JP6803274B2 - 板状押出発泡体 - Google Patents
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Description
このような方法として、例えば、特許文献1は、特定の分岐状重合体を用いて分子内に分岐構造を導入して高分子量化したビニル芳香族炭化水素重合体を含有する組成物から得られる板状発泡体を開示している。また、特許文献2は、特定の多官能ビニル化合物共重合体を用いて、超高分子量多分岐型共重合体をスチレン含有モノビニル化合物からなる線状重合体内に導入した重合体を含有するスチレン系樹脂組成物から得られる板状発泡体を開示している。また、特許文献3は、特定の多分岐状マクロモノマーを用いて、スチレン系モノマーと、メタクリル酸との共重合体中に分岐構造を導入した板状発泡体を開示している。さらに、特許文献4は、多官能ビニル系脂肪族化合物及びスチレン系単量体由来の成分を基材樹脂として含み、基材樹脂を、温度160℃、一定ひずみ速度0.1/秒の条件で一軸伸長粘度を測定して求められる時間−伸長粘度曲線の対数プロットにおける非線形領域の一次近似直線の傾き(a1)と上記曲線における線形領域の一次近似直線の傾き(a2)との比(a1/a2)が2.0より大きく6.0以下となる樹脂とした、発泡用ポリスチレン系樹脂組成物を開示している。
ゲル状物質は、高倍率である板状発泡体を成形する際に破泡の起点として作用する場合があるため、更なる高倍率化に適した材料が求められている。
〔1〕
スチレン系共重合体を含む厚み5mm以上100mm以下の板状押出発泡体であって、
前記スチレン系共重合体は、数平均分子量(Mn)が1000〜100000である共役ジビニル化合物と、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物との共重合体であり、前記共役ジビニル化合物に由来する単量体単位の割合が、前記モノビニル化合物に由来する単量体単位の総量1モルに対して3.3×10−6〜4.0×10−4モルであり、
前記スチレン系共重合体は、Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比が1.8〜5.0であり、分子量100万以上の割合が4.0%〜20.0%であり、且つ、分子量200万以上の割合が0.3%〜6.0%である、板状押出発泡体。
〔2〕
前記共役ジビニル化合物の数平均分子量(Mn)が2000〜30000である、項目〔1〕に記載の板状押出発泡体。
〔3〕
前記共役ジビニル化合物が両末端共役ビニル化合物である、項目〔1〕又は〔2〕に記載の板状押出発泡体。
〔4〕
前記共役ジビニル化合物が、(水添)ポリブタジエン末端(メタ)アクリレートである、項目〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の板状押出発泡体。
〔5〕
前記スチレン系共重合体の立ち上がりはじめひずみが0.2〜1.3であり、最大立ち上がり比が1.2〜4.0である、項目〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の板状押出発泡体。
本実施形態の板状押出発泡体は、スチレン系共重合体を含む厚み5mm〜100mmの板状押出発泡体であって、上記スチレン系共重合体は、数平均分子量(Mn)が1000〜100000である共役ジビニル化合物と、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物との共重合体であり、上記共役ジビニル化合物に由来する単量体単位の割合が、上記モノビニル化合物に由来する単量体単位の総量1モルに対して3.3×10−6〜4.0×10−4モルであり、上記スチレン系共重合体は、Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比が1.8〜5.0であり、分子量100万以上の割合が4.0%〜20.0%であり、分子量200万以上の割合が0.3%〜6.0%である。
本実施形態の板状押出発泡体は、上記の構成を有するため、高倍率化しても破泡しにくく、高い独立気泡率を維持することができ、発泡体密度と製品強度のバランスに優れる。
なお、本実施形態の板状押出発泡体は、例えば、上記スチレン系共重合体、又は、上記スチレン系共重合体及び任意に選択される添加剤等を含む組成物(以下、「スチレン系共重合体含有組成物」と称することがある。)から、作製することができる。
また、独立気泡率、発泡体密度については、例えば、後述する実施例に記載の方法で評価することができる。
本実施形態では、原料として用いるスチレン系共重合体を、所定の共役ジビニル化合物と所定のモノビニル化合物とにより、適切な含有比で構成するとともに、当該スチレン系共重合体の分子量及び分子量分布を、上記のように適切な範囲に制御することにより、高倍率化しても破泡しにくく、高い独立気泡率を維持することができ、発泡体密度と製品強度のバランスに優れる板状押出発泡体を提供することができる。具体的には、理論に限定されないが、本実施形態では、所定の共役ジビニル化合物と所定のモノビニル化合物とを共重合させることで、得られるスチレン系共重合体を、モノビニル化合物で主に構成される複数の分子鎖部分と、それらの分子鎖部分間を相互に連結する共役ジビニル化合物とで形成し易くすることができるとともに、その際の2つの分子鎖部分間の間隔を所定の距離にすることができる(スチレン系共重合体の分子中に「H」字状となる分岐部分を導入し易いと推測される)。そして、このようにスチレン系共重合体を形成することにより、スチレン系共重合体のそれぞれの分子が相互に効果的に絡み合い易くなり(このような効果を「絡み合い効果」とも称す)、それゆえに、当該スチレン系共重合体の成形加工性を向上させることができる。また、同時に、本実施形態では、スチレン系共重合体における共役ジビニル化合物に由来する単量体単位の割合、並びに、当該スチレン系共重合体の分子量及び分子量分布を所定の範囲としているので、スチレン系共重合体の成形加工性を効果的に向上させつつ、スチレン系共重合体がゲル状化することを効果的に防止することができる。したがって、本実施形態におけるスチレン系共重合体を用いれば、成形加工性に優れ、且つ、高倍率化しても破泡しにくい板状押出発泡体を得ることができる。
本実施形態における共役ジビニル化合物は、共役ビニル基を少なくとも2つ分子中に有する化合物である。ここで、本明細書において「共役ビニル基」とは、モノビニル化合物と共重合可能なオレフィン性二重結合と、当該オレフィン性二重結合と共役系を形成する構造(限定されないが、例えばカルボニル基、アリール基等)とを有する基を意味する。共役ビニル基としては、特に限定されず、例えばアクリロイル基、ビニル基で置換されたアリール基等が挙げられ、また、分子の末端で共役ビニル基となっている末端の構造としては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ビニル、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。
なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれかを意味するものとする。
また、鎖状高分子である共役ジビニル化合物は、主鎖(最も長い直鎖部分)に側鎖が付されていてもよく、付されていなくてもよい。なお、主鎖に側鎖が付されている場合、各側鎖の炭素数は、例えば、6以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。
さらに、共役ジビニル化合物が鎖状高分子であり、且つ、3つ以上の共役ビニル基を有する場合には、3つ以上の共役ビニル基のうち2つの共役ビニル基が末端に位置することが好ましく、当該3つ以上の共役ビニル基全てが末端に位置することがより好ましい。
なお、共役ジビニル化合物における共役ビニル基の数が多い場合には、分岐点が増え、反応器や原料を回収する工程においてゲル化が起こりやすくなる可能性が生じ、スチレン系共重合体の透明性が悪化する虞や、反応器の洗浄が必要になり生産性が低下する虞がある。これらの観点から、共役ジビニル化合物が有する共役ビニル基の数は、5つ以下であることが好ましく、4つ以下であることがより好ましく、3つ以下であることがさらに好ましく、2つであることが特に好ましい。
ここで、本明細書において、分子について「末端」とは、分子の最も端となる位置(原子)のみならず、分子の最も端となる位置に近接した位置を含むものとし、当該近接した位置とは、具体的に、分子の伸び切り鎖長の20%に相当する端部を意味する。そして、共役ジビニル化合物中の共役ビニル基は、モノビニル化合物との反応性の向上及びゲル化の抑制の観点から、共役ジビニル化合物分子の伸び切り鎖長の15%に相当する端部に位置することがより好ましく、10%に相当する端部に位置することがさらに好ましく、5%に相当する端部に位置することが一層好ましい。
なお、共役ジビニル化合物の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)を意味する。
なお、本明細書において「(水添)」とは、「水添されていてもされていなくてもよい」ことを意味するものとする。
本実施形態におけるスチレン系共重合体は、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物が(スチレン系共重合体を形成する単量体として)含まれており、モノビニル化合物は、スチレン系化合物(モノマー)のみからなっていても、スチレン系化合物と、スチレン系化合物と共重合可能な他のモノビニル化合物とからなっていてもよい。スチレン系化合物以外のモノビニル化合物としては、スチレン系化合物と共重合可能であれば特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリロニトリルなどのビニル系化合物、並びにジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、無水マレイン酸、マレイミド、及び核置換マレイミドなどが挙げられる。また、スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられ、好ましくはスチレンである。
本実施形態におけるスチレン系共重合体は、共役ジビニル化合物に由来する単量体単位の割合が、モノビニル化合物に由来する単量体単位の総量1モルに対して3.3×10−6〜4.0×10−4モルであることを要し、また、好ましくは5.0×10−6〜3.5×10−4モルであり、より好ましくは1.5×10−5〜3.0×10−4モルであり、さらに好ましくは2.0×10−5〜2.5×10−4モルである。上記割合が3.3×10−6モル未満の場合は、成形加工性が劣る。一方、上記割合が4.0×10−4モルを超える場合は、ゲル状物質の発生が多く、発泡成形時の成形が不良となる虞などがある。
なお、スチレン系共重合体において、モノビニル化合物に由来する単量体単位の総量1モルに対する共役ジビニル化合物に由来する単量体単位の割合は、1H−NMR及び13C−NMRを用いて求めることができる。
本実施形態におけるスチレン系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは20万〜50万であり、より好ましくは22万〜48万であり、さらに好ましくは24万〜45万である。また、本実施形態におけるスチレン系共重合体は、Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比(Mz/Mw)が、1.8〜5.0であることを要し、また、好ましくは2.0〜4.8であり、より好ましくは2.1〜4.7である。スチレン系共重合体のMzとMwの比を1.8〜5.0の範囲にすることにより、スチレン系共重合体の強度を確保しつつ、ゲル状物質の発生を抑えてより成形加工性と流動性を向上させることができる。
なお、スチレン系共重合体の重量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)は、それぞれ、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)を意味する。そして、本実施形態におけるスチレン系共重合体の重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)は、単量体としてのスチレン系化合物等のモノビニル化合物をラジカル重合する際に、共役ジビニル化合物の種類及び添加量、反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、溶媒の種類及び量、連鎖移動剤の種類及び添加量等を調節することによって制御することができる。具体的には、限定されるものではないが、例えば、重合する際の重合開始剤の添加量を増加させて重合の反応温度を低くすること、あるいは、重合溶媒の使用量を少なくする、または、重合する際の滞留時間を長くすること等により、得られるスチレン系共重合体における分子鎖を所望の形状とさせつつ、高分子量成分を適切に増加させることができる。
なお、スチレン系共重合体の分子量100万以上の割合及び分子量200万以上の割合は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン換算で求めることができる。そして、本実施形態におけるスチレン系共重合体の分子量の割合は、単量体としてのスチレン系化合物等のモノビニル化合物をラジカル重合する際に、共役ジビニル化合物の種類及び添加量、反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、溶媒の種類及び量、連鎖移動剤の種類及び添加量等を調節することによって制御することができる。具体的には、限定されるものではないが、例えば、重合する際の重合開始剤の添加量を増加させて重合の反応温度を低くすること、あるいは、重合溶媒の使用量を少なくする、または、重合する際の滞留時間を長くすること等により、得られるスチレン系共重合体において、低分子量成分を低減させるとともに高分子量成分を増加させて、分子量200万以上の割合及び分子量100万以上の割合の適正化を図ることができる。
本実施形態におけるスチレン系共重合体のメルトマスフローレート(MFR)は、特に限定されないが、好ましくは0.5〜8.0g/10分であり、より好ましくは0.6〜5.0g/10分であり、さらに好ましくは0.7〜4.0g/10分であり、とりわけ好ましくは0.8〜3.5g/10分である。メルトマスフローレートを0.5〜8.0g/10分の範囲にすることにより、成形加工性と流動性とに非常に優れたスチレン系共重合体が得られる傾向にある。なお、上記MFRは、JIS K 7210に従って200℃及び49Nで測定される値を採用することができる。
本実施形態におけるスチレン系共重合体は、立ち上がりはじめひずみが、好ましくは0.2〜1.3であり、より好ましくは0.2〜1.1であり、さらに好ましくは0.2〜1.0である。なお、本明細書において「立ち上がりはじめひずみ」とは、ひずみ硬化の発現するひずみを意味し、成形加工性の指標となる。具体的に、「立ち上がりはじめひずみ」とは、実施例において図1を用いて詳細に示す通り、横軸をヘンキーひずみとし、縦軸を伸長粘度としてプロットした両対数グラフを作成するとともに、当該グラフにおいて、ヘンキーひずみが0.2〜0.5の範囲を線形領域として累乗近似の線形領域直線を作成したときに、同じヘンキーひずみにおける、非線形領域の伸長粘度と線形領域を外挿した近似直線の伸長粘度の差が非線形領域の伸長粘度の3%となる時のヘンキーひずみを指すものとする。この立ち上がりはじめひずみが小さいほど、言い換えれば立ち上がりが早いほど、低延伸時からひずみ硬化がおこり、成形加工性に優れる。
本実施形態の板状押出発泡体を作製可能なスチレン系共重合体含有組成物には、必要に応じて、ゴム質を含有する成分としてHI−PS樹脂、MBS樹脂等のゴム強化芳香族ビニル系樹脂やSBS等の芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーが、1%〜50%程度の割合で含有されていてもよい。また、上記スチレン系共重合体含有組成物には、未反応モノマーの回収工程における高分子の熱分解を抑制するために、例えば2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−フェニルペンチル)エチル]−4,6−ジ−t−フェニルペンチルアクリレートのような加工安定剤が含有されていてもよく、また、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸及びその塩や、エチレンビスステアリルアミド等の滑剤、流動パラフィン、白色鉱油等の可塑剤、酸化防止剤等が含有されていてもよい。その他、スチレン系樹脂の分野で慣用されている添加剤、例えば核剤、難燃剤、着色剤等を、本実施形態の目的を損なわない範囲で組み合わせて、スチレン系共重合体含有組成物に含有させてもよい。添加剤としては、特に限定されないが、例えば、タルク等の核剤、ヘキサブロモシクロドデカン等の難燃剤、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤等が挙げられる。また、スチレン系共重合体又はスチレン系共重合含有組成物をペレットとする場合には、当該ペレットの外部潤滑剤として、エチレンビスステアリルアミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等をペレットにまぶして使用してもよい。
本実施形態のスチレン系共重合体は、数平均分子量(Mn)が1000〜100000である共役ジビニル化合物と、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物とを共重合することによって得ることができる。
本実施形態におけるスチレン系共重合体の重合方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法等、公知のスチレン重合方法が挙げられる。これらの重合方法は、バッチ式であっても連続式であってもよいが、生産性の点から、連続式であることが好ましい。連続式の塊状重合法としては、例えば、モノビニル化合物、共役ジビニル化合物、必要に応じて溶媒、重合触媒、及び連鎖移動剤等を添加及び混合して、単量体類を含む原料溶液(重合原料組成物)を調製し、次いで、直列及び/又は並列に配列された1個以上の反応器と、未反応の単量体等の揮発性成分を除去する脱揮工程のための脱揮装置とを備えた設備に、上記原料溶液を連続的に送入し、段階的に重合を進行させる方法が挙げられる。
脱揮装置としては、例えば、フラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機などの通常の脱揮装置を用いることができ、一般的には加熱器付きの真空脱揮槽や脱揮押出機などが用いられる。脱揮装置の配列としては、例えば、加熱器付きの真空脱揮槽を1段のみ使用したもの、加熱器付きの真空脱揮槽を直列に2段接続したもの、及び加熱器付きの真空脱揮槽と脱揮押出機とを直列に接続したもの等が挙げられる。揮発成分を極力低減するためには、加熱器付きの真空脱揮槽を直列に2段接続したもの、又は加熱器付きの真空脱揮槽と脱揮押出機とを直列に接続したものが好ましい。
本実施形態の板状押出発泡体は、上記スチレン系共重合体から製造することができる。より詳細には、本実施形態の板状押出発泡体は、上記スチレン系共重合体を発泡させることにより、製造することができる。上記発泡は、通常知られている方法を用いて行うことができる。また、押出発泡時の発泡剤や発泡核剤については、通常用いられる物質を使用することができる。
測定及び評価は、以下の方法に基づいて行った。
スチレン系共重合体における、モノビニル化合物に由来する単量体単位の総量1モルに対する共役ジビニル化合物に由来する単量体単位の割合は、1H−NMR及び13C−NMRを用いて求めた。なお、測定装置としては日本電子株式会社製のJEOL−ECA500を使用し、その際、クロロホルム−d1を溶媒として使用し、テトラメチルシランの共鳴線を内部標準として使用した。
スチレン系共重合体の重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、分子量100万以上の割合、及び分子量200万以上の割合、並びに共役ジビニル化合物の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。以下の条件で測定した。
装置:東ソー製HLC―8220
分別カラム:東ソー製TSK gel Super HZM−H(内径4.6mm)を2本直列に接続
ガードカラム:東ソー製TSK guard column Super HZ−H
測定溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
試料濃度:測定試料5mgを10mLの溶媒に溶解
注入量:10μl
測定温度:40℃
流速:0.35mL/分
検量線の作成には東ソー製のTSK標準ポリスチレン11種類(F−850、F−450、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000)を用いた。1次直線の近似式を用いて検量線を作成した。
30mmφシート押出機(創研株式会社製)を用いて、スチレン系共重合体の厚さ0.5mmのシートを作製した。得られたシートから、縦100mm×横100のmmの大きさの試験片を20枚切り出し、短径と長径の平均が2mm以上のゲル状物質を目視で測定した。判定は、ゲル状物質が含まれていた試験片の数が0〜2個の場合を「◎」、3〜10個の場合を「○」、11個以上の場合を「×」として行った。
スチレン系共重合体の立ち上がりはじめひずみ、及び最大立ち上がり比の測定は、以下の粘弾性測定に基づいて行った。
装置名:粘弾性測定装置 ARES−G2(TA Instruments社製)
測定システム:ARES−EVFオプション
試験片寸法:長さ20mm、厚さ0.7mm、幅10mm
伸長ひずみ速度:0.01/秒
温度:150℃
測定雰囲気:窒素気流中
予熱時間:1分
予備伸長ひずみ速度:0.05/秒、
予備伸長長さ:0.295mm
予備伸長後緩和時間:1分
粘弾性測定は、試験片をローラーに取り付け、温度が測定温度で安定した後、上記の予熱時間、静置し、予熱をおこなった。予熱終了後、上記の条件で予備伸長をおこなった。予備伸長後、2分間静置し、予備伸長で生じた応力を緩和させ、測定した。
上記の粘弾性測定で得られた結果に基づき、横軸をヘンキーひずみとし、縦軸を伸長粘度としてプロットした両対数グラフを作成し、ヘンキーひずみが0.2〜0.5の範囲を線形領域として累乗近似の線形領域直線を作成した(例えば、図1の破線)。ひずみ硬化が起こると、この線形領域を外挿した近似直線の伸長粘度よりも、実際の伸長粘度が大きくなる。そして、同じヘンキーひずみにおける、非線形領域の伸長粘度と線形領域を外挿した近似直線の伸長粘度の差が非線形領域の伸長粘度の3%となる時のヘンキーひずみを、立ち上がりはじめひずみとした。また、最大立ち上がり比は、上記の粘弾性測定において伸長粘度が最大となる時のヘンキーひずみを最大立ち上がりひずみとして、(最大立ち上がりひずみにおける非線形領域の伸長粘度/最大立ち上がりひずみにおける線形領域を外挿した近似直線の伸長粘度)で算出した。
ISO10350に基づいて、板状押出発泡体の密度(発泡体密度)を測定した。なお、測定装置としては、島津製作所製の比重計(SGM−220−60測定器)を使用した。
発泡倍率は、上記で求めた発泡体密度の値(ρf)及びスチレン系共重合体の密度(ρ)を用いて、次式より算出した。
発泡倍率(倍)=ρ/ρf
まず、各例において得られる厚さ35mmの板状押出発泡体から、一辺が25mmの平面正方形状の試験片を5枚切り出した。なお、板状押出発泡体から試験片を切り出すにあたっては、板状押出発泡体の表面が試験片に含まれないように板状押出発泡体の内部から切り出すこととした。次いで、得られた2枚の試験片を厚み方向に複数枚重ね合わせて積層体を作製した。この積層体の見掛け体積V1をノギスで測定した。次に、上記積層体の体積V2を、ASTM D2856−87に準拠して1−1.34−1気圧法により測定し、下記式に基づいて独立気泡率を算出した。なお、積層体の体積V2は、カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン合同会社から市販されている全自動ピクノメーターUltraform1200eを用いて測定した。
独立気泡率(%)=100−100×(V1−V2)/V1
JIS K7220に準じた方法で、板状押出発泡体の圧縮強度を測定した。
本実施例で用いた共役ジビニル化合物1、5及び6は、下記の方法に基づいて製造した。
撹拌機、温度計及び還流冷却管を取り付けた容量5L容の反応容器内に、ポリブタジエン両末端アルコール(Mn:2300)2742g、アクリル酸メチル379g、n−ヘキサン380g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.8194g、及び4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル0.5533gを仕込んだ。得られた混合物を塩化カルシウム管内に通しながら、その混合物に空気を吹き込み、80〜85℃で還流脱水を行った。この混合物に含まれている水分をカールフィッシャー法により測定し、その含水量が200ppm以下であることを確認した。その後、エステル交換触媒として、テトラn−ブチルチタネート1.3685gを上記混合物に添加し、生成したメタノールをその共沸溶媒であるn−ヘキサンの還流下で反応系外に留去しながら、攪拌下で80〜85℃の反応温度で10時間反応させた。
ポリブタジエン両末端アルコールの分子量をMn:25000に変更した以外は同様の条件にて製造した共役ジビニル化合物5は、ポリブタジエン末端アクリレートの転化率が99.5%であった。また、GPCで測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は26000であった。
ポリブタジエン両末端アルコールの分子量をMn:57000に変更した以外は同様の条件にて製造した共役ジビニル化合物6は、ポリブタジエン末端アクリレートの転化率が99.2%であった。また、GPCで測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は58000であった。
(実施例1)
モノビニル化合物としてのスチレンを80質量部、エチルベンゼンを20質量部、共役ジビニル化合物1(ポリブタジエン末端アクリレート Mn:2300)を0.042質量部(スチレン1モルに対して2.4×10−5モル)、重合開始剤1として2,2−ビス(4,4−ジ−ターシャリー−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン(日油株式会社製:パーテトラA)を0.015質量部添加して、原料溶液を調製した。調製した原料溶液を、117℃の温度に保持した内容積6Lの完全混合型第1反応器に、0.91kg/時で連続的に供給した。次いで、第1反応器からの重合溶液を、原料溶液が通過する順番に、3ゾーンの温度をそれぞれ139℃、153℃、及び163℃の温度に保持した、内容積3Lのプラグフロー型第2反応器に供給した。ついで、第2反応器からの重合溶液を240℃の温度に加熱された真空脱気槽に供給し、未反応モノマーや溶媒などの揮発性成分を取り除き、72時間の連続運転後に、スチレン系共重合体を得た。
得られた実施例1のスチレン系共重合体の製造条件及び分析結果を、表1に示す。
実施例2〜8及び比較例1〜5は、表1に示すように条件を変更したこと以外は実施例1と同様にして行い、スチレン系共重合体のMw、Mz/Mw、分子量100万以上の割合、分子量200万以上の割合、立ち上がりはじめひずみ、及び最大立ち上がり比を、表1に示すように制御した。
共役ジビニル化合物2:ポリブタジエンジアクリレート(巴工業社製:CN307) Mn:3800
共役ジビニル化合物3:ポリブタジエン末端アクリレート(大阪有機化学工業社製:BAC‐45) Mn:4800
共役ジビニル化合物4:ウレタンアクリレートオリゴマー(巴工業社製:CN9014NS) Mn:8000
共役ジビニル化合物7:芳香族ウレタンアクリレート(巴工業社製:CN9782) Mn:5200
共役ジビニル化合物8:1,3−ブチレンジオールジメタクリレート(和光純薬工業株式会社製) 分子量:226
共役ジビニル化合物9:NKエステル A−GLY−20E(新中村化学工業株式会社製) 分子量:1295、共役ジビニル化合物9の1分子中の平均の共役ビニル基の数は3である。
共役ジビニル化合物10:ジビニルベンゼン(和光純薬工業社製) 分子量:130
重合開始剤2:1,1−ジ−(ターシャリー−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン(日油株式会社製:パーヘキサC)
また、モノビニル化合物に由来する単量体単位の総量1モルに対する共役ジビニル化合物に由来する単量体単位の割合が4.1×10−4モルと多い比較例2では、ARES−EVFによる粘弾性の測定において安定したデータを得ることができず、また、GPCの測定の際にTHF不溶分が多く測定することができず、さらにシートのゲル状物質が多かった。これらの理由により、比較例2では、スチレン系共重合体の板状押出発泡体を作製することができなかった。
また、共役ジビニル化合物の数平均分子量(Mn)を226と小さくし、立ち上がりはじめひずみを大きく、且つ最大立ち上がり比を小さく制御した比較例3では、発泡倍率は高いものの、独立気泡率及び圧縮強度はかなり低かった。
また、分子量200万以上の割合を6.39%と多くし、立ち上がりはじめひずみを大きく制御した比較例4では、ゲル状物質が多かった。これらの理由により、比較例4では、スチレン系共重合体の板状押出発泡体を作製することができなかった。
そして、共役ジビニル化合物の数平均分子量(Mn)を130と小さくした比較例5では、シートのゲル状物質が多かった。したがって、比較例5の板状押出発泡体は、独立気泡率、圧縮強度がかなり低かった。
Claims (5)
- スチレン系共重合体を含む厚み5mm以上100mm以下の板状押出発泡体であって、
前記スチレン系共重合体は、数平均分子量(Mn)が1000〜100000である共役ジビニル化合物と、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物との共重合体であり、前記共役ジビニル化合物に由来する単量体単位の割合が、前記モノビニル化合物に由来する単量体単位の総量1モルに対して3.3×10−6〜4.0×10−4モルであり、
前記スチレン系共重合体は、Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比が1.8〜5.0であり、分子量100万以上の割合が4.0%〜20.0%であり、且つ、分子量200万以上の割合が0.3%〜6.0%である、板状押出発泡体。 - 前記共役ジビニル化合物の数平均分子量(Mn)が2000〜30000である、請求項1に記載の板状押出発泡体。
- 前記共役ジビニル化合物が両末端共役ビニル化合物である、請求項1又は2に記載の板状押出発泡体。
- 前記共役ジビニル化合物が、(水添)ポリブタジエン末端(メタ)アクリレートである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の板状押出発泡体。
- 前記スチレン系共重合体の立ち上がりはじめひずみが0.2〜1.3であり、最大立ち上がり比が1.2〜4.0である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の板状押出発泡体。
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