JP6979812B2 - スチレン系樹脂組成物、発泡シート、成形品、製造方法 - Google Patents
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Description
そこで、本発明は、このような従来の実情に鑑みて考案されたものであり、本発明の目的は、成形加工性と強度のバランスに優れ、かつゲル状物質の少ないスチレン系樹脂組成物を提供することにある。
〔1〕分岐度が0.70〜0.94であり、
ゲル化度が1.00〜1.30であり、
多角度光散乱検出器(MALS)を用いて測定した絶対分子量100万〜500万の成分の含有量が10.0〜18.0%であり、
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が3.0〜5.5であり、
GPCを用いて測定したピークトップ分子量(Mtop)が18万超35万以下であることを特徴とする、スチレン系樹脂組成物。
〔2〕最大立ち上がり比が1.2〜5.5である、〔1〕に記載のスチレン系樹脂組成物。
〔3〕溶融張力が65〜100gである、〔1〕又は〔2〕に記載のスチレン系樹脂組成物。
〔4〕スチレンの二量体及び三量体の合計残存量が前記スチレン系樹脂組成物100質量%に対して0.01〜0.30質量%である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
〔5〕〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物を含み、厚みが0.5〜5.0mmであることを特徴とする、発泡シート。
〔6〕〔5〕に記載の発泡シートからなることを特徴とする、成形品。
〔7〕連続溶液重合又は連続塊状重合を用いることを特徴とする、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物の製造方法。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、分岐度が0.70〜0.94であり、ゲル化度が1.00〜1.30であり、多角度光散乱検出器(MALS)を用いて測定した絶対分子量100万〜500万の成分の含有量が10.0〜18.0%であり、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が3.0〜5.5であり、GPCを用いて測定したピークトップ分子量(Mtop)が18万超35万以下である。
理論に限定されないが、本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、分岐度、MALSを用いて測定した絶対分子量100万〜500万の成分の含有量、並びにGPCを用いて測定したMw/Mn及びピークトップ分子量(Mtop)を適切な範囲に制御することによって、押出時の成形性が向上し、成形加工性と強度のバランスが優れたものとなり、かつ、ゲル化度を適切な範囲に制御することによって、ゲル化が抑制されることを可能にすると考えられる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物の分岐度、ゲル化度、MALSを用いて測定した絶対分子量100万〜500万の成分の含有量、並びにGPCを用いて測定したMw/Mn及びピークトップ分子量(Mtop)は、例えば、モノビニル化合物をラジカル重合してスチレン系樹脂組成物を得る場合、任意選択的に含まれていてもよい共役ジビニル化合物の含有量、重合反応温度、重合反応器内での滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、重合時に使用する溶媒の種類及び量等によって制御することができる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物の数平均分子量(Mn)は、5.0万〜20万であることが好ましく、より好ましくは6.0万〜18万、さらに好ましくは7.0万〜15万である。
また、本実施形態のスチレン系樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)は、25万〜70万であることが好ましく、より好ましくは28万〜65万、さらに好ましくは30万〜60万である。
また、本実施形態のスチレン系樹脂組成物のZ平均分子量(Mz)は、60万〜200万が好ましく、より好ましくは70万〜190万、さらにより好ましくは80万〜185万である。
Mw/Mnを3.0〜5.5とするためには、例えば、重合時の反応温度を反応溶液が通過する順に高くする方法、連鎖移動剤を使用する方法、重合開始剤の種類を多官能(2、3、4官能)とする方法、モノビニル化合物と共役ジビニル化合物及び/又は多分岐ビニル化合物とをラジカル共重合させて樹脂を製造する場合に、共役ジビニル化合物あるいは多分岐ビニル化合物あるいはその両方を、モノビニル化合物の総量1モルに対して好ましくは2.0×10−6〜4.0×10−4モル添加する方法がある。また、例えば、2つの反応器において、それぞれ低分子量成分を重合する条件と高分子量成分を重合する条件で重合を行い、2つの重合溶液を合流させる方法、あるいは合流後にさらに重合を行う方法がある。低分子量成分を重合する条件としては、例えば、反応器内の滞留時間を短くする方法、溶媒の量を増加させ、重合温度を高くする方法、連鎖移動剤を使用する方法等がある。高分子量成分を重合する条件としては、例えば、溶媒の量を少なくし、重合温度を低くする方法や、多官能の重合開始剤を使用する方法、共役ジビニル化合物あるいは多分岐ビニル化合物あるいはその両方を、モノビニル化合物の総量1モルに対して好ましくは2.0×10−6〜4.0×10−4モル添加する方法がある。
Mtopを18万超35万以下の範囲にするためには、例えば、連鎖移動剤を使用する方法、あるいは、複数の反応器を直列につなぎ製造する場合では、重合時の反応温度を反応溶液が通過する順に高くする方法や、後段の反応器に連鎖移動剤と重合開始剤を添加する方法がある。また、例えば、2つの反応器において、それぞれ低分子量成分を重合する条件と高分子量成分を重合する条件で重合を行い、2つの重合溶液を合流させる方法、あるいは合流後にさらに重合を行う方法がある。低分子量成分を重合する条件としては、例えば、反応器内の滞留時間を短くする方法、溶媒の量を増加させ、重合温度を高くする方法、連鎖移動剤を使用する方法等がある。高分子量成分を重合する条件としては、例えば、溶媒の量を少なくし、重合温度を低くする方法や、多官能の重合開始剤を使用する方法、共役ジビニル化合物あるいは多分岐ビニル化合物あるいはその両方を、モノビニル化合物の総量1モルに対して好ましくは2.0×10−6〜4.0×10−4モル添加する方法がある。
なお本開示で、スチレン系樹脂組成物の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、ピークトップ分子量(Mtop)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を使用して測定される値である。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、絶対分子量100万〜500万の成分の含有量は10.0〜18.0%であり、好ましくは10.0〜16.0%、より好ましくは11.0〜15.0%である。絶対分子量100万〜500万の成分の含有量を10.0〜18.0%の範囲にすることにより、成形加工性に優れ、ゲル状物質の少ないスチレン系樹脂組成物が得られる。
絶対分子量100万〜500万の成分の含有量を10.0〜18.0%とするためには、例えば、多官能の重合開始剤を使用する方法、共役ジビニル化合物を添加する方法、あるいは共役ジビニル化合物と多分岐ビニル化合物とを同時に添加する方法がある。例えば、モノビニル化合物に、任意選択的に共役ジビニル化合物及び/又は多分岐ビニル化合物を添加してラジカル共重合することによりスチレン系樹脂組成物を得る場合、共役ジビニル化合物及び/又は多分岐ビニル化合物の添加量は、モノビニル化合物の総量1モルに対して、ビニル基1つにつき好ましくは4.0×10−6〜8.0×10−4モルである(すなわち、ビニル基を2つ有する共役ジビニル化合物の場合は、好ましくは2.0×10−6〜4.0×10−4である)。共役ジビニル化合物と多分岐ビニル化合物の数平均分子量(Mn)は850〜100000であることが好ましい。また、スチレン系樹脂の製造において、溶媒の量を0〜20%と少なくし、反応温度を80〜140℃にする方法がある。
なお本開示で、スチレン系樹脂組成物の絶対分子量100万〜500万の成分の含有量は、多角度光散乱検出器(MALS)を使用して算出される値である。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物の分岐度は0.70〜0.94であり、好ましくは0.72〜0.94、より好ましくは0.75〜0.94である。分岐度が0.70よりも小さい場合、分岐が多くなり過ぎ、分岐鎖一本あたりの分子量が小さくなるため、絡み点の数が少なくなり、高ひずみ時に絡み合いがほどけ、十分な成形加工性が得られないことがある。分岐度が0.94よりも大きい場合、分岐が少なく、十分なポリマー鎖同士の絡み合い効果が得られないことがある。
分岐度を0.70〜0.94とするためには、多官能の重合開始剤を使用する方法、共役ジビニル化合物を添加する方法、あるいは共役ジビニル化合物と多分岐ビニル化合物とを同時に添加する方法がある。例えば、モノビニル化合物に、任意選択的に共役ジビニル化合物及び/又は多分岐ビニル化合物を添加してラジカル共重合することによりスチレン系樹脂組成物を得る場合、共役ジビニル化合物及び/又は多分岐ビニル化合物の添加量は、モノビニル化合物の総量1モルに対して、ビニル基1つにつき好ましくは4.0×10−6〜8.0×10−4モルである(すなわち、ビニル基を2つ有する共役ジビニル化合物の場合は、好ましくは2.0×10−6〜4.0×10−4である)。共役ジビニル化合物と多分岐ビニル化合物の数平均分子量(Mn)は850〜100000であることが好ましい。
なお本開示で、分岐度は、後述の[実施例]の項で説明する手順で算出される値である。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物のゲル化度は1.00〜1.30であり、好ましくは1.00〜1.20、より好ましくは1.00〜1.15である。ゲル化度を1.00〜1.30の範囲にすることにより、分子量が増加するにつれて分岐が増加することを抑制できるため、スチレン系樹脂組成物中のゲル状物質を低下させることが出来る。また、反応器等の生産設備に長期滞留した際に、生成するゲル状物質の量を低下することが出来るため、生産性が向上させることが可能である。
ゲル化度を1.00〜1.30とするためには、多官能の重合開始剤を使用する方法、共役ジビニル化合物を添加する方法、あるいは共役ジビニル化合物と多分岐ビニル化合物とを同時に添加する方法がある。例えば、モノビニル化合物に、任意選択的に共役ジビニル化合物及び/又は多分岐ビニル化合物を添加してラジカル共重合することによりスチレン系樹脂組成物を得る場合、共役ジビニル化合物及び/又は多分岐ビニル化合物の添加量は、モノビニル化合物の総量1モルに対して、ビニル基1つにつき好ましくは4.0×10−6〜8.0×10−4モルである(すなわち、ビニル基を2つ有する共役ジビニル化合物の場合は、好ましくは2.0×10−6〜4.0×10−4である)。共役ジビニル化合物と多分岐ビニル化合物の数平均分子量(Mn)は850〜100000であることが好ましい。
なお本開示で、ゲル化度は、後述の[実施例]の項で説明する手順で算出される値である。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物のメルトマスフローレート(MFR)は0.5〜5.0g/10分が好ましい。より好ましくは0.5〜4.0g/10分、さらに好ましくは0.5〜3.0g/10分、とりわけ好ましくは0.5〜2.5g/10分である。メルトマスフローレートを0.5〜5.0g/10分の範囲にすることにより、成形加工性と流動性に優れたスチレン系樹脂組成物が得られる。
MFRを0.5〜5.0g/10分とするためには、例えば、スチレン系樹脂組成物のMw/Mnを3.0〜5.5とし、かつMwを25万〜70万とする方法や、流動パラフィン等の可塑剤をスチレン系樹脂組成物100質量%に対して0.01〜10.0質量%添加する方法がある。
なお本開示で、メルトマスフローレートは、ISO1133に準拠して、200℃、荷重49Nにて測定される値である。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物の最大立ち上がり比は、好ましくは1.2〜5.5、より好ましくは1.3〜5.0、さらに好ましくは1.4〜4.8である。本願明細書において、「最大立ち上がり比」とは、(最大立ち上がりひずみの非線形領域の伸長粘度/最大立ち上がりひずみの線形領域の伸長粘度)を意味し、「最大立ち上がりひずみ」とは、伸長粘度が最大となる時のヘンキーひずみを意味する。最大立ち上がり比は、最大立ち上がりひずみにおけるひずみ硬化の度合いを表す指標となる。最大立ち上がり比が大きいほど、ひずみ硬化度合いが大きく、成形加工性に優れる。最大立ち上がり比が1.2未満であると、十分な深絞り成形性が得られなかったり、成形条件幅が狭くなる傾向がある。最大立ち上がり比が5.5より大きいと、成形時の伸長粘度が低くなり過ぎるため、生産性の観点から好ましくない。
最大立ち上がり比を1.2〜5.5にするためには、例えば、分岐度を0.70〜0.94、絶対分子量100万〜500万の成分の含有量を10.0〜18.0%とする方法がある。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物の立ち上がりはじめひずみは、好ましくは0.30〜1.50、より好ましくは0.40〜1.30、さらに好ましくは0.45〜1.10である。本願明細書において「立ち上がりはじめひずみ」とは、ひずみ硬化の発現するひずみであり、成形加工性の指標となる。立ち上がりはじめひずみが小さいほど、言い換えれば立ち上がりが早いほど低延伸時からひずみ硬化がおこり、成形加工性に優れるため、フィルムの偏肉がより起こりにくくなることがあり、それゆえフィルムを薄肉化できることがある。
立ち上がりはじめひずみを0.30〜1.50にするためには、例えば、分岐度を0.70〜0.94、絶対分子量100万〜500万の成分の含有量を10.0〜18.0%とする方法がある。
なお本開示で、最大立ち上がり比及び立ち上がりはじめひずみは、後述の[実施例]の項で説明する手順で算出される値である。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物の溶融張力は、好ましくは60〜120g、より好ましくは65〜110g、さらに好ましくは65〜100g、よりさらに好ましくは70〜100gである。溶融張力が60g未満であると、十分な深絞り成形性が得られなかったり、成形条件幅が狭くなる傾向がある。溶融張力が120gよりも大きいと、成形時の張力が高くなり過ぎるため、成形品の偏肉や外観が悪化する傾向がある。
溶融張力を60〜120gにするためには、例えば、分岐度を0.70〜0.94、絶対分子量100万〜500万の成分の含有量を10.0〜18.0%とする方法がある。
なお本開示で、溶融張力は、後述の[実施例]の項で説明する手順で算出される値である。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物を、スチレン系単量体をラジカル重合反応することにより製造した場合、スチレン系樹脂組成物中のスチレンの二量体及び三量体の合計残存量は、好ましくはスチレン系樹脂組成物100質量%に対して0.01〜0.30質量%であり、より好ましくは0.01〜0.25質量%、さらに好ましくは0.02〜0.20質量%である。スチレンの二量体及び三量体の合計残存量が0.01〜0.30質量%であることにより、二次成形時の目ヤニが少なくなり、良好な外観の成形品の歩留まりが向上すること、あるいは成形品の臭気が少なくなることを可能にする。
スチレンの二量体及び三量体の合計残存量をスチレン系樹脂組成物100質量%に対して0.01〜0.30質量%とするためには、例えば、重合時に生成する量を減らすために、反応温度を80〜140℃と低くする方法や、重合開始剤を100〜2000質量ppm添加し、多くの開始剤ラジカルを発生させる方法がある。また、熱や溶融樹脂のせん断により発生する量を減らすために、未反応モノマーや溶媒を真空脱揮する際の真空度を50kPa以下と低くする方法や、後述する熱分解抑制剤を100〜3000質量ppm添加する方法がある。
なお本開示で、スチレン二量体及び三量体の合計残存量は、ガスクロマトグラフィー(GC)を使用して測定される値である。
〈スチレン系樹脂の製造方法〉
本実施形態のスチレン系樹脂の製造方法としては、例えば、モノビニル化合物と、共役ジビニル化合物及び/又は多分岐ビニル化合物とをラジカル共重合することによって製造する方法が挙げられる。
以下、一例として、モノビニル化合物と、共役ジビニル化合物及び/又は多分岐ビニル化合物とをラジカル共重合することによるスチレン系樹脂の製造方法について、詳細に説明する。
本実施形態におけるモノビニル化合物は、スチレン系化合物(単量体)のみからなっていても、スチレン系化合物とともにスチレン系化合物と共重合可能な他のモノビニル基を有する化合物からなっていてもよい。モノビニル化合物としては、スチレン系化合物の他、スチレン系化合物と共重合可能であれば特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリロニトリル等のビニル系化合物、並びにジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、無水マレイン酸、マレイミド、及び核置換マレイミド等が挙げられる。また、スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられ、好ましくはスチレンである。
スチレン系化合物の含有量としては、モノビニル化合物の含有量のうち50モル%以上が好ましく、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
本実施形態における共役ジビニル化合物は、数平均分子量(Mn)が850〜100000であり、かつ、分子内に共役ビニル基を少なくとも2つ有する化合物であることが好ましい。
また、本実施形態における共役ジビニル化合物は、網目状ではなく、鎖状であることが好ましく、主鎖には側鎖を有していても有していなくてもよい。鎖状であることにより、分子鎖をよりリニアな形状にすることができ、それにより、絡み合い効果を向上させやすい傾向があるためである。なお側鎖は、例えば炭素数6以下が好ましく、炭素数4以下がより好ましい。
さらに、共役ジビニル化合物中の共役ビニル基は、分子内の任意に位置させることができるが、少なくとも2つの共役ビニル基のうちの2つの共役ビニル基は、分子中の異なる末端に位置していることが好ましい。また、共役ジビニル化合物が鎖状の場合には、当該2つの共役ビニル基は、主鎖の異なる末端に位置していることがより好ましい(すなわち、主鎖の両末端が共役ジビニル基になっていることがより好ましい)。共役ビニル基が末端に位置していることにより重合反応性を高めることができる。
さらに、共役ジビニル化合物が鎖状であり、かつ、3つ以上の共役ビニル基を有する場合には、3つ以上の共役ビニル基のうち2つの共役ビニル基が末端に位置することが好ましく、当該3つ以上の共役ビニル基全てが末端に位置することがより好ましい。
なお、共役ジビニル化合物における共役ビニル基の数が多い場合には、分岐点が増え、反応器や原料を回収する工程においてゲル化が起こりやすくなる可能性が生じ、スチレン系樹脂の透明性の悪化や、反応器や成形機の洗浄が必要になり生産性が低下することがある。これらの観点から、共役ジビニル化合物が有する共役ビニル基の数は、5つ以下であることが好ましく、4つ以下であることがより好ましく、3つ以下であることがさらに好ましい。また、同様な観点から、共役ジビニル化合物の共役ビニル基は2つであることが特に好ましい。
ここで、本明細書において、分子について「末端」とは、分子の最も端となる位置(原子)のみならず、分子の最も端となる位置に近接した位置を含むものとし、当該近接した位置とは、具体的に、分子の伸び切り鎖長の約20%に相当する端部を意味する。そして、共役ジビニル化合物中の共役ビニル基は、モノビニル化合物との反応性の向上及びゲル化の抑制の観点から、共役ジビニル化合物分子の伸び切り鎖長の15%に相当する端部に位置することがより好ましく、10%に相当する端部に位置することがさらに好ましく、5%に相当する端部に位置することが一層好ましい。
なお本開示で、共役ジビニル化合物の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)を意味する。
本実施形態のスチレン系樹脂における共役ジビニル化合物の含有量は、モノビニル化合物の総量1モルに対して好ましくは2.0×10−6〜4.0×10−4モル、より好ましくは5.0×10−6〜3.5×10−4モル、さらに好ましくは1.5×10−5〜3.0×10−4モル、さらにより好ましくは2.0×10−5〜2.5×10−4モルである。含有量が2.0×10−6モル未満の場合は、高分子同士の十分な絡み合いが生じにくく、ひずみ硬化が発現しない、あるいはひずみ硬化の度合いが小さいために、成形品の肉厚が不均一であったり、成形時に成形品が破けることが有り、成形加工性が劣ることがある。一方、含有量が4.0×10−4モルを超える場合は、ゲル状物質の発生が多く、成形品の外観等が不良となることがある。
なお本開示で、モノビニル化合物の総量1モルに対する共役ジビニル化合物の含有量は、1H−NMR及び13C−NMRを使用して測定される値である。
本実施形態における多分岐ビニル化合物において、多分岐とは、1つ以上の枝分かれ構造を有することを意味し、より具体的には、星型分岐構造、ポン−ポン型分岐構造、グラフト分岐構造、H型分岐構造を有することを意味する。
多分岐ビニル化合物の数平均分子量(Mn)は、850〜100000であることが好ましく、より好ましくは1000〜80000、さらに好ましくは1200〜80000、さらにより好ましくは1500〜60000、特に好ましくは1500〜30000である。数平均分子量(Mn)が850未満の場合は、ビニル基間の距離が短いため、共役ジビニル化合物に結合したポリマー鎖間の距離が短くなり、十分な絡み合い効果が得られず、成形加工性に劣ることがある。分子量が100000を超える場合は、ビニル基間の距離が長くなり、ビニル基の反応性が低下し(多分岐ビニル化合物の分子量が大きいので末端のビニル基が反応しにくくなる)、高分子量成分の生成量が低下することがある。
なお本開示で、多分岐ビニル化合物の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を使用して測定される値である。
本実施形態のスチレン系樹脂における多分岐ビニル化合物の含有量は、モノビニル化合物の総量1モルに対して好ましくは2.0×10−6〜4.0×10−4モル、より好ましくは5.0×10−6〜3.5×10−4モル、さらに好ましくは1.5×10−5〜3.0×10−4モル、さらにより好ましくは2.0×10−5〜2.5×10−4モルである。含有量が2.0×10−6モル未満の場合は、高分子同士の十分な絡み合いが生じにくく、ひずみ硬化が発現しない、あるいはひずみ硬化の度合いが小さいために、成形品の肉厚が不均一であったり、成形時に成形品が破けることが有り、成形加工性が劣ることがある。一方、含有量が4.0×10−4モルを超える場合は、ゲル状物質の発生が多く、成形品の外観等が不良となることがある。
本実施形態のスチレン系樹脂の重合方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法等、公知のスチレン重合方法が挙げられる。これらの重合方法は、バッチ重合法であっても連続重合法であってもよく、生産性の点から連続重合法であることが好ましい。連続塊状重合法としては、例えば、モノビニル化合物、共役ビニル基を有する共役ジビニル化合物、必要に応じて溶剤、重合触媒、及び連鎖移動剤等を添加及び混合して、単量体類を含む原料溶液を調製する。直列及び/又は並列に配列された1個以上の反応器と、未反応単量体等の揮発性成分を除去する脱揮工程のための脱揮装置とを備えた設備に、上記原料溶液を連続的に送入し、段階的に重合を進行させる方法が挙げられる。
脱揮装置としては、例えば、フラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機等の通常の脱揮装置を用いることができ、一般的には加熱器付きの真空脱揮槽や脱揮押出機等が用いられる。脱揮装置の配列としては、例えば、加熱器付きの真空脱揮槽を1段のみ使用したもの、加熱器付きの真空脱揮槽を直列に2段接続したもの、及び加熱器付きの真空脱揮槽と脱揮押出機とを直列に接続したもの等が挙げられる。揮発成分を極力低減するためには、加熱器付きの真空脱揮槽を直列に2段接続したもの、又は加熱器付きの真空脱揮槽と脱揮押出機とを直列に接続したものが好ましい。
70質量%以上がより好ましい。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、任意選択的に添加剤等を含んでいてもよく、例えば、必要に応じて、ゴム質を含有する成分としてHIPS樹脂、MBS樹脂等のゴム強化芳香族ビニル系樹脂やSBS等の芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーを1〜50質量%程度含有していてもよい。また、スチレン系樹脂組成物は、未反応モノマーの回収工程における高分子の熱分解を抑制するために、例えば2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−フェニルペンチル)エチル]−4,6−ジ−t−フェニルペンチルアクリレートのような加工安定剤が含まれていてもよい。また、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−フェニルペンチル)エチル]−4,6−ジ−t−フェニルペンチルアクリレート等の熱劣化防止剤、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸及びその塩や、エチレンビスステアリルアミド等の滑剤、流動パラフィン等の可塑剤、酸化防止剤等を本実施形態の目的を損なわない範囲で組み合わせて含有させてもよい。その他、スチレン系樹脂の分野で慣用されている添加剤、例えば難燃剤、着色剤等を、本実施形態の目的を損なわない範囲で組み合わせて、スチレン系樹脂組成物に含有させてもよい。添加剤としては、特に限定されないが、例えば、ヘキサブロモシクロドデカン等の難燃剤、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤等が挙げられる。またスチレン系樹脂をペレットとする場合には、当該ペレットの外部潤滑剤として、エチレンビスステアリルアミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等をペレットにまぶして使用してもよい。
熱劣化防止剤の含有量が0.01質量部以上であると、脱揮工程でのモノビニル化合物の単量体、及びその二量体や三量体の生成をより効果的に抑制することができる。一方、熱劣化防止剤の含有量を0.5質量部より多くしても、含有量に見合うだけの効果が得られない。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、例えば、上述のモノビニル化合物と共役ジビニル化合物及び/又は多分岐ビニル化合物とを上述の製造方法でラジカル重合して得られるスチレン系樹脂と、上述の添加剤等とを単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー等の公知の混練機を用いて溶融混練する方法等で得ることができる。なお、上述のスチレン系樹脂の製造工程において、上述の添加剤等を適宜添加することにより、本実施形態のスチレン系樹脂組成物を製造してもよい。
本実施形態の発泡シートは、本実施形態のスチレン系樹脂組成物を含み、厚みが0.5〜5.0mmである。また、本実施形態の発泡シートは、見かけ密度が50〜300g/L、坪量が80〜300g/m2であることが好ましい。
本実施形態の発泡シートは、シート上にフィルムをラミネートしてもよい。フィルムの種類としては、一般のポリスチレンに使用されるものを使用することができる。
本実施形態の発泡シートによれば、良好な外観の成形品を得ることができる。
本実施形態の発泡シート中のスチレン単量体の残存量は、発泡シート100質量%に対して好ましくは10〜500質量ppmであり、より好ましくは20〜300質量ppm、さらに好ましくは30〜200質量ppmである。スチレン単量体の残存量が10〜500質量ppmであることにより、発泡シートの臭気を低減することができる。
なお本開示で、スチレン単量体の残存量は、ガスクロマトグラフィー(GC)を使用して測定される値である。
本実施形態の発泡シートの製造方法は、通常知られている方法を用いて行うことができる。例えば、特に限定されないが、押出機で本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物、発泡剤、及び発泡核剤を溶融混練して押し出す方法が挙げられ、より詳細には以下のとおりである。
まず、サーキュラーダイに接続された押出機で本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物を溶融混練し、当該溶融混練物を上記サーキュラーダイの前方に設けられた円環状の開口から上記溶融混練物を発泡状態で押出して、円筒状の発泡体を形成する。次いで、上記発泡体を上記サーキュラーダイの上記開口よりも径大な冷却マンドレルの外周面に摺接させて周方向に延伸しつつ冷却し、これを押し出し方向に沿って連続的に切断して展開するような通常知られている方法を用いることができる。
本実施形態における成形品は、本実施形態の発泡シートの二次成形品である。本実施形態の発泡シートを、例えば、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、両面真空成形、プレス成形等の従来公知の方法で二次成形することにより、トレー、コップ、丼容器、納豆容器等の二次成形品を形成することができる。
本実施形態の二次成形品の例としては、本実施形態の発泡シートを成形素材として、真空成形機により、横方向を押出方向として、縦5.5〜21cm、横6.5〜36cm、深さ1.1〜3.4cmの食品用トレー容器が挙げられる。真空成型の温度条件としては、特に限定されないが、通常、120〜150℃が好ましい。
測定及び評価方法は、以下のとおりである。
スチレン系樹脂組成物における、スチレン1モルに対する共役ジビニル化合物の含有モル数は、1H−NMR及び13C−NMRを使用して測定した。測定装置としては、日本電子(株)社製のJEOL−ECA500を使用した。溶媒としてクロロホルム−d1を使用し、テトラメチルシランの共鳴線を内部標準として使用した。
スチレン系樹脂組成物の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、Mw/Mn、ピークトップ分子量(Mtop)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定した。
装置:東ソー製HLC―8220
分別カラム:東ソー製TSK gel Super HZM−H(内径4.6mm)を直列に2本接続
ガードカラム:東ソー製TSK guard column Super HZ−H
測定溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
試料濃度:測定試料5mgを10mLの溶媒に溶解し、0.45μmのフィルターでろ過を行った。
注入量:10μL
測定温度:40℃
流速:0.35mL/分
検出器:紫外吸光検出器(東ソー製UV−8020、波長254nm)
検量線の作成には東ソー製のTSK標準ポリスチレン11種類(F−850、F−450、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000)を用いた。1次直線の近似式を用いて検量線を作成した。
スチレン系樹脂組成物の絶対分子量は、多角度光散乱検出器(MALS)を用いて、以下の条件で測定した(以下、「MALS法」と称する場合がある。)。
装置:東ソー製HLC―8220
分別カラム:測定溶媒が流れる順に、Shodex製KF806を2本、KF800Dを1本、直列に接続
ガードカラム:Shodex製GPC KFG−4A
測定溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
試料濃度:測定試料10mgを10mLの溶媒に溶解し、0.45μmのフィルターでろ過を行った。
注入量:100μL
測定温度:40℃
流速:1.00mL/分
検出器:示差屈折計(東ソー社製 RI−8022)
MALS検出器:Malvern社製Viscotek SEC−MALS 20
MALS検出角度:12°、20°、28°、36°、44°52°、60°、68°、76°、84°、90°、100°、108°、116°、124°、132°、140°、148°、156°、164°
MALS検出器温度:35℃
標準試料としてPS105Kを使用し、解析ソフトOmniSEC5.1を用いて解析を行った。
得られた分子量とdW/dlogMの割合から、分子量100万〜500万の成分の含有量(%)を計算した。
スチレン系樹脂組成物の分岐度、ゲル化度は、上述のMALS法で測定を行い、算出した。横軸をlog Molecular weight、縦軸をlog radius of gyrationとしたグラフを作成した。このグラフに、直鎖ポリスチレン(NBS706)について、log Molecular weightの値が5.0〜6.0の範囲で線形の近似直線を作成し、これを、分岐構造を持たない直鎖ポリスチレンの基準値とした。
ここで、log Molecular weightの値が6.0、6.5の時のlog radius of gyrationの値をそれぞれ<Rg6.0>、<Rg6.5>と定義し、NBS706の<Rg6.0>、<Rg6.5>をそれぞれ<Rg6.0>NBS、<Rg6.5>NBSと定義する。なお、<Rg6.5>NBSは、近似直線の外挿値から計算することができる。
分岐度は、分岐度=<Rg6.5>/<Rg6.5>NBSと定義する。この分岐度は、絶対分子量106.5=316万において、直鎖ポリスチレンであるNBS706に対して回転半径がどの程度小さくなっているかを意味しており、分岐度が小さいほど、対象のポリマーが分岐していることを表している。
また、ゲル化度は、ゲル化度=(<Rg6.0>/<Rg6.0>NBS)/(<Rg6.5>/<Rg6.5>NBS)と定義する。このゲル化度は、絶対分子量106.0から106.5にかけての、ポリマーの回転半径の変化の割合を表す。すなわち、分子量が大きくなるにつれて分岐がどの程度多くなっているかを意味しており、ゲル化度が大きいほど、分子量が大きくなるにつれて分岐が多くなっていることを表している。
スチレン系樹脂組成物のメルトマスフローレート(g/10分)は、ISO1133に準拠して、200℃、49Nの荷重条件にて測定した。
スチレン系樹脂組成物の最大立ち上がり比及び立ち上がりはじめひずみの測定は、以下の粘弾性測定に基づいて行った。
装置名:粘弾性測定装置 ARES−G2(TA Instruments社製)
測定システム:ARES−EVFオプション
試験片寸法:長さ20mm、厚さ0.7mm、幅10mm
伸長ひずみ速度:0.01/秒
温度:150℃
測定雰囲気:窒素気流中
予熱時間:2分
予備伸長ひずみ速度:0.03/秒、
予備伸長長さ:0.295mm
予備伸長後緩和時間:2分
粘弾性測定は、試験片をローラーに取り付け、温度が測定温度で安定した後、上記の予熱時間、静置し、予熱を行った。予熱終了後、上記の条件で予備伸長を行った。予備伸長後、2分間静置し、予備伸長で生じた応力を緩和させ、測定した。
そして、同じヘンキーひずみにおける、非線形領域の伸長粘度と線形領域を外挿した近似直線の伸長粘度との差が非線形領域の伸長粘度の3%となる時のヘンキーひずみを、立ち上がりはじめひずみとした。
また、最大立ち上がり比は、上記の粘弾性測定において伸長粘度が最大となる時のヘンキーひずみを最大立ち上がりひずみとして、(最大立ち上がりひずみにおける非線形領域の伸長粘度/最大立ち上がりひずみにおける線形領域を外挿した近似直線の伸長粘度)で算出した。
図1に、実施例及び比較例で得られたスチレン系樹脂組成物について、横軸をヘンキーひずみとし縦軸を伸長粘度としてプロットした両対数グラフを示す。
スチレン系樹脂組成物の溶融張力(g)は、以下の条件で測定を行った。
装置名:キャピラリーレオメーター RH10 (マルバーン製)
測定温度:190℃
押出速度:20mm/分
引取速度:3.1m/分
乾燥条件:測定前にスチレン系樹脂組成物を80℃で3時間乾燥させた。
上記測定条件にて、荷重が安定した範囲を平均化して溶融張力値とした。引取中にストランドが切れる場合や、荷重の変動係数が10%を超える場合は測定不可とした。
スチレン系樹脂組成物中における、スチレンの二量体及び三量体の合計残存量(質量ppm)を、下記の条件や手順で、測定した。
・試料調製:スチレン系樹脂組成物1.0gをメチルエチルケトン10mLに溶解後、さらに標準物質(トリフェニルメタン)入りのメタノール3mLを加えポリマー成分を再沈させ、上澄み液を採取し、測定液とした。
・測定条件
機器:Agilent社製 6850 シリーズ GCシステム
検出器:FID
カラム:HP−1(100%ジメチルポリシロキサン)30m、膜厚0.25μm、0.32mmφ
注入量:1μL(スプリットレス)
カラム温度:40℃で1分保持→20℃/分で320℃まで昇温→320℃で10分保持
注入口温度:250℃
検出器温度:280℃
キャリアガス:ヘリウム
30mmφシート押出機(創研株式会社製)を用いてスチレン系樹脂組成物を押し出し、厚さ0.5mmのシートを作成した。得られたシートから縦100mm×横100mmの大きさに試験片を20枚切出し、短径と長径の平均が2mm以上のゲル状物質を目視で測定した。判定はゲル状物質が含まれていた試験片の数が0〜2個を「◎」(優れる)、3〜10個を「○」(良好)、11個以上の場合を「×」(不良)とした。
30mmφシート押出機(創研株式会社製)を用いてスチレン系樹脂組成物を押し出し、厚さ0.5mmのシートを作成した。得られたシートから縦250mm×横250mmの大きさに試験片を20枚切出し、創研製のシート容器成型機を用いて、このシート成型機の固定枠でシートを挟み、ヒータの平均温度を220℃、雰囲気温度を110℃に設定し、20秒間加熱した。次いで、径10cm深さ10cmの丼容器の金型(温度40℃)に固定枠ごとスライドさせて真空成形を行い、成形体を20個成形した。この成形体の側面に引裂きが生じていないかを目視で確認し、引裂きが起こらず成形可能であった成形体の個数を深絞り成形性の指標とした。
上記(10)の深絞り成形時に加熱する時間を20秒から1秒ずつ伸ばしていき、その他の条件を変えずに真空成形を行い、成形体を10個ずつ成形した。(10)と同様に目視で確認し、成形可能であった成形体の数が7個以下になるまで加熱時間を伸ばしていった。8個以上成形可能であった最大の加熱時間をシートの最大成形可能加熱時間(秒)と定義し、測定した。
上記(10)で成形した深絞り成形品表面の光沢と肌荒れ状態を目視で確認した。成形品100個のうち、液だれした様な斑又は不均一な表面が確認されなかった成形品を良好な外観を有する成形品であると判断し、その個数を成形品の外観評価の指標とした。
発泡シート中のスチレン単量体の残存量(質量ppm)は、以下の測定条件で、ガスクロマトグラフィー法で測定した。発泡シート1gをジメチルフォルアミド25mLに溶解し、測定試料を調整した。
測定条件
検出方法 :FID
機器 :島津製製作所 GC14B
カラム :CHROMAPACK CP WAX 52CB
100m、膜厚2μm、0.52mmφ
カラム温度 :110℃で10分間保持し、15℃/分で130℃まで昇温し、130℃で2分間保持した。
注入口温度 :150℃
検出器温度 :150℃
キャリアガス :ヘリウム
発泡シートを23±3℃、相対湿度50±5%にて20日間にわたって放置した。その後、創研製のシート容器成型機を用いて、このシート成型機の固定枠で発泡シートを挟み、ヒータの平均温度を200℃、雰囲気温度を130℃に設定し、15秒間加熱した。次いで、径10cmで深さ3cm又は6cmの深さが異なるコップ状の金型(温度40℃)に固定枠ごとスライドさせて真空成形を行い、成形体を100個ずつ成形した。この成形体の側面に引裂きが生じていないかを目視で確認し、引裂きが起こらず成形可能であった成形体の個数を深絞り成形性の指標とした。
上記(14)の深絞り成形時に、加熱する時間を15秒から1秒ずつ伸ばしていき、その他の条件を変えずに真空成形を行い、成形体を10個ずつ成形した。(14)と同様に目視で確認し、成形体の成形が可能であった発泡シートの数が7個以下になるまで加熱時間を伸ばしていった。8個以上の成形体の成形が可能であった最大の加熱時間を発泡シートの最大成形可能加熱時間(秒)と定義し、測定した。
発泡シートの発泡倍率(倍)は、発泡体密度の値(ρf)及びスチレン系樹脂組成物の密度(ρ)を用いて、次式より算出した。
発泡倍率=ρ/ρf
発泡体密度は、ISO10350に基づいて、発泡シートの発泡体密度を測定した。なお、測定装置としては、島津製作所製の比重計(SGM−220−60測定器)を使用した。
図2は、発泡トレーの腰強度(N)を測定する方法について説明する図である。発泡シートを図2に示す形状のトレー(外寸で縦12cm、横20cm、深さ2cm;厚み4.0mm)に真空成型し、得られた発泡トレーの腰強度を測定した。すなわち、圧縮試験用下部圧盤に固定された発泡トレーに対して、圧縮試験機の可動部位に突設された圧縮負荷治具により、押圧速度5mm/分で負荷をかけるものとした。なお、発泡トレー容器は、創研製のシート容器成型機を使用し、金型を用いて発泡シートを真空成形した。上記発泡トレーの、周壁部上端縁部における長辺の中央部を、当該長辺に対向する長辺に向けて10mmだけ近接するように速度5mm/分で押圧し変形させた際に要した荷重(N)を腰強度として測定した(図2参照)。なお、測定装置として、島津製作所製の卓上型精密万能試験機(オートグラフAGS−5kNX)を使用した。
実施例及び比較例においては、以下の材料を用いた。
〈モノビニル化合物〉
スチレン:スチレンモノマー[旭化成社製]
〈共役ジビニル化合物1〉
共役ジビニル化合物1は、下記の方法に基づいて製造した。
撹拌機、温度計及び還流冷却管を取り付けた容量5Lの反応容器内に、ポリブタジエン両末端アルコール(Mn:1900)2742g、アクリル酸メチル379g、n−ヘキサン380g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.8194g、及び4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル0.5533gを仕込んだ。得られた混合物を塩化カルシウム管内に通しながら、その混合物に空気を吹き込み、80〜85℃で還流脱水を行った。この混合物に含まれている水分をカールフィッシャー法により測定し、その含水量が200ppm以下であることを確認した。その後、エステル交換触媒として、テトラn−ブチルチタネート1.3685gを上記混合物に添加し、生成したメタノールをその共沸溶媒であるn−ヘキサンの還流下で反応系外に留去しながら、攪拌下で80〜85℃の反応温度で10時間反応させた。
次に、反応容器内の温度を75〜80℃に調整し、使用したアクリル酸メチル及びn−ヘキサンの95%以上が留出するまで減圧度70〜2kPaで濃縮し、過剰のアクリル酸メチルとn−ヘキサンを回収した。得られたポリブタジエン両末端ジアクリレート2070gに、トルエン2000g、アセトン200g、イオン交換水20g、及びエステル交換触媒としてハイドロタルサイト(組成式Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O)〔協和化学工業(株)製、商品名:キョーワード500PL〕20gを添加し、75〜80℃で2時間処理した。次に、反応容器内の温度を75〜80℃に調整し、減圧度90〜35kPaで濃縮することにより、トルエンとアセトンと水の混合留出液400gを回収し、得られた濃縮液を空気加圧下で濾過して触媒及び吸着剤を分離し、さらに温度60〜80℃及び減圧度30〜0.8kPaで溶媒を脱気し、共役ジビニル化合物1を得た。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で、共役ジビニル化合物1のポリブタジエン両末端ジアクリレートの転化率を測定したところ99.3%であった。またGPCで測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は1900であった。
共役ジビニル化合物3:ウレタンアクリレートオリゴマー[巴工業社製:CN9014NS] Mn:8000
共役ジビニル化合物4は、下記の方法に基づいて製造した。
ポリブタジエン両末端アルコールの分子量をMn:25000に変更した以外は共役ジビニル化合物1の場合と同様の条件にて製造した共役ジビニル化合物4は、ポリブタジエン両末端ジアクリレートの転化率が99.5%であった。また、GPCで測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は26000であった。
共役ジビニル化合物5は、下記の方法に基づいて製造した。
ポリブタジエン両末端アルコールの分子量をMn:57000に変更した以外は共役ジビニル化合物1の場合と同様の条件にて製造した共役ジビニル化合物5は、ポリブタジエン両末端ジアクリレートの転化率が99.2%であった。またGPCで測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は58000であった。
共役ジビニル化合物7:1,3−ブチレンジオールジメタクリレート[和光純薬工業株式会社製] 分子量:226
共役ジビニル化合物8:NKエステル A−GLY−20E[新中村化学工業株式会社製] 分子量:1295、共役ジビニル化合物9の1分子中の平均の共役ビニルの数は3である。
共役ジビニル化合物9:ジビニルベンゼン[和光純薬工業社製] 分子量:130
〈多分岐ビニル化合物1〉
ジビニルベンゼン3.1モル(399.4g)、エチルビニルベンゼン0.7モル(95.1g)、スチレン0.3モル(31.6g)、2−フェノキシエチルメタクリレート2.3モル(463.5g)、トルエン974.3gを3.0Lの反応器内に投入し、50℃で42.6gの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を添加し、6.5時間反応させた。重合反応を炭酸水素ナトリウム溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、室温で反応混合液を大量のメタノールに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、多分岐ビニル化合物1を372.5g得た。
この多分岐ビニル化合物1の重量平均分子量(Mw)は8000で、ジビニル化合物由来のビニル基を含有する構造単位(a1)のモル分率は0.44、末端の2−フェノキシエチルメタクリレート由来の二重結合(a2)は0.03、両者を合わせた合計のモル分率(a3)は0.47であった。また、重量平均分子量(Mw)8000における重合体の慣性半径は6.3nmであった。本重合体の慣性半径の、二重結合のモル分率に対する比は13.4であり、かつ、直鎖型の重量平均分子量(Mw)8000における慣性半径が15nmであることと比較すると、本合成例における多分岐ビニル化合物1は、分岐構造をとっていることがわかる。
攪拌機、温度計、滴下ロート及びコンデンサーを備えた2リットルフラスコに、室温下、特開2016−113598号公報に開示されているエトキシ化ペンタエリスリトール(エチレンオキシド付加ペンタエリスリトール)50.5g、BF3ジエチルエーテル溶液(50%)1gを加え、110℃に加熱した。これに3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン450gを、反応による発熱を制御しつつ、25分間でゆっくり加えた。発熱が収まったところで、反応混合物をさらに120℃で3時間撹拌し、その後、室温に冷却した。得られた多分岐ポリエーテルポリオールの重量平均分子量は3,000、水酸基価は530であった。
攪拌機、温度計、コンデンサーを備えたディーンスタークデカンター及び気体導入管を備えた反応器に、上記で得られた多分岐ポリエーテルポリオール50g、メタクリル酸13.8g、トルエン150g、ヒドロキノン0.06g、パラトルエンスルホン酸1gを加え、混合溶液中に3mL/分の速度で7%酸素含有窒素(v/v)を吹き込みながら、常圧下で撹拌し、加熱した。デカンターへの留出液量が1時間あたり30gになるように加熱量を調節し、脱水量が2.9gに到達するまで加熱を続けた。反応終了後、一度冷却し、無水酢酸36g、スルファミン酸5.7gを加え、60℃で10時間撹拌した。その後、残っている酢酸及びヒドロキノンを除去する為に5%水酸化ナトリウム水溶液50gで4回洗浄し、さらに1%硫酸水溶液50gで1回、水50gで2回洗浄した。得られた有機層にメトキノン0.02gを加え、減圧下、7%酸素含有窒素(v/v)を導入しながら溶媒を留去し、イソプロペニル基及びアセチル基を有する多分岐ビニル化合物2を60g得た。得られた多分岐ビニル化合物2の重量平均分子量は3,900であり、多分岐ポリエーテルポリオールへのイソプロペニル基及びアセチル基導入率は、ヒドロキシル基全体に対してそれぞれ30モル%及び62モル%であった。
熱劣化防止剤1:2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−フェニルペンチル)エチル]−4,6−ジ−t−フェニルペンチルアクリレート[住友化学株式会社製:スミライザーGS]
熱劣化防止剤2:6−[3−(3−t−ブチルー4−ヒドロキシー5−メチルフェニル)プロポキシ]−2、4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d、f][1,3,2]ジオキサホスフィン[住友化学株式会社製:スミライザーGP]
重合開始剤1:2,2−ビス(4,4−ジ−ターシャリー−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン[日油株式会社製:パーテトラA]
重合開始剤2:1,1−ジ−(ターシャリー−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン[日油株式会社製:パーヘキサC]
連鎖移動剤1:α−メチルスチレンダイマー[日本油脂社製:ノフマーMSD]
発泡核剤:タルク(松村産業株式会社製、製品名「ハイフィラー#12」
発泡剤:イソブタン:三井化学社製
スチレン単量体80質量部、エチルベンゼン20質量部、上述の製造方法で得られた共役ジビニル化合物1を0.031質量部(スチレン1モルに対して2.1×10−5モル)、重合開始剤1を0.025質量部添加して、第1反応器に供給する原料溶液を調整した。調製した原料溶液を、102℃の温度に保持した内容積5.4Lの完全混合型第1反応器に、0.5L/時で連続的に供給した。
次に、スチレン単量体80質量部、エチルベンゼン20質量部、連鎖移動剤1を0.175質量部、重合開始剤2を0.023質量部添加して、第2反応器に供給する原料溶液を調整した。調製した原料溶液を、原料溶液が通過する順番に、3ゾーンの温度を122、127、115℃の温度に保持した内容積1.5Lのプラグフロー型第2反応器に、0.12L/時で連続的に供給した。
ついで、第1反応器と第2反応器からの重合溶液を合流させ、原料溶液が通過する順番に、4ゾーンの温度を126、139、140、143℃の温度に保持した、内容積3Lのプラグフロー型第3反応器に供給した。第3反応器のゾーン1において、重合開始剤2を0.03質量部添加した。また第3反応器のゾーン3において、熱劣化防止剤1を0.1質量部、熱劣化防止剤2を0.05質量部添加した。
ついで、第3反応器からの重合溶液を240℃の温度に加熱された真空脱気槽に供給し、未反応単量体や溶媒等の揮発性成分を取り除き、72時間の連続運転後に、評価用のスチレン系樹脂組成物を得た。
上記のスチレン系樹脂組成物100質量部に対して、発泡核剤としてタルク(平均粒径1.3μm)を0.15質量部、発泡剤として液化イソブタンを4質量部添加して発泡シート原料を得た。直径150mmのサーキュラーダイを備えた押出発泡機を用い、上記発泡シート原料を押し出し、発泡成形した。押出発泡機の樹脂溶融ゾーンの温度は200〜230℃、ロータリークーラー温度は130〜170℃、ダイス温度は135〜155℃に調整した。押出発泡直後の発泡体を冷却マンドレルで冷却し、円周上の1点でカッターにより切断することにより、厚み1.4mm、幅1000mmの発泡シートを得た。
実施例1の製造条件と分析結果を表1に示す。
実施例2〜12は、表1に示すように条件を変更したこと以外は実施例1と同様にして行い、スチレン系樹脂組成物及び発泡シートを得た。
実施例2〜12の測定及び評価結果を表1にまとめる。
なお、実施例4のスチレン系樹脂組成物は、図1に示すように、ARES−EVFの測定においてひずみ硬化が発現したことがわかる。
比較例1〜6は、表1に示すように条件を変更したこと以外は実施例1と同様にして行い、スチレン系樹脂組成物及び発泡シートを得た。
比較例1〜6の測定及び評価結果を表1にまとめる。
さらに、実施例1〜12では、比較例1〜6と比較して、腰強度の範囲全般について、深絞り成形性が高かった。
ゲル化度が1.00〜1.30であり、
多角度光散乱検出器(MALS)を用いて測定した絶対分子量100万〜500万の成分の含有量が10.0〜18.0%であり、
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が3.0〜5.5であり、
GPCを用いて測定したピークトップ分子量(Mtop)が18万超35万以下である、実施例1〜12のスチレン系樹脂組成物は、シート上のゲル状物質も少なく、適切な特性を有し、成形加工性と強度のバランスに優れ、成形条件幅も広いものであることがわかる。
Claims (9)
- 分岐度が0.70〜0.94であり、
ゲル化度が1.00〜1.30であり、
多角度光散乱検出器(MALS)を用いて測定した絶対分子量100万〜500万の成分の含有量が10.0〜18.0%であり、
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が3.0〜5.5であり、
前記重量平均分子量(Mw)が30万〜60万であり、
GPCを用いて測定したピークトップ分子量(Mtop)が18万超35万以下であることを特徴とする、スチレン系樹脂組成物。 - 最大立ち上がり比が1.2〜5.5である、請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物。
- 溶融張力が65〜100gである、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
- スチレンの二量体及び三量体の合計残存量が前記スチレン系樹脂組成物100質量%に対して0.01〜0.30質量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
- 前記数平均分子量(Mn)は、5.0万〜20万である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
- Z平均分子量(Mz)は、1038000〜2000000である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物を含み、厚みが0.5〜5.0mmであることを特徴とする、発泡シート。
- 請求項7に記載の発泡シートからなることを特徴とする、成形品。
- 連続溶液重合又は連続塊状重合を用いることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物の製造方法。
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