粒状のリグニン樹脂成形材料を調製した。
次いで、得られたリグニン樹脂成形材料をタブレットマシンを用いてφ20mmのタブレットとした。次いで、トランスファー成形により175℃、6.9MPaで5分間成形し、平均厚さ1.6mmの板状の成形体を得た。
次いで、得られた成形体の外観を以下の評価基準にしたがって評価した。評価結果を表1〜3に示す。
<成形体の外観の評価基準>
◎:成形体の表面が平滑で、ひずみ、しわ、斑点が認められない。
○:成形体の表面に肉眼では分からない凹凸が認められる、または、ひずみ、しわ、斑点が1〜2個である。
△:成形体の表面に肉眼で分かる凹凸が認められる、または、ひずみ、しわ、斑点が3〜5個である。
×:成形体の表面に肉眼で分かる著しい凹凸が認められる、または、ひずみ、しわ、斑点が6個以上である。
Figure 2013227469
Figure 2013227469
Figure 2013227469
表1〜3から明らかなように、各実施例で得られた樹脂は、溶融粘度が低く、流動性に富んでいることが認められた。また、各実施例で得られた樹脂の溶融粘度は、そのほとんどが、比較例2で使用したフェノール樹脂の溶融粘度とほぼ同等であったことから、各実施例で得られた樹脂ワニスは、植物由来成分を含んでいるものの、比較的優れた流動性を有し、成形性等に優れた樹脂原料となり得ることが明らかとなった。
また、積層板の曲げ強さを評価したところ、樹脂の溶融粘度が低いものほど、積層板の曲げ強さが大きいことが認められた。この結果は、溶融粘度が低いことにより、芯材(パルプ紙)に対する樹脂ワニスの含浸性や成形時の層間接着性が向上し、硬化後の機械的強度と高めているからであると考えられる。
また、成形体の外観を評価したところ、樹脂の溶融粘度が低いものほど、成形体の外観が優れていることが認められた。この結果は、溶融粘度が低いことにより、成形材料の充填不良が抑えられ、成形性(形状転写性)が向上したためと考えられる。
なお、実施例4について、再混合率を100質量%に変更した場合、各評価結果はいずれも実施例20のものを下回った。
以上のことから、本発明によれば、流動性および硬化後の機械的特性に優れたリグニン樹脂組成物、および、成形性および硬化後の機械的特性に優れたリグニン樹脂成形材料が得られることが明らかとなった。

Claims (18)

  1. バイオマスを分解して得られたリグニン誘導体と、架橋剤と、を含むリグニン樹脂組成物であって、
    前記リグニン誘導体は、極性溶媒に溶解する第1のリグニン誘導体と、前記極性溶媒に不溶な第2のリグニン誘導体と、を含むことを特徴とするリグニン樹脂組成物。
  2. 前記架橋剤は、下記式(1)で表される化合物を含むものである請求項1に記載のリグニン樹脂組成物。
    Z−(CHOR) (1)
    [式(1)中のZはメラミン残基、尿素残基、グリコリル残基、イミダゾリジノン残基および芳香環残基のうちのいずれか1種である。また、mは2〜14の整数を表す。また、Rは独立して炭素数1〜4のアルキル基または水素原子である。ただし、−CHORは、メラミン残基の窒素原子、尿素残基の1級アミノ基の窒素原子、グリコリル残基の2級アミノ基の窒素原子、イミダゾリジノン残基の2級アミノ基の窒素原子および芳香環残基の芳香環の炭素原子のいずれかに直接結合している。]
  3. 前記化合物は、下記式(2)〜(5)のうちのいずれかで表されるものである請求項2に記載のリグニン樹脂組成物。
    Figure 2013227469
    [式(2)中、XはCHORまたは水素原子であり、Rは独立して炭素数1〜4のアルキル基または水素原子である。また、nは1〜3の整数を表す。]
    Figure 2013227469
    [式(3)中、Rは独立して炭素数1〜4のアルキル基または水素原子である。]
    Figure 2013227469
    [式(4)中、Rは独立して炭素数1〜4のアルキル基または水素原子である。]
    Figure 2013227469
    [式(5)中、Rは独立して炭素数1〜4のアルキル基または水素原子である。]
  4. 前記化合物は、下記式(6)または(7)で表される化合物である請求項3に記載のリグニン樹脂組成物。
    Figure 2013227469
    [式(6)中、nは1〜3の整数を表す。]
    Figure 2013227469
    [式(7)中、nは1〜3の整数を表す。]
  5. 前記架橋剤は、キヌクリジンおよびピジンのうちの少なくとも1種を含むものである請求項1に記載のリグニン樹脂組成物。
  6. 前記第1のリグニン誘導体および前記第2のリグニン誘導体は、バイオマスまたはその処理物を前記極性溶媒で処理したとき、前記極性溶媒に溶解するものの少なくとも一部を前記第1のリグニン誘導体とし、前記極性溶媒に不溶であるものの一部を前記第2のリグニン誘導体としたものである請求項1ないし5のいずれかに記載のリグニン樹脂組成物。
  7. 前記リグニン誘導体は、バイオマスを亜臨界水下で分解して得られたものである請求項1ないし6のいずれかに記載のリグニン樹脂組成物。
  8. 前記第1のリグニン誘導体の含有率をAとしたとき、前記第2のリグニン誘導体の含有率は、0.01A〜2Aである請求項1ないし7のいずれかに記載のリグニン樹脂組成物。
  9. 当該リグニン樹脂組成物は、さらに、温度に応じて前記架橋剤の架橋反応の有無または架橋反応の速度を異ならせる潜在性触媒を含む請求項1ないし8のいずれかに記載のリグニン樹脂組成物。
  10. 当該リグニン樹脂組成物は、さらに、加熱により酸性物質を放出する化合物を含む請求項1ないし9のいずれかに記載のリグニン樹脂組成物。
  11. 前記酸性物質を放出する化合物は、加熱により2以下の解離定数pKaを有する酸性物質を放出する化合物である請求項10に記載のリグニン樹脂組成物。
  12. 前記酸性物質を放出する化合物は、120〜150℃で加熱することにより2以下の解離定数pKaを有する酸性物質を放出する化合物である請求項11に記載のリグニン樹脂組成物。
  13. 前記酸性物質を放出する化合物は、芳香族スルホン酸シクロヘキシル類である請求項10ないし12のいずれかに記載のリグニン樹脂組成物。
  14. 前記芳香族スルホン酸シクロヘキシル類は、ベンゼンスルホン酸シクロヘキシル類である請求項13に記載のリグニン樹脂組成物。
  15. 前記ベンゼンスルホン酸シクロヘキシル類は、シクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、3−メチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、3,5−ジメチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、4−ブチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、2−ヒドロキシシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート及び4−ヒドロキシシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネートからなる群から選択される少なくとも1種である請求項14に記載のリグニン樹脂組成物。
  16. 請求項1ないし15のいずれかに記載のリグニン樹脂組成物と、充填材と、を含むことを特徴とするリグニン樹脂成形材料。
  17. バイオマスを溶媒存在下におき、これらを高温高圧下で分解処理する第1の工程と、
    前記第1の工程により得られた処理物中の固形成分を極性溶媒で処理し、前記極性溶媒に対する不溶分と溶解液とを分離する第2の工程と、
    前記溶解液を乾燥させ、溶質を回収する第3の工程と、
    前記回収した溶質と、前記不溶分の一部と、を混合し、リグニン誘導体を得る第4の工程と、を有することを特徴とするリグニン誘導体の製造方法。
  18. 前記極性溶媒は、ケトン類または低級アルコール類である請求項17に記載のリグニン誘導体の製造方法。
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