JP2571532B2 - 含フッ素ビニル基を側鎖に有するポリアセチレンの合成方法 - Google Patents

含フッ素ビニル基を側鎖に有するポリアセチレンの合成方法

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JP2571532B2
JP2571532B2 JP6024178A JP2417894A JP2571532B2 JP 2571532 B2 JP2571532 B2 JP 2571532B2 JP 6024178 A JP6024178 A JP 6024178A JP 2417894 A JP2417894 A JP 2417894A JP 2571532 B2 JP2571532 B2 JP 2571532B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、1個又は2個のフッ素
原子を含むビニル基を側鎖に有するポリアセチレンの
成方法に関する。
【0002】
【従来技術】ポリアセチレン類は共役ポリエン構造を有
する高分子化合物であり、導電性、クロミズム現象など
の電気、光学、磁気特性を示す。例えば無置換のポリア
セチレンは、古くから導電性ポリマーへの応用が注目さ
れており、主鎖の立体の制御や五フッ化ひ素のドーピン
グにより導電性を飛躍的に向上させたものがある。ま
た、側鎖にシリル基を有する置換ポリアセチレンでは、
その特性のひとつにガス透過性があり、ガスセンサー等
への応用が検討されている。近年、機能性材料に対する
需要の高まりから、このような置換基の導入によりポリ
アセチレン類に新たな機能を付与する試みが活発に行わ
れているが、これらについてはまだ数例が知られている
のみであり、機能性材料としての応用まで含めた官能性
ポリアセチレンの開発が今なお強く望まれている。
【0003】一方、フッ素化合物は材料として古くから
利用されており、テフロンに代表されるフッ素系ポリマ
ーは、フッ素原子特有の性質から、耐熱性、耐薬品性、
耐酸化性などの優れた特性を示し、広範な用途を有して
いる。これらのフッ素系ポリマーについても、ポリアセ
チレン類の場合と同様、ポリマーの機能化という要請か
ら種々の官能基の導入が研究されており、従来、官能基
を持たないフルオロオレフィンと官能性オレフィンとの
共重合や、フッ素系ポリマーと他の官能性ポリマーとの
ブロック化、グラフト化により複合化したものがあっ
た。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のポリアセチレン
は酸化され易いため不安定であるうえ、溶媒に溶け難い
ことから成形品等へ加工し難い問題がある。これに対
し、例えば側鎖にフェニル基を導入して化学的に安定さ
せ、加工性を高める試みがある。しかしこの場合は機能
性の限られたフェニル基などでしか重合度を高めること
ができず、このため機能性を高めようとしたポリアセチ
レン類では機械的強度が不足し易く、例えば自己支持性
フィルムの形成が困難であった。
【0005】また、上記従来の官能基を導入したポリア
セチレン類にあっては、官能基の種類が少ないうえ、官
能性含フッ素ポリアセチレンは極めて希であり、側鎖と
して含フッ素アリール基を有するポリアセチレン類があ
る程度で、含フッ素ビニル基を側鎖とするものはなかっ
た。
【0006】一方、含フッ素オレフィンと官能性オレフ
ィンとの共重合などでは、最終的なポリマーとしていわ
ば混合した状態のポリマーしか得られず、フッ素と官能
基の両者を同時に持ち合わせたモノマーの重合体とは本
質的に異なる。このため、ポリアセチレンの特性に加え
てフッ素原子の特性を備えた、高い機能を有するポリマ
ーを容易に得ることができなかった。
【0007】本発明は上記問題点を解消し、含フッ素ビ
ニル基を側鎖に有するポリアセチレンを合成することに
より、フッ素原子特有の機能とポリアセチレン特有の機
能を合わせ持ち、しかも自己支持性フィルムの形成可能
な高度の加工性を有する機能性の高いポリマーを容易に
得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明では、上記の目的
を達成するために、次のように構成したものである。
【0009】(第1発明) 含フッ素ビニル基を側鎖に有するポリアセチレンの合成
方法として、2,2,2-トリフルオロエチル=p-トルエ
ンスルホナートにブチルリチウムと一般式BR3(ここで
Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、及びこれら
の基に官能基やヘテロ原子を導入した基の中から選ばれ
た基または原子である)で表される化合物を順次作用さ
せて、1,1-ジフルオロビニルボランを合成し、この
1,1-ジフルオロビニルボランに銅塩(I)の存在下でア
セチレン末端にシリル基を有するハロゲン化アルキニル
を作用させて、アセチレン末端にシリル基を有する1,
1-ジフルオロ-1-ブテン-3-インを合成し、この1,1
-ジフルオロ-1-ブテン-3-インに脱シリル化剤を作用
させて、末端にアセチレン基を有するジフルオロエンイ
ンを合成し、このジフルオロエンインをモノマーとして
重合させるものである。
【0010】ここで、含フッ素ビニル基を側鎖に有する
ポリアセチレンとは、一般式
【化1】 (式中、nは自然数であり、XとYの少なくともいずれ
か一方はフッ素原子であり、他方はフッ素原子、水素原
子、及び炭素置換基の中から選ばれた基または原子であ
り、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、及びこ
れらの基に官能基やヘテロ原子を導入した基の中から選
ばれた基または原子である)で示されるものをいう。
【0011】(第2発明) 上記含フッ素ビニル基を側鎖に有するポリアセチレンの
合成方法として、上記第発明で中間生成物として得ら
れる、アセチレン末端にシリル基を有する1,1-ジフル
オロ-1-ブテン-3-インに、炭素求核剤またはヒドリド
還元剤を作用させて一方のフッ素原子を炭素置換基又は
水素原子に置換した後、脱シリル化剤を作用させて、末
端にアセチレン基を有するモノフルオロエンインを合成
し、このモノフルオロエンインをモノマーとして重合さ
せるものである。
【0012】なお、本発明でいう炭素置換基とは、炭素
原子により結合する基の総称をいい、アルキル基、アル
ケニル基、アリール基などの炭化水素基、あるいはこれ
らに官能基やヘテロ原子を導入したものをいう。
【0013】上記アセチレン末端にシリル基を有するハ
ロゲン化アルキニルとしては、例えばヨウ化トリメチル
シリルエチニルがあげられる。この場合の、アセチレン
末端にトリメチルシリル基を有するジフルオロエンイン
の合成は、次の化2に示す反応により行われる。なお、
この場合に作用させる銅塩(I)としては、ハロゲン化銅
(I)のジメチルスルフィド錯体が好ましい。
【0014】
【化2】 (式中、Xはハロゲン原子、TMSはトリメチルシリル
基である。)
【0015】上記ジフルオロエンインは、アセチレン末
端にトリメチルシリル基を導入するため、酸性度の高い
水素を有する末端アセチレンがこのシリル基によって保
護され、ジフルオロエンインの合成やこれにつづくモノ
フルオロエンインの合成が効率よく行われる。
【0016】1,1-ジフルオロ-1-ブテン-3-インのフ
ッ素原子を炭素置換基に置換するための炭素求核剤とし
ては有機金属反応剤があり、具体的にはフェニル基に置
換するためのフェニルリチウム、フェニルグリニャール
反応剤、ジフェニル銅リチウムなど、メチル基に置換す
るためのメチルリチウムなどがある。また、フッ素原子
を水素原子に置換するためのヒドリド還元剤としては水
素化アルミニウムリチウム、水素化ビス(メトキシエト
キシ)アルミニウムナトリウムなどがある。
【0017】上記のアセチレン末端にシリル基を有する
ジフルオロ及びモノフルオロエンインの脱シリル化剤と
しては、フルオロビニル基の反応性が高いため、フッ化
テトラブチルアンモニウムなど、フルオロビニル基を損
なう虞れがないものを用いる必要がある。
【0018】また、ジフルオロエンインあるいはモノフ
ルオロエンインの重合は、具体的には遷移金属を用いる
メタセシス重合を行うことで目的とする高分子量の官能
性含フッ素ポリアセチレンを合成できる。
【0019】
【効果】本発明は上記のように構成され作用することか
ら、次の効果を奏する。
【0020】(イ) 含フッ素ヨウ化ビニル等を出発原料
とする従来のフルオロエンインの合成方法に比べて、出
発原料としての 2,2,2-トリフルオロエチル=p-トル
エンスルホナートは安価で調達が容易であり、安価にフ
ルオロエンインを合成することができる。この結果、高
度の機能性材料としての含フッ素ビニル基を側鎖に有す
るポリアセチレンを安価に合成することができる。
【0021】(ロ) しかも、合成されたポリアセチレン
は、側鎖に主鎖と共役した形で含フッ素ビニル基を有す
ることから、従来のポリアセチレン類とは異なった特性
を示し、フッ素原子を含むものでありながら官能基の導
入が容易である等、高度の機能性材料として有用であ
り、さらにこの合成されたポリアセチレンは、従来のフ
ッ素系ポリマーではほとんど行われなかった直接的な機
能化が達成できるうえ、 重合度を高めることができるの
でポリマーとしての機械的強度が高く成形性がよいこと
から、自己支持性フィルムを形成することができるとい
う利点がある。
【0022】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
【0023】実施例1 本発明では、まずアセチレン末端にシリル基を有する
1,1-ジフルオロ-1-ブテン-3-イン(ジフルオロエン
イン)を合成し、必要に応じてジフルオロエンインの一
方のフッ素原子を置換してモノフルオロエンインを合成
し、これらのジフルオロエンイン及びモノフルオロエン
インを脱シリル化して末端にアセチレン基を有するモノ
マーを合成し、このモノマーを重合させて目的のポリマ
である含フッ素ビニル基を側鎖に有するポリアセチレ
を合成する。そこで、本願の実施例を(1)ジフルオロ
エンインの合成、(2)モノフルオロエンインの合成、
(3)脱シリル化、(4)ポリマーの合成に分けてそれぞれ
順に説明する。
【0024】(1)ジフルオロエンインの合成 窒素置換した50ml二口ナス型フラスコに、テトラヒド
ロフラン(THF)10mlと2,2,2-トリフルオロエチ
ル=p-トルエンスルホナート458mg(1.80mmol)を
入れ、−78℃に冷却し、ブチルリチウム2.30ml
(3.77mmol,1.64M/ヘキサン溶液)をマイクロフィ
ーダーを使用して約10分かけ滴下した。30分間撹拌
した後、トリブチルボラン1.98ml(1.98mmol,1.
0M/THF溶液)を加え、−78℃で1時間撹拌した
後、さらに室温で3時間撹拌した。反応溶液にヘキサメ
チルホスホリックトリアミド(HMPA)4.8ml、ヨー
ドトリメチルシリルアセチレン365mg(1.62mmo
l)、塩化銅(I)・ジメチルスルフィド錯体290mg(1.
80mmol)を加え1時間撹拌した。反応溶液に水を加
え、エーテルで抽出した後、エーテル層を硫酸ナトリウ
ムで乾燥した。溶媒留去後、シリカゲルフラッシュカラ
ムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)により精
製し、化3で表される2-ブチル-1,1-ジフルオロ-4-
トリメチルシリル-1-ブテン-3-インを得た。収量23
1mg(1.07mmol)、収率66%であった。なお反応生
成物はNMRやIR、高分解能マススペクトル等で分析
し、分子構造を確認した。
【0025】
【化3】
【0026】(2)モノフルオロエンインの合成 窒素置換した50ml二口ナス型フラスコに、THF10m
lと上記2-ブチル-1,1-ジフルオロ-4-トリメチルシ
リル-1-ブテン-3-イン222mg(1.03mmol)とを入
れ、−78℃に冷却し、フェニルリチウム0.95ml
(1.54mmol,1.78M/エーテル−シクロヘキサン溶
液)を加え、1時間撹拌した。反応溶液に水を加え、酢
酸エチルで抽出した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥
した。溶媒留去後、置換生成物をシリカゲル薄層クロマ
トグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)により分離精製し、
2-ブチル-1-フルオロ-1-フェニル-4-トリメチルシ
リル-1-ブテン-3-インを得た。収量は、化4で示すE
体が52mg(0.19mmol)、化5で示すZ体が124mg
(0.45mmol)であり、収率は62%であった。
【0027】
【化4】
【0028】
【化5】
【0029】(3)脱シリル化反応 窒素置換した30ml二口ナス型フラスコに、THF6m
l、モレキュラーシーブ(M.S.)4A約1g、上記(Z)-
2-ブチル-1-フルオロ-1-フェニル-4-トリメチルシ
リル-1-ブテン-3-イン110mg(0.40mmol)を入
れ、−78℃に冷却し、フッ化テトラブチルアンモニウ
ム0.60ml(0.60mmol,1.0M/THF溶液)を加
え、20分間撹拌した。反応溶液に水を加え、エーテル
で抽出した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶
媒留去後、シリカゲル薄層クロマトグラフィー(展開溶
媒:ヘキサン)により精製した。分析の結果、得られた
反応生成物は化6で示す、末端アセチレンを有するモノ
マーであり、収量76mg(0.38mmol)、収率94%で
あった。
【0030】
【化6】
【0031】(4)ポリマーの合成 窒素置換した5ml二口ヘルツ型フラスコに五塩化モリブ
デン6.5mg(0.024mmol)を入れ、上記モノマーであ
る(Z)-2-ブチル-1-フルオロ-1-フェニル-1-ブテン
-3-イン60mg(0.30mmol)のヘキサン溶液0.4mlを
加え12時間撹拌した。反応溶液にクロロホルムを加え
て濾過し、濾液を水で洗浄した後、さらに飽和食塩水で
洗浄した。溶媒を僅かに残る程度まで留去し、メタノー
ルを加えて生じる沈澱を濾取した。収量45mg、収率7
4%であった。生成物は赤色固体で、自己支持性フィル
ムを形成でき、分析の結果、GPC法(ポリスチレン標
準、THF溶媒)による重量平均分子量が2.9×105
の、化7に示す含フッ素ビニル基を側鎖に有するポリア
セチレンの合成が確認された。
【0032】
【化7】
【0033】上記実施例1ではトリブチルボランを作用
させて2-ブチル-1,1-ジフルオロ-4-トリメチルシリ
ル-1-ブテン-3-インを得たが、他の置換基を有するB
3についても実施したところ、それぞれ良好な収率
で、アセチレン末端がシリル化されたジフルオロエンイ
ンを得ることができた。その結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】なお、フルオロエンインとしては、従来 含フッ素ヨウ化ビニルと末端アルキニル亜鉛、或い
はハロゲン化アルキニルと含フッ素ビニル亜鉛とをパラ
ジウム触媒存在下でカップリングする方法、 含フッ素ヨウ化ビニルと末端アセチレンをパラジウ
ム、ヨウ化銅、トリエチルアミン存在下でカップリング
する方法、 フッ素を含まないエンインからオレフィン部のエポ
キシ化に続いてフッ化水素による開環を行い、さらに脱
水をへて目的物を得る方法、がある。
【0036】しかしこれらの従来法では、出発原料とし
て調達困難な含フッ素化合物を必要とすることや合成に
多段階を要することなどの難点がある。またフッ素の置
換様式は限られており、末端ジフルオロメチレン基を含
むエンインの合成についてはわずかに一報告例があるの
みである。これに対し、本発明による上記フルオロエン
インの合成方法は、安価で調達の容易な出発原料から容
易に目的物を合成できる利点がある。
【0037】上記実施例1で得られたモノフルオロエン
インは、約3:1の割合でZ体が主生成物であったが、
この反応について溶媒がE/Z選択性と収率に与える影
響を調べたところ、表2に示す結果を得た。
【0038】
【表2】
【0039】この結果から明らかなように、ジエチルエ
ーテル(Et2O)を用いた場合、異性体比はTHFの場合
と逆転し、約3:1で逆にE体が主生成物となった。こ
れに対し、ヘキサンを用いた場合には、ほぼ1:1とな
り、E/Z選択性を示さなかった。また、エーテル系溶
媒については、溶媒の構造とE/Z選択性の間に一定の
傾向が認められ、酸素原子のまわりが立体的に嵩高いエ
ーテルの場合にはE体を、嵩高くない場合にはZ体をそ
れぞれ主生成物とすることがわかった。
【0040】また、上記モノフルオロエンインの合成で
は、添加剤を加えて反応を行ってもよく、例えばテトラ
メチルエチレンジアミン(TMEDA)あるいは触媒量の
臭化テトラエチルアンモニウムを用いると、添加剤を用
いない場合のE/Z選択比をほぼ保ったまま、収率が向
上した。これらの結果を表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】また、上記モノフルオロエンインの合成に
おいて、フェニルリチウム以外のフェニル金属も使用で
き、その結果を表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】さらに、モノフルオロエンインの合成にお
いて、ブチル基以外の基を有するジフルオロエンインか
らの合成についてもフェニル基の導入を円滑に進行させ
ることができ、E/Z選択性に対しても同様の溶媒によ
る作用が認められた。その結果を表5に示す。
【0045】
【表5】
【0046】上記実施例1ではフェニル基の導入を行っ
たが、これに代えて、メチル基を導入する場合には、例
えばジフルオロエンインに対してTHF中でメチルリチ
ウムを作用させればよく、メチル置換モノフルオロエン
インを良好な収率で得ることができた。その結果を表6
に示す。
【0047】
【表6】
【0048】ただし、メチル置換では溶媒や添加剤の作
用効果が明確ではなく、TMEDAを用いた場合にZ体
の選択性が上がるものの、フェニル置換の場合のような
収率の向上は見られなかった。また、用いるメチルリチ
ウムを2.0倍モル量以上加えても原料は回収され、2.
0倍モル量のときよりも収率が低下する。従って、メチ
ル置換に用いるメチルリチウムの量は、収率の最もよい
条件である2.0倍モル量が適当であると判断される。
【0049】一方、ジフルオロエンインに対しTHF中
金属ヒドリド還元剤として水素化アルミニウムリチウム
を作用させたところ、目的とするヒドリド還元体である
モノフルオロエンインを良好な収率で、しかも化8に示
すZ体を優先的に得ることができた。その結果を表7に
示す。
【0050】
【化8】
【0051】
【表7】
【0052】金属ヒドリド還元剤は、水素化アルミニウ
ムリチウムに比べて水素化ビス(メトキシエトキシ)アル
ミニウムナトリウムを用いた場合の方が収率がよい(8
0%)が、E/Z選択性の点で劣る(E/Z=30/70)。また
ヒドリド還元反応においても、添加剤として臭化テトラ
ブチルアンモニウムを触媒量用いた場合に収率の向上が
見られる。
【0053】また、上記実施例1では、脱シリル化剤と
してフッ化テトラブチルアンモニウムを低温で用いてい
るが、いずれのジフルオロエンイン及びモノフルオロエ
ンインの場合でも、同様の反応により、フルオロビニル
基を損なうことなく、良好な収率で対応する目的生成物
を得ることができ、その結果を表8に示す。
【0054】
【表8】
【0055】次に、ポリマーの合成に関し、まず、反応
溶媒を代えて実施した。
【0056】実施例2 上記実施例1の(3)脱シリル化で得られたモノマーと同
じものを用い、重合反応において溶媒の種類をシクロヘ
キサンに代えて実施した。即ち、窒素置換した5ml二口
ヘルツ型フラスコに五塩化モリブデン10mg(0.037
mmol)を入れ、モノマーである(Z)-2-ブチル-1-フル
オロ-1-フェニル-1-ブテン-3-イン94mg(0.47mm
ol)のシクロヘキサン溶液1mlを加え12時間撹拌し
た。その後は上記実施例1と同様に処理した。収量82
mg、収率87%であり、GPC法(ポリスチレン標準、
THF溶媒)による重量平均分子量が5.6×105であ
った。
【0057】また、シクロヘキサン以外にも、安息香酸
メチルを用いると高分子量のポリマーを収率よく合成で
きる。これらの結果を表9に示す。
【0058】
【表9】
【0059】次に、実施例1のモノマーのヘキサン溶媒
での重合反応において、モノマー濃度および反応温度が
ポリマーの収率、平均分子量に及ぼす影響を調べた。そ
の結果を表10に示すが、モノマー濃度については濃度
を上げるに従ってより高分子量のポリマーが収率よく得
られることが判った。ただし、モノマー濃度を過度に濃
くすると、ポリマーのヘキサンへの溶解性が高くないた
め重合の進行とともに反応液が固化し、撹拌不能となっ
て反応の再現性等に問題を生じる。また、反応温度は高
くすると室温の場合に比べ幾分収率は向上するが、得ら
れたポリマーの平均分子量は極端に低下することが判っ
た。
【0060】
【表10】
【0061】次に、モリブデン触媒に対する補触媒とし
ては、テトラブチルスズ、テトラフェニルスズ、トリエ
チルシランなどの例が報告されている。そこで、実施例
1のポリマーの合成において補触媒を添加したところ、
表11に示すように、補触媒を添加しても平均分子量に
あまり変化はみられないが、トリエチルシランの場合に
は収率が向上した。
【0062】
【表11】
【0063】実施例3 上記実施例2の重合反応において、トリエチルシランを
補触媒に用いて実施した。即ち、窒素置換した5ml二口
ヘルツ型フラスコに五塩化モリブデン19.4mg(0.0
71mmol)、トリエチルシラン23μl(0.14mmol)、
シクロヘキサン0.5mlを加え15分間撹拌した。その
後、モノマーである(Z)-2-ブチル-1-フルオロ-1-フ
ェニル-1-ブテン-3-イン167mg(0.82mmol)のシ
クロヘキサン溶液1.2mlを加え12時間撹拌した。そ
の後は上記実施例1と同様に処理した。収量146mg、
収率88%であり、分析の結果、UVスペクトル(CH
Cl3)で506nmに極大吸収を示したことから、含フッ
素ビニル基を側鎖に有するポリアセチレンの合成が確認
され、その重量平均分子量はGPC法(ポリスチレン標
準、THF溶媒)で3.3×105であった。
【0064】次に、実施例1で用いたモノマー以外の各
種フルオロエンインについても重合させたところ、それ
ぞれ対応するポリマーを合成することができた。その結
果を表12に示す。
【0065】
【表12】
【0066】実施例4 モノマーに1,1-ジフルオロ-2-(2-フェニルプロピ
ル)-1-ブテン-3-イン102mg(0.49mmol)、触媒に
五塩化モリブデン16mg(0.060mmol)、トリエチル
シラン19μl(0.12mmol)、反応溶媒にシクロヘキサ
ン1.0mlを用いて、上記実施例3と同様に重合反応を
行った。収量84mg、収率83%であり、生成物は橙色
固体で自己支持性フィルムを形成した。生成物を分析し
たところ、GPC法(ポリスチレン標準、THF溶媒)に
より重量平均分子量2.9×105、UVスペクトル(C
HCl3)で435nmに吸収を示したことから、化9に示
す、含フッ素ビニル基を側鎖に有するポリアセチレンの
合成が確認された。
【0067】
【化9】
【0068】実施例5 モノマーに1,1-ジフルオロ-2-(4-フェニルブチル)-
1-ブテン-3-イン90mg(0.41mmol)、触媒に五塩化
モリブデン15mg(0.055mmol)、トリエチルシラン
17μl(0.11mmol)、反応溶媒にシクロヘキサン0.
8mlを用いて、上記実施例3と同様に重合反応を行っ
た。収量79mg、収率89%であり、生成物は橙色固体
であった。生成物を分析したところ、GPC法(ポリス
チレン標準、THF溶媒)により重量平均分子量1.9×
105、UVスペクトル(CHCl3)で387nmに吸収を
示したことから、化10に示す、含フッ素ビニル基を側
鎖に有するポリアセチレンの合成が確認された。
【0069】
【化10】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 池浦 千夏 茨城県つくば市天久保2−13−2−311 (72)発明者 南 享 福岡県宗像市自由が丘11−15−5 (56)参考文献 特開 昭61−85415(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2,2,2-トリフルオロエチル=p-トル
    エンスルホナートにブチルリチウムと一般式BR3(ここ
    でRは水素原子、アルキル基、アルケニル基、及びこれ
    らの基に官能基やヘテロ原子を導入した基の中から選ば
    れた基または原子である)で表される化合物を順次作用
    させて、1,1-ジフルオロビニルボランを合成し、 この1,1-ジフルオロビニルボランに銅塩(I)の存在下
    でアセチレン末端にシリル基を有するハロゲン化アルキ
    ニルを作用させて、アセチレン末端にシリル基を有する
    1,1-ジフルオロ-1-ブテン-3-インを合成し、 この1,1-ジフルオロ-1-ブテン-3-インに脱シリル化
    剤を作用させて、末端にアセチレン基を有するジフルオ
    ロエンインを合成し、 このジフルオロエンインをモノマーとして重合させるこ
    とを特徴とする、含フッ素ビニル基を側鎖に有するポリ
    アセチレンの合成方法。
  2. 【請求項2】 2,2,2-トリフルオロエチル=p-トル
    エンスルホナートにブチルリチウムと一般式BR3(ここ
    でRは水素原子、アルキル基、アルケニル基、及びこれ
    らの基に官能基やヘテロ原子を導入した基の中から選ば
    れた基または原子である)で表される化合物を順次作用
    させて、1,1-ジフルオロビニルボランを合成し、 この1,1-ジフルオロビニルボランに銅塩(I)の存在下
    でアセチレン末端にシリル基を有するハロゲン化アルキ
    ニルを作用させて、アセチレン末端にシリル基を有する
    1,1-ジフルオロ-1-ブテン-3-インを合成し、 この1,1-ジフルオロ-1-ブテン-3-インに炭素求核剤
    またはヒドリド還元剤を作用させて一方のフッ素原子を
    炭素置換基又は水素原子に置換した後、脱シリル化剤を
    作用させて、末端にアセチレン基を有するモノフルオロ
    エンインを合成し、 このモノフルオロエンインをモノマーとして重合させる
    ことを特徴とする、含フッ素ビニル基を側鎖に有するポ
    リアセチレンの合成方法。
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