JP2888298B2 - 自動変速機のセレクトショック防止装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、車両に搭載される自動変速機にあって、ニ
ュートラルレンジ等の動力遮断レンジから走行レンジに
切り換えた際に発生されるセレクトショックを低減する
ためのセレクトショック防止装置に関する。

従来の技術 この種のセレクトショック防止装置としては、従来、
特開昭57−25550号公報に開示されるようなものがあ
る。

即ち、同公報に開示される自動変速機はニュートラル
状態から前進状態に変位させたときに、前進用摩擦要素
の締結を他の摩擦要素の締結より遅延させることによっ
て、クリープを防止するようになっており、このクリー
プの防止によって変速ショックの防止が図られるように
なっている。

発明が解決しようとする課題 しかしながら、かかる従来の自動変速機にあっては、
特定（前進用）の摩擦要素の締結を単に遅延させること
により変速ショックの防止が図られるようになっている
が、高エンジン回転でニュートラル状態から前進状態に
切り換えた場合や、ニュートラル状態から前進状態に切
換えた直後にアクセルペダルを大きく踏み込んだりした
場合に、摩擦要素は相対回転部分の相対回転量が大きな
状態で急激に締結されるため、特定の摩擦要素を単に遅
延させたとしても、該摩擦要素の締結時にはやはり大き
な締結ショックが発生してしまう。

このため、上記締結ショックにより大きなセレクトシ
ョックが発生してしまうと共に、自動変速機のパワート
レインに衝撃が加わり耐久性が低下してしまうという課
題があった。

そこで、本考案はかかる従来の課題に鑑みて、ニュー
トラルレンジ等の動力遮断レンズから走行レンジにセレ
クトした際に、エンジン回転数が高い場合は摩擦要素の
締結圧自体を一定割合で低下させることにより、セレク
トショックの発生を著しく低減させることができる自動
変速機のセレクトショック低減装置を提供することを目
的とする。

課題を解決するための手段 かかる目的を達成するために本発明は第１図に示すよ
うに、動力遮断レンジから前進又は後進の走行レンジへ
のセレクトを検知するレンジ切換検出手段ａと、 上記レンジ切換検出手段ａでセレクト信号が検知され
てから所定時間の間、エンジン回転数が一定値以上であ
るか否かを検知する高回転状態検出手段ｂと、 上記高回転状態検出手段ｂで一定値以上の回転数を検
知したときに、摩擦要素ｃへ供給する締結圧を、締結完
了までの期間を含む所定時間の間だけ低下させる液圧低
下手段ｄと、を設けたことを特徴としている。

作用 動力遮断レンジから走行レンジにセレクトされた直後
にエンジン回転数が高い場合は、摩擦要素の相対回転量
が著しく大きいものとなる。しかし、このときは液圧低
下手段ｄによって摩擦要素の締結圧自体が低下されるた
め、該摩擦要素の締結力を減少することができる。

従って、このように上記摩擦要素の締結力が減少する
ことにより、該摩擦要素の締結時のショック、延いては
セレクトショックを大幅に低減することができるように
なる。

実施例 以下、本発明の実施例を図に基づいて詳細に説明す
る。

即ち、第２図は本発明の自動変速機のセレクトショッ
ク防止装置の一実施例を示し、図中10はエンジン、12は
自動変速機で、該エンジン10の出力回転は該自動変速機
12によって適宜変速されて図外の駆動輪へと出力され
る。

上記自動変速機12は複数組みの遊星歯車組等によって
構成されるギアトレーン中に複数の摩擦要素14が組み込
まれ、該摩擦要素14の締結および解放により、遊星歯車
組の各構成要素の組み合わせが変化され、もって、各種
変速段が得られるようになっている。

尚、上記摩擦要素14としてはクラッチとかブレーキ等
があり、上記第２図では複数の摩擦要素14を省略して、
クラッチ式の単一の摩擦要素14を開示してある。

上記摩擦要素14の締結および解放は、コントロールバ
ルブ16から供給される液圧により制御されるようになっ
ており、該コントロールバルブ16での液圧制御はコント
ロールユニット18から出力される制御信号により行われ
る。

即ち、上記コントロールバルブ16は例えば特開昭62−
62047号公報に開示されたようなものがあり、エンジン
駆動される図外の液圧ポンプの吐出圧から、車両運転条
件に応じたライン圧を調圧し、このライン圧が図外の複
数のシフト弁の切換えによって上記摩擦要素14に適宜供
給され、又は排除されるようになっている。

上記運転条件としてはその代表的なものに、車速信号
とスロットル開度信号があり、これら両信号を制御要件
として予め決定されているシフトスケジュールに沿って
上記シフト弁が切り換え作動される。

上記摩擦要素14は図示するクラッチタイプのものにあ
っては、ドライブプレート14aとドリブンプレート14bの
相対回転部材を備え、これら両プレート14a,14bが上記
コントロールバルブ16から供給される液圧（ライン圧）
で圧接されることにより、該摩擦要素14の締結が行われ
るようになっている。

また、上記ライン圧の調圧は一般にプレシャーレギュ
レータ弁によって行われ、例えば、上記特開昭62−6204
7号公報に開示されるように、プレシャーモデファイヤ
弁から供給されるスロットル圧を信号圧として上記プレ
シャーレギュレータ弁が作動され、液圧ポンプの吐出圧
が調圧されるが、上記プレシャーモデファイヤ弁は、ラ
イン圧ソレノイドと称されるソレノイド弁のON−OFFに
よるデューティー制御で発生される制御圧により作動さ
れるようになっている。

そして、上記コントロールユニット18には予め設定さ
れたアクセル開度に対するライン圧のデータが入力され
ており、このライン圧特性データに基づいてライン圧制
御が行われるが、該データによる制御をキャンセルし
て、ライン圧ソレノイドのデューティー比を変化させる
ことにより、ライン圧の制御を任意に行うことができる
構成となっている。

ところで、上記自動変速機12の前進，後進等の切換え
は運転席近傍に設けられるセレクトレバー20の操作によ
り選択されるようになっており、例えば、前進レンジと
しては自動変速（Ｄ）レンジ，マニュアル２（II）レン
ジ，マニュアル１（Ｉ）レンジがあり、後進レンジとし
てはリバース（Ｒ）レンジがあり、その他に動力遮断レ
ンジとしてニュートラル（Ｎ）レンジおよび駐車時に用
いられるパーキング（Ｐ）レンジがある。

ここで、本実施例にあっては上記コントロールユニッ
ト18内に、レンジ切換検出手段22と、高回転状態検出手
段24と、液圧低下手段26とが設けられる。

上記レンジ切換検出手段22は上記セレクトレバー20を
操作した際のレンジ位置を図外のインヒビタースイッチ
等を介して検出し、ＮレンジからＤレンジ又はＲレンジ
の走行レンジに切り換えられたことを検知する機能を有
する。

上記高回転状態検出手段24は上記レンジ切換検出手段
22の検出信号およびエンジン回転数信号を入力し、Ｎレ
ンジから走行レンジにセレクトされてから一定時間の
間、エンジン回転数が一定値以上であるか否かを検知す
る機能を有する。

上記液圧低下手段26は上記高回転状態検出手段24の検
出信号を入力し、該高回転状態検出手段24でエンジン回
転数が一定値以上であると判断した場合は、コントロー
ルバルブ16のライン圧ソレノイドにライン圧を一定割合
で低下させる信号を出力する機能を有する。

以上の構成により本実施例の自動変速機のセレクトシ
ョック防止装置の機能を、第３図に示すフローチャート
に基づいて以下説明する。

即ち、上記フローチャートではまずステップＩによっ
て現在のレンジ位置がＮレンジであるかどうかが判断さ
れ、Ｎレンジの場合（YES）は該ステップＩの判断が繰
り返される一方、Ｎレンジ以外の場合（NO）はＤレンジ
又はＲレンジにセレクトされたと判断してステップIIに
進み、このＮレンジからセレクトされた後の経過時間ｔ
が予め設定された所定時間t₁内であるかどうかが判断さ
れる。

尚、上記所定時間t₁は締結圧が供給開始されてから摩
擦要素14が完全に締結されるに要する時間によって決定
される。

そして、上記ステップIIで所定時間t₁に達したと判断
された場合はステップIIIに進み、エンジン回転数Neが
予め設定された一定値Ａより大きいかどうかが判断さ
れ、大きい場合（YES）はステップIVに進んでライン圧
ソレノイドにライン圧低下信号を出力し、スロットル開
度に対する摩擦要素14の締結圧（ライン圧）を第４図に
示すように一定割合（Ｂ％）で低減させる。

次に、ステップＶに進みライン圧を低減してからの経
過時間ｔが、予め設定された所定時間t₂を経過したかど
うかが判断され、該所定時間t₂を経過していない場合
（NO）は、上記ステップIVに戻ってＢ％のライン圧減圧
を保持し、所定時間t₂を経過した場合はステップVIに進
んで通常のライン圧制御、つまり、通常のライン圧に増
圧する。

尚、上記ライン圧の低減は、時間軸に対しては第５図
中実線に示すようになり、最高圧値よりも上記所定時間
t₂の間だけ一定圧ｐが減圧された特性として得られる。
また、同図中破線部分は、従来の特性を示す。

従って、本実施例にあっては上記ステップIIでYESと
判断された場合は、摩擦要素14が締結途中にあり、ドラ
イブプレート14aとドリブンプレート14bが相対回転され
ている状態であり、このとき、上記ステップIIIでYESど
判断された場合は、エンジン回転が高い状態を示してお
り、上記ドライブプレート14aとドリブンプレート14bと
の相対回転量が大きくなっている。

そこで、上記摩擦要素14を締結するための液圧を全体
的に一定割合で低下させることにより、上述したように
ドライブプレート14aとドリブンプレート14bとの相対回
転量が大きくなっていることにより、締結圧が最高圧に
達したときにも、摩擦要素14は若干の相対回転が許容さ
れる状態にある。

従って、上記相対回転の許容部分により摩擦要素14は
瞬時に締結されるのではなく、上記相対回転による大き
なイナーシャが減少した時点で締結され、このときの締
結ショックを著しく低減することができる。

このように、エンジン回転数が高い状態で摩擦要素14
に液圧が供給されたときにも、締結ショックが低減され
ることにより、ＮレンジからＤレンジ又はＲレンジにセ
レクトした時のセレクトショックの防止を図ることがで
きる。

そして、上記締結圧の低減が所定時間t₂行われ摩擦要
素14が完全に締結された後は、通常のライン圧制御に戻
して締結圧を上昇させることにより、摩擦要素14の締結
が確実なものとされる。

尚、本実施例ではレンジ切換検出手段22はＮレンジか
らＤレンジ又はＲレンジの走行レンジに切り換えられた
ことを検知するようにした場合を開示したが、これに限
ることなく上記Ｎレンジに代えてＰレンジの動力遮断レ
ンジから走行レンジに切り換えられたことを検出し、セ
レクト信号を出力するようにしてもよい。更に、本実施
例では摩擦要素14の締結圧を変化させる手段として、ラ
イン圧ソレノイドを用いてライン圧自体を制御する場合
を開示したが、ライン圧ソレノイドを用いることなく、
ライン圧のドレン量を調節することによりライン圧制御
を行ってもよく、また、ライン圧自体の制御行うことな
く、セレクトショックに関係する特定の摩擦要素14に供
給される締結圧を制御するようにしたものでもよい。

発明の効果 以上説明したように本発明の自動変速機のセレクトシ
ョック防止装置にあっては、動力遮断レンジから走行レ
ンジにセレクトされた際にエンジン回転数が高い場合
は、摩擦要素の締結圧が低下されるため、摩擦要素の締
結力が減少され、摩擦要素の相対回転量が大きい場合に
あっても締結ショックを著しく低減することができる。

従って、このように摩擦要素の締結ショックが低減さ
れることにより、セレクトショックの大幅な低減を達成
することができ、車両乗り心地性を大幅に向上させると
共に、自動変速機のパワートレーンに作用する衝撃力の
緩和を図って、寿命の延長を行うことができるという各
種優れた効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の概念を示すブロック図、第２図は本発
明の一実施例を示す概略構成図、第３図は本発明で行わ
れる制御の一処理例を示すフローチャート、第４図は本
発明で達成されるスロットル開度に対する締結圧の特性
図、第５図は本発明で達成される時間に対する締結圧の
特性図である。 10…エンジン、12…自動変速機、14…摩擦要素、16…コ
ントロールバルブ、18…コントロールユニット、20…セ
レクトレバー、22…レンジ切換検出手段、24…高回転状
態検出手段、26…液圧低下手段。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 縄田 克実 神奈川県横浜市神奈川区宝町２番地 日 産自動車株式会社内 (56)参考文献 特開 昭56−138553（ＪＰ，Ａ) 特開 昭58−109726（ＪＰ，Ａ) 特公 昭48−38574（ＪＰ，Ｂ１)

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】動力遮断レンジから前進又は後進の走行レ
   ンジへのセレクトを検知するレンジ切換検出手段と、 上記切換検出手段でセレクト信号が検知されてから所定
   時間の間、エンジン回転数が一定値以上であるか否かを
   検知する高回転状態検出手段と、 上記高回転状態検出手段で一定値以上の回転数を検知し
   たときに、摩擦要素へ供給する締結圧を、締結完了まで
   の期間を含む所定時間の間だけ低下させる液圧低下手段
   と、を設けたことを特徴とする自動変速機のセレクトシ
   ョック防止装置。