以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態]
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ幅は、タイヤ幅方向において最も外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤ1のトレッド踏面3を示す平面図である。図1に示す空気入りタイヤ1は、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、トレッド踏面3として形成されている。トレッド踏面3には、タイヤ周方向に延びる周方向主溝30と、タイヤ幅方向に延びるラグ溝40とが、それぞれ複数形成されている。トレッド踏面3には、これらの複数の周方向主溝30とラグ溝40とにより、複数の陸部10が区画されている。
詳しくは、周方向主溝30は、4本がタイヤ幅方向に並んで形成されており、タイヤ赤道面CLを挟んでタイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に配設される2本の内側周方向主溝31と、2本の内側周方向主溝31のそれぞれのタイヤ幅方向外側に1本ずつ配設される2本の最外周方向主溝32と、が設けられている。このうち最外周方向主溝32は、複数の周方向主溝30のうちタイヤ幅方向において最も外側に配設される周方向主溝30になっている。また、ラグ溝40は、2本の内側周方向主溝31同士の間に配設されるセンターラグ溝41と、タイヤ幅方向に隣り合う内側周方向主溝31と最外周方向主溝32との間に配設されるミドルラグ溝42と、最外周方向主溝32のタイヤ幅方向外側に配設されるショルダーラグ溝43と、が設けられている。
ここでいう周方向主溝30は、少なくとも一部がタイヤ周方向に延在する縦溝をいう。一般に周方向主溝30は、4mm以上の溝幅を有し、10mm以上の溝深さを有し、摩耗末期を示すトレッドウェアインジケータ(スリップサイン)を内部に有する。本実施形態では、周方向主溝30は、5mm以上の溝幅を有し、15mm以上の溝深さを有しており、タイヤ赤道面CLとトレッド踏面3とが交差するタイヤ赤道線(センターライン)と実質的に平行である。周方向主溝30は、タイヤ周方向に直線状に延在してもよいし、波形状又はジグザグ状に設けられてもよい。また、ラグ溝40は、溝幅が4mm以上10mm以下の範囲内になっており、溝深さが7mm以上15mm以下の範囲内になっている。本実施形態では、ラグ溝40は、タイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ幅方向に対してタイヤ周方向に傾斜している。
さらに、トレッド踏面3には、周方向主溝30の溝幅やラグ溝40の溝幅より狭い溝幅でタイヤ周方向に延びる周方向細溝50が形成されている。具体的には、周方向細溝50は、2本の内側周方向主溝31の間に配設されるセンター細溝51と、最外周方向主溝32のタイヤ幅方向外側に配設されるショルダー細溝52とが設けられている。ここでいう周方向細溝50は、溝幅が1mm以上5mm以下の範囲内になっており、溝深さが7mm以上20mm以下の範囲内になっている。
これらのように形成される周方向細溝50のうち、センター細溝51は、2本の内側周方向主溝31の間の、タイヤ幅方向におけるほぼ中央付近に配設されており、タイヤ赤道面CL上、またはタイヤ赤道面CL上の近傍に位置している。このように形成されるセンター細溝51は、タイヤ周方向に直線状に延び、タイヤ周方向における両端が、センターラグ溝41に開口している。つまり、センター細溝51は、タイヤ周方向に隣り合うセンターラグ溝41同士の間でタイヤ周方向に延びて形成されており、両端がそれぞれセンターラグ溝41に開口している。
また、ショルダー細溝52は、最外周方向主溝32と、トレッド踏面3のタイヤ幅方向外側端であるデザインエンドEとの間の、タイヤ幅方向におけるほぼ中央付近に配設されている。ここでいうデザインエンドEは、トレッド部2のタイヤ幅方向最外側端をいい、トレッド部2において溝が形成されるタイヤ幅方向最外側端になっている。このように形成されるショルダー細溝52は、タイヤ周方向に延びつつ、タイヤ幅方向に繰り返し屈曲している。つまり、ショルダー細溝52は、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に繰り返し屈曲するジグザグ状の形状で、タイヤ周方向に延びている。
また、最外周方向主溝32のタイヤ幅方向外側に配設されるショルダーラグ溝43は、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向における両側にそれぞれ複数が配設されている。ショルダー細溝52のタイヤ幅方向両側に配設されるショルダーラグ溝43のうち、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向内側に配設されるショルダーラグ溝43は、タイヤ幅方向内側の端部が最外周方向主溝32に開口し、タイヤ幅方向外側の端部がショルダー細溝52に開口している。また、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向両側に配設されるショルダーラグ溝43のうち、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向外側に配設されるショルダーラグ溝43は、タイヤ幅方向内側の端部がショルダー細溝52に開口し、タイヤ幅方向外側の端部がデザインエンドEで開口している。つまり、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向両側に配設されるショルダーラグ溝43は、いずれも一端がショルダー細溝52に開口し、ショルダーラグ溝43におけるショルダー細溝52に開口する側の端部の反対側の端部は、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向両側に配設されるショルダーラグ溝43同士で異なる位置に開口している。このように、ショルダーラグ溝43は、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向における内側と外側で、異なるショルダーラグ溝43が配設されている。
トレッド踏面3には、複数の周方向主溝30とラグ溝40と周方向細溝50とにより、複数の陸部10が形成されており、陸部10は、センター陸部11と、ミドルブロック12と、ショルダー陸部13とを有している。このうち、センター陸部11は、2本の内側周方向主溝31の間に位置する陸部10になっている。また、ミドルブロック12は、タイヤ幅方向に隣り合う内側周方向主溝31と最外周方向主溝32との間に位置する陸部10になっている。また、ショルダー陸部13は、最外周方向主溝32のタイヤ幅方向外側に位置する陸部10になっている。
これらのようにトレッド踏面3に形成される複数の陸部10のうち、センター陸部11は、タイヤ周方向における両側がセンターラグ溝41により区画されるセンター小ブロック11aを複数有している。詳しくは、各センター小ブロック11aは、タイヤ周方向における両側がセンターラグ溝41により区画され、タイヤ幅方向における外側が内側周方向主溝31により区画され、タイヤ幅方向における内側がセンター細溝51により区画されている。センター陸部11は、このようにセンターラグ溝41と内側周方向主溝31とセンター細溝51によって区画される複数のセンター小ブロック11aがタイヤ周方向に並ぶセンター小ブロック列21を、センター細溝51のタイヤ幅方向両側にそれぞれ有している。
換言すると、センター小ブロック11aは、センター細溝51のタイヤ幅方向両側にそれぞれ複数が配置され、センター陸部11は、センター細溝51のタイヤ幅方向両側で、それぞれ複数のセンター小ブロック11aがタイヤ周方向に並んで配置されることにより、センター細溝51のタイヤ幅方向両側にセンター小ブロック列21を有している。その際に、センター小ブロック11aを区画するセンターラグ溝41は、両端が内側周方向主溝31に開口しているため、センターラグ溝41は、センター細溝51のタイヤ幅方向両側のセンター小ブロック列21におけるセンター小ブロック11aのタイヤ周方向の端部を、1つのセンターラグ溝41によって区画している。
また、ショルダー陸部13は、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向における両側に、タイヤ周方向における両側がショルダーラグ溝43により区画されるショルダー小ブロック13aを、それぞれ複数有している。このうち、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向内側に位置するショルダー小ブロック13aは、タイヤ周方向における両側がショルダーラグ溝43により区画され、タイヤ幅方向における内側が最外周方向主溝32により区画され、タイヤ幅方向における外側がショルダー細溝52により区画されている。また、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向外側に位置するショルダー小ブロック13aは、タイヤ周方向における両側がショルダーラグ溝43により区画され、タイヤ幅方向における内側がショルダー細溝52により区画され、タイヤ幅方向における外側がデザインエンドEにより区画されている。ショルダー陸部13は、このように区画される複数のショルダー小ブロック13aがタイヤ周方向に並ぶショルダー小ブロック列23を、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向両側にそれぞれ有している。
換言すると、ショルダー小ブロック13aは、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向両側にそれぞれ複数が配置され、ショルダー陸部13は、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向両側で、それぞれ複数のショルダー小ブロック13aがタイヤ周方向に並んで配置されることにより、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向両側にショルダー小ブロック列23を有している。その際に、ショルダー小ブロック13aを区画するショルダーラグ溝43は、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向両側で、異なるショルダーラグ溝43が配設されている。このため、ショルダーラグ溝43は、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向両側のショルダー小ブロック列23におけるショルダー小ブロック13aのタイヤ周方向の端部を、異なるショルダーラグ溝43によって区画している。
また、ミドルブロック12は、センター陸部11とショルダー陸部13との間に複数が配設されており、タイヤ周方向における両側がミドルラグ溝42により区画され、タイヤ幅方向における内側が内側周方向主溝31により区画され、タイヤ幅方向における外側が最外周方向主溝32により区画されている。このように形成されるミドルブロック12は、複数がタイヤ周方向に並んでおり、センター陸部11とショルダー陸部13との間には、タイヤ周方向に並ぶ複数のミドルブロック12によってミドルブロック列22が形成されている。
また、トレッド踏面3に形成される各陸部10には、それぞれ複数のサイプ60が形成されている。即ち、センター小ブロック11aとショルダー小ブロック13aとミドルブロック12とには、それぞれ複数のサイプ60が形成されている。
なお、ここでいうサイプ60は、トレッド踏面3に細溝状に形成されるものであり、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、正規内圧の内圧条件で、無負荷時には細溝を構成する壁面同士が接触しないが、平板上で垂直方向に負荷させたときの平板上に形成される接地面の部分に細溝が位置する際、または細溝が形成される陸部の倒れ込み時には、当該細溝を構成する壁面同士、或いは壁面に設けられる部位の少なくとも一部が、陸部10の変形によって互いに接触するものをいう。正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、或いは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。本実施形態では、サイプ60は、幅が1mm未満の範囲内になっており、深さが7mm以上12mm以下の範囲内になっている。
これらのように形成されるサイプ60は、1つのブロック当たりのサイプ60の数を比較すると、ショルダー小ブロック13aよりも、センター小ブロック11aやミドルブロック12の方が1つのブロック当たりのサイプ60の数が多くなっている。また、サイプ60は、タイヤ幅方向における端部が周方向主溝30または周方向細溝50に開口するオープンサイプ61と、タイヤ幅方向における端部が陸部10内で終端するクローズドサイプ62とを有している。また、これらのサイプ60は、サイプ60が形成される陸部10を区画するラグ溝40の延在方向に対して略平行にタイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向に繰り返し屈曲して形成されている。
詳しくは、センター小ブロック11aとミドルブロック12とには、それぞれオープンサイプ61が少なくとも2本配置されており、センター小ブロック11aには、オープンサイプ61とセンターラグ溝41との間に、クローズドサイプ62が少なくとも2本配置されている。本実施形態では、センター小ブロック11aには、2本のオープンサイプ61がタイヤ周方向に並んでおり、それぞれのオープンサイプ61とセンターラグ溝41との間に、2本のクローズドサイプ62が、互いに延在方向に並んで配置されている。
ミドルブロック12にも同様に、オープンサイプ61とミドルラグ溝42との間に、クローズドサイプ62が少なくとも2本配置されている。本実施形態では、ミドルブロック12には、2本のオープンサイプ61がタイヤ周方向に並んでおり、それぞれのオープンサイプ61とミドルラグ溝42との間に、2本のクローズドサイプ62が、互いに延在方向に並んで配置されている。
これらに対し、ショルダー小ブロック13aには、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向両側に位置するいずれのショルダー小ブロック13aにおいても、それぞれ4本のクローズドサイプ62がタイヤ周方向に並んで配置されている。これにより、1つのブロック当たりのサイプ60の数は、ショルダー小ブロック13aよりもセンター小ブロック11aの方が多くなっている。
図2は、図1のA部詳細図である。なお、図2〜図4では、陸部10の形状を説明するために、便宜上サイプ60の図示を省略している。2本の内側周方向主溝31同士の間に配設されるセンターラグ溝41は、タイヤ幅方向における両端がそれぞれ異なる内側周方向主溝31に開口している。また、センターラグ溝41は、タイヤ幅方向に延びつつ、複数の箇所でタイヤ周方向に屈曲して形成されており、即ち、センターラグ溝41は、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への角度が変化する部分である屈曲部45を、2箇所以上有している。
本実施形態では、屈曲部45は、1つのセンターラグ溝41に対して2箇所に形成されている。2箇所の屈曲部45は、センターラグ溝41に沿って一方の内側周方向主溝31側から他方の内側周方向主溝31側に向かった際における屈曲の方向が互いに反対方向になっており、これによりセンターラグ溝41は、クランク状の形状で形成されている。また、クランク状の形状で形成されるセンターラグ溝41は、2箇所の屈曲部45から、内側周方向主溝31に向かって延びる部分のそれぞれが、タイヤ幅方向に対して傾斜しており、傾斜の方向と傾斜の角度は、屈曲部45から内側周方向主溝31に向かって延びる2箇所の部分で、互いに同じ方向と角度になっている。2本の内側周方向主溝31同士の間に配設される複数のセンターラグ溝41は、全て同等の形状で形成されている。
タイヤ周方向における端部がセンターラグ溝41に開口するセンター細溝51は、センターラグ溝41の屈曲部45に対して開口している。センターラグ溝41は2箇所の屈曲部45を有し、センター細溝51は、センターラグ溝41の屈曲部45に対して開口しているため、センター細溝51のタイヤ幅方向両側に位置するセンター小ブロック11a同士は、タイヤ周方向に互いにオフセットして配設されている。つまり、センター小ブロック11aを区画するセンターラグ溝41は、クランク状の形状で形成されているため、センターラグ溝41における屈曲部45のタイヤ幅方向両側で、タイヤ周方向における位置が異なっている。センター細溝51は、このようにクランク状の形状で形成されるセンターラグ溝41の屈曲部45に対して開口しているため、センターラグ溝41が、屈曲部45のタイヤ幅方向両側でタイヤ周方向の位置が異なっているのに伴い、センター細溝51のタイヤ幅方向における両側に位置するセンター小ブロック11a同士も、センターラグ溝41と同様に、タイヤ周方向における位置が異なっている。これにより、センター細溝51のタイヤ幅方向両側に位置するセンター小ブロック11a同士は、タイヤ周方向にずらして配置されている。
このため、センター陸部11が有する2つのセンター小ブロック列21は、それぞれ複数のセンター小ブロック11aが互いに同じピッチでタイヤ周方向に並んで配置されており、且つ、センター小ブロック11aのピッチは、センター細溝51を介して隣り合うセンター小ブロック列21同士でタイヤ周方向における位相差φcを有している。換言すると、センター陸部11は、センター陸部11の一方のセンター小ブロック列21におけるセンター小ブロック11aのタイヤ周方向におけるピッチと、他方のセンター小ブロック列21におけるセンター小ブロック11aのタイヤ周方向におけるピッチとのタイヤ周方向における位相差φcを有している。これにより、センター細溝51を介して隣り合うセンター小ブロック11a同士は、ピッチの位相差φcの分、互いにタイヤ周方向にずれて配置されており、例えば、センター細溝51を介して互いに隣り合うセンター小ブロック11aのそれぞれのタイヤ周方向の端部同士のタイヤ周方向における距離が、位相差φcの大きさになっている。
また、センター陸部11は、センター細溝51を介して隣り合うセンター小ブロック列21同士のセンター小ブロック11aのピッチの位相差φcと、センター小ブロック11aのピッチ長Pcとの比(φc/Pc)が、0.1以上0.3以下の範囲内になっている。
さらに、センター陸部11は、センター小ブロック11aのタイヤ周方向における長さLbと、センターラグ溝41のタイヤ周方向における長さLgとの比(Lg/Lb)が、0.15以上0.25以下の範囲内になっている。この場合におけるセンター小ブロック11aのタイヤ周方向における長さLbと、センターラグ溝41のタイヤ周方向における長さLgとは、いずれもセンター小ブロック11aのタイヤ幅方向における中央の位置での、タイヤ周方向における長さになっている。
また、内側周方向主溝31は、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に繰り返し屈曲して形成されており、これにより、センター小ブロック11aにおける内側周方向主溝31によって区画される部分には、タイヤ幅方向外側に突出する突出部14が形成されている。センター小ブロック11aに形成される突出部14は、センター小ブロック11aの内側周方向主溝31によって区画される部分における、タイヤ周方向両側に位置するセンターラグ溝41のうち一方のセンターラグ溝41寄りの位置に形成されている。また、センター細溝51を介して隣り合うセンター小ブロック11a同士では、それぞれのセンター小ブロック11aの突出部14は、これらの2つのセンター小ブロック11aを区画する2本のセンターラグ溝41のうち、互いに異なるセンターラグ溝41寄りの位置に形成されている。このように形成されるセンター小ブロック11aの突出部14は、タイヤ幅方向への突出量αcが、1mm以上5mm以下の範囲内になっている。
図3は、図1のB部詳細図である。最外周方向主溝32のタイヤ幅方向外側に配設されるショルダー陸部13は、ショルダー細溝52によってタイヤ幅方向に2分割されており、これにより、ショルダー陸部13は、ショルダー細溝52を介してタイヤ幅方向に隣接する2つのショルダー小ブロック列23を有している。また、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向両側にそれぞれ配設されるショルダーラグ溝43は、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向における両側のショルダーラグ溝43同士で、タイヤ周方向における位置が互いに異なっている。
詳しくは、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向における両側に位置するショルダーラグ溝43は、ジグザグ状にタイヤ周方向に延びるショルダー細溝52におけるタイヤ幅方向への振幅のタイヤ周方向のピッチとほぼ同じ大きさのピッチで、タイヤ周方向に並んでいる。また、ショルダーラグ溝43におけるショルダー細溝52に開口している側の端部は、ジグザグ状に形成されるショルダー細溝52における、屈曲している部分に開口している。その際に、各ショルダーラグ溝43は、ショルダー細溝52における屈曲している部分のうち、ショルダーラグ溝43側に凸となって屈曲している部分に開口している。
つまり、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向内側に位置するショルダーラグ溝43は、ショルダー細溝52におけるタイヤ幅方向内側に凸となる部分に開口し、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向外側に位置するショルダーラグ溝43は、ショルダー細溝52におけるタイヤ幅方向外側に凸となる部分に開口している。このため、ショルダーラグ溝43は、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向内側に配設されるショルダーラグ溝43と、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向外側に配設されるショルダーラグ溝43とが、タイヤ周方向に向かって交互に配設されている。
ショルダーラグ溝43は、このようにショルダー細溝52のタイヤ幅方向両側で交互に配設されているため、ショルダーラグ溝43によって区画されるショルダー小ブロック13aも、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向両側で交互に配設されている。つまり、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向両側に位置するショルダー小ブロック13a同士は、互いにショルダー細溝52を挟んで隣り合うショルダー小ブロック13aに対して、タイヤ周方向にずらして配置されている。
このため、ショルダー陸部13が有する2つのショルダー小ブロック列23は、それぞれ複数のショルダー小ブロック13aが互いに同じピッチでタイヤ周方向に並んで配置されており、且つ、ショルダー小ブロック13aのピッチは、ショルダー細溝52を介して隣り合うショルダー小ブロック列23同士でタイヤ周方向における位相差φsを有している。換言すると、ショルダー陸部13は、ショルダー陸部13の一方のショルダー小ブロック列23におけるショルダー小ブロック13aのタイヤ周方向におけるピッチと、他方のショルダー小ブロック列23におけるショルダー小ブロック13aのタイヤ周方向におけるピッチとのタイヤ周方向における位相差φsを有している。これにより、ショルダー細溝52を介して隣り合うショルダー小ブロック13a同士は、ピッチの位相差φsの分、互いにタイヤ周方向にずれて配置されており、例えば、ショルダー細溝52を介して互いに隣り合うショルダー小ブロック13aのそれぞれのタイヤ周方向の端部同士のタイヤ周方向における距離が、位相差φsの大きさになっている。
また、ショルダー陸部13は、ショルダー細溝52を介して隣り合うショルダー小ブロック列23同士のショルダー小ブロック13aのピッチの位相差φsと、ショルダー小ブロック13aのピッチ長Psとの比(φs/Ps)が、0.3以上0.5以下の範囲内になっている。
なお、本実施形態では、センター陸部11とショルダー陸部13とでは、タイヤ周方向におけるピッチ数は同じ数になっているが、トレッド部2は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CL付近の位置よりも、タイヤ幅方向における両端付近の方がタイヤ周方向における全長、即ち、タイヤ周長が短くなっている。このため、ショルダー小ブロック13aのピッチ長Psとセンター小ブロック11aのピッチ長Pcとを比較すると、ショルダー小ブロック13aのピッチ長Psは、センター小ブロック11aのピッチ長Pcよりも小さくなっている。本実施形態では、ショルダー小ブロック13aのピッチ長Psとセンター小ブロック11aのピッチ長Pcとを比(Ps/Pc)は、0.99以上1.00以下の範囲内になっている。
また、最外周方向主溝32は、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に繰り返し屈曲して形成されており、これにより、ショルダー小ブロック13aにおける最外周方向主溝32によって区画される部分には、タイヤ幅方向内側に突出する突出部16が形成されている。ショルダー小ブロック13aに形成される突出部16は、ショルダー小ブロック13aの最外周方向主溝32によって区画される部分における、タイヤ周方向両側に位置するショルダーラグ溝43のうち一方のショルダーラグ溝43寄りの位置に形成されている。このように形成されるショルダー小ブロック13aの突出部16は、タイヤ幅方向への突出量αsが、1mm以上5mm以下の範囲内になっている。
また、センター陸部11における、センター細溝51を介して隣り合うセンター小ブロック列21同士のセンター小ブロック11aのピッチの位相差φcと、ショルダー陸部13における、ショルダー細溝52を介して隣り合うショルダー小ブロック列23同士のショルダー小ブロック13aのピッチの位相差φsとの関係は、0<φc<φsを満たしている。つまり、ショルダー陸部13におけるショルダー小ブロック13aのピッチの位相差φsは、センター陸部11におけるセンター小ブロック11aのピッチの位相差φcよりも大きくなっている。
さらに、センター陸部11とショルダー陸部13とは、ショルダー陸部13におけるショルダー小ブロック13aのピッチの位相差φsとセンター陸部11におけるセンター小ブロック11aの位相差φcとの差と、ショルダー小ブロック13aのピッチ長Psとの比{(φs−φc)/Ps}が、0.2以上0.4以下の範囲内になっている。
図4は、図1に示すミドルブロック12についての説明図である。内側周方向主溝31や最外周方向主溝32が、いずれもタイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に繰り返し屈曲して形成されるため、ミドルブロック12における内側周方向主溝31や最外周方向主溝32によって区画される部分には、タイヤ幅方向に突出する突出部15が形成されている。ミドルブロック12の突出部15のうち、内側周方向主溝31側に形成される突出部15は、ミドルブロック12の内側周方向主溝31によって区画される部分における、タイヤ周方向両側に位置するミドルラグ溝42のうち一方のミドルラグ溝42寄りの位置に形成されている。また、最外周方向主溝32側に形成される突出部15は、ミドルブロック12の最外周方向主溝32によって区画される部分における、タイヤ周方向両側に位置するミドルラグ溝42のうち内側周方向主溝31側の突出部15が近傍に形成される側のミドルラグ溝42とは異なるミドルラグ溝42寄りの位置に形成されている。このように形成されるミドルブロック12の突出部15は、タイヤ幅方向への突出量αmが、1mm以上5mm以下の範囲内になっている。
また、センター陸部11とショルダー陸部13との間に位置するミドルブロック12は、センター陸部11が有するセンター小ブロック11aや、ショルダー陸部13が有するショルダー小ブロック13aに対して、タイヤ周方向の位相差を有しつつ、複数が所定のピッチでタイヤ周方向に並んでいる。具体的には、タイヤ幅方向に隣り合うセンター小ブロック11aとミドルブロック12とは、センター小ブロック11aとミドルブロック12とのタイヤ周方向における位相差φcmと、センター小ブロック11aのピッチ長Pcとの比(φcm/Pc)が、0.3以上0.5以下の範囲内になっている。また、タイヤ幅方向に隣り合うショルダー小ブロック13aとミドルブロック12とは、ショルダー小ブロック13aとミドルブロック12とのタイヤ周方向における位相差φsmと、ショルダー小ブロック13aのピッチ長Psとの比(φsm/Ps)が、0.3以上0.5以下の範囲内になっている。
タイヤ幅方向に隣り合うセンター小ブロック11aとミドルブロック12とは、タイヤ周方向に位相差φcmを有して配置されているため、例えば、センター小ブロック11aのタイヤ周方向における一方側の端部と、ミドルブロック12のタイヤ周方向における同じ方向側の端部とのタイヤ周方向における距離が、位相差φcmの大きさになっている。同様に、タイヤ幅方向に隣り合うショルダー小ブロック13aとミドルブロック12とは、タイヤ周方向に位相差φsmを有して配置されているため、例えば、ショルダー小ブロック13aのタイヤ周方向における一方側の端部と、ミドルブロック12のタイヤ周方向における同じ方向側の端部とのタイヤ周方向における距離が、位相差φsmの大きさになっている。
また、センター陸部11とミドルブロック列22とは、センター陸部11のタイヤ幅方向における最大幅Wcと、ミドルブロック列22のタイヤ幅方向における最大幅Wmとの比(Wm/Wc)が、0.4以上0.6以下の範囲内になっている。また、センター陸部11とショルダー陸部13とは、センター陸部11のタイヤ幅方向における最大幅Wcと、ショルダー陸部13のタイヤ幅方向における最大幅Wsとの比(Ws/Wc)が、0.8以上1.0以下の範囲内になっている。
図5は、図4のC−C断面図である。センターラグ溝41は、溝壁70に、溝幅が変化する部分である段部71を有しており、段部71よりも溝底72側の溝幅が、トレッド踏面3に開口する位置でのセンターラグ溝41の溝幅より狭くなっている。つまり、センターラグ溝41の溝壁70は、段部71よりも溝底72側の部分全体が、対向する他方の溝壁70側に突出している。これにより、センターラグ溝41の溝壁70は、段部71よりもトレッド踏面3側の部分と溝底72側の部分とで段差を有しており、センターラグ溝41は、溝深さ方向におけるトレッド踏面3側の部分よりも溝底72側の部分の方が、溝幅が狭くなっている。このように形成される段部71は、センターラグ溝41における対向する両側の溝壁70に形成されており、両側の溝壁70の段部71は、溝深さ方向における位置が同じ位置に形成されている。また、段部71を有するセンターラグ溝41は、センターラグ溝41におけるトレッド踏面3への開口部分から溝底72までの深さである最大溝深さDcと、当該開口部分から段部71までの深さDc1との比(Dc1/Dc)が、0.65以上0.85以下の範囲内になっている。
図6は、図4のD−D断面図である。ミドルラグ溝42にもセンターラグ溝41と同様に、溝壁75に、溝幅が変化する部分である段部76を有しており、段部76よりも溝底77側の溝幅が、トレッド踏面3に開口する位置でのミドルラグ溝42の溝幅より狭くなっている。つまり、ミドルラグ溝42の溝壁75は、センターラグ溝41の溝壁70と同様に、段部76よりも溝底77側の部分全体が、対向する他方の溝壁75側に突出しており、これにより、ミドルラグ溝42は、溝深さ方向におけるトレッド踏面3側の部分よりも溝底77側の部分の方が、溝幅が狭くなっている。このように形成される段部76は、ミドルラグ溝42における対向する両側の溝壁75に形成されており、両側の溝壁75の段部76は、溝深さ方向における位置が同じ位置に形成されている。また、段部76を有するミドルラグ溝42は、ミドルラグ溝42におけるトレッド踏面3への開口部分から溝底77までの深さである最大溝深さDmと、当該開口部分から段部76までの深さDm1との比(Dm1/Dm)が、0.75以上0.95以下の範囲内になっている。
これらのように形成されるセンターラグ溝41とミドルラグ溝42とは、センターラグ溝41の最大溝深さDcと、ミドルラグ溝42の最大溝深さDmとの関係が、Dc>Dmになっている。また、周方向主溝30におけるトレッド踏面3への開口部分から溝底までの深さである周方向主溝30の最大溝深さ(図示省略)をDaとしたとき、センターラグ溝41の最大溝深さDcと周方向主溝30の最大溝深さDaとは、Dc/Daが0.6以上0.8以下の範囲内になっている。また、ミドルラグ溝42の最大溝深さDmと周方向主溝30の最大溝深さDaとは、Dm/Daが0.5以上0.7以下の範囲内になっている。
本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、用途が重荷重用空気入りタイヤになっている。この空気入りタイヤ1を車両に装着する際には、リムホイールにリム組みしてインフレートした状態で車両に装着する。リムホイールにリム組みした状態の空気入りタイヤ1は、例えばトラックやバス等の大型の車両に装着して使用される。
空気入りタイヤ1を装着した車両が走行すると、トレッド踏面3のうち下方に位置するトレッド踏面3が路面に接触しながら空気入りタイヤ1は回転する。空気入りタイヤ1を装着した車両で乾燥した路面を走行する場合には、主にトレッド踏面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。また、濡れた路面を走行する際には、トレッド踏面3と路面との間の水が周方向主溝30やラグ溝40等に入り込み、これらの溝でトレッド踏面3と路面との間の水を排水しながら走行する。これにより、トレッド踏面3は路面に接地し易くなり、トレッド踏面3と路面との間の摩擦力により、車両は走行することが可能になる。
また、雪上路面を走行する際には、空気入りタイヤ1は路面上の雪をトレッド踏面3で押し固めると共に、路面上の雪が周方向主溝30やラグ溝40に入り込むことにより、これらの雪も溝内で押し固める状態になる。この状態で、空気入りタイヤ1に駆動力や制動力が作用したり、車両の旋回によってタイヤ幅方向への力が作用したりすることにより、溝内の雪に対して作用するせん断力である、いわゆる雪柱せん断力が空気入りタイヤ1と雪との間で発生する。雪上路面を走行する際には、この雪柱せん断力によって空気入りタイヤ1と路面との間で抵抗が発生することにより、駆動力や制動力を路面に伝達することができ、スノートラクション性を確保することができるため、車両は雪上路面での走行が可能になる。
また、雪上路面や氷上路面を走行する際には、周方向主溝30やラグ溝40、サイプ60のエッジ効果も用いて走行する。つまり、雪上路面や氷上路面を走行する際には、周方向主溝30のエッジやラグ溝40のエッジ、サイプ60のエッジが雪面や氷面に引っ掛かることによる抵抗も用いて走行する。また、氷上路面を走行する際には、氷上路面の表面の水をサイプ60で吸水し、氷上路面とトレッド踏面3との間の水膜を除去することにより、氷上路面とトレッド踏面3は接触し易くなる。これにより、トレッド踏面3は、摩擦力やエッジ効果によって氷上路面との間の抵抗が大きくなり、空気入りタイヤ1を装着した車両の走行性能を確保することができる。
これらのように、雪上路面や氷上路面を走行する際には、周方向主溝30やラグ溝40等の溝や、サイプ60が重要になるが、スノートラクション性等の氷雪上性能を重視して溝深さを深くした場合、陸部10の剛性が低下し易くなる。陸部10の剛性が低下すると、陸部10は摩耗し易くなり、特に、剛性が低い部分での摩耗が大きくなり易くなるため、偏摩耗が発生し易くなる。
これに対し、本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、センター陸部11は、複数のセンター小ブロック11aがタイヤ周方向に並ぶセンター小ブロック列21を、センター細溝51のタイヤ幅方向両側にそれぞれ有し、ショルダー陸部13は、複数のショルダー小ブロック13aがタイヤ周方向に並ぶショルダー小ブロック列23を、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向両側にそれぞれ有している。また、これらのセンター陸部11とショルダー陸部13とは、センター陸部11の2つのセンター小ブロック列21が有するセンター小ブロック11aのピッチ同士の位相差φcと、ショルダー陸部13の2つのショルダー小ブロック列23が有するショルダー小ブロック13aのピッチ同士の位相差φsとの関係が、0<φc<φsを満たしている。これにより、スノートラクション性の低下を抑えつつ、耐偏摩耗性を確保することができる。
つまり、トレッド踏面3のタイヤ幅方向における中央に位置するセンター陸部11は、トレッド踏面3の接地時における接地圧がトレッド踏面3の中で比較的高くなっており、雪上路面の走行時における雪柱せん断力も、トレッド踏面3における他の領域よりも大きな力で発生し易くなっているため、スノートラクション性の確保には、センター陸部11での雪柱せん断力をより効果的に高めるのが重要になる。ここで、センター陸部11の2つのセンター小ブロック列21が有するセンター小ブロック11aのピッチ同士の位相差φcを大きくすると、雪上路面の走行時における雪柱せん断力は、2つのセンター小ブロック列21でそれぞれ発生する小さな雪柱せん断力が、タイヤ回転に伴って継続的に発生する。この場合、小さなスノートラクションを継続的に発生させることができるものの、大きな駆動力が作用した際にはトレッド踏面3と雪上路面との間でスリップが発生してしまい、大きなスノートラクションは発生させ難くなる。
これに対し、センター陸部11の2つのセンター小ブロック列21が有するセンター小ブロック11aのピッチ同士の位相差φcが小さい場合には、雪上路面の走行時における雪柱せん断力は、2つのセンター小ブロック列21でそれぞれ発生する小さな雪柱せん断力がほぼ同じタイミングで発生することにより、大きな雪柱せん断力となって発生する。これにより、雪上路面の走行時に大きな駆動力が作用した場合でも、トレッド踏面3は大きな雪柱せん断力によって雪上路面に対してスリップが発生し難くなり、大きなスノートラクションを発生させることができる。
一方で、トレッド踏面3のタイヤ幅方向における両端付近に位置するショルダー陸部13は、トレッド踏面3の接地時における接地圧がセンター陸部11の接地圧よりも低いため、路面に対するトレッド踏面3の滑りが発生し易くなっており、ヒール&トウ摩耗が発生し易くなっている。これに対し、ショルダー陸部13が有する2つのショルダー小ブロック列23が有するショルダー小ブロック13aのピッチ同士の位相差φsを、センター小ブロック11aのピッチ同士の位相差φcよりも大きくすることにより、各ショルダー小ブロック13aの接地時における接地圧の均一化を図ることができる。
つまり、センター陸部11のように、センター小ブロック11aのピッチ同士の位相差φcが小さい場合は、センター小ブロック11aの接地時における接地面積が、空気入りタイヤ1の回転に伴って大きく変化するため、接地圧も大きく変化し、相対的に接地圧が小さくなる付近ではトレッド踏面3の滑りが発生し易くなるため、偏摩耗が発生し易くなる虞がある。これに対し、2つのショルダー小ブロック列23が有するショルダー小ブロック13aのピッチ同士の位相差φsを、センター小ブロック11aのピッチ同士の位相差φcよりも大きくした場合には、各ショルダー小ブロック13aの接地時における接地圧を、ほぼ均一の接地圧にして順次接地させることができる。これにより、ショルダー小ブロック13aの接地時におけるトレッド踏面3の滑りの発生を抑制することができ、偏摩耗の発生を抑制することができる。これらの結果、スノートラクション性と耐偏摩耗性とを両立することができる。
また、センター陸部11は、位相差φcとセンター小ブロック11aのピッチ長Pcとの比(φc/Pc)が、0.1以上0.3以下の範囲内であるため、センター陸部11が接地した際の接地圧の変化が大きくなり過ぎることを抑制しつつ、2つのセンター小ブロック列21でより確実に大きな雪柱せん断力を発生させることができる。つまり、センター陸部11の位相差φcとセンター小ブロック11aのピッチ長Pcとの比(φc/Pc)が、0.1未満である場合は、センター小ブロック11aのピッチ同士の位相差φcが小さ過ぎるため、タイヤ回転時にセンター陸部11が接地した際の接地圧の変化が大きくなり過ぎ、センター陸部11の偏摩耗を抑制し難くなる虞がある。また、センター陸部11の位相差φcとセンター小ブロック11aのピッチ長Pcとの比(φc/Pc)が、0.3より大きい場合は、雪上路面の走行時に、2つのセンター小ブロック列21で大きな雪柱せん断力を効果的に発生させ難くなる虞がある。
これに対し、センター陸部11の位相差φcとセンター小ブロック11aのピッチ長Pcとの比(φc/Pc)が、0.1以上0.3以下の範囲内である場合は、センター陸部11が接地した際の接地圧の変化が大きくなり過ぎることを抑制しつつ、雪上路面の走行時に、2つのセンター小ブロック列21でより確実に大きな雪柱せん断力を発生させることができる。この結果、より確実にスノートラクション性と耐偏摩耗性とを両立することができる。
また、ショルダー陸部13は、位相差φsとショルダー小ブロック13aのピッチ長Psとの比(φs/Ps)が、0.3以上0.5以下の範囲内であるため、複数のショルダー小ブロック13aの接地時における接地圧を、より確実に均一の接地圧にすることができる。つまり、ショルダー陸部13の位相差φsとショルダー小ブロック13aのピッチ長Psとの比(φs/Ps)が、0.3未満である場合は、ショルダー小ブロック13aのピッチ同士の位相差φsが小さ過ぎるため、複数のショルダー小ブロック13aの接地時における接地圧を均一にし難くなり、ショルダー陸部13の偏摩耗を抑制し難くなる虞がある。
これに対し、ショルダー陸部13の位相差φsとショルダー小ブロック13aのピッチ長Psとの比(φs/Ps)が、0.3以上0.5以下の範囲内である場合は、複数のショルダー小ブロック13aの接地時における接地圧を、より確実に均一の接地圧にすることができ、ショルダー陸部13の偏摩耗を抑制することができる。この結果、より確実に耐偏摩耗性を向上させることができる。
また、センター陸部11とショルダー陸部13とは、ショルダー陸部13における位相差φsとセンター陸部11における位相差φcとの差と、ショルダー小ブロック13aのピッチ長Psとの比{(φs−φc)/Ps}が、0.2以上0.4以下の範囲内であるため、複数のショルダー小ブロック13aの接地時における接地圧を、より確実に均一の接地圧にしつつ、ショルダー小ブロック列23でも大きな雪柱せん断力を発生させることができる。つまり、{(φs−φc)/Ps}が、0.2未満である場合は、ショルダー陸部13における位相差φsが小さ過ぎる虞がある。この場合、雪上路面の走行時に、2つのショルダー小ブロック列23で大きな雪柱せん断力を発生させ易くなるため、スノートラクション性を向上させ易くなるものの、複数のショルダー小ブロック13aの接地時における接地圧を均一にし難くなり、ショルダー陸部13の偏摩耗を抑制し難くなる虞がある。また、{(φs−φc)/Ps}が、0.4より大きい場合は、ショルダー陸部13における位相差φsが大き過ぎる虞がある。この場合、複数のショルダー小ブロック13aの接地時における接地圧を均一にさせ易くなり、ショルダー陸部13の偏摩耗を抑制し易くなるものの、雪上路面の走行時にショルダー小ブロック列23で大きな雪柱せん断力を発生させ難くなるため、スノートラクション性を確保し難くなる虞がある。
これに対し、{(φs−φc)/Ps}が、0.2以上0.4以下の範囲内である場合は、複数のショルダー小ブロック13aの接地時における接地圧を、より確実に均一の接地圧にしつつ、雪上路面の走行時に、センター小ブロック列21のみでなくショルダー小ブロック列23でも大きな雪柱せん断力を発生させることができる。この結果、より確実にスノートラクション性と耐偏摩耗性とを両立することができる。
また、センター陸部11は、センター小ブロック11aのタイヤ周方向における長さLbと、センターラグ溝41のタイヤ周方向における長さLgとの比(Lg/Lb)が、0.15以上0.25以下の範囲内であるため、センター小ブロック11aの剛性が低くなり過ぎることを抑制しつつ、より確実に大きな雪柱せん断力を確保することができる。つまり、タイヤ周方向におけるセンター小ブロック11aの長さLbとセンターラグ溝41の長さLgとの比(Lg/Lb)が、0.15未満である場合は、センターラグ溝41のタイヤ周方向における長さLgが短過ぎる虞があり、雪上路面の走行時に、センターラグ溝41に入り込む雪の量が少なくなる虞がある。この場合、センター小ブロック11aとセンターラグ溝41とによる雪柱せん断力を確保し難くなる虞がある。また、タイヤ周方向におけるセンター小ブロック11aの長さLbとセンターラグ溝41の長さLgとの比(Lg/Lb)が、0.25より大きい場合は、センターラグ溝41のタイヤ周方向における長さLgが大き過ぎる虞がある。この場合、センター小ブロック11aの剛性を確保し難くなるため、センター陸部11の偏摩耗を抑制し難くなる虞がある。
これに対し、タイヤ周方向におけるセンター小ブロック11aの長さLbとセンターラグ溝41の長さLgとの比(Lg/Lb)が、0.15以上0.25以下の範囲内である場合は、センター小ブロック11aの剛性が低くなり過ぎることを抑制しつつ、センター小ブロック11aとセンターラグ溝41とにより、より確実に大きな雪柱せん断力を確保することができる。この結果、より確実にスノートラクション性と耐偏摩耗性とを両立することができる。
また、センターラグ溝41は、2箇所以上の屈曲部45を有するため、センター小ブロック11aとセンターラグ溝41とは、複数の方向に対する雪柱せん断力を確保することができる。この結果、より確実にスノートラクション性を向上させることができる。
また、センター細溝51は、タイヤ周方向に直線状に延びるため、接地圧が高くなり易いセンター陸部11の接地時における音の発生を抑制することができる。これにより、センター陸部11の接地時における音の発生を抑えつつ、エッジ成分を増加してスノートラクション性を確保することができる。また、ショルダー細溝52は、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に繰り返し屈曲するジグザグ状に形成されているため、ショルダー陸部13の接地時に、ショルダー小ブロック13a同士で支え合わせることができる。これにより、偏摩耗が発生し易いショルダー陸部13の偏摩耗を抑制することができる。これらの結果、騒音性能の悪化を抑えつつ、スノートラクション性と耐偏摩耗性とを両立することができる。
また、センター細溝51を介して隣り合うセンター小ブロック11aのタイヤ周方向におけるそれぞれの端部は、1つのセンターラグ溝41によって区画されるため、センター小ブロック11aの体積に対するセンターラグ溝41の容積の比率を大きくすることができる。これにより、センター陸部11が位置する領域での雪柱せん断力をより確実に確保することができる。また、ショルダー細溝52を介して隣り合うショルダー小ブロック13aのタイヤ周方向における端部は、それぞれ一端がショルダー細溝52に開口する、互いに異なるショルダーラグ溝43によって区画されるため、ショルダーラグ溝43の容積に対するショルダー小ブロック13aの体積の比率を大きくすることができる。これにより、ショルダー小ブロック13aの剛性が低くなり過ぎることを抑制することができ、偏摩耗が発生し易いショルダー陸部13の偏摩耗を抑制することができる。また、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向両側に位置するショルダーラグ溝43は、幅が広い溝によって連通していないため、トレッド踏面3の接地時に発生する音が、最外周方向主溝32からショルダーラグ溝43を通ってタイヤ幅方向外側に放出されるのを抑制することができる。これにより、タイヤ回転時における通過音が大きくなることを抑制することができる。これらの結果、騒音性能の悪化を抑えつつ、スノートラクション性と耐偏摩耗性とを両立することができる。
また、タイヤ幅方向に隣り合うセンター小ブロック11aとミドルブロック12とのタイヤ周方向における位相差φcmと、センター小ブロック11aのピッチ長Pcとの比(φcm/Pc)が、0.3以上0.5以下の範囲内であるため、内側周方向主溝31を介して隣り合うセンター小ブロック11aとミドルブロック12とが配設される範囲で、偏摩耗の発生を抑えつつ大きな雪柱せん断力を発生させることができる。つまり、φcm/Pcが0.3未満である場合は、同じ内側周方向主溝31に開口するセンターラグ溝41とミドルラグ溝42とのタイヤ周方向における距離が小さくなるため、大きな雪柱せん断力を発生させることができるものの、内側周方向主溝31を介して隣り合うセンター小ブロック11aとミドルブロック12とが配設される範囲における、タイヤ周上での接地圧の差が大きくなるため、これに起因して偏摩耗が発生し易くなる虞がある。また、φcm/Pcが0.5より大きい場合は、内側周方向主溝31を介して隣り合うセンター小ブロック11aとミドルブロック12とが配設される範囲における、タイヤ周上での接地圧の差は小さくできるものの、センターラグ溝41とミドルラグ溝42とのタイヤ周方向における距離が大きくなるため、センター小ブロック11aとミドルブロック12とが配設される範囲では大きな雪柱せん断力を発生させ難くなる虞がある。
これに対し、φcm/Pcが0.3以上0.5以下の範囲内である場合は、内側周方向主溝31を介して隣り合うセンター小ブロック11aとミドルブロック12とが配設される範囲における、タイヤ周上での接地圧の差が大きくなり過ぎることを抑制しつつ、これらのブロックが配設される範囲で大きな雪柱せん断力を発生させることができる。この結果、より確実にスノートラクション性と耐偏摩耗性とを両立することができる。
また、タイヤ幅方向に隣り合うショルダー小ブロック13aとミドルブロック12とのタイヤ周方向における位相差φsmと、ショルダー小ブロック13aのピッチ長Psとの比(φsm/Ps)が、0.3以上0.5以下の範囲内であるため、最外周方向主溝32を介して隣り合うショルダー小ブロック13aとミドルブロック12とが配設される範囲で、偏摩耗の発生を抑えつつ大きな雪柱せん断力を発生させることができる。つまり、φsm/Psが0.3未満である場合は、同じ最外周方向主溝32に開口するショルダーラグ溝43とミドルラグ溝42とのタイヤ周方向における距離が小さくなるため、大きな雪柱せん断力を発生させることができるものの、最外周方向主溝32を介して隣り合うショルダー小ブロック13aとミドルブロック12とが配設される範囲における、タイヤ周上での接地圧の差が大きくなるため、これに起因して偏摩耗が発生し易くなる虞がある。また、φsm/Psが0.5より大きい場合は、最外周方向主溝32を介して隣り合うショルダー小ブロック13aとミドルブロック12とが配設される範囲における、タイヤ周上での接地圧の差は小さくできるものの、ショルダーラグ溝43とミドルラグ溝42とのタイヤ周方向における距離が大きくなるため、ショルダー小ブロック13aとミドルブロック12とが配設される範囲では大きな雪柱せん断力を発生させ難くなる虞がある。
これに対し、φsm/Psが0.3以上0.5以下の範囲内である場合は、最外周方向主溝32を介して隣り合うショルダー小ブロック13aとミドルブロック12とが配設される範囲における、タイヤ周上での接地圧の差が大きくなり過ぎることを抑制しつつ、これらのブロックが配設される範囲で大きな雪柱せん断力を発生させることができる。この結果、より確実にスノートラクション性と耐偏摩耗性とを両立することができる。
また、センター陸部11のタイヤ幅方向における最大幅Wcと、ミドルブロック列22のタイヤ幅方向における最大幅Wmとの関係が、Wm/Wcが0.4以上0.6以下の範囲内であるため、ミドルブロック12での偏摩耗の発生を抑制しつつ、スノートラクション性を確保することができる。つまり、Wm/Wcが0.4未満である場合は、大きな雪柱せん断力を発生させることのできるセンター陸部11及びセンターラグ溝41のタイヤ幅方向における幅を確保できるため、スノートラクション性を確保することができるものの、ミドルブロック列22の最大幅Wmが小さ過ぎるため、ミドルブロック12の剛性を確保し難くなる虞がある。この場合、ミドルブロック12で偏摩耗が発生し易くなる虞がある。また、Wm/Wcが0.6より大きい場合は、ミドルブロック12の剛性を確保することができ、ミドルブロック12での偏摩耗の発生を抑制することができるものの、センター陸部11及びセンターラグ溝41のタイヤ幅方向における幅が小さ過ぎるため、スノートラクション性を確保し難くなる虞がある。
これに対し、Wm/Wcが0.4以上0.6以下の範囲内である場合は、ミドルブロック12の剛性が低くなり過ぎることを抑制することによりミドルブロック12での偏摩耗の発生を抑制しつつ、センター陸部11及びセンターラグ溝41のタイヤ幅方向における幅を確保することによりスノートラクション性を確保することができる。この結果、より確実にスノートラクション性と耐偏摩耗性とを両立することができる。
また、センター陸部11のタイヤ幅方向における最大幅Wcと、ショルダー陸部13のタイヤ幅方向における最大幅Wsとの関係が、Ws/Wcが0.8以上1.0以下の範囲内であるため、より確実にショルダー陸部13での偏摩耗の発生を抑制しつつ、スノートラクション性を確保することができる。つまり、Ws/Wcが0.8未満である場合は、大きな雪柱せん断力を発生させることのできるセンター陸部11及びセンターラグ溝41のタイヤ幅方向における幅を確保できるため、スノートラクション性を確保することができるものの、ショルダー陸部13の最大幅Wsが小さ過ぎるため、ショルダー陸部13の剛性を確保し難くなる虞がある。この場合、ショルダー陸部13での偏摩耗の発生を抑制し難くなる虞がある。また、Ws/Wcが1.0より大きい場合は、ショルダー陸部13の剛性を確保することができ、ショルダー陸部13での偏摩耗の発生を抑制することができるものの、センター陸部11及びセンターラグ溝41のタイヤ幅方向における幅が小さ過ぎるため、スノートラクション性を確保し難くなる虞がある。
これに対し、Ws/Wcが0.8以上1.0以下の範囲内である場合は、ショルダー陸部13の剛性が低くなり過ぎることを抑制することによりショルダー陸部13での偏摩耗の発生をより確実に抑制しつつ、センター陸部11及びセンターラグ溝41のタイヤ幅方向における幅を確保することによりスノートラクション性を確保することができる。この結果、より確実にスノートラクション性と耐偏摩耗性とを両立することができる。
また、センター小ブロック11aとショルダー小ブロック13aとミドルブロック12とは、それぞれ周方向主溝30によって区画される位置にタイヤ幅方向に突出する突出部14、15、16を有しているため、周方向主溝30における突出部14、15、16の位置で雪柱せん断力を発生させることができる。これにより、空気入りタイヤ1における雪柱せん断力の全体量を大きくすることができる。この結果、より確実にスノートラクション性を向上させることができる。
また、突出部14、15、16は、突出量αc、αm、αsが1mm以上5mm以下の範囲内であるため、各陸部10で剛性の偏りや接地圧の偏りが発生することを抑制しつつ、雪柱せん断力を効果的に大きくすることができる。つまり、突出部14、15、16の突出量αc、αm、αsが、1mm未満である場合は、突出量αc、αm、αsが小さ過ぎるため、突出部14、15、16を設けても、雪柱せん断力を効果的に大きくし難くなる虞がある。また、突出部14、15、16の突出量αc、αm、αsが、5mmより大きい場合は、突出量αc、αm、αsが大き過ぎるため、各陸部10における剛性の偏りや接地圧の偏りが発生し、これに起因して偏摩耗が発生し易くなる虞がある。
これに対し、突出部14、15、16の突出量αc、αm、αsが、1mm以上5mm以下の範囲内である場合は、突出部14、15、16を設けることによって各陸部10で剛性の偏りや接地圧の偏りが発生することを抑制しつつ、雪柱せん断力を効果的に大きくすることができる。この結果、より確実にスノートラクション性と耐偏摩耗性とを両立することができる。
また、センターラグ溝41とミドルラグ溝42とは、センターラグ溝41の最大溝深さDcとミドルラグ溝42の最大溝深さDmとの関係が、Dc>Dmであるため、接地圧が大きくなり易いセンター陸部11を区画するセンターラグ溝41の溝深さを確保することができ、より確実に大きな雪柱せん断力を確保することができる。この結果、より確実にスノートラクション性を向上させることができる。
また、センターラグ溝41の最大溝深さDcと周方向主溝30の最大溝深さDaとの比(Dc/Da)が0.6以上0.8以下の範囲内であり、ミドルラグ溝42の最大溝深さDmと周方向主溝30の最大溝深さDaとの比(Dm/Da)が0.5以上0.7以下の範囲内であるため、センター小ブロック11aやミドルブロック12の剛性が低くなり過ぎることを抑制しつつ、雪柱せん断力を確保することができる。つまり、Dc/Daが0.6未満であったり、Dm/Daが0.5未満であったりする場合は、センターラグ溝41やミドルラグ溝42の溝深さが比較的浅いため、センター小ブロック11aやミドルブロック12の剛性を確保し易くなり、偏摩耗は抑制し易くなるものの、センターラグ溝41やミドルラグ溝42の溝深さが浅過ぎるため、雪柱せん断力を確保し難くなる虞がある。この場合、スノートラクション性を確保し難くなる虞がある。また、Dc/Daが0.8より大きかったり、Dm/Daが0.7より大きかったりする場合は、センターラグ溝41やミドルラグ溝42の溝深さが比較的深いため、雪柱せん断力は確保し易くなるものの、センターラグ溝41やミドルラグ溝42の溝深さが深過ぎるため、センター小ブロック11aやミドルブロック12の剛性を確保し難くなる虞がある。この場合、偏摩耗を効果的に抑制し難くなる虞がある。
これに対し、Dc/Daが0.6以上0.8以下の範囲内であり、Dm/Daが0.5以上0.7以下の範囲内である場合は、センター小ブロック11aやミドルブロック12の剛性が低くなり過ぎることを抑制しつつ、雪柱せん断力を確保することができる。この結果、より確実にスノートラクション性と耐偏摩耗性とを両立することができる。
また、センターラグ溝41とミドルラグ溝42とは、いずれも段部71、76を有しているため、センター小ブロック11aやミドルブロック12の剛性を極力低下させることなく、溝深さを確保することができ、より確実に偏摩耗を抑えつつ雪柱せん断力を確保することができる。この結果、より確実にスノートラクション性と耐偏摩耗性とを両立することができる。
また、センターラグ溝41は、最大溝深さDcと段部71までの深さDc1との比(Dc1/Dc)が0.65以上0.85以下の範囲内であり、ミドルラグ溝42は、最大溝深さDmと段部76までの深さDm1との比(Dm1/Dm)が0.75以上0.95以下の範囲内であるため、より確実にセンター小ブロック11aやミドルブロック12の剛性が低くなり過ぎることを抑制しつつ、雪柱せん断力を確保することができる。つまり、Dc1/Dcが0.65未満であったり、Dm1/Dmが0.75未満であったりする場合は、段部71、76までの深さDc1、Dm1が比較的浅いため、センター小ブロック11aやミドルブロック12の剛性を確保し易くなり、偏摩耗は抑制し易くなるものの、段部71、76までの深さDc1、Dm1が浅過ぎるため、溝容積が小さくなり過ぎる虞があり、雪柱せん断力を確保し難くなる虞がある。この場合、スノートラクション性を確保し難くなる虞がある。また、Dc1/Dcが0.85より大きかったり、Dm1/Dmが0.95より大きかったりする場合は、段部71、76までの深さDc1、Dm1が比較的深いため、溝容積を確保することができ、雪柱せん断力は確保し易くなるものの、段部71、76までの深さDc1、Dm1が深過ぎるため、段部71、76を設けてもセンター小ブロック11aやミドルブロック12の剛性を確保し難くなる虞がある。この場合、偏摩耗を効果的に抑制し難くなる虞がある。
これに対し、Dc1/Dcが0.65以上0.85以下の範囲内であり、Dm1/Dmが0.75以上0.95以下の範囲内である場合は、より確実にセンター小ブロック11aやミドルブロック12の剛性が低くなり過ぎることを抑制しつつ、雪柱せん断力を確保することができる。この結果、より確実にスノートラクション性と耐偏摩耗性とを両立することができる。
また、センター小ブロック11aとショルダー小ブロック13aとミドルブロック12とには、それぞれサイプ60が形成されるため、エッジ成分を増加させることができ、エッジ効果によってより確実にスノートラクション性を向上させることができる。さらに、1つのブロック当たりのサイプ60の数は、ショルダー小ブロック13aよりもセンター小ブロック11aの方が多いため、接地圧が高いセンター陸部11でより確実にエッジ効果を得ることができ、より確実にスノートラクション性を向上させることができる。また、接地圧が低く、偏摩耗が発生し易いショルダー小ブロック13aでは、センター小ブロック11aよりもサイプ60の数が少ないため、サイプ60を設けることに起因してショルダー小ブロック13aの剛性が低くなり過ぎることを抑制でき、偏摩耗の発生を抑制することができる。これらの結果、より確実にスノートラクション性と耐偏摩耗性とを両立することができる。
また、センター小ブロック11aとミドルブロック12とには、それぞれオープンサイプ61が少なくとも2本配置されると共に、それぞれオープンサイプ61とラグ溝40との間にクローズドサイプ62が少なくとも2本配置されるため、センター小ブロック11aとミドルブロック12の偏摩耗の発生をより確実に抑制しつつ、スノートラクション性をより確実に向上させることができる。つまり、センター小ブロック11aやミドルブロック12にサイプ60を配置する際に、ラグ溝40寄りの位置にクローズドサイプ62を配置することにより、剛性が低下し易いラグ溝40近傍の位置の剛性の低下を極力抑えつつ、エッジ効果を向上させることができる。これにより、センター小ブロック11aやミドルブロック12の偏摩耗の発生をより確実に抑制しつつ、スノートラクション性をより確実に向上させることができる。この結果、より確実にスノートラクション性と耐偏摩耗性とを両立することができる。
[変形例]
なお、上述した実施形態では、周方向主溝30は4本が形成されているが、周方向主溝30は4本以外であってもよい。周方向主溝30の数に関わらず、センター陸部11は、タイヤ赤道面CLの両側に配設される2本の内側周方向主溝31によって区画され、ショルダー陸部13は、複数の周方向主溝30のうちタイヤ幅方向において最も外側に配設される最外周方向主溝32によって区画されていれば、周方向主溝30の数は問わない。
また、上述した実施形態では、センター陸部11のタイヤ周方向におけるピッチ数とショルダー陸部13とのタイヤ周方向におけるピッチ数とは同じ数になっているが、センター陸部11とショルダー陸部13で、ピッチ数は異なっていてもよい。例えば、ショルダー陸部13のピッチ数は、センター陸部11のピッチ数より多くてもよい。つまり、上述した実施形態では、トレッド部2のタイヤ赤道面CL付近の位置よりも、タイヤ幅方向における両端付近の方がタイヤ周長が短いため、ショルダー小ブロック13aのピッチ長Psは、センター小ブロック11aのピッチ長Pcよりも小さくなっているが、ショルダー陸部13のピッチ数がセンター陸部11のピッチ数より多いことにより、ショルダー小ブロック13aのピッチ長Psがセンター小ブロック11aのピッチ長Pcよりも小さくなっていてもよい。
また、センター小ブロック11aとミドルブロック12とには、2本のオープンサイプ61と2本のクローズドサイプ62が配置され、ショルダー小ブロック13aには、4本のクローズドサイプ62が配置されているが、各陸部10に形成されるサイプ60は、これ以外の本数や構成でもよい。陸部10に配置されるサイプ60は、サイプ60を配置する陸部10の位置や大きさ等に応じて適宜設定するのが好ましい。
[実施例]
図7A〜図7Dは、空気入りタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1とについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、雪上路面でのトラクション性能であるスノートラクション性と、偏摩耗のし難さについての性能である耐偏摩耗性とについての試験を行った。
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが275/80R22.5サイズの空気入りタイヤ1をJATMAで規定される規定リムのリムホイールにリム組みし、空気圧をJATMAで規定される最大空気圧に調整し、2−D4(前1軸で2輪−後2軸で前軸が4輪で駆動軸、後軸が4輪で遊動軸)の試験車両(トラック)に装着してテスト走行をすることにより行った。
各試験項目の評価方法は、スノートラクション性については、ECE R117−02(ECE Regulation No.117 Revision 2)に準拠して行われ、規定の初速度から終端速度までの加速に要する距離を測定して加速度を算出し、算出した加速度を、後述する従来例を100とする指数で表すことにより評価した。数値が大きいほど雪上路面での加速性能に優れ、スノートラクション性が高いことを示している。
また、耐偏摩耗性については、試験車両で20,000km走行後のヒール&トウ摩耗の摩耗量、具体的には、各陸部10の蹴り出し側と踏み込み側との摩耗量の差を測定し、測定した摩耗量の差の逆数を、後述する従来例を100とする指数で表示した。この数値が大きいほど、陸部10の蹴り出し側と踏み込み側との摩耗量の差が小さく、即ち、ヒール&トウ摩耗が少なく、耐偏摩耗性に優れていることを示している。
性能評価試験は、従来の空気入りタイヤの一例である従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1〜31との32種類の空気入りタイヤについて行った。このうち、従来例の空気入りタイヤは、センター細溝51を介して隣り合うセンター小ブロック列21同士のセンター小ブロック11aのピッチの位相差φcと、ショルダー細溝52を介して隣り合うショルダー小ブロック列23同士のショルダー小ブロック13aのピッチの位相差φsとが、同じ大きさになっている。
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1〜31は、センター細溝51を介して隣り合うセンター小ブロック列21同士のセンター小ブロック11aのピッチの位相差φcと、ショルダー細溝52を介して隣り合うショルダー小ブロック列23同士のショルダー小ブロック13aのピッチの位相差φsとが、全て0<φc<φsの関係を満たしている。さらに、実施例1〜31に係る空気入りタイヤ1は、センター細溝51を介して隣り合うセンター小ブロック列21同士のセンター小ブロック11aのピッチの位相差φcとセンター小ブロック11aのピッチ長Pcとの比(φc/Pc)や、ショルダー細溝52を介して隣り合うショルダー小ブロック列23同士のショルダー小ブロック13aのピッチの位相差φsと、ショルダー小ブロック13aのピッチ長Psとの比(φs/Ps)、ショルダー陸部13における位相差φsとセンター陸部11における位相差φcとの差とショルダー小ブロック13aのピッチ長Psとの比{(φs−φc)/Ps}、タイヤ幅方向に隣り合うセンター小ブロック11aとミドルブロック12とのタイヤ周方向における位相差φcmとセンター小ブロック11aのピッチ長Pcとの比(φcm/Pc)、タイヤ幅方向に隣り合うショルダー小ブロック13aとミドルブロック12とのタイヤ周方向における位相差φsmとショルダー小ブロック13aのピッチ長Psとの比(φsm/Ps)、センター小ブロック11aのタイヤ周方向における長さLbとセンターラグ溝41のタイヤ周方向における長さLgとの比(Lg/Lb)、センターラグ溝41の屈曲部45の数、センター陸部11の最大幅Wcとミドルブロック列22の最大幅Wmとの比(Wm/Wc)、センター陸部11の最大幅Wcとショルダー陸部13の最大幅Wsとの比(Ws/Wc)、センター小ブロック11a、ショルダー小ブロック13a、ミドルブロック12における周方向主溝30によって区画される位置に形成される突出部14、15、16の有無、突出部14、15、16の突出量αc、αm、αs、センター細溝51の形状、センター細溝51の溝幅、ショルダー細溝52の形状、ショルダー細溝52の溝幅、センターラグ溝41の最大溝深さDcと周方向主溝30の最大溝深さDaとの比(Dc/Da)、ミドルラグ溝42の最大溝深さDmと周方向主溝30の最大溝深さDaとの比(Dm/Da)、センターラグ溝41の最大溝深さDcと段部71までの深さDc1との比(Dc1/Dc)、ミドルラグ溝42の最大溝深さDmと段部76までの深さDm1との比(Dm1/Dm)、センター小ブロック11aとショルダー小ブロック13aのサイプ60の数、センター小ブロック11aとミドルブロック12のオープンサイプ61の数、オープンサイプ61とラグ溝40との間のクローズドサイプ62の数が、それぞれ異なっている。
なお、図7A〜図7Dにおける「センター小ブロック11aとショルダー小ブロック13aのサイプ60の数」では、「センター小ブロック11aのサイプ60の数」は、「Cs」で表し、「ショルダー小ブロック13aのサイプ60の数」は、「Ss」で表している。このため、「Cs=Ss」と記載されている部分は、センター小ブロック11aのサイプ60の数とショルダー小ブロック13aのサイプ60の数とが同数であることを示しており、「Cs>Ss」と記載されている部分は、センター小ブロック11aのサイプ60の数がショルダー小ブロック13aのサイプ60の数よりも多いことを示している。
これらの空気入りタイヤ1を用いて性能評価試験を行った結果、図7A〜図7Dに示すように、実施例1〜31に係る空気入りタイヤ1は、従来例に対して、スノートラクション性と耐偏摩耗性とを、共に向上させることができることが分かった。つまり、実施例1〜31に係る空気入りタイヤ1は、スノートラクション性と耐偏摩耗性とを両立することができる。