JP2551175B2 - 難燃化ポリエステル組成物 - Google Patents

難燃化ポリエステル組成物

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Description

【発明の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本発明は、難燃性に優れ、かつ良好な耐熱性、機械的
性質および成形品外観を備えた難燃化ポリエステル組成
物に関するものである。
〈従来の技術〉 近年プラスチックの高性能化に対する要求がますます
高まり、種々の新規性能を有するポリマが数多く開発さ
れ、市場に供されているが、なかでも分子鎖の平行な配
列を特徴とする光学異方性の液晶ポリマが優れた流動
性、機械的性質を有する点で注目され、機械部品、電気
・電子部品などに用途が拡大されつつある。
一方、これらの工業材料には、一般の化学的、物理的
諸特性のバランス以外に、火炎に対する安全性、すなわ
ち難燃性が強く要求されている。
一般に液晶ポリマは、耐燃焼性を持っており、直接火
炎にさらされると自己発泡的に炭化層を形成する性質の
あることが知られている。
しかしながら、アルキレングリコールとジカルボン酸
から得られるポリエステルにアシルオキシ芳香族カルボ
ン酸を共重合した液晶ポリエステル(たとえば特公昭56
−18016号記載ポリマ)は、脂肪族成分を含有するため
に薄肉成形品(1/32″)での難燃性が、全芳香族ポリエ
ステルに比べて不十分であることがわかった。
〈発明が解決しようとする課題〉 そこで、特公昭56−18016号記載ポリマに種々の難燃
剤を添加した結果、薄肉成形品(1/32″)の難燃性も必
ずしも十分とはいえず、良好な耐熱性、機械物性および
成形品外観を有する成形品が得られないなどの問題もあ
ることがわかった。
よって、本発明は、難燃性、耐熱性、機械的性質に優
れるとともに、良好な成形品外観を有する難燃化ポリエ
ステル組成物を得ることを課題とする。
〈課題を解決するための手段〉 本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結
果、液晶ポリエステルに高分子難燃剤を特定の粒径以下
で分散せしめることにより本発明が達成できることを見
出し本発明をなすに至った。
すなわち本発明は、液晶ポリエステル100重量部に対
して、高分子難燃剤0.2〜30重量部を含有せしめてなる
組成物であり、その高分難燃剤が液晶ポリエステル中に
平均径2.5μ以下で分散していることを特徴とする難燃
化ポリエステル組成物を提供するものである。
本発明でいう溶融異方性ポリエステルは、芳香族オキ
シカルボキシレート単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族
ジカルボニル単位、エチレンジオキシ単位などから選ば
れた単位からなるポリエステルであり、好ましくは下記
構造単位(I)〜(IV)から選ばれたポリエステルであ
る。
O−R1−O ……(II) O−CH2CH2−O ……(III) CO−R2−CO ……(IV) (ただし式中のR1 から選ばれた1種以上の基を、R2 から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素
原子または塩素原子を示す。また、構造単位(IV)は構
造単位〔(II)+(III)〕と実質的に等モルであ
る。) これらのうち最も好ましくは(I)〜(IV)からなる
ポリエステルであり、R1として R2として を選んだものである。
そして上記構造単位(I)〜(IV)のうち、構造単位
〔(I)+(II)〕は〔(I)+(II)+(III)〕の7
5〜95モル%であり、好ましくは82〜92モル%、さらに
好ましくは85〜90モル%である。また構造単位(III)
は〔(I)+(II)+(III)〕の25〜5モル%であ
り、好ましくは18〜8モル%、さらに好ましくは15〜10
モル%である。構造単位〔(I)+(II)〕が〔(I)
+(II)+(III)〕の95モル%より大きいと溶融流動
性が低下して重合時に固化し、75モル%より小さいと耐
熱性が不良となり好ましくない。また、構造単位(I)
/(II)モル比は75/25〜95/5であり、好ましくは78/22
〜93/7である。75/25未満であったり、95/5より大きい
場合には耐熱性、流動性が不良となり、本発明の目的を
達成することができない。また、構造単位(IV)は構造
単位〔(II)+(III)〕と実質的に等モルである。
本発明に用いる液晶ポリエステルの製造方法について
は特に制限するものではなく、公知のポリエステルの重
縮合方法に準じて製造できる。
また、本発明で使用する液晶ポリエステルの溶融粘度
は10〜15,000ポイズが好ましく、特に20〜5,000ポイズ
がより好ましい。
なお、この溶融粘度は(液晶開始温度+40℃)でずり
速度1,000(1/秒)の条件下で高化式フローテスターに
よって測定した値である。
一方、このサーモトロピック液晶ポリエステルの対数
粘度は0.1g/dl濃度60℃のペンタフルオロフェノール中
で測定可能であり、構造単位(I)〜(IV)からなるポ
リエステルでは0.5〜5.0dl/gが好ましく、1.0〜3.0dl/g
が特に好ましい。
本発明に用いられる高分子難燃剤とは臭素原子および
/またはリン原子を含有する高分子であり、臭素系高分
子難燃剤としたは臭素含有量20重量%の以上のものが好
ましい。具体的には臭素化ポリカーボネート(たとえば
臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカ
ーボネートオリゴマーあるいはそのビスフェノールAと
の共重合物)、臭素化エポキシ化合物(たとえば臭素化
ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によっ
て製造されるジエポキシ化合物や臭素化フェノール類と
エピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポ
キシ化合物)、ポリ(臭素化ベンジルアクリレート)、
臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノール
A、塩化シアヌルおよび臭素化フェノールの縮合物、臭
素化ポリスチレン、架橋臭素化ポリスチレン、架橋臭素
化ポリ−α−メチルスチレンなどのハロゲン化されたポ
リマやオリゴマーあるいは、混合物が挙げられ、なかで
も臭素化エポキシオリゴマーまたはポリマ、臭素化ポリ
スチレン、架橋臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニ
レンエーテルおよび臭素化ポリカーボネートが好まし
く、臭素化ポリスチレンが特に好ましく使用できる。
これらの高分子難燃剤の添加量は液晶ポリエステル10
0重量部あたり、0.2〜30重量部が好ましく、より好まし
くは0.5〜20重量部であるが、難燃性は液晶ポリエステ
ルの前記構造単位(III)の共重合量と密接な関係があ
るため、構造単位(III)を含有する時には次のような
添加量にするのが好ましい。すなわち臭素系高分子難燃
剤の添加量は液晶ポリエステル中の構造単位(III)の1
00重量部に対して60〜280重量部が好ましく、100〜200
重量部が特に好ましい。
一方、本発明において用いられるリン系高分子難燃剤
としては下記構造単位からなるポリマを挙げることがで
きる。
そしてこれらのうち最も好ましい有機リン化合物は下
記ポリマである。
なお、これらのポリマは一部が金属塩であってもよ
い。このポリマの添加量は構造式(I)、(II)、(II
I)および(IV)からなる液晶ポリエステル100重量部に
対して0.2〜30重量部、好ましくは0.5〜15重量部であ
り、液晶ポリエステル中の構造単位(III)の100重量部
に対して2〜150重量部が好ましく、10〜100重量部が特
に好ましい。
また、本発明にける高分子難燃剤は下記構造単位から
なるポリマのように臭素およびリン原子を含有したポリ
マであってもよい。
本発明の液晶ポリエステルにおいて前記構造単位(II
I)を含有する時には構造単位(III)が構造単位
〔(I)+(II)+(III)〕の5〜25モル%であり、
前記の難燃剤添加量でUL94規格の垂直型燃焼テスト(AS
TM D790規格)で1/32″厚みでV−Oにすることができ
る。構造単位(III)が5モル%未満では、液晶ポリエ
ステルの融点が高くなるため難燃剤によって溶融時に液
晶ポリエスエルが分解し重合度低下が起こり、充填剤を
添加しても機械物性が低下したり、燃焼時に成形品がド
リップしたりして好ましくない。
一方、構造単位(III)が25モル%より多いと荷重た
わみ温度などの耐熱性が大きく低下するのみならず、難
燃性を付与するには多量の有機臭素化合物またはリン化
合物を添加する必要があったり、アンチモン化合物など
の難燃助剤をさらに添加する必要があるため、耐熱性や
機械的特性が大きく低下するため好ましくない。
本発明において高分子難燃剤は液晶ポリエステル中に
平均径2.5μ以下で分散していることを特徴としてお
り、好ましくは2.0μ以下である。
この平均径が2.5μより大きい時には、難燃性剤が不
良であったり、機械的特性が不良であったりして本発明
の目的を達成することができない。なお、この平均径は
走査型電顕あるいは透過型電顕で視野に入る全粒子の直
径を観察し、その数平均を算出することにより測定可能
である。また、粒子が球状でない時は、長径と短径の平
均を算出する。この目的を達成するにはブレンドする高
分子難燃剤を特定かため密度にするか、特定粒径に粉砕
することが好ましく、たとえば臭素化ポリエチレンの場
合には、かため密度0.6g/ml以上、好ましくは0.6〜0.7g
/ml、そして平均径としては15μm以下、好ましくは5
〜12μmに粉砕することが好ましい。
このように、液晶ポリエステルと高分子難燃剤のブレ
ンドにおいて特定形状の高分子難燃剤を使用することが
必要な理由は、液晶ポリエステル特有の問題に起因する
ものと思われ、ポリエチレンテレフタレートにような等
方性ポリエステルにおける常識からは全く予期されない
知見である。
本発明に使用する液晶ポリエステルおよび難燃性液晶
ポリエステル組成物に対してさらに充填剤を含有させた
組成物がより好ましく本発明に使用できる。充填剤を添
加する場合、その添加量は液晶ポリエステル100重量部
に対して200重量部以下が好ましく、15〜100重量部が特
に好ましい。
本発明において用いることができる充填剤としてはガ
ラス繊維、炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維、チタン酸
カリウム繊維、石コウ繊維、黄銅繊維、ステンレス繊
維、スチール繊維、セラミック繊維、ボロンウイスカ繊
維、マイカ、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、ガラス
ビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、ク
レー、ワラステナイト、酸化チタンなどの繊維状、粉
状、粒状あるいは板状の無機フィラーが挙げられる。
上記充填剤中、ガラス繊維が好ましく使用される。ガ
ラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものな
ら特に限定はなく、たとえば長繊維タイプや短繊維タイ
プのチョップトストランド、ミルドファイバーなどから
選択して用いることができる。また、ガラス繊維はエチ
レン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキ
シ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されてい
てもよく、またシラン系、チタネート系などのカップリ
ング剤、その他の表面処理剤で処理されていてもよい。
さらに、本発明の組成物には、本発明の目的を損なわ
ない程度の範囲で、酸化防止剤および熱安定剤(たとえ
ばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト
類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(たとえ
ばレゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾー
ル、ゼンゾフェノンなど)、滑剤および離型剤(モンタ
ン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステ
ル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエ
チレンワックスなど)、染料(たとえばニトロシウムな
ど)および顔料(たとえば硫化カドミウム、フタロシア
ニン、カーボンブラックなど)を含む着色剤、可塑剤、
帯電防止剤などの通常の添加剤や他の熱可塑性樹脂を添
加して、所定の特性を付与することができる。
本発明の樹脂組成物の溶融混練には公知の方法を用い
ることができる。たとえば、バンバリーミキサー、ゴム
ローム機、ニーダー、単軸もしくは2軸押出機などを用
い、200〜350℃の温度で溶融混練して組成物とすること
ができる。
〈実施例〉 以下、実施例により本発明を詳述する。
参考例1 p−ビドロキシ安息香酸881重量部、4,4′−ジヒドロ
キシビフェニル158重量部、無水酢酸907重量部、テレフ
タル酸141重量部および固有粘度が約0.6dl/gのポリエチ
レンテレフタレート245重量部を撹拌翼、留出管を備え
た反応容器に仕込み、次の条件で脱酢酸重縮合を行っ
た。
まず窒素ガス雰囲気下に100〜250℃で5時間、250〜3
00℃で1.5時間反応させたのち、300℃、1時間で0.5mmH
gに減圧し、さらに2.25時間反応させ、重縮合を完結さ
せたところ、ほぼ理論量の酢酸が留出し、下記の理論構
造式を有する樹脂(a)の得た。
k/l/m/n=75/10/15/25 また、このポリエステルを偏光顕微鏡の試料台にの
せ、昇温して、光学異方性の確認を行った結果、液晶開
始温度は264℃であり、良好な光学異方性を示した。こ
のポリエステルの対数粘度(0.1g/dlの濃度でペンタフ
ルオロフェノール中、60℃で測定)は19.6dl/gであり、
304℃、ずり速度1,000(1/秒)での溶融粘度は910ポイ
ズであった。
実施例1 参考例1で得た樹脂(a)100重量部とかため密度0.6
7g/ml、平均径7〜10μmの臭素化ポリスチレン(ポリ
スチレン基準で重量平均分子量32万)7.5重量部、ガラ
ス繊維45重量部を300℃に設定した30mmφの2軸押出機
により溶融混合、ペレタイズした。次に得られたペレッ
トを住友ネスタール射出成形機プロマット40/25(住友
重機械工業(株)製)に供し、シリンダー温度300℃、
金型温度90℃の条件で燃焼試験片(1/32″および1/8″
×1/2″×5″)、曲げ試験(1/8″×1/2″×5″)を
成形した。これらの試験片について外観観察を行うとと
もに、UL94規格にしたがい垂直型燃焼テストを行った。
その結果、本発明の有機臭素化合物を配合したポリエ
ステルは、難燃性が1/32″V−O、曲げ強度は1,905kgf
/cm2であり、機械的、熱的性質が優れるとともに、良好
な成形品外観を有することがわかった。
そして成形機内で310℃、20分滞留させたのちに成形
を行い滞留安定性を調べたところ、曲げ強度は1,894kgf
/cm2とほとんど物性低下のないことがわかった。
一方、この成形品は破断面の走査型電顕(SEM)およ
び成形品の超薄切断の透過型電顕(TEM)から難燃剤が
平均径1μmで球状に分散していることがわかった。
比較実施例1 実施例1の臭素化ポリスチレンの代りに未粉砕のかた
め密度0.57g/ml、平均径約50μの臭素化ポリスチレンを
用いたところ、難燃性が1/32″V−2、曲げ強度1,845k
gf/cm2であった。
そして実施例1と同じく成形機内20分で滞留安定性を
調べたところ、曲げ強度は1,580kgf/cm2に低下した。
一方、この成形品の難燃剤の分散を実施例1と同じく
調べたところ平均径5μで球状に分散していた。
〈発明の効果〉 本発明に難燃性ポリエステル組成物によって難燃性、
機械的特性、耐熱性の優れた射出成形品を得ることがで
きる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−118567(JP,A) 特開 昭59−138242(JP,A) 特開 昭59−138241(JP,A) 特開 昭55−118988(JP,A) 特開 平2−58562(JP,A) 特公 昭56−18016(JP,B2)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】液晶ポリエステル100重量部に対して、高
    分子難燃剤0.2〜30重量部を含有せしめてなる組成物で
    あり、その高分子難燃剤が液晶ポリエステル中に平均径
    2.5μ以下で分散していることを特徴とする難燃化ポリ
    エステル組成物。
  2. 【請求項2】液晶ポリエステルがエチレンジオキシ単位
    を必須成分とすることを特徴とする請求項(1)記載の
    難燃化ポリエステル組成物。
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