以下に、本発明のエポキシ樹脂を説明する。
本発明のエポキシ樹脂は、下記式(1)で表される構造を有する。
(一般式(1)中、R
1はそれぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、グリシドキシ基のいずれかであり、少なくとも1つはヒドロキシ基である。R
2はそれぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、グリシドキシ基のいずれかであり、少なくとも1つはヒドロキシ基である。)
好ましくは、下記式(2)で表される構造を有する。
(式(2)中、R
1は水素原子、メトキシ基、グリシドキシ基のいずれかであり、R
2は水素、メトキシ基、グリシドキシ基のいずれかである。)
本発明のエポキシ樹脂は、 下記式(3)で表されるビスフェノール化合物にエピハロヒドリンを反応させることにより得られる。
(式(3)中、R
1はそれぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、メトキシ基のいずれかであり、少なくとも1つはヒドロキシ基である。R
2はそれぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、メトキシ基のいずれかであり、少なくとも1つはヒドロキシ基である。)
本発明で用いられる前記式(3)で表されるビスフェノール化合物について説明する。
前記ビスフェノール化合物は、リグノセルロース系バイオマスから抽出(抽出物)することで得ることができるが、さらに化学的合成方法により得ることもできる。
ここで、「抽出物」とは、抽出方法、抽出溶媒、抽出された成分または抽出物の形態を問わず、天然物の成分を抽出して得られた物質をいずれも含む広い概念である。
例えば、リグニンに含まれるβ−β結合由来の化合物としてシリンガレジノールやピレジノールが挙げられる。例えば、シリンガレジノールは下記式(4)で表され、ピノレジノールは下記式(5)で表される。
リグノセルロース系バイオマスから抽出する方法としては、ブナ科コナラ属植物由来のブナ科コナラ属植物を、水、有機溶媒、及び水と有機溶媒との混合物からなる群より選ばれた一つ以上で抽出して収得することもできる。前記有機溶媒は、アルコール、アセトン、エーテル、エチルアセテート、ジエチルエーテル、エチルメチルケトン、及びクロロホルムからなる群より選ばれた一種以上を含むが、必ずしもこれらに制限されるものではない。前記アルコールは、C1〜C5の低級アルコールを含み、C1〜C5の低級アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブタノール、及びイソブタノールからなる群より選ばれた一種以上を含むが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
シリンガレシノールを分離及び精製する方法は、次のような段階を含んでいてよい。アルコール抽出物を製造する段階;製造したアルコール抽出物を水とアルコールのうちの一種以上を含む溶媒で溶出させて分画を収得する段階;及び収得した分画に対して有機溶媒を展開溶媒としてクロマトグラフィー、具体的には薄膜クロマトグラフィー(TLC)を行う段階。前記有機溶媒は、アルコール、アセトン、エーテル、エチルアセテート、ジエチルエーテル、エチルメチルケトン、及びクロロホルムからなる群より選ばれた一種以上を含み、アルコールは、C1〜C5のアルコールを含む。
例えば、WO2006/068254A1に記載の手法に準じ、ブナ科コナラ属植物由来のブナ科コナラ属植物を炭素数1〜4の低級アルコール水溶液で抽出し、Pharmacia社製のセファデックス等の樹脂を用いてカラムクロマトグラフィーにより精製し、更にキラルカラムを用いて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により単離精製することによりシリンガレシノールを得ることができる。
他方、化学的合成方法としては、前記式(3)で表されるビスフェノール化合物はシンナミルアルコール誘導体を酸化条件で二量化させることで得られる。
前記ビスフェノール化合物として、好ましくは下記式(6)で表される構造を有する化合物を用いることができる。
(式(6)中、R
1は水素原子、メトキシ基、ヒドロキシ基のいずれかであり、R
2は水素原子、メトキシ基、ヒドロキシ基のいずれかである。)
本発明において用いられるシンナミルアルコール誘導体としては例えばシナピルアルコール、コニフェリルアルコール、パラ−クマリルアルコール等が挙げられる。
シンナミルアルコール誘導体はケイ皮酸エステル誘導体を還元することで得られる。
本発明において用いられるケイ皮酸エステル誘導体としては例えばシナピン酸メチル、シナピン酸エチル、フェルラ酸メチル、フェルラ酸エチル、クマル酸メチル、クマル酸エチル等が挙げられる。
用いることが出来る還元剤としては、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、ボラン、水素化アルミニウム等が挙げられるが、これらの限定するものではない。また、還元剤は単独で使用してもよく、ハロゲン化物と併用してもよい。用いることが出来るハロゲン化物は、塩化ベンジル、臭化ベンジル、1−ブロモブタン、1−クロロブタン等が挙げられるが、これらに限定するものではない。用いる還元剤の使用量は、原料1モルに対して通常2.0〜5.0モルであり、好ましくは2.0〜2.5モルである。
用いることが出来る溶剤の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒、トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素等が挙げられるが、これらに限定されない。溶剤はそれだけでもよいし、2種類以上混合してもよい。
反応終了後、公知の手法にて還元剤のクエンチを行う。メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールを加えてもよいし、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸等の有機酸を加えてもよい。
前記ビスフェノール化合物はシンナミルアルコールを酸化的に二量化する事で得られるが、用いることが出来る酸化剤としては塩化第二鉄、フェリシアン化カリウム、硫酸第一鉄−過酸化水素、ペルオキシダーゼ−過酸化水素等が挙げられるがこれらの限定するものではない。また、これらの酸化剤は単独で使用してもよく、複数の種類を併用してもよい。用いる酸化剤の使用量は、原料1モルに対して通常1.0〜3.0モルであり、好ましくは1.0〜1.5モルである。
用いることが出来る溶剤の具体例としては、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒、トルエン、キシレン、ヘキサン、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、塩化メチレン等の無極性溶媒、メタノール、エタノール、水等の極性プロトン性溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。溶剤はそれだけでもよいし、2種類以上混合してもよい。
反応温度は通常0〜100℃であり、好ましくは10〜80℃であり、特に好ましくは20〜50℃である。反応時間は通常0.5〜20時間であるが、原料化合物の種類によって反応性に差があるため、この限りではない。
反応終了後、ビスフェノール化合物を取り出す場合には、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって分離しても良いし、再結晶で取り出してもよい。結晶で取り出す場合、メタノール、エタノールなどの有機溶媒で再結晶させてもよいし、大量の水中に反応液を滴下することにより結晶を析出させてもよい。
各工程で得られる前記ビスフェノール化合物の構造はおよび純度は1H-NMR、13C-NMR、HPLC、TLC等で確認することができる。
次に、本発明のエポキシ樹脂の製造方法について説明する。
本発明のエポキシ樹脂は、上記手法によって得られた前記ビスフェノール化合物を溶剤中において、エピハロヒドリンと反応させ、エポキシ化することにより得られる。
本発明のエポキシ樹脂を得る反応において用いるエピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、α−メチルエピクロルヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等が好ましく挙げられ、特に、工業的に入手が容易なエピクロルヒドリンが好ましい。エピハロヒドリンの使用量は、前記ビスフェノール化合物の水酸基1モルに対し通常2〜100モルであり、経済性を考慮すると好ましくは2〜8モルである。通常エポキシ樹脂は、アルカリ金属酸化物の存在下でビスフェノール化合物とエピハロヒドリンとを付加させ、次いで生成した1,2−ハロヒドリンエーテル基を開環させてエポキシ化する反応により得られる。
エポキシ化反応に使用できるアルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が好ましく挙げられ、これらは固形物をそのまま使用しても、あるいはその水溶液を使用してもよい。水溶液を使用する場合は、該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に、減圧下または常圧下で連続的に留出させた水及びエピハロヒドリンの混合液から分液により水を除去し、エピハロヒドリンのみを反応系内に連続的に戻す方法でもよい。アルカリ金属水酸化物の使用量は、前記ビスフェノール化合物等の水酸基1モルに対して通常0.9〜3.0モルであり、好ましくは1.0〜2.5モルであり、より好ましくは1.0〜2.0モルであり、特に好ましくは1.0〜1.3モルである。また、エポキシ化反応において、特にフレーク状の水酸化ナトリウムを用いることで、水溶液とした水酸化ナトリウムを使用するよりも得られるエポキシ樹脂に含まれるハロゲン量を顕著に低減させることが可能となる。更にこのフレーク状の水酸化ナトリウムは、反応系内に分割添加されることが好ましい。分割添加を行なうことで、反応温度の急激な減少を防ぐことができ、これにより不純物である1,3−ハロヒドリン体やハロメチレン体の生成を防止することができる。
エポキシ化反応を促進するために、触媒を用いることができる。用いることができる触媒としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩が好ましく挙げることができる。4級アンモニウム塩の使用量としては、前記ビスフェノール化合物の水酸基1モルに対し通常0.1〜15gであり、好ましくは0.2〜10gである。
反応温度は通常30〜90℃であり、好ましくは35〜80℃である。反応時間は通常0.5〜10時間であり、好ましくは1〜8時間である。反応終了後、反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下で反応液からエピハロヒドリンや溶媒等を除去する。また得られたエポキシ樹脂中に含まれるハロゲン量をさらに低減させるために、回収した本発明のエポキシ樹脂をトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて反応を行ない、閉環を確実なものにすることも出来る。この場合、アルカリ金属水酸化物の使用量は、前記ビスフェノール化合物の水酸基1モルに対して通常0.01〜0.3モルであり、好ましくは0.05〜0.2モルである。反応温度は通常50〜120℃、反応時間は通常0.5〜2時間である。
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に加熱減圧下で溶剤を留去することにより本発明のエポキシ樹脂が得られる。また、本発明のエポキシ樹脂が結晶として析出する場合は、大量の水に生成した塩を溶解した後に、本発明のエポキシ樹脂の結晶を濾取してもよい。このようにして得られる本発明のエポキシ樹脂は、前記ビスフェノール化合物に含まれるヒドロキシル基がグリシジル化された構造を有する。
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物について説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明のエポキシ樹脂を含有する。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、さらに1種以上の他のエポキシ樹脂と併用して使用することができる。
本発明において用いられる他のエポキシ樹脂の具体例としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられる。具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールS、チオジフェノール、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、アルコール類から誘導されるグリシジルエーテル化物、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、等シルセスキオキサン系のエポキシ樹脂(鎖状、環状、ラダー状、あるいはそれら少なくとも2種以上の混合構造のシロキサン構造にグリシジル基、および/またはエポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂)等の固形または液状エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明のエポキシ樹脂組成物は硬化剤を含有することもできる。硬化剤は単独または複数を使用できる。用いることができる硬化剤としては、例えばフェノール樹脂、フェノール系化合物、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、カルボン酸系化合物などが挙げられる。用いうる硬化剤の具体例としてはフェノール樹脂、フェノール化合物;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4’−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4’−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、テルペンとフェノール類の縮合物などのポリフェノール類、及び前記ビスフェノール化合物が挙げられるが、本発明ではこれらに限定するものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。本発明のエポキシ樹脂で用いられる前記式(3)で表されるビスフェノール化合物を硬化剤として用いることもできる。
好ましいフェノール樹脂としては、フェノールアラルキル樹脂(芳香族アルキレン構造を有する樹脂)が挙げられ、特に好ましくはフェノール、ナフトール、クレゾールから選ばれる少なくとも一種を有する構造であり、そのリンカーとなるアルキレン部が、ベンゼン構造、ビフェニル構造、ナフタレン構造から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする樹脂(具体的にはザイロック、ナフトールザイロック、フェノールビフェニレンノボラック樹脂、クレゾール−ビフェニレンノボラック樹脂、フェノール−ナフタレンノボラック樹脂などが挙げられる。)である。
アミン系化合物、アミド系化合物としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂などの含窒素化合物などが挙げられる。
酸無水物系化合物、カルボン酸系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、などの酸無水物;各種アルコール、カルビノール変性シリコーン、と前述の酸無水物との付加反応により得られるカルボン酸樹脂などが挙げられる。
また、その他、イミダゾール、トリフルオロボラン−アミン錯体、グアニジン誘導体の化合物なども挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物において硬化剤の使用量は、全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.7〜1.2当量が好ましい。エポキシ基1当量に対して、0.7当量に満たない場合、あるいは1.2当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られない恐れがある。
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、硬化剤とともに硬化促進剤を併用しても差し支えない。硬化促進剤の具体例としては2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾ−ル類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、テトラブチルアンモニウム塩、トリイソプロピルメチルアンモニウム塩、トリメチルデカニルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩などの4級アンモニウム塩、トリフェニルベンジルフォスフォニウム塩、トリフェニルエチルフォスフォニウム塩、テトラブチルフォスフォニウム塩などの4級フォスフォニウム塩が挙げられる。(4級塩のカウンターイオンはハロゲン、有機酸イオン、水酸化物イオンなど、特に指定は無いが、特に有機酸イオン、水酸化物イオンが好ましい。)、オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。硬化促進剤を用いる場合は、エポキシ樹脂100質量部に対して0.01〜5.0質量部が好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、リン含有化合物を難燃性付与成分として含有させることもできる。リン含有化合物としては反応型のものでも添加型のものでもよい。リン含有化合物の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−ジキシリレニルホスフェート、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)等のリン酸エステル類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のホスファン類;エポキシ樹脂と前記ホスファン類の活性水素とを反応させて得られるリン含有エポキシ化合物、赤リン等が挙げられるが、リン酸エステル類、ホスファン類またはリン含有エポキシ化合物が好ましく、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)またはリン含有エポキシ化合物が特に好ましい。リン含有化合物の含有量はリン含有化合物/全エポキシ樹脂=0.1〜0.6(質量比)が好ましい。0.1以下では難燃性が不十分であり、0.6以上では硬化物の吸湿性、誘電特性に悪影響を及ぼす懸念がある。
さらに本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて酸化防止剤を添加しても構わない。使用できる酸化防止剤としては、フェノール系、イオウ系、リン系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。酸化防止剤の使用量は、本発明のエポキシ樹脂組成物中の樹脂成分に対して100質量部に対して、通常0.008〜1質量部、好ましくは0.01〜0.5質量部である。
フェノール系酸化防止剤の具体例として、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、等のモノフェノール類;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルスルホン酸エチル)カルシウム等のビスフェノール類;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール類が例示される。
イオウ系酸化防止剤の具体例として、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルル−3,3’−チオジプロピオネート等が例示される。
リン系酸化防止剤の具体例として、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−t−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のオキサホスファフェナントレンオキサイド類などが例示される。
これらの酸化防止剤はそれぞれ単独で使用できるが、2種以上を組み合わせて併用しても構わない。特に本発明においてはリン系の酸化防止剤が好ましい。
さらに本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて光安定剤を添加しても構わない。光安定剤としては、ヒンダートアミン系の光安定剤、特にHALS等が好適である。HALSとしては特に限定されるものではないが、代表的なものとしては、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)〔〔3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、等が挙げられる。HALSは1種のみが用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
さらに本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じてバインダー樹脂を配合することも出来る。バインダー樹脂としてはブチラール系樹脂、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ−ナイロン系樹脂、NBR−フェノール系樹脂、エポキシ−NBR系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。バインダー樹脂の配合量は、硬化物の難燃性、耐熱性を損なわない範囲であることが好ましく、樹脂成分100質量部に対して通常0.05〜50質量部、好ましくは0.05〜20質量部が必要に応じて用いられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて無機充填剤を添加することができる。無機充填剤としては、結晶シリカ、溶融シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、チタニア、タルク等の粉体またはこれらを球形化したビーズ等が好ましく挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。これら無機充填剤の含有量は、本発明のエポキシ樹脂組成物において0〜95質量%を占める量が用いられる。更に本発明のエポキシ樹脂組成物には、シランカップリング剤、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、界面活性剤、染料、顔料、紫外線吸収剤等の種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂を添加することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、各成分を均一に混合することにより得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。例えば本発明のエポキシ樹脂、並びに必要により硬化剤、硬化促進剤、リン含有化合物、バインダー樹脂、無機充填材及び配合剤を必要に応じて押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に混合して樹脂組成物を得、その樹脂組成物をポッティング、溶融後(液状の場合は溶融無しに)注型あるいはトランスファー成型機などを用いて成型し、さらに80〜200℃で2〜10時間加熱することにより本発明の硬化物を得ることができる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物を必要に応じてトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の溶剤に溶解させ、硬化性樹脂組成物ワニスとし、ガラス繊維、カ−ボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させて加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形することにより、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物とすることができる。この際の溶剤は、本発明のエポキシ樹脂組成物と該溶剤の混合物中で通常10〜70質量%、好ましくは15〜70質量%を占める量を用いる。また液状組成物であれば、そのまま例えば、RTM方式でカーボン繊維を含有するエポキシ樹脂組成物の硬化物を得ることもできる。
本発明の硬化物は各種用途に使用できる。詳しくはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が使用される一般の用途が挙げられ、例えば、接着剤、接合用ペースト、導電性材料、異方導電性材料、絶縁材料、封止材料、コーティング用材料、塗料組成物、プリプレグ、熱伝導性材料、燃料電池用セパレーター材およびフレキシブル配線基板用オーバーコート剤などの用途において用いることができる。
以下、本発明を実施例で更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。合成例、実施例、比較例において部は質量部を意味する。
なお、エポキシ当量は以下の条件で測定した。
・エポキシ当量
JIS K−7236に記載された方法で測定し、単位はg/eq.である。
・DSC
示唆走査熱量分析器:TA−instruments製DSC Q−2000
(合成例1)
窒素パージを施したフラスコに水素化アルミニウムリチウム(1.08g、28.3mmol)を量りとり、乾燥したテトラヒドロフラン(60ml)を加えた。反応溶液を0度に冷却し、1−ブロモブタン(3.04ml、28.3mmol)を滴下した。室温で2時間撹拌後、再度0度に冷却し、シナピン酸メチル(3.0g、12.6mmol)のテトラヒドロフラン溶液を滴下した。室温で1時間撹拌後、メタノール、クエン酸溶液を加えた。水層を酢酸エチルで3回抽出し、合わせた有機層を塩水で洗浄した。回収した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した後、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。
上記の粗生成物を酢酸エチル(90ml)に溶解させ、水(60ml)、フェリシアン化カリウム(5.3g、16.1mmol)を加えた。反応溶液を激しく撹拌しながら、炭酸水素カリウム(2.4g、23.8mmol)をゆっくり加えた。12時間撹拌後、水層を酢酸エチルで3回抽出し、合わせた有機層を塩水で洗浄した。回収した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した後、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。粗生成物をメタノールで再結晶する事によって、ビスフェノール化合物としてシリンガレジノール(1.28g)を回収した。
1H NMR (CHLOROFORM-d, 400MHz): δ = 6.59 (s, 4H), 5.51 (s, 2H), 4.73 (d, J=4.1 Hz, 2H), 4.24-4.34 (m, 2H), 3.91 (s, 12H), 3.86-3.95 (m, 2H), 3.05-3.14 ppm (m, 2H)
13C NMR (CHLOROFORM-d, 101MHz): δ = 147.1, 134.2, 132.1, 102.6, 86.1, 71.8, 56.3, 54.3 ppm
(実施例1)
攪拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら合成例1で得られたビスフェノール化合物(1g)、エピクロロヒドリン(18.6g)、テトラエチルアンモニウムクロリド(10mg)、水(46mg)を加えて、90℃にまで昇温した。次いで水酸化ナトリウム(210mg)を添加した後、さらに60℃で30分間、75℃で30分間、90℃で30分間反応を行った。反応終了後水洗いを行い、有機層の溶媒を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン(20g)を加え溶解し、75℃にまで昇温した。撹拌下で30%水酸化ナトリウム水溶液(32mg)を加え、2時間反応を行った。その後、有機層を水洗いし、得られた有機層からロータリーエバポレーターを用いて、メチルイソブチルケトン等の溶媒を留去した。得られた固体を冷やしたメチルイソブチルケトンで洗浄することで本発明のエポキシ樹脂(1.16g)を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は267g/eqであった。
1H NMR (DMSO-d6,100℃, 400MHz): δ = 6.64 (s, 4H), 4.70 (d, J=4.1 Hz, 2H), 4.22 (dd, J=9.2, 6.9 Hz, 2H), 4.04 (dd, J=11.4, 3.2 Hz, 2H), 3.80-3.89 (m, 4H), 3.79 (s, 12H), 3.18-3.25 (m, 2H), 3.02-3.10 (m, 2H), 2.72 (t, J=4.8 Hz, 2H), 2.56 ppm (dd, J=5.0, 2.7 Hz, 2H)
実施例2で得られたエポキシ樹脂とフェノールノボラック樹脂(明和化成株式会社製H−1、水酸基当量103g/eq.)を1対1の比率で混合し、メチルエチルケトンに溶解させた。1wt%のトリフェニルホスフィンを加えた後に、溶媒を60℃、1.5時間で減圧乾燥させ、硬化物を得た。得られた硬化物のガラス転移温度を示唆走査熱量計により測定した。ガラス転移点は106℃で観察された。
以上より、前記ビスフェノール化合物がエポキシ樹脂の原料として有用であることが示された。また、本発明のエポキシ樹脂もフェノールノボラックにより硬化することから、化学工業製品の原料として有用であることが明らかである。