JP2018181531A - 非水電解質二次電池の製造方法 - Google Patents

非水電解質二次電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】負極の充放電反応性を再現性良く高精度に調節することができ、かつ、生産性にも優れた非水電解質二次電池の製造方法を提供する。【解決手段】本発明により、正極と、炭素材料を含む負極14と、が絶縁された状態で対向配置された電極体と、非水電解質と、を用意する用意工程;上記電極体と上記非水電解質とを、X線透過性を有する電池ケース20の内部に収容して、電池組立体を構築する構築工程;電池ケース20の外部から、負極14の所定の部位に向かってX線を照射することにより、上記所定の部位における上記炭素材料の充放電反応性を低下させる照射工程;を包含する、非水電解質二次電池の製造方法が提供される。【選択図】図3

Description

本発明は、非水電解質二次電池の製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池では、性能向上の一環として、更なる耐久性の向上が検討されている。かかる耐久性の向上は、例えば電極内でより均質な充放電反応を生じさせることによって実現される。
これに関連して、例えば特許文献1には、正極と当該正極よりも幅広な負極とを有する非水電解質二次電池の製造方法が開示されている。特許文献1では、負極を作製する際に、幅方向の中央部分に比べて幅方向の両端部分で溶媒がゆっくり蒸発するように乾燥条件を調整する。これによって、負極の幅方向の中央部分におけるバインダの濃度を、幅方向の両端部分におけるバインダの濃度よりも大きくする。特許文献1によれば、かかる構成によって負極の幅方向における充放電反応性の差を小さくして、電池の耐久性を向上することができる。
特開2013−225440号公報 特開2016−139574号公報 特開2016−149243号公報
特許文献1では、乾燥条件の調整によって負極の幅方向における充放電反応性を調節している。そのため、再現性良く高精度に負極の充放電反応性を調節することが難しい。
また、本発明者の先願である特許文献2,3には、電極の製造時にX線を利用して充放電反応性を調節する技術が開示されている。しかし、かかる方法では工程の追加によって電極の製造に要する時間が長くなる。そのため、生産性の観点からは、より効率的な方法が求められている。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、負極の充放電反応性を再現性良く高精度に調節することができ、かつ、生産性にも優れた非水電解質二次電池の製造方法を提供することにある。
本発明により、非水電解質二次電池の製造方法が提供される。この製造方法は、次の工程:正極活物質を含む正極と、負極活物質としての炭素材料を含む負極と、が絶縁された状態で対向配置された電極体と、非水電解質と、を用意する用意工程;上記電極体と上記非水電解質とを、X線透過性を有する電池ケースの内部に収容して、電池組立体を構築する構築工程;および、上記電池ケースの外部から、上記負極の所定の部位に向かってX線を照射することにより、上記所定の部位における上記炭素材料の充放電反応性を低下させる照射工程;を包含する。
かかる製造方法によれば、X線照射部位にある炭素材料の充放電反応性を選択的に調節することができる。このときX線を利用することで、例えば特許文献1に記載される方法と比べて、負極の充放電反応性を再現性良く高精度に調節することができる。また、非水電解質二次電池の製造では、通常、電池組立体を構築した後に、コンディショニングやエージングと呼ばれる活性化処理が行われる。上記照射工程では電池ケースの外側からX線を照射すればよいため、電池組立体に対して上記照射工程と同時に活性化処理を行うことが可能となる。したがって、例えば特許文献2,3に記載される方法と比べて、非水電解質二次電池を効率的に製造することができ、生産性を向上することができる。
好適な一態様において、上記照射工程では、エネルギーが10keV以上15keV以下のX線を照射する。かかる製造方法では、X線照射のために新たな材料を使用する必要がない。そのため、簡便である。
好適な一態様において、上記用意工程では、上記負極および上記非水電解質のうちの少なくとも1つに、エネルギーが10keV以上15keV以下の特性X線を放出可能な材料を含有させ、かつ、上記照射工程では、上記材料のX線吸収端以上のエネルギーをもったX線を照射することにより、上記材料を励起させ、上記材料からエネルギーが10keV以上15keV以下の特性X線を放出させる。かかる製造方法によれば、負極の充放電反応性を、より高精度におよび/または安定的に調節することができる。
第1実施形態に係る捲回電極体を模式的に示す分解図である。 第1実施形態に係る電池組立体を模式的に示す斜視図である。 電池ケースの内壁面の近傍を模式的に示す部分拡大図である。
以下、ここに開示される製造方法の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここに開示される製造方法は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において数値範囲をA〜B(ここでA,Bは任意の数値)と記載している場合は、A以上B以下を意味するものである。
<第1実施形態>
第1実施形態の製造方法は、(ステップS1)正極と負極とを有する電極体と、非水電解質と、を用意する用意工程;(ステップS2)電極体と非水電解質とを電池ケースに収容して、電池組立体を構築する構築工程;(ステップS3)負極の所定の部位(X線照射部位)に向かってX線を照射する照射工程;を包含する。かかる製造方法は、次の事項:(ステップS1)で、負極に炭素材料を使用すること;(ステップS2)で、X線透過性の電池ケースを使用すること;(ステップS3)で、電池ケースの外部から所定のエネルギーのX線を照射すること;によって特徴づけられる。
特に限定することを意図したものではないが、ここでは扁平な捲回電極体を備えた非水電解質二次電池の製造方法を例にして、具体的に説明する。
図1は、捲回電極体10の模式図である。図2は、電池組立体1の模式図である。なお、図面中の符号X、Y、Zは、説明の便宜上の方向であり、それぞれ、電池組立体1の厚み方向、幅方向、鉛直方向を意味するものとする。
(ステップS1)用意工程
本工程では、まず、図1に示すような捲回電極体10を用意する。捲回電極体10は、正極12と負極14とがセパレータ16を介して対向配置された構成である。捲回電極体10は、例えば以下のような手順で作製することができる。すなわち、まず、帯状の正極12と、帯状の負極14と、帯状のセパレータ16と、を用意する。
正極12は、典型的には、正極集電体12nと、正極集電体12nの両面にそれぞれ固着された多孔質構造の正極活物質層12aと、を備えている。正極集電体12nとしては、例えば、アルミニウム、ニッケル等の金属箔が好適である。正極活物質層12aは、電荷担体を可逆的に吸蔵及び放出可能な正極活物質を含んでいる。正極活物質の好適例としては、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。正極活物質層12aは、正極活物質以外の任意成分(例えばバインダや導電材等)を含んでいてもよい。
負極14は、典型的には、負極集電体14nと、負極集電体14nの両面にそれぞれ固着された多孔質構造の負極活物質層14aと、を備えている。負極集電体14nとしては、通常、後述する電池ケース20の材質よりもX線透過性の低い材質、例えばK殻のX線吸収端のエネルギーが概ね5keV以上、例えば7keV以上の材質で構成されている。負極集電体14nは、例えば、周期表の第4周期以降の金属種で構成されている。具体的には、例えば、銅(K殻のX線吸収端のエネルギー:9keV)、ニッケル(K殻のX線吸収端のエネルギー:8keV)等の金属箔が好適である。このような態様は、捲回電極体10の最外周部分に位置する負極活物質層14aの充放電反応性を調節する場合に、特に好ましい。
負極活物質層14aは、電荷担体を可逆的に吸蔵及び放出可能な負極活物質を含んでいる。負極活物質は、少なくとも炭素材料を含んでいる。炭素材料の好適例としては、例えば、黒鉛(グラファイト)、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)、活性炭、炭素繊維等が挙げられる。負極活物質層14aは、負極活物質以外の任意成分(例えばバインダや増粘剤等)を含んでいてもよい。バインダとしては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム類や、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のハロゲン化ビニル樹脂が挙げられる。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース類が挙げられる。
セパレータ16は、正極12と負極14とを絶縁する。セパレータ16は、X線透過性を有する。セパレータ16としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂からなる多孔質な樹脂シートが好適である。セパレータ16は、樹脂シートの表面に、無機化合物粒子(無機フィラー)を含む多孔質な耐熱層を備えていてもよい。
捲回電極体10の作製では、次に、帯状の正極12と帯状の負極14とを、帯状のセパレータ16を介して重ね合わせ、幅方向Yと直交する長手方向に捲回する。例えばまず、楕円形状の巻き芯に、2枚のセパレータ16をある程度の長さ捲回する。次に、2枚のセパレータ16の間に負極14を挟み込んで、ある程度の長さ捲回する。次に、負極14よりも捲回方向の内側であって負極14と絶縁される位置に正極12を挟み込んで所望のターン数となるまでさらに捲回する。そして、最外周部分にセパレータ16をある程度の長さ捲回した後、巻き解れないように巻止めする。
これにより、扁平な形状の捲回電極体10を作製することができる。
捲回電極体10は、断面視において、一対の捲回平坦部と、一対の捲回平坦部の間に介在される一対の捲回R部と、を有する。捲回平坦部のなかで正極活物質層12aと負極活物質層14aとが対向される部分は、非水電解質二次電池の充放電に寄与する反応部として機能する。
捲回電極体10の捲回方向の最外周部分では、一方の面の負極活物質層14aが、負極集電体14nよりも捲回電極体10の外側に位置している。この負極集電体14nよりも外側の部分は、正極活物質層12aと対向せず、セパレータ16のみと対向している。捲回電極体10の負極活物質層14aは、捲回方向の巻き終わりの部分に、正極活物質層12aと対向していない余長部を有している。
捲回電極体10では、負極14の幅方向Yの長さが、正極12の幅方向Yの長さよりも長い。そのため、負極活物質層14aは、幅方向Yの両端部分に正極活物質層12aと対向していない非対向部を有している。
捲回電極体10の幅方向Yの左端部には、正極集電体12nが露出している。捲回電極体10の幅方向Yの右端部には、負極集電体14nが露出している。
本工程ではまた、図示しない非水電解質を用意する。非水電解質は、例えば、非水溶媒中に支持塩を含んだ非水電解液である。非水溶媒としては、例えば、カーボネート類、エステル類、エーテル類等の非プロトン性溶媒が挙げられる。支持塩としては、例えばLiPF、LiBF等のリチウム塩が挙げられる。非水電解質は、さらに過充電添加剤や皮膜形成剤等の従来公知の各種添加剤を含有してもよい。
(ステップS2)構築工程
本工程では、電池組立体1を構築する。具体的には、まず、電池ケース20を用意する。図2に示す電池ケース20は、少なくとも次のステップS3でX線を照射する部分について、X線透過性を有する。なお、ここでいう「X線透過性」とは、ステップS3で照射するエネルギーのX線(本実施形態では、10〜15keVのエネルギーのX線)を透過する性質をいう。電池ケース20は、その全体がX線透過性を有するように構成されていてもよいし、ステップS3でX線を照射する部分以外について、X線を遮蔽するように構成されていてもよい。
電池ケース20のX線透過性を有する部分は、X線透過性の高い材質、例えばK殻のX線吸収端のエネルギーが概ね4keV以下、好ましくは2keV以下の材質で構成されているとよい。そのような材質としては、例えば、アルミニウム(K殻のX線吸収端のエネルギー:1.5keV)、マグネシウム(K殻のX線吸収端のエネルギー:1.3keV)等の軽量な金属;ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド等の樹脂;が挙げられる。また、電池ケース20の厚みは、通常0.1〜5mm、例えば0.5〜2mm程度であるとよい。
電池ケース20は、扁平な捲回電極体10に対応する角型(直方体形状)の外形を有している。電池ケース20は、上面を構成する蓋体22と、底面24bおよび側面24n、24wを構成するケース本体24と、で構成されている。ケース本体24は、蓋体22に対向する底面24bと、底面24bから連続する側面として、一対の短側面24nおよび一対の長側面24wと、を有している。電池ケース20の蓋体22からは、外部接続用の正極端子12tと負極端子14tとが突出している。
本工程では、次に、ステップS1で用意した捲回電極体10をケース本体24に収容して、捲回電極体10と、蓋体22に設けられた外部接続用の正極端子12tおよび負極端子14tと、を電気的に接続する。
具体的には、まず、正極集電体12nの露出した部分に正極集電板12cを取り付ける。また、負極集電体14nの露出した部分に負極集電板14cを取り付ける。次に、正極集電板12cと正極端子12tとを、溶接等によって電気的に接続する。同様に、負極集電板14cと負極端子14tとを、溶接等によって電気的に接続する。これにより、外部接続用の正極端子12tと捲回電極体10の正極とが電気的に接続される。また、外部接続用の負極端子14tと捲回電極体10の負極とが電気的に接続される。
捲回電極体10の一対の捲回R部のうち一方は、電池ケース20の底面24bと対向するように配置される。捲回電極体10の一対の捲回平坦部(反応部)は、電池ケース20の一対の長側面24wと対向するように配置される。捲回電極体10の幅方向Yの両端部分は、電池ケース20の一対の短側面24nと対向するように配置される。捲回電極体10と電池ケース20の内壁面との間には、わずかに隙間が空いている。
本工程では、次に、ステップS1で用意した非水電解質を、電池ケース20の内部に収容する。非水電解液を使用する場合には、例えば、蓋体22とケース本体24とを溶接して電池ケース20を封止した後、蓋体22に設けられた注液口(図示せず)から非水電解液を注液する。注液された非水電解液は、多孔質構造を有する正極活物質層12aと負極活物質層14aとセパレータ16とに、それぞれ含浸される。
これにより、電池組立体を構築することができる。
(ステップS3)照射工程
本工程では、X線照射部位にX線を照射する。具体的には、まず、X線照射装置を用意する。X線照射装置は、10〜15keVのエネルギーを照射可能なものであればよい。X線照射装置は、連続X線を照射するものであってもよいし、パルス状のX線を照射可能するものであってもよい。
そして、電池組立体1の電池ケース20の外部から、負極14のX線照射部位に対してX線照射装置からX線を照射する。
本実施形態において、照射するX線のエネルギーは、10〜15keVである。特許文献3にも記載される通り、このエネルギーの範囲は、炭素(C)のK殻のX線吸収端のエネルギーと同等である。当該エネルギーのX線を照射することで、X線照射部位における炭素材料の充放電反応性を低下させる効果がある。このメカニズムは定かではないが、一因として、当該エネルギー範囲のX線を照射することで、炭素材料の表面で何らかの変化が生じることが考えられる。例えば、炭素材料の表面で、非水電解質に含まれる溶媒や支持塩等が分解されて、炭素材料の表面に高抵抗な皮膜が形成されることが考えられる。
照射時間を短縮する観点からは、照射するX線のエネルギーを11〜14keVとするとよい。X線照射部位に存在する炭素材料を完全に失活させたい場合には、照射するX線のエネルギーを12±1keVとするとよい。
X線の強度(輝度)やX線の照射時間は、照射するX線のエネルギー等にもよるため特に限定されない。X線の強度は、例えば1×10〜1×1013photons/sとし得る。X線の照射時間は、例えば50〜500min.とし得る。一般には、X線照射部位に存在する炭素材料の充放電反応性を大きく低下させたい場合ほど、X線の強度を強く、および/または、X線の照射時間を長くするとよい。
X線の照射は、連続X線を用いて連続的に行ってもよく、パルスX線を用いて断続的に行ってもよい。X線照射部位に存在する炭素材料を完全に失活させたい場合には、連続X線を利用するとよい。X線照射部位に存在する炭素材料の充放電反応性を緩やかに低下させたい場合にはパルスX線を利用するとよい。パルスX線を用いる場合、パルス幅は、例えば、10〜100fsとするとよい。これにより、パルスX線を照射した側の負極活物質層14aの表面から概ね5〜100nmの深さまでX線を到達させることができる。そのため、X線照射部位の負極活物質層14aの最表面について、炭素材料の充放電反応性を選択的に調節することができる。
X線照射部位は、負極活物質の充放電反応性を低下させたい、あるいは失わせたい(失活させたい)部位に設定すればよい。言い換えれば、X線照射部位は、捲回電極体10の構成や充放電反応性を低下させる目的等に応じて適宜に決定することができる。
X線照射の一例では、電池ケース20の一対の長側面24wの全体に対して、X線を照射する。このことにより、負極14の捲回方向の巻き終わりの部分にある余長部、すなわち負極活物質層14aのうち正極活物質層12aと対向していない部分について、充放電反応性を選択的に低下させる。
図3は、長側面24wの側からX線を照射したときの、電池ケース20の内壁面の近傍を模式的に示す部分拡大図である。図3に矢印で示すように、X線照射装置から電池ケース20に向かって照射されたX線(1次X線)は、X線透過性の電池ケース20を透過して、捲回電極体10の最外周部分へと到達する。捲回電極体10の最外周部分に到達したX線は、X線透過性のセパレータ16を透過して、負極集電体14nよりも外側(図3の左側)に位置する負極活物質層14aの余長部へと到達する。余長部に到達したX線は、負極活物質としての炭素材料の充放電反応性を選択的に低下させる。このことにより、負極活物質層14aの余長部で電荷担体の析出(例えばLi析出)を抑制することができ、非水電解質二次電池の耐久性を向上することができる。
負極集電体14nがX線透過性を有しない場合、X線照射装置から照射されたX線は、負極集電体14nで遮へいされる。そのため、捲回電極体10の負極集電体14nよりも内側(図3の右側)に位置する負極活物質層14aや正極活物質層12aには、X線が到達しない。したがって、捲回電極体10の負極集電体14nよりも内側では、充放電反応性が低下しない。このように、本実施形態では捲回電極体10の負極集電体14nよりも外側に位置する余長部の充放電反応性のみを好適に低下させることができる。
X線照射の他の一例では、電池ケース20の一対の短側面24nの全体に対して、X線を照射する。このことにより、負極14の幅方向Yの両端部分にある非対向部、すなわち負極活物質層14aのうち幅方向Yで正極活物質層12aと対向していない部分について、充放電反応性を選択的に低下させる。このことにより、充放電反応の片寄りに起因する性能劣化(例えば、自己放電量の増加や抵抗上昇等)を抑制することができ、非水電解質二次電池の耐久性を向上することができる。
すなわち、正極活物質層12aの幅方向Yの両端部分は、負極14の非対向部に近いため、幅方向Yの中央部分に比べて充電時の電荷担体の放出量が多くなり易い。言い換えれば、局所的に高電位になり易い。負極14の非対向部の充放電反応性を低下させることにより、正極活物質層12aが局所的に高電位となることを抑制することができる。その結果、電極体の幅方向Yで充放電反応を均質に生じさせることができる。
また、本工程では、従来の製造方法で電池組立体に対して行われているような処理、例えば、活性化処理(コンディショニングやエージング)を、X線の照射と同時に行うことができる。電池組立体に対して複数の処理を並行して行うことで、非水電解質二次電池を効率的に製造することができ、生産性を向上することができる。
以上のように、ここに開示される製造方法によれば、従来に比べて負極の充放電反応性を再現性良く高精度に調節することができる。また、非水電解質二次電池を効率的に製造することができ、生産性も向上することができる。
このようにして製造された非水電解質二次電池は、従来品に比べて耐久性(例えばサイクル特性)に優れる。例えば、自己放電量が低減され、充放電を繰り返した後にも高い電池容量を維持することができる。したがって、このような性質を活かして、上記非水電解質二次電池は、例えばプラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド自動車、電気自動車等のモーター用の動力源(駆動電源)として、好適に用いることができる。
<第2実施形態>
第2実施形態の製造方法は、上記した第1実施形態のステップS1〜S3と対応するステップS11〜S13、すなわち、(ステップS11)用意工程;(ステップS12)構築工程;(ステップS13)照射工程;を包含する。かかる製造方法は、次の事項:(ステップS11)で、負極活物質に炭素材料を使用し、且つ、負極および非水電解質のうちの少なくとも1つに、特性X線放出材料を含ませること;(ステップS13)において、電池ケースの外部から所定のエネルギーのX線を照射すること;によって特徴づけられる。以下で言及する事項以外については、上記した第1実施形態と同様のため、詳しい説明は割愛する。
ステップS11では、負極および非水電解質のうちの少なくとも1つに、特性X線放出材料を含ませる。特性X線放出材料は、X線吸収端以上のエネルギーをもったX線(1次X線)を照射することで、10〜15keVのエネルギーを有する特性X線(2次X線)を放出可能な材料である。特性X線放出材料から放出される特性X線のエネルギーは、元素組成によって決定される。言い換えれば、特性X線のエネルギーは、元素の種類に固有の値である。特性X線のエネルギーは、従来公知の文献や各種データブック等で把握することができる。
表1に、物質構造科学研究所の「XAFS実験ステーション利用の手引き」、2001年7月、インターネット<http://pfxafs.kek.jp/wp-content/uploads/2012/12/handbook1.pdf#search=%27PF+%E9%87%8E%E6%9D%91+%E6%89%8B%E5%BC%95%E3%81%8D%27>から抜粋した特性X線と吸収端のエネルギーを示す。
表1に示す通り、特性X線放出材料は、理論上、10〜15keVのエネルギーの特性X線を放出可能な元素、すなわち、次の元素:ガリウム(Ga)〜イットリウム(Y);レニウム(Re)〜ウラン(U);のうちのいずれか1つ以上を有する材料であればよい。
Figure 2018181531
負極14の負極活物質層14aに含有され得る特性X線放出材料の具体例としては、Ge、As、Pbを含有する負極活物質等が挙げられる。特性X線放出材料は、負極活物質層14aの全体に添加してもよいし、X線照射部位のみに添加してもよい。特性X線放出材料として添加的に含有される負極材料の割合は特に限定されないが、負極活物質全体を100質量%としたときに、概ね50質量%未満、典型的には10質量%以下、例えば5質量%以下とし得る。
非水電解質に含有される特性X線放出材料の具体例としては、支持塩としての六フッ化ヒ素酸リチウム(LiAsF)や、Ge、As、Br、Sr、Y、Pb、Biを含有する添加剤、例えば、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO等が挙げられる。特性X線放出材料としての支持塩は、上記したLiPFやLiBFにかえて、あるいはこれらと組み合わせて使用することができる。特性X線放出材料としての支持塩の濃度は特に限定されないが、概ね0.7〜2.0mol/L、例えば1.0〜1.3mol/Lとし得る。添加剤としての特性X線放出材料は、非水電解質全体を100質量%としたときに、概ね0.1〜10質量%、例えば1〜5質量%とし得る。
ステップS12で、電池ケース20に捲回電極体10と非水電解質とを収容すると、正極活物質層12aと負極活物質層14aとセパレータ16とに、それぞれ非水電解質が含浸される。つまり、ステップS11で非水電解質に特性X線放出材料を含有させる場合、その一部が、負極活物質層14aに含まれることとなる。
ステップS13では、特性X線放出材料のX線吸収端以上のエネルギーをもったX線を照射する。一般にX線照射装置は、照射するX線のエネルギーが高いほど、X線照射部が大型となる。そのため、照射するX線のエネルギーは特に限定されないが、例えば15〜20keVとするとよい。
X線照射装置から照射されたX線(1次X線)は、第1実施形態と同様に、電池ケース20とセパレータ16とを透過して、負極活物質層14aの余長部へと到達する。余長部に到達した一次X線は、特性X線放出材料のX線吸収端以上のエネルギーをもっている。そのため、余長部に存在する特性X線放出材料が一次X線によって励起されて、特性X線放出材料から特性X線(2次X線)が放出される。2次X線は、10〜15keVのエネルギーをもっている。特性X線放出材料から当該エネルギー範囲の2次X線が放出されることで、上記した第1実施形態と同様に、X線照射部位における炭素材料の充放電反応性を選択的に低下させる効果がある。
以上、本発明を詳細に説明したが、上記実施形態および実施例は例示にすぎず、ここで開示される発明には上述の具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
上記した実施形態では、負極14が、負極集電体14nと、負極集電体14nの両面にそれぞれ固着された負極活物質層14aと、を備えていたが、これには限定されない。負極は、例えば、カーボンシートであってもよいし、負極活物質層14aが自立性を有し、シート状に成形されたものであってもよい。この場合は、ステップS3の照射工程においては、パルスX線を用いることが好ましい。このことにより、充放電に寄与する反応部の充放電反応性が低下することを抑制して、負極活物質層の余長部についてのみ、充放電反応性を選択的に低下させることができる。
上記した実施形態では、ステップS1において捲回電極体10を用意したが、これには限定されない。電極体は、矩形状の正極と矩形状の負極とを、矩形状のセパレータを介して重ね合わせた積層電極体であってもよい。
上記した実施形態では、ステップS1において液体状の非水電解質(非水電解液)を用意したが、これには限定されない。非水電解質は、例えば、非水電解液にポリマーが添加されてゲル状となった、所謂、固体電解質であってもよい。その場合、セパレータ16にかえて、正極12と負極14との間に固体電解質を介在させて、正極12と負極14とを絶縁してもよい。
1 電池組立体
10 捲回電極体
12 正極
14 負極
20 電池ケース

Claims (3)

  1. 正極活物質を含む正極と、負極活物質としての炭素材料を含む負極と、が絶縁された状態で対向配置された電極体と、非水電解質と、を用意する用意工程;
    前記電極体と前記非水電解質とを、X線透過性を有する電池ケースの内部に収容して、電池組立体を構築する構築工程;および、
    前記電池ケースの外部から、前記負極の所定の部位に向かってX線を照射することにより、前記所定の部位における前記炭素材料の充放電反応性を低下させる照射工程;
    を包含する、非水電解質二次電池の製造方法。
  2. 前記照射工程では、エネルギーが10keV以上15keV以下のX線を照射する、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記用意工程では、前記負極および前記非水電解質のうちの少なくとも1つに、エネルギーが10keV以上15keV以下の特性X線を放出可能な材料を含有させ、かつ、
    前記照射工程では、前記材料のX線吸収端以上のエネルギーをもったX線を照射することにより、前記材料を励起させ、前記材料からエネルギーが10keV以上15keV以下の特性X線を放出させる、請求項1に記載の製造方法。
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