JP4835466B2 - 伝動用無端ベルト - Google Patents

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Description

本発明は、ベルト式無段変速機に用いられる伝動用無端ベルトに係り、詳しくはリンクプレートを分割ピンにより連結してなる伝動用無端ベルトに関する。
近時、自動車に搭載されるトランスミッションとしてベルト式無段変速機が注目されている。該無段変速機の伝動用無端ベルトとして、リンクプレートを連結ピンにより連結したリンク式ベルトがあり、該リンク式ベルトにおいて連結ピンを分割ピンとして、各リンクの屈曲に際して、各リンクに対して固定されている各分割ピンが転がり接触して摩擦抵抗を軽減したものが知られている。
上記リンク式ベルトは、各連結ピンが無段変速機のプライマリ及びセカンダリの各プーリのシーブ面に接触して動力伝達するが、ピンとシーブ面との接触に起因する騒音の発生を低減するため、各分割ピンを長尺ピンと短尺ピンとにより構成し、長尺ピンのみをシーブ面に当接するものも知られている。
従来、上記長尺ピン及び短尺ピンからなる分割ピンを用いた伝動用無端ベルトにおいて、長尺ピンに抜止め用のリテーナを軸方向移動不能(圧入又はスナップリング様の溝係合)により装着すると共に、該リテーナに、短尺ピンの端面と当接し得る当接部を一体に形成して、分割ピンがリンクプレートから抜き出ることを防止した技術が本出願人により提案されている(特許文献1参照)。
国際公開番号WO2005/068874 A1
上記リテーナ4は、図10に示すように、長尺ピン2に軸方向移動不能に装着されると共に、その当接部4aにより短尺ピン3の端面3aを押えている。しかし、リンク式ベルトからなる伝動用無端ベルトは、交互に連結される各リンクプレート1,1’間に各リンクプレートが相対回動して自由に屈曲運動するために所定隙間(公差)が必要であり、かつ製作上の部品公差としても生じる。図11に示すように、各リンクプレート1,1’が一方に寄ると、短尺ピン3の端面3aに形成される隅アール部Rの存在と相俟って、一方側の最外側リンクプレート1のピン孔1bと短尺ピン3との接触が全面接触とならず、該リンクプレート1と短尺ピン3との片当りが生じ、リンクプレート、ひいては伝動用無端ベルトの耐久性を低下する虞がある。
なお、図10において、Bは短尺ピン3の長さ、Aは隙間がない状態での全リンクプレート1,1’の全幅、Cは長尺ピン2に装着された左右両リテーナ4,4の内幅間隔であり、B−Aが上記所定隙間(公差)で、リテーナ間隔Cが短尺ピン3の長さBに近い方が望ましい。従って、例え上記公差が0であっても、ピンの隅アール部Rの存在により、最外リンクプレートのピン孔1bと短尺ピン3の端部分とは全面接触とはならない。
また、上記特許文献1には、(図4参照)、リテーナをシーブ壁面に接する実施例が記載されており、リテーナが長尺ピンから外れる方向にずれた場合でも、シーブ壁面に当接した際に長尺ピンの内方に押し戻されて、リテーナを常に正規の位置に保持する旨が記載されている。
しかし、該リテーナは、断面台形状の中実部材から構成されており、製造が面倒であると共に重量も大きなものになってしまう。
そこで、本発明は、リテーナにより長尺ピンは勿論、短尺ピンの抜止めを図ったものでありながら、簡単な構成でもって、常に短尺ピンとリンクプレートのピン孔とが全面で接触し、上述した課題を解決した伝動用無端ベルトを提供することを目的とするものである。
請求項1に係る発明は、多数のリンクプレート(1,1’)と、互いに接触する転がり面(2d、3d)を有する長尺ピン(2)及び短尺ピン(3)からなる分割ピン(2,3)と、を備え、前記リンクプレート(1,1’)を前記分割ピン(2,3)にて無端状に連結し、プーリのシーブ面(21)に前記長尺ピン(2)が当接して伝動力伝達してなる、伝動用無端ベルトにおいて、
前記長尺ピン(2)に嵌挿しかつ軸方向位置を規制されて装着され、該長尺ピン(2)に対する前記リンクプレートの幅方向位置を規制するリテーナ(4)を、前記長尺ピン(2)の左右両端に備え、
前記リテーナ(4)は、前記長尺ピン(2)と共に前記分割ピン(2,3)を構成する短尺ピン(3)の端面(3a)と当接する当接部(4a)と、該当接部(4a)の当接平面に対して前記リンクプレート側に突出し、最外側の前記リンクプレート(1)に当接する突出部(4b)と、を有し、
前記分割ピン(2,3)にて連結されている前記リンクプレート(1,1’)の互いに密着されている状態の全幅をA、前記短尺ピン(3)の長さをB、左右の前記リテーナ(4)の前記当接平面間隔をC、左右の前記リテーナ(4)の前記突出部(4b)間隔をD、1枚の前記リンクプレート(1,1’)の厚さをt、前記短尺ピン(3)の端面(3a)の隅アール部(R)の軸方向長さをr、とすると、
A<D<B<C、
2r<C−D<t、
2r<D−A<t
の関係を満たす、
ことを特徴とする伝動用無端ベルトにある。
請求項2に係る発明(例えば図2参照)は、前記リテーナ(4)は、前記長尺ピン(2)に圧入して軸方向位置を規制されてなる、
請求項1記載の伝動用無端ベルトにある。
請求項3に係る発明(例えば図6〜図8参照)は、前記リテーナ(4)は、前記突出部(4b)と軸方向の反対方向に突出し、前記シーブ面(21)に当接して該リテーナ(4)の軸方向位置を前記リンクプレート(1,1’)の幅方向の正規な規制位置に保持する整合部(4c)を有する、
請求項1又は2記載の伝動用無端ベルトにある。
請求項4に係る発明(例えば図7、図8参照)は、前記リテーナは、プレート状部材からなり、該プレート状部材をプレスにより折曲して前記突出部(4b)及び前記整合部(4c)を形成してなる、
請求項3記載の伝動用無端ベルトにある。
請求項5に係る発明(例えば図7、図8参照)は、前記リテーナ(4)は、前記突出部(4b)を前記伝動用無端ベルトの前記分割ピン(2,3)に対する上下方向に配置し、前記整合部を前記伝動用無端ベルトの前記分割ピン(2,3)に対する長手方向に配置してなる、
請求項3又は4記載の伝動用無端ベルトにある。
請求項1に係る発明によると、短尺ピンが抜ける方向である軸方向外側に移動しても、リテーナの当接平面が、短尺ピンの端面に接触して、短尺ピンの抜けを防止するものでありながら、当接部の当接平面に対してリンクプレート側に突出する突出部が、最外側のリンクプレートに当接することによってリンクプレートとの軸方向の相対的なズレを所定範囲内に規制して、常に確実にリンクプレートのピン孔に短尺ピンを全面で接触する。これにより、リンクプレートのピン孔に対する短尺ピンの片当たりを回避し、リンクプレートひいては伝動用無端ベルト全体の耐久性を向上させることができる。また、常にリンクプレートのピン孔に短尺ピンが全面接触しているため、滑らかな屈曲を可能とすると共に、大きなトルク容量を有することができる。
請求項2に係る発明によると、リテーナを長尺ピンに圧入して軸方向位置を規制することにより、リテーナを、突出部がリンクプレートと当接する位置まで圧入して長尺ピンに装着することで、リテーナを適正な組み付け位置に装着することが可能になり、組付け作業性が向上する。
請求項3に係る発明によると、リテーナに突出部と反対方向に突出する整合部を設けることにより、リテーナが長尺ピンから抜ける方向である軸方向外側に移動しても、整合部がプーリのシーブ面に当接する面に、リテーナを長尺ピン内方に押し戻すことにより、リテーナを適正位置に補正して、リテーナ、長尺ピン、短尺ピン及びリンクプレートの軸方向関係を常に適正に保持することができる。
請求項4に係る発明によると、リテーナを一枚のプレート状部材から構成して、プレスにより突出部及び整合部を一体に成形することができ、比較的簡単な構成で、安価に製造することができると共に、重量の軽量化を図ることができる。また、単一部品として構成され、部品点数の削減によるコストダウンを図ることが可能となる。
請求項5に係る発明によると、リンクプレートと接触する突出部を分割ピンに対して上下方向に配置することによって、突出部とリンクプレートとの当接を確実にし、またプーリのシーブ面と当接する整合部を分割ピンに対して長手方向に設けることにより、整合部が確実にかつ均等にシーブ面と接触可能となり、簡単な構成でもって、正確かつ確実なリテーナを構成して信頼性の高い伝動用無端ベルトを得ることができる。
以下に図面に基づいて本発明に係る無段変速機に使用される伝動用無端ベルトについて説明する。
図1及び図2に示すように、伝動用無端ベルトは、多数のリンクプレート1、1’が連結ピン2、3により交互に連結されて、無端状に構成されている。長手方向に隣接する各リンクプレート1、1’は、上記連結ピン2,3にて互いに屈曲してリンク式ベルトを構成する。上記連結ピンは、分割ピン2,3からなり、各リンクに各分割ピン2又は3が回転不能に連結されると共に、各分割ピン2,3が互いに転がり面2d、3dにて転がり接触している。
該伝動用無端ベルトは、ベルト式無段変速機のプライマリプーリとセカンダリプーリとの間に巻掛けられて用いられる。上記分割ピン2,3は、一方が軸方向に長い長尺ピン2からなり、他方が軸方向に短い短尺ピン3からなり、長尺ピン2の両端面2a,2aは斜めに傾斜して、上記プライマリ及びセカンダリプーリのシーブ面21に接触して動力を伝達する。
前記各リンクプレート1,1’は、図1(b)に詳示するように、4隅が丸められた略々長方形の同形状からなる板状部材であり、その長手方向両端近傍において分割ピン2,3を挿入する一対の挿入孔10が設けられている。挿入孔10は、リンクプレート1,1’の両端に別々に設けられても良いが、本実施例では、当該一対の挿入孔10を連通する形でリンクプレート1,1’の軽量化のための一個の孔11にて形成されている。
長尺ピン2には、図2に示すように、リテーナ4が圧入により軸方向移動不能に装着されており、該リテーナ4は、図1(b)に示すように、板状部材の中心部に長尺ピン2の横断面よりも僅かに小さい孔4fが設けられたリング形状をしている。また、リテーナ4は、短尺ピン3と軸方向に対向するように設けられており、該リテーナ4の対向する部分が、短尺ピン3の端面3aと当接することにより短尺ピン3の抜止めをする当接部4aを構成する。
更に、リテーナ4の下端部(図1(a)において紙面垂直方向、図1(b)において紙面上下方向)には、当接部4aの当接平面aから最外側リンクプレート1に向かって突出した突出部4bが設けられており、リンクプレート1,1’と分割ピン2,3との軸方向の相対移動を規制する。
次に本実施例に係る伝動用無端ベルトの各部の位置関係について説明する。図9において、Aは、リンクプレート1,1’が互いに密着している状態での全幅を、Bは、短尺ピン3の軸方向の長さを示しており、該リンクプレート1,1’の全幅Aは、短尺ピン3の全長Bよりも短く構成される(A<B)。一方、長尺ピン2の両端部に位置決めされたリテーナ4の当接部4aの当接平面aの間隔をC、該当接平面aからリンクプレート1,1’に向かって突出する突出部4bの突出量をE、該突出部4bの間隔をD、として示している。当接平面間隔Cは、短尺ピン3の全長Bよりも長く構成されるが、突出部4bの間隔Dは、短尺ピンの全長Bよりも短くなる(D<B<C)。よって、伝動用無端ベルト全体の軸方向長さ関係は、リンクプレート全幅A<突出部間隔D<短尺ピン全長B<当接平面間隔Cとなる。
即ち、短尺ピン3は、リテーナ4の当接平面aに当接するまでの間隔C−Bだけ軸方向に移動し得、リンクプレート1,1’は、突出部4bにて軸方向移動が規制され、その移動範囲はD−Aとなり、該移動範囲D−Aは、各リンクプレート1,1’が自由に屈曲し得る公差を構成する。なお、突出部4bの突出量Eと、当接平面間隔Cと突出部間隔Dとの関係は、E=(C−D)/2となる。
そして、突出量Eの突出部4bによる長尺ピン2に対するリンクプレートの移動量(D−A)及び両突出量2E(=C−D)が、一枚のリンクプレート1の板厚tより小さく、短尺ピン3の両端の隅アール部Rの両軸方向長さ2rより大きいことにより、短尺ピン3の隅アール部Rはピン孔1b内に位置しない。また、突出量Eの突出部4bによる長尺ピン2に対するリンクプレートの移動量(D−A)は、両突出量2E(=C−D)より大きいことが好ましい。即ち
2r<C−D<t、
2r<D−A<t、となり、好ましくは、
2r<C−D<D−A<t
となる。
この関係を満たすことにより、公差によりリンクプレート1,1’が自由に屈曲しても、ピン孔1bが短尺ピン3の隅部に位置することがなく、短尺ピン3の外周面は、常にリンクプレートのピン孔1bに全面接触する。また、公差D−Aが板厚tより大きい場合、更にリンクプレートを増やしてトルク容量を大きくすればよいので、公差は、板厚tより小さくする設計が合理的である。
また、短尺ピン3に設けられた隅アール部Rの軸方向の長さrと、リンクプレート全幅Aとの和は、短尺ピン全長Bよりも短く設定され(A+r<B)、更に隅アール部Rの長さrは、突出部4bの突出量Eよりも短く、かつ該突出部4bの突出量Eは、リンクプレート1,1’の一枚の厚さtよりも短く構成されている。
なお、伝動用無端ベルトは、リテーナ4を長尺ピン2の外側から圧入して、短尺ピン3の両端面3aに当接した位置を圧入位置とすることにより、容易にリテーナの保持位置を位置決めすることが出来る。この際、図2に示すように、上記当接平面間隔Cは、短尺ピン3の全長Bと略々等しくなる。
上記のように伝動用無端ベルトを構成したことにより、短尺ピン3が軸方向外側に抜けそうになると、リテーナ4の当接平面aが短尺ピン3の端面3aと接触する。また、リテーナ4の突出部4bが、短尺ピン3の隅アール部Rの長さrよりも長くリンクプレート1,1’に向けて突出しているため(r<E)、リンクプレート1,1’は、軸方向所定範囲(B−2r)に規制され位置している。
よって、短尺ピン3は、リテーナ4の当接部4aにより軸方向に抜け止めされると同時に、公差によるリンクプレート1,1の軸方向の移動及び隅アール部Rに基づく、リンクプレートのピン孔1bに対する短尺ピン3の片当たりを回避し、リンクプレート1,1しいては伝動用無端ベルト全体の耐久性を向上させること可能となる。
また、図2のようにリテーナ4の当接部4aと、短尺ピン3の端面が当接する場合においても、リテーナ4に突出部4bを設けることによって、リンクプレート1,1’のピン孔1bが隅アール部R上に配置され、短尺ピン3に対して片当たりすることはない。
なお、上述した数式の不等号は、論理的に僅かな差であって略々同じ長さの、即ち実質的に等号を含むものであり、これら数式関係は、他の実施例においても同様である。
図3は、本発明の実施例2に係る伝動用無端ベルトを示すものである。この実施例は、実施例1におけるリテーナ4の長尺ピン2への固定方法を変更したものであり、リテーナ4を溝係合することによって、長尺ピン2へと固定する構成である。以下に実施例1の構成と相違する部分について説明する。
長尺ピン2の両端近傍には、溝30が設けられており、リテーナ4が短尺ピン3と対向するように該溝30に嵌め込まれて、係合している。リテーナ4は、拡径方向に弾性変形可能なスナップリング様に構成され、C字形状の中央部分が当接部を構成すると共に、長尺ピン2に対して回り止めされている。また、リテーナ4の下端部からは、リンクプレート1,1’に向けて突出して突出部4bが設けられている。なお、リテーナ4は、樹脂からなるOリング等の他のものを用いても良い。
リテーナ4は溝30に嵌め込まれる形で長尺ピン2に装着されているため、圧入される場合と比較してリテーナ4の長尺ピン2に対しての軸方向のズレを確実に防止できると共に、より安定的に実施例1の効果を享受することが出来る。
図4は、本発明の実施例3に係る伝動用無端ベルトを示すものであり、左右両端のリテーナ4を、連結部材4dにより連結して構成したものである。以下に先の実施例と相違する構成について説明する。
長尺ピン2の両端には、ピン断面を一部縮径したリテーナ嵌めこみ部2bが設けられており、このリテーナ嵌め込み部2bと、長尺ピン2の通常径部分との径の違いによる段差2cによって、リテーナ4を、軸方向に位置規制する構成となっている。
リテーナ4は、可撓性部材(例えば板ばね)からなる連結部材4dによってリンクプレート1,1’を軸方向に跨いで連結してなり、矩形の側板4eには、長尺ピン2のリテーナ嵌めこみ部2bの断面形状に対応した挿通孔が設けられている。該矩形の側板4eの当接部4aは、短尺ピン3と対向して、設けられており、その下端部からは、突出部4bがリンクプレート1,1’に向かって突出している。
なお、リテーナ4は、上述した段差2cに限らず、圧入(図2参照)又はスナップリング(図3参照)等の他の固着手段により長尺ピンに固着してもよい。また、この挿通孔は必ずしも長尺ピン2の断面形状と対応した形状の必要はなく、がたつきなく長尺ピン2に固定されればよい。更に側板4eも矩形である必要は無く、楕円のリング状等に構成しても良い。
上記構成により、リテーナ4は、長尺ピン2に対してがたつきなく固定され、確実に突出部4bによってリンクプレート1,1’を軸方向所定範囲に規制して位置させることが出来ると共に、実施例1の効果を安定的に享受することが可能となる。また、リテーナ4が一部品で構成されるため、部品点数の削減に繋がる。
図5は、本発明の実施例4に係る伝動用無端ベルトを示すものである。この実施例は、実施例3における長尺ピン2の形状を変更したものであり、長尺ピン2の両端に設けたリテーナ嵌め込み部2bをテーパ状に構成とするものである。以下に先の実施例4と相違する構成について説明する。
長尺ピン2の両端に設けられたリテーナ嵌め込み部2bには、軸内方から軸外方につれて縮径するように、テーパ部ロが設けられている。長尺ピン2の通常径部分の横断面よりも小さい嵌入孔を有するリテーナ4は、該テーパ部ロの径の変化によって軸方向位置を規制して設けられる。
これにより、実施例3の効果を享受出来ると共に、軸外方に進むにつれて、長尺ピン2は、径が小さくなるため、リテーナ4を長尺ピン2のリテーナ嵌め込み部2bへ取付けすることが容易となる。また、リテーナ4の両端に位置する矩形の板状部材4eは、リテーナ嵌め込み部2bのテーパ部ロの傾斜に沿って互いに軸外側に移動しようとし、平衡するので、リテーナ4は、常に適正位置に補正される。それにより、最外側リンクプレート1と、リテーナの突出部4bとの間に不必要な接触がなく、突出部4b及び最外側リンクプレート1の当接面の磨耗を軽減することが出来る。
図6(a)、(b)は、本発明の実施例5に係る伝動用無端ベルトを示すものである。この実施例は、実施例1におけるリテーナ4の左右両端部にプーリのシーブ面21と当接する整合部4cを設け、該リテーナ4を常に適正位置へと補正するものである。以下に先の実施例と相違する構成について説明する。
リテーナ4は、図6(a)、(b)に示すように一枚のプレートからなり、中央部に設けた挿入孔13を長尺ピン2に圧入することによって軸方向に位置規制されて設けられている。また、該リテーナ4は、その下端部にリンクプレート1,1’に向けて突出する突出部4bを備え、左右両端部に突出部4bとは逆に突出した整合部4cを備えて構成されている。
この整合部4cには、プーリのシーブ面21と対応する傾斜又はアール面を有する当接面イが設けられ、該当接面イがシーブ面21と接触することにより、リテーナ4を軸方向内側に付勢し、リテーナ4の長尺ピン2からの抜けを防止することが出来る。また、リテーナ4をプーリのシーブ面21からの付勢力によって、常に最適な位置に保持することが可能となる。
更に、突出部4bは、リテーナ4の下端部のみに設けられることによって、簡単な構成でリンクプレート1,1’の軸方向位置を規制することが出来る。
図7(a)、(b)及び図8は、実施例6に係るリテーナ4の構造を示すものである。該リテーナ4には、上下両端部に、板状部材であるリンクプレート4を折曲させてリンクプレート方向に突出する二つの突出部4b、4bが設けられている。また、その左右両端部から、プーリのシーブ面に向かって突出し、該シーブ面と対応する傾斜を有した当接面イがシーブ面と当接する整合部4c、4cも設けられている。
突出部4b、4bがリテーナの上下両端部に設けられたことにより、より確実にリンクプレートの軸方向位置を片当たりが生じない所定範囲に規制することができると共に、突出部4b、4b及び整合部4c、4cをプレス加工により板状部材であるリテーナ4を折曲させて構成したことにより、簡易で安価かつ軽量に突出部4b、4b及び整合部4c、4cをリテーナ4に設けることが可能となる。
(a)は、本実施例1に係る伝動用無端ベルトの部分平面図、(b)は、同ベルトの部分側面図。 実施例1に係る伝動用無端ベルトのプーリ巻掛け部の部分断面図。 実施例2に係る伝動用無端ベルトのプーリ巻掛け部の部分断面図。 実施例3に係る伝動用無端ベルトのプーリ巻掛け部の部分断面図。 実施例4の一部変更例を示す伝動用無端ベルトのプーリ巻掛け部の部分断面図。 (a)は、実施例5に係る伝動用無端ベルトの部分側面図、(b)は、同ベルトのプーリ巻掛け部の部分断面図。 (a)は、実施例6に係るリテーナの正面図、(b)は、同リテーナの側面図。 実施例6に係るリテーナの斜視図。 各部の寸法をあらわした本伝動用無端ベルトのプーリ巻掛け部の部分断面図。 従来例に係る伝動用無端ベルトのプーリ巻掛け部の部分断面図。 同ベルトのリンクプレートが偏向した際のプーリ巻掛け部の部分断面図。
符号の説明
1,1’ リンクプレート
1 最外側リンクプレート
2 長尺ピン
2d、3d 転がり面
3 短尺ピン
2,3 分割ピン
3a 端面
4 リテーナ
4a 当接部
4b 突出部
4c 整合部
21 シーブ面
A リンクプレートの全幅
B 短尺ピンの長さ
C リテーナの当接平面間隔
D 左右リテーナの突出部間隔
E 当接平面から突出部先端までの長さ
R 隅アール部
t 一枚のリンクプレートの厚さ
r 短尺ピンの端面の隅アール部軸方向長さ

Claims (5)

  1. 多数のリンクプレートと、互いに接触する転がり面を有する長尺ピン及び短尺ピンからなる分割ピンと、を備え、前記リンクプレートを前記分割ピンにて無端状に連結し、プーリのシーブ面に前記長尺ピンが当接して伝動力伝達してなる、伝動用無端ベルトにおいて、
    前記長尺ピンに嵌挿しかつ軸方向位置を規制されて装着され、該長尺ピンに対する前記リンクプレートの幅方向位置を規制するリテーナを、前記長尺ピンの左右両端に備え、
    前記リテーナは、前記長尺ピンと共に前記分割ピンを構成する短尺ピンの端面と当接する当接部と、該当接部の当接平面に対して前記リンクプレート側に突出し、最外側の前記リンクプレートに当接する突出部と、を有し、
    前記分割ピンにて連結されている前記リンクプレートの互いに密着されている状態の全幅をA、前記短尺ピンの長さをB、左右の前記リテーナの前記当接平面間隔をC、左右の前記リテーナの前記突出部間隔をD、1枚の前記リンクプレートの厚さをt、前記短尺ピンの端面の隅アール部の軸方向長さをr、とすると、
    A<D<B<C、
    2r<C−D<t、
    2r<D−A<t
    の関係を満たす、
    ことを特徴とする伝動用無端ベルト。
  2. 前記リテーナは、前記長尺ピンに圧入して軸方向位置を規制されてなる、
    請求項1記載の伝動用無端ベルト。
  3. 前記リテーナは、前記突出部と軸方向の反対方向に突出し、前記シーブ面に当接して該リテーナの軸方向位置を前記リンクプレートの幅方向の正規な規制位置に保持する整合部を有する、
    請求項1又は2記載の伝動用無端ベルト。
  4. 前記リテーナは、プレート状部材からなり、該プレート状部材をプレスにより折曲して前記突出部及び前記整合部を形成してなる、
    請求項3記載の伝動用無端ベルト。
  5. 前記リテーナは、前記突出部を前記伝動用無端ベルトの前記分割ピンに対する上下方向に配置し、前記整合部を前記伝動用無端ベルトの前記分割ピンに対する長手方向に配置してなる、
    請求項3又は4記載の伝動用無端ベルト。
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