以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。図1および図2は、本発明の一実施形態に係るクレーン10の側面図および平面図である。なお、以後、各図には、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」および「後」の方向が示されているが、当該方向は、本実施形態に係るクレーン10の構造および組立方法を説明するために便宜上示すものであり、本発明に係るクレーンの移動方向や使用態様などを限定するものではない。
クレーン10は、本発明のクレーン本体に相当する上部旋回体11と、この上部旋回体11を旋回可能に支持する下部走行体12(下部本体)と、起伏部材としてのブーム13と、ブーム起伏用部材であるHLマスト14と、箱マスト15と、を備える。
図1に示されるブーム13は、上部旋回体11の前部に起伏方向に回動可能となるように支持される。ブーム13は、ブームフット13Sを備える。ブームフット13Sは、ブーム13の回動における支点部となる。ブームフット13Sは、左右方向(横方向)に延びる水平な回転軸を形成する。
また、ブーム13は、アイドラシーブ131、132と、を有する。アイドラシーブ131、132は、ブーム13の先端部にそれぞれ回転可能に支持されている。
ブーム13の基端部側には左右一対のブームバックストップ28が設けられる。これらのブームバックストップ28は、ブーム13が図1に示される起立姿勢まで到達した時点で上部旋回体11に当接する。この当接によって、ブーム13が強風等で後方に煽られることが規制される。
HLマスト14は、ブーム13の後側の位置でブーム13の回動軸と平行な回動軸回りに上部旋回体11に回動可能に支持される。すなわち、HLマスト14もブーム13の起伏方向と同方向に回動可能である。HLマスト14は、HLマストフット14Sを備える。HLマストフット14Sは、HLマスト14の回動における支点部となる。HLマストフット14Sは、左右方向(横方向)に延びる回転軸を形成する。HLマスト14は、図1に示すように、上部旋回体11から後方かつ上方に斜めに向かって延びる後傾姿勢でブーム13の回動における支柱として機能する。なお、他の実施形態において、HLマスト14によって例示される本発明のマストは、箱型のマストなど他の形態からなるものでもよい。また、HLマスト14は、マストアイドラシーブ140を備える。マストアイドラシーブ140は、HLマスト14の長手方向の中央部の後側面に配置されている。
HLマスト14の基端部側には左右一対のマストバックストップ29が設けられる。これらのマストバックストップ29は、HLマスト14の回動軸(HLマストフット14S)よりも後側の位置で、図1に示される後傾姿勢(起立姿勢)のHLマスト14から延びるとともに上部旋回体11に配置された不図示の受け部に当接し、HLマスト14が強風等で後方へ転倒することを阻止する。
箱マスト15は、HLマスト14の後側(下方)で上部旋回体11に回動可能に連結される。箱マスト15は、断面視で矩形形状からなる。箱マスト15の回動軸は、ブーム13の回動軸と平行でかつHLマスト14の回動軸とほぼ同じ位置に配置されている。すなわち、この箱マスト15もブーム13の起伏方向と同方向に回動可能である。箱マスト15は、箱マストフット15Sを備える。箱マストフット15Sは、箱マスト15の回動における支点部となる。箱マストフット15Sは、左右方向(横方向)に延びる回転軸を形成する。
更に、クレーン10は、下部スプレッダ18と、上部スプレッダ19と、ガイライン20と、ブーム起伏用ロープ21と、ブーム起伏用ウインチ22と、を備える。
下部スプレッダ18は、HLマスト14の先端部に支持される。下部スプレッダ18は、不図示の下部シーブブロックを備えており、複数のシーブが幅方向(左右方向)に配列されている。
上部スプレッダ19は、下部スプレッダ18の前方に所定の間隔をおいて配置される。上部スプレッダ19は、ガイライン20を介してブーム13の先端部に接続される。上部スプレッダ19は、不図示の上部シーブブロックを備えており、複数のシーブが幅方向(左右方向)に配列されている。
ガイライン20は、図1の紙面と直交する左右方向に一対配置されている。ガイライン20の後端部は、上部スプレッダ19に接続され、ガイライン20の前端部は、ブーム13の先端部に接続される。ガイライン20は、ガイリンク(金属製の板材)、ガイロープ、ガイワイヤ(金属製の線材)などを含む。
ブーム起伏用ロープ21は、ブーム起伏用ウインチ22から引き出され、HLマスト14の先端部のシーブ14A、14Bに掛けられた後、下部スプレッダ18の下部シーブブロックと上部スプレッダ19の上部シーブブロックとの間で複数回掛け回される。なお、下部シーブブロックおよび上部シーブブロックに掛け回された後のブーム起伏用ロープ21の先端部は、HLマスト14の先端部に固定される。
ブーム起伏用ウインチ22は、HLマスト14の基端部側に配置される。ブーム起伏用ウインチ22は、ブーム起伏用ロープ21の巻き取りおよび繰り出しを行うことで下部スプレッダ18の下部シーブブロックと上部スプレッダ19の上部シーブブロックとの間の距離を変化させ、ブーム13をHLマスト14に対して相対的に回動させながらブーム13を起伏させる。
更に、クレーン10は、左右一対のマストガイリンク23と、マスト起伏用ロープ24と、マスト起伏用ウインチ25と、を備える。
マストガイリンク23は、HLマスト14の先端部と箱マスト15の先端部とを接続する。この接続は、HLマスト14の回動と箱マスト15の回動とを連携させる。
マスト起伏用ロープ24は、上部旋回体11に配置され複数のシーブが幅方向に配列されたたシーブブロック26と、箱マスト15の先端部に配置され複数のシーブが幅方向に配列されたシーブブロック27との間で複数回掛け回される。
マスト起伏用ウインチ25は、上部旋回体11に配置される。マスト起伏用ウインチ25は、マスト起伏用ロープ24の巻き取りおよび繰り出しを行う。マスト起伏用ウインチ25によるマスト起伏用ロープ24の巻き取り、繰り出し動作によって、箱マスト15の先端部のシーブブロック27と上部旋回体11の後端部のシーブブロック26との間の距離が変化し、上部旋回体11に対して箱マスト15およびHLマスト14が一体的に回動しながら、HLマスト14が起伏する。なお、HLマスト14および箱マスト15の回動は、主にクレーン10の組立分解時に行われ、クレーン10の使用時にはHLマスト14および箱マスト15の位置(対地角)はほぼ固定されている。
クレーン10には、前述のマスト起伏用ウインチ25およびブーム起伏用ウインチ22以外に、吊り荷の巻上げ及び巻下げを行うための主巻用ウインチ30S及び補巻用ウインチ31Sが搭載される。本実施形態に係るクレーン10では、主巻用ウインチ30S、及び補巻用ウインチ31Sがいずれもブーム13の基端部に据え付けられる。クレーン10のウインチ30S、31Sは上部旋回体11に搭載されていてもよい。
主巻用ウインチ30Sは、主巻用ロープ32(図1)による吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う。この主巻について、ブーム13の先端部には前述のアイドラシーブ131、132が回転可能に設けられ、さらにガイドシーブに隣接する位置に複数の主巻用ポイントシーブが幅方向に配列された主巻用シーブブロックが設けられている。主巻用シーブブロックから垂下された主巻用ロープ32には、吊り荷用の主フック34が連結されている。そして、主巻用ウインチ30Sから引き出された主巻用ロープ32がアイドラシーブ131、132に順に掛けられ、かつ、主巻用シーブブロックのシーブと、主フック34に設けられたシーブブロックのシーブとの間に掛け渡される。従って、主巻用ウインチ30Sが主巻用ロープ32の巻き取りや繰り出しを行うと、主フック34の巻上げ及び巻下げが行われる。
同様にして、補巻用ウインチ31Sは、補巻用ロープ33による吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う。この補巻については、上記の主巻と同様の不図示の構造が備えられている。そして、補巻用ウインチ31Sが補巻用ロープ33の巻き取りや繰り出しを行うと、補巻用ロープ33の末端に連結された図略の吊荷用の補フックが巻上げられ、または巻下げられる。
また、クレーン10は、左右一対のカウンタウエイト35と、左右一対のウエイトガイリンク36と、左右一対のカウンタウエイト37と、を備える。
左右一対のカウンタウエイト35は、上部旋回体11の旋回フレームの後端部に左右方向に間隔をおいてそれぞれ配置されている。また、左右一対のカウンタウエイト37は、上部旋回体11の後方に配置されている。カウンタウエイト35およびカウンタウエイト37は、クレーン10のバランスを維持するための錘である。
左右一対のカウンタウエイト37は、板状のウエイト(錘)が上下に積載されることで構成されている。特に、カウンタウエイト37は、クレーン10が重量物を吊り上げるために備えられるSHL(Super Heavy Lifting)用ウエイトとして、クレーン10のバランスを保つ機能を有する。カウンタウエイト37は、自走台車50に載置されており、当該自走台車50が左右一対のウエイトガイリンク36(ウエイト用ガイライン)によってHLマスト14の先端部に接続されている。換言すれば、カウンタウエイト37を支持する自走台車50は、HLマスト14の先端部から左右一対のウエイトガイリンク36を介して吊り下げられている。なお、図1では、左右のウエイトガイリンク36のうち、右側(紙面手前側)のウエイトガイリンク36のみが現れている。左右のウエイトガイリンク36は、それぞれ前後2本のガイリンク(ロープ)から構成される。
本実施形態では、カウンタウエイト37を支持する自走台車50(自走式台車)は、クレーン10専用の台車ではなく汎用台車から構成される。なお、他の実施形態において、自走台車50はクレーン10専用の台車であってもよい。更に、クレーン10は、連結ビーム60を有する。連結ビーム60は、カウンタウエイト37を支持する自走台車50と上部旋回体11とを互いに連結するための部材である。
図3は、本実施形態に係るクレーン10の自走台車50およびこれに載置されたカウンタウエイト37の斜視図である。図4Aおよび図4Bは、本実施形態に係るクレーン10の連結ビーム60の平面図および側面図である。また、図4Cは、本実施形態に係るクレーン10の連結ビーム60と上部旋回体11との連結部の水平断面図である。なお、図4Cは、後記の図10の矢印Z-Zに沿って見た水平断面図に相当する。図4Dは、本実施形態に係るクレーン10の連結ビーム60の後端部の拡大斜視図である。
図3を参照して、自走台車50は、台車本体51と、パワーパック52と、複数のタイヤユニット53と、4つのアウトリガ54と、左右一対のガイリンク接続部55と、を有する。
台車本体51は、自走台車50の本体部分であり、平面視で長方形形状を有している。台車本体51は、クレーン10の使用時には、図3に示すように上部旋回体11の左右方向に沿って延びるように配置される。台車本体51上にはカウンタウエイト37を載置するためのパレット51Pが固定されている。図3に示すように、複数のカウンタウエイト37が、パレット51Pに左右方向に間隔をおいて積層される。なお、本実施形態では、カウンタウエイト37、パレット51Pおよび自走台車50は、互いに固定されて一体的に動作するように構成され、ウエイトユニットを構成することが可能である。当該ウエイトユニットは、クレーン10が重量物を吊り上げるためのSHL用ウエイトとして、クレーン10のバランスを保つ機能を有する。
パワーパック52は、台車本体51の長手方向の一端に設けられている。パワーパック52は、エンジンなどの動力発生機と、エンジンによって駆動される油圧ポンプと、これらを制御するコントローラと、運転室とを有する(いずれも詳細は不図示)。
複数のタイヤユニット53は、それぞれ地面Gを転動可能なタイヤを含み、台車本体51の幅方向の両側において、台車本体51の長手方向に沿って並ぶように配置されている。各タイヤユニット53は、鉛直方向の中心軸を中心に台車本体51に対して回転可能なように台車本体51の下部に取り付けられている。各タイヤユニット53が当該中心軸の軸回りに回転することによってタイヤの向きが変更される。
4つのアウトリガ54は、パレット51Pの四隅近傍にそれぞれ配置されており、油圧によって上下に伸縮するシリンダ構造を有している。アウトリガ54が伸長すると、カウンタウエイト37が載置されたパレット51Pが上方に移動し、自走台車50の台車本体51に対して上方に浮き上がる。この結果、パレット51Pの下方の空間において自走台車50の進入、脱離が可能となる。アウトリガ54が収縮すると、カウンタウエイト37が載置されたパレット51Pが自走台車50の台車本体51上に載置され、カウンタウエイト37の荷重が台車本体51に付与される。
左右一対のガイリンク接続部55は、HLマスト14の先端部から垂下された左右一対のウエイトガイリンク36のガイリンク下端部36Aにそれぞれ接続されるものであり、パレット51Pに左右方向に間隔をおいて固定されている。なお、図3に示すように、左右一対のガイリンク接続部55の間に、上部旋回体11と自走台車50(パレット51P)とを連結する連結ビーム60が配置される。
連結ビーム60は、上部旋回体11と、上部旋回体11の後方でカウンタウエイト37を支持し地上を自走可能な自走台車50とを互いに連結することが可能な連結部材である。なお、本実施形態では、前述のパレット51Pを介して、連結ビーム60と自走台車50とが互いに接続される。他の実施形態において、連結ビーム60は、パレット51Pを介さずに、自走台車50の台車本体51などに直接接続されてもよい。
連結ビーム60は、ビーム本体61と、スライダ62(可動部)と、固定ブラケット63(固定機構)(図4D)と、を有する。
ビーム本体61は、横ビーム610と、縦ビーム611(前後ビーム)と、左右一対の斜めビーム612と、を有する。
縦ビーム611は、上部旋回体11の前後方向に延びるとともに、スライダ62を往復移動可能(スライド移動可能)に支持する柱状の部材である。
横ビーム610は、縦ビーム611の前端部から上部旋回体11の左右方向両側に延びるように縦ビーム611に接続されている。横ビーム610の左右両端部には、上部旋回体11の左右一対の側板11A(図4C)(上部旋回体11の後端部)に連結される、左右一対の旋回体連結部610A(連結部材)がそれぞれ配置されている。図4Aに示すように、各旋回体連結部610Aは、左右方向に互いに間隔をおいて配置される一対の板状部を有し、各板状部には同軸上にピン孔610B(図4B)が形成されている。そして、図4Cに示すように、前記一対の板状部が上部旋回体11の側板11Aを左右両側から挟むように配置され、連結ピンPによって旋回体連結部610Aと側板11Aとが連結される。上記の連結ピンPによる連結が図4Aの左右一対の旋回体連結部610Aにおいてそれぞれ行われる。この結果、連結ビーム60は、左右方向に延びる連結ピンPを中心として回動可能なように上部旋回体11の一対の側板11Aに支持される。連結ビーム60と上部旋回体11とが連結されると、ビーム本体61は、当該旋回体連結部610Aから後方に向かって延びている。
左右一対の斜めビーム612は、縦ビーム611のうち横ビーム610よりも後方の部分と横ビーム610の左右両端部とをそれぞれ接続するように斜めに延びている。当該一対の斜めビーム612は、スライダ62に当接することでスライダ62の移動範囲の前端部を画定する、ストッパとしての機能を兼ね備えている。
スライダ62は、ビーム本体61の縦ビーム611に前記前後方向に沿って往復移動可能に外嵌される角筒形状(筒形状)を有している。スライダ62は、自走台車50に連結される台車連結部621を有する。本実施形態では、台車連結部621は、パレット51Pのスライダ連結部511(図7)に連結されることで、当該パレット51Pを介して自走台車50に連結される。また、図4Dに示すように、筒状のスライダ62の内周面には、複数の摺動部材62Hが貼り付けられている。一例として、摺動部材62Hはテフロン(登録商標)からなり、ビーム本体61とスライダ62との摺動抵抗を低減する。
そして、上記のようなビーム本体61は、自走台車50の前記前後方向を含む方向への走行によって自走台車50が前記上部旋回体11に対して前記前後方向に相対移動することを可能とするように、スライダ62を前記上部旋回体11の左右方向において拘束しながら前記前後方向に沿って往復移動可能に支持する。また、本実施形態では、自走台車50の走行によって上部旋回体11を旋回させることが可能である。したがって、ビーム本体61は、前記旋回中心軸を中心とする自走台車50の旋回方向への走行によって前記上部旋回体11が旋回することを可能とするように、スライダ62を支持している。
また、連結ビーム60は、被接続部60Sを有する。被接続部60Sは、連結ビーム60が不図示の補助クレーンによって吊り上げられるためのロープの接続箇所である。本実施形態では、被接続部60Sは、左右一対のロープ接続部611A(図4A、図4B)と、左右一対のスライダ後側接続部622と、左右一対のスライダ前側接続部623と、を有する。左右一対のロープ接続部611Aは、左右一対の斜めビーム612の後端部に配置されている。また、左右一対のスライダ後側接続部622は、スライダ62の上面部の後端部に配置され、左右一対のスライダ前側接続部623は、スライダ62の上面部の前端部に配置されている。ロープ接続部611A、スライダ後側接続部622およびスライダ前側接続部623には、ロープを固定可能な孔部が形成されている。また、後記のように、連結ビーム60を吊り上げる際には、上記のロープ接続部611A、スライダ後側接続部622およびスライダ前側接続部623が選択的に使用される。
固定ブラケット63は、ビーム本体61の重心位置よりも後方の位置でスライダ62をビーム本体61に固定することが可能とされている。特に、本実施形態では、固定ブラケット63は、ビーム本体61のビーム後端部61Tにスライダ62を固定する。固定ブラケット63は、スライダ62のブラケット保持部62Kに不図示のピンによって着脱可能に装着される。この際、固定ブラケット63は、スライダ62の移動を拘束する拘束姿勢と、スライダ62の移動を許容する格納姿勢との両方の姿勢で選択的にブラケット保持部62Kに装着可能とされている。
なお、ビーム本体61とスライダ62との関係について換言すれば、ビーム本体61は、上部旋回体11の前後方向において左右一対の旋回体連結部610Aとは反対側で左右一対の旋回体連結部610Aに対する距離が一定に維持されたビーム後端部61T(図4D)を有する。そして、スライダ62は、左右一対の旋回体連結部610Aとビーム後端部61Tとの間で、より詳しくは、左右一対の斜めビーム612の後端部とビーム後端部61Tとの間で、前記前後方向に沿って往復移動可能である。
次に、上記の連結ビーム60が予め上部旋回体11に連結された状態から、自走台車50が連結ビーム60およびクレーン10のHLマスト14にそれぞれ連結される工程について説明する。図5、図6、図8は、本実施形態に係るクレーン10に自走台車50が連結される様子を示す側面図である。図7は、本実施形態に係るクレーン10の連結ビーム60と50との連結部の斜視図である。このような連結ビーム60および自走台車50の連結は、作業現場においてクレーン10の吊り能力を増加させる場合などに行われる。
図5に示すように、クレーン10の上部旋回体11に対してHLマスト14が後方かつ斜め上方に向かって延びる姿勢とされ、HLマスト14の下方において箱マスト15が後方かつ斜め上方に向かって延びる姿勢とされる。HLマスト14の先端部と箱マスト15の先端部とは前述のマストガイリンク23によって互いに接続されている。また、箱マスト15の先端部と上部旋回体11の後端部との間には、マスト起伏用ロープ24が掛け渡されている。更に、HLマスト14の先端部からは、左右一対のウエイトガイリンク36が垂下されている。なお、前述のように各ウエイトガイリンク36は、それぞれ2本のガイリンクから構成されている。
連結ビーム60が上部旋回体11の後端部から後方に延びる姿勢とされた状態で、自走台車50が連結ビーム60の下方に移動するように操作される(図6)。この際、前述のように、左右一対のガイリンク接続部55の間に連結ビーム60が進入する(図3)。
次に、図7に示すように。スライダ62の台車連結部621と自走台車50上のパレット51Pのスライダ連結部511とが不図示の連結ピンによって互いに連結される。次に、図8に示すように、左右一対のウエイトガイリンク36の2本のガイリンクのガイリンク下端部36Aがそれぞれガイリンク接続部55に形成された孔部に締結される。なお、ウエイトガイリンク36の上端部には伸縮可能な油圧シリンダが配置されている(不図示)。図8の状態から前記油圧シリンダが収縮されると、ウエイトガイリンク36がガイリンク接続部55を介してパレット51Pに載置された複数のカウンタウエイト37を吊り上げる。この結果、クレーン10の吊り能力が向上される。なお、他の実施形態において、カウンタウエイト37とともに自走台車50が前述のウエイトユニットとして一体で吊り上げられる態様でもよい。
次に、図5に示されるように連結ビーム60が上部旋回体11に連結される工程についてクレーン10の吊り能力ごとに詳述する。図9は、本実施形態に係るクレーン10において、連結ビーム60が補助クレーンによって吊上げられた様子を示す側面図である。図10は、本実施形態に係るクレーン10において、連結ビーム60が上部旋回体11に取り付けられる様子を示す側面図である。図9、図10では、旋回中心軸から自走台車50までの半径R(図2)がクレーンの吊り能力に応じて11mに設定される場合を示しており、HLマスト14の対地角(図10の旋回中心軸CLとウエイトガイリンク36との距離)および箱マスト15の対地角も当該半径Rの大きさにあわせて予め設定されている。
この場合、図9に示すように、スライダ62が初期位置としてビーム本体61の前後方向の略中央部(所定の箇所)に固定された状態で、不図示の補助クレーンのフック100(吊り具)から垂下される吊りロープ111の前側ロープ部がロープ接続部611Aに接続され、吊りロープ111の後側ロープ部がスライダ後側接続部622に接続される。この状態で前記補助クレーンによって連結ビーム60を吊り上げると、連結ビーム60の後端側が僅かに下がった姿勢(略水平姿勢)で、連結ビーム60の空中移動が可能となる。なお、上記の前側ロープ部および後側ロープ部は、それぞれ単独のロープでもスリングの一端、他端などでもよい。
そして、図10に示すように、作業者は、補助クレーンを操作して、箱マスト15の先端部とウエイトガイリンク36との間にフック100を左右方向から進入させる。なお、ロープ接続部611A(図9)がビーム本体61の前端部(横ビーム610)よりも後方に配置されることで、図10に示すように、ビーム本体61のうちロープ接続部611Aよりも前方に突出した部分が箱マスト15の先端部の下方に進入するように配置される。このため、フック100および吊りロープ111の前側ロープ部と箱マスト15の先端部との干渉が抑止される。
その後、前述のように、左右の2か所において、連結ビーム60の旋回体連結部610Aと上部旋回体11の側板11Aとが連結ピンPによって互いに連結される。その後、図5乃至図8に示すように、連結ビーム60のスライダ62の下方に自走台車50が移動し、自走台車50(パレット51P)とスライダ62とが連結される。この際、図9の段階で、旋回中心軸CLから自走台車50までの半径R(図2)が11mに設定されるように、スライダ62のビーム本体61に対する相対位置が設定されていることで、自走台車50と連結ビーム60とを連結した後、ウエイトガイリンク36の上端部の油圧シリンダを伸長させるだけで、ウエイトガイリンク36のガイリンク下端部36Aと自走台車50のガイリンク接続部55とを容易に連結することができる。
同様に、図11は、本実施形態に係るクレーン10において、連結ビーム60が補助クレーンによって吊上げられた様子を示す側面図である。図12は、本実施形態に係るクレーン10において、連結ビーム60が上部旋回体11に取り付けられる様子を示す側面図である。図11、図12では、旋回中心軸CLから自走台車50までの半径R(図2)が13mに設定される場合を示しており、HLマスト14および箱マスト15の対地角も当該半径Rの大きさにあわせて予め設定されている。すなわち、図12では、図10と比較して、HLマスト14および箱マスト15のそれぞれの対地角が小さく、各先端部が地面Gにより近い位置に配置されている。この場合、図10と比較して、箱マスト15の先端部は、上部旋回体11からより後方に突出するように配置されており、連結ビーム60の連結作業において吊り上げ装置(フック100、吊りロープ111)や連結ビーム60と箱マスト15の先端部との干渉、衝突が懸念される。
このような問題に対応して、本実施形態では、図11に示すようにスライダ62がビーム本体61の後端部に固定された状態で、連結ビーム60の吊り上げ作業が行われる。すなわち、予め地上において、図4Dに示すようにスライダ62がビーム本体61のビーム後端部61Tにスライド移動された状態で、L字状の固定ブラケット63の先端部がビーム後端部61Tに係合され固定ブラケット63の基端部がブラケット保持部62Kに固定される。この結果、スライダ62がビーム本体61の後端部に固定された状態で、連結ビーム60を吊り上げることが可能となる。この際、図11に示すように、吊りロープ111の前側ロープ部はロープ接続部611Aに接続され、吊りロープ111の後側ロープ部はスライダ前側接続部623に接続される。なお、スライダ62が固定ブラケット63によって固定された図11の状態では、ロープ接続部611Aは、ビーム本体61およびスライダ62を含む構造体の重心位置よりも前方に配置され、スライダ前側接続部623は前記構造体の重心位置よりも後方に配置される。この結果、図11に示すように、連結ビーム60をバランスよく水平(略水平、後側が前側よりも僅かに下方)な姿勢として、吊り上げることが可能となる。
また、図11のようにスライダ62をビーム本体61の後側に移動させることで、ビーム本体61単体の重心位置よりも前記構造体の重心位置を後側に移動させることができる。すなわち、連結ビーム60を水平(略水平)に吊り上げることを前提として、図9のようにスライダ62が縦ビーム611の中央部に配置される場合と比較して、図11ではフック100の位置をより後方に移動させることができる。この結果、図12に示すように、箱マスト15の先端部がより後方に配置される場合であっても、フック100と箱マスト15の先端部との干渉を抑止しながら、連結ビーム60の上部旋回体11に対する連結作業を行うことが可能となる。なお、図12の場合も、先の図10の場合と同様に、作業者は、補助クレーンを操作して、箱マスト15の先端部とウエイトガイリンク36との間にフック100を左右方向から進入させる。その後、左右の2か所において、連結ビーム60の旋回体連結部610Aと上部旋回体11の側板11Aとが連結ピンPによって互いに連結される。その後、固定ブラケット63が取り外され、ビーム本体61に対するスライダ62の相対移動が可能となり、作業者は前記半径Rに応じた所定の位置にスライダ62を配置する。そして、図5乃至図8に示すように、連結ビーム60のスライダ62の下方に自走台車50が移動し、自走台車50(パレット51P)とスライダ62とが連結される。なお、図11のスライダ62の配置のままでスライダ62と自走台車50とが連結されてもよい。
図13は、本実施形態に係るクレーン10において、連結ビーム60が延長される様子を示す側面図である。図14は、連結ビーム60が延長された様子を示す側面図である。また、図15は、本実施形態に係るクレーン10において、連結ビーム60が上部旋回体11に取り付けられる様子を示す側面図である。図13、図14では、旋回中心軸CLから自走台車50までの半径R(図2)が16mに設定される場合を示しており、HLマスト14および箱マスト15の対地角も当該半径の大きさにあわせて予め設定されている。すなわち、図14では、図10、図12と比較して、HLマスト14および箱マスト15のそれぞれの対地角が更に小さく、各先端部が地面Gにより近い位置に配置されている。この場合も、図10の場合と比較して、箱マスト15の先端部は、上部旋回体11からより後方に突出するように配置されており、連結ビーム60の連結作業において吊り上げ装置(フック100、吊りロープ111)や連結ビーム60と箱マスト15の先端部との干渉、衝突が更に懸念される。
本実施形態では、図13に示すように、連結ビーム60が、延長ビーム65(補助ビーム)を更に有する。延長ビーム65は、上部旋回体11の前後方向に沿って延びるとともに、複数のボルトV(図14)によってビーム本体61のビーム後端部61Tに着脱可能に連結される。換言すれば、本実施形態における連結ビーム60は、前後方向においてビーム本体61と、延長ビーム65とに分割可能とされている。また、延長ビーム65は、ビーム本体61の一部を補助的に構成し、スライダ62を前記前後方向に沿って往復移動可能に支持することができる。なお、延長ビーム65の長さは適宜設定されればよく、その構造はビーム本体61の縦ビーム611と同様である。
図13に示すように、ビーム本体61が地面Gにおいて前後一対の台座T上に載置され、補助クレーンのフック100および吊りロープ111によって吊り上げられた延長ビーム65がビーム本体61に連結されると、図14に示すように、スライダ62が延長ビーム65の後端部に移動され、固定ブラケット63によって固定される(図4Dと同様)。このようにビーム本体61に延長ビーム65を連結することで、大きな吊り能力に対応して旋回中心軸CLに対するスライダ62(自走台車50)の位置を遠ざけることができるとともに、連結ビーム60の吊り上げ時に連結ビーム60の重心をより後方に配置することができる。この結果、図15に示すように、箱マスト15の先端部が更に後方に配置される場合であっても、フック100とマストガイリンク23との干渉または吊りロープ111と箱マスト15の先端部との干渉を抑止しながら、連結ビーム60の上部旋回体11に対する連結作業を行うことが可能となる。なお、以後の工程については、図12の場合と同様である。
以上のように本実施形態では、自走台車50に連結されるスライダ62は、上部旋回体11の後端部に連結されるビーム本体61によって前後方向に沿って往復移動可能に支持されている。このため、自走台車50の走行力によって上部旋回体11を旋回させる場合や、上部旋回体11がクレーン10の駆動力(旋回モータ)で旋回する一方自走台車50が旋回方向に沿って上部旋回体11と並走する場合において、自走台車50が上部旋回体11に対して前後方向に相対移動することが許容される。したがって、上記旋回動作中に自走台車50が前後方向に移動した場合でも、自走台車50の前後方向における移動力をビーム本体61に対するスライダ62の相対移動によって速やかに吸収することができる。この結果、カウンタウエイト37を支持可能な自走台車50を並走させながら上部旋回体11を旋回させる際に上部旋回体11、特に、連結ビーム60に連結される側板11Aに掛かる負荷を低減することが可能となる。
また、本実施形態では、ビーム本体61は、前記前後方向において旋回体連結部610Aとは反対側で旋回体連結部610Aに対する距離が一定に維持されたビーム後端部61Tを有し、スライダ62は、旋回体連結部610Aと前記ビーム後端部61Tとの間で前記前後方向に沿って往復移動可能である。このような構成によれば、ビーム本体61の旋回体連結部610Aとビーム後端部61Tとの間にスライダ62の移動範囲が予め確保されているため、自走台車50の動きに応じてスライダ62がビーム本体61に対して前後方向に沿って容易に相対移動することができる。
更に、本実施形態では、固定ブラケット63によってスライダ62をビーム本体61に固定することで、スライダ62の重量によって連結ビーム60の重心位置がビーム本体61単体の重心位置よりも後方に位置するため、補助クレーンのフック100(吊り上げ装置)による連結ビーム60の吊り上げ位置を後方に配置することができる。このため、連結ビーム60を上部旋回体11に連結する際にクレーン10の箱マスト15などの起伏部材が上部旋回体11から斜め上方に向かって延びている場合でも、前記吊り上げ装置と起伏部材との干渉を抑止することができる。なお、連結ビーム60の重心の移動は、上記に限定されるものではなく、ビーム本体61およびスライダ62をあわせた構造物としての重心の位置が最適に配置されればよい。一例として、ビーム本体61の重心が前側にある場合でも、スライダ62をビーム本体61の後側に移動させることで、連結ビーム60の重心をずらすものでもよい。
また、本実施形態では、ロープ接続部611Aがビーム本体61に配置され、スライダ後側接続部622およびスライダ前側接続部623がスライダ62に配置されている。このような本構成によれば、スライダ62がビーム本体61のビーム後端部61Tに固定された状態において、後側ロープ部をビーム本体61に接続する場合と比較して、前側ロープ部および後側ロープ部を連結ビーム60に容易に接続することができる。詳しくは、後側ロープ部をビーム本体61のビーム後端部61Tに接続しようとした場合、スライダ62を迂回して当該後側ロープ部をビーム本体61に接続する必要が生じるため、接続部の構造が複雑となる。本実施形態では、フック100に対向して配置されるスライダ62にスライダ後側接続部622、スライダ前側接続部623を配置することで、接続部の構造を簡略化することができる。
また、本実施形態では、ビーム本体61が柱状の縦ビーム611(案内部)を有し、当該縦ビーム611は、前後方向に延びるとともにスライダ62を案内する外周面(上下左右の四面)を有する。一方、スライダ62は、縦ビーム611に往復移動可能に外嵌され、前記外周面と摺動する内周面を含む筒形状を有している。このような本構成によれば、ビーム本体61の縦ビーム611と筒状のスライダ62との簡易な構造の組み合わせによって、スライダ62をビーム本体61に対して安定して相対移動させることができる。また、縦ビーム611の外周面がスライダ62の内周面を周方向全体で支持することができるため、自走台車50の移動による外力がスライダ62からビーム本体61に加わった場合でも、当該外力を分散することが可能となり、ビーム本体61またはスライダ62の損傷が抑止される。
また、本実施形態では、ビーム本体61が縦ビーム611に加えて横ビーム610(横部材)を有することで、連結ビーム60の旋回方向における剛性を高めることができる。また、横ビーム610に配置された左右一対の旋回体連結部610Aが上部旋回体11にそれぞれ接続されることで、上部旋回体11と連結ビーム60との連結状態を強固かつ安定して維持することができる。
また、本実施形態では、左右一対の斜めビーム612(補強部材)によって連結ビーム60の旋回方向および上下方向における剛性を更に高めることができる。また、スライダ62が上部旋回体11に過剰に近づき自走台車50と上部旋回体11とが干渉することを左右一対の斜めビーム612によって防止することができる。
また、本実施形態では、連結ビーム60が前後方向において分割可能とされており、要求されるクレーン10の吊り能力に応じて、ビーム本体の長さを調整することができる。このため、カウンタウエイト37が必要な条件の中でも比較的小さな吊り能力が要求される場合には、連結ビーム60の後側部分(延長ビーム65)を取り外すことができるため、連結ビーム60が不要な長さを有することがなく、連結ビーム60の後端部が下方に撓むことを抑制し、連結ビーム60とスライダ62との摺動抵抗を低減することができる。一方、延長ビーム65を備えることで、自走台車50に支持されるカウンタウエイト37と上部旋回体11との距離を延長ビーム65によって容易に広げクレーン10の吊り能力を調整することができるとともに、当該延長ビーム65においてもスライダ62の相対移動を可能とし、上部旋回体11に大きな負荷が掛かることを抑止することができる。
また、本実施形態では、スライダ62を固定するための固定ブラケット63が着脱可能に装着されるブラケット保持部62Kがスライダ62自体に配置されるとともに、連結ビーム60を後側で吊り上げるためのスライダ後側接続部622、スライダ前側接続部623もスライダ62自体に配置されているため、図12、図15のいずれの場合も、ブラケット保持部62K、各接続部を共通使用することができる。換言すれば、延長ビーム65にロープの接続先やブラケット保持部を配置する必要がない。
また、本実施形態では、左右一対の旋回体連結部610Aが上部旋回体11の側板11Aに左右方向に延びる連結ピンP周りに回動可能に支持される。この結果、上部旋回体11と自走台車50との高さが互いに異なる場合でも、連結ビーム60に大きな負荷が掛かることが抑止される。
また、本実施形態では、上部旋回体11と、前記上部旋回体11の後方でカウンタウエイト37を支持し地上を自走可能な自走台車50とを互いに連結することが可能なクレーン10の連結ビーム60を前記上部旋回体11に取り付ける、クレーンの連結ビーム取付方法が提供される。当該クレーンの連結ビーム取付方法は、準備工程と、吊り上げ工程と、ビーム連結工程と、台車連結工程と、を有する。
準備工程では、前記連結ビームとして、自走台車50に連結される台車連結部621を有するスライダ62と、前記上部旋回体11の前後方向における当該上部旋回体11の後端部に連結される旋回体連結部610Aを有し当該旋回体連結部610Aから後方に向かって延びるとともにスライダ62を前記前後方向に沿って往復移動可能に支持するビーム本体61と、を有するものを準備する。
吊り上げ工程では、スライダ62を前記前後方向における前記ビーム本体61の所定の箇所に固定し、フック100などの吊り上げ装置によって前記連結ビーム60を吊り上げる。
ビーム連結工程では、前記吊り上げ装置によって吊り上げられた前記連結ビーム60の前記旋回体連結部610Aを前記上部旋回体11の後端部に近づけ連結する。
台車連結工程では、前記上部旋回体11に連結された前記連結ビーム60のスライダ62の下方にカウンタウエイト37を支持可能な自走台車50を移動させ、スライダ62の台車連結部621を自走台車50に連結する。
このような方法によれば、スライダ62とビーム本体61とを有する連結ビーム60を上部旋回体11の後端部に連結することができる。このため、自走台車50の走行力によって上部旋回体11を旋回させる場合や、上部旋回体11がクレーン10の駆動力で旋回する一方自走台車50が旋回方向に沿って上部旋回体11と並走する場合において、自走台車50が上部旋回体11に対して前後方向に相対移動することが許容される。この結果、カウンタウエイト37を支持可能な自走台車50を並走させながら上部旋回体11を旋回させる際に上部旋回体11に掛かる負荷を低減することが可能となる。
また、上記の方法において、前記準備工程は、前記吊り上げ装置として、フック100(吊り具)と当該フック100からそれぞれ垂下される吊りロープ111(前側ロープ部および後側ロープ部)とを有するものを準備することを含み、前記吊り上げ工程は、スライダ62を前記所定の箇所に固定した状態で、前記連結ビーム60のうち旋回体連結部610Aよりも後方部分に前記前側ロープ部を接続し、前記連結ビーム60のうち前記前側ロープ部の接続箇所よりも後方部分に前記後側ロープ部を接続して、前記連結ビーム60を吊り上げることを含み、前記ビーム連結工程は、前記上部旋回体11に起伏可能に支持される箱マスト15が前記上部旋回体11から後方かつ斜め上方に向かって延びる姿勢とされた状態で、前記吊り上げ装置によって吊り上げられた前記連結ビーム60のうち前記前側ロープ部よりも前方に突出する部分を箱マスト15の下方において前記上部旋回体11の後端部に近づけ、前記連結ビーム60の旋回体連結部610Aを上部旋回体11の後端部に連結することを含むことが望ましい。
このような方法によれば、箱マスト15が上部旋回体11から斜め上方に向かって延びている場合でも、前記吊り上げ装置と箱マスト15との干渉を抑止しながら、連結ビーム60を上部旋回体11に連結することができる。
また、上記の方法において、前記吊り上げ工程は、スライダ62を前記所定の箇所としてビーム本体61の後端に固定した後、フック100が前記ビーム本体61の重心位置よりも後方に配置されるように前記前側ロープ部および前記後側ロープ部を前記連結ビーム60にそれぞれ接続して前記吊り上げ装置によって前記連結ビーム60を吊り上げることを含むことが望ましい。
本方法によれば、スライダ62の重量を利用して連結ビーム60の重心位置をビーム本体61単体の重心位置よりも後方に移動させることで、吊り上げ装置による連結ビーム60の吊り上げ位置を後方に移動させることができる。このため、前記吊り上げ装置と箱マスト15との干渉を更に抑止しながら、連結ビーム60を上部旋回体11に連結することができる。
また、上記の方法において、前記吊り上げ工程は、前記ビーム本体61のうち、クレーン10の吊り能力に応じて予め設定された前記旋回中心軸から台車連結部621までの距離に対応する位置にスライダ62を配置することを含むことが望ましい。
本方法によれば、吊り上げ工程において、クレーン10の吊り能力に応じて予め設定された位置にスライダ62を配置しておくことで、連結工程において連結ビーム60を上部旋回体11に連結したのち、台車連結工程において前記吊り能力に応じた位置に自走台車50を速やかに配置し、自走台車50とスライダ62とを連結することができる。
以上、本発明の実施形態に係るクレーン10の連結ビーム60およびクレーン10の連結ビーム60の取り付け方法について説明した。なお、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。本発明は、例えば以下のような変形実施形態を取ることができる。
(1)上記の実施形態では、本発明に係るクレーンの一例として、図1に示されるクレーン10を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。クレーンは、HLマスト14および箱マスト15の一方を有さないものでもよいし、ブーム13の先端部に不図示のジブが配置されたものでもよく、その他の構造からなるものでもよい。なお、図9~図15では、フック100や吊りロープ111、連結ビーム60と、箱マスト15との干渉について説明したが、これらの部材とHLマスト14との干渉についても同様に抑止することができる。
(2)上記の実施形態では、スライダ62の内周面に複数の摺動部材62Hが配置される態様にて説明したが、摺動部材62Hの数および配置はこれに限定されるものではない。また、上記の摺動部材62Hの代わりに、スライダ62の移動範囲においてビーム本体61の縦ビーム611の外周面に複数の摺動部材62Hが配置されてもよい。また、摺動部材62Hは、テフロン(登録商標)以外の材料からなるものでもよい。
(3)上記の実施形態では、固定ブラケット63がスライダ62をビーム本体61のビーム後端部に固定する態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。図4Bに示されるように、縦ビーム611の後端部にビーム本体ピン孔613が開口される一方、図7に示されるように、スライダ62の後端部にスライダピン孔624が開口され、両者に不図示の連結ピンが挿入されることで、スライダ62がビーム本体61の後端部に着脱可能に固定されるものでもよい。なお、ビーム本体61およびスライダ62の剛性を高く維持するためには、前述の固定ブラケット63が設けられることが望ましい。
(4)上記の実施形態では、ウエイトガイリンク36がHLマスト14の先端部と自走台車50のガイリンク接続部55とを連結する態様で説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。ウエイトガイリンク36の代わりに、ウエイト用ガイラインとして、ガイリンク以外のケーブル、ロープ、ワイヤなどが使用されてもよい。
(5)また、上記の実施形態では、連結ビーム60の左右一対の旋回体連結部610Aが上部旋回体11の側板11Aに連結される態様にて説明したが、旋回体連結部610Aの数は2つに限定されるものではなく、1つ、または、3つ以上でもよい。また、上部旋回体11側の接続先は、側板11Aに限定されるものではなく、上部旋回体11の底板または後板にブラケットを介して接続されるものでもよい。また、上部旋回体11と自走台車50との旋回動作における関係は、自走台車50の走行力によって上部旋回体11が旋回されることで自走台車50が上部旋回体11に並走する態様でもよいし、上部旋回体11が旋回モーターによって旋回しながら自走台車50がその周囲を並走する態様でもよい。