JP4315672B2 - 無段変速機用ベルトのエレメントの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車やその他の産業機械で使用されている無段変速機用ベルトのエレメントの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
無段変速機は、変速機の変速比を連続的に変えることができるものであり、自動車等に用いた場合には、エンジンの特性を十分に発揮させて更に排気ガスや燃費を改善できるという利点がある。
このような無段変速機として、例えば、特許文献1や図4(A)、(B)に概略構成を示すようなベルト式の無段変速機100が知られている。この無段変速機100は図示しない油圧機構によってそれぞれベルト部材101の掛かり直径を可変とし、更にベルト部材101の両側の傾斜面102、103と同一勾配の内側壁を備える入力側のV溝プーリ104及び出力側のV溝プーリ105を有し、V溝プーリ104の回転力をベルト部材101を介してV溝プーリ105に伝達している。ベルト部材101は、所定形状の板材からなって荷重の伝達方向に多数枚並べて配置されたエレメント106と、このエレメント106の両側に対称に設けられた平行溝部107、108に嵌入する湾曲可能な無端ベルト(スチールリング)109、110とを有している。
【0003】
従って、V溝プーリ104からV溝プーリ105への荷重の伝達は、各エレメント106及びこれに装着された金属製の無端ベルト109、110を介して伝達され、出力側のV溝プーリ105の回転速度を変える場合には、V溝プーリ104及びV溝プーリ105の内側壁の間隔を変えることによって行う。
そして、以上の無段変速機100に使用されるエレメント106は、耐摩耗性等の高い強度が要求されることから、例えば、特許文献2に示すように、通常は硬化熱処理が施される。また、従来のエレメントの製造にあっては、まず所定の材料からエレメントを打ち抜き形成して個片化した後、各エレメントをロットで焼入れ及び焼き戻しを行っている。
【0004】
【特許文献1】
特開昭55−107147号公報(第2頁左下欄20行目〜第3頁左上欄3行目、第2図)
【特許文献2】
特開昭60−232832号公報(第1頁右下欄1〜7行目)
【特許文献3】
特開2002−5240号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のエレメントの製造方法は、通常プレス装置による打抜き加工によって製造されるが、打抜き時にバリが生じるため、従来は打抜き後にバレル研磨や面取り加工などのバリ取りを行う必要があり、これが工数の増大、コスト高の要因となっていた(特許文献3)。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、プレス加工によって効率的に製造し、しかも、バレル研磨や面取り加工等のバリ取りを行う必要がなくて比較的安価に製造可能な無段変速機用ベルトのエレメントの製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う本発明に係る無段変速機用ベルトのエレメントの製造方法は、使用にあって装着されるV溝プーリの内側壁に対応する傾斜面を両側に備えたサドル部を有し、該サドル部の上位置に連結首部によって上板部が一体的に連結され、該連結首部の左右であって前記上板部と前記サドル部の間には、金属製の無端ベルトが装着可能なベルト保持部を備えた無段変速機用ベルトのエレメントをプレス加工によって打ち抜き形成する製造方法であって、
帯状の薄板材料から、前記エレメントの前記連結首部、前記サドル部、及び前記薄板材料に連結される頂部の連結部を残して前記上板部を打ち抜き形成し、更に前記連結部を切断して前記エレメントを分離個別化する工程を具備し、
しかも、前記連結首部、前記サドル部、前記上板部の打ち抜き形成は、前記エレメントの板厚の10〜20%(更に、好ましくは13〜17%)のクリアランスで半抜き加工を行う第1工程と、
前記半抜き加工を行った前記エレメントを前記半抜き方向とは逆方向からシェービング代を残して打ち抜き加工を行う第2工程と、
前記エレメントのシェービングを行う第3工程とを有して行われる。
これによって、エレメントの端面がシェービング加工によって滑らかになると共に、板厚方向に突出するバリがなくなる。
【0007】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここに、図1(A)〜(D)は本発明の一実施の形態に係る無段変速機用ベルトのエレメントの製造方法のプレス加工の工程を示す説明図、図2(A)〜(F)は同方法の概略説明図、図3(A)、(B)は同方法によって製造されたエレメントの説明図である。なお、図1(A)〜(D)は理解を容易にするため、板厚を強調して厚く書かれている。
【0008】
図3(A)、(B)を参照しながら、まず、本発明の一実施の形態に係る無段変速機用ベルトのエレメントの製造方法によって製造されたエレメント10について説明する。エレメント10の材質は、炭素鋼や鉄系合金鋼(例えば、SKS−5)、その他の焼入れ焼き戻し可能な炭素工具鋼や合金工具鋼等である。
このエレメント10は角部が丸くなった2等辺三角形の上板部11と、両側にそれぞれ直線状の傾斜面12、13を備えるサドル部14とが中央の連結首部15によって一体的に連結されている。そして、連結首部15の左右であって、上板部11とサドル部14との間にはベルト保持部を形成する平行溝部16、17が形成されている。なお、傾斜面12、13の傾斜角度は、組み立てられた状態の無段変速機用ベルトAを使用するV溝プーリの内側壁の傾斜角度に一致している(図4参照)。
【0009】
上板部11の斜辺18、19は内側に緩やかに湾曲し、図3(B)に示すように、中央部分の一方に凹部20を他方に凸部21を備えている。凹部20は断面円形の丸穴からなり、凸部21はこの凹部20に僅少の隙間を有して入り込む断面円形の円柱状突起からなっている。また、凸部21の高さは凹部20の深さより小さくなって、積層状態にある各エレメント10の傾斜角度が多少変わっても、凸部21が凹部20に常時嵌入するようになって、複数の積み重ねられたエレメント10の姿勢を常時一定に保つ機能を有している。
図3(A)に示すように、サドル部14は連結首部15から下方に下がって途中位置22まではその厚みが一定であるが、途中位置22から徐々にその厚みが薄くなる薄肉部23が設けられている。この薄肉部23は、図3(B)に示すように、無段変速機用ベルトAがV溝プーリに沿って湾曲する場合に、各エレメント10の凹部20と凸部21を係合させた状態で、各エレメント10を円滑に接触させる役目を果たしている。
【0010】
なお、本実施の形態においては、エレメント10の薄肉部23は片側面のみに傾斜面が設けられ、他方は上板部11に連続する平面となっているが、場合によっては、サドル部14の途中位置22から一方側(例えば、P方向)に曲げて、折り曲げ部分の表裏に丸みを付けてもよいし、板厚差(段)によって構成してもよい。なお、サドル部14の下端には、全体の重量を軽減するための切り込み24、25が設けられている。
上板部11、サドル部14及び連結首部15によって形成される左右の平行溝部16、17は、この部分に金属からなって十分な強度を有し繰り返し曲げに強い材質からなる断面長方形の無端ベルト26、27がそれぞれ嵌入している(図4参照)。従って、このエレメント10において、V溝プーリの接する傾斜面12、13と無端ベルト26、27に接する平行溝部16、17の形状(端部を含む)が一定の品質を保持する必要がある。
【0011】
続いて、図1、図2を参照しながら、エレメント10を2列同時に製造する場合のプレス加工による本発明の一実施の形態に係る無段変速機用ベルトのエレメントの製造方法について説明する。
先に説明したように、鉄系合金鋼、例えばSKS−5等の工具鋼からなる帯状の薄板材料28を、リール搬送方式で金型装置に搬送する。まず、図2(A)に示すように、薄板材料28の中央に所定間隔で大径のパイロット孔29を形成し、次に半抜き加工により、裏面側に凸部21を形成すると共に、表面側に凹部20を形成する。次に、図2(B)に示すように、エレメント10のサドル部14の形成個所の両側にそれぞれ切り欠き30、31を形成し、サドル部14に対して3方を開放してプレス加工によって発生する応力の逃げ場を作る。この後、図2(C)に示すように、コイニング加工によりサドル部14の薄肉部23の形成予定個所を薄肉に形成する(仕様によって傾斜面であってもよいし、段状であってもよい)。
【0012】
次に、図2(D)に示すように、エレメント10の連結首部15及びサドル部14をプレス装置によって打ち抜き形成する。この打ち抜き工程は、図1(A)〜(C)に示すように、第1工程〜第3工程からなり、まず、クリアランスC1を大きめに設定したパンチ32とダイ33により、逆方向から材料の半抜き加工を行う(第1工程)。このときのクリアランスC1は、材料の板厚の15%程度(10〜20%であってもよい)に設定する。例えば材料の板厚が2mmであるときは、クリアランスは0.3mmに設定する。このように通常よりも大きなクリアランスC1で半抜きを行うことにより、エレメント10の外周となる片側の端部34は大きなダレ面からなる曲面となる。なお、クリアランスC1は以下に説明するシェービング代C2より少し大きい(1.5倍程度)が、シェービング代C2と同じ又は近づけてもよい。
【0013】
次に、図1(B)に示すように、図1(A)で示す半抜き方向の反対側から、別のパンチ35とダイ36を用いて打ち抜きを行う(第2工程)。このとき、シェービング代C2を残して打ち抜きを行う。本実施の形態では、シェービング代C2は0.2mm程度とした。この後、図1(C)に示すように、打ち抜き個所に更に別のパンチ37とダイ38を用いてシェービング加工を行って、図1(D)のようにエレメント10の所定の外形を形成する(第3工程)。このシェービング加工により、前工程で生じたバリを除去し、図2(D)に示すように所定の外形寸法を形成する。なお、図1(A)〜(D)では、平行溝部16、17の部分のみを示している。また、図2(C)において40はコイニング部を、図2(D)及び(E)において、41、42は打ち抜き部を示す。
【0014】
それから、図2(E)に示すように、以上の同一の工程(即ち、第1工程〜第3工程)を経て同様に上板部11を打ち抜き形成する。このとき、上板部11の頂部に連結部43を形成し、エレメント10と材料とはこの連結部43にて連結されるようにする。その後、材料の硬化熱処理などの所定の工程を経た後、連結部43を切断して滓枠部44からエレメント10を分離して個別化する。
【0015】
本発明は以上に述べた実施の形態の変形例を個々に組み合わせて実施する場合も、本発明の権利範囲に含まれる。
前記実施の形態では、エレメント10の製造にあっては、上板部11とサドル部14とに別けてプレス加工を行ったが、上板部11とサドル部14とを同時にプレス加工する場合であっても本発明は適用される。
【0016】
【発明の効果】
請求項1記載の無段変速機用ベルトのエレメントの製造方法は、以下の効果を有する。
最初に大きなクリアランスで半抜きすることにより、エレメントの外形部分となる端部に大きなダレ面を形成し、次いで打ち抜きを行った後シェービング加工を行って所定の外形を形成するので、無端ベルトに当接する個所は大きなダレ面からなる曲面となるため、無端ベルトに応力集中を与えることがなく、無端ベルトの損傷が防止でき、製品の信頼性を向上することができる。
また、金型内で曲面の形成を含む全ての加工が行われるので、製品の打ち抜き後にバリ取りやエレメントの外形を曲面に形成する加工やそのための設備が不要となり、安価に製造できる。
更に、シェービング加工により寸法精度良くエレメントの外形を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)〜(D)は本発明の一実施の形態に係る無段変速機用ベルトのエレメントの製造方法のプレス加工の工程を示す説明図である。
【図2】(A)〜(F)は同方法の概略説明図である。
【図3】(A)、(B)は同方法によって製造されたエレメントの説明図である。
【図4】(A)、(B)はそれぞれ従来例に係る無段変速機用ベルトの説明図である。
【符号の説明】
10:エレメント、11:上板部、12、13:傾斜面、14:サドル部、15:連結首部、16、17:平行溝部、18、19:斜辺、20:凹部、21:凸部、22:途中位置、23:薄肉部、24、25:切り込み、26、27:無端ベルト、28:薄板材料、29:パイロット孔、30、31:切り欠き、32:パンチ、33:ダイ、34:端部、35:パンチ、36:ダイ、37:パンチ、38:ダイ、40:コイニング部、41、42:打ち抜き部、43:連結部、44:滓枠部
Claims (1)
- 使用にあって装着されるV溝プーリの内側壁に対応する傾斜面を両側に備えたサドル部を有し、該サドル部の上位置に連結首部によって上板部が一体的に連結され、該連結首部の左右であって前記上板部と前記サドル部の間には、金属製の無端ベルトが装着可能なベルト保持部を備えた無段変速機用ベルトのエレメントをプレス加工によって打ち抜き形成する製造方法であって、
帯状の薄板材料から、前記エレメントの前記連結首部、前記サドル部、及び前記薄板材料に連結される頂部の連結部を残して前記上板部を打ち抜き形成し、更に前記連結部を切断して前記エレメントを分離個別化する工程を具備し、
しかも、前記連結首部、前記サドル部、前記上板部の打ち抜き形成は、前記エレメントの板厚の10〜20%のクリアランスで半抜き加工を行う第1工程と、
前記半抜き加工を行った前記エレメントを前記半抜き方向とは逆方向からシェービング代を残して打ち抜き加工を行う第2工程と、
前記エレメントのシェービングを行う第3工程とを有して行われることを特徴とする無段変速機用ベルトのエレメントの製造方法。
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