JP2018174725A - 香味油の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、特許文献2に記載の技術においては、その実施にあたっては超臨界抽出装置のような複雑かつ大掛かりな設備が必要であり、容易且つ効率的に生産することが難しいという課題があった。
さらにまた、特許文献3に記載の技術においては、魚節を水性液に接触させた後に、焙乾あるいは乾燥及び燻付けする工程が必要、すなわち、乾燥のみならず煙により燻すことも必要であり、コスト高となってしまうことが課題であった。
それにもかかわらず、本発明においては、魚節の風味を有する香味油の製造においては、意外なことに、魚節そのものをオイル抽出に使用するよりも、出汁を抽出した残渣を乾燥させてオイル抽出に供したほうが、満足のいく魚節の風味を有する香味油が得られることが見出された。
AVは油脂中の遊離脂肪酸量を示す値であり、脂質の加水分解が進行するとAVは上昇する。魚節(かつお節)の削りぶしのAVは35〜52程度であることが知られている(特開平8−332021号公報)。
しかしながら、魚節出汁を抽出した後の残渣の乾燥物のAVについては、ほとんど知見が無かった。
ところが出汁の抽出後の残渣の乾燥物のAVは、もとの魚節のAVよりも低くなり、このことはほとんど知られていないことであった。
しかしながら、予想外なことに、温度の低い熱風下で乾燥させて得られた乾燥物ほどAVは高くなったのである。
即ち、本発明は、
下記1)、2)及び3)の工程:
1)魚節から、出汁を70℃よりも高い温度の水で5分間を超え50分間以下の時間で抽出した後に、固液分離して魚節出汁抽出残渣を得る工程;
2)前記魚節出汁抽出残渣を180℃以上320℃以下の温度の熱風に曝露して、魚節出汁抽出残渣の水分が10質量%以下になるまで乾燥させて、魚節出汁抽出残渣乾燥物を得る工程;及び
3)さらに、前記魚節出汁抽出残渣乾燥物を、100℃以上140℃未満の温度で、且つ15分間以上45分間以下の時間でオイル抽出する工程:
から成ることを特徴とする、魚節出汁抽出残渣由来の香味油の製造方法に関する。
本発明の製造方法において好ましい態様は、前記3)のオイル抽出する工程は、魚節出汁抽出残渣乾燥物と魚節粉末とを混合して行うことを特徴とする。
また本発明の製造方法において好ましい態様は、前記混合は、前記魚節出汁抽出残渣乾燥物100質量部に対して、魚節粉末を0質量部以上100質量部以下の割合で行うことを特徴とする。
さらにまた本発明の製造方法において好ましい態様は、前記魚節出汁抽出残渣乾燥物は、10以上40以下の酸価を有することを特徴とする。
また本発明の好ましい態様は、前記魚節粉末は、魚節荒節の表面を0.1質量%以上20質量%以下の範囲で略均等に削り出した削り粉であることを特徴とする。
さらにまた本発明の好ましい態様において、前記魚節粉末の原料魚は、鰹、宗田鰹、鯖、鰯、鯵及び鮪から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする。
また本発明の別の態様は、魚節出汁抽出残渣乾燥物が10以上40以下の酸価を有することを特徴とする。
抽出温度が70℃以下であると、最終的に得られる香味油が、十分な魚節の風味を有していないおそれがある。
出汁の抽出に用いる粉砕物サイズは特に制限ないが、後の乾燥工程での乾燥効率を上げるうえで、粉砕物は10mmメッシュパス物であることが好ましい。
また、魚節の出汁抽出を行う方法は特に限定されず、バッチ式、連続式等の公知の抽出方法を採用できる。
熱風の温度が180℃よりも低いと、得られた香味油に生臭い香りが残留してしまうおそれがあり、他方、320℃よりも高い温度であると、香味油に焦げ臭が残留するおそれがある。
また、この熱風による曝露は、固液分離後7時間以内に魚節出汁抽出残渣の水分が10%以下になるように行うのが好ましい。固液分離後7時間より長く経過した時点で水分が10%より高いと、魚節出汁抽出残渣の腐敗が懸念されるためである。
また、熱風による曝露の方法は、特に限定されず、例えば、撹拌または循環状態での熱風乾燥、コンベア上で移動させながら乾燥させるコンベア乾燥等の公知の熱風乾燥方法でよい。
オイル抽出は、100℃以上140℃未満の温度で、好ましくは100℃以上120℃以下の温度で、且つ、15分以上45分以下の時間で行うのが好ましい。オイル抽出時の温度が120℃よりも高いと、得られる香味油の加熱臭が余剰に付加されてしまう懸念がある。
用いられる抽出用のオイルは特に制限なく用いることができるが、例えば、品質上コーン油や菜種油、大豆油が好ましい。
また、オイル抽出の方法は特に限定されず、バッチ式、連続式等の公知の抽出方法を採用できる。
なお、抽出に用いることができる溶媒としては、植物油の他、食品の抽出に用いることができる有機溶媒であれば、より優れた抽出効果を発揮する可能性も有る。また、抽出方法として、超臨界抽出なども利用できる可能性もある。
魚節の配合割合としては、魚節出汁抽出残渣乾燥物100質量部当り、0質量部以上100質量部以下である。この範囲内において、得られる香味油に対して魚節の風味をさらに豊かに付与することができる。
魚節粉末としては、鰹荒節の表面を0.1〜20質量%の範囲で削り出した削り粉であることが望ましい。この削り粉は主に鰹枯節を製造する際に鰹荒節の表面を研磨する工程で生成する粉末を指し、G粉や黒粉と言われるものである。
対して、鰹荒節の粉砕物はオイル抽出用原料として魚節出汁抽出残渣乾燥品に混合することはあまり好ましくない。
オイル抽出に利用可能な「魚節出汁抽出残渣乾燥物」の調整条件を把握するために、下記実験を行った。
<実験内容>
香味油を表1の条件で試作し、官能評価した。官能評価は、官能評価員10名によって、標準品と比較し「魚節の風味」について4段階評価を行った。官能評価は、評価員全員の全体的な評価によって、標準品を「△」とした場合に、標準品に比べて、大変満足いくものを「◎」、満足いくものを「○」、同等であるものを「△」、満足いかないものを「×」で示した。なお、本発明においては、評価が「○」以上であれば、標準品に対して優位性があると判断できる。
なお、標準品は、鰹荒節(粉砕物)を直接オイル抽出して得た香味油とした。
オイルとしてはコーンサラダ油(Jオイルミルズ社製;AJINOMOTO コーンサラダ油)を用いた。
結果を下記表2に示す。
香味油(標準品)及び香味油1−1は、魚節の風味がやや乏しいものであった。これに対して、香味油1−2及び1−3は魚節の風味が強く感じられ満足いくものであった。従って、魚節出汁抽出残渣としては、出汁抽出温度を70℃より高い温度範囲において、5分間を超え50分間以下の時間、抽出したときに得られる魚節出汁抽出残渣が使用可能であることが明らかとなった。
オイル抽出に利用可能な「魚節出汁抽出残渣乾燥物」の条件を把握するために以下の実験を行った。
<実験内容>
香味油を下記表3の条件で試作し、実験1と同様に官能評価した。オイルとしてはコーンサラダ油(Jオイルミルズ社製;AJINOMOTO コーンサラダ油)を用いた。
結果を下記表4に示す。
香味油(標準品)、2−1はやや生臭く魚節の風味がやや乏しいものであった。これに対して、香味油2−2、2−3は魚節の風味が強く感じられ満足いくものであった。香味油2−4は若干の焦げ風味があると評された。以上から、魚節出汁抽出残渣の熱風曝露による乾燥温度は180℃以上320℃以下の範囲であると判断された。
また、このときの魚節出汁抽出残渣乾燥物の好ましい酸価は10以上40以下であることも明らかとなった。
香味油を得るための「オイル抽出条件」を把握するため、下記実験を行った。
<実験内容>
香味油を表5の条件で試作し、実験1と同様に官能評価した。オイルとしてはコーンサラダ油(Jオイルミルズ社製;AJINOMOTO コーンサラダ油)を用いた。
結果を下記表6に示す。
香味油(標準品)は、魚節の風味がやや乏しいものであった。これに対して、香味油3−1、3−2は魚節の風味が強く感じられ満足いくものであった。香味油3−3はやや油の加熱臭を感じた。従って、オイル抽出条件としては、100℃以上140℃未満の範囲の温度において、15分間以上45分間以内の範囲が好ましいことが明らかとなった。
魚節出汁抽出残渣乾燥品と魚節粉末を混合し、それを原料としてオイル抽出し、香味油を得る場合の、魚節粉末の割合条件を把握するため、下記実験を行った。
<実験内容>
香味油を表7の条件で試作し、実験1と同様に官能評価した。オイルとしてはコーンサラダ油(Jオイルミルズ社製;AJINOMOTO コーンサラダ油)を用いた。
なお、上記混合に使用可能な魚節粉末としては、鰹荒節の表面を0.1質量%以上20質量%以下の範囲で削り出した削り粉が使用可能であり、単に鰹荒節を粉砕して得られた魚節粉末を混合してもオイル風味は好ましいものとならないと懸念された。
魚節出汁抽出残渣乾燥品が、鰹節以外である時の香味油の品質を把握するため、以下の実験を行った。
<実験内容>
香味油を表9の条件で試作し、実験1と同様に官能評価した。オイルとしてはコーンサラダ油(Jオイルミルズ社製;AJINOMOTO コーンサラダ油)を用いた。
Claims (7)
- 下記1)、2)及び3)の工程:
1)魚節から、出汁を70℃よりも高い温度の水で5分間を超え50分間以下の時間で抽出した後に、固液分離して魚節出汁抽出残渣を得る工程;
2)前記魚節出汁抽出残渣を180℃以上320℃以下の温度の熱風に曝露して、魚節出汁抽出残渣の水分が10質量%以下になるまで乾燥させて、魚節出汁抽出残渣乾燥物を得る工程;及び
3)さらに、前記魚節出汁抽出残渣乾燥物を、100℃以上140℃未満の温度で、且つ15分間以上45分間以下の時間でオイル抽出する工程:
から成ることを特徴とする、魚節出汁抽出残渣由来の香味油の製造方法。 - 前記3)のオイル抽出する工程は、魚節出汁抽出残渣乾燥物と魚節粉末とを混合して行うことを特徴とする、請求項1に記載の魚節出汁抽出残渣由来の香味油の製造方法。
- 前記混合は、前記魚節出汁抽出残渣乾燥物100質量部に対して、魚節粉末を0質量部以上100質量部以下の割合で行うことを特徴とする、請求項2に記載の魚節出汁抽出残渣由来の香味油の製造方法。
- 前記魚節出汁抽出残渣乾燥物は、10以上40以下の酸価を有することを特徴とする、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の魚節出汁抽出残渣由来の香味油の製造方法。
- 前記魚節粉末は、魚節荒節の表面を0.1質量%以上20質量%以下の範囲で略均等に削り出した削り粉であることを特徴とする、請求項2〜4のうちいずれか1項に記載の魚節出汁抽出残渣由来の香味油の製造方法。
- 前記魚節粉末の原料魚は、鰹、宗田鰹、鯖、鰯、鯵及び鮪から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする、請求項2〜5のうちいずれか1項に記載の魚節出汁抽出残渣由来の香味油の製造方法。
- 10以上40以下の酸価を有することを特徴とする、魚節出汁抽出残渣乾燥物。
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