JP3033960B2 - 予延伸を用いる新規な炭素繊維製造方法 - Google Patents

予延伸を用いる新規な炭素繊維製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 本発明はポリアクリロニトリルポリマーからの炭素繊
維製造における改良に関する。さらに詳しくは本発明は
このような炭素繊維の製造に用いる先駆物質のスループ
ツトを強化することによつて、費用を有意に節減して高
品質、高性能の炭素繊維を製造する方法に関する。さら
に詳しくは、本発明は多数のポリアクリロニトリルポリ
マー・フイラメント〔このような多数のフイラメントは
しばしば「炭素繊維(ポリアクリロニトリル)先駆物
質」または「先駆物質」と省略して呼ぶ〕は形成後、炭
素繊維製造に用いる酸化の前にその最初の長さの4倍以
上に安全延伸することができる。
PAN(ポリアクリロニトリル)を主成分とする炭素繊
維(これ以降、本発明を説明するために、「炭素繊維」
と呼ぶ)は85重量%以上が元素状炭素である周知物質で
ある。このような炭素繊維は引張付押さと弾性率が特に
すぐれた軽量複合材料とその他の製品の製造を可能にす
るために注目に値する。
炭素繊維の製造方法の改良に伴う用途の増加は、この
製造方法が数年前に初めて導入された時に比べて、その
費用を明白に減じている。さらに、炭素繊維から成る軽
量構造体の魅力は、炭素繊維の物性と構造体の製造に用
いる樹脂材料の最近の明白な改良のために、有意に増大
している。しかし、最近では、物性の進歩による炭素繊
維の可能な用途の拡大にも拘らず、その価格の一時は明
白でルーチンに継続する有意な低下は予想通りには進行
していない。1つの理由は高品質炭素繊維の信頼できる
製造技術がまだ未完成であり、これの製造に用いるプロ
セス条件の巧みな制御と品質を保証するための反復試験
が製造の要件であることである。さらに、材料性能の最
近の進歩は微細デニール先駆物質すなわち小直径フイラ
メントの使用によつて達成させられ、このような微細デ
ニール先駆物質はその製造に同等以上の先駆物質製造プ
ロセス制御を必要とするが、一般にスループツトは低
い。従つて、炭素繊維の加工性と性能の特性が数年間に
わたつて維持され、改良されているが、このような高品
質炭素繊維の製造費用は、微細デニール先駆物質によつ
て製造した新しい炭素繊維に特に関して、予想される程
度には減じられていない。
先駆物質と炭素繊維の製造プロセスの製造ライン速度
の増加が最終炭素繊維の単位重量あたりの費用を減ずる
ことは明らかである。しかし、製造ライン速度、特に先
駆物質の製造速度は、特に慣習的な装置でのその最大限
に一般に近づくため、生成炭素繊維の品質低下を招く危
険性を高める。
現在の方法での炭素繊維の製造費用は2つのカテゴリ
ーに分けられる。第一に、先駆物質の製造費用、例えば
ポリアクリロニトリルの製造に用いるアクリロニトリ
ル、その他のモノマー及び溶媒の材料費、先駆物質の紡
糸に関連する費用、冷水、熱水及び水蒸気中での延伸の
ような、紡糸フイラメントの処理に関連する費用ならび
にプロセス制御と検査に関連する費用がある。炭素繊維
の製造に要する他の費用は先駆物質を酸化し、炭化する
費用、このような酸化と炭化とのプロセス制御に関する
費用及び検査費用である。この先駆物質の重量の約1/2
のみが炭素繊維になるので、先駆物質1ポンドあたりの
製造費用の減少が炭素繊維1ポンドあたりの製造費用の
減少の約2倍になることがわかる。
炭素繊維の製造に有用な先駆物質製造の具体的な説明
は、英国特許第1,324,772号、米国特許第4,100,004号、
第4,001,382号、第4,009,248号、第4,113,847号、第4,3
97,831号、第4,448,740号、第4,452,860号及び日本特許
出願第53−24427号と第59−272341号に述べられてい
る。これらの明細書は、ポリアクリロニトリルフイラメ
ントを酸化の前に熱水、水蒸気及び空気中で延伸させる
先駆物質の製造法を述べている。例えば、日本特許出願
第59−272341号の「実施例1」では湿つた紡糸ポリアリ
ロニトリルフイラメントを熱水浴上で5倍以上に延伸
し、洗浄し、乾燥させてから、酸化の前に乾熱を用いて
170℃において1.3倍に延伸させることが述べられてい
る。他方では、米国特許第4,104,004号は100℃〜160℃
の温度範囲において、例えば130℃において75%まで延
伸させることを述べている。
今回、本発明によつて、この先駆物質を空気、水蒸気
またはその他の流動性媒質中でその最初の長さの4倍以
上に延伸させるような一定温度範囲が発見された。この
結果、1/2未満のスループツトで用いる方法と同じプロ
セス制御方法下で先駆物質のより大きなスループツトが
得られ、しかも同時に、このような延伸によつて炭素繊
維の製造費はごく僅かに上昇するにすぎない。さらに、
この一定温度範囲で得られる延伸は非常に大きいので、
先駆物質の製造中の延伸をある程度減ずるかまたは完全
に省略することができ、スループツトをさらに増加さ
せ、先駆物質製造費用をさらに減ずることができる。
本発明はさらに詳しくは、 (a)ポリアクリロニトリルポリマーを含む紡糸溶液
を、このようなポリマー用の溶媒中で形成する工程; (b)前記ポリマーをダイを通して押出し、多数の連続
フィラメントを形成する工程; (c)これらのフィラメントをさらに長い長さに延伸し
て、先駆物質トウを製造する工程;及び (d)一連のオーブンと炉において、前記先駆物質トウ
を酸化し、次に炭化して炭素繊維トウを形成する工程; を含んで成る、多数の高強度炭素繊維フィラメントを含
んで成るトウまたは束としての形態の炭素繊維を製造す
る方法において、 (i)140℃より高く前記先駆物質トウを酸化させる温
度よりも低い一定温度範囲内の温度(例えば200℃)に
おいて延伸され得る先駆物質トウを選択する工程; (ii)前記先駆物質トウを、140℃より高く前記前駆物
質トウを酸化させる温度よりも低い一定温度範囲内の温
度に加熱する工程; (iii)前記温度に加熱した先駆物質トウを延伸して、
その延伸後の長さが延伸前の長さの少なくとも2倍にな
るようにする工程 を含んで成る、前記の方法に関する。好ましくは、前駆
物質を延伸する以前の最初の長さの少なくとも約2倍
に、一定温度範囲内で延伸するが、この延伸は空気中で
実施する。さらに、ポリアクリロニトリルポリマーをダ
イに通して押出成形した後に、酸化の前に実施する延伸
は沸とう水温度より低い温度での延伸後の一定温度範囲
内での延伸から本質的に成る。さらに、一定温度範囲内
での延伸前のこのような延伸はフイラメントを可塑化す
る状況下での延伸であることが好ましい。
本発明による炭素繊維の製造に有用なポリアクリロニ
トリル先駆物質は、少なくとも約80モル%がアクリロニ
トリルであるエチレン系モノマー(すなわち、エチレン
系不飽和モノマー)の溶液中その他での付加重合によつ
て製造したポリマーである。好ましいポリアクリロニト
リル先駆物質ポリマーはアクリロニトリルと1種類以上
の単官能性エチレン系モノマーとのコポリマーである。
利用可能なエチレン系モノマーは多様であり、例えばア
クリレート、メタクリレート、不飽和ケトン、アクリル
酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、及びこれ
らの塩を含む。好ましいコモノマーはアクリル酸または
メタクリル酸またはこれらの塩を含み、コモノマーの好
ましいモル量は約1.5〜3.5%の範囲内である(ここに参
考文献として関係する米国特許第4,001,382号と第4,39
7,831号とを参照のこと)。
本発明の炭素繊維製造に適したポリアクリロニトリル
先駆物質ポリマーは、例えばジメチルスルホキシド、ジ
メチルホルムアミド、塩化亜鉛、またはチオシアン酸ナ
トリウム溶液のような有機溶媒及び/または無機溶媒に
可溶である。本発明の炭素繊維の製造に用いるポリアク
リロニトリル先駆物質の好ましい実施態様では、約60:1
0:30の具体的な重量比において水、ポリアクリロニトリ
ルポリマー及びチオシアン酸ナトリウムから溶液を形成
する。この溶液を蒸発によつて濃縮し、過して紡糸溶
液を形成する。この紡糸溶液は約15重量%のポリアクリ
ロニトリルポリマーを含むものであることが好ましい。
乾式、乾式/湿式または湿式紡糸法を用いて紡糸溶液
を紡糸口金に通して、ポリアクリロニトリル先駆物質を
形成する。好ましいポリアクリロニトリル先駆物質は乾
式/湿式紡糸法によつて製造するが、この方法では紡糸
溶液から紡糸口金の空隙または紡糸口金間の他の空隙に
通して多数のフイラメントを形成する、凝固剤はチオシ
アン酸ナトリウム水溶液であることが好ましい。紡糸フ
イラメントは凝固浴を出た後に、洗浄し、熱水及び水蒸
気中でその最初の長さの報告に再び延伸する〔ここに参
考文献として関係する米国特許第4,452,860号及び日本
特許出願第53−24427号(1978年)を参照のこと〕。さ
らに、ポリアクリロニトリル先駆物質をシラン化合物の
ようなサイズ剤で処理する(ここに参考文献として関係
する米国特許第4,009,248号を参照のこと)。
ポリアクリロニトリル先駆物質(好ましくはシランで
サイズ処理)は多数(例えば、1000、10,000以上)のフ
イラメントの束のトウ形状である。トウまたは束はそれ
ぞれ別々の紡糸操作によつて形成した2個以上のトウま
たは束の組合せでもありうる。本発明の炭素繊維の製造
への使用に適した好ましいポリアクリロニトリル先駆物
質の空気中での熱反応曲線(thermal responsecurve)
を第1図に示す。この先駆物質は約98モル%のアクリロ
ニトリルと約2モル%のメタクリル酸から成るモノマー
組成物から製造する。
ポリアクリロニトリル先駆物質のフイラメントのデニ
ールは0.6〜6.0デニールの範囲またはそれ以上であるこ
とが好ましい。ポリアクリロニトリル先駆物質の特定デ
ニールの選択は本発明の炭素繊維への先駆物質の次の加
工に影響を与える。例えば、デニールの大きい先駆物
質、例えばフイラメントが1.33デニール以上である先駆
物質を200℃未満の温度(例えば、約150〜160℃)にお
いて延伸して、そのデニールを有意な酸化の前に0.8未
満に減ずることが好ましい。一定温度範囲での大きな延
伸は炭素製造におけるこの後の工程での(例えば酸化
中)このような延伸を不必要にする。
145〜165℃の温度での延伸によつて、生成する先駆物
質はその最初の長さの4.0倍以上になるが;この温度範
囲内での反応が最小であるために、次の酸化と安定化に
とつて望ましいデニールを形成するように、予め選択的
に算出した量である。例えば、2.2デニールフイラメン
トの先駆物質はその最初の長さの2倍に延伸して、次式
による延伸比(S.R.)で1.1デニール・フイラメントの
材料を生ずる: (式中、S.R.はL0/Liに等しく、L0は延伸した長さ、Li
は延伸しない長さ(すなわち最初の長さ)であり、dS
最初のデニール、dNは新しいデニールである)。
望ましい延伸比(S.R.)はフイラメントが入ることの
できる好ましい加熱帯(例えば150℃〜160℃の温度)に
通して先駆物質を迅速に延伸することによつて得られ
る。
第2図は本発明の実施に有用な延伸装置20の設計を略
図として示す。第2図の装置20はプラツトホーム24と、
これを動かすサポート22を有し、プラツトホーム24上に
は入口ロールスタツク26、蒸気加熱ロールスタツク28蒸
気加熱管30及び出口ロールスタツク32と34が取付けられ
ている。
蒸気加熱管30は管壁を囲繞するジヤケツトに蒸気を通
すことによつて加熱される。さらに、入口ロールスタツ
クと出口ロールスタツク26、34の間を通る先駆物質の加
熱に向流ガス加熱を用いる場合には、蒸気加熱管30の下
流端部にガス供給管36を取付けて、加熱空気その他のガ
スの流入に備える。調整装置38は入口と出口のカウンタ
ーロール40、42をモニターして、調整装置38で読取る張
力とライン速度とを測定することができる。受入口44が
先駆物質を蒸気加熱ロールスタツク28へ通させる。
蒸気加熱ロールスタツク28は蒸気加熱ロール28の周囲
に先駆物質を通して、先駆物質に予備的に熱を伝達する
ために、任意に用いられる。この予備熱伝達を用いる場
合には、蒸気加熱管の加熱長さを任意に短くすることが
できる。
蒸気加熱管30の長さ、蒸気加熱ロールスタツク28の使
用の有無、ガス流速度、供給管の方向と位置ならびに先
駆物質の加熱に用いる温度のような、第2図の装置20の
特徴は、先駆物質を迅速に加熱し、炭素繊維製造プロセ
スにおける酸化/炭化ライン速度と適合させるように、
設計上選択すべき問題として選択される。伝熱媒質の流
動には1200フイラメント・トウとして2.54cmあたりに約
2トウ〜4.5トウの範囲内の初期トウ間隔が好ましく、
このような間隔は延伸が進行するにつれて、有利に固有
に拡大する。
本発明による一定温度範囲での延伸後のポリアクリロ
ニトリル先駆物質を200℃〜300℃の間の温度に好ましく
維持された1個以上のオーブン内で酸化される。炭素繊
維製造の際に適当な酸化を行うために、多様な形状のオ
ーブンが公知であり、これらのオーブンのいずれも本発
明によつて適当に用いることができる。しかし、一連の
オーブン(または単独オーブンを通る多数の流路系列)
を本発明によつて用い、酸化を受ける先駆物質を酸化オ
ーブンに入れる時の長さよりも長い長さに任意に延伸さ
せることができる。酸化オーブン(複数の場合も)を出
た後に、酸化された(かつ安定化された)先駆物質を1
つ以上の炉に導いて、不活性雰囲気中で炭化させる。そ
れぞれ400℃〜800℃の温度と1000℃〜1400℃の温度にお
ける少なくとも2つの炉を用いることが好ましい。1800
℃より高い温度例えば2000〜2800℃の範囲内の温度の炉
をさらに1つ用いるならば、さらに弾性率の高い炭素繊
維が製造される。炭化した繊維は400℃〜800℃から2000
℃〜2800℃までの温度範囲において好ましく延伸する
か、または少なくとも収縮しない。
高温炉から出た後の炭化繊維を表面処理する。多様な
表面処理が技術上周知である。好ましい表面処理は電解
表面処理であり、表面処理度は通常、繊維製造に用いる
炭化温度の関数である。好ましい電解表面処理は繊維を
炭酸水素アンモニウム水溶液または水酸化ナトリウム水
溶液(例えば0.5〜3重量%)を含む浴に通すことから
成る。12,000フイラメントにつき繊維1インチにつき約
0.1〜5クーロンの電流を繊維に与える。得られた表面
処理繊維を次に例えばシエル(Shell)エポキシ樹脂エ
ポン(Epon)834のようなエポキシ相溶性サイズ剤によ
つてサイズ処理するのが好ましい。
次の実施例は本発明の説明を意図するものであり、特
許請求の範囲に述べたような広い範囲の限定を意図する
ものではない。これらの実施例において、他に記載しな
いかぎり、全ての温度は摂氏温度であり、全ての部は重
量部である。
例1.(参考例) ポリアクリロニトリル先駆物質は空隙湿式紡糸法を用
いて製造した。先駆物質のポリマーは溶媒として濃縮チ
オシアン酸ナトリウム溶液を用いて約1.9〜2.1dl/gの固
有粘度を有した。紡糸溶液と凝固剤はチオシアン酸ナト
リウムの水溶液を含むものであつた。ポリマーはアクリ
ロニトリル約98モル%とメタクリル酸2モル%とから成
るモノマー組成物からポリマーを製造した。トウ形状の
先駆物質の長さは紡糸口金から押出成形した後のその長
さに比べて蒸気延伸後には約6倍であつた。第A表は呼
称1.3、0.8dpf(デニール/フイラメント)の生成先駆
物質の特徴を示す。
次に先駆物質を158℃の温度で延伸した、この温度に
おける滞留時間は約6分間であつた。延伸後に、延伸済
み先駆物質を一般には234℃と次に249℃における工程で
酸化した。酸化された繊維を次に600℃〜800℃の温度で
非酸化性雰囲気(窒素)の低温炉に通して(タール除
去)、次に1200℃〜1400℃の温度で非酸化性雰囲気(窒
素)の高温炉に導いた。低温炉と高温炉に通す間に、こ
れらの炉で炭化した繊維は炉の長さを横切る間に収縮す
るか、延伸するかのいずれかである。
下記の第B表と第C表はタール除去炉(TR)と高温炉
(CI)を通過する時に炭化する繊維の伸縮を158℃での
伸縮に基づいて算出したフイラメントのdpfと共に示
す。これらの表の各延伸レベルの欄には、算出dpfを有
し、TR炉とCI炉を通過する間に延伸する繊維の引張長さ
と弾性率特性とを記載する(第B表は1.3dpfの先駆物質
を用いた結果を示し、そして第C表は0.8dpfの先駆物質
を用いた結果を示す)。
第A表の4欄から9欄までの最初の値はpsi10000倍に
おける生成炭素繊維の引張強さであり、第2値はpsi100
0,000倍における弾性率である。弾性率と引張強さの測
定はストランド・トウテスト(含浸ストランド)方法に
よつて実施した。
例2.(参考例) 蒸気延伸を示さなかつたこととそのデニールが1.2dpf
であることを除いて一般に前述の条件に従つて、ポリア
クリロニトリル先駆物質を製造した。1.2dpfポリアクリ
ロニトリル先駆物質繊維を158℃においてその最初の長
さの2倍に延伸し(すなわち延伸比S.R.は2に等し
い)、スプールの周囲に巻いて貯蔵した。
この先駆物質を次の第D表に示した温度と時間におい
て空気循環炉に通すことによつて酸化した。 第 D 表 温度 時間(分) 158℃ 2.05 240℃ 17.73 245℃ 14.43 248℃ 17.72 250℃ 17.72 250℃ 4.43 酸化した先駆物質を最後の酸化オーブンから低温炉
(タール除去)までに通した。次に一部炭化した繊維を
1425℃に保持した第一高温炉に通し、次に2500℃に保持
した第二高温炉に通した。
低温炉、第一高温炉、第二高温炉の各々における延伸
を下記の第E表における4種類のランに関して示す(数
値は%)。 第 E 表 ラン 総 合 TR C1 C2 135−1 0.1 4.5 −5.3 0.9 135−2 2.4 6.9 −5.1 0.9 135−3 4.9 9.3 −5.0 1.0 135−4 6.9 11.3 −4.1 0.2 下記の第F表はこの実施例の方法によつて製造した炭
素繊維の性質を示す。
例3. この実施例では、一般的に前述した条件下で先駆物質
を製造した。この先駆物質は1.67dpf(12,000フイラメ
ント/トウ)を有し、蒸気下で延伸されていない。この
先駆物質を第2図に示したような装置に通し、約158℃
での0.8分間の滞留時間後にその最初の長さの4倍に延
伸した(すなわち、S.R.は4に等しい)。同じ試験にお
いて、同温度で但し0.25分間の滞留時間で処理した先駆
物質は、その最初の長さの2.3倍の長さにするのに等価
である延伸を示す前に破断した。158℃での滞留時間を
0.33分間に延伸した場合には、最初の長さの3.3倍の長
さにする延伸後に受容しがたく破断した。しかし、この
先駆物質は158℃でのそれぞれの0.25分間、0.33分間の
滞留時間における2.0、2.3に等しい延伸比であるときに
劣化した外観を示した。
例4. この実施例では、用いる先駆物質を溶媒としてのチオ
シアン酸ナトリウムと凝固剤及び上述したような空隙紡
糸法を用いて製造した。この繊維は水中でのみ延伸さ
れ、2.67dpf(12,000フイラメント/トウ)を有した。
ポリアクリロニトリルポリマーの製造にはメタクリル酸
を用いた。
この267dpf先駆物質を前述した、第2図に示したよう
な原型装置で延伸した。約1.8トウ/cmの間隔であるトウ
の周囲の管30内に、158℃の熱風を向流で循環させた。7
1psigの蒸気を管30のジヤケツトとロールスタツク28の
ロール中に通した。延伸比を3.9に維持しながら、ライ
ン速度を徐々に高めた(すなわち、先駆物質は延伸前の
長さに比べて延伸後に3.9倍の長さになつた)。ロール
スタツク26、34中で先駆物質の張力を測定した。
この実施例の結果を下記の第G表に示す。
繊維は30ft/分ラン中に破断した。
ランは2.67dpf/12K先駆物質、158℃の熱風、71psigの
蒸気管とロールを用いた。
第H表は本発明の方法を用いて、上記2.67dpf先駆物
質から呼称0.8dpf先駆物質を製造した結果を示す。
0.8dpfを有する標準の蒸気延伸先駆物質(第A表参
照)を炭素繊維製造の対照として用いて、本発明の方法
を用いて製造した0.8dpf(算出)先駆物質から製造した
炭素繊維と比較した。結果は下記の第1表に示す。この
表から分るように、本発明の方法によつて酸化中延伸量
は低いとしても、ほぼ等しい性質が得られる。
例5. 種々の先駆物質の昇温下、延伸0%(すなわち一定長
さ)で生じた張力を測定した。この延伸0%時で各先駆
物質を加熱した温度に対する測定張力を、4種類のポリ
アクリロニトリル物質に関して第3図に示す。第3図の
曲線Aの先駆物質用のモノマー組成物はアクリロニトリ
ル、メタクリル酸及びメタクリレートを含む。第3図の
曲線Bの先駆物質製造に用いたモノマー組成物はアクリ
ロニトリルとメタクリル酸とを含む。曲線Cの先駆物質
の製造に用いたモノマー組成物はアクリロニトリル、イ
タコン酸及びメタクリレートを含む。
種々の組成の先駆物質を種々の温度に加熱し、各先駆
物質組成物のその温度に対する破断延伸比〔すなわち先
駆物質フイラメントが破断する時の延伸比(S.R.)〕を
測定した。第4図の曲線Aは第3図に関連して上述した
成分から製造した先駆物質の破断延伸比(すなわち先駆
物質のフイラメントが破断する時の延伸比)のプロツト
を示す。同様に、第4図の曲線BとCは第3図に関連し
て上述した組成を有する先駆物質の結果を示す。
第5図は異なるデニールの先駆物質を種々の温度にお
いて破断するまで延伸した結果を示す。第5図の先駆物
質の各々の製造に用いたモノマー組成物はアクリロニト
リル98モル%とメタクリル酸2モル%から成るものであ
つた。先駆物質D、E、Fは蒸気中で延伸しなかつたた
め、先駆物質GとH(蒸気延伸した)に比べて幾らか低
い前延伸を示した。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の好ましい先駆物質の熱反応曲線を示
す。 第2図は本発明の実施に有用な装置を線図として示す。 第3図は、延伸0%時の張力に対する温度の影響を示
す。 第4図は、破断延伸比対温度に対するポリマー組成の影
響を示す。 第5図は、繊維破断エンベロープ対延伸温度とデニー
ル、蒸気延伸と非蒸気延伸(NSS)との関係を示す。 符号の説明 20……延伸装置 22……サポート 24……プラツトホーム 26……入口ロールスタツク 28……蒸気加熱ロールスタツク 30……蒸気加熱管 32……出口ロールスタツク 34……出口ロールスタツク 36……ガス供給管 38……調整装置 40……カウンターロール 42……カウンターロール 44……受入口
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭64−77619(JP,A) 特公 昭60−39763(JP,B2) 特公 昭61−56327(JP,B2)

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】次の工程: (a)ポリアクリロニトリルポリマーを含む紡糸溶液
    を、このようなポリマー用の溶媒中で形成する工程; (b)前記ポリマーをダイを通して押出し、多数の連続
    フィラメントを形成する工程; (c)これらのフィラメントをさらに長い長さに延伸し
    て、少なくとも10000フィラメントを有する先駆物質ト
    ウを製造する工程;及び (d)一連のオーブンと炉において、前記先駆物質トウ
    を酸化し、次に炭化して炭素繊維トウを形成する工程; を含んで成る、多数の高強度炭素繊維フィラメントを含
    んで成るトウまたは束としての形態の炭素繊維を製造す
    る方法において、 (i)140℃より高く前記先駆物質トウを酸化させる温
    度よりも低い一定温度範囲内の温度において延伸され得
    る先駆物質トウを選択する工程; (ii)前記先駆物質トウを、140℃より高く前記先駆物
    質トウを酸化させる温度よりも低い一定温度範囲内の温
    度に加熱する工程; (iii)前記温度に加熱した先駆物質トウを延伸して、
    その延伸後の長さが延伸前の長さの少なくとも3.9倍に
    なるようにする工程 を含んで成る、前記の方法。
  2. 【請求項2】工程(ii)の前記加熱が、気体媒質内での
    加熱を含む請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】工程(ii)の前記加熱が、熱ローラーとの
    接触による加熱を含む請求項1記載の方法。
  4. 【請求項4】前記一定温度範囲が150℃〜160℃である請
    求項1記載の方法。
  5. 【請求項5】前記ポリアクリロニトリルをアクリロニト
    リル98モル%とメタクリル酸2モル%を含むモノマー組
    成物から製造する請求項1記載の方法。
  6. 【請求項6】工程(iii)で延伸する前記先駆物質トウ
    を熱条件下で酸化オーブンに通す請求項1記載の方法。
  7. 【請求項7】工程(c)の前記延伸が本質的に100℃未
    満の温度における延伸工程から成る請求項1記載の方
    法。
  8. 【請求項8】前記先駆物質トウを延伸前のその最初の長
    さの少なくとも4倍の長さにまで延伸させうるように14
    2℃〜180℃の温度に前記ポリアクリロニトリルを加熱し
    てから、前記温度において前記先駆物質トウを延伸し、
    前記先駆物質トウを前記温度で前記延伸後に前記延伸前
    よりも4倍長くすることを含む、請求項1記載の方法。
  9. 【請求項9】アクリロニトリルと1種類以上の他のモノ
    マーとを、生じるポリマー用の溶媒中で重合する工程;
    前記ポリマーを多数の開口を含む紡糸口金を通して押出
    成形して、多数のフィラメントから成る先駆物質トウを
    形成する工程;及び前記先駆物質トウを延伸する工程を
    含んで成る、請求項1記載の高品質の炭素繊維の製造に
    適した先駆物質の製造方法であって、 前記延伸工程が第1延伸操作と第2延伸操作とから本質
    的に成り、第1延伸操作は約100℃未満の温度であり、
    そして第2延伸操作が142℃から前記フィラメントが酸
    化し始めるまでの範囲の温度での延伸から成る、前記の
    方法。
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