JP2705453B2 - アクリル系糸条のスチーム延伸方法およびスチーム延伸装置 - Google Patents

アクリル系糸条のスチーム延伸方法およびスチーム延伸装置

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JP2705453B2 JP4121999A JP12199992A JP2705453B2 JP 2705453 B2 JP2705453 B2 JP 2705453B2 JP 4121999 A JP4121999 A JP 4121999A JP 12199992 A JP12199992 A JP 12199992A JP 2705453 B2 JP2705453 B2 JP 2705453B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はアクリル系糸条のスチー
ム延伸方法およびスチーム延伸装置に関するものであ
る。さらに詳しくは、アクリル系太物糸条を高倍率で延
伸するスチーム延伸方法およびスチーム延伸装置に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】ポリアクリロニトリル系繊維は炭素繊維
のプリカーサとして利用されており、性能の優れた炭素
繊維を得るために多くの改善技術が開示されている。炭
素繊維はそのプリカーサであるアクリロニトリル系繊維
を紡糸する製糸工程、200〜400℃の空気雰囲気中
で該繊維を加熱焼成して酸化繊維に転換する耐炎化工
程、窒素,アルゴン,ヘリウム等の不活性雰囲気中でさ
らに300〜2500℃に加熱して炭化する炭化工程を
経ることで得られ、複合材料の強化繊維として航空宇宙
用途やスポーツ用途、一般産業用途などに幅広く利用さ
れている。
【0003】これらのうち一般産業分野への用途拡大の
要求に応えるためには、第一に製造原価を軽減して、廉
価な炭素繊維を提供することが重要である。従来、炭素
繊維に係わる改善は性能の改善に関するものが多く、製
造原価の低減を目的としたものは少なかった。
【0004】そこで、炭素繊維のプリカーサの製造方法
に関して、処理する糸条を太く(太糸条化)するととも
に、糸条幅を狭く(高密度化)することによって、限ら
れた設備の中で生産量を増大させること、即ち、設備生
産性を向上させることを検討した。製糸工程での糸条単
位を太糸条化したりあるいは高密度化すると、特に延伸
工程や水洗工程および工程油剤の付与工程で単繊維間接
着が発生したり、延伸での毛羽や断糸、水洗不足、油剤
の付着斑が惹起されて原糸の製造工程における工程通過
性が阻害されるのみならず、次の焼成工程においても断
糸や毛羽が発生して工程通過性を阻害すると共に得られ
る炭素繊維の物性をも低下させる原因になるのである。
これらの製糸工程での阻害要因は、糸条への加熱や、浴
液の浸透が均一とならず、処理斑が発生することにある
ことをつきとめ、これらの要因を排除することによっ
て、工程通過性を改善することについて鋭意検討した。
【0005】このうち、スチーム延伸については、これ
を安定に行う手段として、これまでに特開昭58−21
4520号公報、特開昭58−214521号公報、特
開昭60−193632号公報および特開昭60−25
7219号公報に改善技術が開示されている。
【0006】特開昭58−214520号公報には、延
伸チューブの両端にラビリンスシールを配し、ラビリン
ス径と延伸張力を適正化して、糸条を1段で延伸しよう
とする技術が開示されている。しかしながら、本発明の
目的である太い糸条の延伸においては、ラビリンス径の
大きさおよび延伸張力を適正化しても、1段延伸では太
糸条の束内均一加熱が不可能で延伸切れが発生する問題
がある。
【0007】特開昭60−193632号公報および特
開昭60−257219号公報にはいずれも加圧延伸機
に関する技術が開示されており、延伸装置の両端に加圧
流体のシール構造を有し、前者においてはスチーム等の
加圧流体の吹き込み口を糸条の導入側に、後者において
は糸条の出側に設けて1段延伸を行うものである。特に
後者においては加圧流体の吹き込み位置を糸条の出側に
配し、糸条と加圧流体の流れを向流とし熱効率を高める
構造としたものであるが、これをもってしても太糸条の
均一加熱は不可能であった。
【0008】特開昭58−214521号公報には、特
開昭58−214520号公報と同様、1段延伸でなお
かつスチームの湿り度を適正化し、糸条を適度に濡ら
し、可塑効果を与えることにより延伸性を向上させよう
とする技術が開示されているが、やはり太糸条の場合に
は毛羽の発生が回避できなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は太糸条
で糸条密度の高い糸条に対して、工程通過性の優れたス
チーム延伸方法および延伸装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の延伸方法は上記
課題を解決するために次の構成を有する。すなわち、ア
クリロニトリル90重量%以上からなり、糸条を構成す
る単糸の数が4000本以上のアクリル系糸条を、延伸
チューブにスチームを吹き込むことにより延伸する方法
において、上記の延伸チユーブを予熱状態の延伸工程と
それに続く加熱状態の延伸工程の2工程に分割し、加熱
状態の延伸工程における圧力を予熱状態の延伸工程にお
ける圧力より0.2〜5.0kg/cm2 高くするとと
もに、糸条の延伸張力を0.1〜1.0g/dの範囲と
することを特徴とするアクリル系糸条のスチーム延伸方
法である。
【0011】また、本発明の延伸装置は、次の構成を有
する。すなわち、糸条通過口を有するシール部材を両端
に有する延伸チューブにスチーム吹き込み口を備えた延
伸装置において、上記延伸チューブは糸条導入側に予熱
域、糸条取り出し側に加熱域の分割された2領域を有
し、加熱域にスチーム吹き込み口を設けるとともに、予
熱域と加熱域の間に糸条通過口を有するシール部材を設
けたことを特徴とするアクリル系糸条のスチーム延伸装
置である。
【0012】以下、本発明の詳細と好ましい態様を説明
する。本発明の方法および装置に適用するアクリル系糸
条の素材としてのアクリル系重合体はアクリロニトリル
90重量%以上からなる重合体とするものである。した
がって、10重量%以内で他のモノマーを共重合成分と
して含んでいても良い。コモノマーとしては、アクリル
酸、メタアクリル酸、イタコン酸もしくはこれらのメチ
ルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチ
ルエステル、アルカリ金属塩、アンモニウム塩またはア
リルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホ
ン酸もしくはこれらのアルカリ金属塩等のうち一種また
は二種以上を用いることができる。
【0013】アクリル系重合体は、公知の乳化重合、塊
状重合、溶液重合等の重合法を用いて、重合され、さら
にこれらの重合体からアクリル系繊維を製造するに際し
てはジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド(以
下、DMSO)、ジメチルホルムアミド、硝酸、ロダン
ソーダ水溶液等を溶媒とするポリマー溶液を紡糸原液と
して、通常の湿式紡糸法、乾湿式紡糸法によって紡糸
し、その後、浴中延伸を行う。浴中延伸は紡出糸を直接
行っても良いし、一度水洗し溶媒を除去した後行っても
よい。浴中延伸は、通常、50〜98℃の延伸浴中で約
2〜6倍に延伸される。浴中延伸後、通常、油剤を付与
し、ホットローラ等で乾燥緻密化した後、スチーム延伸
に供される。
【0014】本発明に適用する糸条は、前述したアクリ
ル系糸条で加圧スチーム延伸処理するものであれば特に
限定はないが、炭素繊維プリカーサを製造する場合に発
明の効果が後段の焼成工程で重要性を増すので好適であ
る。
【0015】本発明に適用する糸条は、糸条を構成する
単繊維の数が4000フィラメント以上、さらには60
00フィラメント以上が好ましく、また、最終的に得ら
れるアクリル糸条の総繊度が4000デニール以上、さ
らには6000デニール以上である場合に特に効果が著
しく発現するので好ましい。
【0016】本発明の延伸方法は、延伸チューブにスチ
ームを吹き込むことにより延伸するものであるが、予熱
状態の延伸工程とそれに続く加熱状態の延伸工程の2工
程に分割して延伸するものである。
【0017】また、本発明の延伸方法では、加熱状態の
延伸工程における圧力を予熱状態の延伸工程における圧
力より0.2〜5.0kg/cm2 、さらには、1.0
〜4.0kg/cm2 高くするものである。この圧力差
が0.2kg/cm2 未満では、従来の1段延伸と同
様、前段の予熱部で糸条内の延伸張力斑が起こり、毛羽
が発生するという問題があり、一方、圧力差が5.0k
g/cm2 を越えると予熱部の温度が低すぎて、十分な
予熱が行われないか、または、予熱が十分であったとし
ても後段の圧力が高すぎて、延伸ゾーンで糸条の溶断が
起こるという問題がある。
【0018】また、本発明の延伸方法は、糸条の延伸張
力を0.1〜1.0g/d、好ましくは0.2〜0.8
g/dの範囲に保持するものである。糸条の延伸張力が
0.1g/d未満では、スチーム圧力が高すぎて(温度
が高すぎて)溶断による延伸切れが発生するという問題
があり、一方、延伸張力が1.0g/dを越えるとスチ
ーム圧力が低すぎて(温度が低すぎて)延伸切れが起こ
るという問題がある。このような条件をとることによ
り、従来の1段延伸方法で発生していた太糸条の加熱斑
による延伸切れ等の工程トラブルが解消するのである。
即ち、従来の一段延伸では延伸チューブの糸条導入部で
糸束の内部と外部に温度差が生じ、そのため糸束の内外
層で延伸張力差が生じ、延伸切れが引き起こされるので
ある。一方、本発明においては上記条件をとることによ
り、延伸チューブの糸条導入側において延伸温度以下で
糸条が十分予熱された後、後段で一気に糸条が加熱され
るため均一な延伸が行われるのである。
【0019】また、本発明で用いる加圧スチームは、ア
クリル系糸条を適度に濡らして可塑化効果を与えること
により、延伸性を高める目的で、適度の湿り度を保持す
ることが好ましい。なお、糸条に含まれる水分が低すぎ
て、十分な可塑化効果が得られず延伸性が低下し単繊維
切れによる毛羽が発生することを防ぎ、一方、その後の
乾燥工程における糸条の水分蒸発負荷が増大することを
防ぐ観点から、湿り度の範囲は10〜50%が好まし
い。
【0020】湿りスチームは、例えば、飽和スチームを
その配管の途中で冷却することにより容易に作ることが
でき、Qwを冷却水量(Kg/Hr)、△tを冷却水の
スチーム冷却前後の温度差(℃)、Cpを冷却水比熱
(Kcal/Kg℃)、Qsをスチーム流量(Kg/H
r)、rをスチーム潜熱(Kcal/Kg)、Xsをス
チーム湿り度(%)としたとき、湿り度はQw・△t・
Cp=Qs・r・Xs/100で定義される。
【0021】なお、本発明の延伸方法において、延伸点
が加熱域から予熱域にずれて低い温度で無理に延ばさ
れ、毛羽発生の原因になることを有効に防止する観点か
ら、予熱域に吹き込む加圧スチームは加熱域に供給する
スチームよりも乾き度の高いスチームを供給するのが好
ましく、予熱域に吹き込む加圧スチームを飽和スチーム
または湿り度0〜10%の加圧スチームとするのがさら
に好ましい。
【0022】また、本発明の延伸装置は、糸条通過口を
有するシール部材を両端に有する延伸チューブにスチー
ム吹き込み口を備えた延伸装置において、上記延伸チュ
ーブは糸条導入側に予熱域、糸条取り出し側に加熱域の
分割された2領域を有し、加熱域にスチーム吹き込み口
を設けるとともに、予熱域と加熱域の間に糸条通過口を
有するシール部材を設けたアクリル系糸条のスチーム延
伸装置である。
【0023】本発明の延伸装置は、スチーム圧を適度に
減じて調節可能とするため予熱域と加熱域の間に糸条通
過口を有するシール部材を設けるものである。
【0024】また、本発明の延伸装置はスチーム吹き込
み口を加熱域に設けるものであるが、予熱域に隣接した
位置に設けるのが、糸条内部への熱伝導を良くするため
に好ましい。
【0025】延伸チューブ内の加圧スチームのシール部
材は、通常、ラビリンスノズルと称する糸条の通過とス
チームの流出を同時に行う小口径を有するパイプを一個
あるいは数個連ねて用いるが、これに限定されるもので
はない。なお、ラビリンスノズルを使用する場合は、該
小口径の形状、寸法および使用個数は目的の圧力差が保
持できるように設計するものであるが、チューブ内の圧
力を糸条通過口の大小により所定の圧力範囲に調節でき
るものであればよい。
【0026】なお、本発明の延伸装置において、予熱域
に加熱域のスチーム吹き込み口と独立したスチーム吹き
込み口を設けることは、予熱域と加熱域のスチーム圧、
スチームの湿り度を容易に独立して制御しうるので好ま
しい態様である。ここで、独立したスチーム吹き込み口
とは、予熱域のスチーム吹き込み口に接続されたスチー
ム供給装置が、加熱域のスチーム吹き込み口に接続され
たスチーム供給装置と独立であることを意味する。
【0027】2次延伸倍率(スチーム延伸倍率)は、予
め行われた浴中での1次延伸倍率によって決定すべきで
あるが、通常、浴中で2〜6倍の延伸を行い全延伸倍率
を7〜16倍の範囲にするのが好ましい。この時のスチ
ーム圧力は、延伸倍率と延伸温度によって左右される
が、本発明における糸条の張力は如何なる延伸倍率のも
とでも、先に述べたように0.1〜1.0g/dに保持
するものである。
【0028】次に、図面にしたがって本発明の実施態様
をさらに詳細に説明する。図1は本発明装置の一例で、
延伸チューブの両端および中央部にスチームのシール構
造を有した2段延伸機構を示した断面説明図である。糸
条Aはフィードローラ8を経て、加圧延伸装置Bへ供給
される。この延伸装置は、糸条の供給口1を有するシー
ル部材4と糸条取り出し口2を有するシール部材5を両
端に備え、かつ、加圧スチームの供給口3に隣接して糸
条導入側にシール部材11を設けた円筒状容器10から
構成されている。延伸機に供給される加圧スチームは圧
力制御装置12で圧力制御された後、加湿器7およびス
チーム導入管6を経て延伸チューブ10に導入される。
糸条Aは、この加圧スチーム延伸装置B中を通過する間
に加湿スチームにより濡れた状態で加圧加温され、ドロ
ーローラ9により延伸されるが、延伸チューブの前段の
予熱域(低スチーム圧部)Cで予熱され、後段の加熱域
(高スチーム圧部)Dで延伸される。この予熱ゾーンと
延伸ゾーンの圧力差の制御は、シール部材4,5,およ
び11の開口径を調節することにより行われる。この
際、糸条Aが円滑に通過し、かつ、チューブ内の圧力バ
ランスが適正に保たれるように開口径を調整することが
好ましい。このシール部材の形状、寸法は上記条件が満
たされるなら特に限定されるものではない。スチームの
供給口の位置は、糸条の予熱と延伸が十分に行われるこ
とを考慮すれば、延伸チューブの中央部付近に設けるこ
とが好ましい。
【0029】図2は従来から行われている加圧スチーム
延伸装置の一例で、延伸チューブの両端にスチームのシ
ール部材を有した1段延伸機構を示しており、本発明の
特徴である、減圧手段を備えた糸条導入側の予熱域と糸
条取り出し側の加熱域との2領域に分割されていない。
【0030】図3は本発明装置の一例で、延伸チューブ
の両端および中央部にスチームのシール構造を有した2
段延伸機構を示した断面説明図である。糸条Aはフィー
ドローラ8を径て、加圧延伸装置Bへ供給される。この
延伸装置は、糸条の供給口1を有するシール部材4と糸
条取り出し口2を有するシール部材5を両端に備えた円
筒状容器(延伸チューブ)10から構成されている。延
伸チューブ10はシール部材11により予熱域Cと加熱
域Dに分けられ、それぞれの領域に加圧スチーム供給口
3、3’を有している。それぞれの領域に供給される加
圧スチームは加湿器7、7’およびスチーム導入管6、
6’を径て延伸チューブ10に導入される。糸条Aは、
この加圧スチーム延伸装置B中を通過する間に加湿スチ
ームにより濡れた状態で加圧加温され、ドローローラ9
により延伸されるが、延伸チューブの前段の予熱域(低
スチーム圧部)Cで予熱され、後段の加熱域(高スチー
ム圧部)Dで延伸される。この予熱ゾーンと延伸ゾーン
の圧力制御は、それぞれの供給スチームの圧力制御器1
2、12’ならびにシール部材4,5,および11の開
口径を調節することにより行われる。この際、糸条Aが
円滑に通過し、かつチューブ内の圧力バランスが適正に
保たれるように開口径を調整することが好ましい。この
シール部材の形状、寸法は上記条件が満たされるなら特
に限定されるものではない。スチームの供給口3、3’
の位置は、糸条の予熱と延伸が十分に行われることを考
慮すれば、シール部材11、4に隣接した位置に設ける
ことが好ましい。
【0031】
【実施例】以下、実施例をあげて本発明の効果を具体的
に説明する。 (実施例1)アクリロニトリル99.7モル%、イタコ
ン酸0.3モル%からなる固有粘度[η]が1.80の
アクリル系重合体の20%DMSO溶液を紡糸原液とし
て、孔径0.06mmφ、孔数6000および1200
0の口金を用いてDMSO55%、水45%からなる凝
固浴中に吐出し凝固糸を得た。該凝固糸を水洗後熱水中
で5倍に延伸した後、乾燥緻密化を行い、引続いて加圧
スチーム延伸工程を経て乾燥し、単繊維繊度が1.0d
で、総繊度が6000dおよび12000dの延伸糸を
得た。
【0032】上記スチーム延伸工程において、図2に示
すとおりの、延伸チューブの両端をラビリンスノズルで
1段シールした延伸装置および図1に示すとおりの、延
伸チューブの両端をラビリンスノズルでシールし、さら
にチューブ中央部のスチーム吹き込み口に隣接し、かつ
糸条導入側にもう1段ラビリンスシールを設けた延伸装
置を用いた。
【0033】スチーム延伸にあたって、加圧スチームの
湿り度、圧力および糸条の延伸張力を変更して延伸しそ
れぞれの延伸糸の毛羽の発生状態を評価した。製糸条件
と評価結果を表1に示した。なお、毛羽の評価は走行状
態の糸条を肉眼で10分間観察し、糸条表面の毛羽の数
をカウントした。
【0034】
【表1】 表1の結果から、図2に示したとおりの従来の一段延伸
装置では、延伸切れによる毛羽の発生が非常に多いこと
がわかる。一方、予熱域と延伸域を備えた図1に示した
とおりの本発明の2段シール延伸装置を用いると毛羽の
発生が大幅に改善されることがわかる。
【0035】(実施例2)実施例1と同じアクリル系紡
糸原液を、0.06mmφ、孔数12000の口金を用
いて、実施例1と同じ条件で紡糸、水洗および浴延伸し
た後、乾燥糸を得た。
【0036】この乾燥糸を図1に示したとおりの本発明
の2段シールスチーム延伸装置を用いて、スチームの圧
力、湿り度および糸条の延伸張力を変更して延伸し、総
繊度12000dの延伸糸を得た。これを巻取り装置に
より紙製ボビンに巻き取った。各水準のボビンから長さ
100mの糸条を引出し、毛足5mm以上の表面毛羽を
目視でカウントし、結果を表2に示した。
【0037】
【表2】 比較例で示したように従来の1段延伸では延伸出来なか
ったり極めて毛羽が多かったものが、実施例2の2段シ
ール延伸では実施例1同様全て毛羽の少ない原糸が得ら
れた。しかしながら、チューブ内の圧力勾配および糸条
の延伸張力によって、毛羽の発生状態が微妙に変化して
おり、なかでも予熱域と延伸域の圧力差が0.5〜4.
5kg/cm2 および糸条の延伸張力が0.2〜0.8
g/dの範囲で原糸の毛羽がより少なく好ましい品位で
あった。
【0038】(実施例3)実施例1と同じアクリル系紡
糸原液を、0.06mmφ、孔数6000および120
00の口金を用いて、実施例1と同じ条件で紡糸、水洗
および浴延伸した後、乾燥糸を得た。
【0039】この乾燥糸を図3に示したとおりの延伸チ
ューブの両端をラビリンスノズルでシールし、糸条導入
部のラビリンスシールに隣接したスチーム吹き込み口を
有し、さらにチューブ中央部のスチーム吹き込み口に隣
接し、かつ糸条導入側にもう1段ラビリンスシールを設
けた延伸装置を用い、スチーム延伸した。
【0040】スチーム延伸にあたって、図3における
C、D各領域に吹き込む加圧スチームの湿り度、圧力お
よび糸条の延伸張力を変更して延伸しそれぞれの延伸糸
の毛羽の発生状態を評価した。製糸条件と評価結果を表
3に示した。
【0041】
【表3】 表3の結果から、図2に示したとおりの従来の延伸装置
を用いた方法(スチーム吹き込み1段)に比べて、実施
例1,2同様、本発明による延伸方法(スチーム吹き込
み2段)を用いると毛羽の発生が大幅に改善されること
がわかる。
【0042】(実施例4)実施例1と同様のアクリル系
紡糸原液を、0.06mmφの孔数12000の口金を
用いて、実施例1と同じ条件で紡糸、水洗および浴延伸
した後、乾燥糸を得た。
【0043】この乾燥糸を図3に示したとおりの2段ス
チーム吹き込み延伸装置を用い、スチームの圧力をC領
域は3.0kg/cm2 、D領域は5.0kg/cm2
に調整し、それぞれに吹き込むスチームの湿り度を変更
して2.8倍延伸して実施例1と同様の評価を行なっ
た。製糸条件と評価結果を表4に示す。
【0044】
【表4】 C領域(予熱域)、D領域(加熱域)に吹き込むスチー
ム湿り度に最適の範囲が存在するのがわかる。
【0045】(実施例5)実施例1と同様のアクリル系
紡糸原液を、0.06mmφの孔数12000の口金を
用いて、実施例1と同じ条件で紡糸、水洗および浴延伸
した後、乾燥糸を得た。
【0046】この乾燥糸を図3に示したとおりの2段ス
チーム吹き込み延伸装置を用いて、スチームの圧力、お
よび糸条の延伸張力を変更して2.8倍延伸し、トータ
ルデニール12000dの延伸糸を得て、これを巻取り
装置により紙製ボビンに巻き取った。この際、C領域
(予熱域)に吹き込むスチーム湿り度を0%、D領域
(加熱域)に吹き込むスチーム湿り度を25%とした。
【0047】実施例1と同様の評価に加えて、各水準の
ボビンから長さ100mの糸条を引出し、毛足5mm以
上の表面毛羽を目視でカウントする評価結果を表5に示
した。
【0048】
【表5】 比較例で示したように従来のスチーム吹き込み1段延伸
では延伸出来なかったり極めて毛羽が多かったものが、
実施例5の2段吹き込み延伸では実施例1〜4同様全て
毛羽の少ない原糸が得られた。
【0049】
【発明の効果】本発明は、上記の構成とすることによ
り、単糸数が4000本以上の太糸条で糸条密度の高い
アクリル系糸条であっても、断糸や毛羽の発生が少な
い、工程通過性の良好なスチーム延伸方法および装置を
提供することができ、製造原価を低減して、廉価な炭素
繊維を提供することができるという格別の効果を奏する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の延伸装置の一例の断面図である。
【図2】従来のスチーム延伸装置の断面図で、延伸チュ
ーブの両端にシール構造を持った一段延伸機の例であ
る。
【図3】本発明の延伸装置の一例の断面図である。
【符号の説明】
A:延伸に供される糸条 B:加圧延伸装置 C:予熱域(低スチーム圧部) D:加熱域(高スチーム圧部) 1:糸条の供給口 2:延伸糸条の取り出し口 3、3' :スチーム供給口 4:糸条の導入部 5:延伸糸条の取り出し口 6、6' :スチーム導入管 7、7' :供給スチームの加湿器 8:糸条の供給ローラ 9:延伸糸条の引き取りローラ 10:円筒状容器 11:予熱域と加熱域の間の糸条通過口を有するシール
部材 12、12' :スチーム圧力制御装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 猿山 秀夫 愛媛県伊予郡松前町大字筒井1515東レ株 式会社愛媛工場内 審査官 松縄 正登 (56)参考文献 特開 昭58−214520(JP,A) 特開 昭53−139824(JP,A) 特開 昭60−257219(JP,A) 特公 昭46−38617(JP,B1)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アクリロニトリル90重量%以上からな
    り、糸条を構成する単糸の数が4000本以上のアクリ
    ル系糸条を、延伸チューブにスチームを吹き込むことに
    より延伸する方法において、上記の延伸チユーブを予熱
    状態の延伸工程とそれに続く加熱状態の延伸工程の2工
    程に分割、加熱状態の延伸工程における圧力を予熱状
    態の延伸工程における圧力より0.2〜5.0kg/c
    2 高くするとともに、糸条の延伸張力を0.1〜1.
    0g/dの範囲とすることを特徴とするアクリル系糸条
    のスチーム延伸方法。
  2. 【請求項2】予熱域に吹き込むスチームの湿り度よりも
    高い湿り度の、湿りスチームを加熱域に吹き込むことを
    特徴とする請求項1記載のアクリル系糸条のスチーム延
    伸方法。
  3. 【請求項3】糸条通過口を有するシール部材を両端に有
    する延伸チューブにスチーム吹き込み口を備えた延伸装
    置において、上記延伸チューブは糸条導入側に予熱域、
    糸条取り出し側に加熱域の分割された2領域を有し、加
    熱域にスチーム吹き込み口を設けるとともに、予熱域と
    加熱域の間に糸条通過口を有するシール部材を設けたこ
    とを特徴とするアクリル系糸条のスチーム延伸装置。
  4. 【請求項4】予熱域と加熱域が糸条通過口を有するシー
    ル部材によって分割されており、予熱域に加熱域のスチ
    ーム吹き込み口とは独立したスチーム吹き込み口を設け
    ることを特徴とする請求項3記載のアクリル系糸条のス
    チーム延伸装置。
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