この発明の実施形態を、図を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、この発明を具体化した場合の一例に過ぎず、この発明を限定するものではない。
この発明の実施形態で対象にする伝動ベルトは、二つのプーリの間で動力伝達を行うベルト伝動装置のVベルトとして用いられる。例えば、車両に搭載されるベルト式無段変速機に用いられる。図1に示す例では、伝動ベルト1は、ベルト式無段変速機CVTの駆動プーリP1および従動プーリP2のそれぞれのプーリ溝Pvに巻き掛けられている。そして、伝動ベルト1は、伝動ベルト1とプーリP1,P2との間で生じる摩擦力によってトルクを伝達する。
伝動ベルト1は、例えば、図2、図3に示すように、帯状のフープ2と、多数(例えば、数百枚)の板片状のエレメント3とを備えている。そして、伝動ベルト1は、多数のエレメント3を姿勢をそろえて配列し、フープ2によって環状に結束することにより構成されている。
フープ2は、上記のように、多数のエレメントを環状に結束して保持するための部材である。したがって、フープ2には、伝動ベルト1がプーリP1,P2に巻き掛かる際に、その巻き掛かり径を自在に変更可能にするための十分な可撓性と、動力伝達時にプーリP1,P2から受ける伝達トルクや挟圧力に対抗するための十分な抗張力とを兼ね備えていることが要求される。そのため、フープ2は、例えば、図4に示すように、スチールバンドなどの可撓性のある金属製の帯状部材を、その厚さ方向に複数枚重ね合わせることによって構成されている。
エレメント3は、例えば、金属製の板片状の部材によって形成されている。エレメント3は、主要な構成要素として、ベース部4、サドル面5、第1ピラー部6、第2ピラー部7、第1フック部8、第2フック部9、第1ボス部10、第1ディンプル部11、第2ボス部12、および、第2ディンプル部13を有している。
ベース部4は、エレメント3の本体部分を形成している。エレメント3の幅方向(図2の左右方向;以下、エレメント幅方向)におけるベース部4の一方の端部が第1端部4aとなっており、エレメント幅方向におけるベース部4の他方の端部が第2端部4bとなっている。図2に示す例では、ベース部4の右側の端部が第1端部4aとなっており、ベース部4の左側の端部が第2端部4bとなっている。第1端部4aの端面4c、および、第2端部4bの端面4dが、それぞれ、プーリ溝Pvのテーパ面に対応して傾斜する面として形成されている。これら左右の端面4c,4dが、エレメント3のいわゆるフランク面であって、プーリP1,P2のそれぞれのプーリ溝Pvに摩擦接触し、プーリP1,P2と伝動ベルト1との間でトルクを伝達する。
サドル面5は、エレメント3とフープ2とを組み付けた状態で、フープ2の内周面2aと接触する面であり、エレメント3の高さ方向(図2、図3の上下方向;以下、エレメント高さ方向)におけるベース部4の上端側の端面4eに形成されている。具体的には、後述するようにベース部4の両端部4a,4bにそれぞれ形成される第1ピラー部6と第2ピラー部7との間の端面4eに、サドル面5が形成されている。
第1ピラー部6は、ベース部4の第1端部4aに、サドル面5上に立ち上がった状態に形成されている。図2に示す例では、第1ピラー部6は、ベース部4のエレメント幅方向における右側の第1端部4aから、ベース部4のエレメント高さ方向における上方へ延び出ている。第1ピラー部6は、ベース部4と一体に形成されている。
第2ピラー部7は、ベース部4の第2端部4bに、サドル面5上に立ち上がった状態に形成されている。図2に示す例では、第2ピラー部7は、ベース部4のエレメント幅方向における左側の第2端部4bから、ベース部4のエレメント高さ方向における上方へ延び出ている。第2ピラー部7は、ベース部4と一体に形成されている。
なお、上記の第1端部4aは、エレメント幅方向におけるベース部4の一方(図2の右側)の端部の周辺部分(端面4cを含む)を示している。したがって、第1ピラー部6は、端面4cを含む第1端部4aから、エレメント高さ方向における上方へ延び出るように形成されていてもよい。すなわち、第1ピラー部6は、端面4cから連続的に、端面4cと同様の傾きで、上方へ延び出るように形成されていてもよい。一方で、第1ピラー部6は、必ずしも端面4cを含まなくともよい。例えば、第1ピラー部6は、端面4cを含まずに、第1端部4aから、エレメント高さ方向における上方へ延び出るように形成されていてよい。すなわち、第1ピラー部6は、端面4cと連続せずに、上方へ延び出るように形成されていてもよい。例えば、第1ピラー部6は、端面4cから中心部3a側にずれた位置から、上方へ延び出るように形成されていてもよい。図2に示す例では、第1ピラー部6は、端面4cと連続せずに、サドル面5と垂直もしくはほぼ垂直に、上方へ立ち上がっている。
同様に、上記の第2端部4bは、エレメント幅方向におけるベース部4の他方(図2の左側)の端部の周辺部分(端面4dを含む)を示している。したがって、第2ピラー部7は、端面4dを含む第2端部4bから、エレメント高さ方向における上方へ延び出るように形成されていてもよい。すなわち、第2ピラー部7は、端面4dから連続的に、端面4dと同様の傾きで、上方へ延び出るように形成されていてもよい。一方で、第2ピラー部7は、必ずしも端面4dを含まなくともよい。例えば、第2ピラー部7は、端面4dを含まずに、第2端部4bから、エレメント高さ方向における上方へ延び出るように形成されていてよい。すなわち、第2ピラー部7は、端面4dと連続せずに、上方へ延び出るように形成されていてもよい。例えば、第2ピラー部7は、端面4dから中心部3a側にずれた位置から、上方へ延び出るように形成されていてもよい。図2に示す例では、第2ピラー部7は、端面4dと連続せずに、サドル面5と垂直もしくはほぼ垂直に、上方へ立ち上がっている。
したがって、図2に示す例では、第1ピラー部6および第2ピラー部7は、いずれも、プーリP1,P2と接触することがなく、プーリP1,P2から荷重を受けない。すなわち、第1ピラー部6および第2ピラー部7には、プーリP1,P2からエレメント幅方向を向いた力は作用しない。そのため、第1ピラー部6および第2ピラー部7の耐久性や信頼性が向上する。
第1フック部8は、第1ピラー部6からエレメント幅方向におけるベース部4の中心部3aに向けて延び出るように形成されている。具体的には、第1フック部8は、ベース部4のエレメント高さ方向における第1ピラー部6の上端部6aから、中心部3aに向けて突出している。第1フック部8は、第1ピラー部6およびベース部4と一体に形成されている。
なお、中心部3aは、エレメント幅方向におけるベース部4の形状上の中心、あるいは、エレメント幅方向におけるベース部4の寸法上の中心である。すなわち、中心部3aは、エレメント幅方向における中心位置を示す中心線であり、第1端部4aの端面4cと第2端部4bの端面4dとの間の距離を等分する位置を示す部分である。
第2フック部9は、第2ピラー部7からエレメント幅方向におけるベース部4の中心部3aに向けて延び出るように形成されている。具体的には、第2フック部9は、ベース部4のエレメント高さ方向における第2ピラー部7の上端部7aから、中心部3aに向けて突出している。第2フック部9は、第2ピラー部7およびベース部4と一体に形成されている。
上記の第1フック部8および第2フック部9には、それぞれ、移動規制面14および移動規制面15が形成されている。移動規制面14および移動規制面15は、エレメント3とサドル面5上に配置されたフープ2とがエレメント幅方向へ相対移動した場合に、フープ2の外周面2bのエッジ2cと接触し、エレメント3とフープ2とがそれ以上に相対移動してしまうことを制限する。エッジ2cは、フープ2の幅方向(図2の左右方向;以下、フープ幅方向)における外周面2bの端であり、フープ2のフープ幅方向における両側の側面2dおよび側面2eと、外周面2bとが交わるコーナー部分である。上記のような第1フック部8および第2フック部9、ならびに、移動規制面14および移動規制面15の具体的な形状、また、その形状から得られる特有の作用効果等の詳細については後述する。
第1ボス部10は、第1ピラー部6の上端部6aに形成されている。具体的には、第1ボス部10は、上端部6aの板厚方向(図3の左右方向;以下、エレメント板厚方向)における第1ピラー部6の一方の前面6bから外部に突出している。第1ボス部10は、エレメント3とフープ2とを組み付けた状態で隣接する他のエレメント3の第1ディンプル部11と緩くはまり合うように形成されている。
第1ディンプル部11は、第1ピラー部6の上端部6aに形成されている。具体的には、第1ディンプル部11は、上端部6aのエレメント板厚方向における第1ピラー部6の他方の後面6cから内部にくぼんでいる。第1ディンプル部11は、エレメント3とフープ2とを組み付けた状態で隣接する他のエレメント3の第1ボス部10と緩くはまり合うように形成されている。したがって、伝動ベルト1は、フープ2の周方向に隣接するエレメント3同士で、第1ボス部10と第1ディンプル部11とがはまり合っている。
同様に、第2ボス部12は、第2ピラー部7の上端部7aに形成されている。具体的には、第2ボス部12は、上端部7aのエレメント板厚方向における第2ピラー部7の一方の前面7bから外部に突出している。第2ボス部12は、エレメント3とフープ2とを組み付けた状態で隣接する他のエレメント3の第2ディンプル部13と緩くはまり合うように形成されている。
第2ディンプル部13は、第2ピラー部7の上端部7aに形成されている。具体的には、第2ディンプル部13は、上端部7aのエレメント板厚方向における第2ピラー部7の他方の後面7cから内部にくぼんでいる。第2ディンプル部13は、エレメント3とフープ2とを組み付けた状態で隣接する他のエレメント3の第2ボス部12と緩くはまり合うように形成されている。したがって、伝動ベルト1は、フープ2の周方向に隣接するエレメント3同士で、第2ボス部12と第2ディンプル部13とがはまり合っている。
上記のように、第1ボス部10と第1ディンプル部11、および、第2ボス部12と第2ディンプル部13とが、それぞれ、互いにはまり合うことにより、隣接するエレメント3同士の相対位置を決めるとともに、それら隣接するエレメント3同士の相対移動が規制される。それにより、エレメント3の環状の配列状態、および、その配列状態での姿勢が維持される。
また、エレメント3は、姿勢をそろえて環状に配列された状態でフープ2によって結束され、その状態でプーリP1,P2に巻き掛けられる。したがって、伝動ベルト1がプーリP1,P2に巻き掛けられた状態では、多数のエレメント3の列が、プーリP1,P2の中心に対して扇状に広がり、かつ、互いに密着している必要がある。そのため、エレメント高さ方向におけるベース部4の下側の部分が薄肉に形成されている。具体的には、エレメント板厚方向におけるベース部4の一方の前面4fで、サドル面5よりも下側の所定の位置に、ロッキングエッジ16が形成されている。ベース部4は、このロッキングエッジ16を起点にして、ロッキングエッジ16よりも下側の部分の板厚が薄くなっている。そのため、伝動ベルト1がプーリP1,P2に巻き掛けられ、多数のエレメント3の列が扇状に広がる状態では、ロッキングエッジ16が、隣接する他のエレメント3のエレメント板厚方向におけるベース部4の他方の後面4gと接触する。
図2、図5に示すように、エレメント3は、第1フック部8の先端部8aと第2フック部9の先端部9aとの間の第1開口幅W1がフープ2の幅WFよりも狭くなっている。先端部8aと先端部9aとは、エレメント幅方向で互いに対向している。第1開口幅W1は、先端部8aと先端部9aとの間の寸法であり、エレメント幅方向における先端部8aと先端部9aとの間が最も狭くなる部分の距離である。幅WFは、フープ幅方向における両側面2d,2eの間の寸法である。このように、エレメント3の第1開口幅W1がフープ2の幅WFよりも狭いことにより、後述するように、エレメント3とフープ2とを組み付けた状態で、エレメント3のフープ2からの脱落が防止される。
また、図2、図5に示すように、エレメント3は、中心部3aから第1ピラー部6の根元部6dまでの第1寸法D1が、中心部3aから第2ピラー部7の根元部7dまでの第2寸法D2よりも大きい。根元部6dは、第1ピラー部6の内壁面6eがベース部4に接続する部分である。根元部7dは、第2ピラー部7の内壁面7eがベース部4に接続する部分である。内壁面6eと内壁面7eとは、エレメント幅方向で互いに対向している。第1寸法D1は、中心部3aと根元部6dとの間の寸法であり、エレメント幅方向における中心部3aと根元部6dとの間の距離である。第2寸法D2は、中心部3aと根元部7dとの間の寸法であり、エレメント幅方向における中心部3aと根元部7dとの間の距離である。なお、内壁面6eおよび内壁面7eは、それぞれ、一つの平面であってもよく、あるいは、曲面であってもよい。あるいは、複数の平面または曲面を組み合わせたものであってもよい。図2、図5に示す例では、内壁面6eは、傾きが異なる二つの平面から構成されている。内壁面7eは、一つの平面から構成されている。
したがって、エレメント3は、フープ2を配置するサドル面5の形状、および、各根元部6d,7d周辺の形状が、エレメント幅方向における左右で非対称になっている。具体的には、第1フック部8、第1ピラー部6、根元部6dの近傍部分、および、サドル面5の第1ピラー部6側の端部5aで囲まれる空間が、第2フック部9、第2ピラー部7、根元部7dの近傍部分、および、サドル面5の第2ピラー部7側の端部5bで囲まれる空間よりも広くなっている。この第1ピラー部6側の根元部6d周辺の広い空間が、エレメント3とフープ2とを組み付ける際に、当初にフープ2を入り込ませる組み付け用空間17となっている。
具体的には、組み付け用空間17は、後述する第1傾斜面14a、第2ピラー部7と対向する第1ピラー部6の内壁面6e、および、ガイド面18で囲まれる空間である。第1傾斜面14aは、後述するように、第1フック部8のサドル面5に対向する面(すなわち、下面8b)に形成され、サドル面5に対して所定のこう配で傾斜する面である。ガイド面18は、サドル面5の第1ピラー部6側の端部5aから屈曲または湾曲し、サドル面5に対して第1傾斜面14aと同じ方向に傾斜する面である。したがって、組み付け用空間17にフープ2を入れ込む際には、フープ2の内周面2aが組み付け用空間17のガイド面18に沿うようにして、フープ2が組み付け用空間17に入り込む。すなわち、フープ2は、エレメント3に対して傾斜し、エレメント3の第1フック部8と第2フック部9との間の開口部を通って組み付け用空間17に入り込む。そのため、前述したように第1フック部8と第2フック部9との間の第1開口幅W1がフープ2の幅WFよりも狭くとも、第1フック部8と第2フック部9との間の開口部を通して、エレメント3とフープ2とを組み付けることができる。
この発明の実施形態における伝動ベルト1では、上記のように、エレメント3に形成された組み付け用空間17を用いて、エレメント3とフープ2とを組み付ける。具体的には、図6に示すように、組み付けの初期段階で、一時的に、フープ2のフープ幅方向における一方の端部2f(または2g)を、エレメント3の組み付け用空間17に向けて斜めに挿入する。もしくは、フープ2に対してエレメント3を傾けて、フープ2のフープ幅方向における一方の端部2f(または2g)に、エレメント3の組み付け用空間17をはめ込む。図6に示す例では、エレメント3の組み付け用空間17に、フープ2の端部2fがはめ込まれている。
図2、図6に示すように、エレメント3は、第1ピラー部6の内壁面6eと第2フック部9の先端部9aとの間の第2開口幅W2がフープ2の幅WFよりも広い。第2開口幅W2は、内壁面6eと先端部9aとの間の寸法である。具体的には、第2開口幅W2は、第1ピラー部6の内壁面6eとフープ2との当接部6fと、先端部9aとの間の距離である。当接部6fは、組み付け用空間17に収容されたフープ2の側面2dまたはエッジ2cが組み付け用空間17内の第1ピラー部6に接触する箇所である。すなわち、当接部6fは、組み付け用空間17に収容されたフープ2の側面2dまたはエッジ2cが第1ピラー部6の内壁面6eに接触する箇所である。
例えば、図7に示すように、エレメント3とフープ2とを組み付ける際には、フープ2の側面2dまたはエッジ2cが第1ピラー部6の内壁面6eに接触するように、フープ2を組み付け用空間17に入り込ませる(矢印a)。その後、組み付け用空間17に入り込ませたフープ2を、一方の側面2d側の所定箇所を中心にして他方の側面2eが先端部9aに近付くように回転させる(矢印b)。さらに、側面2eが先端部9aを通過するようにフープ2を回転させるとともに、組み付け用空間17から抜き出したフープ2をエレメント3のサドル面5に配置する(矢印c)。もしくは、第1ピラー部6の内壁面6eがフープ2の側面2dまたはエッジ2cに接触するように、組み付け用空間17にフープ2を挿入させる。その後、フープ2を組み付け用空間17に挿入させたエレメント3を、組み付け用空間17内の所定箇所を中心にして、先端部9aが側面2eに近付くように回転させる。さらに、先端部9aが側面2eを通過するようにエレメント3を回転させるとともに、エレメント3のサドル面5に組み付け用空間17から抜き出したフープ2を配置する。そのようにしてエレメント3とフープ2とを組み付ける場合に、側面2eが先端部9aを通過する際、もしくは、先端部9aが側面2eを通過する際に、側面2dまたはエッジ2cと内壁面6eとが接触する箇所と先端部9aとの間が最も狭くなる部分の距離が、第2開口幅W2である。したがって、第2開口幅W2がフープ2の幅WFよりも大きくなるようにエレメント3を形成することにより、エレメント3とフープ2とを容易に組み付けることができる。
なお、上記の図7に示す例では、エレメント3の第1フック部8側の移動規制面14(すなわち、第1傾斜面14a)が、平面の傾斜面で形成されている。それに対して、エレメント3の第2フック部9側の移動規制面15(すなわち、第2傾斜面15a)が、後述する例のように、第2フック部9の外部に凸となるように湾曲する曲面の傾斜面で形成されている。この発明の実施形態における伝動ベルト1では、第1傾斜面または第2傾斜面の少なくともいずれか一方を、曲面、または、サドル面5に対して所定のこう配で傾斜する平面として形成することが可能である。あるいは、サドル面5に対するこう配が異なる複数の平面で形成することも可能である。
さらに、この発明の実施形態における伝動ベルト1では、図2、図6に示すように、第2開口幅W2が、フープ2の幅WFよりも広く、なおかつ、フープ2の対角距離DFよりも広くともよい。対角距離DFは、フープ2の外周面2bのエッジ2cと、そのエッジ2cの対角位置にあるフープ2の内周面2aのエッジ2hとの間の距離である。したがって、対角距離DFは幅WFよりも長い。エッジ2hは、フープ2のフープ幅方向における内周面2aの端であり、フープ2のフープ幅方向における両側の側面2dおよび側面2eと、内周面2aとが交わるコーナー部分である。図2、図6に示すように、対角距離DFは、エレメント3とフープ2とを組み付ける際に、サドル面5に対してフープ2が所定の角度傾いた状態で、エレメント幅方向におけるフープ2の幅が最大になる距離である。したがって、第2開口幅W2が対角距離DFよりも広くなるようにエレメント3を形成することにより、エレメント3とフープ2とを、確実に、かつ、容易に組み付けることができる。
なお、上記の第2開口幅W2は、必ずしも、フープ2の対角距離DFまたは幅WFより広くなくともよい。例えば、第2開口幅W2が幅WFよりも狭くなるように、エレメント3を形成することもできる。前述したように、フープ2は、スチールバンドなどの可撓性を有する帯状部材によって形成されている。そのため、例えば、フープ幅方向における両端部分を互いに近付けるように、フープ2を変形させる(撓ませる、あるいは、反らせる)ことも可能である。したがって、そのようにフープ2を変形させることにより、フープ2の幅WFを一時的に第2開口幅W2よりも小さくすることができる。そのため、第2開口幅W2が幅WFよりも狭い場合であっても、エレメント3とフープ2とを組み付けることが可能である。
したがって、この発明の実施形態における伝動ベルト1では、上記のように第2開口幅W2を幅WFまたは対角距離DFよりも広くすることにより、フープ2を変形させることなく、フープ2をエレメント3のサドル面5に容易に配置することができる。すなわち、エレメント3とフープ2とを容易に組み付けることができる。また、フープ2を変形させなくともよいことから、組み付け時にフープ2に掛かる力を軽減することができる。そのため、フープ2の耐久性や信頼性が向上する。
このように、この発明の実施形態における伝動ベルト1は、エレメント3とフープ2とを組み付ける際に、フープ2のフープ幅方向における一方の端部2f(または2g)を、一時的に、エレメント3の組み付け用空間17に挿入する。そして、エレメント3の開口部分に、すなわち、第1フック部8と第2フック部9との間に、フープ2を通して組み込む。その後、組み付け用空間17からフープ2を抜き出すとともに、フープ2をエレメント幅方向に移動させ、エレメント3のサドル面5上における規定の位置またはそれに近い位置に配置させる。それにより、エレメント3とフープ2とが組み付けられる。この場合の規定の位置は、前述の図2、図5に示すように、フープ2のフープ幅方向における中心部2iとエレメント3の中心部3aとが一致する位置である。エレメント3のサドル面5上における規定の位置またはそれに近い位置にフープ2を配置した後は、すなわち、エレメント3とフープ2とを組み付けた状態では、前述したように、エレメント3の第1開口幅W1がフープ2の幅WFよりも狭くなっているため、フープ2からエレメント3が脱落してしまうことを防止することができる。
なお、エレメント3のサドル面5には、中心部3aで高さ方向の上方に凸となるクラウン(図示せず)を形成することができる。そのようなクラウンもしくはクラウン状の形状をサドル面5に設けることにより、伝動ベルト1の走行時に、エレメント幅方向におけるフープ2の位置を調芯することができる。そのため、フープ2を、常時、上記のような規定の位置またはそれに近い位置に配置させることができる。
上記のように、伝動ベルト1は、エレメント3とフープ2との組み付けを容易にするために、エレメント3の第1フック部8側に組み付け用空間17が形成されている。それとともに、エレメント3の第2開口幅W2がフープ2の幅WFまたは対角距離DFよりも狭くなっている。したがって、例えば、前述したような伝動ベルト1の経時変化により、エレメント3の各ボス部10,12と各ディンプル部11,13とのはめ合いが外れた場合には、仮に、エレメント3とフープ2とがエレメント幅方向に相対移動すると、フープ2の端部2fが再び組み付け用空間17内に入り込んでしまう可能性がある。その結果、エレメント3の自重によってエレメント3がフープ2から脱落してしまう可能性がある。
そこで、この発明の実施形態における伝動ベルト1では、前述したように、エレメント3の第1フック部8および第2フック部9に、それぞれ、移動規制面14および移動規制面15が形成されている。移動規制面14および移動規制面15は、それぞれ、エレメント3とサドル面5上に配置されたフープ2とがエレメント幅方向へ相対移動した場合に、フープ2の外周面2bのエッジ2cと接触する傾斜面である。したがって、フープ2は、サドル面5上で、上記のような規定の位置またはそれに近い位置に配置された状態では、移動規制面14および移動規制面15により、エレメント幅方向における相対移動が制限される。
具体的には、図2、図5に示すように、移動規制面14は、第1フック部8の下面8bに形成されている。下面8bは、第1フック部8のサドル面5に対向する面であり、エレメント3とフープ2とを組み付けた状態で、フープ2の外周面2bに対向し、エレメント3のフープ2からの脱落を防止する。そして、移動規制面14は、サドル面5との間隔S1が、サドル面5の中心部3a寄りの箇所でフープ2の厚さTFよりも大きく、かつ、エレメント幅方向におけるフープ2から第1ピラー部6側に外れた箇所で厚さTFよりも小さくなるように形成されている。すなわち、移動規制面14は、第1フック部8の第1ピラー部6側から先端部8a側へ向かうにつれてサドル面5との間隔S1が広くなるように、サドル面5に対して傾斜する第1傾斜面14aとなっている。図2、図5に示す例では、第1傾斜面14aは、サドル面5に対して所定のこう配で傾斜する平面として形成されている。間隔S1は、移動規制面14すなわち第1傾斜面14aとサドル面5との間の距離である。上記のように、移動規制面14がサドル面5に対して傾斜する第1傾斜面14aとなっていることから、間隔S1は、エレメント幅方向における位置に応じて変化する。また、厚さTFは、フープ2の内周面2aと外周面2bとの間の寸法であり、フープ2の厚さ方向における内周面2aと外周面2bとの間が最も厚くなる部分の距離である。
同様に、移動規制面15は、第2フック部9の下面9bに形成されている。下面9bは、第2フック部9のサドル面5に対向する面であり、エレメント3とフープ2とを組み付けた状態で、フープ2の外周面2bに対向し、エレメント3のフープ2からの脱落を防止する。そして、移動規制面15は、サドル面5との間隔S2が、サドル面5の中心部3a寄りの箇所でフープ2の厚さTFよりも大きく、かつ、エレメント幅方向におけるフープ2から第2ピラー部7側に外れた箇所で厚さTFよりも小さくなるように形成されている。すなわち、移動規制面15は、第2フック部9の第2ピラー部7側から先端部9a側へ向かうにつれてサドル面5との間隔S2が広くなるように、サドル面5に対して傾斜する第2傾斜面15aとなっている。図2、図5に示す例では、第2傾斜面15aは、サドル面5に対して所定のこう配で傾斜する平面として形成されている。間隔S2は、移動規制面15すなわち第2傾斜面15aとサドル面5との間の距離である。上記のように、移動規制面15がサドル面5に対して傾斜する第2傾斜面15aとなっていることから、間隔S2は、上記の間隔S1と同様に、エレメント幅方向における位置に応じて変化する。なお、第1傾斜面14aおよび第2傾斜面15aは、後述する例のように、サドル面5に対して傾斜する曲面、あるいは、複数の平面として形成することもできる。
結局、移動規制面14は、サドル面5との間隔S1が、サドル面5の中心部3a寄りの箇所で厚さTFよりも大きく、かつ、フープ2から第1ピラー部6側に外れた箇所で厚さTFよりも小さくなる第1傾斜面14aとなっている。また、移動規制面15は、サドル面5との間隔S2が、サドル面5の中心部3a寄りの箇所で厚さTFよりも大きく、かつ、フープ2から第2ピラー部7側に外れた箇所で厚さTFよりも小さくなる第2傾斜面15aとなっている。したがって、図2、図5に示すように、エレメント3とフープ2とを組み付け、フープ2をサドル面5上で規定の位置またはそれに近い位置に配置した状態で、エレメント3とフープ2とがエレメント幅方向に相対移動すると、第1傾斜面14aまたは第2傾斜面15aのいずれかの位置に、フープ2のエッジ2cが接触する。図5では、エレメント3に対してフープ2が第1ピラー部6側(図5の右側)に相対移動した場合に、第1傾斜面14aとエッジ2cとが接触する箇所を、第1接触部14bとして示してある。また、エレメント3に対してフープ2が第2ピラー部7側(図5の左側)に相対移動した場合に、第2傾斜面15aとエッジ2cとが接触する箇所を、第2接触部15bとして示してある。
エレメント3は、上記の第1接触部14bと第2接触部15bとの間の距離(以下、第3寸法D3)がフープ2の幅WFよりも大きい。すなわち、第3寸法D3が幅WFよりも大きくなるように、上記の第1傾斜面14aおよび第2傾斜面15aの形状・寸法、ならびに、傾斜角度等がそれぞれ設定されている。図2、図5に示すように、第3寸法D3は、幅WFに対して所定のクリアランスCを付加した値に設定されている。クリアランスCは、第3寸法D3が幅WFよりも若干大きくなる値に設定されている。例えば、第1傾斜面14aおよび第2傾斜面15aが、通常の状態(エレメント3のサドル面5に対してフープ2が規定の位置またはそれに近い位置に配置された状態)で、フープ2の移動を規制しない程度に、クリアランスCの値が設定されている。そして、第1傾斜面14aおよび第2傾斜面15aは、前述したように、エレメント3とサドル面5上の規定の位置またはそれに近い位置に配置されたフープ2とがエレメント幅方向に相対移動した場合に、その相対移動を制限する。すなわち、第1傾斜面14aおよび第2傾斜面15aによって、エレメント幅方向におけるクリアランスC以上のエレメント3とフープ2との相対移動が規制される。
このように、エレメント3は、第1フック部8と第2フック部9との間隔、すなわち第1開口幅W1がフープ2の幅WFより狭いことにより、フープ2の両側面2d,2eにそれぞれ対向する面を有している。すなわち、エレメント3の、フープ2の両側面2d,2eに対向する面が、それぞれ、第1傾斜面14aおよび第2傾斜面15aとなっている。第1傾斜面14aおよび第2傾斜面15aは、いずれも、エレメント3とフープ2とを組み付けた通常の状態で、フープ2のエッジ2cには接触せずに、そのエッジ2cに対向している。それら第1傾斜面14aおよび第2傾斜面15aは、サドル面5との間隔S1,S2が、いずれも、サドル面5の中央寄りの箇所で、フープ2の厚さTFより大きく、かつ、フープ幅方向のフープ2から外れた箇所で、フープ2の厚さTFより小さくなっている。
したがって、図2、図5に示す例では、エレメント3がフープ2に対して図2、図5の下方向に相対移動しようとした場合、第1開口幅W1がフープ2の幅WFよりも狭いので、フープ2が第1フック部8および第2フック部9に引っ掛かる。そのため、第1フック部8および第2フック部9を設けてあることにより、エレメント3がフープ2から脱落してしまうことが防止される。また、第1傾斜面14aおよび第2傾斜面15aは、フープ2のエッジ2cに、図2、図5の上下方向だけでなく左右方向(すなわち、エレメント幅方向)でも対向している。そのため、エレメント3とフープ2とがエレメント幅方向に相対移動しようとした場合、第1傾斜面14aおよび第2傾斜面15aのいずれか一方にフープ2のエッジ2cが接触し、そのエレメント幅方向の相対移動が規制される。したがって、フープ2のいずれか一方の端部2f(または2g)が第1フック部8または第2フック部9から外れるほどのエレメント幅方向の相対移動が生じない。そのため、エレメント3がフープ2から脱落してしまうことを、より確実に防止することができる。
この発明の実施形態における伝動ベルト1は、上述した例に限定されるものではない。この発明の実施形態における伝動ベルト1は、例えば、次の図8、図9、図10、図11、図12に示すようなエレメント20,30,40,50,60,70を用いて構成することもできる。なお、図8、図9、図10、図11、図12、図13に示す各エレメント20,30,40,50,60,70において、前述の図2、図3で示したエレメント3と構成や機能が同じ構成要素、部位等については、図2、図3と同じ参照符号を付けてある。
図8に示すエレメント20は、第1フック部8側の移動規制面14として第1傾斜面21、および、第2フック部9側の移動規制面15として第2傾斜面22を有している。第1傾斜面21は、サドル面5に対して傾斜するとともに、第1フック部8の外部に凸となるように湾曲する曲面によって形成されている。また、第2傾斜面22は、サドル面5に対して傾斜するとともに、第2フック部9の外部に凸となるように湾曲する曲面によって形成されている。
図9に示すエレメント30は、第1フック部8側の移動規制面14として第1傾斜面31、および、第2フック部9側の移動規制面15として第2傾斜面32を有している。第1傾斜面31は、サドル面5に対して傾斜するとともに、第1フック部8の外部に凸となるように屈折して連なる複数の平面によって形成されている。また、第2傾斜面32は、サドル面5に対して傾斜するとともに、第2フック部9の外部に凸となるように屈折して連なる複数の平面によって形成されている。この図9に示す例では、第1傾斜面31および第2傾斜面32は、いずれも、二つの平面によって形成されている。
上記の図8、図9に示す例では、エレメント20およびエレメント30における移動規制面14は、いずれも、第1フック部8の外部に凸となる傾斜面になっている。また、エレメント20およびエレメント30における移動規制面15も、いずれも、第2フック部9の外部に凸となる傾斜面になっている。このように、第1フック部8側の移動規制面14および第2フック部9側の移動規制面15の両方を、それぞれ、フック部8,9の外部に凸となる傾斜面とすることにより、第1フック部8と第2フック部9との間の開口部付近の幅を広く取ることができる。そのため、エレメント20,30とフープ2とを組み付けを容易に行うことができる。
また、上記のように、移動規制面14,15の両方を、それぞれ、フック部8,9の外部に凸となる傾斜面とすることにより、フック部8,9の付け根付近(すなわち、第1フック部8が第1ピラー部6に接続する部分、および、第2フック部9が第2ピラー部7に接続する部分)の間隔S1,S2を広くすることができる。そのため、移動規制面14,15によってエレメント20,30とフープ2とのエレメント幅方向における相対移動を緩やかに規制することができる。その結果、移動規制面14,15とフープ2とが接触した場合の衝撃を緩和することができ、伝動ベルト1の耐久性および信頼性を向上させることができる。
図10に示すエレメント40は、第1フック部8側の移動規制面14として第1傾斜面41、および、第2フック部9側の移動規制面15として第2傾斜面42を有している。第1傾斜面41は、サドル面5に対して傾斜するとともに、第1フック部8の内部に凹となるように湾曲する曲面によって形成されている。また、第2傾斜面42は、サドル面5に対して傾斜するとともに、第2フック部9の内部に凹となるように湾曲する曲面によって形成されている。
図11に示すエレメント50は、第1フック部8側の移動規制面14として第1傾斜面51、および、第2フック部9側の移動規制面15として第2傾斜面52を有している。第1傾斜面51は、サドル面5に対して傾斜するとともに、第1フック部8の内部に凹となるように屈折して連なる複数の平面によって形成されている。また、第2傾斜面52は、サドル面5に対して傾斜するとともに、第2フック部9の内部に凹となるように屈折して連なる複数の平面によって形成されている。この図11に示す例では、第1傾斜面31および第2傾斜面32は、いずれも、二つの平面によって形成されている。
上記の図10、図11に示す例では、エレメント40およびエレメント50における移動規制面14は、いずれも、第1フック部8の内部に凹となる傾斜面になっている。また、エレメント40およびエレメント50における移動規制面15も、いずれも、第2フック部9の内部に凹となる傾斜面になっている。このように、第1フック部8側の移動規制面14および第2フック部9側の移動規制面15の両方を、それぞれ、フック部8,9の内部に凹となる傾斜面とすることにより、フック部8,9の付け根付近の間隔S1,S2を狭くすることができる。そのため、移動規制面14,15によってエレメント40,50とフープ2とのエレメント幅方向における相対移動を確実に規制することができる。その結果、フープ2からのエレメント40,50の脱落を確実に防止することができる。
また、前述の図7で示したように、一時的に組み付け用空間17に入り込ませたフープ2を、組み付け用空間17から抜き出しつつ回転させてサドル面5に配置する際に、フープ2の側面2d側の先端(エッジ2c)がたどる円弧状の軌跡に合わせて、移動規制面14の形状を設定することができる。同様に、フープ2の側面2e側の先端(エッジ2h)がたどる円弧状の軌跡に合わせて、移動規制面15の形状を設定することができる。そのため、エレメント40,50とフープ2との組み付け性を向上させることができる。
図12に示すエレメント60は、第1フック部8側の移動規制面14として第1傾斜面61、および、第2フック部9側の移動規制面15として第2傾斜面62を有している。第1傾斜面61は、サドル面5に対して傾斜するとともに、第1フック部8の外部に凸となるように湾曲する曲面によって形成されている。また、第2傾斜面62は、サドル面5に対して傾斜するとともに、第2フック部9の内部に凹となるように湾曲する曲面によって形成されている。
図13に示すエレメント70は、第1フック部8側の移動規制面14として第1傾斜面71、および、第2フック部9側の移動規制面15として第2傾斜面72を有している。第1傾斜面71は、サドル面5に対して傾斜するとともに、第1フック部8の内部に凹となるように屈折して連なる複数の平面によって形成されている。また、第2傾斜面72は、サドル面5に対して傾斜するとともに、第2フック部9の外部に凸となるように屈折して連なる複数の平面によって形成されている。この図13に示す例では、第1傾斜面71および第2傾斜面72は、いずれも、二つの平面によって形成されている。
上記の図12、図13に示す例のように、この発明の実施形態における伝動ベルト1は、フック部8,9の外部に凸となる傾斜面と、フック部8,9の内部に凹となる傾斜面とを組み合わせて、移動規制面14,15を構成してもよい。上述したようなフック部8,9の外部に凸となる傾斜面および内部に凹となる傾斜面のそれぞれの利点を考慮し、それらを適宜組み合わせて移動規制面14,15を形成することにより、伝動ベルト1の組み付け性の向上と、信頼性の向上との両立を図ることができる。
また、この発明の実施形態における伝動ベルト1は、例えば、図14、図15に示すように、エレメント80の中央部分に、一組のボス部81およびディンプル部82を設けることもできる。なお、図14、図15に示す伝動ベルト1において、前述の図2、図3で示した伝動ベルト1と構成や機能が同じ構成要素については、図2、図3と同じ参照符号を付けてある。
図14、図15に示す伝動ベルト1は、フープ2およびエレメント80から構成されている。エレメント80は、基本的に、前述したエレメント3と同様の構成であり、エレメント3における第1ボス部10、第1ディンプル部11、第2ボス部12、および、第2ディンプル部13に替えて、ボス部81およびディンプル部82が設けられている。
ボス部81は、エレメント80のベース部4の中央部分(中心部80aの近傍)に形成されている。具体的には、ボス部81は、ベース部4のエレメント板厚方向(図15の左右方向)における一方の前面4fから外部に突出している。ボス部81は、エレメント80とフープ2とを組み付けた状態で隣接する他のエレメント80のディンプル部82と緩くはまり合うように形成されている。
ディンプル部82は、エレメント80のベース部4の中央部分(中心部80aの近傍)に形成されている。具体的には、ディンプル部82は、ベース部4のエレメント板厚方向における他方の後面4gから内部にくぼんでいる。ディンプル部82は、エレメント80とフープ2とを組み付けた状態で隣接する他のエレメント80のボス部81と緩くはまり合うように形成されている。したがって、伝動ベルト1は、フープ2の周方向に隣接するエレメント80同士で、ボス部81とディンプル部82とがはまり合っている。
上記のように、ボス部81とディンプル部82とが互いにはまり合うことにより、隣接するエレメント80同士を位置決めし、それら隣接するエレメント80同士の、エレメント幅方向(図14の左右方向)およびエレメント高さ方向(図14、図15の上下方向)における相対移動が規制される。また、この図14、図15に示す例では、エレメント80の中心部80a付近の一箇所で、ボス部81とディンプル部82とがはまり合う。したがって、隣接するエレメント80同士は、上記のようなエレメント幅方向およびエレメント高さ方向の相対移動は規制されるが、ボス部81とディンプル部82とのはめ合い部を中心とする相対回転が可能である。そのため、例えば、エレメント80とフープ2とを組み付ける際に、エレメント80同士を相対回転させて、前述の図6で示したようなフープ2に対してエレメント80を傾けた状態を容易に実現することができる。よって、エレメント80とフープ2との組み付け性が向上する。
なお、前述の図8、図9、図10、図11、図12、図13で示した各エレメント20,30,40,50,60,70における第1ボス部10、第1ディンプル部11、第2ボス部12、および、第2ディンプル部13に替えて、この図14、図15に示すエレメント80のボス部81およびディンプル部82を設けることもできる。
また、この発明の実施形態における伝動ベルト1では、例えば、上述した例で示したエレメント3(以下、第1エレメント3)が、第1ピラー部6側に組み付け用空間17を設けているのに対し、第2ピラー部7側に、同様の組み付け用空間17を設けた第2エレメント(図示せず)を併用することもできる。すなわち、第1エレメント3、および、第1エレメント3と左右対称形状の第2エレメントと、フープ2とを組み合わせて、伝動ベルト1を構成することもできる。その場合、第1エレメント3と第2エレメントとを同数ずつ用いることにより、エレメント幅方向における左右の重量分布や応力分布を均等にし、バランスのよい伝動ベルト1を構成することができる。