JP2020161619A - 転写用基材 - Google Patents

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Abstract

【課題】パターンの転写時に、転写用基材が有する多孔質層と解離層が部分的に剥離して、被転写体が汚染されることが抑制された、転写用基材を提供する。【解決手段】パターンを一旦保持し、保持したパターンを被転写体に転写するために用いられる転写用基材であって、支持体上に少なくとも多孔質層と該多孔質層上に解離層を有し、該多孔質層がグリセリンおよびポリグリセリンから選択される少なくとも1種を含有する。【選択図】なし

Description

本発明は、基材上に保持されたパターンを被転写体へ転写するために用いられる転写用基材に関する。
印刷による導電性パターンの製造に関し、銀粉と樹脂バインダーおよび有機溶剤を含む高粘度の導電性樹脂ペーストを、スクリーン印刷方法等の高粘度ペーストに適した印刷方法を用い印刷する方法や、金属超微粒子を含むインクをインクジェット印刷により印刷する方法等が検討されている。
一方、近年では、特にスマートフォンに代表されるハンドヘルドタイプの電子機器の進展が著しく、コストダウンや機器の薄型化の要求が進む中、外装筐体への導電性パターン形成が求められている。しかし外装筐体そのものは基本的に立体物であり、先のスクリーン印刷やインクジェット印刷は平面を対象とする印刷方法であるため、立体物への印刷は困難であるという問題があった。
この問題を解決する方法として、既にインクジェット印刷においては、基材上にパターンをインクジェットプリンタで印刷した後、加熱・圧着することで、被転写体へパターンを転写する手法が知られている。例えば特開2007−313847号公報(特許文献1)には、基材となるフィルム上に平均粒子径が300nm以下の無機粒子及び該無機粒子に対して、バインダーを5〜50質量%含有するインク受容層を有し、さらに、その上にガラス転移点が0〜50℃の熱可塑性樹脂からなる接着剤層を有するインクジェット記録用インク受容層転写シートが開示されている。しかしながら、仮に該転写シートを導電性パターンの転写に用いても、導電性パターンと共にインク受容層が転写されてしまい、転写されたインク受容層が導電性パターン表面を覆ってしまうため、他の部材と電気的な接続を行うことができず、導電性パターンとして利用することは困難であった。
また特開2010−135692号公報(特許文献2)には、離型性耐熱基板上に、平均粒子径が1〜100nmの導電性金属系粒子を含む分散液をインクジェット記録方式で印刷し、焼成することにより形成された幅200μm以下の配線からなる配線回路を有する転写用配線回路板を用い、支持基材の少なくとも一方の面に、該転写用配線回路板における配線回路を、粘着剤層を介して転写してなる配線回路部材が開示されているが、離型性耐熱基板はインク受容層を有さないため、該分散液をはじきやすく、パターン形成が難しいという課題があった。
一方、特開2008−4375号公報(特許文献3)には、無機微粒子と無機微粒子に対し80質量%以下のバインダーからなる多孔質層をインク受容層として有する基材が開示されているが、該基材をパターン転写用基材として用い、粘着面として、例えば粘着剤層を有する被転写体への導電性パターンの転写を試みた場合、粘着剤が多孔質層に吸着し非常に強固に粘着するため、粘着剤層を剥がすことができない、あるいは剥がした際に粘着剤層に多孔質層が結着してしまい、上手く転写することは困難であった。
上記した課題を解決し、かつ電気的な接続を得られる形で導電性パターンを転写可能な転写用基材として、例えば特開2014−192275号公報(特許文献4)には、支持体上にインク受容層となる多孔質層と、該多孔質層上にコロイダルシリカを主成分とする層を有する転写用基材が開示されている。しかしながら被転写体より転写用基材を剥離する際に、多孔質層とコロイダルシリカを主成分とする層が支持体より部分的に剥離して被転写体へ転写され、被転写体が汚染される場合があり、改善が求められていた。
特開2007−313847号公報 特開2010−135692号公報 特開2008−4375号公報 特開2014−192275号公報
本発明の目的は、パターンの転写時に、転写用基材が有する多孔質層と解離層が部分的に剥離して転写体へ転写され、被転写体が汚染されることが抑制された、転写用基材を提供するものである。
本発明の上記目的は、以下の発明によって基本的に達成された。
パターンを一旦保持し、保持したパターンを被転写体に転写するために用いられる転写用基材であって、支持体上に少なくとも多孔質層と該多孔質層上に解離層を有し、該多孔質層がグリセリンおよびポリグリセリンから選択される少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする転写用基材。
本発明によれば、パターンの転写時に、転写用基材が有する多孔質層と解離層が部分的に剥離して転写体へ転写され、被転写体が汚染されることが抑制された、転写用基材を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における転写用基材とは、導電性微粒子を含むインクに代表される顔料インクによって形成されたパターンを一旦保持し、次いで粘着性を有する被転写体に該パターンを転写する用途に供する基材である。また該顔料成分を含むペーストにより形成されたパターンを一旦保持し、次いで粘着性を有する被転写体に該パターンを転写する用途に供する基材である。
本発明における粘着性を有する被転写体とは、転写時に粘着性を有することが必要であり、例えばアクリルやシリコーンなどの粘着剤が塗布された粘着テープ、あるいは立体成形加工されたシリコーンゴム等のように、常温で粘着性を有するフィルムや成型物が例示される。また、例えばホットメルトフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムあるいは射出成形や3Dプリント造型により立体成型加工された熱可塑性樹脂等のように、常温では粘着性を有さないが加熱により粘着性を有するフィルムや成型物が例示される。他にも、例えばエポキシ樹脂シート等の熱硬化性樹脂で形成されたフィルムあるいは炭素繊維強化樹脂成型用プリプレグ等のように、常温で粘着性を有するが加熱により粘着性を失うフィルムや成型物、例えばポリイミドカバーレイフィルム等の熱硬化性樹脂が塗布されたフィルムあるいはガラスエポキシプリプレグ等のBステージシート状成型物等のように、常温では粘着性を有さないが加熱により粘着性を有し、更なる加熱により硬化するフィルムあるいは成型物である。また、例えばUV剥離(硬化)テープ等のように、常温で粘着性を有するが電子線(EB)や紫外線等の活性エネルギー線の照射により粘着性を失う紫外線硬化樹脂が塗布されたフィルムあるいは成型物等が例示される。
本発明の転写用基材が有する支持体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートに代表されるアクリル樹脂、セロファン、ナイロン、ポリスチレン系樹脂、ABS樹脂等の各種樹脂からなるフィルム、石英ガラス、無アルカリガラス、結晶化透明ガラス、耐熱ガラス等の各種ガラス、紙、不織布、布、各種金属、各種セラミックス等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また用途に応じこれら支持体を適宜組み合わせることができ、例えば、紙をポリオレフィン樹脂で積層したポリオレフィン樹脂被覆紙を用いることができる。
これらの中でもコスト、汎用性の観点から、紙、ポリオレフィン樹脂被覆紙、およびポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネートから選択されるフィルムが好ましい。
また、上記した支持体の中でも、各種樹脂からなるフィルム、各種ガラス、ポリオレフィン樹脂被覆紙等の非吸液性支持体を用いる場合には、非吸液性支持体と多孔質層との接着性を改善するために、支持体と多孔質層との間に、ゼラチンや各種ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール等を含有する公知の下塗層を設けることが好ましい。また、例えばポリエチレンテレフタレートフィルムでは易接着処理品が市販されており、これを用いても良い。また、コロナ処理あるいはプラズマ処理により支持体の濡れ性を改善することも好ましい。
上記した下塗層の固形分塗布量としては、0.5g/m以下であることが好ましく、より好ましくは0.3g/m以下、更に好ましくは0.1g/m以下である。下限は0.01g/m以上であることが望ましい。
本発明において転写用基材が有する多孔質層は、画像パターンを形成するために用いられる顔料インクや、導電性微粒子を含むインクあるいはペーストが含有する水あるいは有機溶剤といった溶媒成分を吸収する機能を担う。
本発明において転写用基材が有する多孔質層は、微粒子を主体に含有する層であることが溶媒成分の吸収性の観点から好ましい。微粒子を主体に含有するとは、多孔質層の全固形分中に占める微粒子の割合が50質量%以上であることを意味し、好ましくは70質量%以上である。多孔質層が含有する微粒子としては、公知の微粒子を広く用いることができる。例えば軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、非晶質合成シリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、アルミナ水和物、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、水酸化マグネシウム等の無機微粒子、アクリルあるいはメタクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、スチレン/ブタジエン系樹脂、スチレン/イソプレン系樹脂、メチルメタクリレート/ブチルメタクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シリコーン系樹脂、尿素樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂等の有機微粒子が挙げられる。有機微粒子は上記した少なくとも1種以上の樹脂からなる真球状あるいは不定型の無孔質あるいは多孔質の有機微粒子等を挙げることができる。無論、上記した無機微粒子の1種以上と有機微粒子の1種以上を共に含有することもできる。上記の中でも、溶媒成分の吸収性の観点からは無機微粒子を含有することが好ましく、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、非晶質合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物がより好ましく、非晶質合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物が特に好ましい。また、本発明の転写用基材に可撓性が要求される場合には、アルミナ水和物を含有することが好適である。
非晶質合成シリカは、製造法によって湿式法シリカ、気相法シリカ及びその他に大別することができる。
湿式法シリカは、更に製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。沈降法シリカは珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の工程を経て製品化される。沈降法シリカとしては、例えば東ソー・シリカ(株)からニップシール(登録商標)として、丸尾カルシウム(株)からトクシール(登録商標)、ファインシール(登録商標)として、水澤化学工業(株)からミズカシル(登録商標)として市販されている。ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。熟成中に微小粒子は溶解し、他の一次粒子同士を結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。例えば、東ソー・シリカ(株)からニップゲル(登録商標)として、GCPジャパン(株)からシロイド(登録商標)、シロジェット(登録商標)として、水澤化学工業(株)からミズカシルとして市販されている。本発明において多孔質層が含有する湿式法シリカとしては、沈降法シリカあるいはゲル法シリカを用いることが好ましく、沈降法シリカがより好ましい。
湿式法シリカ粒子としては、平均一次粒子径が50nm以下、好ましくは3〜40nmであり、かつ平均凝集粒子径が1〜50μmである湿式法シリカ粒子が好ましい。また平均凝集粒子径が5〜50μmである湿式法シリカ粒子を、平均二次粒子径が500nm以下に分散することがより好ましい。分散された湿式法シリカの平均二次粒子径は、より好ましくは10〜300nm、更に好ましくは20〜200nmである。分散方法としては、水性媒体中に分散した湿式法シリカを機械的に粉砕する湿式分散法が好ましく使用され、これにはビーズミルなどのメディアミルを用いることが好ましい。ビーズミルは密閉されたベッセル内に充填されたビーズとの衝突により顔料粉砕を行うものであり、ウィリー・エ・バッコーフェン社よりダイノーミルとして、浅田鉄工(株)よりグレンミル(登録商標)として、アシザワ・ファインテック(株)よりスターミル(登録商標)として市販されている。メディアミル等を用いて分散した後、更に高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を用いて分散することが好ましい。
ここで、本発明でいう平均一次粒子径とは、微粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の一次粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子径として平均粒子径を求めたものである。また平均二次粒子径とは、透過型電子顕微鏡による写真撮影で求めることができるが、簡易的にはレーザー散乱式の粒度分布計(例えば、(株)堀場製作所製、LA910)を用いて、個数メジアン径として測定することができる。また、平均凝集粒子径とは、粉体として供給される湿式シリカの平均粒子径を示し、例えばコールターカウンター法で求めることができる。
気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは日本アエロジル(株)からアエロジル(登録商標)、(株)トクヤマからレオロシール(登録商標)として市販されている。
本発明において多孔質層が含有する気相法シリカの平均一次粒子径は40nm以下が好ましく、15nm以下がより好ましい。更に好ましくは平均一次粒子径が3〜15nmでかつBET法による比表面積が200m/g以上(好ましくは250〜500m/g)のものを用いることである。
本発明でいうBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて表面積が得られる。
気相法シリカを用いた場合においても、湿式法シリカと同様に、平均二次粒子径500nm以下に分散することが好ましい。分散された気相法シリカの平均二次粒子径は、より好ましくは10〜300nm、更に好ましくは20〜200nmである。分散方法としては、通常のプロペラ撹拌、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌等で気相法シリカと水を主体とする分散媒を予備混合し、次にボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を使用して分散を行うことが好ましい。
本発明では、該多孔質層は支持体上に前述した微粒子を含む塗布液を塗布、乾燥して形成することが簡便であり、好ましい。よってかかる塗布液を調製するにあたり、平均二次粒子径500nm以下の湿式法シリカあるいは気相法シリカのスラリーを製造することは好ましく、該スラリーの製造にあたりスラリーの高濃度化や分散安定性を向上させるため、公知の種々の方法を用いても良い。例えば、特開2002−144701号公報、特開2005−1117号公報に記載されているが如くアルカリ性化合物の存在下で分散する方法、カチオン性化合物の存在下で分散する方法、シランカップリング剤存在下で分散する方法等を挙げることができ、カチオン性化合物の存在下で分散する方法がより好ましい。
上記湿式法シリカあるいは気相法シリカの分散に使用するカチオン性化合物としては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ジアリルアミン誘導体由来の構造単位を有する重合物、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、1〜3級アミノ基や4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。特にジアリルアミン誘導体由来の構造単位を有する重合物が好ましく用いられる。分散性および分散液粘度の面で、これらのカチオンポリマーの分子量は、2,000〜10万程度が好ましく、特に2,000〜3万程度が好ましい。
本発明において多孔質層が好ましく含有するアルミナとしては、酸化アルミニウムのγ型結晶であるγ−アルミナが好ましく、中でもδグループ結晶が好ましい。γ−アルミナは一次粒子を10nm程度まで小さくすることが可能であるが、通常は数千から数万nmの二次粒子結晶を超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で平均二次粒子径を好ましくは500nm以下、より好ましくは20〜300nm程度まで粉砕したものが使用できる。
本発明において多孔質層が好ましく含有するアルミナ水和物はAl・nHO(n=1〜3)の構成式で表される。アルミナ水和物は、一般にアルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られる。アルミナ水和物の平均二次粒子径は好ましくは500nm以下、より好ましくは20〜300nmである。
本発明において多孔質層が好ましく含有する上記のアルミナ、及びアルミナ水和物は、酢酸、乳酸、ぎ酸、硝酸等の公知の分散剤によって分散された分散液の形態から使用される。
本発明において、多孔質層は上記した微粒子と共に樹脂バインダーを含有することが好ましく、該樹脂バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、シラノール変性、シリル変性、カチオン性基変性、ジアセトンアクリルアミド変性、アセトアセチル変性などの各種変性ポリビニルアルコール、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白などの天然高分子、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系共重合体ラテックス、あるいはこれらの各種重合体のカルボキシル基などの官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックスなどのラテックス類、メラミン樹脂、尿素樹脂などの熱硬化性合成樹脂系接着剤、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂などの合成樹脂系接着剤等を挙げることができ、これらを単独あるいは混合して用いることができる。この他、公知の天然、あるいは合成樹脂バインダーを単独であるいは混合して用いることは特に限定されない。
これらの内、好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分ケン化または完全ケン化したポリビニルアルコールあるいはシラノール変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコールの平均重合度は200〜5000であることが好ましい。
微粒子に対する樹脂バインダーの含有量は特に限定されないが、微粒子を用い多孔質層を形成するためには、樹脂バインダーの含有量は、微粒子に対して8〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは8〜50質量%の範囲である。
また多孔質層は、上記した多孔質層を構成する上記樹脂バインダーと共に必要に応じ硬膜剤を含有することもできる。硬膜剤の具体的な例としては、グリオキシル酸ナトリウム、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキザール、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル)尿素、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、塩化ジルコニウム、臭化ジルコニウム、チタンアセチルアセテートの如き多価金属化合物、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミンの如きアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントインの如きヒドラジン化合物、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、ホウ砂、ホウ酸、ホウ酸塩類の如き無機架橋剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。硬膜剤の含有量は特に限定されないが、樹脂バインダーに対して、50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以下である。下限は0.1質量%以上であることが好ましい。
樹脂バインダーとしてケン化度が80%以上の部分ケン化または完全ケン化したポリビニルアルコールあるいはシラノール変性ポリビニルアルコールを用いる場合、硬膜剤はホウ砂、ホウ酸、ホウ酸塩類が好ましく、ホウ酸が特に好ましく、使用量はポリビニルアルコールに対し、40質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以下であり、特に好ましくは20質量%以下である。下限は0.1質量%以上であることが好ましい。
その他、多孔質層には必要に応じ、防腐剤、界面活性剤、着色染料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、微粒子の分散剤、消泡剤、レベリング剤、粘度安定剤、pH調節剤などを含有することができる。
多孔質層は2層以上から構成されていてもよく、この場合、それらの多孔質層の構成はお互いに同じであっても異なっていても良い。例えば湿式法シリカを含有する多孔質層の上に、アルミナ水和物を含有する多孔質層が形成されていても良い。
多孔質層の層厚(乾燥時)は、一般に1〜100μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。多孔質層の固形分塗布量としては、無機微粒子の固形分量で1〜80g/mが好ましく、4〜40g/mがより好ましい。
多孔質層は、微粒子と樹脂バインダー、硬膜剤等を適当な溶媒に溶解または分散させて多孔質層塗布液を調製し、該多孔質層塗布液をスライドカーテン方式、スライドビード方式、スロットダイ方式、ダイレクトグラビアロール方式、リバースグラビアロール方式、スプレー方式、エアナイフ方式、ブレードコーティング方式、ロッドバーコーティング方式、スピンコート方式等による塗布、スクリーン印刷、インクジェット印刷、ディスペンサー印刷、オフセット印刷、反転オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷等、公知の各種塗布あるいは印刷方法を利用して、支持体表面の全面、あるいは必要とされる部位への選択的な塗布を行い、形成することができる。また、塗布を行った後、鏡面ロールに圧接するキャスト処理を行い表面を平滑にすることや、カレンダー処理を行い、表面を平滑にすることもできる。
本発明における転写用基材は、上記した多孔質層上に解離層を有する。解離層とは、パターンを被転写体へ転写する際に多孔質層とパターンを分離する層であり、溶融あるいは粘着性を示さない層であることが好ましく、解離層は無機微粒子および/または有機微粒子を含有することが好ましい。無機微粒子および/または有機微粒子の含有量は93質量%以上であることが好ましく、より好ましくは98質量%以上である。
本発明において解離層が含有する無機微粒子としては、公知の無機微粒子を広く用いることができる。例えば炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、非晶質合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化錫等の無機微粒子を例示することができ、これらを2種以上併用してもよい。
解離層が含有する無機微粒子の平均一次粒子径は10〜200nmであることが好ましく、20nm〜150nmがより好ましい。平均一次粒子径が10nm未満であると多孔質層の空隙を塞ぎ吸収性が低下する場合がある。平均一次粒子径が200nmを超えると、解離層を形成する際に使用される塗布液において、無機微粒子が沈降し塗布に支障をきたす場合がある。
本発明において解離層が含有する無機微粒子としてコロイド状態にある無機微粒子分散液を用いることが好ましく、例えば、コロイド状シリカであるコロイダルシリカ、酸化チタンゾル、アルミナゾル、酸化セリウムゾル、酸化ジルコニウムゾル、酸化ニオブゾル等を挙げることができ、特にコロイダルシリカを用いることが好ましい。酸化チタンゾルは、例えば多木化学(株)よりタイノック(登録商標)として、酸化ジルコニウムゾルは、例えば第一稀元素化学工業(株)よりZSL−20N、ナイヤコール社(米国)よりZr100/20として、酸化セリウムゾルは、例えばナイヤコール社(米国)よりCEO2(AC)として、アルミナゾル、酸化ニオブゾルは、例えば多木化学(株)よりバイラール(登録商標)として市販されている。
コロイダルシリカとしては、シリカゾルから弱アルカリ性下で粒子成長させたそのままのタイプ、イオン交換によりアルカリを減量したタイプ、格子の珪素原子の一部をアルミニウム原子に置換してアニオン性を強化したタイプ、アルミナ表面処理によりカチオン性にしたタイプ、アルコキシシランを原料にゾルゲル法で合成されたタイプ等が例示されるが何れも使用可能である。コロイダルシリカはアルカリに若干溶解するのでアルカリが残っている方が結着力の面で有利と考えられるが、イオン交換したタイプでも実用上問題なく使用できる。これらコロイダルシリカは、例えば日産化学工業(株)よりスノーテックス、扶桑化学工業(株)よりクォートロン(登録商標)として市販されている。
本発明において解離層が含有する有機微粒子としては、公知の有機微粒子を広く用いることができる。例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ナイロン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、アセタール樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の有機微粒子を例示することができ、これらを2種以上併用してもよい。
解離層が含有する有機微粒子の平均一次粒子径は10〜500nmであることが好ましく、20〜400nmがより好ましい。平均一次粒子径が10nm未満であると多孔質層の空隙を塞ぎ吸収性が低下する場合がある。平均一次粒子径が500nmを超えると、解離層を形成する際に使用される塗布液において、有機微粒子が沈降し塗布に支障をきたす場合がある。
このような有機微粒子として、ポリアミドイミド樹脂は、例えば東レ(株)よりトレパール(登録商標)PAIとして、ポリエーテルスルホン樹脂は、例えば東レ(株)よりトレパールPESとして、フッ素樹脂は、例えば三井・ケマーズ フロロプロダクツ(株)より31−JR、ダイキン工業(株)よりD−210Cとして市販されている。
本発明における解離層は、上記した無機微粒子の1種以上と有機微粒子の1種以上を併用して用いることもできる。無機微粒子と有機微粒子の体積比率としては、1:9から9:1の範囲が好ましい。得られる導電性部材の導電性の観点からは無機微粒子を用いることが好ましい。
本発明において解離層に含まれる無機微粒子および/または有機微粒子以外の成分としては、樹脂バインダーとしての例えばポリビニルアルコールなどの水溶性樹脂やラテックス類、樹脂バインダーの硬膜剤、界面活性剤等を挙げることができる。
本発明において解離層の固形分塗布量は、0.01g/m以上であることが好ましく、0.1g/m以上がより好ましい。固形分塗布量が0.01g/m未満であると、被転写体へ多孔質層が転写されてしまうことがある。解離層の固形分塗布量の上限は特にないが、10g/mを超えると無機微粒子および/または有機微粒子を主成分とする解離層に亀裂の入る可能性が高くなるため、好ましくない。よって上限は10g/m未満であることが好ましい。
解離層の塗布液は、スライドカーテン方式、スライドビード方式、スロットダイ方式、ダイレクトグラビアロール方式、リバースグラビアロール方式、スプレー方式、エアナイフ方式、ブレードコーティング方式、ロッドバーコーティング方式、スピンコート方式、インクジェット方式等による塗布、スクリーン印刷、インクジェット印刷、ディスペンサー印刷、オフセット印刷、反転オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷等による印刷等、公知の各種塗布あるいは印刷方法を利用して、予め支持体上に作製された多孔質層表面の全面、あるいは必要とされる部位への選択的な塗布を行い、解離層を形成することができる。特に好ましくは、リバースグラビアロール方式の中でも、ロールの直径が100mm以下(より好ましくは20〜80mm)の斜線グラビアロール(斜線の溝を有するグラビアロール)を用いる方式である。
本発明の転写用基材における解離層の塗布液の溶剤あるいは分散媒が主に水である場合には、多層スライドカーテン方式、多層スライドビード方式、多層スロットダイ方式等の多層同時塗布が可能な塗布方式を用い、多孔質層と解離層を同時に塗布しても良い。また、支持体が搬送されるライン上に複数の塗布装置が設置されるタンデム型の多層塗布装置を用いても良い。
本発明の転写用基材に形成されるパターンは、顔料インクにより形成されることが簡便であり好ましい。画像の形成には、例えば市販の顔料インクを搭載したインクジェットプリンタを用いることができる。
本発明の転写用基材に形成されるパターンを構成する顔料インクあるいはペーストとして、導電性微粒子を含むインクあるいはペーストが例示される。本発明に用いられる導電性微粒子を含むインクあるいはペーストには、公知のインクあるいはペーストを広く用いることができ、銀ナノインク、銅ナノインク、銀ペースト、銅ペースト、アルミペースト、カーボンインク、カーボンペースト等を例示することができる。導電性に優れ、形成された導電性パターンが酸化されにくい点から、銀超微粒子を含有する銀ナノインクや、銀微粒子を含有する銀ペーストを用いることが好ましく、厚み1μm程度の非常に薄い導電性パターンを形成できる点から、銀ナノインクを用いることが特に好ましい。銀ナノインクは、例えば三菱製紙(株)よりNBSIJシリーズとして市販されており、銀ペーストは、例えば藤倉化成(株)よりドータイト(登録商標)シリーズとして市販されている。
本発明において、導電性微粒子を含むインクあるいはペーストは、様々な印刷方法あるいは塗布方式によりパターン形成される。例えば線状の塗布を行うことができるディスペンサー印刷方法を用いたパターン形成、サーマル、ピエゾ、マイクロポンプ、静電気等の各種方式のインクジェット印刷方法を用いたパターン形成、凸版印刷方法、フレキソ印刷方法、平版印刷方法、凹版印刷方法、グラビア印刷方法、反転オフセット印刷方法、枚葉スクリーン印刷方法、ロータリースクリーン印刷方法等の公知の各種印刷方法によるパターンを例示することができる。また、グラビアロール方式、スロットダイ方式、スピンコート方式等、公知の各種塗布方式を用い、転写用基材が有する解離層の全面あるいは一部に連続した面としてパターンを形成すること、間欠塗工ダイコーター等を用い転写用基材が有する解離層の全面あるいは一部に断続した面としてパターンを形成すること、あるいは浸漬塗布方法(ディップ方式とも言われる)を用い、転写用基材が有する解離層全体に導電性微粒子を含むインクあるいはペーストを付着させることもできる。より好ましい印刷方法としては、インクジェット印刷方法、フレキソ印刷方法、グラビア印刷方法、反転オフセット印刷方法、枚葉スクリーン印刷方法、ロータリースクリーン印刷方法を挙げることができる。
これらの方法によりパターン化された導電性微粒子を含むインクあるいはペーストは、含まれている分散媒を揮散させた後、および/または分散媒を多孔質層が吸収した後、加熱により硬化あるいは焼成し導電性パターンとしても良いが、主に銀からなる金属超微粒子を含むインクを用い、特開2008−4375号公報、特開2008−235224号公報等に記載される導電性発現剤を多孔質層および/または解離層に含有させ、化学的な作用により金属超微粒子同士を結合し導電性パターンとすることが好ましい。化学的な作用により金属超微粒子同士を結合させた場合、得られる導電性パターンは多孔質となるため、被転写体表面の粘着性を有する樹脂成分が導電性パターン内部へ拡散し、被転写体との間に高い密着力を得ることができる。かかる導電性発現剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウムを例示することができる。
本発明において、転写用基材上に形成され保持されたパターンは粘着性を有する被転写体へ転写される。転写は、パターンが形成・保持されている転写用基材のパターンが形成された面と、粘着性を有する被転写体を粘着性が発現している状態で貼合し、その後これらを剥離することによってなされる。
なお本発明における常温とはJIS Z 8703に記載される温度範囲、具体的には5〜35℃を示す。
本発明における被転写体にパターンを転写する工程について説明する。被転写体は粘着性を有する被転写体であり、常温あるいは加熱により粘着性が発現している状態でパターンの転写が行われる。転写は転写用基材と被転写体を貼合し剥離することにより行われる。例えば被転写体が立体物である場合には被転写体に転写用基材を貼合し剥離することにより行われ、例えばプリプレグ等のシート状物であればロールラミネーターを使用したラミネート法により導電性パターンを被転写体に圧着、剥離する方法が好ましい。
本発明において被転写体の粘着力は、JIS Z 0237に準じ剥離角度180度にて測定され、幅25mmあたりの粘着力(N/25mm)として示される。本発明において、常温で粘着性を有する被転写体の好ましい粘着力は、0.1〜20N/25mmであり、より好ましくは0.2〜10N/25mmである。粘着力が0.1N/25mm未満では、導電性パターンの転写を行うことができない場合があり、20N/25mmを超えると、転写用基材の剥離が困難となる場合がある。従って、本発明において粘着性を有さないとは、粘着力が0.1N/25mm未満であることをいう。
本発明において、パターンの転写時に、転写用基材の支持体上に形成された多孔質層と解離層が支持体より部分的に剥離し被転写体へ転写され、被転写体が汚染されるとは、パターンを転写する工程中の転写用基材の剥離時において、パターンのみならず、転写用基材の支持体上に形成された多孔質層が支持体より部分的に剥がれ、剥がれた多孔質層がその上に形成されている解離層と共に被転写体へ転写され、被転写体に付着し、汚染されることをいう。
本発明では、グリセリンおよびポリグリセリンから選択される少なくとも1種の化合物を多孔質層へ含有せしめることにより、転写用基材の支持体上に形成された多孔質層が支持体より部分的に剥がれることを抑制することが可能となった。ポリグリセリンとは複数のグリセリンが重合した構造を持つ化合物であり、阪本薬品工業(株)より、重合度2のポリグリセリン(ジグリセリン)としてジグリセリンS、重合度4のポリグリセリンとしてポリグリセリン#310、重合度6のポリグリセリンとしてポリグリセリン#500、重合度10のポリグリセリンとしてポリグリセリン#750が市販されている。また(株)ダイセルより、重合度3のポリグリセリン(トリグリセリン)としてポリグリセリン03P(PGL03P)、重合度6のポリグリセリンとしてポリグリセリン06(PGL06)、重合度10のポリグリセリンとしてポリグリセリン10PSW(PGL10PSW)、重合度20のポリグリセリンとしてポリグリセリン20PW(PGL20PW)、重合度40のポリグリセリンとしてポリグリセリンXPW(PGLXPW)が市販されているので、これらを入手し利用することができる。
グリセリンおよびポリグリセリンから選択される少なくとも1種の化合物の含有量は、該多孔質層の固形分塗布量に対し、2.5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは7.5質量%以上であり、12.5質量%以上であることが特に好ましい。上限は特に定めないが、溶媒成分の吸収性の観点から30質量%以下であることが好ましい。
グリセリンおよびポリグリセリンから選択される少なくとも1種の化合物を多孔質層へ含有せしめる方法として、多孔質層の形成塗布液に含ませ塗布・乾燥する方法、予め支持体上に作製された多孔質層の上に水溶液として塗布・乾燥する方法、予め支持体上に作製された多孔質層の上に塗布される解離層の形成塗布液に含ませ塗布・乾燥する方法等を例示することができる。
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
(実施例1)
水に硝酸(2.5部)とアルミナ水和物(平均一次粒子径15nm)を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機を用いて、固形分濃度30質量%の無機微粒子分散液を得た。無機微粒子分散液中に分散しているアルミナ水和物の平均二次粒子径は160nmであった。この無機微粒子分散液を用い、下記組成の多孔質層塗布液1を作製した。
<多孔質層塗布液1>
無機微粒子分散液 (アルミナ水和物固形分として)100質量部
ポリビニルアルコール 9質量部
(ケン化度88%、平均重合度3,500、分子量約150,000)
ホウ酸 0.4質量部
ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル) 0.3質量部
ジグリセリン 6.0質量部
(阪本薬品工業(株)製ジグリセリンS、
グリセリン0.9質量%、ジグリセリン95.4質量%)
水以外の成分濃度が17質量%になるように水で調整した。
支持体として、易接着処理がなされた厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人フィルムソリューション(株)製)を用い、該支持体上に前述した多孔質層形成塗布液1を乾燥後質量として34.5g/mとなるようにスライドビード方式にて塗布を行い、乾燥機により乾燥し、多孔質層1を形成した。多孔質層1は多孔質層の全固形分量に対してグリセリンとジグリセリンを合計量として5質量%含有していた。
このようにして得た多孔質層1上に、下記組成の導電性発現剤塗布液を、斜線グラビアロールを用いた塗布方式にて塗布を行い、乾燥機により乾燥した。ここで用いた斜線グラビアロールは、直径60mm、斜線角度45度、線数90線/インチ、溝深さ110μmのグラビアロールであり、多孔質層の搬送方向に対して該グラビアロールをリバース回転で用いた。導電性発現剤塗布液の湿分塗布量は、斜線グラビアロールの回転数を調整し20g/mに設定した。
<導電性発現剤塗布液>
塩化ナトリウム 0.6質量部
水 99.4質量部
更に下記組成の解離層塗布液1を、前述した導電性発現剤塗布液の塗布と同様にして多孔質層1上に塗布を行い、乾燥機により乾燥し、転写用基材1を得た。解離層塗布液1の湿分塗布量は、斜線グラビアロールの回転数を調整し20g/mに設定した。多孔質層1上に形成された解離層の固形分塗布量は0.6g/mであった。
<解離層塗布液1>
コロイダルシリカ20質量%スラリー 15質量部
(扶桑化学工業(株)製クォートロンPL−3L、平均一次粒子径35nm)
水 85質量部
(実施例2)
実施例1の多孔質層塗布液1を下記組成の多孔質層塗布液2に変更し、乾燥後質量として36.5g/mとなるよう塗布を行い多孔質層2を形成した以外は実施例1と同様にして、転写用基材2を得た。多孔質層2は多孔質層の全固形分量に対してグリセリンとジグリセリンを合計量として10質量%含有していた。
<多孔質層塗布液2>
無機微粒子分散液 (アルミナ水和物固形分として)100質量部
ポリビニルアルコール 9質量部
(ケン化度88%、平均重合度3,500、分子量約150,000)
ホウ酸 0.4質量部
ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル) 0.3質量部
ジグリセリン(阪本薬品工業(株)製ジグリセリンS) 12.7質量部
水以外の成分濃度が18質量%になるように水で調整した。
(実施例3)
実施例1の多孔質層塗布液1を下記組成の多孔質層塗布液3に変更し、乾燥後質量として38.6g/mとなるよう塗布を行い多孔質層3を形成した以外は実施例1と同様にして、転写用基材3を得た。多孔質層3は多孔質層の全固形分量に対してグリセリンとジグリセリンを合計量として15質量%含有していた。
<多孔質層塗布液3>
無機微粒子分散液 (アルミナ水和物固形分として)100質量部
ポリビニルアルコール 9質量部
(ケン化度88%、平均重合度3,500、分子量約150,000)
ホウ酸 0.4質量部
ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル) 0.3質量部
ジグリセリン(阪本薬品工業(株)製ジグリセリンS) 20.1質量部
水以外の成分濃度が19質量%になるように水で調整した。
(実施例4)
実施例1の多孔質層塗布液1を下記組成の多孔質層塗布液4に変更し、乾燥後質量として41.0g/mとなるよう塗布を行い多孔質層4を形成した以外は実施例1と同様にして、転写用基材4を得た。多孔質層4は多孔質層の全固形分量に対してグリセリンとジグリセリンを合計量として20質量%含有していた。
<多孔質層塗布液4>
無機微粒子分散液 (アルミナ水和物固形分として)100質量部
ポリビニルアルコール 9質量部
(ケン化度88%、平均重合度3,500、分子量約150,000)
ホウ酸 0.4質量部
ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル) 0.3質量部
ジグリセリン(阪本薬品工業(株)製ジグリセリンS) 28.5質量部
水以外の成分濃度が20質量%になるように水で調整した。
(実施例5)
実施例1の多孔質層塗布液1を下記組成の多孔質層塗布液5に変更し、乾燥後質量として38.6g/mとなるよう塗布を行い多孔質層5を形成した以外は実施例1と同様にして、転写用基材5を得た。多孔質層5は多孔質層の全固形分量に対してグリセリンを15質量%含有していた。
<多孔質層塗布液5>
無機微粒子分散液 (アルミナ水和物固形分として)100質量部
ポリビニルアルコール 9質量部
(ケン化度88%、平均重合度3,500、分子量約150,000)
ホウ酸 0.4質量部
ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル) 0.3質量部
グリセリン(昭和化学(株)製グリセリン、グリセリン95質量%) 20.4質量部
水以外の成分濃度が19質量%になるように水で調整した。
(実施例6)
実施例1の多孔質層塗布液1を下記組成の多孔質層塗布液6に変更し、乾燥後質量として38.6g/mとなるよう塗布を行い多孔質層6を形成した以外は実施例1と同様にして、転写用基材6を得た。多孔質層6は多孔質層の全固形分量に対してグリセリンとポリグリセリンを合計量として15質量%含有していた。
<多孔質層塗布液6>
無機微粒子分散液 (アルミナ水和物固形分として)100質量部
ポリビニルアルコール 9質量部
(ケン化度88%、平均重合度3,500、分子量約150,000)
ホウ酸 0.4質量部
ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル) 0.3質量部
ポリグリセリン(重合度4) 20.5質量部
(阪本薬品工業(株)製ポリグリセリン#310、
グリセリン7.3質量%、ポリグリセリン87.2質量%)
水以外の成分濃度が19質量%になるように水で調整した。
(実施例7)
実施例1の多孔質層塗布液1を下記組成の多孔質層塗布液7に変更し、乾燥後質量として38.6g/mとなるよう塗布を行い多孔質層7を形成した以外は実施例1と同様にして、転写用基材7を得た。多孔質層7は多孔質層の全固形分量に対してグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンを合計量として15質量%含有していた。
<多孔質層塗布液7>
無機微粒子分散液 (アルミナ水和物固形分として)100質量部
ポリビニルアルコール 9質量部
(ケン化度88%、平均重合度3,500、分子量約150,000)
ホウ酸 0.4質量部
ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル) 0.3質量部
ポリグリセリン(重合度6) 21.5質量部
(阪本薬品工業(株)製ポリグリセリン#500、
グリセリン0.1質量%、ジグリセリン3.6質量%、ポリグリセリン86.2質量%)
水以外の成分濃度が19質量%になるように水で調整した。
(実施例8)
実施例1の多孔質層塗布液1を下記組成の多孔質層塗布液8に変更し、乾燥後質量として38.6g/mとなるよう塗布を行い多孔質層8を形成した以外は実施例1と同様にして、転写用基材8を得た。多孔質層8は多孔質層の全固形分量に対してグリセリンとポリグリセリンを合計量として15質量%含有していた。
<多孔質層塗布液8>
無機微粒子分散液 (アルミナ水和物固形分として)100質量部
ポリビニルアルコール 9質量部
(ケン化度88%、平均重合度3,500、分子量約150,000)
ホウ酸 0.4質量部
ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル) 0.3質量部
ポリグリセリン(重合度10) 21.5質量部
(阪本薬品工業(株)製ポリグリセリン#750、
グリセリン1.1質量%、ポリグリセリン88.9質量%)
水以外の成分濃度が19質量%になるように水で調整した。
(比較例1)
実施例1の多孔質層塗布液1を下記組成の多孔質層塗布液9に変更し、乾燥後質量として32.8g/mとなるよう塗布を行い多孔質層9を形成した以外は実施例1と同様にして、転写用基材9を得た。
<多孔質層塗布液9>
無機微粒子分散液 (アルミナ水和物固形分として)100質量部
ポリビニルアルコール 9質量部
(ケン化度88%、平均重合度3,500、分子量約150,000)
ホウ酸 0.4質量部
ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル) 0.3質量部
水以外の成分濃度が16質量%になるように水で調整した。
<転写用基材上へのパターン作製1>
転写用基材1〜9のそれぞれに対し、銀ナノインク(三菱製紙(株)製NBSIJ−MU01、銀濃度15質量%)を入れたピエゾタイプのインクジェットプリンタを用い、50mm×50mmのベタパターン(面状パターン)で印刷を行い、パターンを形成した。銀ナノインクの吐出量は23ml/mであり、導電性パターンの厚みは0.8μmであった。
<被転写体へのパターン転写1>
ロールラミネーターを用い、転写用基材1〜9のそれぞれのパターン形成面と被転写体であるポリイミドカバーレイフィルム((株)有沢製作所製CMA1025KA、ポリイミドフィルム上に熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂層を有する。)を、ロール温度110℃、圧力10N/cm、速度0.3m/分(圧着時間として1秒)で圧着処理を行った。圧着処理を行った後、転写用基材1〜9を剥離した。転写後、160℃で60分間の加熱硬化処理を行い、導電性パターンを有する被転写体1〜9を得た。なお、幅25mmのシート状としたポリイミドカバーレイフィルムを110℃に加熱したときの、前述したJIS Z 0237に準じ剥離角度180度にて測定される粘着力は0.2〜10N/25mmの範囲にあり、室温(常温)での粘着力は0.1N/25mm未満であった。
<転写用基材上へのパターン作製2>
転写用基材3および9に対し、顔料インクタイプのインクジェットプリンタ(HP社製OfficeJet Pro 6230)を用い、50mm×50mmの黒ベタパターン(面状パターン)で印刷を行い、パターンを形成した。
<被転写体へのパターン転写2>
ロールラミネーターを用い、転写用基材3および9のパターン形成面と被転写体であるホットメルトフィルム(日本マタイ(株)製エルファンNT−120:厚み50μm、ポリアミド系熱可塑性樹脂フィルム)を密着させ、さらにホットメルトフィルムの反対面に50番手糸を使った平織り綿布帛を密着させ、ロール温度110℃に調製したロールラミネーターを用いて圧力10N/cm、速度0.5m/分で圧着処理を行った。圧着処理を行った後、転写用基材3および9を剥離し、平織り綿布帛上に接着された画像パターンを有する被転写体10および11を得た。なお、幅25mmのシート状としたホットメルトフィルムを110℃に加熱したときの、前述したJIS Z 0237に準じ剥離角度180度にて測定される粘着力は0.2〜10N/25mmの範囲にあり、室温(常温)での粘着力は0.1N/25mm未満であった。
<被転写体に対する汚染の評価>
上記のようにして得られた各20枚の被転写体1〜11について、転写用基材の支持体上に形成された多孔質層と解離層が支持体より部分的に剥離して被転写体へ転写され、被転写体が汚染された割合を以下の基準により評価した。この結果を表1に示す。
×:被転写体が汚染された枚数が30%以上。
△:被転写体が汚染された枚数が10%以上30%未満。
○:被転写体が汚染された枚数が5%以上10%未満。
◎:被転写体が汚染された枚数が0%。
Figure 2020161619
表1の結果より、本発明の転写用基材1〜8は、転写用基材の支持体上に形成された多孔質層と解離層が支持体より部分的に剥離して被転写体へ転写され、被転写体が汚染されることが抑制されていることが判る。

Claims (1)

  1. パターンを一旦保持し、保持したパターンを被転写体に転写するために用いられる転写用基材であって、支持体上に少なくとも多孔質層と該多孔質層上に解離層を有し、該多孔質層がグリセリンおよびポリグリセリンから選択される少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする転写用基材。
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