JP2578069Y2 - グロメット - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は挿入ピンの押し入れに
よって雌具の弾性係止片を外方に撓み出すことで、この
雌具の有する鍔と弾性係止片との間に板状物等を挾持固
定するピングロメットに関し、より詳細には雌具に挿入
されているピンの捻り出しにより該雌具による板状物等
の挾持固定を開放する構成からなるグロメットの改良に
関する。

【０００２】

【従来の技術】自動車のスカッフプレートを固定するた
めの金属クリップをパネルに留め付ける場合のように狭
い作業空間で板状物相互の組み付けと、組み外しとをな
すような場合に図７で示されるような合成樹脂製のグロ
メットが一般に用いられていた。この合成樹脂製のグロ
メットは鍔１を上部の外方向に向けて張出し状態で有し
ている筒状胴部２をもつ雌具Ａと、この雌具Ａの筒状胴
部２に挿入される脚軸３と雌具Ａの鍔１上に収まる頭部
４をもつ雄具Ｂとで構成されており、雌具Ａは筒状胴部
２の先端から鍔１の側に向けたスリット５〜５によって
複数の弾性係止片２ａ〜２ａとしてあると共に、この弾
性係止片２ａの下部内側には係止凸部６が設けられた構
成としてある。又、雄具Ｂには、前記雌具Ａの弾性係止
片２ａの夫々の係止凸部６が夫々に収まる凹部７を脚軸
３の周方向に区分した状態で有し、この凹部７から前記
頭部４の側に向け該脚軸３の軸周に到る傾斜部８を有し
た構成としてあると共に、この傾斜部８上の脚軸には、
その円周方向に同心円状の水平段部９’が設けられてい
る。そして、前記凹部７、７間の上方にある水平段部
９’の両側が軸方向に切除され傾斜した面１０’とされ
ている。

【０００３】この結果、雌具Ａをパネル等の取付け穴に
挿入した状態で、雄具Ｂを挿入することによって、雄具
Ｂの凹部７内に収まっていた雌具Ａの弾性係止片２ａ
は、雄具Ｂの傾斜部８によって外方に開き出されると共
に、水平段部９’に雌具Ａの係止凸部６を係止した状態
に維持され、パネル等の取付け穴の穴縁を、この外方に
拡開された弾性係止片２ａと鍔１との間で挾持固定する
ことができる。

【０００４】次いで雄具Ｂの操作溝１１にドライバーを
挿入して該雄具Ｂを捻り回すことによって、雄具Ｂの頭
部４の下面にある凸部１２が、雌具Ａの鍔１内にあるカ
ム面１３に沿って移動され、雄具Ｂを雌具Ａから浮き上
らせるようになすことで前記の水平段部９’に対する係
止凸部６の強い圧着状態を解放しながら係止凸部６を切
除されている面１０’に案内する。この係止凸部６を水
平段部９’から面１０’に移動することによって、弾性
係止片２ａは、その弾性復帰の力によって係止凸部６が
雄具Ｂの凹部７内に滑り込まれ、外方への撓み出しを解
いて旧に復帰し、パネル等の取付け穴に対する挾持状態
を解放していた。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】かゝる従来のグロメッ
トは雌具Ａに雄具Ｂを組付けた状態で、このグロメット
をパネル等の取付け穴に挿入すると共に、雄具Ｂを雌具
Ａに更に押し入れることによってパネル等の取付け穴の
穴縁を該グロメットで容易、確実に挾持でき、又、雌具
Ａに押し込まれている雄具Ｂを捻り回すことによってグ
ロメットによるパネル等の取付け穴の穴縁に対する挾持
を得ことができる利点を有している反面、雌具Ａの弾性
係止片２ａを係止する雄具Ｂの水平段部９’が脚軸３に
対し同心円状に設けられており、しかも凹部７、７間の
上方で、この水平段部９’が軸方向に面１０’で傾斜状
態で切除した構成とされており、雌具Ａに対する雄具Ｂ
の安定した係止力及び円滑な解放において難があった。
特に、雄具Ｂの脚軸３に形成されている水平段部９’が
脚軸３と同心円状に設けられていることから、雄具Ｂを
捻り回した際にも弾性係止片２ａの係止凸部６と該水平
段部９’との間に生ずる圧接力に変化がなく、雄具Ｂは
雌具Ａに対し均一の捻り力により回すことが可能とされ
る。この結果、雄具Ｂが雌具Ａに対し自然な緩み回りを
生ずる不具合があった。更に、面１０’が傾斜状のカッ
ト面とされていることから、この面１０’に導かれた雌
具Ａの弾性係止片２ａが、凹部７に向けて滑らかに移動
し難く、面１０’に擦れながら弾性係止片２ａの有する
弾性復帰力によって移動されることゝなる。又、脚軸３
に同心円状の水平段部９’と、凹部７、７間の上方にあ
る該水平段部９’を軸方向に切除する傾斜した面１０’
とを正確に設けることは極めて難しく、雄具Ｂの型の成
形並びに型抜き操作とに多くの技術を要する不具合があ
った。

【０００６】本考案は、かゝる従来グロメットにおける
不具合に鑑み、簡易な成形型を用い、しかも容易な型抜
きができると共に、雌具Ａに嵌め込み係止されている雄
具Ｂの自然な緩み出しのないグロメットの提供を目的と
している。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本考案に係るグロメット
は、叙上の目的を達成するものとして、先ず上部に外向
きの張出し鍔１を有する筒状胴部２からなる雌具Ａと、
この雌具Ａ内に挿通される脚軸３を頭部４から一体に突
設した雄具Ｂとで構成されるものとし、この雌具Ａの筒
状胴部２には該筒状胴部２の下端から前記鍔１の側に向
けて設けられている複数本のスリット５〜５によって複
数の弾性係止片２ａ〜２ａが夫々区分されて形成されて
いると共に、この弾性係止片２ａの内側下部に、内方に
向けて隆起した係止凸部６が設けられた構成としてあ
る。次いで、前記の雄具Ｂには、前記の弾性係止片２ａ
〜２ａの係止凸部６が夫々に収まる区分された凹部７〜
７を脚軸３に設けてあると共に、この凹部７から前記頭
部４の側に向けて傾斜部８が該脚軸３の軸周の面に到る
ように設けられた構成としてあり、該傾斜部８上にある
脚軸３が断面円形の太径部１４とされていると共に、こ
の太径部１４には脚軸３の軸中心線と直交する向きの円
弧状の係合面９が、該太径部１４の周面と、該太径部１
４の周面から脚軸３の軸芯方向に落し込み状に且つ該脚
軸３の軸中心線と平行に形成されている平坦面１０ａと
の間の段差面として構成されており、この係合面９の両
側が軸周の面１０に連続する構成としてあり、この係合
面９に前記雌具Ａの弾性係止片２ａにある係止凸部６が
係止可能となるように構成されている。

【０００８】

【作用】雌具Ａの弾性係止片２ａにある係止凸部６が係
脱可能に係止される雄具Ｂの係合面９が、脚軸３の半径
方向の線分と直交する向きに直線状に形成されていると
共に、この円弧状の係合面９の両側が軸周の面１０と連
続した構成としてあることから、雌具Ａに対する雄具Ｂ
の捻り回しに伴って雌具Ａの係止凸部６が雄具Ｂの係合
面９に対し漸次強く圧接されることゝなり、雌雄グロメ
ット間の振動等に伴う緩み出しが防止されるように機能
する。又、円弧状の係合面９に連続して軸周の面１０が
設けられていることから、係合面９から捻り出し状態で
導き出された雌具Ａの係止凸部６は該軸周の面１０によ
って凹部７に向けて滑らかに移動するように機能する。

【０００９】

【実施例】以下、本考案にかゝる典型的なグロメットの
一実施例を添付の図面について詳細に説明する。こゝで
用いられるグロメットは２以上の板状物の組付け、特に
板状物を組付け組外し可能に固定するのに適したもので
あり、上部に外向きの張出し鍔１を有する筒状胴部２か
らなるプラスチック製の雌具Ａと、この雌具Ａ内に挿通
される脚軸３を頭部４から一体に突設したプラスチック
製の雄具Ｂとで構成してある。又、雌具Ａの、筒状胴部
２には、この筒状胴部２の下端から前記鍔１の側に向け
て複数本のスリット５〜５が切設してあり、このスリッ
ト５〜５によって区分された筒状胴部２が複数の弾性係
止片２ａ〜２ａとされている。又、この弾性係止片２ａ
の内側下部には内方に向けて係止凸部６が隆設してあ
り、雄具Ｂによる弾性係止片２ａの撓み出しを該係止凸
部６の突き出し幅によってなすようにしている。又、筒
状胴部２の上部にある鍔１には、該筒状胴部２の筒孔に
連通する拡径の凹部１５が設けてあると共に、この凹部
１５の円周方向には段違い状のカム面１３が形成してあ
る。尚、このカム面１３は追って説明する雄具Ｂの頭部
４にある凸部１２に接触するカム面１３としてあり、こ
のカム面１３は雌具Ａに雄具Ｂが押し込まれ、雌具Ａの
係止凸部６が雄具Ｂの係合面９に係止されている状態
で、凸部１２が接触する平坦面１３ａと、この平坦面１
３ａから雄具Ｂの捻り側に斜上する傾斜面１３ｂと、前
記平坦面１３ａから雄具Ｂの捻り止まる側にある垂壁面
１３ｃとで構成されている。

【００１０】次いで雄具Ｂには、前記雌具Ａの弾性係止
片２ａの係止凸部６が収まる凹部７が隔壁１６を介して
円周方向に列設してあると共に、先端が膨径頭部１７と
してあり、頭部４の側に傾斜部８が設けられており、脚
軸３の円周方向に凹部７が陥凹状に設けられた構成とさ
れている。そして、傾斜部８上にある脚軸３部分の断面
が円形をなす太径部１４としてあり、この太径部１４の
円周方向に係合面９が設けてある。この係合面９は、脚
軸３の軸中心線と直交する向きに設けられた円弧状のも
のであって、太径部１４の周面から脚軸３の軸芯方向に
落し込み状に設けられている脚軸３の軸中心線と平行な
平坦面１０ａと、前記太径部１４の周面との間の段差面
として形成されており、前記頭部４に向き合った係合面
９とされていると共に、その円弧状の係合面９の両側が
軸周の面１０に連続する構成としてある。又、頭部４の
上面にはドライバー等の操作溝１１が凹設してあると共
に、下面には一対の凸部１２、１２が、その係止壁１２
ａの側を頭部４の中心線を通る線分に位置づけて設けて
あり、この凸部１２の他方の側が傾斜面１２ｂとしてあ
って前記雌具Ａのカム面１３の傾斜面１３ｂに添って斜
上できる構成としてある。 尚、雄具Ｂの脚軸３の頭部
４の側に前記の凹部７と同様の凹部１８を隔壁１９、１
９間に設けることで脚軸３の軽量化と成形時の歪み出し
を防止するようにしても良い。

【００１１】叙上構成からなる雄具Ｂを雌具Ａ内に組み
入れて用意し、図３で示される状態で重ね合わせ状態に
ある第１の板状物Ｐ−１と、第２の板状物Ｐ−２との取
付け穴に挿入する。この状態で雌具Ａの弾性係止片２ａ
にある係止凸部６は、雄具Ｂの凹部７内に夫々位置づけ
られており、更に雄具Ｂを雌具Ａ内に押し入れることに
よって雌具Ａの係止凸部６が雄具Ｂの凹部７両側の隔壁
１６によって支承され、雄具Ｂの傾斜部８によって雌具
Ａの弾性係止片２ａが外方に撓み出されると共に太径部
１４にある係合面９に係止され、図４で示されるように
第１の板状物Ｐ−１と第２の板状物Ｐ−２との固着をな
す。この状態で操作溝１１にドライバー等を差し入れて
雄具Ｂを捻り回した場合、雄具Ｂの凸部１２が雌具Ａの
カム面１３にある傾斜面１３ｂに添って移動され、雄具
Ｂが雌具Ａから浮き出し状態とされる反力を受け、しか
も係合面９の立上がり壁面に対する係止凸部６の圧接力
を漸次増した状態で雄具Ｂが捻り回される。 次いで、
係合面９から係止凸部６が面１０に誘導されることによ
って、係止凸部６は脚軸３の周面と同一構成の面１０を
滑り、何等の抵抗もなくスムースに傾斜部８から凹部７
内に陥とし込まれ、第１の板状物Ｐ−１と、第２の板状
物Ｐ−２との係止状態を解放する。

【００１２】

【考案の効果】本考案にかゝるグロメットは雌具Ａの弾
性係止片２ａを外方に拡開状態に保持する手段である雄
具Ｂの脚軸３にある係合面９を、円形断面である脚軸３
の太径部１４に設けると共に、この係合面９を脚軸３の
軸中心線に直交する向きの円弧状のものとして構成し、
その両側が脚軸３の軸周の面１０に連続する構成とした
ことから、この係合面９に係止されている弾性係止片２
ａは、雄具Ｂの捻り回しによって脚軸３の中心より漸次
離れた面に接触されることゝなり、この中心より離れて
接触することに伴う引き圧を受け、振動等によって雄具
Ｂが雌具Ａ内で緩み回りすることが確実に防止される。
又、係合面９から抜け出した弾性係止片２ａの係止凸部
６は脚軸３の軸周面と同一の面１０から凹部７内に滑り
込むことから、係止を解いた際の雄具Ｂの戻りが確実と
なる特長を有している。更に、係合面９が、太径部１４
の周面と、この太径部１４の周面から脚軸３の軸芯方向
に落し込み状に形成されている前記脚軸３の軸中心線と
平行な平坦面１０ａとの間の段差面として構成されてい
る水平な段面であることから、脚軸３の半径方向に成形
型を開き出すことで該係合面９が容易、確実に形成され
る構成とされており、容易に、しかも寸法安定性の良い
雄具の提供を可能としている。

【図面の簡単な説明】

【図１】グロメットの部品分離斜視図

【図２】同要部破断正面図

【図３】組付け前の状態を示す要部破断正面図

【図４】組付け状態を正面側から見た断面図

【図５】図２Ｆ−Ｆ線断面図

【図６】雌具Ｂの鍔側から見た要部平面図

【図７】従来グロメットの斜視図

【符号の証明】

１ 鍔 ２ 筒状胴部 ３ 脚軸 ４ 頭部 ５ スリット ６ 係止凸部 ７ 凹部 ８ 傾斜部 ９ 係合面 １０ 面 １１ 操作溝 １２ 凸部 １３ カム面 １４ 拡開部 １５ 凹部 １６ 隔壁 １７ 膨径頭部 １８ 凹部 １９ 隔壁 Ａ 雌具 Ｂ 雄具

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 上部に外向きの張出し鍔を有する筒状胴
   部からなり、この筒状胴部の下端からは前記鍔側に向け
   て複数本のスリットが設けられており、このスリットに
   より区分された複数の弾性係止片の内側下部には内方に
   向けて係止凸部が隆設されている雌具と、 頭部と該頭部から一体に突設されている脚軸とからな
   り、該脚軸には前記夫々の弾性係止片の係止凸部が夫々
   に収まる区分された凹部及び該凹部から前記頭部の側に
   向け且つ前記脚軸の軸周面に到る傾斜部とを有する雄具
   とからなり、 前記傾斜部上にある脚軸部が断面円形の太径部とされて
   いると共に、前記傾斜部上の太径部には脚軸の軸中心線
   と直交する向きの円弧状の係合面が、該太径部の周面
   と、この太径部の周面から脚部の軸芯方向に落し込み状
   に且つ該脚軸の軸中心線と平行に形成されている平坦面
   との間の段差面として構成されており、 前記挿入雄具の傾斜部により外方に撓み出される前記雌
   具の弾性係止片の係止凸部が前記係合面に係止可能とさ
   れることを特徴とするグロメット。