JP2559112Y2 - 化粧用繰出容器 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は化粧用繰出容器に関し、
特にリップ用の口紅その他の棒状化粧品の繰出容器に関
する。

【０００２】

【従来の技術】リップ用の口紅その他の棒状化粧品を容
器先端から進退させる機構を有する繰出容器は、一般的
には、縦溝を有する回転内筒を、螺旋溝を内設した作動
筒内に嵌挿し、回転内筒の内側に、化粧材を保持し且つ
外側に前記縦溝を通して前記螺旋溝に係合するようにし
た突子を形成した中面を配設し、回転内筒下部の回転基
部を回動することによって、この中皿を昇降させる機構
のものが汎用されている。

【０００３】従来のこの種繰出容器にあっては、中皿の
最上位においては、使用中の化粧材の戻りを防止するた
め、また、中皿の最下位においては、化粧材の突出を防
止するために、夫々回転内筒の縦溝上下端に、これらと
連続する横溝が設けられていた。

【０００４】然し、中皿の最下位における保持機構とし
ては、上記横溝の構成だけでは充分でなく、輸送中や携
帯中の振動、或いは、何等かの外力が作動筒や回転基部
に作用した場合に、中皿が上昇して口紅等の化粧材の先
端部が作動筒に被せたキャップに当たってしまい、キャ
ップを汚損したり、化粧材が折損するといった問題があ
った。

【０００５】この問題を回避するために、従来は、回転
基部内部の周方向に環状の突条を設けるとともに、中皿
には突起を有する脚状舌片を設けて、中皿が最下位に達
する直前に脚状舌片の突起が環状突条を乗り越えるよう
にしたものがある（実公昭５８−１１２９７号公報）。

【０００６】この従来技術は、環状突条を容器の軸方向
と直交する方向に突出させるため、容器製造時における
型抜きに問題があり、突出量を少なくせざるを得ないこ
と、脚状舌片の長さが数ミリ程度であり、中皿の円筒形
状に沿って周方向に湾曲しているため、脚状舌片の弾力
性に乏しく、頻繁な繰り返し使用によって、突起及び環
状突条が摩耗してしまうこと、中皿の突子が縦溝を移動
している間に、脚状舌片の突起が環状突条を乗り越え、
突子が横溝に移行してからは、ガタや遊びが生じてしま
って、固定感に乏しい等の問題があった。

【０００７】また、この問題を解消するものとして、中
皿の下周部に上記脚状舌片と同様の割片を、外面が中皿
外周面よりも内側に偏るように形成し、それら割片の外
面に、先端が中皿外周面と同一面か、稍引込んだ突出高
の突部を形成する一方、回転筒の内周面に複数の縦リブ
を形成し、中皿が横溝を移動する間に、前記突部が縦リ
ブを乗り越えるようにした繰出容器も提案されている
（実公昭６３−３０３４３号公報）。

【０００８】この従来技術では、中皿の突子が縦溝の終
端から横溝に移動するのに併行して、突部が縦リブを周
方向に乗り越えるように構成されていることによって、
前述の従来技術の問題を解決している訳であるが、この
従来技術においても、縦リブを乗り越える突部は、軸方
向に延びる割片上に設けられ、この割片の長さは、せい
ぜい数ミリであって、中皿の円筒形状に沿って周方向に
湾曲しているため、やはり前述の従来技術と同様、割片
の弾力性に乏しく、突部及びリブの摩耗の問題があるば
かりでなく、突部を中皿外周面と同一面か、稍引込んで
形成するために、薄肉の構成とせざるを得ず、強度及び
製造面で問題があった。

【０００９】また、両従来技術とも、脚状舌片または割
片上の突出部分を、環状突条または縦リブを乗り越えさ
せるという構造を採っているために、摺接部分が集中
し、その部分の摩耗による使用感の変動が避けられず、
終端位置の固定感に乏しくなって、使用者に不安感を抱
かせるという問題があった。

【００１０】

【考案が解決しようとする課題】本考案は、上記従来技
術の問題点を考慮し、中皿下部に充分な弾性を付与する
ことができ、摩耗による使用感の変動が起り難く、而も
使用者に対し、はっきりとした終端位置の固定感を与え
得る化粧用繰出容器を提供することを目的としている。

【００１１】

【課題を解決するための手段】本考案の化粧用繰出容器
は、螺旋溝を内設した作動筒と、この作動筒の内側に嵌
挿され、縦溝及びその終端に連なる横溝を有する回転内
筒部並びにその下部の回転基部とからなる回転筒と、化
粧材を保持し、外側に前記縦溝を通して前記螺旋溝に係
合する突子を形成した中皿とを備えた化粧用繰出容器に
おいて、円筒状中皿周壁の下部近傍に、円周方向に沿っ
た円弧状のスリットを設けることにより、中皿下部に弾
性壁部を形成するとともに、この弾性壁部外側に、円周
方向に沿い且つ離間した少なくとも２個の凹部を形成
し、更に、前記回転基部の内側には中皿が最下位に位置
した時に、前記一方の凹部に進入する突条を軸方向に沿
って形成し、中皿の円周方向の回転により、前記弾性壁
部が撓んで突条が他方の凹部内に受容されるようになし
たことを特徴とする。

【００１２】

【作用】本考案における化粧用繰出容器は、回転基部を
回動することにより、螺旋溝に係合した突子が回転内筒
部の縦溝に案内されて、中皿が回転内筒部内を昇降する
点では従来技術と同様であるが、中皿が最下位に至る
際、即ち、中皿の突子が回転内筒部の縦溝の下方終端に
至る際に、回転基部の内側に設けた突条が、中皿下部に
設けた弾性壁部の一方の凹部に抵抗なく進入し、更に回
転基部を回動して中皿の突子が横溝を移動する際には、
弾性壁部が撓んで凹部間の壁部分が突条を乗り越え、突
子が横溝終端に至った時に、突条が他方の凹部に収納さ
れる。

【００１３】このように、本考案においては、弾性壁部
が円筒状中皿の周壁の一部として形成され、突子の他
は、周壁より突出する部分を設けていないので、突子が
縦溝内を移動中は、中皿が回転内筒部の内壁と円滑に摺
接するとともに、突条が凹部間の壁部分を乗り越えて他
方の凹部に収納された際には、撓んだ弾性壁部が復帰し
て、凹部を除く弾性壁部外側全面が、回転基部の内面に
当接するので、パチンという比較的大きなクリック音が
発生し、使用者に完全に固定されたという安心感を与え
ることができる。

【００１４】

【実施例】図１は、本考案化粧用繰出容器の一実施例と
しての口紅容器を、一部を破断して示す分解斜視図、図
２は、それを組立てた状態を示す縦断面図で、キャップ
を省略してある。

【００１５】これらの図において、１０は、上部の回転
内筒部１２と、下部の回転基部１４とからなる合成樹脂
製の回転筒で、回転内筒部１２の周壁には、対向する位
置に夫々縦溝１６，１６が設けてあり、これら縦溝１
６，１６の上下には、互いに逆向きの横溝１６Ａ，１６
Ｂか縦溝１６に連続して設けられている。回転基部１４
は、有底円筒形状であり、内側の半径方向対向位置に、
軸方向に延びる１対の突条１８，１８が設けられてい
る。

【００１６】２０は、回転内筒部１２の上下端の周回突
条から成る段部１７Ａ，１７Ｂ間に嵌挿される作動筒
で、内部には、対抗する１対の螺旋溝２２，２２が設け
られている。

【００１７】３０は、回転筒１０内に内装される可撓性
合成樹脂からなる中皿で、中心には、空気拭き孔３２Ａ
を有し、底部３２によって仕切られた口紅保持部３４の
下方には、円周方向に沿った円弧状の１対のスリット３
６，３６が設けられており、これにより、半径方向に対
向する１対の弾性壁部３８，３８が形成され、これら各
弾性壁部３８には、この弾性壁部３８を軸方向に横断す
る２個の凹部３８Ａ，３８Ｂが形成してある。また、中
皿３０の外周には、前記縦溝１６，１６を通して、作動
筒２０の螺旋溝２２，２２と係合し互いに逆方向に突出
する１対の突子３９，３９が設けてある。

【００１８】本実施例では、中皿３０の１対の突子３
９，３９の突出方向とは直交する方向に、スリット３
６，３６を設けてあり、一方の凹部３８Ａを突子３９，
３９に対して、平面上で９０°の位置に形成するととも
に、回転基部１４内の突条１８，１８を、縦溝１６，１
６と平面上で９０°の位置に形成することによって、図
２及び図３に示すように、突子３９が縦溝１６の最下端
に至ったときに、突条１８が凹部３８Ａ内に抵抗なく進
入するようになっている。

【００１９】次に本実施例の作用について説明する。

【００２０】作動筒２０を保持したまま回転基部１４を
回動すると、突子３９が作動筒２０の螺旋溝２２に係合
しているため、縦溝１６に沿って案内され、中皿３０が
回転内筒部１２内を昇降する。中皿３０は円筒形状であ
り、突子３９の他は、外面に突出部がないので、その略
全外面が回転円筒部１２の内面と摺動して、円滑で安定
した上下動を与える。中皿３０が下降して、突子３９が
縦溝１６の最下端（図２の位置）に達しても、図３に示
すように、突条１８が弾性壁部３８の凹部３８Ａに対抗
なく進入するため、使用者は、上下動の間、適度な摩擦
力による一貫した操作感が得られることになる。

【００２１】そして、更に回動すると、突子３９が横溝
１６Ｂ内を周方向に横移動するため、中皿３０と回転筒
１０とが相互回転することになる。このとき、図４に示
すように、突子１８が、凹部３８Ａと凹部３８Ｂの間の
壁部に当接するため、弾性壁部３８が僅かに撓んで、回
転基部１４の内面と弾性壁部３８の外面との間に僅かな
隙間を生ずることになる。更に回動して、突子３９が横
溝１６Ｂの終端部に至ると、図５に示すように、突条１
８は凹部３８Ｂ内に収容され、この際に弾性壁部３８が
復帰して、その外面が回転基部１４の内面に衝突するの
で、パチンという音が発生する。これにより、使用者に
口紅の収容が完全に終了したことを認知させるととも
に、しっかりと固定されたという安心感を与えることが
できる。

【００２２】なお、上記実施例では、回転内筒部１２と
回転基部１４とは一体の成型品を用いたが、これらを別
成形して一体化してもよいことは勿論である。

【００２３】また、スリットの数、即ち弾性壁部の周方
向の数は、必ずしも２個に限定されるものではなく、１
個あるいは３個以上でもよいが、可撓性の合成樹脂を用
いた場合、強度、製造の容易さ、発生する音の大きさ等
を勘案して２個が最も好ましい。１個の弾性壁部に設け
る凹部の数は、通常は２個であるが、２個以上設けて音
に変化をもたせたり、別部材の回転内筒部１２と回転基
部１４を組合わせる場合に、縦溝１６と突条１８の位置
関係の誤差を許容するために、数個の凹部を設けること
も可能である。

【００２４】

【考案の効果】以上説明した通り、本考案の化粧用繰出
容器は、中皿周壁の下部近傍に円周方向に沿った円弧状
のスリットを設ける構成としたので、弾性に富む壁部を
安価に形成することができ、この弾性壁部外側に凹部を
形成しているので、状態では中皿の外面が突子を除いて
略同一面を形成する。また、横溝の長さに応じて２個の
凹部の間隔も充分に採ることができるので、従来技術の
突起のような摺接集中部分がなく、経年変化のない安定
且つ円滑な操作感が得られる。更に、前記後者の従来技
術のように、突部を中皿外周面と同一面か、稍引込んで
形成する場合は、突部の高さを低く制限せざるをえない
ので、クリック音の調整は困難となるが、本考案の場合
には、弾性壁部の肉厚調整により、凹部の深さを調整可
能なので、回転基部の突条の高さを大きくとることがで
き、而も、弾性壁部の弾力が充分にあり、他方の凹部へ
固定基部内の突条が収納される際に、広い面積部分の衝
突が生ずるので、パチンという大きなクリック音を発生
させることができ、しっかりと固定されたという安心感
を使用者に与えることが可能である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案化粧用繰出容器の一実施例を一部を破断
して示した分解斜視図である。

【図２】同実施例の組立てた状態における縦断側面図で
ある。

【図３】図２のＡ−Ａ線に沿った横断平面図である。

【図４】同実施例の作用を説明するための、図２のＡ−
Ａ線に沿った横断平面図である。

【図５】同実施例の作用を説明するための、図２のＡ−
Ａ線に沿った横断平面図である。

【符号の説明】

１０ 回転筒 １２ 回転内筒部 １４ 回転基部 １６ 縦溝 １６Ａ，１６Ｂ 横溝 １８ 突条 ２０ 作動筒 ２２ 螺旋溝 ３０ 中皿 ３６ スリット ３８ 弾性壁部３８Ａ，３８Ｂ 凹部 ３９ 突子

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 螺旋溝２２を内設した作動筒２０と、こ
   の作動筒２０の内側に嵌挿され、縦溝１６及びその終端
   に連なる横溝１６Ａ，１６Ｂを有する回転内筒部１２並
   びにその下部の回転基部１４とから成る回転筒１０と、
   化粧材を保持し、外側に前記縦溝１６を通して前記螺旋
   溝２２に係合する突子３９を形成した円筒状中皿３０と
   を備えた化粧用繰出容器において、 円筒状中皿３０の周壁の下部近傍に、円周方向に沿った
   円弧状のスリット３６を設けることにより、中皿３０の
   下部に弾性壁部３８を形成するとともに、この弾性壁部
   ３８の外側に、円周方向に沿い且つ離間した少なくとも
   ２個の凹部３８Ａ，３８Ｂを形成し、更に、前記回転基
   部１４の内側には、中皿３０が最下位に位置した時に、
   前記一方の凹部３８Ａに進入する突条１８を軸方向に沿
   って形成し、中皿３０の円周方向の回転により、前記弾
   性壁部３８が撓んで突条１８が他方の凹部３８Ｂ内に受
   容されるようになしたことを特徴とする化粧用繰出容
   器。