JP4362943B2 - 無段変速機の変速制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、油圧によって動作して変速比を連続的に変化させることの可能な無段変速機における変速を制御するための装置に関し、特に低車速時の変速を制御するための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように無段変速機は、回転する部材の周速が半径位置ごとに相違していることを利用し、相手部材あるいはトルクの伝達を媒介する伝動部材の接触する半径位置を連続的に変化させて変速比を適宜に設定するように構成されている。この種の無段変速機を車両に搭載することの利点の一つは、無段変速機の入力側に連結されているエンジンなどの動力源の回転数を任意に設定できることにあり、そのため、車両用の無段変速機での変速は、通常の走行時には、エンジンの回転数が最小燃費の運転状態の回転数となるように制御されている。
【0003】
したがって無段変速機の変速制御は、通常の有段式の自動変速機が予め決められている変速比を設定するように制御されているのとは異なり、目標入力回転数を車両の運転状態などに基づいて設定し、実入力回転数がその目標入力回転数に一致するように変速比を変更して実行される。そしてその変速は、摩擦接触位置の変更によっておこなわれるから、変速比を変更するには、摩擦接触する両方の部材が回転している状態で一方の部材を他方の部材に対して相対的に移動させる必要がある。
【0004】
これに対して車両に搭載された無段変速機にあっては、ある程度小さい変速比を設定した走行状態から何らかの事情によって急に停車した場合、その変速比を設定している状態から発進時に要求される最大変速比を設定する状態にまで無段変速機の動作状態が変化する以前に無段変速機が停止してしまうことがある。このような場合、次の発進の際に最大変速比より小さい変速比を設定している状態で車両が走行し始めるが、これは、従前の急停車に伴って生じた特殊な状況であり、したがって車両が動き出して無段変速機が回転し始めると、本来の変速比である最大変速比への変速が急激に生じる。そのため、駆動力が急激に増大してショックが生じることがある。このような不都合を解消するために、特開平9−203459号公報に記載された発明では、無段変速機の入力回転数がきわめて低回転数の場合には変速制御を良好にはおこない得ないので、その状態での変速速度を零とし、すなわち変速を禁止し、その後、回転数がある程度増大した場合に低速度での変速を実行するように構成している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述したように無段変速機の変速制御は、入力回転数が目標入力回転数に一致するように変速比を変更することによって実行されるから、入力部材もしくはこれと一体に回転する部材の回転数と出力部材もしくはこれと一体に回転する部材の回転数とを検出する必要がある。しかしながら、これらの回転数を非接触でかつ電気的に回転する通常の電磁ピックアップやパルスギヤなどを使用した装置では、検出可能な下限回転数(数十回転/分)であり、したがってこのような低回転数の状態では無段変速機での変速制御を実行できない。そこで、上記公報に記載された発明では、低回転数の状態での変速を禁止することとしている。
【0006】
急停車後の発進時にこのような変速禁止制御を実行すると、不安定な変速や急激なダウンシフトを防止できるが、急停車に伴って設定されている比較的小さい変速比がそのまま維持されることになる。そのため、発進時の駆動力が小さくなって発進加速性が低下し、特に登坂路での発進時には、ロードロードが大きいために駆動力の不足感が更に増大し、しかもその状態が平坦路での発進の際と同程度の時間、継続するので、運転性が悪化する可能性があった。
【0007】
この発明は、上記の技術的課題に着目し、車速や駆動要求量などの車両の運転状態に適した発進時の変速を実行可能な無段変速機の変速制御装置を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用】
この発明は、上記の目的を達成するために、車両の走行状態に応じて、変速比のフィードバック制御への復帰条件を変更するように構成したことを特徴とする無段変速機の変速制御装置である。より具体的には、請求項1の発明は、所定の回転部材の実回転数と目標回転数との偏差に基づいて変速比をフィードバック制御し、前記回転部材が低回転数となる所定車速以下の低車速状態では、前記フィードバック制御を禁止する無段変速機の変速制御装置において、登坂路を走行しているか否かを判断する手段と、前記フィードバック制御の禁止を解除する車速を、前記登坂路を走行していることが前記手段で判断された場合には、登坂路を走行していることが前記手段で判断されていない場合より低車速に設定するフィードバック制御復帰条件設定手段とを備えていることを特徴とする変速制御装置である。
【0011】
さらに、請求項2の発明は、請求項1における前記フィードバック制御復帰条件設定手段は、加速要求量が所定値以上になっている時間が予め定めた基準時間以上となったことにより前記登坂路の走行を判断する手段を含んでいることを特徴とする変速制御装置である。
【0012】
したがって請求項1の発明および請求項2の発明では、登坂路を走行する際には、発進直後などの低車速の状態で変速比のフィードバック制御が実行されるので、登坂路の走行に必要な駆動力を得ることができる。また、請求項2の発明では、登坂路の判定を容易におこなうことができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。先ず、この発明が対象とする変速機を搭載した車両の動力伝達系統の一例を説明すると、図3において、動力源1が変速機構2に連結され、その変速機構2の出力軸3がディファレンシャル4を介して左右の駆動輪5に連結されている。ここで、動力源1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関あるいはモータなどの電動機、さらにはこれら内燃機関と電動機とを組み合わせた装置など、車両に使用可能な種々の動力源を含む。以下の説明では、動力源1として、燃料をシリンダの内部に直接噴射し、その噴射量およびタイミングを制御することにより均質燃焼や成層燃焼の可能ないわゆる直噴ガソリンエンジン、あるいはスロットル開度を電気的に自由に制御できる電子スロットルバルブを備えたガソリンエンジンを採用した例を説明する。
【0020】
このエンジン1は電気的に制御できるように構成されており、その制御のためのマイクロコンピュータを主体とする電子制御装置(E−ECU)6が設けられている。この電子制御装置6は、少なくともエンジン1の出力を制御するように構成されており、その制御のためのデータとして出力軸回転数(エンジン回転数)NE とアクセル開度PAなどの要求駆動量とが入力されている。
【0021】
この要求駆動量は、要は、エンジン1の出力の増大・減少のための信号であり、運転者が操作するアクセルペダルなどの加減速操作装置7の操作量信号やその操作量を電気的に処理して得た信号を採用することができ、またそれ以外に、車速を設定車速に維持するためのクルーズコントロールシステム(図示せず)などからの要求駆動量信号を含む。
【0022】
また、変速機構2は、流体伝動機構8と、前後進切換機構9と、無段変速機(CVT)10とから構成されている。その流体伝動機構8は、要は、オイルなどの流体を介して入力側の部材と出力側の部材との間でトルクを伝達するように構成された装置であって、一例として、一般の車両に採用されているトルクコンバータを挙げることができる。また、この流体伝動機構8は、直結クラッチ11を備えている。すなわち直結クラッチ11は、入力側の部材と出力側の部材とを摩擦板などの機械的手段で直接連結するように構成されたクラッチであって、緩衝をおこなうためのコイルスプリングなどの弾性体からなるダンパー12を備えている。そして、動力源であるエンジン1によって回転させられ、その回転数に応じて吐出圧が高くなる油圧ポンプ50が、流体伝動機構8に接近した位置に設けられている。具体的には、流体伝動機構8と前後進切換機構9との間に配置されている。なお、車両が停止している状態であってもエンジン1を駆動させ続けるために流体伝動機構8を設けている場合には、車両の状態に基づいて自動的に断続される自動クラッチを、上記の流体伝動機構8に置換して使用することができる。
【0023】
その流体伝動機構8の入力部材がエンジン1の出力部材に連結され、また流体伝動機構8の出力部材が前後進切換機構9の入力部材に連結されている。この前後進切換機構9は、一例としてダブルピニオン型遊星歯車機構によって構成され、特には図示しないが、サンギヤとキャリヤとのいずれか一方を入力要素とし、かつ他方を出力要素とするとともに、リングギヤを選択的に固定するブレーキ手段と、サンギヤおよびキャリヤならびにリンクギヤの3要素のうちのいずれか2つの回転要素を選択的に連結して遊星歯車機構の全体を一体化するクラッチ手段とを備えている。すなわちそのクラッチ手段を係合させることに前進状態を設定し、また前記ブレーキ手段を係合させることにより後進状態を設定するように構成されている。
【0024】
図3に示してある無段変速機10は、その入力側の部材の回転数と出力側の部材の回転数との比率すなわち変速比を無段階に(連続的に)変化させることのできる機構であり、ベルト式無段変速機やトロイダル式無段変速機などを採用することができる。そのベルト式無段変速機10の一例を図4を参照して簡単に説明すると、駆動側プーリー(プライマリープーリー)20と、従動側プーリー(セカンダリープーリー)21と、これらのプーリー20,21に巻き掛けられたベルト22とを備えている。これらのプーリー20,21のそれぞれは、固定シーブ23,24と、その固定シーブ23,24に対して接近・離隔する可動シーブ25,26とからなり、可動シーブ25,26を固定シーブ23,24に対して接近する方向に押圧する油圧アクチュエータ27,28が設けられている。
【0025】
上記の駆動側プーリー20が入力軸29に取り付けられ、その入力軸29と平行に配置された出力軸30に従動側プーリー21が取り付けられている。そして、従動側プーリー21における油圧アクチュエータ28には、アクセル開度PAに代表される出力要求に基づいて求められる要求駆動力に応じた油圧が供給され、トルクを伝達するのに必要な張力をベルト22に付与するようになっている。また、駆動側プーリー20の油圧アクチュエータ27には、入力軸29の回転数を目標入力回転数に一致させるための変速比となるように、油圧が給排されている。すなわち、各プーリー20,21における溝幅(固定シーブ23,24と可動シーブ25,26との間隔)を変化させることにより、各プーリー20,21に対するベルト22の巻き掛け半径が大小に変化して変速が実行されるようになっている。より具体的には、実入力回転数と目標入力回転数との偏差に基づいて駆動プーリー20側の油圧をフィードバック制御することにより変速が実行され、したがってその偏差が大きいほど、変速速度が速くなる。
【0026】
駆動プーリー20に対する油圧の給排は、流量制御によっておこなわれ、そのためのバルブ機構は、図5に示すように構成されている。すなわち、駆動プーリー20の油圧アクチュエータ27には、ライン圧PL を供給する第1流量制御弁31と、ドレーンに接続された第2流量制御弁32とが連通されている。第1流量制御弁31は、アップシフトを実行するためのバルブであって、ライン圧PL が供給される入力ポート33と前記油圧アクチュエータ27に連通された出力ポート34との間の流路をスプール35によって開閉するように構成されている。そのスプール35の一端側にはスプリング36が配置されるとともに、そのスプール35を挟んでスプリング36とは反対側の端部に、信号圧を印加するための第1信号圧ポート37が形成されている。また、スプリング36が配置されている前記一端側に信号圧を印加するための第2信号圧ポート38が形成されている。
【0027】
そして、第1信号圧ポート37に、デューティ比に応じて出力圧が高くなる第1ソレノイドバルブ39が接続され、また第2信号圧ポート38に、デューティ比に応じて出力圧が高くなる第2ソレノイドバルブ40が接続されており、各信号圧ポート37,38にはこれらのソレノイドバルブ39,40の出力する信号圧が印加されるようになっている。すなわち、第1信号圧ポート37に印加する油圧を高くして前記入力ポート33を開くことにより、ライン圧PL が出力ポート34から駆動プーリー20の油圧アクチュエータ27に供給されて駆動プーリー20の溝幅が狭くなり、その結果、変速比が低下するようになっている。すなわちアップシフトされる。またその際の油圧の供給流量を増大させることにより、変速速度が速くなる。
【0028】
また、第2流量制御弁32は、ダウンシフトを実行するためのバルブであって、前記駆動プーリー20の油圧アクチュエータ27に連通された第1ポート41を、ライン圧PL を元圧して調圧された油圧が供給される第2ポート42とドレインポート43とに、スプール44によって選択的に連通させるように構成されている。そのスプール44の一端側にはスプリング45が配置されるとともに、その一端側に信号圧を印加するための第1信号圧ポート46が形成されている。そのスプール44を挟んでスプリング45とは反対側の端部に、信号圧を印加するための第2信号圧ポート47が形成されている。
【0029】
そして、第1信号圧ポート46に前記第1ソレノイドバルブ39が接続され、また第2信号圧ポート47に前記第2ソレノイドバルブ40が接続されており、各信号圧ポート46,47にはこれらのソレノイドバルブ39,40の出力する信号圧が印加されるようになっている。すなわち、第2信号圧ポート47に印加する油圧を高くして前記第1ポート41をドレインポート43に連通させることにより、駆動プーリー20の油圧アクチュエータ27から排圧されて駆動プーリー20の溝幅が広くなり、その結果、変速比が増大するようになっている。すなわちダウンシフトされる。またその際の油圧の排出流量を増大させることにより、変速速度が速くなる。
【0030】
さらに、第2流量制御弁32の第2ポート42には、調圧弁48が接続されている。この調圧弁48は、スプリング49によって押圧されているピストン50の正面側に、ライン圧PL が供給される入力ポート51が形成され、かつそのピストン50の正面側と背面側とに連通した出力ポート52とを有するバルブであって、その出力ポート52が第2流量制御弁32の第2ポート42に連通されている。また入力ポート51には開口面積の小さいダブルオリフィス53を介してライン圧PL が供給されている。すなわちこの調圧弁48は、ライン圧PL からスプリング49の弾性力を減じた圧力の油圧が、その出力ポート52すなわち第2流量制御弁32の第2ポート42に生じるように構成されている。
【0031】
さらに具体的に説明すると、第1流量制御弁31の入力ポート33が閉じられた状態で、第2流量制御弁32の第1ポート41と第2ポート42とが連通されると、調圧弁48で調圧した油圧が第2ポート42を介して駆動プーリー20側の油圧アクチュエータ27に供給される。その場合の流量はダブルオリフィス53で制限された微少量である。その結果、油圧アクチュエータ27の油圧が高くなるが、その油圧アクチュエータ27の油圧が調圧弁48におけるピストン50の背面側に作用するので、その圧力が、ライン圧PL からスプリング49の弾性力を減じた圧力になると、ピストン50が入力ポート51側に押圧されて入力ポート51を閉じ、それ以上に油圧が供給されることを阻止する。したがって第1流量制御ポート31から油圧アクチュエータ27に油圧を供給せず、かつ第2流量制御弁32から排圧しないいわゆる閉じ込み状態では、駆動プーリー20側の油圧アクチュエータ27の油圧が、調圧弁48で調圧した油圧(ライン圧PL より低い圧力)に維持されるようになっている。
【0032】
このような油圧の維持の状態は、閉じ込み制御中の不可避的なオイルの漏れが生じた場合も同様であり、油圧回路や油圧制御機器などからオイルの漏洩が生じて油圧アクチュエータ27の油圧が低下した場合には、調圧弁48の入力ポート51から開いて油圧アクチュエータ27に油圧がわずかずつ供給され、調圧弁48による調圧値に維持される。
【0033】
上記の図4に示す無段変速機10では、駆動側プーリー20に対するベルト22の巻き掛け半径が最小でかつ従動側プーリー21に対するベルト22の巻き掛け半径が最大の状態で、最低速側の変速比(最大変速比)γmax が設定され、また、これとは反対に駆動側プーリー20に対するベルト22の巻き掛け半径が最大でかつ従動側プーリー21に対するベルト22の巻き掛け半径が最小の状態で、最高速側の変速比(最小変速比)γmin が設定される。
【0034】
上記の変速機構2における直結クラッチ11の係合・解放ならびに滑りを伴う半係合の各状態の制御および前後進切換機構9での前後進の切り換えならびに無段変速機10での変速比の制御は、基本的には、車両の走行状態に基づいて制御されるようになっている。その制御のためにマイクロコンピュータを主体として構成された電子制御装置(T−ECU)13が設けられている。
【0035】
この電子制御装置13は、前述したエンジン用の電子制御装置6とデータ通信可能に連結される一方、制御のためのデータとして車速SPDや変速機構2の出力回転数No 、入力回転数NIN、回転数センサ60からの信号などのデータが入力されている。この回転数センサ60は、無段変速機10での変速制御を実行するために、上記の駆動プーリー20や従動プーリー21などの回転数を検出するセンサであって、一例として、電磁ピックアップの先端側をパルスギヤの歯(それぞれ図示せず)が通過することにより、電磁ピックアップにパルス信号を発生させ、そのパルス信号のパルス幅などに基づいて回転数を求めるように構成されている。このようなタイプの回転数センサ60では、検出可能な最低回転数が数十rpmである。
【0036】
また、変速機構2を停止状態(パーキングポジション:P)、後進状態(リバースポジション:R)、中立状態(ニュートラルポジション:N)、車両の走行状態に応じて変速比を自動的に設定して通常の走行をおこなう自動前進状態(ドライブポジション:D)、エンジン1のポンピングロスを制動力とする状態(ブレーキポジション:B)ならびに所定値以上の高速側の変速比の設定を禁止する状態(SDポジション)の各状態(ポジション)を選択するシフト装置14が設けられており、このシフト装置14が電子制御装置13に電気的に連結されている。
【0037】
上述した無段変速機10においても、比較的高車速側の変速比を設定して走行している状態で急停車すると、変速比が最大変速比に戻る前に無段変速機10の回転が止まってしまうことがある。この状態では、駆動プーリー20の溝幅が最大にまで広がっていないので、発進時の最大変速比を設定するべく駆動プーリー20における油圧アクチュエータ27から排圧すると、駆動プーリー20に対するベルト22の巻き掛け半径が小さくなるから、ベルト22がゆるんで滑りが生じることがある。
【0038】
また、上記の無段変速機10の変速比の制御は、基本的には、目標入力回転数と実入力回転数との偏差に基づくフィードバック制御によって実行されるが、発進時の極低車速の状態で設定される目標回転数がエンジン1の目標出力トルクの演算のためにある程度大きい値に設定されるから、回転数偏差が大きくなる。そのため、この状態でフィードバック制御を実行すると、変速比を最大変速比に設定するべく駆動プーリー20の溝幅を可及的に増大させるようにその油圧アクチュエータ27の油圧がほぼゼロに低下させられてしまう。これに対して従動プーリー21の溝幅を拡大してベルト22の張力を維持するように油圧が作用しているから、駆動プーリー20にはベルト22を介してその溝幅を拡大する方向のスラスト力が作用し、そのスラスト力に対抗する油圧が抜けていることにより、駆動プーリー20の軸線方向の移動限界を規定するロックナット(図示せず)などの固定部材に過大な荷重が作用し、その耐久性が低下する可能性がある。
【0039】
このような不都合を解消するために、フィードバック制御に替えてフィードフォワード制御をおこなうことができるが、実際の変速比を反映した制御とはならないので、設定される変速比が目標とする変速比から大きくずれてしまうことがある。
【0040】
この発明に係る変速制御装置は、変速比の制御を基本的にはフィードバック制御するものの、発進時や極低車速時には上記の制御とは異なる制御を実行するように構成されている。図1はこの発明に係る変速制御装置で実行される制御の一例を示すフローチャートであって、先ず、車速SPDが第1の基準車速A(一例として2km/h 程度)以上か否かが判断される(ステップS1)。この第1の基準車速Aは、前述した回転数センサ60が回転数を検出することの可能な最低車速程度の値である。このステップS1で否定的に判断された場合には、変速比のフィードバック制御に必要な回転数に関するデータを得られない状態にあることになる。したがってこの場合は、閉じ込み制御が実施される(ステップS2)。
【0041】
すなわち、図5に示す第1流量制御弁31における第1信号圧ポート37に対する第1ソレノイド39からの信号圧が低下させられ、その結果、スプール35が図5の下側に移動してその入力ポート33が閉じられる。また同時に、第2流量制御弁32における第2信号圧ポート47に対する第2ソレノイド40からの信号圧が低下させられ、その結果、スプール44が図5の下側に移動して、駆動プーリー20の油圧アクチュエータ27に連通する第1ポート41がドレインポート43に対して遮断される一方、第2ポート42に対して連通されられる。
【0042】
したがって油圧アクチュエータ27に対する油圧の給排が積極的にはおこなわれず、オイルの不可避的な漏れ量に相当する程度の微量の油圧が調圧弁48から油圧アクチュエータ27に対して供給される。すなわち、変速比を制御する油圧アクチュエータ27に対する油圧の給排が最大限制限される。その結果、無段変速機10の変速比は、そのまま維持され、もしくはオイルの漏れ量を上回る調圧弁48からのオイルの供給量に応じた程度のきわめて緩速のアップシフト(すなわち変速比の低下)が生じる程度に維持される。
【0043】
そのため、最大変速比より小さい変速比で停止している状態から発進する場合であっても、発進と同時に、もしくは発進のために無段変速機10が回転し始めると同時に最大変速比に向けたダウンシフトが生じることがない。その結果、駆動プーリー20の溝幅が急激に拡大したり、それに伴ってベルト22のゆるみや滑りが生じることがなく、また変速ショックの発生が防止される。さらに、駆動プーリー20における油圧アクチュエータ27では、ベルト22の張力に起因するスラスト力に油圧が対抗するので、駆動プーリー20の軸線方向の移動限界を規定するロックナットなどの固定部材に過大な荷重が作用することを回避して、その耐久性の悪化を防止することができる。
【0044】
一方、車速SPDがある程度出ていてステップS1で肯定的に判断された場合には、車速SPDが前記第1基準車速Aより大きい値の第2基準車速B(一例として7km/h 程度)以上か否かが判断される(ステップS3)。この第2基準車速Bは、フィードバック制御によるダウンシフトがショックとして体感されることがなく、あるいは車両の運転性が損なわれない程度の車速として設定された値である。したがってステップS3で肯定的に判断された場合には、変速比のフィードバック制御が実施される(ステップS4)。すなわち、アクセル開度と車速などの車両の運転状態に基づいて目標入力回転数が算出され、その目標入力回転数に実入力回転数が一致するように駆動プーリー20の油圧アクチュエータ27に油圧が供給され、あるいは排圧される。その制御は、前述した第1および第2のソレノイド39,40をデューティ制御することにより実行される。
【0045】
このフィードバック制御が実施される時点では、目標入力回転数に対して実入力回転数が低回転数であるためにダウンシフトが生じるが、既にある程度の車速に達しているためにそのダウンシフト量が小さく、またダウンシフトに伴う駆動力の増大が加速感として体感されてショックとなることがない。また、車速SPDが第2基準車速Bに達するまでフィードバック制御を禁止することになるが、その第2基準車速Bが比較的小さい値であるから、発進後にこの車速に達するまでの時間が短く、そのため、本来設定するべき変速比に対する実変速比のずれを小さくすることができる。
【0046】
これに対してステップS3で否定的に判断された場合、すなわち車速SPDが第1基準車速Aと第2基準車速Bとの間にある場合には、登坂路を走行しているか否かが判断される(ステップS5)。この登坂路の判定は、従来知られている手段で実行することができ、例えばアクセル開度に基づく基準加速度と検出した車速から演算される実加速度との偏差に基づいて判断することができ、あるいはアクセル開度と車速の変化の程度とに基づいて判断することができる。
【0047】
また、このステップS5の判断プロセスは、図2に示すように、アクセル開度PAが予め定めた基準開度C以上の状態が所定時間D以上継続したか否かを判断するプロセス(ステップS5−1)に置き換えてもよい。このステップS5−1の判断によっても登坂路を判断することができる。
【0048】
平坦路を走行していることによりステップS5もしくはステップS5−1で否定的に判断された場合には、前述したステップS2に進んで閉じ込み制御を継続する。言い換えれば、平坦路を走行している場合には、フィードバック制御の禁止を解除する車速条件として第2基準車速Bが設定されている。このようにして変速比を維持もしくは極低速でアップシフトする制御を実行するのは、発進後の車速SPDが未だ充分に増大していないので、この時点でフィードバック制御による急激なダウンシフトが生じると、ショックが発生したり、ベルト22のゆるみや滑りが生じる可能性があるからである。
【0049】
これに対してステップS5で肯定的に判断された場合、すなわち登坂路を走行している場合には、フィードバック制御が実施される(ステップS4)。言い換えれば、登坂路を走行している場合には、フィードバック制御の禁止を解除するフィードバック制御復帰条件として、平坦路を走行している場合よりも低車速の車速条件であってかつフィードバック制御の可能な回転数データを得られる車速条件が設定されている。このように、登坂路では、平坦路よりも低車速の状態でフィードバック制御に復帰させられる。これは、登坂路では、ロードロードが大きいので、走行もしくは加速のための駆動力を確保することを優先するためである。したがって車両の走行状態に適した変速比を設定し、また必要な駆動力を得て走行性能が良好になる。
【0050】
ここで上記の具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、図1に示すステップS1,S3,S5の機能的手段がこの発明におけるフィードバック制御復帰条件設定手段に相当する。また図2に示すステップS5−1の機能的手段がこの発明における登坂路の走行を判断する手段に相当する。
【0051】
なお、上記の具体例では、ベルト式の無段変速機の変速制御装置にこの発明を適用した例を説明したが、この発明は、上記の具体例に限定されないのであり、他の形式の無段変速機の変速制御装置に適用することができる。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1の発明および請求項2の発明によれば、登坂路を走行する際には、発進直後などの低車速の状態においても変速比のフィードバック制御が実行されるので、登坂路の走行に必要な駆動力を発生させて走行性能を良好なものとすることができる。また、請求項2の発明では登坂路の判定を容易におこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明に係る変速制御装置で実行される制御例を示すフローチャートである。
【図2】 登坂路の判定をアクセル開度およびその継続時間に基づいておこなう判断ステップの例を示す図である。
【図3】 この発明で対象とする車両の駆動系統およびその制御系統を模式的に示すブロック図である。
【図4】 その無段変速機の一例を模式的に示す図である。
【図5】 この発明で対象とする無段変速機における変速制御のための油圧回路の一部を示す油圧回路図である。
【符号の説明】
1…エンジン、 2…変速機構、 6…電子制御装置、 7…加減速操作装置、 10…無段変速機、 13…電子制御装置、 14…シフト装置、 20…駆動プーリー、 22…ベルト、 27…油圧アクチュエータ、 31…第1流量制御弁、 32…第2流量制御弁、 39…第1ソレノイドバルブ、 40…第2ソレノイドバルブ、 48…調圧弁、 60…回転数センサ。
Claims (2)
- 所定の回転部材の実回転数と目標回転数との偏差に基づいて変速比をフィードバック制御し、前記回転部材が低回転数となる所定車速以下の低車速状態では、前記フィードバック制御を禁止する無段変速機の変速制御装置において、
登坂路を走行しているか否かを判断する手段と、
前記フィードバック制御の禁止を解除する車速を、前記登坂路を走行していることが前記手段で判断された場合には、登坂路を走行していることが前記手段で判断されていない場合より低車速に設定するフィードバック制御復帰条件設定手段と
を備えていることを特徴とする無段変速機の変速制御装置。 - 前記フィードバック制御復帰条件設定手段は、加速要求量が所定値以上になっている時間が予め定めた基準時間以上となったことにより前記登坂路の走行を判断する手段を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置。
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