JP2756189B2 - 高疲れ寿命の窒素ケイ素ベアリングボール - Google Patents

高疲れ寿命の窒素ケイ素ベアリングボール

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Description

【発明の詳細な説明】 先進的な構造用セラミック材料は、それらの優れた性
能特性のおかげで産業界の注目を獲得している。これら
の特性、例えば優れた高温強度、高い靭性、そして熱衝
撃や酸化に対する耐性といったものが、様々な応用分野
におけるそれらの可能性ある用途にとっての基礎を提供
している。
米国特許第4935388号明細書(Lucek)では、セラミッ
ク材料の信頼性はその空間的な均質性に相関づけること
ができること、そしてそのような均質性は材料が光学異
常を示す程度により特徴づけることができることが示唆
されている。詳しく言えば、Lucekは、窒化ケイ素の信
頼性はこの材料が空間的に均質である場合、例えば約70
ミクロンより大きい光学異常を持たない場合に、非常に
向上することを教示している。Lucekは、上記の光学異
常は、多孔性の領域、鉄といったような物質による汚染
の領域、そして微小割れのある領域を含めて、とは言え
これらに限定されない、多数の不均質な現象の前兆とな
ることを示唆している。Lucekにより開示された、約1w/
oのMgOを焼結助剤として含有する窒化ケイ素セラミック
は、ASTMの試験STP 771で6.9GPaの適用接触応力下にお
いて少なくとも4百万回の応力サイクルのL10値により
定義される転がり疲れ寿命(rolling contact fatigue
life)(「RCF寿命」)を有する。このRCF寿命は既知の
最高のものの一つではあるが、RCF寿命の向上した窒化
ケイ素材料が商業的に引き続き求められている。
それゆえに、優れたRCF寿命を有する窒化ケイ素材料
を提供することが本発明の目的である。
発明の概要 本発明によれば、 a)窒化ケイ素の結晶相少なくとも約94w/o、及び b)Mg、Al、Si及びOから本質的になる単一粒界相、 から本質的になるベアリングボールが提供される。
好ましい態様においては、粒界相は、マグネシアとし
て、1〜2w/oのMg、アルミナとして、0.2〜1.0w/oのA
l、シリカとして、2〜4w/oのSi、及び酸素から本質的
になる。より好ましくは、粒界相のMg成分は、マグネシ
アとして、ベアリングの1.0〜1.6w/oであり、粒界相のA
l成分は、アルミナとして、0.3〜0.6w/oであり、そして
粒界相のSi成分は、シリカとして、2.0〜3.0w/oであ
る。殊に好ましい態様では、ベアリングは、適用された
6.9GPaの一定応力の下でASTMの試験771で5〜8千万回
の応力サイクルのL10値を有する。
本発明の詳しい説明 窒化ケイ素と約1w/oのMgOから本質的になる未焼結体
に約0.20〜約1.0w/oのアルミナを加えると、思いも寄ら
ず高いRCF寿命のセラミックが得られることが、思いも
寄らないことに見いだされた。
理論に束縛されるのを望むことなしに、Lucekの従来
の窒化ケイ素セラミックを焼結する際には、MgO焼結助
剤と3w/oのシリカ(不純物として窒化ケイ素粉末中に存
在する)が平衡した少なくとも二つの不混和性の液相を
形成して、その結果焼結体中に少なくとも二つの粒界が
できたものと思われる。この不均一な粒界相が多分、セ
ラミックの強度、靭性及びRCF寿命を低下させた。本発
明のアルミナの添加は、平衡した単一のMgO−SiO2−Al2
O3相をもたらして、その結果状態図に応じて単一の粒界
相になるものと信じられる。それゆえに、より均一で且
つより良好な特性が得られる。
本発明の窒化ケイ素セラミックは、典型的な材料と通
常の処理工程から製造することができる。好ましい態様
においては、このセラミックは窒化ケイ素粉末又はその
前駆物質から作られる。セラミックを窒化ケイ素粉末か
ら作る場合には、任意の典型的窒化ケイ素粉末を使用す
ることができる。典型的に、窒化ケイ素は、本発明のセ
ラミックの少なくとも約94w/o、好ましくは約97〜約98.
5w/oを構成する。
本発明の好ましい態様では、マグネシアとアルミナを
焼結助剤として使用する。マグネシアは、焼結したセラ
ミックの約1.0〜約2.0w/o、好ましくは約1.0〜約1.6w/o
の量でもって加えられる。最も好ましくは、純度が99%
より高くて平均粒子寸法が1ミクロン未満のMgOを約1w/
o加える。同様に、アルミナは、焼結したセラミックの
約0.20〜約1.0w/o、より好ましくは約0.4〜約0.6w/oの
量でもって加えることができる。最も好ましくは、純度
が99%より高くて平均粒子寸法が1ミクロン未満のAl2O
3を約0.47w/o加える。
シリカは、出発窒化ケイ素粉末中に不純物として存在
してもよい。結果として、ケイ素は、焼結セラミックの
粒界相にシリカとして当該セラミックの約2〜4w/o、好
ましくは2〜3w/oの量でもって存在することができる。
窒化ケイ素粉末と焼結助剤粉末は、ボールミル処理又
はアトリッションミル処理を含めて、とは言えこれらに
限定されず、知られている任意の混合法により混合する
ことができる。本発明の好ましい態様では、振動ミル処
理が好ましい。
未焼結体を作る場合、未焼結体の形成は当該技術で使
用される任意の典型的方法により行うことができる。こ
れらの方法には、スリップ鋳込み、射出成形、フリーズ
キャスティング、及び常温等静圧圧縮成形(cold isost
atic pressing)が含まれる。本発明の好ましい態様で
は、本発明の粉末を常温等静圧圧縮成形する。
本発明の焼結サイクルは、無加圧焼結(pressureless
sintering)、ガス加圧焼結、高温圧縮、及びガラスを
使用する熱間等静圧圧縮成形(「ガラス封入ヒッピング
(glass encapsulated hipping)」)を含めて、任意の
通常の焼結法を含むことができる。本発明の好ましい態
様においては、米国特許第4446100号及び第4339271号各
明細書に記載されたガラス封入ヒッピング法が使用され
る。米国特許第4446100号及び第4339271号を利用する態
様は、非常に高い充填効率で、すなわち成形品が互いに
接触して、実施されるのが更に好ましい。
例1 次に示す特性を持つ窒化ケイ素粉末をこの例における
粉末として使用した。それらの特性とは、約90w/oのα
−Si3N4、約2.0w/o未満の全酸素、0.1w/o未満のカルシ
ウム、約0.03w/oの鉄、約0.05w/oのアルミニウム、そし
て表面積が約5〜9m2/gである。
この粉末の約98重量部を約1.33重量部の試薬用炭酸マ
グネシウムと約0.47重量部のアルミナ、そしてイソプロ
ピルアルコールと一緒にして、固形分が45%のスラリー
を作った。このスラリーを、Si3N4ミル媒体を用いて振
動ミルで同時にブレンド及びミル処理した。最後の表面
積は約10〜14m2/gであった。得られたスラリーを20ミク
ロンのスクリーンと磁気分離器を通過させた。直交流式
のろ過によりスラリーを65%固形分に濃縮した。次に、
粉末の約1.25w/oの量のPVP(ポリビニルピロリドン)を
スラリーに加えた。次いでスラリーを防爆のスプレー乾
燥機で乾燥させた。次に、乾燥した粉末を30メッシュの
ナルゲン(nalgene)スクリーンを通過させた。上述の
操作の全ては、窒化ケイ素処理専用のクラス1000のクリ
ーンルームで行った。乾燥した凝集粉末を30ksi(207MP
a)で常温等静圧圧縮成形して円筒にし、そして粉砕し
て直径が約0.52インチ(13.2mm)、長さが約3.8インチ
(96.5mm)の棒にした。これらの圧粉体を600℃で空気
焼成してPVPを除去した。試料をガラス媒体に封入し、
約1790℃の温度で約1時間、30,000psi(20.7MPa)の圧
力で熱間等静圧圧縮成形した。
例2及び3 1/4インチ(6.35mm)のボールと3×4×50mmの屈曲
棒を作ったことを除いて、上述の方法を本質的に同じよ
うに繰り返した。
得られたセラミックを硬さについて測定した。10kg荷
重によるダイヤモンド正角錐ビッカース硬度測定のくぼ
みを作った。平均硬度は約15.2GPaであった。これと比
較して、マサチューセッツ州ウースターのノートン・カ
ンパニー製のMgが1w/oの窒化ケイ素ベアリング材料のNB
D−200は、硬度が約15〜15.6GPaである。
P.Chantikulらにより“A Critical Evaluation of In
dentation Techniques for Measuring Fracture Toughn
ess II:Strength Methods",J.Am.Ceram.Soc.64(9),p
p.539−544(1981)に記載された手順に従って、内側の
スパン内の引張面にビッカース硬度測定のくぼみ(10kg
荷重)のある3×4×50mmの4点曲げ試験片を約0.5mm/
minのクロスヘッド速度で破壊させて、破壊靭性を測定
した。本発明のセラミックの平均の靭性は約5.6MPa・m
1/2であった。これに比べて、NBD−200の破壊靭性は約
5〜5.8MPa・m1/2である。
本発明のセラミックの4点曲げ強度も測定した。40mm
の外側スパンと20mmの内側スパンの試験ジグによる3×
4×50mmのタイプB試験片(ASTM C1161−90)を選ん
だ。平均の曲げ強度は約950MPaと測定された。これと比
べて、NBD−200の曲げ強度は約700〜850MPaである。
引張強度も、ASCERA引張試験手順により分析した。こ
の手順は、Brit.Ceram.Trans J.,89,21−23,1990に提示
されている。本発明の引張強度は約475MPaであることが
分かった。これと比較して、NBD−200の引張強度は約40
0MPaである。
例2で作製した棒を転がり疲れ(RCF)試験、具体的
にはASTM−STP 771に記載された加速ベアリング試験法
による試験にかけた。この試験法では、試験材料の疲れ
破損を加速するため、使用中に標準的に遭遇するよりも
高い接触圧力を適用する。この試験は多数の試験片から
のデータの統計的分析を利用し、そして結果は標準的
に、所定の応力レベルで試験された試験片のXパーセン
トに破壊を生じさせる応力サイクル数を表す変数Lxに関
して報告される。本発明についてRCF試験を行う際に
は、AISI 52100鋼製の三つのスレーブボールを、本発明
の窒化ケイ素からなる棒に約6.9GPaの平均接触応力で負
荷した。この棒はモーターを用いて約3600rpmで回転さ
せた。スレーブボールと棒の両方を、ドリップフィーダ
ーにより1分当たり約8滴の速度で供給される潤滑油に
より潤滑した。この試験で、棒の周囲に幅が約0.1イン
チ(2.54mm)の疲れ跡(fatigue track)を作った。本
発明の窒化ケイ素は標準の疲れ様式と均一な摩耗を示し
た。RCF試験にかけた本発明の24本の棒のうちで、破損
した最初の棒は約5400万サイクルで破損した。約0.74の
ワイブル勾配を仮定すると(すなわち本発明がNBD−200
と同じ破損機構を取るとすると)、約8000万サイクルの
L10が本発明について実現される。これに比べて、NBD−
200のL10転がり疲れ寿命は400万サイクルである。
例1〜3で例示した本発明の機械的特性を、比較用の
窒化ケイ素セラミックNBD−200とともに、表1に要約し
て示す。
本発明の窒化ケイ素は、ボールベアリング、ローラー
ベアリング、プレーンスライディングベアリング、及び
そのほかの構造用あるいは摩耗用途を含めて、とは言え
それらに限定されずに、多数の通常のセラミック用途で
使用することができる。

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記のa)及びb)からなる焼結された窒
    化ケイ素ボールベアリングであり、 a)当該ボールベアリングの少なくとも94w/oの、窒化
    ケイ素の結晶相、 b)Mg、Al、Si及びOから本質的になる単一粒界相、 上記粒界相が、マグネシアとして、当該ボールベアリン
    グの1〜2w/oのMg、アルミナとして、当該ボールベアリ
    ングの0.2〜1.0w/oのAl、シリカとして、当該ボールベ
    アリングの2〜4w/oのSi、及び酸素から本質的になるボ
    ールベアリングであって、ASTMの試験771で6.9GPaの適
    用接触応力下において少なくとも5000万回の応力サイク
    ルのL10値を持つことを特徴とする、焼結された窒化ケ
    イ素ボールベアリング。
  2. 【請求項2】前記粒界相のAl成分が、アルミナとして、
    当該ボールベアリングの0.3〜0.6w/oである、請求の範
    囲第1項記載の焼結された窒化ケイ素ボールベアリン
    グ。
  3. 【請求項3】前記粒界相のSi成分が、シリカとして、当
    該ボールベアリングの2.0〜3.0w/oである、請求の範囲
    第1項記載の焼結された窒化ケイ素ボールベアリング。
  4. 【請求項4】少なくとも6000万サイクルのL10値を持
    つ、請求の範囲第1項記載の焼結された窒化ケイ素ボー
    ルベアリング。
  5. 【請求項5】少なくとも7000万サイクルのL10値を持
    つ、請求の範囲第1項記載の焼結された窒化ケイ素ボー
    ルベアリング。
  6. 【請求項6】少なくとも950MPaの曲げ強度を有する、請
    求の範囲第1項記載の焼結された窒化ケイ素ボールベア
    リング。
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