JP2021042278A - スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂、その樹脂組成物、押出しシート及び成形品 - Google Patents

スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂、その樹脂組成物、押出しシート及び成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明が解決する課題は、耐熱性、機械強度及び成形性に優れたスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂とそれを用いた押出しシート、及び成形品を提供することである。【解決手段】スチレン系単量体単位と、不飽和カルボン酸単量体単位と、炭素原子数5以上のエステル置換基を有する不飽和カルボン酸エステル単量体単位とを含む、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂であって、前記スチレン系単量体単位、前記不飽和カルボン酸単量体単位、及び前記不飽和カルボン酸エステル単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、前記スチレン系単量体単位の含有量が74〜97.99質量%、前記不飽和カルボン酸単量体単位の含有量が2〜18質量%、及び前記不飽和カルボン酸エステル単量体単位の含有量が0.01〜8.0質量%である、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂。【選択図】なし

Description

本発明は、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂、その樹脂組成物、並びに該スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂を用いて形成される非発泡及び発泡の押出しシート及び成形品に関する。
スチレン−アクリル酸等に代表されるスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂は、耐熱性に優れ、且つ安価なことから、弁当、惣菜等の食品容器の包装材料、住宅の断熱材用の発泡ボード、拡散剤を入れた液晶テレビの拡散板等に広く用いられている。近年コンビニエンスストアー等の業務用に使用する電子レンジの普及、及び電子レンジの使用時間の短縮のため、より高出力(短時間で、より高温になりやすい)の機器が使用されている。このために、より耐熱性が高く、且つ成形性に優れた樹脂が望まれている。
しかしながらスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂において、より耐熱性を上げるには不飽和カルボン酸含有量を増やすことが必要である。しかし、不飽和カルボン酸含有量の増加による耐熱性の付与と引き換えに、樹脂の溶融粘度増加による成形性が悪化し、不飽和カルボン酸側鎖同士の脱水縮合によるゲル化物の増加に起因した、シート外観不良及び機械強度の低下につながるというトレードオフが生じる。例えば、特許文献1では、メタクリル酸メチルを共重合させる方法が開示されており、特許文献2には炭素原子数が14〜20でかつ凝固点が−10℃以下の分岐状脂肪族第1 級アルコールを添加する方法が開示されている。
特開2011−126996 特開2010−270179
上記の特許文献1及び2に記載の方法では成形品のシート外観不良はある程度低減される。しかし、成型性の悪化及び機械強度の低下を抑制する効果については不十分であった。
そこで、本発明が解決する課題は、耐熱性、機械強度及び成形性に優れたスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂、及び樹脂組成物とそれを用いた押出しシート、及び成形品を提供することである。
本発明者は、上記問題点に鑑みて鋭意研究を進めた結果、炭素原子数5以上のエステル置換基をもつ不飽和カルボン酸エステル単量体を少量、スチレン系単量体及び不飽和カルボン酸単量体と共重合させることにより、不飽和カルボン酸導入による耐熱性の向上を維持しながら、成形性と機械強度に優れるスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂とそれを用いた押出しシート、及び成形品を得る手法を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]本発明において、スチレン系単量体単位と、不飽和カルボン酸単量体単位と、炭素原子数5以上のエステル置換基を有する不飽和カルボン酸エステル単量体単位とを含む、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂であって、
前記スチレン系単量体単位、前記不飽和カルボン酸単量体単位、及び前記不飽和カルボン酸エステル単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、前記スチレン系単量体単位の含有量が74〜97.99質量%、前記不飽和カルボン酸単量体単位の含有量が2〜18質量%、及び前記不飽和カルボン酸エステル単量体単位の含有量が0.01〜8.0質量%である、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂。
[2]本発明において、前記不飽和カルボン酸エステル単量体単位の含有量が0.05%〜5.0%である、上記[1]に記載のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂。
[3]本発明において、前記不飽和カルボン酸単量体単位の含有量が4〜16質量%である、上記[1]又は[2]に記載のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂。
[4]本発明において、メルトマスフローレートが0.5〜4.5g/10分である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂。
[5]本発明において、ビカット軟化温度が105℃以上である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂。
[6]本発明において、重量平均分子量(Mw)が10万〜35万である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂。
[7]本発明において、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂と、炭素原子数5以上13以下の1価アルコールとを有するスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物であって、
前記スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂の含有量を100質量部としたときに、前記炭素原子数5以上13以下の1価アルコールを0.001〜0.06質量部含む、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物。
[8]本発明において、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂と、炭素原子数16以上の1価アルコールとを有する組成物であって、
前記スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂の含有量を100質量部としたときに、前記炭素原子数16以上の1価アルコールを0.1〜1.0質量部含む、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物。
[9]本発明において、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂又は上記[7]若しくは[8]のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物を有する、非発泡押出シート。
[10]本発明において、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂又は上記[7]若しくは[8]のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物を有する、発泡押出シート。
[11]本発明において、上記[9]に記載の非発泡押出シート又は上記[10]に記載の発泡押出しシートを用いて形成されてなる、成形品。
本発明によれば、耐熱性、機械的強度及び成形性に優れたスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂を提供することができる。
本発明によれば、外観、機械的強度、及び成形性に優れた、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物、発泡押出しシート、非発泡の押出しシート及び成形品を提供することができる。
図1は、本実施例におけるトレー容器の腰強度の測定方法を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂]
本発明の一態様は、スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸単量体単位、及び炭素原子数5以上のエステル置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル単量体単位を含むスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂であって、前記スチレン系単量体単位、前記不飽和カルボン酸単量体単位、及び前記不飽和カルボン酸エステル単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、前記スチレン系単量体単位の含有量が74〜97.99質量%、前記不飽和カルボン酸単量体単位の含有量が2〜18質量%、及び前記炭素原子数5以上のエステル置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル単量体単位の含有量が0.01〜8.0質量%である、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂(以下、単に樹脂ということもある)を提供する。すなわち、本発明に係るスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂は、スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸単量体単位、及び炭素原子数5以上のエステル置換基を有する不飽和カルボン酸エステル単量体単位の3つの繰り返し単位を有する、共重合体である。
<<不飽和カルボン酸エステル単量体単位>>
本実施形態において、炭素原子数5以上のエステル置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル単量体単位は、樹脂溶融粘度低下による成形性の向上と、機械強度を向上させる役割を果たす。スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸単量体単位、及び炭素原子数5以上のエステル置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、炭素原子数5以上のエステル置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル単量体単位の含有量は0.01〜8.0質量%であり、好ましくは0.05〜5.0質量%、より好ましくは0.08〜2.0質量%、より更に好ましくは0.10〜0.5質量%である。この含有量が0.01質量%未満であると、樹脂の低粘度化と機械強度向上の効果が得られなくなり、8.0質量%を超えると吸水性が高くなり、成形物中の気泡の原因となり、さらに耐熱性の低下も大きくなる。また、耐熱性の低下を抑制し、かつ機械強度と流動性との向上効果を重視する場合は、0.5質量%未満に抑えることが好ましい。機械強度を重視する場合、不飽和カルボン酸エステル単量体としては、メタクリル酸エステル単量体が好ましい。なお、本発明における成形性とは流動性のことをいう。
エステル置換基の炭素原子数としては5以上であり、好ましくは6以上、より好ましくは7以上、より更に好ましくは8以上である。5を下回ると機械強度と流動性向上効果をバランスよく得ることができない。
本明細書における「炭素原子数5以上のエステル置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル単量体単位」とは、炭素原子数5以上のエステル置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル単量体由来の繰り返し単位を意味する。そして、「炭素原子数5以上のエステル置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル単量体」は、カルボン酸エステル(R1−C(=O)−O−R2)であって、R1は不飽和二重結合を有し、かつR2が炭素原子数5以上のエステル置換基であることを意味する。
本実施形態において、炭素原子数5以上のエステル置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル単量体単位は、重合基(R1−C(=O)−O−)以外の官能基の化学構造として、炭素−酸素、炭素−窒素、及び炭素−硫黄等のヘテロ結合、又は不飽和結合を含んでもよい。本発明における、炭素原子数5以上のエステル置換基を有する不飽和カルボン酸エステル単量体は、以下の一般式(1)で表わされる化合物であることが好ましい。
Figure 2021042278
(上記一般式(1)中、Raは、水素原子又は炭素原子数1〜3のアルキル基を表わし、R2は、炭素原子数5以上のエステル置換基を表わし、当該炭素原子数5以上のエステル置換基としては、炭素原子数5〜50の直鎖状又は分岐状アルキル基を表わすことが好ましい。上記エステル置換基の炭素原子数としては、好ましくは6〜40、より好ましくは7〜30、より更に好ましくは8〜20である。炭素原子数を5以上にすることで成形性(流動性)の向上効果が得られ、50以下にすることによって耐熱性の低下を抑えることができる。炭素原子数を8〜20の範囲にすることで、流動性と機械強度の向上効果をバランスよく得ることができる。なお、炭素原子数5〜50の直鎖状又は分岐状アルキル基中の各−CH2−は独立して酸素原子が2以上連続して結合されないよう−O−に置換されてもよい。)
本実施形態において、上記一般式(1)中、Raとしては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられるが、重合性の観点から水素原子又はメチル基が好ましく、より好ましくは耐熱性向上の観点からメチル基である。
本実施形態において、上記一般式(1)中、R2としては、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、n−へプチル基、2,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルへプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、1−エチルヘキシル基、n−ノニル基、2−エチルへプチル基、n−ドデシル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、ポリエチレングリコールモノエーテル基、シクロヘキセン基などが挙げられる。なかでも、エステル置換基R2の構造としては流動性向上の観点からは、自由体積の大きい分岐構造を含む、炭素原子数5以上の分岐状アルキル基、あるいはポリエチレングリコール類が好ましく、耐熱性低下抑制の観点からは直鎖アルキル基が好ましい。
例えば、炭素原子数5以上のエステル置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル単量体としては、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸2−メチルブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メチルペンチル、(メタ)アクリル酸2,2−ジメチルブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4−ピペリジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸3−スルホプロピルカリウム、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール類、(メタ)アクリル酸シクロヘキセンなどが挙げられる。
本実施形態における(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール類は以下の一般式(2)で表わされる構造が好ましい。
Figure 2021042278
(上記一般式(2)中、Rは炭素原子数12〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表わし、Xはエチレンオキサイドの平均付加数を表し、4〜12の整数である。)
<<スチレン系単量体単位>>
本実施形態において、スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸単量体単位、及び炭素原子数5以上のエステル置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、スチレン系単量体単位の含有量が74〜97.99質量%であり、好ましくは77〜97質量%、より好ましくは80〜96質量%である。この含有量が74質量%未満では、樹脂の流動性が低下し、97.99質量%を超えると後述の不飽和カルボン酸単量体単位を所望量存在させることができない。
スチレン系単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、パラメチルスチレン、オルトメチルスチレン、メタメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。特に工業的観点からスチレン及びα−メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。スチレン系単量体としては、これらを単独又は2種以上混合して使用できる。
<<不飽和カルボン酸単量体単位>>
本実施形態において、不飽和カルボン酸単量体単位は耐熱性を向上させる役割を果たす。スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸単量体単位、及び炭素原子数5以上のエステル置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、不飽和カルボン酸単量体単位の含有量は2〜18質量%であり、好ましくは3〜17質量%、より好ましくは4〜16質量%の範囲である。この含有量が2質量%未満では耐熱性向上の効果が不十分である。また、不飽和カルボン酸単量体単位の含有量が18質量%を超える場合は、樹脂中のゲル化物が増加又は吸水率上昇による成形時の気泡発生を招来するため好ましくない。
不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。特に工業的観点から不飽和カルボン酸単量体としては、これらを単独又は2種以上混合して使用してもよい。不飽和カルボン酸単量体は、耐熱性向上効果の大きいメタクリル酸が特に好ましい。
本発明に係るスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂は、上述した、スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸単量体単位、及び炭素原子数5以上のエステル置換基を有する不飽和カルボン酸エステル単量体単位の3つの繰り返し単位以外の単量体単位を有してもよい。すなわち、本実施形態において、スチレン系単量体、不飽和カルボン酸単量体、炭素原子数5以上のエステル置換基を有する、又は不飽和カルボン酸エステル単量体単位と共重合可能であれば、エステル置換基の炭素原子数が4以下であっても、発明の効果を損なわない範囲であれば、特に制限されることなく、上記に示した3つの単量体以外の単量体と共重合してよい。例えば上記に示した3つの単量体以外の単量体としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、及び(メタ)アクリロニトリル等のビニル系化合物、並びにジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、無水マレイン酸、マレイミド、及び核置換マレイミド等が挙げられる。この中でも好ましくは(メタ)アクリル酸エステル化合物である。
スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂中のスチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸単量体単位、炭素原子数5以上のエステル置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル単量体単位及びその他単量体単位の含有量は、樹脂を熱分解GC−MSで測定したときのスペクトルの積分値から求めることができる。
本実施形態において、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10万〜40万であることが好ましく、更に好ましくは12万〜32万である。重量平均分子量が10万〜35万である場合、衝撃強度と流動性とのバランスの実用性に優れる樹脂が得られる。重量平均分子量はゲルパーミエイションクロマトグラフィーによりポリスチレン標準換算で測定できる。
[スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物]
本発明の一態様は、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物ということもある)である。より詳細には、当該樹脂組成物は、スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸単量体単位、及び炭素原子数5以上のエステル置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル単量体単位を含むスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂と、所定の1価アルコールとを含むことが好ましい。本発明に係るスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂と、1価アルコールとを共存させることにより、成形時におけるゲル化物の生成を抑制する。
<<炭素原子数5〜13のアルコール類>>
本実施形態の好ましい態様としては、当該樹脂組成物は、本発明に係るスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂と、炭素原子数5〜13の1価アルコールとを含有することが好ましい。
本実施形態において、炭素原子数5以上13以下の1価アルコールは200℃付近での成形時におけるゲル化物の生成を抑制する効果を果たすため、より優れた外観の成形品が得られる。上記1価アルコールとしては、炭素原子数5〜13の1価アルコール類であることが好ましい。炭素原子数4以下のアルコール類はスチレン系樹脂と比較して極性が高く、混濁の原因になる。一方、炭素原子数14以上のアルコール類では、成形等を行う際に当該アルコールによって臭気が生じ作業性が低下する。
また、アルコールを構成する炭素鎖中に酸素又は窒素などのヘテロ原子を含んでもよく、当該炭素鎖中に2重結合、3重結合、エステル結合、アミド結合、など、単結合以外の結合を含んでもよい。当該炭素鎖の炭素原子数としては6〜12がより好ましく、8〜11が特に好ましい。上記1価アルコールは、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物に含有されていればよい。したがって、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂を重合する際に使用する重合溶液中に1価アルコールを存在(又は添加)させることにより、最終生成物である樹脂組成物中に1価アルコールを残留させてもよく、あるいはスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂の重合後に押出機又は溶媒中で混合させることで含有させてもよい。
炭素原子数5以上13以下の1価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、n−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3ペンタノール、2,2−ジメチル−1−ブタノール、2,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、4−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、6−メチル−1−ヘプタノール、2−メチルヘプタン−2−オール、1−ノナノール、3−メチルオクタン−3−オール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、1−トリデカノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−アミノエタノール、6−アミノ−ヘキサノール、2−(メチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、1,3−ジアミノ−2−プロパノール、2−(エチルチオ)エタノール、2−(プロピルチオ)エタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブテン、アリルアルコール類、などが挙げられる。
炭素原子数5以上13以下の1価アルコールの沸点としては、130℃以上240℃以下が好ましく、更に好ましくは140℃以上240℃以下、よりさらに好ましくは150℃以上230℃以下である。沸点が130℃未満であると、樹脂混濁の原因となる傾向があり、290℃超であると、成型時の臭気等の原因となり得る。
本発明に係るスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物における炭素原子数5以上13以下の1価アルコールの含有量としては、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂の含有量を100質量部としたときに、0.001〜0.06質量部が好ましく、より好ましくは0.005〜0.05質量部、より更に好ましくは0.01〜0.04質量部である。1価アルコールの含有量が0.001質量部未満だとゲル抑制効果が低下し、0.06質量%を超える高い揮発性のため成型時の臭気等の原因となり得る。
<<炭素原子数16以上の1価アルコール類>>
本実施形態の好ましい態様として、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物は、本発明に係るスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂と、炭素原子数16以上の1価アルコールとを含有することが好ましい。炭素原子数15以下のアルコール類では揮発性が高く、成形等を行う際に当該アルコールによって臭気が生じ作業性が低下する。しかし、炭素原子数を16以上にすることにより、揮発性が低くなり、成形時等の異臭が抑制されることが確認された。
本実施形態において、炭素原子数16以上の1価アルコールを含有することにより、250℃付近での成形時におけるゲル化物の生成を抑制する効果を果たし、外観に優れた成形品が得られる。上記1価アルコールとしては、水酸基を1つ含む炭素原子数16以上のアルコール類であり、炭素鎖中に酸素又は窒素などのヘテロ原子を含んでもよく、炭素鎖中に2重結合、3重結合、エステル結合、アミド結合、など、単結合以外の結合を含んでもよい。炭素原子数としては16以上が好ましく、より好ましくは17以上。より更に好ましくは18以上50以下である。上記1価アルコールは、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物に含有されていればよい。したがって、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂を重合する際に使用する重合溶液中に1価アルコールを存在(又は添加)させることにより、最終生成物である樹脂組成物中に1価アルコールを残留させてもよく、あるいはスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂の重合後に押出機又は溶媒中で混合させることで含有させてもよい。
本実施形態において、200℃付近での成形、あるいは混濁抑制の観点を重視する場合は、炭素原子数5〜13のアルコールを選択し、250℃付近での成形、あるいは臭気抑制の観点を重視する場合は、炭素原子数16以上のアルコールを選択することが好ましい。
炭素原子数16以上の1価アルコールの沸点としては260℃以上が好ましく、更に好ましくは270℃以上よりさらに好ましくは290℃以上である。アルコール類の沸点が260℃未満であると、揮発性が高くなり、成形時等に異臭が発生する傾向がある。
本発明に係るスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物における炭素原子数16以上の1価アルコールの含有量としては、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂の含有量を100質量部としたときに、0.1〜1.0質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜0.7質量部、より更に好ましくは0.1〜0.4質量部である。含有量が0.1質量部未満だと250℃付近における成形時のゲル抑制効果が低下し、1.0質量部を超えると樹脂中への残存量が多くなり、異臭又は耐熱性を大きく低下させ、メタクリル酸変性による耐熱性増加効果が乏しくなってしまう。
炭素原子数16以上の1価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、1−ヘキサデカノール、イソヘキサデカノール、1−オクタデカノール、5,7,7−トリメチル−2−(1,3,3−トリメチルブチル)−1−オクタノール、イソオクタデカノール、1−イソイソエイコサノール、8−メチル−2−(4−メチルヘキシル)−1−デカノール、2−ヘプチル−1−ウンデカノール、2−ヘプチル−4−メチル−1−デカノール、2−(1,5−ジメチルヘキシル)−(5,9−ジメチル)−1−デカノール、ポリエチレングリコールモノエーテル類等が挙げられる。
本発明に係るスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物は、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂と、炭素原子数5〜13のアルコールと、炭素原子数16以上の1価アルコールと、を含み、前記スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂の含有量を100質量部としたときに、前記炭素原子数5〜13のアルコール0.001〜0.06質量部と、前記炭素原子数16以上の1価アルコール0.1〜1.0質量部とを含有することが好ましい。
<その他の成分>
本実施形態のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物は、上記1価アルコール以外に、スチレン系樹脂において使用が一般的な各種添加剤を、公知の作用効果を達成するために添加し、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物とすることもできる。例えば安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、可塑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、鉱油等があげられる。また、スチレン−ブタジエンブロック共重合体又はMBS樹脂等の補強材についても物性を損なわない範囲で添加してもよい。配合の方法については特に規定はないが、例えば、重合時に添加して重合する方法、又は重合後溶融混練する前に、ブレンダーであらかじめ添加剤を混合し、その後、押出機又はバンバリーミキサー等にて溶融混錬する方法等が挙げられる。
本実施形態において、上述のようスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物には各種添加剤を添加させることができるが、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物中のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂の含有量は、特に限定されないが95質量%以上であることが好ましく、より好ましくは97質量%であり、さらに好ましくは99質量%以上である。
<スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物の物性>
本実施形態において、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂及び樹脂組成物のビカット軟化温度は、105℃以上であることが好ましい。当該範囲にすることで、熱湯、熱油と接触する食品包装材料にも好適に用いることもできる。当該ビカット軟化温度は、ISO306に準拠して、荷重50N、昇温速度50℃/hの条件で測定することができる。
本実施形態において、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂及び樹脂組成物の200℃でのメルトフローレートは0.5〜4.5g/10分の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.0〜3.5g/10分であり、さらに好ましくは1.5〜2.5g/10分である。メルトフローレートを0.5g/10分以上にすることにより、良好な成形性が得られ、4.5g/10分以下にすることにより、強度に優れた樹脂を得ることができる。
本実施形態において、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂、及び樹脂組成物を製造する際に生成し、残存する、未反応の単量体の含有量は、スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸単量体単位、及び炭素原子数5以上のエステル置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル単量体単位の合計含有量を100質量部としたときに、好ましくは0.1質量部以下、より好ましくは0.08質量部以下であり、さらに好ましくは0.06質量部以下である。各未反応の単量体の合計量を0.1質量部以下とすることにより、本実施形態のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂及び樹脂組成物を用いたシート押出時のダイス出口周りの臭気が改善される。また樹脂の色調も改良される。スチレン系樹脂を構成する各単量体の残存量は、ガスクロマトグラフィーにより測定できる。
本発明に係るスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂、及び樹脂組成物において、スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸単量体単位、及び炭素原子数5以上のエステル置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル単量体単位の合計含有量を100質量部としたときに、スチレンの二量体及び三量体の残存量の合計は0.6質量部以下であり、好ましくは0.5質量部以下、更に好ましくは0.4質量部以下である。スチレンの二量体及び三量体の残存量の合計が0.6質量部以下であれば、例えば射出成形において、金型へのスチレンの二量体及び三量体の付着が大幅に低減され、これら二量体及び三量体の成形品への転写が大幅に低減され、外観不良が大幅に改善される。またシート等の押出成形においては、ダイスに析出するスチレンの二量体及び三量体の量が大幅に低減され、シートへの転写が大幅に低減され、外観不良が大幅に改善される。また金型及びダイス出口の清掃の必要性を低減できるため生産性も向上する。スチレンの二量体と三量体としては1,3−ジフェニルプロパン、2,4−ジフェニル−1ブテン、1,2−ジフェニルシクロブタン、1−フェニルテトラリン、2,4,6−トリフェニル−1−ヘキセン、1−フェニル−4−(1’−フェニルエチル)テトラリン等が挙げられる。スチレンの二量体及び三量体の残存量はガスクロマトグラフィーにより測定できる。
<スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物の製造方法>
本実施形態のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂の製造法について以下説明する。
本発明のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂の製造法は、スチレン系単量体と、不飽和カルボン酸単量体と、炭素原子数5以上のエステル置換基を有する不飽和カルボン酸エステル単量体と、1価アルコールと、第1溶媒と、を混合して混合溶液を調製する工程と、前記混合溶液を重合する重合工程と、反応生成物を回収する工程とを含むことが好ましい。
スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂の重合方法としては、特に制限はないが、例えばラジカル重合法、その中でも、塊状重合法又は溶液重合法を好ましく採用できる。
具体的には、重合方法は、主に、重合原料(単量体成分)を重合させる重合工程と、重合生成物から未反応の単量体、重合溶媒等の揮発分を除去する脱揮工程と、を備える。
以下、本実施形態に係る重合方法について説明する。
本実施形態のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂の構成単位である、スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸単量体単位、及び炭素原子数5以上のエステル置換基を有する不飽和カルボン酸エステル単量体単位の原料は、上述した通りであり、ここでは省略する。
本実施形態において、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂を得るために重合原料を重合させる際には、重合原料組成物中に、典型的には重合開始剤を含有させる。重合開始剤としては、有機過酸化物、例えば、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート等のペルオキシケタール類、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、t−ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類等を挙げることができる。分解速度と重合速度との観点から、なかでも、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンが好ましい。
スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂の重合時には必要に応じて連鎖移動剤を使用することもできる。連鎖移動剤の例としては、例えば、αメチルスチレンリニアダイマー、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等を挙げることができる。
重合方法としては、重合溶媒を用いた溶液重合を採用できる。重合溶媒としては、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等の芳香族溶媒が好ましく、必要に応じてアルコール類又はケトン類など、極性溶媒を組み合わせてスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂の溶解性を調整した溶媒系を用いてもよい。
上記アルコール類としては、1価アルコールが好ましい。当該アルコール類としては、上述した炭素原子数5以上13以下の1価アルコール及び炭素原子数16以上の1価アルコールの例が挙げられる。
本実施形態において、重合溶媒は、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂を構成する全単量体100質量部に対して、3〜35質量部の範囲で使用するのが好ましく、より好ましくは5〜30質量部の範囲である。全単量体100質量部に対して重合溶媒35質量部を超えると、重合速度が低下し、且つ得られる樹脂分子量も低下するので、樹脂の機械的強度が低下する傾向がある。また、重合溶媒が3質量部未満では重合時に除熱の制御が難しくなる恐れがある。全単量体100質量部に対して3〜35質量部の割合で添加しておくことが、品質が均一化し易く、重合温度制御の点でも好ましい。
また、1価アルコールを重合溶媒として使用する場合は、全重合溶媒100質量%に対して、1〜10質量%の割合で添加することが好ましい。
本実施形態において、スチレン系単量体の仕込み量は、全単量体100質量部に対して50〜90質量部であることが好ましい。不飽和カルボン酸単量体の仕込み量は、全単量体100質量部に対して1〜13質量部であることが好ましい。炭素原子数5以上のエステル置換基を有する不飽和カルボン酸エステル単量体の仕込み量は、全単量体100質量部に対して0.1〜5.0質量部であることが好ましい。その他の単量体の仕込み量は、全単量体100質量部に対して0〜8質量部であることが好ましい。
本実施形態において、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂を得るための重合工程で用いる装置は、特に制限はなく、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂の重合方法に従って粘度、除熱を加味した上で適宜選択すればよい。例えば、塊状重合による場合には、塔型反応器又は完全混合型反応器を1基、又は複数基連結を用いることができる。
また、本実施形態において、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂を重合する重合工程の後の脱揮工程を行ってもよい。そして、当該脱揮工程についても特に制限はない。重合工程を塊状重合で行う場合、重合工程を、最終的に未反応の単量体が、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下になるまで進め、ついで、脱揮工程において、未反応の単量体等の揮発分を除去するために、既知の方法にて脱揮処理する。例えば、フラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機等の通常の脱揮装置を用いることができるが、滞留部の少ない脱揮装置が好ましい。なお、脱揮処理の温度は、通常、150〜280℃程度であり、好ましくは160〜260℃であり、更に好ましくは160〜240℃である。脱揮温度を150℃以上とすることで未反応のスチレン系単量体を効率的に除去することができる。また、脱揮温度を280℃以下とすることで、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂の熱分解による低分子量化を抑制することができる。
脱揮処理の圧力は、通常0.13〜4.0kPa程度であり、好ましくは0.13〜3.0kPaであり、より好ましくは0.13〜2.0kPaである。また、脱揮工程での滞留時間は、通常2.0時間未満であり、好ましくは1.5時間未満、より好ましくは1.2時間未満である脱揮工程での滞留時間を2.0時間未満にすることで、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂分解が進行し、分子量低下又は組成物の単量体含有量の増加を防ぐことができる。脱揮方法としては、例えば加熱下で減圧して揮発分を除去する方法、及び揮発分除去の目的に設計された押出機等を通して除去する方法が望ましい。
[押出シート]
本発明の別の態様は、上述した本発明のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂、及び樹脂組成物を用いて形成されてなる押出シートを提供する。押出シートは非発泡及び発泡のいずれでもよい。押出シートの製造方法としては、通常知られている方法を用いることができる。非発泡押出シートの製造方法としては、Tダイを取り付けた短軸又は二軸押出成形機で、一軸延伸機又は二軸延伸機でシートを引き取る装置を用いる方法等を用いることができ、発泡押出シートの製造方法としては、Tダイ又はサーキュラーダイを備え付けた押出発泡成形機を用いる方法等を用いることができる。
発泡押出シートを形成する場合、押出発泡時の発泡剤及び発泡核剤としては通常用いられる物質を使用できる。発泡剤としてはブタン、ペンタン、フロン、二酸化炭素、水等を使用することができ、ブタンが好適である。また発泡核剤としてはタルク等を使用できる。
発泡押出シートは、厚み0.5mm〜5.0mmであることが好ましく、見かけ密度50g/L〜300g/Lであることが好ましく、また坪量80g/m2〜300g/m2であることが好ましい。本発明の発泡押出シートは、例えばフィルムを更にラミネートすること等によって多層化してもよい。使用するフィルムの種類は、一般のポリスチレンに使用されるもので差し支えない。
一方、非発泡押出シートにおいては、例えば、厚みが0.1〜1.0mm程度であることが剛性及び熱成形サイクルの観点から好ましい。またシートは通常の低倍率のロール延伸のみで形成してもよいが、特にロールで1.3倍から7倍程度延伸した後、テンターで1.3から7倍程度延伸したシートが強度の面で好ましい。またポリスチレン樹脂等のスチレン系樹脂と多層化して用いてもよい。更に該スチレン系樹脂以外の樹脂と多層化して用いてもよい。スチレン系樹脂以外の樹脂としては、PET樹脂、ナイロン樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
本発明の別の態様は、上述した本発明の非発泡押出シート又は発泡押出シートを用いて形成されてなる成形品を提供する。発泡押出シート又はこれを含む多層体は、例えば真空成形により成形してトレー等の容器を作製できる。また非発泡押出シートは、例えば真空成形により成形して弁当の蓋材又は惣菜等を入れる容器を作製できる。
次に本発明を実施例及び比較例により詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例における樹脂及び押出シート等の分析、評価方法は、下記の通りである。
[スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂の特性評価]
(1)スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂である共重合体中の単量体単位の測定
スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸単量体単位、及び炭素原子数5以上のエステル置換基を有する不飽和カルボン酸エステル単量体単位、並びに任意成分であるその他単量体単位を含む共重合体中の各単量体単位の含有量を、以下の条件で測定した。
熱分解GC−MSで測定したスペクトルの積分値から検量線法により定量した。
測定試料量:0.25mg
測定機器:AgilentCG−7890A、MSD−5975C、EGA/PA−3030D
カラム:HP−5MS
キャリア:ヘリウム
イオン化法:EI
オーブン温度:40℃、5分ホールド→20℃/min→320℃、16分ホールド
スプリット比:100/1
熱分解温度:600℃
(2)スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂の重量平均分子量の測定
スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂の重量平均分子量(Mw)を、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定した。
測定機器:東ソー製HLC―8220
分別カラム:東ソー製TSK gel Super HZM−H(内径4.6mm)を直列に2本接続
ガードカラム:東ソー製TSK guard column Super HZ−H
測定溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
試料濃度:測定試料5mgを10mLの溶媒に溶解し、0.45μmのフィルターでろ過を行った。
注入量:10μL
測定温度:40℃
流速:0.35mL/分
検出器:紫外吸光検出器(東ソー製UV−8020、波長254nm)
検量線の作成には東ソー製のTSK標準ポリスチレン11種類(F−850、F−450、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000)を用いた。1次直線の近似式を用いて検量線を作成した。
(3)メルトマスフローレート(MFR)の測定
スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂及び樹脂組成物のメルトマスフローレート(g/10分)を、ISO1133に準拠して、200℃、49Nの荷重条件にて測定した。
(4)ビカット軟化温度の測定
スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂及び樹脂組成物のビカット軟化温度をISO306に準拠して測定した。荷重は50N、昇温速度は50℃/hとした。
(5)スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂及び/又はスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物中における未反応の単量体、及びアルコール類の含有量の測定
スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂を100質量%としたときの、スチレン系単量体、不飽和カルボン酸単量体、及び重合基を除いた炭素原子数5以上のエステル置換基を有する不飽和カルボン酸エステル単量体、その他単量体、及びアルコール類(1価アルコール)の含有量を、ガスクロマトグラフィーを用いて以下の条件で測定した。
試料調製:樹脂2.0gをメチルエチルケトン20mLに溶解後、更に標準物質(トリフェニルメタン)入りのメタノール5mLを加えポリマー成分を再沈させ、上澄み液を採取し、測定液とした。
測定機器:Agilent社製 6850 シリーズ GCシステム
検出器:FID
カラム:HP−1(100%ジメチルポリシロキサン)30m、
膜厚0.25μm、0.32mmφ
注入量:1μL(スプリットレス)
カラム温度:40℃で2分保持→20℃/分で320℃まで昇温→
320℃で15分保持
注入口温度:250℃
検出器温度:280℃
キャリアガス:ヘリウム
(6)ダイス出口の臭気判定
スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂及び樹脂組成物を用いて、30mmφ短軸シート押出機でのシート押出時に、ダイス出口の臭気を確認し、以下の評価基準でダイス出口の臭気を判定した。
〇:臭いを殆ど感じない
×:臭いを感じた
(7)吸水率の測定
スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂及び樹脂組成物を5cm×12cm×0.2cmの板状に射出成型し、元の質量を測定後、室温23℃、湿度50%に保たれた室内において、純粋中に7日間浸漬後の質量を測定し、以下の式(1)により算出した。
Figure 2021042278
[非発泡押出特性及び非発泡押出物特性]
(8)樹脂中のゲル不溶分の測定
スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂及び樹脂組成物2gをメチルエチルケトン20mlに溶解後、43000Gの遠心分離機で、19000rpm、60分間遠心分離を行い、上澄み液を捨てた後、残存液に更にメチルエチルケトン20mlを加え、同様な操作を繰り返して行った(19000rpmで60分間遠心分離)。上澄み液を捨てた後の残存液を150℃、30分間乾燥後、更に215℃、3kPaの減圧下で30分間乾燥後、下記
式(2):
Figure 2021042278
(9)非発泡押出シートの外観判定
スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂及び樹脂組成物を用いて、30mmφ短軸シート押出機で連続3時間シートを押出した後、厚さ0.3mmのシートから10cm×20cmの大きさのシートを5枚切り出し、シート5枚の表面の(長径+短径)/2の平均径が0.5mm以上の異物であるゲル物、気泡の個数を数え、以下の方法で外観判定とした。
○:ゲル物、気泡の個数が2点以下
△:ゲル物、気泡の個数が3〜9点
×:ゲル物、気泡の個数が10点以上
(10)落錘衝撃強度(kg・cm)の測定
スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂及び樹脂組成物を用いて、25mmφ単軸シート押出機(創研社製)にて、0.3±0.03mmのシートを作製し、東洋精機社製のデュポン衝撃試験機(No451)を用いて、落錘衝撃強度を測定した。落下重錘の質量0.025kg、撃心突端の半径6.3mm、撃心受台の半径9.4mmとし、落錘衝撃強度は50%破壊の値を、(落下重錘の質量0.025kg)×(高さcm)で求めた。落錘衝撃強度が0.6kg・cm以上を示すスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂及び樹脂組成物については、容器形後の打ち抜き時に割れが発生しにくくなった。
[発泡押出物特性]
(11)トレー容器の腰強度測定
スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂及び樹脂組成物を用いて成形したトレー容器の腰強度を、図1に示す方法により測定した。より詳細には、7.3倍に発泡した発泡押出シートを真空成形したトレー容器1のTD方向に対して、クロスヘッド2を圧縮速度5mm/minで圧縮し、トレー容器1の腰強度(N)を測定した。トレー容器1の大きさは縦10cm、横15cm、深さ2cmである。トレー容器1の横側面より圧縮して極大荷重を腰強度とした。腰強度が20N以上を示すスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂及び樹脂組成物については、運搬時の容器の割れが少なくなる傾向となった。
(12)発泡押出シートの外観判定
発泡押出シートの表面肌荒れを目視で判定した。
○:シート表面の肌荒れが判る
×:シート表面の肌荒れが判らない
以下、実施例、比較例について説明する。
[実施例1]
スチレン76.9質量部、メタクリル酸5.8質量部、5,7,7−トリメチル−2−エチルベンゼン14.2質量部、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(PHC、日油(株)製、商品名:パーヘキサ(登録商標)C)0.027質量部からなる重合原料組成液を、1.1リットル/時の速度で、容量が4リットルの完全混合型反応器からなる重合装置に、更には未反応の単量体、重合溶媒等の揮発分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置に連続的に順次供給し、共重合体であるスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂を合成した。重合工程における重合反応条件は、完全混合反応器は重合温度132℃とした。ポリマー収率は最終重合液を230℃、3kPaの減圧下で30分間乾燥後、(乾燥後の試料質量/乾燥前の試料質量×100%)により測定したところ、62.4質量%であった。最終重合液をペレット押出しして、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂のペレット物1を得た。
得られたペレット物1を用いて、非発泡押出物(非発泡押出シート)と発泡押出物(発泡押出シート、及び成形品としてトレー容器)とをそれぞれ作製し、各物性等を評価した。非発泡押出シートについては、30mmの短軸押出機を用いて、樹脂溶融ゾーンの温度を220〜250℃とし、ベントから真空ポンプで3kPaに減圧しながら厚み約0.3mmのシートを製造した。発泡押出シート及びトレー容器については、直径150mmのサーキュラーダイを備えた押出発泡機を用いて、得られた樹脂100質量部に対して、発泡核剤としてタルク(平均粒径1.3μm)を0.12質量部、発泡剤として液化ブタンを3.5質量部添加して発泡押出シートを製造した(発泡倍率:7.5倍)。樹脂溶融ゾーンの温度は210〜240℃、ロータリークーラー温度は145〜185℃、ダイス温度は165℃に調整した。得られた発泡押出シートを用いて真空成形で縦10cm、横15cm、深さ2cmの発泡トレー容器を作製した。非発泡押出物及び発泡押出物の性状及び物性の評価結果を表1−2に示す。
[実施例2]
スチレン76.9質量部、メタクリル酸5.8質量部、メタクリル酸2−エチルヘキシル、2−エチルヘキサノール2.0質量部、5,7,7−トリメチル−2−(1,3,3−トリメチルブチル)−1−オクタノール(日産化学社製ファインオキソコール180)1.0質量部、エチルベンゼン14.2質量部、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(PHC、日油(株)製、商品名:パーヘキサ(登録商標)C)0.027質量部からなる重合原料組成液を、1.1リットル/時の速度で、容量が4リットルの完全混合型反応器からなる重合装置に、更には未反応の単量体、重合溶媒等の揮発分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置に連続的に順次供給し、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂と1価アルコールを含有するスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物を合成した。重合工程における重合反応条件は、完全混合反応器は重合温度132℃とした。ポリマー収率は最終重合液を230℃、3kPaの減圧下で30分間乾燥後、(乾燥後の試料質量/乾燥前の試料質量×100%)により測定したところ、62.1質量%であった。最終重合液をペレット押出しして、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物のペレット物2を得た。
得られたペレット物2を用いて、非発泡押出物(非発泡押出シート)と発泡押出物(発泡押出シート、及び成形品としてトレー容器)とをそれぞれ作製し、各物性等を評価した。非発泡押出シートについては、30mmの短軸押出機を用いて、樹脂溶融ゾーンの温度を220〜250℃とし、ベントから真空ポンプで3kPaに減圧しながら厚み約0.3mmのシートを製造した。発泡押出シート及びトレー容器については、直径150mmのサーキュラーダイを備えた押出発泡機を用いて、得られた樹脂100質量部に対して、発泡核剤としてタルク(平均粒径1.3μm)を0.12質量部、発泡剤として液化ブタンを3.5質量部添加して発泡押出シートを製造した(発泡倍率:7.5倍)。樹脂溶融ゾーンの温度は210〜240℃、ロータリークーラー温度は145〜185℃、ダイス温度は165℃に調整した。得られた発泡押出シートを用いて真空成形で縦10cm、横15cm、深さ2cmの発泡トレー容器を作製した。非発泡押出物及び発泡押出物の性状及び物性の評価結果を表1−2に示す。
[実施例3〜24]
実施例3〜24は、表1−1に示すように条件を変更したこと以外は実施例2と同様の方法でスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物のペレット物3〜24を作製し、実施例2と同様の方法で非発泡押出物及び発泡押出物の性状及び物性の評価を行った。その評価結果を表1−2に示す。
[実施例25]
実施例25は、表1−1に示す重合条件にてスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂を得た後、2軸押出機にてスチレン−不飽和カルボン酸樹脂を100質量部としたときに、2−エチル−1−ヘキサノール0.025質量部、日産化学社製ファインオキソコール0.200質量部を押出し混練し、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物のペレット物25を作製し、実施例2と同様の方法で非発泡押出物及び発泡押出物の性状及び物性の評価を行った。その評価結果を表1−2に示す。
[比較例1〜4]
表2−1に示すように条件を変更した以外は実施例2と同様の方法でスチレン系樹脂組成物1〜4を作製し、実施例2と同様の方法で非発泡押出物及び発泡押出物の性状及び物性の評価を行った。その評価結果を表2−2に示す。比較例1〜4では樹脂を構成する単量体単位に重合基を除いた炭素原子数が5以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位が含まれないため、落錘衝撃強度の向上と粘度の低下効果が得られなかった。
[比較例5]
表2−1に示すように条件を変更した以外は実施例2と同様の条件でスチレン系樹脂組成物を作製し、実施例2と同様の方法で非発泡押出物及び発泡押出物の性状及び物性の評価を行った。その評価結果を表2−2に示す。比較例5で得られたスチレン系樹脂組成物5は実施例2〜24で得られたスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物2〜24と比較し、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位としてアクリル酸n−ブチル(C4)を使用したところ、落錘衝撃強度の向上と粘度の低下効果が得られなかった。
[比較例6、7]
表2−1に示すように条件を変更した以外は実施例2と同様の条件でスチレン系樹脂組成物6又は7を作製し、実施例2と同様の方法で非発泡押出物及び発泡押出物の性状及び物性の評価を行った。その評価結果を表2−2に示す。スチレン系樹脂中の不飽和カルボン酸単量体単位の含有量が1%の樹脂では、樹脂中に重合基を除いた炭素原子数が5以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を0.2%含有させても落錘衝撃強度の向上と粘度の低下効果が得られなかった。
[比較例8、9]
表2−1に示すように条件を変更した以外は実施例2と同様の条件でスチレン系樹脂組成物8又は9を作製し、実施例2と同様の方法で非発泡押出物及び発泡押出物の性状及び物性の評価を行った。その評価結果を表2−2に示す。スチレン系樹脂中の不飽和カルボン酸単量体単位の含有量が20%の樹脂では、樹脂中に重合基を除いた炭素原子数が5以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を0.2%含有させても落錘衝撃強度の向上と粘度の低下効果が得られなかった。
[比較例10]
表2−1に示すように条件を変更した以外は実施例2と同様の条件でスチレン系樹脂組成物10を作製し、実施例2と同様の方法で非発泡押出物及び発泡押出物の性状及び物性の評価を行った。その評価結果を表2−2に示す。炭素原子数が5以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位が10質量%だと、吸水率が高くなるため、成形後の押出シートの外観が悪くなってしまった。
[比較例11〜12]
実施例1で得たスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂に対して、比較例11では1−テトラデカノールを、比較例12では1−ペンタデカノールを実施例25と同様の方法でアルコール種の含有量がそれぞれ0.121質量部、0.134質量部となるように押出し混練し、スチレン系樹脂組成物11、12を得た。しかし、押出物成形時に臭気が発生し、ダイス出口の臭気判定結果が“×”となったため、評価を中断した。なお、実施例1〜25、比較例1〜10においてダイス出口の臭気判定結果はすべて“○”であった。
Figure 2021042278
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本発明にて得られるスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂は耐熱性、機械強度、成形性(流動性)に優れる。そして、本発明にて得られるスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物は耐熱性、機械強度、流動性、成形後の外観に優れる。そのため本発明のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物は、押出成形でも非発泡シート又は発泡シート、それらを用いた食品包装容器、又は射出成形による成形品(電気製品部品、玩具、日用品、各種工業部品)などに幅広く使用可能であり、産業界に果たす役割は大きい。
1 トレー容器
2 クロスヘッド

Claims (11)

  1. スチレン系単量体単位と、不飽和カルボン酸単量体単位と、炭素原子数5以上のエステル置換基を有する不飽和カルボン酸エステル単量体単位とを含む、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂であって、
    前記スチレン系単量体単位、前記不飽和カルボン酸単量体単位、及び前記不飽和カルボン酸エステル単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、前記スチレン系単量体単位の含有量が74〜97.99質量%、前記不飽和カルボン酸単量体単位の含有量が2〜18質量%、及び前記不飽和カルボン酸エステル単量体単位の含有量が0.01〜8.0質量%である、スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂。
  2. 前記不飽和カルボン酸エステル単量体単位の含有量が0.05%〜5.0%である、請求項1に記載のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂。
  3. 前記不飽和カルボン酸単量体単位の含有量が4〜16質量%である、請求項1又は2に記載のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂。
  4. メルトマスフローレートが0.5〜4.5g/10分である、請求項1〜3のいずれかに記載のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂。
  5. ビカット軟化温度が105℃以上である、請求項1〜4のいずれかに記載のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂。
  6. 重量平均分子量(Mw)が10万〜35万である、請求項1〜5のいずれかに記載のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂と、炭素原子数5以上13以下の1価アルコールとを有するスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物であって、
    前記スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂の含有量を100質量部としたときに、前記炭素原子数5以上13以下の1価アルコールを0.001〜0.06質量部含む、請求項1〜請求項6のいずれかに記載のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂と、炭素原子数16以上の1価アルコールとを有する組成物であって、
    前記スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂の含有量を100質量部としたときに、前記炭素原子数16以上の1価アルコールを0.1〜1.0質量部含む、請求項1〜請求項6のいずれかに記載のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂又は請求項7若しくは8のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物を有する、非発泡押出シート。
  10. 請求項1〜6のいずれかに記載のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂又は請求項7若しくは8のスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂組成物を有する、発泡押出シート。
  11. 請求項9に記載の非発泡押出シート又は請求項10に記載の発泡押出しシートを用いて形成されてなる、成形品。
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