JP2015048359A - リグニン樹脂組成物、樹脂成形体および成形材料 - Google Patents

リグニン樹脂組成物、樹脂成形体および成形材料 Download PDF

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隆一 村田
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威俊 村井
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Abstract

【課題】本発明は、反応性が高く、さらに熱溶融性に優れるリグニン誘導体を提供する。【解決手段】リグニン誘導体を含む樹脂組成物であって、リグニン誘導体の構造中にフェノール構造が含まれ、かつ樹脂組成物に含まれる硫酸の含有量が2質量%未満であるリグニン樹脂組成物。前記リグニン誘導体は、バイオマスを水とフェノール構造物とを含む混合溶媒存在下で高温高圧下で分解して得られたリグニンであり、更に、リグニン誘導体の構造中に含まれるフェノール構造が、リグニン誘導体へのフェノール構造の付加であり、数平均分子量が300〜3000であるリグニン樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、リグニン樹脂組成物および樹脂成形体に関するものである。
樹皮、間伐材、建築廃材等の木質系廃材(バイオマス)は、これまでその多くが廃棄処分されている。しかしながら、地球環境保護が重要課題になりつつあり、その観点から、木質系廃材の再利用、リサイクルが検討され始めている。
一般的な木質の主要成分は、セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンである。このうち、約30%の割合で含まれるリグニンは、芳香環や、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基を豊富に含む構造を有しているため、樹脂原料としての利用が検討されている。
特許文献1には、約30%の割合で含まれるリグニンを、樹脂原料として利用する方法が記載されている。
また、特許文献1には、木粉にフェノール誘導体を溶解した溶媒を浸透させた後、溶媒を留去し、その後、残存した木粉に濃酸を添加することにより、フェノール誘導体により溶媒和されたリグニンを得る方法が開示されている。
しかしながら、上記のような方法で製造されたリグニン誘導体では、溶融性および溶解性が低いため、熱成形加工することが困難である。また、無機酸が大量に残るために例えば硫酸の場合は熱成形時に変色等の不具合が生じることがあり、また実用上問題がない程度まで精製する場合は、コストが高くつくといった問題があった。
特開2001−261839号公報
本発明の目的は、反応性が高く、さらに熱溶融性に優れるリグニン誘導体を提供することにある。また、亜臨界処理中にフェノール構造を添加することにより、上記特性に優れたリグニン誘導体を高収率で得られる製造法を提供することにある。
本発明は、以下の通りである。
(1)リグニン誘導体を含む樹脂組成物であって、リグニン誘導体の構造中にフェノール構造が含まれ、かつ樹脂組成物に含まれる硫酸の含有量が2質量%未満であることを特徴とするリグニン樹脂組成物
(2)前記リグニン誘導体は、バイオマスを分解して得られたものである(1)記載のリグニン樹脂組成物
(3)リグニン誘導体の構造中に含まれるフェノール構造が、リグニン誘導体へ付加されたものである(1)または(2)記載のリグニン樹脂組成物
(4)前記リグニン誘導体は、数平均分子量が300以上3000以下である(1)ないし(3)いずれか1項に記載のリグニン樹脂組成物
(5)前記リグニン誘導体の軟化点が、200℃以下である(1)ないし(4)いずれか1項に記載のリグニン樹脂組成物
(6)前記リグニン樹脂組成物に含まれる硫酸以外の無機酸が2質量%未満である(1)記載のリグニン樹脂組成物。
(7)リグニン誘導体の製造方法であって、(1)バイオマスを水とフェノール構造物とを含む混合溶媒存在下におき、これらを高温高圧下で分解処理して、分解処理物を得る分解工程と、(2)前記分解工程により得られた前記分解処理物からリグニン誘導体を、フェノール構造物溶液からフェノール構造物を留去して得る回収工程、もしくは分解処理物の不溶物から回収する工程と、を有することを特徴とするリグニン誘導体の製造方法。
(8)(1)ないし(6)いずれか1項に記載のリグニン樹脂組成物を硬化して得られることを特徴とする樹脂成形体
(9)(1)ないし(6)いずれか1項に記載のリグニン樹脂組成物と充填材とを含むことを特徴とする成形材料
本発明によれば、バイオマスに含まれるリグノセルロースを分解して、且つフェノール構造を導入することで、反応性を高く、熱溶融性に優れるリグニン誘導体を提供することが出来る。また、亜臨界処理中にリグノセルロースを分解してリグニンを得るが、さらにリグニン同士の再結合を防ぎ、フェノール構造を付加させること出来るため、上記特性に優れたリグニン誘導体を高い収率で得られる製造法を提供することができる。
本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意検討を重ねた結果、バイオマスに含まれるリグノセルロースを分解しつつ、且つフェノール構造を導入することで、反応性を高く、熱溶融性に優れるリグニン誘導体を提供することが出来ることに加え、亜臨界処理中にリグノセルロースを分解しつつ、リグニン同士の再結合を防ぎ、フェノール構造を付加させることで、上記特性に優れたリグニン誘導体を高い収率で得られる製造法を見出し、本発明を完成するにいたった。
以下、本発明のリグニン樹脂組成物、樹脂成形体および成形材料について好適実施形態につき説明する。
<リグニン樹脂組成物>
本発明のリグニン樹脂組成物は、バイオマスを分解して得られるリグニン誘導体を含むものであり、さらにフェノール構造を付加させたものである。
フェノール構造のリグニンへの付加は、バイオマスを分解して得られるリグニン誘導体にフェノール構造を有する化合物(以下、フェノール構造物と記載)の付加反応で行うことも可能であるが、簡便な方法としては、バイオマス分解に際して、バイオマスを水とフェノール構造物とを含む混合溶媒存在下におき、これらを高温高圧下で分解処理して、分解処理物を得る分解工程において、フェノール構造が付加されたリグニンを容易に作製することが出来る。
<リグニン誘導体>
まず、リグニン誘導体について説明する。リグニンは、セルロースおよびヘミセルロースとともに、植物体の骨格を形成する主要成分であり、かつ、自然界に最も豊富に存在する物質の1つである。リグニン誘導体は、フェノール誘導体を単位構造とする化合物であり、この単位構造は、化学的および生物学的に安定な炭素−炭素結合や炭素−酸素−炭素結合を有するため、化学的な劣化や生物的分解を受け難い。このため、リグニン誘導体は、樹脂原料として有用とされる。
本発明に用いられるリグニン誘導体は、バイオマスを分解して得られたものである。バイオマスとは、植物または植物の加工品であるが、これらは光合成の過程で大気中の二酸化炭素を取り込み固定化してなるものであるため、大気中の二酸化炭素の増加抑制に寄与している。このため、バイオマスを工業的に利用することによって、地球温暖化の抑制に寄与することができる。
本発明で用いられるバイオマスを分解してリグニン誘導体を得る処理方法としては、例えば、植物または植物加工品を、薬品処理する方法、加水分解処理する方法、水蒸気爆砕法、超臨界水処理法、亜臨界水処理法、機械的に処理する方法、パルプ製造法、などが挙げられる。環境負荷の点から、水蒸気爆砕法、超臨界水処理法、亜臨界水処理法、機械的に処理する方法が好ましい。得られるリグニン誘導体の純度の点から、水蒸気爆砕法、亜臨界水処理法が更に好ましい。
バイオマスを水とフェノール構造物とを含む混合溶媒存在下におき、これらを高温高圧下で分解処理して、分解処理物を得ることが出来る。この工程によって、バイオマスを、リグニン誘導体に分解することができる。バイオマスの分解工程の詳細については、後述する。
リグニン誘導体の具体例としては、下記式(1)で表わされるグアイアシルプロパン構造、下記式(2)で表わされるシリンギルプロパン構造、下記式(3)で表わされる4−ヒドロキシフェニルプロパン構造等が挙げられる。なお、針葉樹類からは主にグアイアシルプロパン構造が、広葉樹類からは主にグアイアシルプロパン構造およびシリンギルプロパン構造が、草本類からは主にグアイアシルプロパン構造、シリンギルプロパン構造および4−ヒドロキシフェニルプロパン構造がそれぞれ抽出される。


前記の様に得られた本発明におけるリグニン誘導体は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたポリスチレン換算の数平均分子量が300〜2500が好ましく、350〜2000であるものがより好ましく、400〜1800であるものがさらに好ましい。このような数平均分子量のリグニン誘導体は、その反応性(硬化性)と溶融性または溶解性とをより高度に両立するものとなる。したがって、硬化後の耐溶剤性と成形性とを高度に両立する樹脂組成物が得られる。
前記ゲル浸透クロマトグラフィーによって分子量を測定する方法の一例について説明する。
本発明におけるリグニン誘導体を溶媒に溶解させ、測定サンプルを調製する。このときに用いられる溶媒は、リグニン誘導体を溶解できるものであれば特に限定されるものではないが、ゲル浸透クロマトグラフィーの測定精度の観点から、例えば、テトラヒドロフランが好ましい。
次に、GPCシステム「HLC−8320GPC(東ソー製)」に、スチレン系ポリマー充填剤を充填した有機系汎用カラムである「TSKgelGMHXL(東ソー製)」、および「G2000HXL(東ソー製)」を直列に接続する。
このGPCシステムに、前記の測定サンプルを200μL注入し、40℃において、溶離液のテトラヒドロフランを1.0mL/minで展開し、示差屈折率(RI)、および紫外吸光度(UV)を利用して保持時間を測定する。別途作製しておいた標準ポリスチレンの保持時間と分子量の関係を示した検量線から、前記リグニン誘導体の数平均分子量を算出することができる。
検量線を作成するために使用する標準ポリスチレンの分子量としては、特に限定されるものではないが、例えば、数平均分子量が427,000、190,000、96,400、37,900、18,100、10,200、5,970、2,630、1,050および500の標準ポリスチレン(東ソー製)のものを用いることができる。
本発明のリグニン誘導体の軟化点は、200℃以下であることが好ましい。
下限を設けるとすれば、70℃以上であることが好ましく、80℃以上であるものがより好ましく、90℃以上であることがさらに好ましい。軟化点が200℃を上回ると、熱溶融性、流動性が悪く、成形ができない事がある。また、軟化点が前記下限値を下回ると、熱溶融性、流動性がありすぎて成形時にバリが多く発生し、製造時のロスが大きい事がある。また、前記下限を下回ると樹脂のハンドリング性が悪くなり成形時に不利となる。軟化点は、バイオマスの分解温度によってリグニン誘導体の平均分子量を制御することと、フェノール構造の種類を変化させること、リグニン誘導体の一部を前記その他の樹脂成分に置き換えることによって変化させることができる。
前記軟化点を測定する方法はJIS K2207に準じて、環球式軟化点試験機(メルテック(株)製ASP−MG2型)を用いた。
前記のように得られた、リグニン誘導体中に含まれる硫酸は、好ましくは2質量%未満、より好ましくは0.5質量%未満、さらに好ましくは0.1質量%未満、に抑えることが必要である。前記上限を超えた場合、硫黄原子を含むため、樹脂組成物の電気特性の低下を招き、また成形時の変色や、成型品の長期信頼性、金属との接触の際の腐食性に悪影響を及ぼすことがある。
硫酸以外の無機酸も同様に、好ましくは2質量%未満、より好ましくは0.5質量%未満、さらに好ましくは0.1質量%未満、に抑えることが望ましい。当該無機酸は、具体的には塩酸、硝酸、フッ化水素酸等の強酸である。
また、硫酸を含む無機酸は無機酸としてでも、無機酸イオンとして存在する場合があるが、どちらも2質量%未満に抑える必要がある。
<樹脂組成物の製造方法>
次に、本発明の樹脂組成物を製造する方法の1例について説明する。
本発明の樹脂組成物を製造する方法は、[1]バイオマスを溶媒存在下におき、これらを高温高圧下で分解処理する工程と、[2−a]処理物中の固形成分にリグニン誘導体が含まれる場合、固形成分を極性溶媒で処理し、極性溶媒に対する不溶分と溶解液とを分離する工程及び/または[2−b]処理物中の溶媒にリグニン誘導体が含まれる場合、リグニン誘導体を含む溶媒(溶解液)を固形成分から分離する工程と、[3][2−a]及び/または[2−b]の溶解液を乾燥させ、溶質(リグニン誘導体)を回収する工程と、必要に応じて[4]回収した溶質とその他の樹脂成分とを混合し、樹脂組成物を得る工程と、を有する。以下、各工程について順次説明する。
[1]分解工程
バイオマスを水とフェノール構造物とを含む混合溶媒存在下におき、これらを高温高圧下で分解処理して、分解処理物を得る分解工程について説明する。
この工程によって、バイオマスを、リグニン誘導体に分解することができる。
まず、バイオマスを水とフェノール構造物とを含む混合溶媒存在下におく。
前記バイオマスとは、リグニン誘導体を含む植物または植物の加工品である。植物としては、例えば、ブナ、白樺、ナラのような広葉樹、杉、松、桧のような針葉樹、竹、稲わらのようなイネ科植物、椰子殻等が挙げられる。
また、前記バイオマスの形状は、特に限定されないものの、ブロック状、チップ状、粉末状などを挙げられる。
さらに、前記バイオマスは、その大きさが100μm〜1cm程度であるのが好ましく、200〜1000μm程度であるのがより好ましい。このような大きさのバイオマスを用いることにより、液中でのバイオマスの分散性を高めるとともに、バイオマスの分解処理を効率よく行うことができる。
本発明における分解工程において用いる溶媒としては、水とフェノール構造とを含む混合溶媒が用いられる。このうち、水としては、例えば、超純水、純水、蒸留水、イオン交換水等が用いられる。
一方、前記混合溶媒に含まれるフェノール構造物は、フェノール性水酸基を有するものであれば特に限定されず、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、カルダノール、オイゲノール、グアイアコール、2-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、没食子酸、タンニン酸などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせたものを用いることができる。
前記フェノール構造物の分子量は、90以上300以下が好ましく、93以上280以下がさらに好ましい。前記フェノールの分子量が前記範囲の場合、後述する回収工程において、フェノール構造物溶液分として容易に得ることができるため、前記リグニン誘導体の回収を容易に行うことができる。一方で、ノボラックのようなフェノールの重合体も分解して付加することがあるため、分子量が前記範囲を超えても使用することが出来る。
前記分解工程におけるフェノール構造物の重量は、制限されないが、バイオマス100重量部に対して、10〜2000重量部であるのが好ましく、25〜1000重量部であるのがさらに好ましく、50〜300重量部であるのが最も好ましい。前記フェノールの重量が前記範囲の場合、フェノール構造物の導入による硬化物の強度の向上がみられ、また前記リグニン誘導体の収率を向上させることができる。
また、前記分解工程における水とフェノール構造物とを含む混合溶媒のフェノール構造物の含有量も制限はされないが、5〜75重量%であることが好ましく、15〜70重量%がさらに好ましい。前記フェノール構造物の含有量が前記範囲の場合、水とフェノール構造とを含む混合溶液において、水を主に含む溶液層とフェノール構造物とを主に含む溶液層に分離するため、フェノール構造物溶液層を回収することで、前記リグニン誘導体の回収を容易に行うことができる。
さらに、前記分解工程におけるフェノール構造物の重量が前記範囲である場合は、リグニン誘導体の回収を容易に行うことができるだけでなく、前記リグニン誘導体の収率も向
上させることができる。
前記バイオマスに含まれる天然リグニンの分解は、前記天然リグニンに存在するベンジルアリールエーテルの開裂反応により進行すると推察される。ここで、水によって前記天然リグニンを分解させた場合、開裂反応によって前記天然リグニンに生じた活性種は、前記天然リグニン分子内で再結合することによって、得られた前記リグニン誘導体は高分子量化し不溶分として得られる場合があり、不溶化した前記リグニン誘導体を回収するにはコストがかかるおそれがあった。
しかし、水とフェノール構造とを含む混合溶媒によって前記バイオマスを分解させる場合、前記天然リグニンに存在するベンジルアリールエーテルの開裂反応によって前記天然リグニンに生じた活性種と前記フェノール構造とが反応し、低分子量化した前記リグニン誘導体が得られる。このため前記リグニン誘導体の収率も向上させることができる。
また、前記混合溶媒は、水とフェノール構造物以外に、その他の溶媒を含んでいてもよい。前記混合溶媒におけるその他の溶媒の含有量は、水とフェノール構造物の各々より少なく、かつ、前記混合溶媒の総量の10質量%以下が好ましく、5質量%以下であるのがより好ましい。その他の溶媒の含有量が前記範囲の場合、前記分解工程におけるバイオマスの分解を損なうことなく、後述する分離工程でのリグニン誘導体を含むフェノール構造物溶液分の回収を容易にすることができる。
その他の溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンのような環状エーテル類、アセトニトリルのようなニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドンのようなアミド類、塩化メチレン、クロロホルムのようなハロゲン化アルキル類等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせたものを用いることができる。
このような混合溶媒存在下においた前記バイオマスを高温高圧下で分解処理する(分解工程)ことによって、前記バイオマスは、リグニン誘導体に分解される。
高温高圧環境の生成においては、高温高圧に耐えうる容器であれば特に制限はないが、オートクレーブのような耐圧容器を用いることができる。また、この耐圧容器としては、加熱手段や撹拌手段を備えているものが好ましく用いられ、高温高圧下でバイオマスを撹拌する等の機械的エネルギーを加えられることが好ましい。また、必要に応じて容器内の温度など圧力に影響を与える要因とは独立に加圧する手段を備えていてもよい。かかる手段としては、例えば、容器内に窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスを導入する手段等が挙げられる。
分解処理における条件は、処理温度が150〜400℃であるのが好ましく、180〜350℃であるのがより好ましく、220〜320℃であるのがさらに好ましい。処理温度が前記範囲内であれば、分解後に得られるリグニン誘導体の分子量を最適化することができる。これにより、樹脂組成物の成形性と硬化後の耐溶剤性とをより高度に両立させることができる。
また、分解処理における処理時間は、処理に用いる装置により、適切な処理時間を用いてもよい。例えば用いる装置がオートクレーブであるならば、480分以下であるのが好ましく、15〜360分であるのがより好ましい。処理時間が480分以上であれば、熱エネルギーコストがかかってしまうため、生産コストが上がってしまう。処理時間が15分より短くても問題はないが、装置によっては伝熱が不十分でバイオマスの分解が不十分なときがある。
さらに、分解処理における圧力は、1〜40MPaであるのが好ましく、1.5〜25MPaであるのがより好ましく、3〜20MPaであるのがさらに好ましい。圧力が前記範囲内であれば、バイオマスの分解効率を格段に高めることができ、その分、処理時間の短縮化を図ることができる。なお、必要に応じて、アルゴンガス等により耐圧容器内を加圧して圧力を高めるようにしてもよい。
なお、分解工程の前処理として、バイオマスと前記溶媒とを十分に撹拌し、両者をなじませる工程を行うのが好ましい。これにより、バイオマスの分解を特に最適化することができる。撹拌温度は、0〜150℃程度であるのが好ましく、10〜130℃程度であるのがより好ましい。また、撹拌時間は、1〜120分程度であるのが好ましく、5〜60分程度であるのがより好ましい。さらに、撹拌方法としては、ボールミル、ビーズミル等の各種ミル、撹拌翼を備えた撹拌機等を用いた方法、ホモジナイザー、ジェットポンプなどによる水流攪拌を用いた方法等が挙げられる。
また、溶媒中には、必要に応じて、分解処理を促進する触媒、酸化剤を添加するようにしてもよし、原料となるバイオマスに含まれていてもよい。この触媒としては、例えば、炭酸ナトリウムのような無機塩基類、酢酸、ギ酸のような無機酸類等が挙げられ、酸化剤としては、過酸化水素等が挙げられる。これらの触媒および酸化剤の添加量は、水溶媒中の濃度で0.1〜10質量%程度であるのが好ましく、0.5〜5質量%程度であるのがより好ましい。
ただし、無機酸については、前述の通り、リグニン誘導体中に含まれる無機酸を2%未満に抑えることが必要であるため、水溶媒中の濃度で好ましくは2質量%未満であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%未満が好ましく、さらに好ましくは0.2質量%未満であることが好ましい。
なお、撹拌温度としては、0〜150℃程度であるのが好ましく、10〜130℃程度であるのがより好ましい。
また、撹拌時間としては、1〜120分程度であるのが好ましく、5〜60分程度であるのがより好ましい。
さらに、撹拌方法としては、ボールミル、ビーズミル等の各種ミル、撹拌翼を備えた撹拌機等を用いた方法、ホモジナイザー、ジェットポンプなどによる水流攪拌を用いた方法等が挙げられる。
また、分解処理において用いる溶媒は、亜臨界または超臨界の状態(条件)で用いられるのが好ましい。亜臨界または超臨界の状態にある溶媒は、触媒等の特別な添加成分なしにバイオマスの分解処理を促進することができる。このため、煩雑な分離プロセスを用いずに、バイオマスを短時間で分解処理することが可能となり、リグニン誘導体の製造コストの低減および製造工程の簡略化を図ることができる。
一例として、水の臨界温度は約374℃、臨界圧力は約22.1MPaである。
[2−a]
耐圧容器内の処理物を濾過する。そして濾液を除去し、濾別した固形成分を回収する。そして、回収した固形成分を、リグニンが可溶な溶媒に浸漬する。リグニンが可溶な溶媒に浸漬した固形成分をさらに濾過することにより、溶媒に溶解する成分(可溶分)と溶媒に不溶な成分(不溶分)とに分離する。
リグニンが可溶な溶媒としては、各種極性溶媒が用いられ、特にメタノール、エタノール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類を含むものが
好ましく用いられる。これらの極性溶媒を用いることにより、回収した固形成分から、極性溶媒に溶解するリグニン誘導体と極性溶媒に不溶なリグニン誘導体とを分離して抽出することができる。
浸漬時間は、特に限定されないが、1〜48時間程度であるのが好ましく、2〜30時間程度であるのがより好ましい。また、浸漬時に溶媒の沸点以下で加温することも可能である。
[2−b]
耐圧容器内の処理物を濾過する。そして固形成分を除去し、濾別した濾液(溶解液)を回収する。なお、固形成分が少量の場合、濾過をしなくてもかまわない。
固形成分に濾液が多く残存する場合は、前記各種極性溶媒で洗浄してもよい。これらの極性溶媒を用いることにより、リグニン誘導体を多く含む濾液を固形成分から完全に分離し回収することができる。
[3]
次に、分離工程により得られた濾液(溶解液)からリグニンが可溶な溶媒を留去し、乾燥させた溶質(リグニン誘導体)を回収する。
特に[2−b]で得られた濾液(溶解液)には2種類以上の溶媒が含まれている。
リグニン誘導体が2種類以上の溶媒に対して均一に分散している場合は、まとめて溶媒を留去することが好ましい。
濾液(溶解液)が、リグニン誘導体を含む層と、リグニン誘導体を含まない層とに相分離している場合は、前記リグニン誘導体を含まない層を分離することにより、リグニン誘導体を含む溶液のみを回収してから、溶媒を留去することが好ましい。
前記リグニン誘導体を含む溶液のみを回収する方法としては、例えば上澄み溶液を分離する方法や、分液漏斗を用いて分離する方法があるが、これらに限定されたものではない。
溶媒を留去する方法として、例えば減圧して乾燥する(減圧乾燥)方法や、良溶媒と貧溶媒を用いてリグニン誘導体を再沈殿させる方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
前記減圧乾燥方法において、減圧乾燥温度は留去する溶媒に合わせた温度にすることが好ましい。分解処理に用いる溶媒は、高沸点のもので210℃以下である。したがって、減圧乾燥温度は40〜250℃が好ましく、50〜230℃がより好ましい。
減圧乾燥における時間は、特に限定されないが、0.5〜48時間程度であるのが好ましく、1〜24時間程度であるのがより好ましい。
有効な減圧乾燥の温度と時間は、乾燥するスケールによっても異なる。用いる減圧乾燥機によって最適な温度と時間を選択すればよい。
減圧乾燥における圧力は、0.1〜60kPaが好ましく、0.5〜50kPaがより好ましい。
前記リグニン誘導体を再沈殿させる方法において、良溶媒としてはメタノール、アセトン、テトラヒドロフランなど、貧溶媒としてはジエチルエーテル、トルエン、ヘキサンなどが挙げられるが、これらに限定されたものではない。
(リグニン誘導体の説明)
なお、リグニン二次誘導体を含む樹脂組成物を得る際には、抽出されたリグニン誘導体に対して反応性官能基を含む化合物を接触させることにより、リグニン誘導体に反応性官能基を導入するようにしてもよい。
反応性官能基を導入する方法としては、例えば、リグニン誘導体と反応性官能基を含む化合物とを混合する方法が用いられ、混合後、必要に応じて触媒等を添加するようにしてもよい。
具体的には、エポキシ基を導入する場合、リグニン誘導体とエピクロロヒドリンと溶媒とを混合し、これに減圧還流下で水酸化ナトリウム等の塩基触媒を添加すればよい。
また、ビニル基を導入する場合、リグニン誘導体とハロゲン化アリルまたはハロゲン化ビニルベンジル等のビニル基を含むハロゲン化合物と溶媒とを混合し、これに加熱攪拌下で水酸化ナトリウム等の塩基触媒を添加すればよい。
また、エチニル基を導入する場合、リグニン誘導体とハロゲン化プロパルギルまたはハロゲン化フェニルアセチレン等のエチニル基を含むハロゲン化合物と溶媒とを混合し、これに加熱攪拌下で水酸化ナトリウム等の塩基触媒を添加すればよい。
また、シアネート基を導入する場合、リグニン誘導体とハロゲン化シアネートと溶媒とを混合し、これに加熱攪拌下で水酸化ナトリウム等の塩基触媒を添加すればよい。
また、マレイミド基を導入する場合、リグニン誘導体とパラクロロニトロベンゼンとを混合する。これにより、リグニン誘導体のフェノール性水酸基にクロロ基が反応し、エーテル結合を介して結合したポリニトロ化リグニンが得られる。次いで、ポリニトロ化リグニンを還元することで、ポリアミノ化リグニンに変換され、さらに無水マレイン酸と反応させることで、マレイミド基が導入される。
また、イソシアネート基を導入する場合、リグニン誘導体と無水マレイン酸とを混合することで、リグニン誘導体中の水酸基がカルボキシル基に変換される。その後、混合物をジフェニルリン酸アジド存在下で加熱することにより、イソシアネート基が導入される。
(架橋剤(A))
本発明の樹脂組成物は、各種成形法により成形する際に、架橋剤を用いることができる。
本発明の樹脂組成物に用いる前記架橋剤は、主としてリグニン誘導体のフェノール骨格と架橋し得るものであるため、フェノールノボラックに用いられる架橋剤で有れば用いることが出来るが、例えばキヌクリジン、ピジン、ヘキサメチレンテトラミン、レゾール樹脂、フラン樹脂、および下記式(7)で表される化合物を含む架橋剤(A)(以下、架橋剤(A)とも記す。)と、エポキシ化合物およびイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤(B)(以下、架橋剤(B)とも記す。)の内、少なくとも1種を含有することが好ましい。
前記架橋剤(A)は、キヌクリジン、ピジンおよびヘキサメチレンテトラミンのうちの少なくとも1種の化合物を含むものであってよい。このような架橋剤(A)を含む硬化物は、機械的強度に優れるとともに、耐久性および外観の高いものとなる。これは、キヌクリジン、ピジン、および、ヘキサメチレンテトラミンがリグニン誘導体を高密度かつ均一
に架橋し、均質で剛直な骨格を形成するからである。
なお、キヌクリジン、ピジン、および、ヘキサメチレンテトラミンにリグニン誘導体からのプロトンが付加すると、カルボカチオンが生じる。このカルボカチオンはリグニン誘導体に反応してメチレン結合を形成する。このようにして上述した均質で剛直な骨格が形成される。
一方、前記架橋剤(A)はキヌクリジン、ピジン、および、ヘキサメチレンテトラミンに代えて、またはこれらの化合物とともに、レゾール樹脂、フラン樹脂、および下記式(7)で表される化合物を含むものであってもよい。

[式(7)中のZはメラミン残基、尿素残基、グリコリル残基、イミダゾリジノン残基および芳香環残基のうちのいずれか1種である。また、mは2〜14の整数を表す。また、Rは独立して炭素数1〜4のアルキル基または水素原子である。ただし、−CHORは、メラミン残基の窒素原子、尿素残基の1級アミノ基の窒素原子、グリコリル残基の2級アミノ基の窒素原子、イミダゾリジノン残基の2級アミノ基の窒素原子および芳香環残基の芳香環の炭素原子のいずれかに直接結合している。]
また、前記架橋剤(A)に含まれるレゾール樹脂、フラン樹脂、および(7)で表わされる化合物は、自硬化性を有するとともに、リグニン誘導体との間で共架橋構造を形成し得るものである。このため、このような樹脂組成物を成形し硬化させてなる硬化物は、その特性がリグニン誘導体と前記架橋剤(A)に含まれるレゾール樹脂、フラン樹脂、および(7)で表わされる化合物との相溶性が良好であり均質性が高くなる。したがって、樹脂組成物の成形性と硬化物の歪みに対する耐性との両立という観点から配合比率の最適化を図ることができ、寸法精度および歪みに対する耐性に優れた樹脂成形体が得られる。
さらには、上記架橋剤(A)に含まれるレゾール樹脂、フラン樹脂、および(7)で表わされる化合物は架橋反応時における揮発成分の発生が穏やかであるため、揮発成分が硬化物の外部に放出されるのに伴って生じる膨れや亀裂等の不具合を抑えることができる。その結果、外観に優れた樹脂成形体が得られる。
なお、前記架橋剤(A)に含まれるフラン樹脂、および(7)で表わされる化合物は、樹脂組成物の成形性の向上に寄与する。これは、前記架橋剤(A)の融点が低く、加熱時に成形材料の粘性が低下すること、および、前記架橋剤(A)が比較的遅架橋性であり、加熱されたときに徐々に架橋反応が進むためであると考えられる。
得られた樹脂組成物は、後述するプリプレグ、積層板、及び成形材料のほか、木質建材、木質化粧板、熱可塑性樹脂への添加剤、ゴム組成物用の添加剤や補強材、摩擦材、鋳型用樹脂等の用途に対して、熱硬化性樹脂として用いることが出来る。
(架橋剤(B))
前記架橋剤(B)は、主としてリグニン誘導体の水酸基とエポキシ基またはイソシアネート基とが反応し、架橋し得るものである。リグニン誘導体と架橋することによって、耐
溶剤性を損なうことなく、歪みに対する耐性を向上させることができる。
前記架橋剤(B)のエポキシ化合物としては、1分子中にエポキシ基を有するモノマー、オリゴマーおよびポリマー全般を指す。
前記架橋剤(B)のエポキシ化合物に含まれるエポキシ基の数は、特に限定されず1個以上有していればよいが、前記樹脂組成物または前記樹脂成形体の耐溶剤性を向上させる観点から、2個以上有することが好ましい。
前記架橋剤(B)のエポキシ化合物としては、具体的には、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂といった芳香族を有するエポキシ化合物と、ポリエチレングリコール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、ヘキサンジオール型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、ペンタエリスリトール型エポキシ樹脂、グリセロール型エポキシ樹脂、ポリグリセロール型エポキシ樹脂、ソルビトール型エポキシ樹脂、大豆油由来エポキシ樹脂、亜麻仁油由来エポキシ樹脂エポキシ樹脂、米糠油由来エポキシ樹脂といった芳香族を有さないエポキシ化合物などが挙げられる。これらのうちの1種または2種以上の混合物を用いてもよい。これらのなかで、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびクレゾールノボラック型エポキシ樹脂がガラス転移温度などの耐熱性が優れる点で好ましい。また、これらのなかで、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、ペンタエリスリトール型エポキシ樹脂、グリセロール型エポキシ樹脂、ポリグリセロール型エポキシ樹脂、ソルビトール型エポキシ樹脂、亜麻仁油由来エポキシ樹脂が耐溶剤性に優れる点で好ましい。
また、前記架橋剤(B)のエポキシ化合物として、非石油由来の化合物を前記エポキシ化して得られた化合物を用いることもできる。前記架橋剤(B)のエポキシ化合物として、このような化合物を用いる場合、高い天然由来度も持つため、環境対応性に優れる観点から好ましい。
前記架橋剤(B)のイソシアネート化合物としては、芳香族を有さず、1分子中にイソシアネート基を有するモノマー、オリゴマーおよびポリマー全般を指す。
前記架橋剤(B)のイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の数は、特に限定されず1個以上有していればよいが、前記樹脂組成物または前記樹脂成形体の耐溶剤性を向上させる観点から、2個以上有することが好ましい。
具体的には、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4−4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2−4’−ジイソシアネート、ノルボルネンメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4−4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2−4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。これらのうちの1種または2種以上の混合物を用いてもよい。
前記イソシアネート化合物の具体例の中でも、ジフェニルメタン−4−4’−ジイソシ
アネート、ジフェニルメタン−2−4’−ジイソシアネートが、耐溶剤性の観点から好ましく、成形性を確保する観点からヘキサメチレンジイソシアネートがさらに好ましい。
前記架橋剤(B)の官能基当量は、架橋剤としての作用の点から、上限値は400が好ましく、架橋密度の点から250が更に好ましい。前記官能基当量が、前記上限値を超える場合、外観が損なわれるおそれがある。また、前記架橋剤(B)の官能基当量の下限値は、特に限定されるものではないが、実用上、50以上が好ましい。
樹脂組成物に二種類以上の架橋剤を含ませると、硬化後の機械的特性に優れるとともに、硬化物の耐久性および外観の向上に寄与することがある。これは、前記架橋剤(A)中に含まれる上記式(7)で表される化合物が多官能性の架橋点を有するだけでなく、前記架橋剤(B)も架橋点を形成することで、複数の異なる架橋構造を併せ持つためと考えられる。さらに複数の異なる架橋構造によって硬化物の歪みに対する耐性および耐久性(耐煮沸性等)が向上するとともに、膨れや亀裂等の発生が抑制されるため硬化物の外観も向上することとなる。
本願の樹脂組成物には前記架橋剤以外にも、後述の触媒、潜在性触媒、充填剤、および各種添加剤等を含むことが出来る。
(触媒)
本発明の成形材料は、触媒を含んでいてもよい。前記触媒は、樹脂組成物の架橋や硬化を促進できるものであれば種々のものを用いることができる。
前記架橋剤(B)がエポキシ化合物である場合、前記触媒としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールのようなイミダゾール類、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノナン−5−エン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミンのような3級アミン類、トリフェニルホスフィン、テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート等の一般的なエポキシ樹脂用触媒が挙げられる。
前記架橋剤(B)基がジイソシアネート化合物である場合、前期触媒としては、有機錫化合物、カルボン酸錫塩、カルボン酸鉛塩、カルボン酸ビスマス塩等が挙げられる。
前記触媒を添加する場合は、前記触媒の添加量は、樹脂組成物と架橋剤(A)と架橋剤(B)の合計含有量(J)100重量部に対し、0.01〜5.0重量部が好ましく、0.1〜2.5重量部がさらに好ましい。
また、後述するようにリグニン誘導体に反応性官能基が導入されている場合、さらにその反応性官能基の種類に応じた触媒を適宜選択して用いるようにしてもよい。
具体的には、反応性官能基がエポキシ基である場合、前記触媒としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールのようなイミダゾール類、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノナン−5−エン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミンのような3級アミン類、トリフェニルホスフィン、テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート等の一般的なエポキシ樹脂用触媒が挙げられる。
また、反応性官能基がイソシアネート基である場合、硬化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアミン系化合物等の一般的なイソシアネート樹脂用触媒が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
また、反応性官能基がビニル基である場合、硬化剤としては、例えば、ブチルリチウム、ナトリウムエトキシドのようなアニオン系重合開始剤、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル(BPO)のようなラジカル重合開始剤等の一般的なビニル基含有化合物の重合開始剤が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
また、反応性官能基がエチニル基である場合、硬化剤としては、例えば、5塩化モリブデン、5塩化タングステン、ノルボルナジエンロジウムクロリドダイマー等の一般的なエチニル基含有化合物の重合触媒が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
また、反応性官能基がマレイミド基である場合、硬化剤としては、例えば、BPOのようなパーオキサイド、前述したアニオン系重合開始剤等の一般的なマレイミド基含有化合物の重合開始剤が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
また、反応性官能基がシアネート基である場合、硬化としては、例えば、ナフテン酸コバルトのような金属触媒等の一般的なシアネート基含有化合物の重合触媒が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
触媒を添加する場合は、その触媒の添加量は、樹脂組成物と架橋剤(A)と架橋剤(B)の合計含有量(J)100重量部に対し、0.01〜5.0重量部が好ましく、0.1〜2.5重量部がさらに好ましい。
(潜在性触媒)
また、上記硬化剤に加え、温度に応じて架橋剤(A)の架橋反応の有無または架橋反応の速度を異ならせる潜在性触媒を含んでいてもよい。このような潜在性触媒を含むことにより、本発明の樹脂組成物は、加熱されたときに架橋剤(A)の架橋反応を開始させたり、あるいは、架橋反応の反応速度を高めたりすることができるものとなる。これにより、上記樹脂組成物を成形型のキャビティに充填する際には架橋反応を生じさせないあるいは反応速度が遅くなるようにし、成形が完了した時点で温度を上昇させ、架橋反応を生じさせたりあるいは反応速度を速くさせたりすることができる。その結果、キャビティに対して隙間なく成形材料を充填することができ、均質で歪みに対する耐性、耐久性および外観に優れた樹脂成形体が得られる。
上記潜在性触媒としては、例えば、加熱により酸性物質を放出する化合物が挙げられる。この酸性物質は、上記架橋剤(A)による架橋反応を促進させるよう作用する。これにより、加熱したときの硬化速度が速くなり、樹脂成形体の外観が向上するとともに製造効率を高めることができる。
また、加熱により酸性物質を放出する化合物は、加熱により2以下の解離定数pKaを有する酸性物質を放出する化合物であるのが好ましい。潜在性触媒としてこのような酸性物質が放出される化合物を含むことにより、架橋剤(A)による架橋反応を特に促進させることができる。
前記2以下の解離定数pKaを有する酸性物質としては、例えば、シュウ酸(pKa=1.3)、p−トルエンスルホン酸(pKa=1.7)等が挙げられる。
また、このような酸性物質を放出する化合物としては、例えば、シクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、2−メチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、3−メチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、4−メチルシクロ
ヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、4−ブチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、4−シクロヘキシルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、2,6−ジメチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、2,4−ジメチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、3,4−ジメチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、3,5−ジメチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、2−ヒドロキシシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、4−ヒドロキシシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、シクロヘキシル=4−ビフェニルスルホネート及び4,4’−ビシクロヘキシル=ビス(4−メチルベンゼンスルホネート)のようなベンゼンスルホン酸シクロヘキシル類、シクロヘキシル=1−ナフタレンスルホネート及びシクロヘキシル=2−ナフタレンスルホネートのようなナフタレンスルホン酸シクロヘキシル類といった各種の芳香族スルホン酸シクロヘキシル類等が挙げられる。このような芳香族スルホン酸シクロヘキシル類は、酸性物質を安定的に放出する一方、架橋剤(B)による架橋反応を阻害し難いことから、潜在性触媒として有用である。
また、これらの中でも特にベンゼンスルホン酸ヘキシル類が好ましく用いられ、さらには、シクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、3−メチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、3,5−ジメチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、4−ブチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、2−ヒドロキシシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、および4−ヒドロキシシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネートからなる群から選択される少なくとも一種がより好ましく用いられ、とりわけシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネートがさらに好ましく用いられる。これらのベンゼンスルホン酸ヘキシル類によれば、上記芳香族スルホン酸シクロヘキシル類がもたらす効果がより顕著なものとなる。
また、上述した化合物において酸性物質が放出される加熱温度は120〜150℃程度であるのが好ましい。このような温度範囲は、リグニン誘導体と、架橋剤(A)および架橋剤(B)とを含む樹脂組成物を硬化する処理の温度に非常に近いため、例えばこの温度範囲より低温で樹脂成形体を成形し、その後、この温度範囲まで昇温することによって、優れた成形性と硬化後の耐溶剤性とを高度に両立させることができる。
(充填剤)
充填剤としては、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラスのようなケイ酸塩、酸化チタン、アルミナのような酸化物、溶融シリカ(溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ)、結晶シリカのようなケイ素化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトのような炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムのような水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムのような硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムのようなホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素のような窒化物等の粉末、ガラス繊維、炭素繊維等の繊維片といった無機充填材の他、木粉、パルプ粉砕粉、布粉砕粉、熱硬化性樹脂硬化物粉、アラミド繊維のような有機充填材等が挙げられる。このうち、充填材としては、特に、金属酸化物、金属水酸化物、金属窒化物、ケイ素酸化物、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、木粉、パルプ粉砕粉、および布粉砕粉のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられ、これらの1種類以上を用いることができるが、これらに限定されない。これらの充填材は、樹脂組成物から製造された成形材料の膨張率を低くすることができる。
この場合、充填剤の含有量は、樹脂組成物100重量部に対して、10〜1000重量
部であるのが好ましく、20〜500重量部であるのがより好ましく、100〜450質量部であるのがさらに好ましい。充填材の含有率が前記下限値を下回ると、樹脂組成物から製造された樹脂成形体の膨張率を十分に低下させることができないおそれがある。一方、充填材の含有率が前記上限値を上回ると、充填材の割合が多すぎるため、樹脂組成物の成形性が低下するおそれがある。
また、充填材の平均粒径は、0.1〜500μm程度であるのが好ましく、0.2〜300μm程度であるのがより好ましい。充填材の平均粒径が前記範囲内であることにより、樹脂組成物から製造された樹脂成形体は、低膨張率と優れた成形性とを高度に両立するものとなる。なお、充填材の平均粒径とは、充填材の粒度分布において、体積の累積で50%の部分に分布する粉末の粒径を指す。
また、充填材の形状としては、例えば、フレーク状、樹枝状、球状、繊維状等が挙げられ、特に限定されない。
なお、充填材が繊維状の場合は、繊維径0.5〜100μm、繊維長1〜50mm程度であるのが好ましい。
(その他の添加剤)
本発明の樹脂組成物は、上記の成分以外に、必要に応じて、メトキシナトリウム、t−ブトキシカリウムのようなアルカリ金属塩、酢酸カルシウムのようなアルカリ土類金属塩、NA2O、K2Oのようなアルカリ金属酸化物、CAO、BAOのようなアルカリ土類金属酸化物といった硬化促進剤を含んでいてもよい。
さらに、必要に応じて各種添加剤を含んでいてもよい。
かかる各種添加剤としては、例えば、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシランのようなシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤のような各種カップリング剤、カーボンブラック、ベンガラのような着色剤、ポリエチレンワックス、高級脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、ケトン・アミン類、水素硬化油のような合成ワックス、パラフィンワックス、モンタンワックスのような天然ワックス、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛のような高級脂肪酸およびその金属塩類、パラフィンのような離型剤、シリコーンオイル、シリコーンゴムのような低応力化成分、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、フォスファゼンのような難燃剤、酸化ビスマス水和物のような無機イオン交換体、内部離型剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせたものが用いられる。
また、成形材料が離型剤を含む場合、離型剤の含有量は、樹脂組成物100質量部に対して0.01〜10質量部であるのが好ましく、0.1〜5質量部であるのがより好ましい。なお、離型剤の含有量が前記未満である場合、樹脂組成物や架橋剤を成形型に充填して成形したとき、離型性が不十分となるおそれがあり、一方、離型剤の含有量が前記上限値を上回る場合、樹脂組成物と架橋剤の硬化性が低下するおそれがある。
<プリプレグ>
本発明のプリプレグは、本発明の樹脂組成物を、紙や布帛等の芯材に含浸又は塗工し、Bステージ化して得られるものである。本発明のプリプレグは、上記の熱硬化性樹脂組成物を、シート状補強基材に含浸・塗工し、風乾や加熱等により半硬化(Bステージ化)して製造することができる。
このプリプレグにより、機械的特性、耐久性および外観に優れた、後述する積層板を製造することができる。芯材としては、例えば、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙、リンター
紙、板紙、石膏ボード用原紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、和紙等の各種紙、ガラス繊維、石綿繊維、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭素繊維、金属繊維、鉱物繊維のような無機質繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維のような合成樹脂繊維または天然繊維等の各種繊維の不織布または織布等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の複合体が用いられる。
通常、20〜200℃の温度で0.1〜20時間加熱乾燥し、半硬化(Bステージ化)させて、本発明のプリプレグを得ることができる。
<積層板>
本発明の積層板は、前述の樹脂組成物又はプリプレグを用いて積層成形して得られたものである。例えば、プリプレグを1〜20枚重ね、その片面又は両面に銅及びアルミニウム等の金属箔を配置した構成で積層成形することにより製造することができる。金属箔は、積層板で用いるものであれば特に制限されない。
成形条件は、電気絶縁材料用積層板及び多層板の手法が適用でき、例えば、単段プレス、多段プレス、多段真空プレス、連続成形機等を使用し、温度100〜250℃、圧力0.2〜10MPa、加熱時間0.1〜5時間の範囲で成形することができる。
また、本発明のプリプレグと内層用配線板とを組合せ、積層成形して、多層板を製造することもできる。
<成形材料>
次に、本発明の樹脂組成物を含む成形材料について説明する。成形材料は成形品を得るための材料である。
本発明の樹脂組成物を含む成形材料を成形して成形品を得る場合、樹脂組成物以外に触媒、潜在性触媒、充填剤、その他の添加剤を添加した成形材料を調製し、これを用いて成形するのが好ましい。
なお、本発明の樹脂組成物を含む成形材料は、作業性を高める観点から塊状が好ましく、樹脂組成物を含む成形材料の成形安定性を高める観点からペレット状または板状が更に好ましい。
具体的には、成形品は樹脂組成物を含む成形材料を成形金型内で加熱加圧成形した後、硬化させることにより製造される。
成形材料を調製する方法に特に制限はないが、一例として以下の手順を示す。まずリグニン誘導体と、その他の樹脂成分を、任意の方法および順序で混合する。必要に応じて、触媒、潜在性触媒、充填剤、および各種添加剤を、任意の方法および順序で混合する。これにより、成形材料が調製される。
また、混合する際には、熱板や、加圧ニーダー、ロール、コニーダー、二軸押し出し機等の混練機等を用い、混合物が硬化する温度未満で加熱溶融混練する。加熱する際の具体的な加熱温度は、選択する組成に応じて若干異なるが、好ましくは50〜130℃程度とされる。前記混合物を冷却したものを粉砕することにより、顆粒状の樹脂組成物が得られる。
また、樹脂組成物を調製する際には、必要に応じて有機溶媒を添加するようにしてもよい。有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセルソルブ、アセトン、メチルセルソルブ、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、キノリン、シクロペンタノン、キシレン、m−クレゾール、クロロホルム等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が
用いられる。
なお、必要に応じて、希釈剤を添加するようにしてもよい。希釈剤としては、例えば、ブチルセロソルブ、カルビトール、酢酸ブチルセロソルブ、酢酸カルビトール、エチレングリコールジエチルエーテル、α−テルピネオール等の比較的沸点の高い有機溶媒が挙げられる。
さらには、前述したその他の添加剤を混合してもよい。
加熱加圧成形時の温度は、100〜280℃程度であるのが好ましく、120〜250℃程度であるのがより好ましい。また、圧力は、0.5〜30MPa程度であるのが好ましく、1〜20MPa程度であるのがより好ましい。また1〜10分間程度時間で、加熱成形して成形品とすることができる。これらの成形圧力、温度や時間は、目的に応じて適宜調整される。
得られる成形材料は、例えば、半導体部品、航空機部品、自動車部品、産業用機械部品、電子部品、電気部品、機構部品、ゴム製品等の用途に適用される。
なお、成形方法は特に限定されず、本発明の成形材料は、公知の成形法、例えば、射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、キャスト成形法等を用いて成形品とすることができる。このようにして得られる成形品の形態は、どのような形態であってもよく、例えば、成形材料を最終成形品にする前の中間成形品であっても、最終成形品であってもよい。
なお、成形材料は、加熱されることにより、リグニン誘導体が架橋剤(A)と架橋剤(B)のうち一種類以上の架橋剤で架橋されて硬化するが、脱アルコール反応や脱水反応に伴う縮合反応、もしくは付加反応により、架橋剤とリグニン誘導体の架橋反応点とが架橋するものと考えられる。
さらに、リグニン誘導体がメチロール化されている場合、脱水縮合反応が生じ、架橋剤(A)とメチロール基とが架橋するとともに、架橋剤(A)同士やリグニン誘導体同士が自己縮合する。
以上、本発明について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、樹脂組成物には任意の成分が添加されていてもよい。
(実施例1)
<リグニン誘導体の作製>
粉砕し、500μmのふるいにかけたスギ木粉100重量部に、フェノール200重量部と、イオン交換水367重量部とを10Lオートクレーブに導入し、スギ木粉と混合溶媒を撹拌して十分に馴染ませた後、150rpmで撹拌しながら昇温し、9MPa、300℃で60分処理して、スギ木粉を分解した。なお、圧力の調整は窒素ガスの吹込みによる加圧により行った。
次いで、処理物をろ過し、固体残渣と、ろ液とに分離した。分離後の液相は水を主に含む溶液層とフェノールとを主に含む溶液層に相分離しており、スポイトを用いて上部の水溶液層を除去し、リグニン誘導体を含むフェノール構造溶液層を回収した。
有機合成装置を用いてフェノール溶液層を150℃、10hPaで減圧蒸留することにより、溶媒であるフェノールを留去することでスギ木粉に対して収率78%でリグニン誘導体を得た。
ここで得られたものについて、1H−NMR分析に供したところ、テトラメチルシラン
を0ppmの基準物質とした化学シフトのスペクトルにおいて、6〜8ppmに芳香族プロトンに帰属する複数のピークが、0.5〜5ppmに脂肪族プロトンに帰属する複数のピークがそれぞれ認められた。
そこで、検出された各ピークについて、芳香族プロトンに帰属する複数のピークの積分値を1としたところ、脂肪族プロトンに帰属する複数のピークの積分値は1.27であった。すなわち、芳香族プロトンに帰属する複数のピークの積分値は、脂肪族プロトンに帰属する複数のピークの積分値の79%であった。
また、上記で得られたリグニン誘導体の分子量は、テトラヒドロフランを溶離液として、ポリスチレン換算のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したところ、数平均分子量(Mn)は420であった。
<リグニン樹脂組成物の製造>
次に、得られたリグニン誘導体100質量部に、ヘキサメチレンテトラミン10質量部を常温で添加し、リグニン樹脂組成物を得た。
<リグニン樹脂成形体の製造>
次に、上記で得られた基材含浸用の樹脂ワニスを樹脂含浸率55質量%(プリプレグ全体に対する割合)となるように、クラフト紙(坪量135g/m2)に対してディップコーター装置で塗工し、その後、100℃で10分間乾燥してプリプレグを得た。このようにして製造したプリプレグ8枚を重ね合わせ、200℃、5MPaで10分間の加熱加圧成形を行った。これにより平均厚さ1.6mmの積層板(樹脂板)を得た。
(実施例2〜12)
バイオマスの種類、分解処理における溶媒、温度、圧力および時間を、表1示すように変更した以外は、それぞれ、実施例1の場合と同様にしてリグニン誘導体、セルロース誘導体およびヘミセルロース誘導体を得るとともに、それぞれで得られたリグニン誘導体を用いて積層板を得た。
実施例全てについて硫酸以外の無機酸含有量は0.1質量%以下であった。
(比較例1)
分解処理における溶媒、温度、圧力および時間を、表1に示すように変更して、バイオマスを分解処理した。次いで、分解処理物をろ過し、固形成分と、ろ液と、に分離した。前記分離した固形成分をアセトンで抽出し、ろ過し、ろ液を乾燥させることで、リグニン誘導体を収率15%で得た。前記アセトンで抽出し、ろ過して得られた固形成分は、リグニン誘導体、セルロース誘導体およびヘミセルロース誘導体の混合物であり、十分に分離できなかった。
(比較例2)
分解処理して得られた分解処理物をろ過し、固形成分と、ろ液と、に分離した。前記分離したろ液を乾燥させ、リグニン誘導体およびヘミセルロース誘導体の混合物が得られた。得られた混合物をさらに熱水で洗浄することで、リグニン誘導体を収率15%で得た。一方で、前記固形成分は、リグニン誘導体、セルロース誘導体およびヘミセルロース誘導体の混合物であり、十分に分離できなかった。
(比較例3)
粉砕し、500μmのふるいにかけたスギ木粉100重量部に、70%硫酸溶液517重量部とp−クレゾール50重量部とを混合した処理溶液を45℃で60分攪拌して、抽出工程を行った。次いで、フィルタープレスして固液分離し、得られた固相分を重量比で
4倍程度の水で水洗し、さらに固液分離後重量比で4倍程度の10%水酸化ナトリウム水溶液で中和した。最後に、得られた固相分を自然乾燥して収率13%でリグニン誘導体を得た。
また、各実施例および各比較例で得られたそれぞれのリグニン誘導体について、数平均分子量(Mn)を測定し、表1に示した。
さらに、各実施例および各比較例で得られたそれぞれのリグニン誘導体について、1H−NMR分析による化学シフトのスペクトルを取得し、脂肪族プロトンに帰属する複数のピークの積分値に対する芳香族プロトンに帰属する複数のピークの積分値の割合を表1に示した。
比較例に比べ、実施例の積分値の比率が高くなっている。これは、実施例のリグニン誘導体の構造中にフェノール構造が多く含まれていることを示しており、本発明の効果が確認できた。
2.リグニン誘導体の評価
(無機酸含有量測定法(イオン性不純物試験))
抽出容器に試料1.0g及び超純水を入れて密閉し、
125℃20時間の熱水抽出し、遠心分離後に上澄み液を取って検液とした。
イオンクロマト分析装置(ダイオネクスICS-2000型、DX-320イオンクロマトグラフ)
に検疫及び標準液を導入し、検量線法により各イオン濃度を求め、試料中濃度に換算した。
この結果より、実施例において、リグニン誘導体の構造中にフェノール構造が含まれていることが示された。
(軟化点)
軟化点を測定する方法はJIS K2207に準じて、環球式軟化点試験機(メルテック(株)製ASP−MG2型)を用いた。
(外観)
上記の様に作製した積層板にて表面のフクレや荒れの有無を目視にて評価した。

表1に示すように、実施例により、良好な樹脂特性を持つリグニン樹脂組成物を高習率で得ることが可能となった。

Claims (9)

  1. リグニン誘導体を含む樹脂組成物であって、
    リグニン誘導体の構造中にフェノール構造が含まれ、
    かつ樹脂組成物に含まれる硫酸の含有量が2質量%未満であることを
    特徴とするリグニン樹脂組成物
  2. 前記リグニン誘導体は、バイオマスを分解して得られたものである請求項1記載のリグニン樹脂組成物
  3. リグニン誘導体の構造中に含まれるフェノール構造が、リグニン誘導体へ付加されたものである請求項1または2記載のリグニン樹脂組成物
  4. 前記リグニン誘導体は、数平均分子量が300以上3000以下である請求項1ないし3いずれか1項に記載のリグニン樹脂組成物
  5. 前記リグニン誘導体の軟化点が、200℃以下である請求項1ないし4いずれか1項に
    記載のリグニン樹脂組成物
  6. 前記リグニン樹脂組成物に含まれる硫酸以外の無機酸が2質量%未満である請求項1記載のリグニン樹脂組成物。
  7. リグニン誘導体の製造方法であって、
    (1)バイオマスを水とフェノール構造物とを含む混合溶媒存在下におき、これらを高温高圧下で分解処理して、分解処理物を得る分解工程と、
    (2)前記分解工程により得られた前記分解処理物からリグニン誘導体を、フェノール構造物溶液からフェノール構造物を留去して得る回収工程、もしくは分解処理物の不溶物から回収する工程と、を有することを特徴とするリグニン誘導体の製造方法。
  8. 請求項1ないし6いずれか1項に記載のリグニン樹脂組成物を硬化して得られることを特徴とする樹脂成形体
  9. 請求項1ないし6いずれか1項に記載のリグニン樹脂組成物と充填材とを含むことを特徴とする成形材料


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