JP5146595B2 - 伝動ベルトおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、伝動ベルトおよびその製造方法、特にベルト式の無段変速機に好適な伝動ベルトおよびその製造方法に関する。
自動車等の車両用の無段変速機(Continuously Variable Transmission;以下、CVTともいう)として、それぞれ可変シーブである駆動側プーリと従動側プーリとの間に無端の伝動ベルトを掛け渡したベルト式のものが多用されてきている。このようなCVTに用いられる伝動ベルトは、芯材である無端帯状リングと、板厚方向を無端帯状リングの軸線方向に向けて無端帯状リングに保持された多数のエレメントとで構成されており、多数のエレメントが無端帯状リングの軸線方向に圧接したり無端帯状リングに張力が作用したりすることで駆動側プーリから従動側プーリへとトルクを伝達できるようになっている。
この種の伝動ベルトとしては、例えば無端帯状リングを収容する凹部が伝動ベルトの外周側となる外端部側に形成されるとともに、プーリとの接触面が伝動ベルトの幅方向におけるエレメントの両端側に形成され、隣り合うエレメント同士を板厚方向に凹凸係合させる係合部が伝動ベルトの内周側となるエレメントの内端部側に設けられたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この伝動ベルトでは、エレメントの凹部をその開口側より内底部側で幅広にするとともに、その開口幅より幅の狭い無端帯状リングをエレメントの凹部内に複列に収納することで、エレメントの無端帯状リングへの組付けを容易化できるようにしている。
他の伝動ベルトとして、多数のエレメントに伝動ベルトの幅方向の両側に向かって開いた左右一対の凹部がそれぞれ形成され、両凹部に2本の無端帯状リングが収容されることで多数のエレメントが2本の無端帯状リングの間に保持されたものも知られている。この伝動ベルトでは、無端帯状リングより外側に位置するエレメントの外端部側に隣り合うエレメント同士を凹凸係合させる係合部が、無端帯状リングより内側に位置するエレメントの内端部側の幅方向の両側にプーリとの接触面が形成されている(例えば、特許文献2参照)。
これらいずれの伝動ベルトにおいても、エレメントの一面側にロッキングエッジが形成されており、伝動ベルトが従動側プーリに巻き付く区間において、複数のエレメントがそれぞれのロッキングエッジを先行するエレメントに接触させた状態で、隣り合うエレメントに対して無端帯状リングの軸線方向に圧接しながら相対的に揺動し得るようになっている。
特開2008−51322号公報 再表01/078919号公報
しかしながら、上述のような従来の伝動ベルトおよびその製造方法にあっては、隣り合うエレメント同士の係合部をエレメントのロッキングエッジより伝動ベルトの内周側に配置すれば、多数のエレメントを容易に整列させることができて伝動ベルトの組み立てが容易にできるという利点があるものの、エレメントの加工精度が低下したりそのプレス加工用金型の寿命が短くなることでコスト高を招いたりしてしまうという問題があった。
具体的には、エレメントは、通常、帯状の板金素材にファインブランキング加工やそれと同等な精密プレス成形加工を施すことで、板金素材から予め設定されたエレメントの輪郭形状に打ち抜かれるとともに、ロッキングエッジ部や凹凸係合用の係合部のような立体形状部分の精密成形を施されるようになっている。また、ロッキングエッジは、そのエッジより伝動ベルトの外周側に位置するエレメントの外端側部分の平坦な表面と、ロッキングエッジより伝動ベルトの内周側に位置するエレメントの内端側部分を部分的に圧潰して傾斜させた傾斜面との間に成形される。
一方、エレメント同士を凹凸係合させる係合部をエレメントのロッキングエッジより内端側部分に配置する場合には、パンチおよびカウンターパンチの間で板金素材を加圧し塑性変形させて、係合部となる凹凸、例えばエレメントの一面側の円形凹部および他面側の円形凸部を成形するとともに、前記傾斜面を成形することになる。この場合、係合部となる凹凸の近傍では凹凸加工用パンチの工具刃先近傍における等方的な押圧力、いわゆる静水圧応力を高めるべく、パンチおよびカウンターパンチの間で板金素材が確実に挟圧・保持される必要があるが、凹凸と傾斜面が近接していることによりパンチおよびカウンターパンチの間で板金素材を確実に挟圧・保持することが困難になり、エレメントの加工精度が低下したりそのプレス加工用の金型の寿命が短くなったりしていた。
そこで、本発明は、エレメントの加工時に素材を確実に挟圧・保持できるようにすることで、エレメントの加工精度の低下や金型寿命の低下を防止することができる低コストの伝動ベルトおよびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る伝動ベルトは、上記目的達成のため、無端帯状リングと、前記無端帯状リングを介し環状に結束された複数のエレメントと、を備え、前記エレメントのそれぞれが、ベルト幅方向の両側でプーリに挟圧される両側端面部と、前記プーリに巻き掛けられた状態で揺動する際の支点となるロッキングエッジ部と、隣り合う一対のエレメントに凹凸係合する凹凸係合部と、を有する伝動ベルトであって、前記エレメントのそれぞれは、前記ロッキングエッジ部と前記凹凸係合部との間に、前記凹凸係合部に近接するほど傾斜角が減少する湾曲傾斜面が形成されていることを特徴とするものである。
この構成により、凹凸係合部とロッキングエッジ部とが近接する場合であっても、凹凸係合部の近傍でエレメントの素材の両面を広範囲に確実に挟圧・保持して、凹凸係合部の精密なプレス成形を精度良く行うことができるとともに、その成形型の寿命をのばすことができる。
上記構成を有する伝動ベルトにおいては、前記湾曲傾斜面は、前記ロッキングエッジ部と前記凹凸係合部との間における前記エレメントの板厚方向の段差より大きい曲率半径を持つのがよい。
この構成により、凹凸係合部の近傍でエレメントの素材を確実に挟圧・保持可能な領域を、湾曲傾斜面が形成される片面側で広くすることができるとともに、プーリからベルト幅方向に作用する挟圧力等に対して、エレメントの段差部分の近傍における応力集中を有効に抑制することができる。
本発明に係る伝動ベルトは、また、上記目的達成のため、無端帯状リングと、前記無端帯状リングに沿って板厚の方向に積層されるとともに前記無端帯状リングに前記板厚の方向に揺動可能に組み付けられた複数のエレメントと、を備え、前記エレメントのそれぞれが、隣り合う一対のエレメントのうち一方側のエレメントに揺動可能に係合するロッキングエッジ部と、前記隣り合う一対のエレメントに凹凸係合する凹凸係合部と、ベルト幅方向の両側でプーリに挟圧される両側端面部と、を有する伝動ベルトであって、前記エレメントのそれぞれが、前記ロッキングエッジ部が形成された第1板厚部分と、前記第1板厚部分より前記板厚が小さく前記凹凸係合部が形成された第2板厚部分と、前記第1板厚部分および前記第2板厚部分の間で一面側に段差を形成する段差部分とによって構成され、前記第1板厚部分には、前記ロッキングエッジ部から前記段差部分側に近付くほど前記板厚が減少するように傾斜した緩傾斜面が形成され、前記段差部分の前記ベルト幅方向の少なくとも一部に、前記緩傾斜面に隣接する一端側で前記緩傾斜面より大きい最大傾斜角をなして傾斜するとともに前記第2板厚部分に近接するほど傾斜角を減少させ、前記凹凸係合部の近傍に位置する他端側で前記第2板厚部分の片面に連続する湾曲傾斜面が形成されているものである。
この構成により、凹凸係合部とロッキングエッジ部とが近接する場合であっても、凹凸係合部の近傍でエレメントの素材の両面を互いに平行な領域で確実に挟圧・保持して、凹凸係合部の精密なプレス成形を精度良く行うことができるとともに、その成形型の寿命をのばすことができる。
上記構成を有する伝動ベルトにおいては、前記湾曲傾斜面が、前記第1板厚部分と前記第2板厚部分との板厚の差より大きい曲率半径を持つのがよい。
この構成により、凹凸係合部の近傍でエレメントの素材を確実に挟圧・保持可能な領域を、湾曲傾斜面が形成される片面側で広くすることができるとともに、プーリからベルト幅方向に作用する挟圧力等に対して、エレメントの段差部分の近傍における応力集中を有効に抑制することができる。
上記構成を有する伝動ベルトにおいては、前記エレメントの前記第1板厚部分が、前記無端帯状リングの外周側に位置するとともに、前記エレメントの前記第2板厚部分が、前記無端帯状リングの内周側に位置するのがよい。
この構成により、無端帯状リングに多数のエレメントを容易に組み付けることができるとともに、伝動ベルトのプーリへの巻き掛け領域において複数のエレメントの姿勢を安定させることができる。
上記構成を有する伝動ベルトにおいては、前記エレメントの前記第1板厚部分が、前記ロッキングエッジ部を間に挟んで前記凹凸係合部とは反対側に、前記無端帯状リングの一部を収容可能な凹部を有することが好ましい。
この構成により、第2板厚部分での凹凸係合部により無端帯状リングの内方側でエレメント同士を凹凸係合させて姿勢の安定化を図り、第2板厚部分に対し相対的に幅広となる第1板厚部分で無端帯状リングに多数のエレメントを容易に組み付けることができる。
この伝動ベルトにおいては、前記エレメントの前記第1板厚部分が、前記ロッキングエッジ部より前記無端帯状リングの外周側であって前記ベルト幅方向の中央部に前記凹部を有しているのがより好ましい。
この構成により、無端帯状リングに多数のエレメントを容易に組み付けることができ、しかも、プーリに挟圧されるエレメントの両側端面部を広範囲に設定可能になることで、ベルトの巻き付け姿勢の安定化や耐久性の向上を図ることができる。
本発明の伝動ベルトにおいては、前記湾曲傾斜面が、前記段差部分の前記ベルト幅方向の全域に形成され、前記湾曲傾斜面の曲率半径が、0.4mm以上であることが好ましい。
この構成により、エレメントの素材にロール加工等によって湾曲傾斜面を予め容易に形成することができ、しかも、ロッキングエッジ部や凹凸係合部の精密成形のための素材の塑性変形量を抑え、成形型の寿命を向上させることができる。
一方、本発明に係る伝動ベルトの製造方法は、上記目的達成のため、無端帯状リングと、前記無端帯状リングに沿って板厚の方向に積層されるとともに前記無端帯状リングに前記板厚の方向に揺動可能に組み付けられた複数のエレメントと、を備える伝動ベルトの前記エレメントのそれぞれに、隣り合う一対のエレメントのうち一方側のエレメントに揺動可能に係合するロッキングエッジ部と、前記隣り合う一対のエレメントに凹凸係合する凹凸係合部とを形成する伝動ベルトの製造方法であって、前記エレメントの素材を部分的に圧潰させて、第1板厚部分と、該第1板厚部分より前記板厚が小さい第2板厚部分と、前記第1板厚部分および前記第2板厚部分の間で一面側に段差を形成する段差部分とを形成する素材成形工程と、前記エレメントの素材から前記エレメントを打ち抜くとともに、前記第1板厚部分を部分的に圧潰させて前記段差部分側に近くなるほど前記板厚が減少するように傾斜した緩傾斜面と前記ロッキングエッジ部とを形成するとともに、前記第2板厚部分を部分的に塑性変形させて前記凹凸係合部を形成するプレス成形工程と、を含み、前記素材成形工程では、前記段差部分に、前記第1板厚部分に隣接する一端側で前記緩傾斜面より大きい最大傾斜角をなして傾斜するとともに前記第2板厚部分に近接するほど傾斜角を減少させ、前記凹凸係合部の近傍に位置する他端側で前記第2板厚部分の片面に連続する湾曲傾斜面を形成するものである。
この構成により、ロッキングエッジ部や緩傾斜面と凹凸係合部とが近接する場合であっても、凹凸係合部の近傍でエレメントの素材の両面を互いに平行な領域で確実に挟圧・保持して、凹凸係合部の精密なプレス成形を精度良く行うことができるとともに、その成形型の寿命をのばすことができる。
上記構成を有する伝動ベルトの製造方法においては、前記プレス成形工程で、前記第2板厚部分の前記片面から垂直に突出する表面側の凸部と前記第2板厚部分の前記片面とは反対側の面から垂直に没入する裏面側の凹部とを有する前記凹凸係合部を形成するとともに、前記表面側の凸部の外周面と前記第2板厚部分の前記片面との間に、前記湾曲傾斜面より曲率半径が小さい円弧状断面の環状隅面を形成し、前記環状隅面と前記湾曲傾斜面とを、前記第2板厚部分の前記反対側の面に対し平行な前記片面の一部で接続するのが好ましい。
この構成により、凹凸係合部の表面側の凸部がその基端側に環状隅面を有する場合であっても、凸部の近傍領域でエレメントの素材をその板面と垂直な方向に確実に挟圧可能になる。
上記構成を有する伝動ベルトの製造方法においては、前記素材成形工程で、前記湾曲傾斜面を、前記第1板厚部分と前記第2板厚部分との板厚の差より大きい曲率半径で形成することが好ましい。
この構成により、湾曲傾斜面を加工する成形ロールや成形型の隅部表面の曲率半径を大きくすることができ、その成形ロール等の耐久性を高めることができるとともに、精密なプレス成形を行う際の素材の塑性変形量が少なくなることで、プレス加工型の耐久性も高めることができる。
上記構成を有する伝動ベルトの製造方法においては、前記エレメントの素材として予め帯状に成形された鋼板を準備し、前記素材成形工程で、前記エレメントの素材に対しロール加工を施して、前記第1板厚部分、前記第2板厚部分および前記段差部分を形成するとともに、前記段差部分の前記湾曲傾斜面を前記エレメントの素材の長さ方向に延在するよう形成するのが好ましい。
この構成により、エレメントのベルト幅方向全域に及ぶような段差および湾曲傾斜面をロール加工により成形でき、ロッキングエッジ部や凹凸係合部の精密な成形を行うプレス加工時の素材の塑性変形量を抑えることで、その加工精度および加工型の耐久性向上を図ることができる。
本発明の伝動ベルトによれば、凹凸係合部とロッキングエッジ部とが近接する場合であっても、凹凸係合部の近傍でエレメントの素材の両面を互いに平行な領域で確実に挟圧・保持して、凹凸係合部の精密なプレス成形を精度良く行うことができるとともに、その成形型の寿命をのばすことができる。したがって、エレメントの精度を担保しつつエレメントの製造コストを抑え、低コストの伝動ベルトを提供することができる。
また、本発明の伝動ベルトの製造方法によれば、素材成形工程で、第1板厚部分と第2板厚部分と間の段差部分に緩傾斜面より大きい最大傾斜角をなして傾斜するとともに第2板厚部分に近接するほど傾斜角を減少させる湾曲傾斜面を成形しておき、プレス加工工程で、凹凸係合部の近傍にエレメントの素材の押圧保持領域を確保可能にするとともに、ロッキングエッジ部や凹凸係合部のプレス加工時における塑性変形量を抑えるので、その加工精度および加工型の耐久性向上を図ることができる。したがって、エレメントの精度を担保しつつその製造コストを抑えることのできる伝動ベルトの製造方法を実現できる。
本発明の一実施形態に係る伝動ベルトのエレメントの要部拡大側面図である。 本発明の一実施形態に係る伝動ベルトのエレメントの正面図である。 図2のIII矢視図である。 図2のIV−IV矢視断面図である。 本発明の一実施形態に係る伝動ベルトの概略構成を示す部分側面図である。 本発明の一実施形態に係る伝動ベルトのうち駆動側および従動側のプーリ間で略直線方向に進行する複数のエレメントの側面図である。 本発明の一実施形態に係る伝動ベルトのうち駆動側または従動側のプーリに巻き付いて走行する湾曲区間の複数のエレメントの側面図である。 本発明の一実施形態に係る伝動ベルトのエレメントを製造するための帯状素材をロール成形する素材成形工程の説明図である。 図7A中の矢印Bの方向から見た矢視図である。 本発明の一実施形態に係る伝動ベルトのエレメントを製造するための素材成形工程後の素材の要部断面図である。 本発明の一実施形態に係る伝動ベルトのエレメントを製造するためのプレス成形工程の概略説明図である。 図8Bに示すプレス成形工程での成形形状を示すエレメントの側面断面図である。 図8Cに示す成形形状にプレス成形されたエレメントが素材から切り離される段階の説明図である。 本発明の一実施形態に係る伝動ベルトのエレメントの段差面(湾曲傾斜面)の曲率半径とエレメントの挟圧時に段差部に生じる応力の関係を示すグラフである。
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(一実施形態)
図1〜図6は、本発明の一実施形態に係る伝動ベルトおよびそのエレメントの形状を示す概略ブロック構成図であり、本発明を自動車のベルト式の無段変速機の伝動ベルトに適用したものを例示している。
まず、構成について説明する。
図5に示すように、本実施形態の伝動ベルト10は、無段変速機1(詳細は図示していない)の内部に設けられた金属製のもので、無段変速機1は、図示しない入力軸に連結されたプライマリプーリ2(駆動側プーリ)と、図示しない出力軸に連結されたセカンダリプーリ3(従動側プーリ)と、両プーリ2,3の間に巻き掛けられた伝動ベルト10とを含んで構成されている。
プライマリプーリ2(駆動側プーリ)およびセカンダリプーリ3(従動側プーリ)は、詳細を図示しないが、それぞれ略V字形断面のベルト係合溝を形成する固定側および可動側の回転部材と、固定側の回転部材に対して可動側の回転部材を軸方向移動させるための油圧アクチュエータとを有し、ベルト係合溝の幅を変化させることができる可変シーブとして構成されている。
すなわち、プライマリプーリ2とセカンダリプーリ3とは、それぞれの油圧アクチュエータを図外の油圧制御装置によって制御されることで、変速比、すなわちプライマリプーリ2の有効径(入力側可変シーブの有効径Ri)に対するセカンダリプーリ3の有効径(出力側可変シーブの有効径Ro)の比(Ro/Ri)を連続的に可変制御することができるようになっている。
また、伝動ベルト10に対して、プライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3によって滑りの生じない適度の挟圧力を加えることができるように、両プーリ2,3の油圧アクチュエータの作動油圧が油圧制御装置によってそれぞれ制御されるようになっている。
図2および図5に示すように、伝動ベルト10は、少なくとも1本、例えば複列に配置された2本の無端帯状リング11A,11Bと、それぞれ板状に形成され、無端帯状リング11A,11Bに沿って板厚方向に積層されるとともに無端帯状リング11A,11Bに板厚方向に揺動可能に組み付けられることで、無端帯状リング11A,11Bを介し環状に結束された複数のエレメント12と、を備えている。
無端帯状リング11A,11Bは、それぞれ例えば金属製のリボン状部材を複数枚積層した金属製積層リングによって構成されており、互いに同一の形状および特性を有している。
複数のエレメント12は、それぞれ比較的硬質の鋼板、例えば工具鋼板から図2に示すような輪郭形状に打ち抜かれるとともに、ロッキングエッジ部21、凹凸係合部22および両側端面部23a,23bが精密な形状に成形されたもので、例えばファインブランキング等のように精密な複合成形が可能なプレス加工によって製造されている。
図1、図3および図4に示すように、各エレメント12は、ロッキングエッジ部21が形成された第1板厚部分24と、第1板厚部分24より板厚が小さく凹凸係合部22が形成された第2板厚部分25と、第1板厚部分24および第2板厚部分25の間で一面側に段差を形成する段差部分26と、によって構成されている。また、第1板厚部分24は伝動ベルト10の外周側に、第2板厚部分25は伝動ベルト10の内周側にそれぞれ配置されており、段差部分26に対して、第2板厚部分25が無端帯状リング11A,11Bの内周側に、第1板厚部分24が無端帯状リング11A,11Bの外周側に、それぞれ位置している。
各エレメント12のロッキングエッジ部21は、第1板厚部分24の片面24a側において伝動ベルト10のベルト幅方向に直線的に延びる鈍角の角部であり、第1板厚部分24のうち段差部分26から一定の離間寸法を隔てる平坦な片面24a(一面)と、この片面24aに対し予め設定された傾斜角θをなして傾斜するとともに伝動ベルト10のベルト幅方向に略一定幅で延在する緩傾斜面27との間で、これら第1板厚部分24の片面24aおよび緩傾斜面27を予め設定された曲率半径r1で連続させる細い帯状の湾曲面を形成している。このロッキングエッジ部21は、伝動ベルト10がプライマリプーリ2またはセカンダリプーリ3に巻き付く湾曲区間中に位置する複数のエレメント12の揺動支点となるものであり、これら複数のエレメント12がプライマリプーリ2またはセカンダリプーリ3に巻き掛けられた状態で互いに扇形の隙間を形成しながら揺動する際の揺動支点となる。
具体的には、図6Bに示すように、プライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3の有効径が可変制御される範囲の全範囲において、プライマリプーリ2またはセカンダリプーリ3に巻き付く伝動ベルト10の湾曲区間では、任意のエレメント12(以下、便宜的にエレメント12Aという)がその前後に隣り合う一対のエレメント12(以下、便宜的に12P,12Fという)のうち一方側、例えばベルト回転方向で先行する一方側のエレメント12Pに対してロッキングエッジ部21を支点として揺動可能に係合できるようになっている。
第1板厚部分24に形成される緩傾斜面27は、ロッキングエッジ部21から段差部分26側に近付くほどエレメント12の板厚を小さくするように緩やかに傾斜しており、プライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3のうち有効径が最小となるいずれか一方がその最小の有効径となるときまで、あるいは更にその最小の有効径となるときであっても、その最小の有効径となるプライマリプーリ2またはセカンダリプーリ3に巻き付く伝動ベルト10の最小半径の湾曲区間において、任意のエレメント12Aがロッキングエッジ部21で先行するエレメント12Pに圧接し、かつ、それ以外の部分で先行するエレメント12Pに圧接しないようになっている。
具体的には、各エレメント12の第1板厚部分24の片面24aに対する緩傾斜面27の傾斜角をθとするとき、この傾斜角θは、図6Bに示すような伝動ベルト10の最小半径の湾曲区間において、その湾曲区間における有効半径Rminとエレメント12の第1板厚部分24の板厚t1とから、t1/Rmin[ラジアン]に近い角度あるいはそれよりわずかに大きい角度として設定されている。
各エレメント12の凹凸係合部22は、エレメント12の第2板厚部分25の片面25a(一面)から垂直に突出する略円柱状の係合凸部22aと、エレメント12の第2板厚部分25の他面であるエレメント12の背面12bから垂直に没入する円形の係合凹部22bとを有しており、複数のエレメント12は、それらの凹凸係合部22の係合凸部22aおよび係合凹部22bによって前後に隣り合う同士で凹凸係合できるようになっている。
図6Aおよび図6Bに示すように、任意のエレメント12Aの係合凸部22aは、このエレメント12Aの前後(両面側)に隣り合う一対のエレメント12P,12Fのうち先行する一方側(一面側)のエレメント12Pに係合しており、任意のエレメント12Aの係合凹部22bは、後続する他方側(他面側)のエレメント12Fの係合凸部22aに係合している。
各エレメント12の第2板厚部分25の片面25aから突出する係合凸部22aの突出高さhと、各エレメント12の背面12bから没入する係合凹部22bの没入深さdは、略等しくなっている。また、係合凸部22aの直径は、係合凹部22bの内径よりわずかに小さくなっている。
さらに、各エレメント12Aの係合凸部22aは、例えば緩傾斜面27の傾斜角θに応じて設定された外周面テーパ角度を有しており、係合凸部22aの先端部の直径より係合凸部22aの基端部の直径の方が大径になっている。同様に、各エレメント12の係合凹部22bも、例えば緩傾斜面27の傾斜角θに応じて設定された内周面テーパ角度を有しており、係合凹部22bの内底部の内径より係合凸部22aの開口部の内径の方が大径になっている。
また、図1に示すように、係合凸部22aは基端外周部分で裾野状に拡径しており、係合凸部22aの外周面22cと第2板厚部分25の片面25aとが、係合凸部22aの突出高さhより小さい曲率半径rcで湾曲する環状隅面22dによって互いに連続するように接続されている。
各エレメント12の両側端面部23a,23bは、プライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3に巻き付く伝動ベルト10の2つの湾曲区間において、伝動ベルト10のベルト幅方向の両側で両プーリ2,3のベルト係合溝を形成する固定側および可動側の回転部材によって図2中に双方向矢印dwで示すベルト幅方向(以下、単にベルト幅方向という)に挟圧されるようになっている。
各エレメント12の第1板厚部分24は、ロッキングエッジ部21を間に挟んで凹凸係合部22とは反対側に、無端帯状リング11A,11Bの一部を収容可能な凹部28を有するとともに、その凹部28の両内側壁をなすように互いに対向する一対の鉤状部31,32を有している。
各エレメント12の凹部28は、ロッキングエッジ部21より無端帯状リング11A,11Bの外周側に位置する第1板厚部分24において、そのベルト幅方向における中央部に位置している。
一対の鉤状部31,32は、各エレメント12の両肩部分に位置し、各エレメント12の両側端面部23a,23b側では、それら両側端面部23a,23bの上半部を形成している。また、一対の鉤状部31,32は、凹部28に複列に収納された無端帯状リング11A,11Bの移動を凹部28の両端側の上方から規制する内突部31a,32aを有し、互いに対向する内側面部31b,32b側で、凹部28のベルト収納空間部分28aおよびこれより内幅の狭い入口部28bの両内側壁面を形成している。なお、ここで各エレメント12についていう上半部や上方とは、伝動ベルト10の外周側を意味する。
具体的には、凹部28のベルト収納空間部分28aの内幅Waは、複列に配置される無端帯状リング11A,11Bの総幅2・Wよりわずかに大きくなっており、入口部28bの内幅Wbは、ベルト収納空間部分28aの内幅Waより小さく、各無端帯状リング11Aまたは11Bの幅Wより大きく設定されている(Wa>Wb>W)。また、凹部28のベルト収納空間部分28aの高さhwは、無端帯状リング11A,11Bの厚さtrよりわずかに大きい値に設定されている。
一方、各エレメント12の段差部分26のベルト幅方向の少なくとも一部、例えば段差部分26のベルト幅方向の全域(全部)には、緩傾斜面27に隣接する一端35a側で緩傾斜面27の傾斜角θより大きい最大傾斜角θsをなして傾斜するとともに第2板厚部分25に近接するほど傾斜角を減少させ、凹凸係合部22の係合凸部22aの近傍に位置する他端35b側で第2板厚部分25の片面25aに連続する湾曲傾斜面35が形成されている。
湾曲傾斜面35は、段差部分26におけるエレメント12の板厚方向の段差の高さよりも大きい曲率半径、例えば第1板厚部分24の板厚t1と第2板厚部分25の板厚t2との差(t1−t2)よりも大きい曲率半径rwを持つ略円弧状断面を有しており、この曲率半径rwは、例えば第2板厚部分25の板厚t2の1/3以上の大きさに設定されている。ここで、第2板厚部分25の板厚t2は、第1板厚部分24と第2板厚部分25の板厚の差(t1−t2)より大きくなっており、板厚の差(t1−t2)は第1板厚部分24の板厚t1の1/4未満、例えば1/5程度となっている。より具体的には、例えば第1板厚部分24の板厚t1が1.5mmであり、第2板厚部分25の板厚t2が1.2mmであるとき、湾曲傾斜面35の曲率半径rwは、0.4mm以上である。なお、湾曲傾斜面35は、必ずしも曲率半径が一定となる円弧状断面である必要はなく、例えば凹凸係合部22に近付くと曲率半径が増加する湾曲傾斜断面でもよい。
また、各エレメント12の高さ方向(図1中の左右方向;以下、エレメント高さ方向という)にける湾曲傾斜面35の形成可能な領域は、係合凸部22aの環状隅面22dの曲率半径rcの中心P1からロッキングエッジ部21の表面曲率中心P2までの範囲(図1中のW1+W2)内であって、ロッキングエッジ部21の精密成形に要求される緩傾斜面27の形成幅W1分の高さを除く範囲の幅W2で特定される。
さらに、湾曲傾斜面35の曲率半径rwの中心P3の位置は、第2板厚部分25の片面25aから曲率半径rwだけ図1中の上方に位置し、ロッキングエッジ部21の精密成形に要求される緩傾斜面27の形成幅W1と、凹凸係合部22の環状隅面22dまでの形成幅W3とを確保した上で、両形成幅W1、W3の間の幅W2内において湾曲傾斜面35を第2板厚部分25の片面25aおよび緩傾斜面27に連続させるように設定されている。そして、湾曲傾斜面35の曲率半径rwは、係合凸部22aの環状隅面22dの曲率半径rcの中心P1から曲率半径rwの中心P3までのエレメント高さ方向の距離e(≧0)を幅W2から差し引いた長さ(W2−e)より大きく設定され、最大傾斜角θsは、湾曲傾斜面35と緩傾斜面27の接続角度を鈍角にするよう90°より小さく、好ましくは(90°−θ)より小さく設定されている。
なお、各エレメント12は、図2に示す正面の輪郭形状部の全域で、この正面側を抜き表側として後述するファインブランキング等によりプレス加工されており、輪郭形状部の全域で全面せん断(剪断)に近い程度のせん断面割合を有するとともに、凹部28の内底面部28cのうちロッキングエッジ21側の片面側に外周部と同程度のわずかなだれ形状を有している。
次に、本実施形態の伝動ベルト10の製造方法について説明する。
上述のように、伝動ベルト10は、複列配置された無端帯状リング11A,11Bと、これら無端帯状リング11A,11Bに沿って板厚t1,t2の方向に積層されるとともに無端帯状リング11A,11Bに板厚t1,t2の方向に揺動可能に組み付けられた複数のエレメント12と、を備えるものであり、複数のエレメント12のそれぞれに、その両面側に隣り合う一対のエレメント12P,12Fのうち一方側のエレメント12Pに揺動可能に係合するロッキングエッジ部21と、隣り合う一対のエレメント12P,12Fに凹凸係合する凹凸係合部22とを精密な形状に形成する際には、まず、工具鋼板等の帯状の素材20を予め定めた断面形状に成形する素材成形工程が実行され、次いで、ファインブランキング等のように精密な複合成形が可能なプレス加工工程が実行される。
まず、エレメント12の素材20として予め帯状に成形された板厚t1の鋼板を準備する。この素材20は、例えばエレメント12の高さ方向の寸法の2倍程度の帯幅を有する工具鋼板である。
素材成形工程では、エレメント12の素材20に対しロール加工を施して、第1板厚部分24、第2板厚部分25および段差部分26に対応する素材部分を形成するとともに、段差部分26に対応する湾曲傾斜面35mを素材20の長さ方向に延在するよう形成する。
具体的には、図7Aおよび図7Bに示すように、この素材成形工程では、エレメント12の素材20を図7Aにように上下の成形ロール51,52の間に通して素材20を部分的に圧潰させ(加圧により塑性変形させ)、成形ロール51,52を通過した素材20に対し、板厚t1の第1板厚部分24に対応するプレス加工前の厚板素材部分20cと、板厚t2の第2板厚部分25に対応するプレス加工前の薄板素材部分20a,20bと、厚板素材部分20cと薄板素材部分20a,20bとの間に段差部分26に対応する段差を形成する帯状の段差部分20d,20eとを、ロール加工によってそれぞれ成形する。
ここでは、一定長さ毎の素材20から、素材20の板幅方向の両側に第2板厚部分25を有し、板幅方向の中央側に第1板厚部分24を有する一対のエレメント12を作製できるように、素材20の板幅方向両側に薄板素材部分20a,20bを成形する。
なお、図7Bでは、上下の成形ロール51,52を回転軸線位置より素材20側の半円柱部分のみ図示しており、図示の便宜上、上側の成形ロール51を素材20から離間させて示している。この上方側の成形ロール51は、素材20の板幅方向両側に第2板厚部分25に対応する板厚の薄板素材部分20a,20bを成形するため、一対の大径部51a,51bを有するとともに、両大径部51a,51bの間に厚板素材部分20cをならす小径部51cを有している。また、大径部51a,51bの小径部51cに近接する側の端部は、素材20に湾曲傾斜面35に近い湾曲傾斜面35mを転写し段差部分26に対応する部分を成形するための一対の環状湾曲面51d,51eを有している。
図7B中の下方側の成形ロール52は、素材20の背面20jに接触する略円柱面52aを有しており、上方側の成形ロール51からの加圧に対して素材20を背面20j側から支持するとともに、上方側の成形ロール51と協働して素材20を予め設定された搬送速度で下流側(図7A中の右側)に移動させることができる。
図8Aに示すように、この素材成形工程では、素材20のうち段差部分26に対応する帯状の段差部分20d,20eに、厚板素材部分20cに隣接する一端35ma側で最大傾斜角θmsをなして傾斜するとともに薄板素材部分20a,20bに近接するほど傾斜角を減少させ、凹凸係合部22の近傍に位置する他端35mb側で第2板厚部分25の片面25aに連続する湾曲傾斜面35mを形成する。ここで、最大傾斜角θmsは、後述するプレス加工後の緩傾斜面27より大きい傾斜角度であって、湾曲傾斜面35の最大傾斜角θsに近い角度である。
次のプレス加工工程では、1回のプレス加工毎に、帯状の素材20から例えば一対のエレメント12の輪郭形状部を打ち抜くとともに、その打ち抜きの開始から完了までの間に、素材20のうち第1板厚部分24に対応する厚板素材部分20cの両側縁部分を素材20の一面側から部分的に圧潰させて、段差部分26側に近くなるほど板厚が板厚t1から徐々に減少するように傾斜した少なくとも一対の緩傾斜面27と、これらの緩傾斜面27と対応する第1板厚部分24の平坦な片面24aとを予め設定された曲率半径r1で連続させる少なくとも一対のロッキングエッジ部21とを、それぞれ形成する。また、これと併せて、少なくとも一対の第2板厚部分25に対応する薄板素材部分20a,20bを部分的に塑性変形させ、少なくとも一対の凹凸係合部22を形成する。
このプレス加工工程では、例えば図8Bに示すように、同時に加工する複数のエレメント12のうち、各エレメント12について、そのエレメント12の輪郭形状部に対応する形状を有する少なくとも一組のパンチ61およびカウンターパンチ62と、凹凸係合部22に対応する可動の突出しピン63とを用いる。そして、そのエレメント12の輪郭形状部を略全面せん断で打ち抜くように、パンチ61およびカウンターパンチ62の間で素材20の一部を加圧しながら、素材20の残部20rを挟圧し突起等により拘束するダイプレート65およびスティンガープレート66に対して、パンチ61およびカウンターパンチ62を図8Bの上方側に移動させ、ダイプレート65およびスティンガープレート66により拘束された素材20の残部20rから、エレメント12を打ち抜くことができる。
さらに、素材20を押圧・保持するパンチ61およびカウンターパンチ62の間の挟圧力を低下させた後、カウンターパンチ62と共にダイプレート65側に打ち抜かれた素材20からパンチ61を離間させるように、パンチ61を後退させる。次いで、ダイプレート65およびスティンガープレート66の間の素材押圧力を低下させた後、ダイプレート65およびスティンガープレート66の間を開いて、素材20の次工程分への材料送りを行う一方で、図8Dに示すように、カウンターパンチ62をダイプレート65を打ち抜き完了時の位置からパンチ61側に復帰させて、カウンターパンチ62と共にダイプレート65側に打ち抜かれていた素材20を、ダイプレート65の開口部から排出させる。
なお、図8Bに示すカウンターパンチ62には、エレメント12の第1板厚部分24を構成する一対の鉤状部31,32の付根部分において、それぞれロッキングエッジ部21を形成する形状転写部62aと緩傾斜面27を形成する形状転写部62bとが設けられており、さらに、凹凸係合部22の係合凸部22aに対応する円形凹部62cと、その円形凹部62cの入口部分に位置する環状の形状転写部62dとが形成されている。ここで、形状転写部62dは、係合凸部22aの基端外周の環状隅面22dを転写する部分である。また、図8B〜図8D中においては、圧潰部分やその金型側の加工部位との識別を容易にするため、便宜的にパンチ61およびカウンターパンチ62とこれらに挟まれた素材20との間に隙間をあけ、同様に、ダイプレート65およびスティンガープレート66とこれらに挟まれた素材20の残部20rとの間に隙間をあけているが、これらが圧接していることは勿論である。さらに、パンチ61およびカウンターパンチ62の外周部とダイプレート65およびスティンガープレート66との間にも隙間があるが、ファインブランキング等のために非常に小さい摺動クリアランスとなっていることは勿論である。
また、図8Bでは、ロッキングエッジ部21の加工部位と凹凸係合部22の加工部位とを共に図示するために、凹凸係合部22および鉤状部31を切断する組合せ断面で示しており、凹部28を形成する輪郭形状部を示していないが、同図中に仮想線で示すとともに図8Cに示すように、凹部28を形成する部分では、パンチ61およびカウンターパンチ62が狭まり、凹部28に対応する輪郭形状になるよう切断される。したがって、エレメント12の高さ方向においてロッキングエッジ部21と略同一高さに位置する凹部28の内底面部28c付近の段差部分26のエッジ部分は、鉤状部31,32の付根部分のロッキングエッジ部21の帯状の湾曲面より突出しない範囲内に形成され、例えばエレメント12の他の外周輪郭形状部と同程度のわずかなだれ形状となる。
プレス成形工程では、第2板厚部分25の片面25aから垂直に突出する表面側の係合凸部22aと第2板厚部分25の片面25aとは反対側の面から垂直に没入する裏面側の係合凹部22bとを有する凹凸係合部22を形成するとともに、表面側の係合凸部22aの外周面22cと第2板厚部分25の片面25aとの間に、湾曲傾斜面35より曲率半径が小さい円弧状断面の環状隅面22dを形成し、環状隅面22dと湾曲傾斜面35とを、第2板厚部分25の反対側の面12bに対し平行な片面25aの一部で接続する。
また、突出しピン63は、パンチ61およびカウンターパンチ62の間で素材20の一部を加圧した状態で、パンチ61側からカウンターパンチ62側に突出することで、その素材20の一面側にエレメント12の第2板厚部分25の片面25a(一面)から垂直に突出する略円柱状の係合凸部22aと、エレメント12の第2板厚部分25の他面であるエレメント12の背面12bから垂直に没入する円形の係合凹部22bとを同時に形成することができる。なお、突出しピン63に対向するエジェクタピンを設けて打ち抜き後のエレメント12をダイプレート65側から離脱させる際の離型性を高めることができる。
一方、無端帯状リング11A,11Bは、それぞれ素材となる金属製のリボン状部材を複数枚積層した金属製積層リングとして製造される。
プレス加工工程で帯状の素材20から打ち抜かれた複数のエレメント12は、次いで、無端帯状リング11A,11Bに沿って板厚方向に積層されるとともにそれぞれの凹部28の内部に無端帯状リング11A,11Bの一部を収納するようにして、無端帯状リング11A,11Bに板厚方向に揺動可能に組み付けられ、所定数のエレメント12が無端帯状リング11A,11Bに組み付けられると、所定数のエレメント12が無端帯状リング11A,11Bにより環状に拘束された状態となり、伝動ベルト10ができあがる。
次に、作用について説明する。
上述のように構成された本実施形態の伝動ベルトおよびその製造方法においては、各エレメント12の第1板厚部分24に、ロッキングエッジ部21から段差部分26側に近付くほど板厚が減少するように傾斜した緩傾斜面27が形成され、段差部分26のベルト幅方向の全域に、緩傾斜面27に隣接する一端35a側で緩傾斜面27より大きい最大傾斜角θsをなして傾斜するとともに第2板厚部分25に近接するほどその傾斜角を減少させ、凹凸係合部22の近傍に位置する他端35b側で第2板厚部分25の片面25aに連続する湾曲傾斜面35が形成されているので、凹凸係合部22とロッキングエッジ部21とが近接する場合であっても、凹凸係合部22の近傍でエレメント12の素材20の両面を互いに平行な押圧保持領域で確実に挟圧・保持して、凹凸係合部22の精密なプレス成形を精度良く行うとともに、その成形型の耐用寿命を十分に延ばすことができる。
また、湾曲傾斜面35が、第1板厚部分24と第2板厚部分25との板厚の差(t1−t2)より大きい曲率半径rwを持つ円弧状断面を有しているので、凹凸係合部22の近傍で素材20を確実に挟圧・保持可能な領域を、湾曲傾斜面35が形成される素材20の片面側に広く確保することができるのに加えて、プライマリプーリ2またはセカンダリプーリ3からベルト幅方向に作用する挟圧力等(プーリとの接触姿勢やその変化により他の力も生じ得る)に対して、エレメント12の段差部分26の近傍、特に一対の鉤状部31,32が結合される段差部分26の両端部の近傍における応力集中をも有効に抑制することができる。
さらに、板厚の大きい第1板厚部分24が無端帯状リング11A,11Bの外周側に、板厚が小さい第2板厚部分25が無端帯状リング11A,11Bの内周側に、それぞれ位置するので、無端帯状リング11A,11Bに多数のエレメント12を容易に組み付けることができるとともに、伝動ベルト10のプライマリプーリ2またはセカンダリプーリ3への巻き掛け領域において複数のエレメント12の姿勢を安定させることができる。
加えて、各エレメント12の第1板厚部分24に、ロッキングエッジ部21を間に挟んで凹凸係合部22とは反対側に位置する凹部28を有するとともに、この凹部28に無端帯状リング11A,11Bの一部を収容できるようになっているので、第2板厚部分25側である無端帯状リング11A,11Bの内方側では、隣り合うエレメント12同士を凹凸係合部22により凹凸係合させて姿勢の安定化を図り、第2板厚部分25に対し相対的にベルト幅方向に幅広となる第1板厚部分24では、無端帯状リング11A,11Bに多数のエレメント12を容易に組み付けることができる。
特に、各エレメント12の第1板厚部分24が、ロッキングエッジ部21より無端帯状リング11A,11Bの外周側であってベルト幅方向の中央部に凹部28を有していることから、無端帯状リング11A,11Bに多数のエレメント12を容易に組み付けることができ、しかも、プライマリプーリ2やセカンダリプーリ3に挟圧されるエレメント12の両側端面部23a,23bを広範囲に設定可能になることで、伝動ベルト10の巻き付け姿勢の安定化や耐久性の向上を図ることができる。
また、本実施形態では、湾曲傾斜面35が、段差部分26のベルト幅方向の全域に形成され、湾曲傾斜面35の曲率半径rwが、0.4mm以上であるので、素材20にロール加工等によって湾曲傾斜面35mを予め容易に形成することができ、しかも、ロッキングエッジ部21や凹凸係合部22の精密成形のための素材20の塑性変形量を抑え、成形型の寿命を向上させることができる。
因みに、図9は、上記構成を有するエレメント12について、低炭素系の工具鋼からなる板厚1.5mmの素材20を用い、第1板厚部分24の板厚t1を1.5mm、第2板厚部分25の板厚t2を1.2mm、湾曲傾斜面35の曲率半径rwを0.4mm以上とした実施例と、段差部分26の湾曲傾斜面35に代えて段差部分の隅部の曲率半径(以下、隅Rという)を小さくした以外は実施例と同条件とし、その段差部分の隅Rを段差の高さ、すなわち第1板厚部分24の板厚t1と第2板厚部分25の板厚t2の差0.3mmの約半分にした比較例とについて、鉤状部31,32の作用する挟圧力等によって段差部分26の両端部の隅Rの近傍に生じる応力(以下、段差部応力という)を比較したものである。
この図から明らかなように、段差面(湾曲傾斜面35あるいは段差部分の隅R面)の曲率半径が0.4mm(板厚t2の1/3)以上となる実施例では、比較例に比べて、段差部応力が大幅に低減され、応力の集中を防止できることがわかる。
このように、本実施形態の伝動ベルトによれば、凹凸係合部22とロッキングエッジ部21とがエレメント12の高さ方向で近接する場合であっても、凹凸係合部22の近傍で素材20の両面を互いに平行な領域で確実に挟圧・保持して、凹凸係合部22の精密なプレス成形を精度良く行うことができるとともに、その成形型の長寿命化を図ることができる。したがって、エレメント12の加工精度を担保しつつエレメント12の製造コストを抑え、低コストの伝動ベルト10を提供することができる。
一方、本実施形態の製造方法では、素材成形工程において、段差部分26に対応する帯状の段差部分20d,20eにロール加工を施して、一端35ma側でプレス加工後の緩傾斜面27より大きい最大傾斜角θmsをなして傾斜するとともに薄板素材部分20a,20bに近接するほど傾斜角を減少させ、他端35mb側で薄板素材部分20a,20bの片面に連続する湾曲傾斜面35mを形成するので、その後のプレス加工工程において、ロッキングエッジ部21や緩傾斜面27と凹凸係合部22とが近接する場合であっても、凹凸係合部22の近傍で素材20の両面を互いに平行な押圧保持領域で確実に挟圧・保持して、凹凸係合部22の精密なプレス成形を精度良く行うことができるとともに、その成形型の寿命をのばすことができる。
また、プレス成形工程では、第2板厚部分25の片面25aから垂直に突出する表面側の係合凸部22aと第2板厚部分25の裏面から没入する係合凹部22bとを有する凹凸係合部22を形成するとともに、表面側の係合凸部22aの外周面22cと第2板厚部分25の片面25aとの間に、湾曲傾斜面35より曲率半径が小さい円弧状断面の環状隅面22dを形成し、環状隅面22dと湾曲傾斜面35とを、第2板厚部分25の反対側の面に対し平行な片面25aの一部で接続するようにしているので、凹凸係合部22の表面側の係合凸部22aがその基端側に環状隅面22dを有する場合であっても、係合凸部22aの近傍領域で素材20をその板面と垂直な方向に確実に挟圧・保持可能になり、その成形精度を高めることができる。
さらに、素材成形工程では、湾曲傾斜面35mを、第1板厚部分24と第2板厚部分25との板厚の差(t1−t2)より大きい曲率半径rwを持つ円弧状断面に形成することから、円弧状断面を加工する成形ロール51の環状湾曲面51d,51eの曲率半径を大きくすることができ、その成形ロール51の耐久性を高めることができるとともに、精密なプレス成形を行う際の素材20の塑性変形量が少なくなることで、プレス加工型の耐久性も高めることができる。
加えて、素材20として予め帯状に成形された工具鋼の鋼板を準備し、素材成形工程でその素材20に対しロール加工を施して、第1板厚部分24、第2板厚部分25および段差部分26に対応する厚板素材部分20c、薄板素材部分20a,20bおよび帯状の段差部分20d,20eを形成するとともに、両段差部分20d,20eの湾曲傾斜面35mを素材20の長さ方向に延在するよう形成するので、エレメント12のベルト幅方向全域に及ぶような段差部分26の湾曲傾斜面35をロール加工により容易に成形でき、ロッキングエッジ部21や凹凸係合部22の精密な成形を行うプレス加工時の素材20の塑性変形量を抑えることで、その加工精度および加工型の耐久性向上を図ることができる。
このように、本実施形態の伝動ベルトの製造方法によれば、素材成形工程で、第1板厚部分24と第2板厚部分25の間の段差部分26に緩傾斜面27より大きい最大傾斜角θsをなして傾斜するとともに第2板厚部分25に近接するほど傾斜角を減少させる湾曲傾斜面35を成形しておき、次のプレス加工工程で、凹凸係合部22の近傍に素材20の押圧保持領域を確保できるようにし、しかも、ロッキングエッジ部21や凹凸係合部22の成形のための塑性変形量を抑えているので、エレメント12の加工精度と加工型の耐久性向上を図ることができる。したがって、エレメント12の加工精度を担保しつつエレメント12の製造コストを抑えることのできる製造方法を実現することができる。
なお、上述の一実施形態に係る伝動ベルトおよびその製造方法においては、段差部分26のベルト幅方向の全域に湾曲傾斜面35が形成されるものとしたが、ロッキングエッジ部21と凹凸係合部22が近接するベルト幅方向の中央部にのみ湾曲傾斜面35が形成されてもよい。ただし、一対の鉤状部31,32の挟圧力等による曲げ方向の力が加わる場合には、一対の鉤状部31,32と段差部分26が結合されるベルト幅方向の両端部における応力の集中を抑える必要があり、素材のロール成形による加工の容易化やその後のプレス加工精度の向上という点を考慮すれば、エレメント12のベルト幅方向の両端部にも湾曲傾斜面35が形成されるのが好ましい。
また、上述の実施形態では、両肩部分に鉤状部31,32を有するエレメント12としたが、エレメント形状はこのようなものに限定されるものではなく、本発明は、鉤状部31,32に代えて、例えば特許文献2に記載のエレメント輪郭形状のように、ベルト幅方向の中央部で一対の無端帯状リング11A,11Bの間からこれらの外周面側に突出し、一対の無端帯状リングの外周面の方向に延びる突出部を有する略T字形の頭部を有するものであってもよい。
さらに、上述の一実施形態の製造方法では、素材20の幅方向両側に薄板素材部分20a,20bを形成し、その素材20の一定長さ毎に一対のエレメント12を打ち抜くものとして説明したが、片側のみであってもよいし、一定長さの素材の打ち抜きで多数個のエレメント12を加工できるように多数の帯状の薄板部を素材にロール加工してもよい。勿論、1回の打ち抜きで多数個を加工できるようにパンチおよびカウンターパンチを素材の長さ方向(送り方向)に複数設けることもできる。
また、素材成形工程では、ロール加工を行うこととしたが、他の加工法でロール加工に代わる一定長さ毎の素材20の成形を行うようにしてもよく、その場合、段差部分や湾曲段差面がベルト幅方向で異なる断面形状となってもよい。
エレメントは、複数の凹凸係合部を有するものであってもよい。また、エレメントは、第1板厚部分の外端(伝動ベルトの外周側の端部)側に第2板厚部分および凹凸係合部を有し、第1板厚部分の内端側にロッキングエッジ部とそれを形成するための傾斜面を有するものとすることも考えられる。
以上説明したように、本発明の伝動ベルトは、凹凸係合部とロッキングエッジ部とが近接する場合であっても、凹凸係合部の近傍でエレメントの素材の両面を広範囲に挟圧・保持して、凹凸係合部の精密なプレス成形を精度良く行うことができるとともに、その成形型の寿命をのばすことができ、エレメントの精度を担保しつつエレメントの製造コストを抑えることができ、本発明の伝動ベルトの製造方法は、素材成形工程で、第1板厚部分と、その第1板厚部分より板厚が小さい第2板厚部分と、両板厚部分の間の段差部分とを成形してその段差部分の一面側に段差を形成し、プレス加工工程で、ロッキングエッジ部や凹凸係合部のプレス加工時における素材の塑性変形量を抑えることで、その加工精度および加工型の耐久性向上を図ることができるという効果を奏するものであり、伝動ベルトおよびその製造方法、特にベルト式の無段変速機に好適な伝動ベルトおよびその製造方法全般に有用である。
2 プライマリプーリ(プーリ)
3 セカンダリプーリ(プーリ)
10 伝動ベルト
11A,11B 無端帯状リング
12 エレメント
12A 任意のエレメント
12b 背面(他面)
12F 他方側のエレメント(任意のエレメントに隣り合う他方側のエレメント)
12P 一方側のエレメント(任意のエレメントに隣り合う一方側のエレメント)
20 素材
20a,20b 薄板素材部分
20c 厚板素材部分
20d,20e 帯状の段差部分
21 ロッキングエッジ部
22 凹凸係合部
22a 係合凸部
22b 係合凹部
22c 外周面
22d 環状隅面
23a,23b 両側端面部
24 第1板厚部分
24a 片面(一面)
25 第2板厚部分
25a 片面(一面)
26 段差部分
27 緩傾斜面
28 凹部
31,32 鉤状部(両肩部)
35,35m 湾曲傾斜面
35a,35ma 一端
35b,35mb 他端
51,52 成形ロール
61 パンチ
62 カウンターパンチ
63 突出しピン
rw 湾曲傾斜面の曲率半径
t1,t2 板厚
θs,θms 最大傾斜角

Claims (12)

  1. 無端帯状リングと、前記無端帯状リングを介し環状に結束された複数のエレメントと、を備え、前記エレメントのそれぞれが、ベルト幅方向の両側でプーリに挟圧される両側端面部と、前記プーリに巻き掛けられた状態で揺動する際の支点となるロッキングエッジ部と、隣り合う一対のエレメントに凹凸係合する凹凸係合部と、を有する伝動ベルトであって、
    前記エレメントのそれぞれは、前記ロッキングエッジ部と前記凹凸係合部との間に、前記凹凸係合部に近接するほど傾斜角が減少する湾曲傾斜面が形成されていることを特徴とする伝動ベルト。
  2. 前記湾曲傾斜面は、前記ロッキングエッジ部と前記凹凸係合部との間における前記エレメントの板厚方向の段差より大きい曲率半径を持つことを特徴とする請求項1に記載の伝動ベルト。
  3. 無端帯状リングと、前記無端帯状リングに沿って板厚の方向に積層されるとともに前記無端帯状リングに前記板厚の方向に揺動可能に組み付けられた複数のエレメントと、を備え、前記エレメントのそれぞれが、隣り合う一対のエレメントのうち一方側のエレメントに揺動可能に係合するロッキングエッジ部と、前記隣り合う一対のエレメントに凹凸係合する凹凸係合部と、ベルト幅方向の両側でプーリに挟圧される両側端面部と、を有する伝動ベルトであって、
    前記エレメントのそれぞれが、前記ロッキングエッジ部が形成された第1板厚部分と、前記第1板厚部分より前記板厚が小さく前記凹凸係合部が形成された第2板厚部分と、前記第1板厚部分および前記第2板厚部分の間で一面側に段差を形成する段差部分とによって構成され、
    前記第1板厚部分には、前記ロッキングエッジ部から前記段差部分側に近付くほど前記板厚が減少するように傾斜した緩傾斜面が形成され、
    前記段差部分の前記ベルト幅方向の少なくとも一部に、前記緩傾斜面に隣接する一端側で前記緩傾斜面より大きい最大傾斜角をなして傾斜するとともに前記第2板厚部分に近接するほど傾斜角を減少させ、前記凹凸係合部の近傍に位置する他端側で前記第2板厚部分の片面に連続する湾曲傾斜面が形成されていることを特徴とする伝動ベルト。
  4. 前記湾曲傾斜面が、前記第1板厚部分と前記第2板厚部分との板厚の差より大きい曲率半径を持つことを特徴とする請求項3に記載の伝動ベルト。
  5. 前記エレメントの前記第1板厚部分が、前記無端帯状リングの外周側に位置するとともに、前記エレメントの前記第2板厚部分が、前記無端帯状リングの内周側に位置することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の伝動ベルト。
  6. 前記エレメントの前記第1板厚部分が、前記ロッキングエッジ部を間に挟んで前記凹凸係合部とは反対側に、前記無端帯状リングの一部を収容可能な凹部を有することを特徴とする請求項3ないし請求項5のうちいずれか1の請求項に記載の伝動ベルト。
  7. 前記エレメントの前記第1板厚部分が、前記ロッキングエッジ部より前記無端帯状リングの外周側であって前記ベルト幅方向の中央部に前記凹部を有していることを特徴とする請求項6に記載の伝動ベルト。
  8. 前記湾曲傾斜面が、前記段差部分の前記ベルト幅方向の全域に形成され、
    前記湾曲傾斜面の曲率半径が、0.4mm以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のうちいずれか1の請求項に記載の伝動ベルト。
  9. 無端帯状リングと、前記無端帯状リングに沿って板厚の方向に積層されるとともに前記無端帯状リングに前記板厚の方向に揺動可能に組み付けられた複数のエレメントと、を備える伝動ベルトの前記エレメントのそれぞれに、隣り合う一対のエレメントのうち一方側のエレメントに揺動可能に係合するロッキングエッジ部と、前記隣り合う一対のエレメントに凹凸係合する凹凸係合部とを形成する伝動ベルトの製造方法であって、
    前記エレメントの素材を部分的に圧潰させて、第1板厚部分と、該第1板厚部分より前記板厚が小さい第2板厚部分と、前記第1板厚部分および前記第2板厚部分の間で一面側に段差を形成する段差部分とを形成する素材成形工程と、
    前記エレメントの素材から前記エレメントを打ち抜くとともに、前記第1板厚部分を部分的に圧潰させて前記段差部分側に近くなるほど前記板厚が減少するように傾斜した緩傾斜面と前記ロッキングエッジ部とを形成するとともに、前記第2板厚部分を部分的に塑性変形させて前記凹凸係合部を形成するプレス成形工程と、を含み、
    前記素材成形工程では、前記段差部分に、前記第1板厚部分に隣接する一端側で前記緩傾斜面より大きい最大傾斜角をなして傾斜するとともに前記第2板厚部分に近接するほど傾斜角を減少させ、前記凹凸係合部の近傍に位置する他端側で前記第2板厚部分の片面に連続する湾曲傾斜面を形成することを特徴とする伝動ベルトの製造方法。
  10. 前記プレス成形工程で、前記第2板厚部分の前記片面から垂直に突出する表面側の凸部と前記第2板厚部分の前記片面とは反対側の面から垂直に没入する裏面側の凹部とを有する前記凹凸係合部を形成するとともに、前記表面側の凸部の外周面と前記第2板厚部分の前記片面との間に、前記湾曲傾斜面より曲率半径が小さい円弧状断面の環状隅面を形成し、前記環状隅面と前記湾曲傾斜面とを、前記第2板厚部分の前記反対側の面に対し平行な前記片面の一部で接続することを特徴とする請求項9に記載の伝動ベルトの製造方法。
  11. 前記素材成形工程で、前記湾曲傾斜面を、前記第1板厚部分と前記第2板厚部分との板厚の差より大きい曲率半径で形成することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の伝動ベルトの製造方法。
  12. 前記エレメントの素材として予め帯状に成形された鋼板を準備し、
    前記素材成形工程で、前記エレメントの素材に対しロール加工を施して、前記第1板厚部分、前記第2板厚部分および前記段差部分を形成するとともに、前記段差部分の前記湾曲傾斜面を前記エレメントの素材の長さ方向に延在するよう形成することを特徴とする請求項9ないし請求項11のうちいずれか1の請求項に記載の伝動ベルトの製造方法。
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