JP5243400B2 - 無段変速機用エレメントの製造方法 - Google Patents

無段変速機用エレメントの製造方法 Download PDF

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本発明は、ドライブ軸のプーリとドリブン軸のプーリの間で周回動作する駆動ベルトを構成する無段変速機用エレメントの製造方法に関する。
自動車に搭載される無段変速機(CVT)においては、ドライブ軸のプーリとドリブン軸のプーリとの間で、2本の金属ベルトに複数個の無段変速機用エレメントが係合されることで構成された駆動ベルトが周回動作する。内燃機関の回転駆動力は、前記ドライブ軸側のプーリに伝達された後に駆動ベルト、及びドリブン軸側のプーリを介してドリブン軸に伝達され、自動車を走行させる駆動力となる。
ここで、無段変速機用エレメントは、一般的に、プレス装置に対して長尺な金属製帯板を順次送り出し、該金属製帯板を成形パンチによって打ち抜くことで作製される(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、金属製帯板を単純に打ち抜くのみでは、同一形状の無段変速機用エレメントを再現性よく得ることは容易ではない。換言すれば、寸法精度に優れた無段変速機用エレメントを打ち抜きによって連続的に作製することは困難である。
そこで、特許文献2には、金属製帯板に代替して平板を用い、該平板の長辺の略中腹部に切欠部を形成した後に、前記平板から無段変速機用エレメントを打ち抜くことが提案されている。該特許文献2によれば、無段変速機用エレメントを打ち抜く際に平板の肉が切欠部に向かって流動するので、中央部の厚みが大きくなる度合いが低減される、とのことである。
特開昭63−199943号公報 特開2004−17045号公報
特許文献2記載の従来技術では、中央部の厚みが大きくなる度合いを低減することは可能であると考えられるものの、中央部の厚みが大きくなること自体を回避することはできない。従って、この従来技術では、厳密な寸法精度が要求される場合、その要求に対応することが困難である。
しかも、この従来技術では平板を使用するので、金属製帯板から平板を切り出す工程が必要となる。すなわち、工程数が増加してしまい、煩雑となる。
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、金属製帯板の中央部の厚みが大きくなることを回避することが可能であり、しかも、工程数が増加することもない無段変速機用エレメントの製造方法を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、無段変速機を構成するプーリに側方部が摺接するボディ部と、前記ボディ部の上端部から突出したネック部と、前記ネック部に連なり且つ該ネック部に比して幅広のヘッド部とを有し、前記ボディ部と前記ヘッド部との間に金属ベルトを挟持するための無段変速機用エレメントの製造方法であって、
長尺な金属製帯板を打ち抜いて、前記無段変速機用エレメントのヘッド部の輪郭線となる箇所から離間した箇所に孔を貫通形成する工程と、
前記孔が貫通形成された前記金属製帯板の幅方向端部を圧潰し、前記幅方向端部の厚み方向寸法を短縮する工程と、
前記幅方向端部の厚み方向寸法が短縮された前記金属製帯板の幅方向から、前記孔を境にして2個の無段変速機用エレメントを打ち抜く工程と、
を有し、
前記2個の無段変速機用エレメントを、各々のヘッド部同士が前記孔を境にするともに前記ヘッド部の輪郭線が前記孔から離間した箇所で対向し、且つ各々のボディ部が前記金属製帯板の前記幅方向端部を臨むようにして打ち抜くことを特徴とする。
この場合、金属製帯板の幅方向端部を圧潰する工程で、幅方向端部から中央部に向かう肉の流動が発生する。この流動に伴って孔が収縮されることにより、該流動が吸収される。これにより、厚み方向寸法(板厚)が過度に大きくなることが回避される。
肉の流動の度合いは、孔の寸法を変更することによって調することができる。すなわち、本発明によれば、厚み方向寸法を制御することが容易である。
なお、孔は、例えば、長穴を含むスリットとして形成することが可能である。この場合、スリットの長手方向寸法を調整することで肉の流動の度合い、ひいては金属製帯板の板厚の制御が可能である。
ここで、金属製帯板の幅方向端部を圧潰する前に、該金属製帯板の不要部分を打ち抜いて除去するようにしてもよい。この場合、圧潰する幅方向端部の体積が少なくなるので、金属製帯板の厚み方向寸法の制御が一層容易となる。
本発明によれば、金属製帯板に孔を形成し、その後、該金属製帯板の幅方向端部を圧潰するようにしている。このため、幅方向端部から中央部に向かう肉の流動が孔によって吸収されるので、金属製帯板の厚み方向寸法(板厚)が大きくなることが回避される。
そして、孔の寸法を調整することにより、肉の流動の度合い、ひいては金属製帯板の厚み方向寸法(板厚)を容易に制御することができる。
無段変速機の駆動ベルトを構成する無段変速機用エレメントの全体正面図である。 前記無段変速機用エレメントの側面図である。 前記駆動ベルトの要部拡大斜視一部断面図である。 前記無段変速機用エレメントの製造過程を金属製帯板の長手方向に沿って示すフロー図である。 前記金属製帯板にスリットを形成した状態を示す平面図である。 前記金属製帯板の幅方向端部を圧潰した状態を示す平面図である。 前記圧潰を行うための金型装置の要部概略縦断面図である。 前記金型装置にて前記圧潰を実施している状態を示す要部概略縦断面図である。 前記金型装置にて、スリットが形成されていない金属製帯板の幅方向端部を圧潰している状態を示す要部概略縦断面図である。 図9から圧潰が進行した状態を示す要部概略縦断面図である。 スリットの長手方向寸法と、エレメントの厚み方向寸法の相違との関係を示すグラフである。 前記金属製帯板からエレメントを打ち抜いた状態を示す平面図である。
以下、本発明に係る無段変速機用エレメント(以下、単にエレメントとも表記する)の製造方法につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
先ず、エレメントにつき図1及び図2を参照して説明する。このエレメント10は、ボディ部12と、該ボディ部12の上縁側における幅方向略中央部から突出形成されたネック部14と、該ネック部14部に連なり且つ該ネック部14に比して幅広のヘッド部16とを有する。
この中、ボディ部12の左側端縁18には、図示しないドリブン軸のプーリが摺接し、一方、右側端縁20には、図示しないドライブ軸のプーリが摺接する。また、図2から諒解されるように、ボディ部12の下半部の肉厚は、該下半部の下縁に向かうにつれて漸次的に減少する。すなわち、ボディ部12の下半部には、薄肉部22が設けられる。
図1及び図2に示すように、ヘッド部16は、ネック部14の上方に位置する上部領域24と、該上部領域24の左右両端に位置する左側端部領域26、右側端部領域28とを有する。ここで、ボディ部12の上半部の板厚をA、ネック部14の板厚をB、ヘッド部16における左側端部領域26、右側端部領域28の板厚をC、上部領域24の板厚をDとするとき、本実施の形態では、板厚Aが板厚Bより小さく設定されるとともに、板厚Bが板厚Cに対して同等以下に設定される。さらに、板厚Cは板厚Dよりも大きい。すなわち、下記の関係式(1)、(2)が成立する。
C≧B>A …(1)
C>D …(2)
また、上部領域24の一端面には円柱状突部30が突出形成され、他端面には、前記円柱状突部30の位置に対応する位置に、円柱体形状に切り欠かれた挿入用凹部32が形成される。後述するように、この挿入用凹部32には、隣接するエレメント10の円柱状突部30が係合する。
このような構成においては、ネック部14がボディ部12及びヘッド部16に比して幅狭であるため、ボディ部12の上縁とヘッド部16の下縁との間には、左肩溝34及び右肩溝36が形成される。
このエレメント10は、その要部拡大斜視一部断面図である図3に示すように、無段変速機を構成する1組のプーリ(図示せず)間に介在される駆動ベルト40を構成する。すなわち、該駆動ベルト40は、2本の金属ベルト42、42を複数個の前記エレメント10の左肩溝34、右肩溝36にそれぞれ係合することで構成され、上記したように、ボディ部12の左側端縁18にドリブン軸のプーリ(ともに図示せず)が摺接し、一方、右側端縁20には、ドライブ軸のプーリ(ともに図示せず)が摺接する。なお、図3では、金属ベルト42、42を、エレメント10の左肩溝34、右肩溝36の近傍で切断して示している。
図3に示すように、金属ベルト42は、複数本の薄肉の金属リング44を複数本積層して構成される。すなわち、金属ベルト42は、直径(周長)が小さな金属リング44の外周側に直径(周長)が大きな金属リング44を順次装着することで構成された積層体である。金属ベルト42は無端状であるので、隣接する金属リング44、44同士の層間は金属ベルト42の側方端面でのみ視認可能である。
また、隣接するエレメント10、10同士は、一方の円柱状突部30が残余の一方の挿入用凹部32に係合することで互いに連結し合う。
次に、このエレメント10の製造方法につき説明する。
図4は、本実施の形態に係る製造方法の各工程が実施された1本の金属製帯板50を長手方向に沿って示した要部概略平面図(工程フロー図)である。この図4に示すように、金属製帯板50は矢印X方向に沿って搬送され、第1加工ステーション52、第2加工ステーション54、第3加工ステーション56の各々にて後述する所定の加工が施される。
なお、金属製帯板50は、図示しないロール体から端部が繰り出されることで供給される。従って、金属製帯板50は長尺且つ平坦な薄板である。勿論、金属製帯板50の板厚は、部位に関わらず略一定である。
送り出された金属製帯板50は、先ず、第1加工ステーション52に到達する。この第1加工ステーション52において、ピアッシング加工によってスリット58(孔)が貫通形成される。
図4及び図5に示すように、長尺なこのスリット58は、金属製帯板50の長手方向に直交する方向、すなわち、幅方向の略中央に、且つ長手方向に沿って延在するように形成される。スリット58の長手方向寸法は、例えば、10mm程度に設定すればよい。
ここで、図5に仮想線で示すように、エレメント10は、スリット58を境としてヘッド部16、16同士が互いに対向するように形成される。換言すれば、金属製帯板50としては、その幅方向寸法が、2個のエレメント10、10を得ることが可能な寸法であるものが選定される。スリット58の幅方向の延長線上には、ネック部14が位置する。
次に、第2加工ステーション54では、図4及び図6に示すように、スリット58が形成された金属製帯板50の幅方向端部を圧潰するプレス成形が行われる。この際には、図7に示される金型装置60が用いられる。なお、金属製帯板50の搬送方向Xは、図7における紙面に直交する方向である。
すなわち、金型装置60は、ダイ62とパンチ64とを有する。この中、パンチ64におけるダイ62を臨む側の面には、金属製帯板50の幅方向端部に対応する位置に、傾斜面66a、66bが形成される。また、傾斜面66aと傾斜面66bの間には、平坦面68が設けられる。
ダイ62の平坦な上端面には、金属製帯板50が載置される。その後、パンチ64が図示しない駆動機構(例えば、油圧シリンダ等)の作用下にダイ62側に向かって下降し、図6のVII−VII線に沿う断面である図7に示すように、傾斜面66a、66bの一部が金属製帯板50の幅方向端部に当接する。パンチ64がさらに下降すると、図8に示すように、傾斜面66a及び傾斜面66bによって金属製帯板50の幅方向端部が圧潰され、その厚み方向寸法が短縮される。その結果、エレメント10の薄肉部22(図1及び図2参照)に対応する部位が形成される。
ここで、スリット58が形成されていない金属製帯板50に対して上記の工程を行った場合を図9及び図10に示す。この場合には、金属製帯板50中、傾斜面66a、66bの各々と平坦面68との境界近傍に対応する部位が他の部位に比して大きく隆起する。この境界近傍に対応する部位は、ネック部14に相当する。
従って、図6中、左側端部領域26、右側端部領域28に相当する部位に含まれる点P1、P2における板厚と、ネック部14に相当する部位に含まれる点P3とを比較した場合、点P3における板厚が、点P1、P2における板厚よりも大きくなる。
これに対し、本実施の形態においては、金属製帯板50の幅方向中央部にスリット58が貫通形成されている。このため、幅方向端部が圧潰されることに伴って流動した肉は、図8に矢印で示すように、スリット58側に向かうことが容易である。従って、流動した肉がスリット58に流れ込み、その結果、図8に示すように、スリット58の幅が小さくなる。
すなわち、本実施の形態によれば、金属製帯板50に発生する肉の流動がスリット58によって吸収される。このため、ネック部14の厚み方向寸法が過度に大きくなることが回避される。このことから諒解されるように、スリット58を形成したことにより、寸法精度に優れたエレメント10を得ることができる。
ここで、スリット58の長手方向寸法と、3点の厚み差(3点上下差)との関係をグラフとして図11に示す。なお、3点上下差は、図6中の点P1、P2における板厚と、P3における板厚とに基づき、下記の式(3)に従って算出される。
3点上下差=[(点P1における板厚+点P2における板厚)/2]−P3における板厚 …(3)
図11から、P1、P2における平均板厚と、点P3の板厚との差は、スリット58が形成されていない場合(スリット58の長手方向寸法が0の場合)で最大であり、スリット58の長手方向寸法が所定の値に近づくにつれて小さくなることが明らかである。
スリット58の長手方向寸法は、エレメント10のヘッド部16やネック部14の幅方向寸法に応じて設定すればよい。すなわち、例えば、スリット58の長手方向寸法を種々変更した上で上記の工程を行って各々の場合の3点上下差を求め、3点上下差が0ないしその近傍となる寸法に設定することができる。
このことから諒解されるように、スリット58の長手方向寸法を調整することにより、金属製帯板50の板厚を制御することが容易となる。その結果、十分な寸法精度を有するエレメント10を効率的に製造することが可能となる。
最後に、図4及び図12に示すように、幅方向に沿って2個のエレメント10の打ち抜きを行う。これにより、寸法精度に優れたエレメント10が得られるに至る。
このようにして得られたエレメント10では、図2に示す駆動ベルト40として構成された際に、この駆動ベルト40の内周側への湾曲変形が円滑に行われる。このため、各エレメント10の積層方向がヘッド部16側に曲がることがなく、従って、良好な積層形状を得ることができる。
また、駆動ベルト40が上記1組のプーリに掛けわたされた際には、駆動ベルト40の外周方向への振れを防止することが可能になる。従って、金属ベルト42(金属リング44)やエレメント10が損傷する懸念が払拭されるとともに、無段変速機における安定した動力の伝達を行うことが可能になる。
しかも、複数のエレメント10を環状に積層した際には、比較的肉厚の部分、すなわち、ヘッド部16の左側端部領域26、右側端部領域28、及びボディ部12の上半部におけるネック部14に近接する領域の三箇所が隣接するエレメント10に接触する。このため、極めて安定した積層状態を維持することができ、無段変速機用ベルトを形成した際に、蛇行等を防止して効率よく動力の伝達を行うことが可能になる。
さらにまた、図2に示すように、ネック部14の板厚Bよりもボディ部12の左右側端部の板厚Aが小さく設定される一方、ネック部14の板厚Bがヘッド部16の左側端部領域26、右側端部領域28の板厚Cの同等以下とされている。これにより、複数のエレメント10を環状に積層して駆動ベルト40を形成した際、隣接するエレメント10、10同士で左側端部領域26、右側端部領域28と、ネック部14とが容易に接触する。従って、積層状態を一層安定化することができる。
その上、各エレメント10では、ヘッド部16側に収束するように湾曲することが確実に阻止されるため、前記1組のプーリに掛けわたされた際に、金属ベルト42(金属リング44)と接触することが回避される。このため、エレメント10が損傷することが回避されるので、無段変速機における安定した動力の伝達を行うことが可能になる。
なお、上記した実施の形態では省略しているが、第1加工ステーション52と第2加工ステーション54との間に、金属製帯板50から不要部分(例えば、幅方向端部)を除却する不要部分打ち抜き工程を行うための加工ステーションを設けるようにしてもよい。この場合、圧潰する部位の体積が減少するので、金属製帯板50の板厚を制御することが一層容易となるという利点がある。
また、3点上下差が許容範囲となるのであれば、スリット58以外の形状、例えば、真円形状の貫通孔を形成するようにしてもよい。
10…無段変速機用エレメント 12…ボディ部
14…ネック部 16…ヘッド部
22…薄肉部 34…左肩溝
36…右肩溝 40…駆動ベルト
42…金属ベルト 44…金属リング
50…金属製帯板 58…スリット
60…金型装置 62…ダイ
64…パンチ 66a、66b…傾斜面
68…平坦面

Claims (3)

  1. 無段変速機を構成するプーリに側方部が摺接するボディ部と、前記ボディ部の上端部から突出したネック部と、前記ネック部に連なり且つ該ネック部に比して幅広のヘッド部とを有し、前記ボディ部と前記ヘッド部との間に金属ベルトを挟持するための無段変速機用エレメントの製造方法であって、
    長尺な金属製帯板を打ち抜いて、前記無段変速機用エレメントのヘッド部の輪郭線となる箇所から離間した箇所に孔を貫通形成する工程と、
    前記孔が貫通形成された前記金属製帯板の幅方向端部を圧潰し、前記幅方向端部の厚み方向寸法を短縮する工程と、
    前記幅方向端部の厚み方向寸法が短縮された前記金属製帯板の幅方向から、前記孔を境にして2個の無段変速機用エレメントを打ち抜く工程と、
    を有し、
    前記2個の無段変速機用エレメントを、各々のヘッド部同士が前記孔を境にするともに前記ヘッド部の輪郭線が前記孔から離間した箇所で対向し、且つ各々のボディ部が前記金属製帯板の前記幅方向端部を臨むようにして打ち抜くことを特徴とする無段変速機用エレメントの製造方法。
  2. 請求項1記載の製造方法において、前記孔をスリットとして形成することを特徴とする無段変速機用エレメントの製造方法。
  3. 請求項1又は2記載の製造方法において、前記金属製帯板の幅方向端部を圧潰する前に、該金属製帯板の不要部分を打ち抜いて除去することを特徴とする無段変速機用エレメントの製造方法。
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