JP2018118413A - 粉末材料、およびこれを用いた立体造形物の製造方法、ならびに立体造形装置 - Google Patents

粉末材料、およびこれを用いた立体造形物の製造方法、ならびに立体造形装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2018118413A
JP2018118413A JP2017010281A JP2017010281A JP2018118413A JP 2018118413 A JP2018118413 A JP 2018118413A JP 2017010281 A JP2017010281 A JP 2017010281A JP 2017010281 A JP2017010281 A JP 2017010281A JP 2018118413 A JP2018118413 A JP 2018118413A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
powder material
resin
thin layer
coated particles
core
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2017010281A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6798326B2 (ja
Inventor
和也 磯部
Kazuya Isobe
和也 磯部
雅晴 白石
Masaharu Shiraishi
雅晴 白石
一史 山▲崎▼
Kazufumi Yamazaki
一史 山▲崎▼
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Konica Minolta Inc
Original Assignee
Konica Minolta Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Konica Minolta Inc filed Critical Konica Minolta Inc
Priority to JP2017010281A priority Critical patent/JP6798326B2/ja
Publication of JP2018118413A publication Critical patent/JP2018118413A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6798326B2 publication Critical patent/JP6798326B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Abstract

【課題】造形物の反りの発生防止のための予備加熱を十分に行うことができ、さらに再利用性が高い粉末材料や立体造形方法、ならびに立体造形装置を提供すること。【解決手段】被覆粒子を含む粉末材料の予備加熱、および前記粉末材料の薄層への選択的なレーザ光照射を繰返し、前記被覆粒子の少なくとも一部どうしが溶融結合した造形物層を複数層積層して立体造形物を製造する方法に使用される粉末材料であって、前記被覆粒子は、コア樹脂と、前記コア樹脂を被覆するシェル樹脂とを含み、前記コア樹脂と前記シェル樹脂との間に金属酸化物および金属窒化物の少なくとも一方が局在する。【選択図】なし

Description

本発明は、粉末材料、およびこれを用いた立体造形物の製造方法、ならびに立体造形装置に関する。
近年、複雑な形状の立体造形物を比較的容易に製造できる様々な方法が開発されており、このような手法を利用したラピッドプロトタイピングやラピッドマニュファクチュアリングが注目されている。立体造形物の作製方法の一つとして、粉末床溶融結合法が知られている。粉末床溶融結合法では、樹脂材料または金属材料からなる粒子を含む粉末材料を平らに敷き詰めて薄層を形成する。そして、当該薄層の所望の位置にレーザ光を照射して、隣り合う粒子を選択的に焼結または溶融結合(以下、単に「溶融結合」とも称する)させる。つまり、立体造形物を厚さ方向に微分割した層(以下、単に「造形物層」とも称する)を形成する。こうして形成された造形物層上に、さらに粉末材料を敷き詰め、レーザ光照射を繰り返すことで、所望の形状の立体造形物を製造する。
粉末床溶融結合法は、造形精度が高く、積層された造形物層間の接着強度が高い。したがって、当該方法によれば、高い強度を有する立体造形物が得られやすいとの利点がある。ただし、現状、粉末床溶融結合法に用いられる樹脂種は、ポリスチレンやポリアミド11、ポリアミド12等に留まっており、より多用な樹脂を用いて、立体造形物を形成することが求められている。
ここで、粉末床溶融結合法では、造形物の反りを低減すること等を目的として、レーザ光照射前に、粉末材料からなる薄層を予備加熱することがある。予備加熱を行うことで、不均一な冷却による収縮ひずみの発生を抑制でき、反りの少ない造形物作製が可能となる。また、予備加熱を行うことで、レーザ光量を少なくできるとの利点もある。当該予備加熱温度をより高い温度とすることが望まれている。一方で、従来の熱可塑性樹脂の粒子からなる粉末材料は、予備加熱を高めると、凝集してしまうことがある。このような凝集が生じると、レーザ光照射されていない粒子、すなわち造形物の作製に利用されなかった粒子を廃棄せざるを得ない。そこで、予備加熱温度を高めること、およびレーザ光照射されていない粉末材料の再利用性を高めること、の両立が強く求められている。
ここで、粉末床溶融結合法の分野において、粉末粒子をコアシェル粒子とし、機能を向上させた種々の被覆粒子が開発されている。例えば特許文献1には、コア粒子、樹脂を含む第1被膜、および界面活性剤を含む第2被膜を有する粒子が開示されている。当該技術では、粒子の凝集を抑制し、造形精度を改良することを目的として、第2被膜に界面活性剤を添加している。また、特許文献2には、シェルにコア粒子より低い温度で焼結可能、もしくはガラス形成可能な細粒材料を含めることが開示されている。当該技術では、粒子間の溶融結合力を増強することを目的として、細粒材料をシェルに添加している。一方、特許文献3には、フィラーを含むコア粒子と、結着樹脂を含むシェルとを有する粒子が開示されている。当該技術では、複雑な立体形状の積層構造物を高強度で寸法精度良く製造することを目的として、コア粒子にフィラーを含めている。
特表2005−533877号公報 特表2006−521264号公報 特開2016−40121号公報
前述のように、粉末床溶融結合方式に用いられる粉末材料には、造形物の反り防止のために予備加熱が必要であると共に、製品歩留まり向上のためには予備加熱時に粒子が凝集しないことが求められている。
しかしながら、上述の特許文献1に記載の被覆粒子では、コア粒子と第2被膜との間に配置される第1被膜に、低い軟化点の材料が含まれている。そのため、予備加熱を行う造形方式では、たとえ第2被膜に界面活性剤層が含まれていたとしても粒子凝集が生じやすい、との課題があった。一方、特許文献2に記載のように、粉末床溶融結合方式用の被覆粒子のシェルに細粒材料を分散させただけでは、予備加熱時の被覆粒子の凝集を十分に抑制することは難しかった。また、特許文献3に記載の粉末床溶融結合方式用の被覆粒子は、体積収縮の少ないフィラーの焼結を目的としたものであり、予備加熱を行わずに焼結される。つまり、当該被覆粒子は、予備加熱を考慮して構成されたものではなく、当該被覆粒子によっても、予備加熱時における被覆粒子の凝集を抑制することは困難であった。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものである。すなわち本発明は、造形物の反りの発生防止のための予備加熱を十分に行うことができ、さらに再利用性が高い粉末材料やこれを用いた立体造形方法、当該立体造形方法を行うための立体造形装置を提供することを目的とする。
本発明の第1は、以下の粉末材料にある。
[1]被覆粒子を含む粉末材料の予備加熱、および前記粉末材料の薄層への選択的なレーザ光照射を繰返し、前記被覆粒子の少なくとも一部どうしが溶融結合した造形物層を複数層積層して立体造形物を製造する方法に使用される粉末材料であって、前記被覆粒子は、コア樹脂と、前記コア樹脂を被覆するシェル樹脂とを含み、前記コア樹脂と前記シェル樹脂との間に金属酸化物および金属窒化物の少なくとも一方が局在する、粉末材料。
[2]前記金属酸化物または金属窒化物が粒子状である、[1]に記載の粉末材料。
[3]前記粒子状の前記金属酸化物または前記金属窒化物の平均粒子径が5nm〜100nmであり、前記コア樹脂100質量部に対する、前記金属酸化物および前記金属窒化物の合計量が0.05質量部〜1.0質量部である、[2]に記載の粉末材料。
[4]前記金属酸化物が酸化チタンである、[1]〜[3]のいずれかに記載の粉末材料。
[5]前記シェル樹脂の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TS(65)は、前記コア樹脂材料の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TC(65)より高い、[1]〜[4]のいずれかに記載の粉末材料。
[6]前記シェル樹脂の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TS(65)と、前記コア樹脂の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TC(65)との差が、5℃以上70℃以下である、[5]に記載の粉末材料。
本発明の第2は、以下の立体造形物の製造方法にある。
[7]前記[1]〜[6]のいずれかに記載の粉末材料からなる薄層を形成する薄層形成工程と、前記粉末材料を予備加熱する予備加熱工程と、予備加熱された前記粉末材料からなる前記薄層にレーザ光を選択的に照射して、前記被覆粒子の少なくとも一部どうしが溶融結合した造形物層を形成するレーザ光照射工程と、を含み、前記薄層形成工程、前記予備加熱工程、および前記レーザ光照射工程を複数回繰り返し、前記造形物層を積層することで立体造形物を形成する、立体造形物の製造方法。
本発明の第3は、以下の立体造形装置にある。
[8]造形ステージと、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の粉末材料の薄層を前記造形ステージ上に形成する薄層形成部と、前記粉末材料を予備加熱する予備加熱部と、予備加熱された前記粉末材料からなる前記薄層にレーザを照射して、前記被覆粒子の少なくとも一部どうしが溶融結合してなる造形物層を形成するレーザ照射部と、前記造形ステージを、その鉛直方向の位置を可変に支持するステージ支持部と、前記薄層形成部、前記予備加熱部、前記レーザ照射部および前記ステージ支持部を制御して、前記造形物層を繰り返し形成させて積層させる制御部と、を備える、立体造形装置。
本発明によれば、造形物の反りの発生防止のための予備加熱を十分に行うことができ、さらに再利用性が高い粉末材料、および当該粉末材料を用いた立体造形物の製造方法、ならびに当該製造方法を行うための立体造形装置を提供できる。
図1Aは本発明の一実施形態における被覆粒子の模式的な断面図である。図1Bは本発明の別の実施形態における被覆粒子の模式的な断面図である。 図2は本発明の一実施形態における立体造形装置の構成を概略的に示す側面図である。 図3は本発明の一実施形態における立体造形装置の制御系の主要部を示す図である。
前述の課題を解決すべく、本発明者らは粉末床溶融結合法用の粉末材料について鋭意検討および実験を行った。本発明者らは、コア樹脂と、これを被覆するシェル樹脂とを含み、これらの間に金属酸化物および/または金属窒化物をさらに含む被覆粒子を粉末床溶融結合法用の粉末材料に採用することで、上述の課題が解決できることを見出した。本発明の粉末材料が含む被覆粒子によれば、コア樹脂とシェル樹脂とを、金属酸化物および/または金属窒化物によって物理的に相分離することができる。したがって、予備加熱によってコア樹脂を溶融または軟化させたとしても、シェル樹脂がその影響を受け難く、被覆粒子の凝集が抑制される。その結果、造形物作製時にレーザ光が照射されず、造形物の形成に利用されなかった被覆粒子を、他の造形物作製に利用することが可能となる。
以下、本発明の一実施形態に係る粉末材料について説明し、その後、当該粉末材料を用いた立体造形物の製造方法について説明する。
1.粉末材料
本実施形態の粉末材料は、粉末床溶融結合法による立体造形物の製造に用いられる。より具体的には、被覆粒子を含む粉末材料の予備加熱、および前記薄層への選択的なレーザ光照射を繰返し、前記被覆粒子の少なくとも一部どうしが溶融結合した造形物層を複数層積層して立体造形物を製造する方法に使用される。
粉末材料は、被覆粒子を少なくとも含んでいればよく、被覆粒子のみからなるものであってもよい。一方で、粉末材料は、レーザ光照射による溶融結合を妨げない範囲において、レーザ吸収剤およびフローエージェントを含む被覆粒子以外の材料をさらに含んでもよい。
1−1.被覆粒子
被覆粒子は、コア樹脂、およびこれをシェル樹脂が被覆する構造(以下、当該構造を「コアシェル構造」とも称する)を有する。また、コア樹脂およびシェル樹脂の間には、金属酸化物および/または金属窒化物が局在している。本明細書において、コアシェル構造とは、コア樹脂から基本的に構成されるコア粒子の表面のうち、シェル樹脂によって被覆されている部分の面積の割合が90%以上であることを意味する。なお、コア樹脂およびシェル樹脂の間には、金属酸化物および/または金属窒化物が局在しているが、コアシェル構造の確認の際には、金属酸化物および/または金属窒化物は、コア粒子の一部として取り扱う。実用上は、多数の被覆粒子の断面を透過電子顕微鏡(TEM)で撮像し、任意に選択した10個の被覆粒子について、コア粒子の表面積に対する、シェル樹脂の被覆面積の割合を算出する。そして、それらの平均値が90%以上であれば、それらの被覆粒子がコアシェル構造を有するものとみなす。
ここで、図1Aの模式的な断面図に示すように、コアシェル構造を有する被覆粒子100は、シート状のシェル樹脂102がコア粒子101を被覆していてもよい。また、図1Bの模式的な断面図に示すように、粒子状のシェル樹脂102がコア粒子101を被覆した被覆粒子100であってよい。なお、図1Aおよび図1Bでは、便宜的に、金属酸化物および/金属窒化物を示していないが、実際の被覆粒子では、コア粒子100とシェル樹脂102との間に金属酸化物および/金属窒化物が局在している。
ここで、本明細書において、コア樹脂およびシェル樹脂の間に金属酸化物および金属窒化物の少なくとも一方が局在している、とは、コア樹脂およびシェル樹脂の間に、金属酸化物および/または金属窒化物がTEMにて観察される領域があることをいう。なお、金属酸化物および/または金属窒化物の一部が、コア樹脂からなるコア粒子、もしくはこれを覆うシェル樹脂中に含まれることもあるが、TEMで被覆粒子の断面を確認した際に、コア粒子およびシェル樹脂の間に、実質的に金属酸化物および/または金属窒化物からなる領域が存在すれば、金属酸化物および/または金属窒化物が当該領域に局在している、として取り扱う。
ここで、コア樹脂とシェル樹脂との間に含まれる金属酸化物および/または金属窒化物は、粒子状であってもよく、膜状であってもよい。乾式混合にて、容易に被覆粒子を製造可能であるとの観点から、金属酸化物および/または金属窒化物は粒子状であることが好ましい。
なお、金属酸化物および/または金属窒化物は、コア樹脂の一部のみを被覆するように含まれていてもよいが、コア樹脂の略全面を略均一に被覆するように含まれていることが好ましい。金属酸化物および/または金属窒化物がコア樹脂の略全面を被覆していると、前述のようにコア樹脂とシェル樹脂とを物理的に分離することができる。そして、予備加熱によって、コア樹脂を溶融させても、当該コア樹脂へシェル樹脂が溶解すること等を防ぐことができ、予備加熱時に被覆粒子が凝集することを抑制することができる。
ここで、金属酸化物および/または金属窒化物が粒子である場合、その平均粒子径は1nm〜350nmであることが好ましく、3nm〜200nmであることがより好ましく、5nm〜100nmであることがさらに好ましい。平均粒子径が1nm未満である場合には、金属酸化物および/または金属窒化物によるコア粒子の表面被覆率が高くなるものの、コア樹脂とシェル樹脂との距離が近く、上述の凝集抑制効果が得られ難い。一方、平均粒子径が350nm超であると、金属酸化物および/または金属窒化物が、コア樹脂を被覆し難くなり、この場合も上述の凝集抑制効果が得られ難くなる。上記平均粒子径は、動的光散乱法により測定した体積平均粒子径とする。体積平均粒径は、例えば、湿式分散機を備えたレーザ回折式粒子径分布測定装置マイクロトラック・ベル社製、マイクロトラックMT3300 IIにより測定することができる。被覆粒子中の金属酸化物および/または金属窒化物の平均粒子径を測定する場合、コア樹脂およびシェル樹脂を溶剤等に溶解させ、金属酸化物および/または金属窒化物を取り出すことで、測定が可能である。
また、被覆粒子において、金属酸化物および/または金属窒化物の含有量は、コア樹脂100質量部に対して0.01質量部〜5.0質量部であることが好ましく、0.03質量部〜3.0質量部であることがより好ましく、0.05質量部〜1.0質量部であることがより好ましい。金属酸化物および/または金属窒化物の量が0.01質量部未満であると、金属酸化物および/または金属窒化物によるコア樹脂の被覆率が低くなり、凝集抑制効果が得られ難くなる。一方、金属酸化物および/または金属窒化物の量が上記範囲より多い場合には、凝集抑制効果は高いものの、金属酸化物および/または金属窒化物が、レーザ照射による粒子どうしの融着を阻害することがあり、造形物の強度が低下することがある。金属酸化物および/または金属窒化物の含有量は、熱重量分析により測定することができる。
金属酸化物および/または金属窒化物は、金属の酸化物もしくは金属の窒化物であれば、その種類は特に制限されない。金属酸化物の例には、酸化鉄、酸化銅、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム等が含まれる。また、金属窒化物の例には、窒化ホウ素等が含まれる。なお、本明細書において、金属酸化物を構成する金属には、ケイ素やホウ素等の半金属も含むものとする。また、金属は、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、ホウ素等の金属単体に限られず、当該金属単体を含む合金(例えば、チタン合金、ジルコニウム合金、コバルトクロム合金等)、ステンレス鋼等であってもよい。ここで、上記金属酸化物および/または金属窒化物が凝集しやすい材料であると、金属酸化物および/または金属窒化物が、コア樹脂とシェル樹脂との間で偏在してしまうことがある。したがって、分散性が良好であり、凝集が生じ難い、との観点から上記の中でも酸化チタンが特に好ましい。
ここで、本実施形態の被覆粒子は、後述する立体造形物の製造方法における予備加熱温度において、コア樹脂の貯蔵弾性率G’cが、当該温度におけるシェル樹脂の貯蔵弾性率G’sより低くなることが好ましい。コア樹脂およびシェル樹脂の貯蔵弾性率(G’cおよびG’s)がこのような関係にあると、予備加熱によって、コア樹脂のみを軟化させることが可能となる。予備加熱温度において、コア樹脂およびシェル樹脂の貯蔵弾性率(G’cおよびG’s)が上記関係を満たすかは、シェル樹脂の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TS(65)と、コア樹脂の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TC(65)とから、ある程度推測することができる。本実施形態では、TS(65)がTC(65)より高いものとする。シェル樹脂の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TS(65)が、前記コア樹脂の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TC(65)より高い被覆粒子を採用することで、造形歪を抑制しつつ、予備加熱時における粒子凝集をさらに抑制することが可能となる。また、このような被覆粒子を用いることで、レーザ照射によって、効率よく被覆粒子どうしを溶融結合できる。
ここで、予備加熱温度は、被覆粒子の種類等に合わせて適宜設定され、一般的な粉末床溶融結合法と同様に設定することができる。予備加熱温度は、50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上300℃以下であることがより好ましく、100℃以上250℃以下であることがさらに好ましく、140℃以上250℃以下であることがさらに好ましい。140℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。
ここで、被覆粒子は、後述する立体造形物の製造方法においてレーザ光が照射されると、シェル樹脂が軟化したり、溶融したり、消失すること等によって、被覆粒子の少なくとも一部(少なくともコア樹脂)どうしが溶融結合する。またこのとき、金属酸化物および/または金属硫化物は、被覆粒子の少なくとも一部どうしが溶融結合した造形物内に分散される。
そこで、レーザ光照射によって、シェル樹脂を軟化、溶融、もしくは消失しやすくし、より短時間で立体造形物を製造する観点からは、シェル樹脂が軟化、溶融、もしくは消失する温度と、コア樹脂が軟化もしくは溶融する温度とが、近い値であることが好ましい。さらに、レーザ光照射時、レーザ光エネルギーによって、コア樹脂の比容量が大きくなり、体積が変化するが、立体造形物の造形精度を高める観点から、当該体積変化は少ないことが好ましい。したがって、コア樹脂の体積変化が少ないうちに、被覆粒子の少なくとも一部(コア樹脂)どうしを溶融結合させるためにも、上記温度差は小さいことが好ましい。一方で、予備加熱時における被覆粒子の変形の抑制、すなわちシェル樹脂の軟化を抑制する観点からは、上記温度差は小さすぎないことが好ましい。
そこで、上述のTS(65)とTC(65)との差が、5℃以上70℃以下であることが好ましく、10℃以上70℃以下であることがより好ましく、10℃以上60℃以下であることがさらに好ましく、30℃以上60℃以下であることがさらに好ましい。
また、上記コア樹脂の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TC(65)は、粉末床溶融結合法における一般的な予備加熱温度の範囲に含まれることが好ましい。そこで、TC(65)は、50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上300℃以下であることがより好ましく、100℃以上250℃以下であることがさらに好ましく、140℃以上250℃以下であることがさらに好ましく、140℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。
また、上記シェル樹脂の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TS(65)は、コア樹脂の選択の自由度を確保しつつ、レーザ光の照射によって溶融しやすくするような温度範囲にあることが好ましい。そこで、TS(65)は、100℃以上350℃以下であることが好ましく、150℃以上330℃以下であることがより好ましく、250℃以上330℃以下であることがさらに好ましく、250℃以上300℃以下であることがさらに好ましい。
また、レーザ光照射後の造形物の変形をより生じにくくする観点からは、コア樹脂は、レーザ光照射後の冷却時により短い時間で固まることが好ましい。上記観点からは、コア樹脂が軟化する温度(貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TC(65))と、コア樹脂が変形しない程度に硬くなる温度(貯蔵弾性率G’が107.0Paになる温度(TC(70))との温度差は小さいことが好ましい。具体的には、|TC(70)−TC(65)|は10℃以上100℃以下であることが好ましく、10℃以上80℃以下であることがより好ましく、15℃以上80℃以下であることがさらに好ましく、20℃以上80℃以下であることがさらに好ましく、20℃以上50℃以下であることがさらに好ましい。
ここで、上記各貯蔵弾性率は、公知の方法で測定した値とすることができる。本明細書では、貯蔵弾性率測定装置(ティー・エイ・インスツルメント社製、ARES−G2レオメータ)を用いての方法で測定して得られた値を上記貯蔵弾性率とする。具体的な方法を以下に示す。
(貯蔵弾性率測定用試料の調製)
コア樹脂およびシェル樹脂いずれか一方のみを溶解する溶剤で、被覆粒子を構成するコア樹脂またはシェル樹脂を分離および抽出し、乾燥させて粉末状にする。加圧成型機(エヌピーエーシステム株式会社製、NT−100H)を用いて、得られた粉末を常温で30kNに1分間加圧して、直径約8mm、高さ約2mmの円柱状試料に成型する。
(貯蔵弾性率の測定手順)
上記装置が有するパラレルプレートの温度を150℃に温調して、上記調製した円柱状の試料を加熱溶融させた後、axial forceが10(g重)を超えないように垂直方向に荷重をかけて、パラレルプレートに上記試料を固着させる。この状態でパラレルプレートおよび該円柱状試料を測定開始温度250℃まで加熱し、徐冷しながら粘弾性データを測定する。測定されたデータは、Microsoft社製Windows7(「Windows」は同社の登録商標)を搭載したコンピュータに転送し、上記コンピュータ上で動作する制御、データ収集および解析ソフト(TRIOS)を通じてデータ転送し、所望の温度における貯蔵弾性率G’(Pa)の値を読み取る。
(貯蔵弾性率の測定条件)
測定周波数 :6.28ラジアン/秒
測定歪みの設定 :初期値を0.1%に設定し、自動測定モードにて測定を行う。
試料の伸長補正 :自動測定モードにて調整する。
測定温度 :250℃から100℃まで毎分5℃の割合で徐冷する。
測定間隔 :1℃ごとに粘弾性データを測定する。
ここで、上記被覆粒子の平均粒子径は、2μm以上210μm以下であることが好ましく、10μm以上80μm以下であることがより好ましい。被覆粒子の平均粒子径が2μm以上であると、後述の立体造形物の製造方法で作製する各造形物層の厚みが十分に厚くなりやすく、効率良く立体造形物を製造することが可能となる。一方、被覆粒子の平均粒子径が210μm以下であると、複雑な形状の立体造形物も作製することが可能となる。
またこのとき、コアの平均粒子径は、1μm以上200μm以下であることが好ましく、2μm以上150μm以下であることがより好ましく、5μm以上100μm以下であることがさらに好ましく、5μm以上70μm以下であることがさらに好ましく、10μm以上60μm以下であることがさらに好ましい。コアの平均粒子径が1μm以上であると、粉末材料が十分な流動性を有するため、立体造形物を製造する際の粉末材料の取り扱いが容易になる。また、上記平均粒子径が1μm以上であると、コア樹脂の作製が容易であり、粉末材料の製造コストが高くならない。上記平均粒子径が200μm以下であると、より高精細な立体造形物を製造することが可能となる。
一方、シェルの厚み(シェル樹脂からなる層の厚み)は、10〜500nmであることが好ましく、15〜400nmであることがより好ましく、20〜300nmであることがさらに好ましい。
上記被覆粒子の平均粒子径は、動的光散乱法により測定した体積平均粒子径とする。体積平均粒径は、湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置(シンパティック(SYMPATEC)社製、ヘロス(HELOS))により測定することができる。また、コアの平均粒子径およびシェルの厚みは、多数の被覆粒子の断面をTEMで撮像して得た画像中で、ランダムに選択した10個の被覆粒子について、シェル樹脂からなる層の厚みを10点実測し、それらの平均値を採用することができる。なお、TEMで撮像した画像による観察では、コア粒子とシェル樹脂との間に、金属酸化物および/または金属窒化物も確認される。金属酸化物および/または金属窒化物が局在している領域の厚みは、金属酸化物および/または金属窒化物の含有量に応じて適宜選択され、本発明の目的を損なわない範囲で適宜設定される。
被覆粒子における、コア樹脂およびシェル樹脂の量は、上記コアシェル構造が形成される量であればよい。たとえば、コア樹脂100質量部に対するシェル樹脂の量は、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上15質量部以下であることがさらに好ましく、1質量部以上15質量部以下であることがさらに好ましく、1質量部以上10質量部以下であることがさらに好ましい。
また、被覆粒子の円形度は0.95以上であることが好ましく、0.96以上であることがより好ましく、0.97以上であることがさらに好ましい。被覆粒子の円形度が0.95以上であると、個々の被覆粒子の体積が均一になりやすく、所望の形状に造形物層を形成しやすくなる。上記円形度は、被覆粒子の平均円形度を示し、「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定される値である。
具体的には、被覆粒子を界面活性剤水溶液に湿潤させ、超音波分散を1分間行う。そして、「FPIA−2100」を用い、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000〜10000個の適正濃度で測定を行う。この範囲であれば、再現性のある測定値が得られる。円形度は下記式で計算される。
円形度=(粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
また平均円形度は、各粒子の円形度を足し合わせ、測定した全粒子数で割った算術平均値である。
ここで、上述の被覆粒子のコア樹脂およびシェル樹脂は、加熱によって軟化もしくは溶融する樹脂であれば特に制限されず、前述の、TS(65)、TC(65)、貯蔵弾性率等を勘案して、それぞれ選択することができる。なお、シェル樹脂として、加熱によって消失する樹脂を選択することもできる。コア樹脂およびシェル樹脂に適用可能な樹脂の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニルサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、結晶性ポリエステル等の結晶性の樹脂;ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレンコポリマ(ABS)、アクリルポリマー、ポリカーボネート、エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA)、スチレン・アクリロニトリルコポリマー(SAN)、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリカプロラクトン等の非結晶性の樹脂;が含まれる。
これらの樹脂のうち、非結晶性の樹脂は、従来の方法では造形精度を高くすることが難しかったが、本実施形態のコアシェル構造を有する被覆粒子によれば、造形精度を高めることが可能となる。このような観点からは、コア樹脂の材料は非結晶性の樹脂であっても良い。コア樹脂の材料に非結晶性の樹脂を用いた際に、より有用な粒子構造であると言える。
1−2.その他の材料
前述のように、粉末材料は、上記被覆粒子以外の成分を含んでいてもよく、その例には、レーザ吸収剤や、フローエージェント等が含まれる。
1−2−1.レーザ吸収剤
レーザの光エネルギーをより効率的に熱エネルギーに変換する観点から、粉末材料は、レーザ吸収剤をさらに含んでもよい。レーザ吸収剤は、使用する波長のレーザを吸収して熱を発する材料であればよい。このようなレーザ吸収剤の例には、カーボン粉末、ナイロン樹脂粉末、顔料、および染料が含まれる。これらのレーザ吸収剤は、一種類のみ用いても、二種類を組み合わせて用いてもよい。
レーザ吸収剤の量は、上記被覆粒子の溶融結合が容易になる範囲で適宜設定することができる。例えば、粉末材料の全質量に対して、0質量%より多く3質量%未満とすることができる。
1−2−2.フローエージェント
粉末材料の流動性を向上させ、立体造形物の製造時における粉末材料の取り扱いを容易にする観点から、粉末材料は、フローエージェントをさらに含んでもよい。フローエージェントは、摩擦係数が小さく、自己潤滑性を有する材料であればよい。このようなフローエージェントの例には、二酸化ケイ素および窒化ホウ素が含まれる。これらのフローエージェントは、一種類のみ用いても、二種類を組み合わせて用いてもよい。
フローエージェントの量は、粉末材料の流動性が向上し、かつ、コアシェル構造を有する被覆粒子(少なくともコア樹脂)の溶融結合が十分に生じる範囲で適宜設定することができ、たとえば、粉末材料の全質量に対して、0質量%より多く2質量%未満とすることができる。
2.粉末材料の製造方法
上記粉末材料の製造方法は、特に制限されず、公知の方法で製造することができる。例えば、粉末材料が、前述の被覆粒子のみ含む場合には、当該被覆粒子をそのまま粉末材料として用いることができる。一方、粉末材料が被覆粒子と、その他の材料とを含む場合、粉末状にしたその他の材料と、被覆粒子とを撹拌混合して製造することができる。以下、被覆粒子の調製方法について説明する。
(被覆粒子の調製方法)
前述の被覆粒子の調製方法を以下、説明する。
被覆粒子は、コア樹脂からなる粒子を準備する工程と、当該コア樹脂からなる粒子の表面に金属酸化物および/または金属窒化物を付着させる工程と、当該金属酸化物および/または金属窒化物を覆うようにシェル樹脂を付着させる工程と、を行うことで調製することができる。
コア樹脂からなる粒子は、調製してもよく、市販品を用いてもよい。調製方法は、公知の樹脂粒子の調製方法と同様とすることができる。
また、コア樹脂からなる粒子の表面に金属酸化物および/または金属窒化物を付着させる方法は特に制限されない。金属酸化物および/または金属窒化物を付着させる方法の例には、コア樹脂からなる粒子の表面に、金属酸化物および/または金属窒化物からなる粒子を分散させた分散液を塗布する方法であってもよく、コア樹脂からなる粒子の表面に、金属酸化物および/または金属窒化物を蒸着法やスパッタ法等により付着させる方法であってもよく、コア樹脂からなる粒子と金属酸化物および/または金属窒化物からなる粒子とを乾式混合し、コア樹脂表面に金属酸化物粒子を物理的に付着させる方法であってもよい。これらの中でも、効率よく金属酸化物および/または金属窒化物を付着させることができるとの観点から、乾式混合が好ましい。
また、シェル樹脂を付着させる方法としては、シェル樹脂を溶解させた塗布液を塗布する湿式コート法や、金属酸化物および/または金属窒化物を付着させた粒子と、シェル樹脂からなる粒子とを撹拌混合して機械的衝撃により、表面にシェル樹脂を結合させる乾式コート法、ならびにこれらを組み合わせた方法が含まれる。
湿式コート法を採用する場合、金属酸化物および/または金属窒化物を付着させたコア樹脂の表面に上記塗布液をスプレー塗布してもよく、金属酸化物および/または金属窒化物を付着させたコア樹脂を上記塗布液の中に浸漬してもよい。湿式コート法によれば、図1Aに示すような、シート状のシェル樹脂がコア粒子を被覆した被覆粒子が得られる。一方で、乾式コート法によれば、図1Bに示すような、粒子状のシェル樹脂がコア粒子を被覆した被覆粒子が得られる。湿式コート法によれば、均一な厚みのシェル樹脂からなる層を形成しやすく、乾式コート法は乾燥工程が不要であるため、製造工程を簡素化できる。
コア樹脂およびシェル樹脂は、前述のように、貯蔵弾性率を勘案してそれぞれ選択する。コア樹脂およびシェル樹脂は、市販のものを用いてもよい。またモノマーやプレポリマー等を重合することにより、調製したものを用いてもよい。
一方、コア樹脂として特定の樹脂を選択し、当該樹脂よりTgが高い材料をシェル樹脂に選択すれば、上述のTC(65)およびTS(65)の関係を容易に満たすことが可能となる。たとえば、Tgが低くなる傾向があるポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンをコア樹脂として選択し、Tgが高く傾向があるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート、アクリルポリマーをシェル樹脂として選択すれば、上述のTC(65)およびTS(65)の関係を容易に満たすことが可能となる。なお、市販の樹脂のTgは、各メーカーから公表されていることが多い。
また調製する樹脂の貯蔵弾性率G’は、樹脂の平均分子量を変化させることで、所望の範囲に制御することができる。具体的には、調製する樹脂の平均分子量を大きくすれば、樹脂の貯蔵弾性率G’が高くなり、調製する樹脂の平均分子量を小さくすれば、樹脂の貯蔵弾性率G’が低くなる。使用する樹脂の種類ごとに、分子量と予備加熱温度における貯蔵弾性率G’との関係を予め調べておき、次回からの樹脂の製造時に上記関係を参照して調製する樹脂の分子量を決定してもよい。
3.立体造形物の製造方法
次に、前述の粉末材料を用いて立体造形物を製造する方法を説明する。本実施形態の立体造形物の製造方法では、前記粉末材料を用いるほかは、通常の粉末床溶融結合法と同様に行うことができる。具体的には、(1)前述の粉末材料からなる薄層を形成する薄層形成工程と、(2)粉末材料を予備加熱する予備加熱工程と、(3)予備加熱された粉末材料からなる薄層にレーザ光を選択的に照射して、前記粉末材料に含まれる被覆粒子どうしが溶融結合した造形物層を形成するレーザ光照射工程と、を含む方法とすることができる。そして工程(1)〜工程(3)を複数回繰り返し、造形物層を積層することで、立体造形物を製造することができる。なお、工程(1)および工程(2)は、いずれを先に行ってもよい。
3−1.薄層形成工程(工程(1))
本工程では、前記粉末材料の薄層を形成する。たとえば、粉末供給部から供給された前記粉末材料を、リコータによって造形ステージ上に平らに敷き詰める。薄層は、造形ステージ上に直接形成してもよいし、すでに敷き詰められている粉末材料またはすでに形成されている造形物層の上に接するように形成してもよい。
薄層の厚さは、所望の造形物層の厚さと同じとする。薄層の厚さは、製造しようとする立体造形物の精度に応じて任意に設定することができるが、通常、0.01mm以上0.30mm以下である。薄層の厚さを0.01mm以上とすることで、次の造形物層を形成するためのレーザ光照射によって下の層の被覆粒子が溶融結合されることを防ぐことができる。均一な粉体の敷き詰めが可能となる。また、薄層の厚さを0.30mm以下とすることで、レーザ光のエネルギーを薄層の下部まで伝導させて、薄層を構成する粉末材料に含まれる被覆粒子を、厚み方向の全体にわたって十分に溶融結合させることができる。前記観点からは、薄層の厚さは0.01mm以上0.10mm以下であることがより好ましい。また、薄層の厚み方向の全体にわたってより十分に被覆粒子を溶融結合させ、造形物層の割れをより生じにくくする観点からは、薄層の厚さは、後述するレーザ光のビームスポット径との差が0.10mm以内になるよう設定することが好ましい。
3−2.予備加熱工程(工程(2))
本工程では、粉末材料を予備加熱する。前述のように、工程(1)および工程(2)は、いずれを先に行ってもよい。例えば、粉末材料を予備加熱してから薄層を形成してもよく、薄層を形成してから粉末材料の予備加熱を行ってもよい。
予備加熱温度は、コア樹脂のガラス転移温度以上の温度、かつシェル樹脂のガラス転移温度より低い温度とすることができ、前述の被覆粒子のコア樹脂の貯蔵弾性率G’cが10Pa以下、かつシェル樹脂の貯蔵弾性率G’sが10Pa以上となる温度であることが好ましい。また、予備加熱された粉末材料の熱によって、造形物層が再溶解して歪み、造形精度が低下することを抑制する観点から、予備加熱後の粉末材料の表面温度が、コア樹脂の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TC(65)より5℃以上50℃以下高くなるように、予備加熱を行うことが好ましい。なお、予備加熱温度は、50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、140℃以上250℃以下であることがさらに好ましく、140℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。
またこのとき、加熱時間は1〜30秒とすることが好ましく、5〜20秒とすることがより好ましい。加熱温度および加熱時間を上記範囲とすることで、被覆粒子中のコア樹脂を十分に軟化もしくは溶解させることができ、レーザエネルギー量で立体造形物を製造することもできる。
3−3.レーザ光照射工程(工程(3))
本工程では、予備加熱された粉末材料からなる薄層のうち、造形物層を形成すべき位置にレーザ光を選択的に照射し、照射された位置の被覆粒子の少なくとも一部どうし(少なくともコア樹脂どうし)を溶融結合させる。溶融した被覆粒子(コア樹脂)は、隣接する被覆粒子(コア樹脂)と溶融し合って溶融結合体を形成し、造形物層となる。このとき、レーザ光のエネルギーを受け取った被覆粒子は、すでに形成された造形物層とも溶融結合するため、隣り合う層間の接着も生じる。
レーザ光の波長は、シェル樹脂が吸収する波長の範囲内で設定すればよい。このとき、レーザ光の波長と、シェル樹脂の吸収率が最も高くなる波長との差が小さくなるようにすることが好ましいが、一般的に樹脂は様々な波長域の光を吸収するため、COレーザ等の波長帯域の広いレーザ光を用いることが好ましい。たとえば、レーザ光の波長は、例えば0.8μm以上12μm以下とすることができる。
レーザ光の出力時のパワーは、後述するレーザ光の走査速度において、前記シェル樹脂が十分に溶融結合する範囲内で設定すればよい。具体的には、5.0W以上60W以下とすることができる。レーザ光のエネルギーを低くして、製造コストを低くし、かつ、製造装置の構成を簡易なものにする観点からは、レーザ光の出力時のパワーは30W以下であることが好ましく、20W以下であることがより好ましい。
レーザ光の走査速度は、製造コストを高めず、かつ、装置構成を過剰に複雑にしない範囲内で設定すればよい。具体的には、1m/秒以上10m/秒以下とすることが好ましく、2m/秒以上8m/秒以下とすることがより好ましく、3m/秒以上7m/秒以下とすることがさらに好ましい。
レーザ光のビーム径は、製造しようとする立体造形物の精度に応じて適宜設定することができる。
3−4.工程(1)〜工程(3)の繰返しについて
立体造形物の製造の際には、上述の工程(1)〜工程(3)を、任意の回数繰り返す。これにより、造形物層が積層されて、所望の立体造形物が得られることとなる。
3−5.その他
なお、溶融結合中の被覆粒子の酸化等によって、立体造形物の強度が低下することを防ぐ観点からは、少なくとも工程(3)は減圧下または不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。減圧するときの圧力は10−2Pa以下であることが好ましく、10−3Pa以下であることがより好ましい。本実施形態で使用することができる不活性ガスの例には、窒素ガスおよび希ガスが含まれる。これらの不活性ガスのうち、入手の容易さの観点からは、窒素(N)ガス、ヘリウム(He)ガスまたはアルゴン(Ar)ガスが好ましい。製造工程を簡略化する観点からは、工程(1)〜工程(3)のすべてを減圧下または不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
4.立体造形装置
上記立体造形物の製造方法に使用可能な立体造形装置について説明する。本実施形態に用いることが可能な立体造形装置は、公知の立体造形装置と同様の構成とすることができる。具体的には、本実施形態に係る立体造形装置200は、図2の概略側面図に示すように、開口内に位置する造形ステージ210、粉末材料からなる薄層を形成するための薄層形成部220、粉末材料を予備加熱するための予備加熱部230、薄層にレーザ光を照射するためのレーザ照射部240、鉛直方向の位置を可変に造形ステージ210を支持するステージ支持部250、および上記各部を支持するベース290を備える。
一方、立体造形装置200の制御系の主要部を図3に示す。図3に示すように、立体造形装置200は、薄層形成部220、予備加熱部230、レーザ照射部240、およびステージ支持部250を制御して、造形物の形成および積層を行う制御部260、各種情報を表示するための表示部270、ユーザーからの指示を受け付けるためのポインティングデバイス等を含む操作部275、制御部260の実行する制御プログラムを含む各種の情報を記憶する記憶部280、ならびに外部機器との間で立体造形データ等の各種情報を送受信するためのインターフェース等を含むデータ入力部285を備えてもよい。また、立体造形装置200は、造形ステージ210上に形成された薄層の表面温度を測定する温度測定器235を備えてもよい。また立体造形装置200には、立体造形用のデータを生成するためのコンピュータ装置300が接続されてもよい。
造形ステージ210は、昇降可能に制御され、当該造形ステージ210上で、薄層形成部220による薄層の形成、予備加熱部230による粉末材料の予備加熱、およびレーザ照射部240によるレーザ光の照射が行われる。そして、これらによって形成された造形物が積層されて、立体造形物が形成される。
薄層形成部220は、粉末材料を収納する粉末材料収納部221aと、粉末材料収納部221aの底部に設けられ開口内を昇降する供給ピストン221bとを備える粉末供給部221、および粉末供給部221から供給された粉末材料を造形ステージ210上に平らに敷き詰めて、粉末材料の薄層を形成するリコータ222aを備えた構成とすることができる。本実施形態では、粉末材料収納部221aの開口部の上面が、造形ステージ210を昇降させる(立体造形物を形成するための)開口部の上面と、ほぼ同一平面上に配置される。
なお、粉末供給部221は、造形ステージ210に対して鉛直方向上方に設けられた粉末材料収納部(不図示)と、当該粉末材料収納部に収納された粉末材料を、所望の量ずつ吐出するためのノズル(不図示)と、を備える構成としてもよい。この場合、ノズルから造形ステージ210上に、均一に粉末材料を吐出することで、薄層を形成することが可能となる。
予備加熱部230は、粉末材料のうち、造形物層を形成すべき領域を加熱し、その温度を維持できるものであればよい。本実施形態では、予備加熱部230が、造形ステージ210上に形成された薄層の表面を加熱可能な第1のヒータ231と、造形ステージ上に供給される前の粉末材料を加熱する第2のヒータ232とを備えるが、これらはいずれか一方のみであってもよい。また、予備加熱部230は、上記造形物層を形成すべき領域を選択的に加熱する構成であってもよい。また、装置内の全体を予め加熱しておいて、上記薄層の表面を所定の温度に調温する構成であってもよい。
温度測定器235は、薄層の表面温度、特に造形物層を形成すべき領域の表面温度を非接触で測定できるものであればよく、たとえば、赤外線センサまたは光高温計とすることができる。
レーザ照射部240は、レーザ光源241およびガルバノミラー242aを含む構成とすることができる。レーザ照射部240は、レーザ光を透過させるレーザ窓243およびレーザ光の焦点距離を薄層の表面にあわせるためのレンズ(不図示)を備えていてもよい。レーザ光源241は、前記波長のレーザ光を、前記出力で出射する光源であればよい。レーザ光源241の例には、YAGレーザ光源、ファイバレーザ光源およびCOレーザ光源が含まれる。ガルバノミラー242aは、レーザ光源241から出射したレーザ光を反射してレーザ光をX方向に走査するXミラーおよびY方向に走査するYミラーから構成されてもよい。レーザ窓243は、レーザ光を透過させる材料からなるものであればよい。
ステージ支持部250は、造形ステージ210の鉛直方向の位置を可変に支持するものであればよい。すなわち、造形ステージ210は、ステージ支持部250によって鉛直方向に精密に移動可能に構成されている。ステージ支持部250としては、種々の構成を採用できるが、例えば、造形ステージ210を保持する保持部材と、この保持部材を鉛直方向に案内するガイド部材と、ガイド部材に設けられたねじ孔に係合するボールねじ等で構成することができる。
制御部260は、中央処理装置等のハードウェアプロセッサを含んでおり、立体造形物の造形動作中、立体造形装置200全体の動作を制御する。
また、制御部260は、たとえばデータ入力部285がコンピュータ装置300から取得した立体造形データを、造形物層の積層方向について薄く切った複数のスライスデータに変換するよう構成されてもよい。スライスデータは、立体造形物を造形するための各造形物層の造形データである。スライスデータの厚み、すなわち造形物層の厚みは、造形物層の一層分の厚さに応じた距離(積層ピッチ)と一致する。
表示部270は、たとえば液晶ディスプレイ、モニタとすることができる。
操作部275は、たとえばキーボードやマウスなどのポインティングデバイスを含むものとすることができ、テンキー、実行キー、スタートキー等の各種操作キーを備えてもよい。
記憶部280は、たとえばROM、RAM、磁気ディスク、HDD、SSD等の各種の記憶媒体を含むものとすることができる。
立体造形装置200は、制御部260の制御を受けて、装置内を減圧する、減圧ポンプなどの減圧部(不図示)、または、制御部260の制御を受けて、不活性ガスを装置内に供給する、不活性ガス供給部(不図示)を備えていてもよい。
ここで、本実施形態の立体造形装置200を用いた立体造形方法について、具体的に説明する。制御部260は、データ入力部285がコンピュータ装置300から取得した立体造形データを、造形物層の積層方向について薄く切った複数のスライスデータに変換する。その後、制御部260は、立体造形装置200における以下の動作の制御を行う。
粉末供給部221は、制御部260から出力された供給情報に従って、モーターおよび駆動機構(いずれも不図示)を駆動し、供給ピストンを鉛直方向上方(図2の上矢印方向)に移動させ、前記造形ステージと水平方向同一平面上に、粉末材料を押し出す。
その後、リコータ駆動部222は、制御部260から出力された薄層形成情報に従って水平方向(図中矢印方向)にリコータ222aを移動させて、粉末材料を造形ステージ210に運搬し、かつ、薄層の厚さが造形物層の1層分の厚さとなるように粉末材料を押圧する。
予備加熱部230は、制御部260から出力された温度情報に従って所定の領域の粉末材料のみ、または装置内の全体を加熱する。上記温度情報は、たとえば、データ入力部285から入力されたコア樹脂を構成する材料の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TC(6.5)のデータに基づいて制御部260が記憶部280から引き出した、上記温度との差が5℃以上50℃以下となる温度に粉末材料を加熱するための情報とすることができる。予備加熱部230は、薄層が形成された後に加熱を開始してもよいし、薄層が形成される前から形成されるべき薄層の表面に該当する箇所または装置内の加熱を行っていてもよい。
その後、レーザ照射部240は、制御部260から出力されたレーザ照射情報に従って、薄層上の、各スライスデータにおける立体造形物を構成する領域に適合して、レーザ光源241からレーザ光を出射し、ガルバノミラー駆動部242によりガルバノミラー242aを駆動してレーザ光を走査する。レーザ光の照射によって粉末材料に含まれる被覆粒子の少なくとも一部(少なくともコア樹脂)が溶融結合し、造形物層が形成される。
その後、ステージ支持部250は、制御部260から出力された位置制御情報に従って、モーターおよび駆動機構(いずれも不図示)を駆動し、造形ステージ210を、積層ピッチだけ鉛直方向下方(図2の下矢印方向)に移動する。
表示部270は、必要に応じて、制御部260の制御を受けて、ユーザーに認識させるべき各種の情報やメッセージを表示する。操作部275は、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、その入力操作に応じた操作信号を制御部260に出力する。たとえば、形成される仮想の立体造形物を表示部270に表示して所望の形状が形成されるか否かを確認し、所望の形状が形成されない場合は、操作部275から修正を加えてもよい。
制御部260は、必要に応じて、記憶部280へのデータの格納または記憶部280からのデータの引き出しを行う。
なお、制御部260は、薄層の表面のうち、造形物層を形成すべき領域の温度の情報を温度測定器235から受け取り、前記造形物層を形成すべき領域の温度と、前記コア樹脂を構成する材料の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TC(6.5)と、の差が5℃以上50℃以下、好ましくは5℃以上30℃以下になるように、予備加熱部230による加熱を制御してもよい。
これらの動作を繰り返すことで、造形物層が積層され、立体造形物が製造される。
以下において、本発明の具体的な実施例を説明する。なお、これらの実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
1.粉末材料の作製
1−1.原料の準備
コア樹脂およびシェル樹脂、および金属酸化物または金属窒化物として、以下の表1に記載の材料を準備した。なお、コア樹脂およびシェル樹脂について、市販の樹脂の平均粒子径が表1に記載の数値より大きいときは、湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置(シンパティック(SYMPATEC)社製、ヘロス(HELOS))で測定した平均粒子径が表1に記載の値になるまで、市販の樹脂粒子を機械的粉砕法で粉砕した。
Figure 2018118413
1−2.粉末材料の調製
(1)粉末材料3の調製
2500gのPA12粒子、及び5gのチタニア1をFMミキサ(日本コークス工業株式会社製 FM10C/I)に投入し、25℃温調下、羽根先端周速35m/sにて、10min混合し、PA12粒子表面にチタニア1が付着した粒子を作成した。その後、前記粒子950gを転動流動コーティング装置(株式会社パウレック製 MP−10)に投入し、給気温度50℃、層内静圧1.8kPa、排気静圧2.1kPa、ローター回転数400rpmの条件にて流動状態とした。その後、別途用意した50gのポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学株式会社製 FPC−0220)をテトラヒドロフラン(THF)1000質量部に溶解させた溶液を、4g/minの速度でスプレーノズルより層内に投入し、全量スプレーノズルより溶液を噴霧することで、被覆粒子を含む粉末材料3を得た。
当該粉末材料では、シェル樹脂とコア樹脂との間にチタニア1が局在していた。チタニア1の局在は、TEMで撮像した被覆粒子の断面画像により確認した。
(2)粉末材料2の調製
ポリアミド12粒子にチタニア1を付着させなかった以外は、粉末材料3と同様に調製した。
(3)粉末材料4〜21の調製
表2に示すように、コア樹脂、シェル樹脂、および金属酸化物または金属窒化物を組み合わせた以外は、粉末材料3と同様に、粉末材料4〜21を調製した。得られた粉末材料4〜21について、粉末材料3と同様の方法で確認したところ、シェル樹脂とコア樹脂との間に、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、または窒化ホウ素がそれぞれ局在していた。
(4)粉末材料1の準備
ポリアミド12粒子をそのまま粉末材料1とした。
Figure 2018118413
2.評価
上記粉末材料から得られる立体造形物について、以下のように評価を行った。結果を表3に示す。
A.立体造形物の評価
(1)立体造形物の作製
粉末材料1〜21をホットプレート上に設置した造形ステージ上に敷き詰めて厚さ0.1mmの薄層を形成し、ホットプレートの温度を調整することで、表3に記載の予備加熱温度にそれぞれ加熱した。この薄層に、以下の条件で、YAG波長用ガルバノメータスキャナを搭載した50W COレーザからISO 527−2−1BAの試験片形状に準じてレーザ光を照射して、造形物層を作製した。上記工程を10回繰り返し、10層からなる積層された立体造形物をそれぞれ製造した。
[レーザ光の出射条件]
レーザ出力 :50W
レーザ光の波長 :10μm
ビーム径 :薄層表面で170μm
[レーザ光の走査条件]
走査速度 :2000mm/sec
ライン数 :1ライン
[周囲雰囲気]
温度 :予備加熱温度
ガス :窒素(N) 100%
(2)造形物歪みの測定
上記で作製した立体造形物について、寸法誤差をミツトヨ社製デジマチックハイトゲージHD−AXを用いて、試験片の長手方向の長さを測定した。当該寸法誤差を以下の基準で評価した。
〇:基準長75mmに対して誤差±0.1mm未満
△:基準長75mmに対して誤差±0.1mm以上〜0.2mm未満
×:基準長75mmに対して誤差±0.3mm以上
(3)造形物強度の測定
上記で作製した立体造形物について、インスロン社製万能試験機 model−5582を用い、引張速度1mm/min、掴み具距離60mm、試験温度23℃の条件にて引張強度を測定した。当該強度比を、以下の基準で評価した。
〇:コア樹脂を用いて作製した射出成型品の引張強度に対して、引張強度が90%以上
△:コア樹脂を用いて作製した射出成型品の引張強度に対して、引張強度が80%以上90%未満
×:コア樹脂を用いて作製した射出成型品の引張強度に対して、引張強度が80%未満
B.粉末材料の評価
(再利用性)
粉末材料1〜21をそれぞれ1gずつ20ccのガラス製サンプル瓶に計りとり、ホットプレート上に表3に記載の予熱温度にて10分間放置した。放置後、室温まで戻した後、2mmの開口径を有する金属メッシュ篩上に粉末材料を移し、20秒間振動を与えた。篩上に残った粉末材料の重量を計測し、以下の基準で、粉末材料の再利用性を評価した。
◎:篩上に残存した粒子の量が3質量%未満
〇:篩上に残存した粒子の量が3質量%以上7質量%未満
△:篩上に残存した粒子の量が7質量%以上15質量%未満
×:篩上に残存した粒子の量が15質量%以上
Figure 2018118413
表3に示すように、コア樹脂およびシェル樹脂の間に、金属酸化物または金属窒化物が局在している粉末材料3〜21では、コア樹脂およびシェル樹脂の間に金属酸化物および金属窒化物を含まない場合(粉末材料2)やコア樹脂のみである場合(粉末材料1)と比較して、再利用性が良好であった。コア樹脂およびシェル樹脂が、金属酸化物または金属窒化物によって物理的に相分離されたため、予備加熱時に被覆粒子どうしが凝集し難かったと推察される。ただし、金属酸化物または金属窒化物の量が、コア樹脂100質量部に対して0.05質量未満である場合(粉末材料8および10)には、実用上問題はないものの、再利用性が低下する傾向にあった。また、コア樹脂およびシェル樹脂の間に、金属酸化物または金属窒化物が局在している粉末材料3〜21では、造形歪みが少なく、造形物強度が実用状問題内程度に十分に高かった。ただし、金属酸化物または金属窒化物の量がコア樹脂とシェル樹脂との合計量100質量部に対して1.0質量%超である場合(粉末材料9および11)には、実用状問題はないものの、造形物強度が低下する傾向にあった。
本発明に係る粉末材料は、予備加熱を行っても、凝集し難いことから、造形に利用されなかった被覆粒子を再利用することが可能である。したがって、本発明によれば、粉末床溶融結合法のさらなる普及に寄与するものと思われる。
100 被覆粒子
101 コア粒子
102 シェル樹脂
200 立体造形装置
210 造形ステージ
220 薄層形成部
221 粉末供給部
222 リコータ駆動部
222a リコータ
230 予備加熱部
231 第1のヒータ
232 第2のヒータ
235 温度測定器
240 レーザ照射部
241 レーザ光源
242 ガルバノミラー駆動部
242a ガルバノミラー
243 レーザ窓
250 ステージ支持部
260 制御部
270 表示部
275 操作部
280 記憶部
290 ベース
285 データ入力部
300 コンピュータ装置

Claims (8)

  1. 被覆粒子を含む粉末材料の予備加熱、および前記粉末材料の薄層への選択的なレーザ光照射を繰返し、前記被覆粒子の少なくとも一部どうしが溶融結合した造形物層を複数層積層して立体造形物を製造する方法に使用される粉末材料であって、
    前記被覆粒子は、コア樹脂と、前記コア樹脂を被覆するシェル樹脂とを含み、
    前記コア樹脂と前記シェル樹脂との間に金属酸化物および金属窒化物の少なくとも一方が局在する、粉末材料。
  2. 前記金属酸化物または金属窒化物が粒子状である、請求項1に記載の粉末材料。
  3. 前記粒子状の前記金属酸化物または前記金属窒化物の平均粒子径が5nm〜100nmであり、
    前記コア樹脂100質量部に対する、前記金属酸化物および前記金属窒化物の合計量が0.05質量部〜1.0質量部である、請求項2に記載の粉末材料。
  4. 前記金属酸化物が酸化チタンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粉末材料。
  5. 前記シェル樹脂の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TS(65)は、前記コア樹脂材料の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TC(65)より高い、
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の粉末材料。
  6. 前記シェル樹脂の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TS(65)と、前記コア樹脂の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TC(65)との差が、5℃以上70℃以下である、請求項5に記載の粉末材料。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の粉末材料からなる薄層を形成する薄層形成工程と、
    前記粉末材料を予備加熱する予備加熱工程と、
    予備加熱された前記粉末材料からなる前記薄層にレーザ光を選択的に照射して、前記被覆粒子の少なくとも一部どうしが溶融結合した造形物層を形成するレーザ光照射工程と、
    を含み、
    前記薄層形成工程、前記予備加熱工程、および前記レーザ光照射工程を複数回繰り返し、前記造形物層を積層することで立体造形物を形成する、
    立体造形物の製造方法。
  8. 造形ステージと、
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の粉末材料の薄層を前記造形ステージ上に形成する薄層形成部と、
    前記粉末材料を予備加熱する予備加熱部と、
    予備加熱された前記粉末材料からなる前記薄層にレーザを照射して、前記被覆粒子の少なくとも一部どうしが溶融結合してなる造形物層を形成するレーザ照射部と、
    前記造形ステージを、その鉛直方向の位置を可変に支持するステージ支持部と、
    前記薄層形成部、前記予備加熱部、前記レーザ照射部および前記ステージ支持部を制御して、前記造形物層を繰り返し形成させて積層させる制御部と、
    を備える、立体造形装置。
JP2017010281A 2017-01-24 2017-01-24 粉末材料、およびこれを用いた立体造形物の製造方法、ならびに立体造形装置 Active JP6798326B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017010281A JP6798326B2 (ja) 2017-01-24 2017-01-24 粉末材料、およびこれを用いた立体造形物の製造方法、ならびに立体造形装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017010281A JP6798326B2 (ja) 2017-01-24 2017-01-24 粉末材料、およびこれを用いた立体造形物の製造方法、ならびに立体造形装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018118413A true JP2018118413A (ja) 2018-08-02
JP6798326B2 JP6798326B2 (ja) 2020-12-09

Family

ID=63043286

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017010281A Active JP6798326B2 (ja) 2017-01-24 2017-01-24 粉末材料、およびこれを用いた立体造形物の製造方法、ならびに立体造形装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6798326B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020138342A (ja) * 2019-02-27 2020-09-03 セイコーエプソン株式会社 三次元造形物の造形方法
WO2020213606A1 (ja) * 2019-04-17 2020-10-22 キヤノン株式会社 光造形用樹脂組成物及び立体造形物
US20200362120A1 (en) * 2017-11-14 2020-11-19 Eos Gmbh Electro Optical Systems Composition for use in an additive manufacturing process
KR20210067295A (ko) * 2019-11-29 2021-06-08 한국생산기술연구원 난용접성 소재 층 예열 적층 장치 및 그 방법

Citations (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006521264A (ja) * 2003-02-18 2006-09-21 ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト 層造形法による三次元体製造のためのコーティングされた粉末粒子
JP2006321711A (ja) * 2005-04-20 2006-11-30 Trial Corp 粉末焼結積層造形法に使用される微小球体、その製造方法、粉末焼結積層造形物及びその製造方法
JP2010189610A (ja) * 2009-02-20 2010-09-02 Idemitsu Technofine Co Ltd レーザー焼結積層用組成物、その製造方法、および成形品
US20130011660A1 (en) * 2011-07-06 2013-01-10 Evonik Degussa Gmbh Powder comprising polymer-coated core particles comprising metals, metal oxides, metal nitrides or semimetal nitrides
JP2013517344A (ja) * 2010-01-19 2013-05-16 アルケマ フランス 熱可塑性粉末組成物と、この組成物の焼結で得られる3次元物体
JP2016040121A (ja) * 2014-08-11 2016-03-24 株式会社リコー 積層造形用粉末及び積層造形物の製造方法
WO2017094345A1 (ja) * 2015-11-30 2017-06-08 コニカミノルタ株式会社 粉末材料、立体造形物の製造方法および立体造形装置
WO2017119218A1 (ja) * 2016-01-05 2017-07-13 コニカミノルタ株式会社 粉末材料、立体造形物の製造方法および立体造形装置
WO2017163834A1 (ja) * 2016-03-23 2017-09-28 コニカミノルタ株式会社 粉末材料、および立体造形物の製造方法

Patent Citations (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006521264A (ja) * 2003-02-18 2006-09-21 ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト 層造形法による三次元体製造のためのコーティングされた粉末粒子
JP2006321711A (ja) * 2005-04-20 2006-11-30 Trial Corp 粉末焼結積層造形法に使用される微小球体、その製造方法、粉末焼結積層造形物及びその製造方法
JP2010189610A (ja) * 2009-02-20 2010-09-02 Idemitsu Technofine Co Ltd レーザー焼結積層用組成物、その製造方法、および成形品
JP2013517344A (ja) * 2010-01-19 2013-05-16 アルケマ フランス 熱可塑性粉末組成物と、この組成物の焼結で得られる3次元物体
US20130011660A1 (en) * 2011-07-06 2013-01-10 Evonik Degussa Gmbh Powder comprising polymer-coated core particles comprising metals, metal oxides, metal nitrides or semimetal nitrides
JP2016040121A (ja) * 2014-08-11 2016-03-24 株式会社リコー 積層造形用粉末及び積層造形物の製造方法
WO2017094345A1 (ja) * 2015-11-30 2017-06-08 コニカミノルタ株式会社 粉末材料、立体造形物の製造方法および立体造形装置
WO2017119218A1 (ja) * 2016-01-05 2017-07-13 コニカミノルタ株式会社 粉末材料、立体造形物の製造方法および立体造形装置
WO2017163834A1 (ja) * 2016-03-23 2017-09-28 コニカミノルタ株式会社 粉末材料、および立体造形物の製造方法

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20200362120A1 (en) * 2017-11-14 2020-11-19 Eos Gmbh Electro Optical Systems Composition for use in an additive manufacturing process
JP2020138342A (ja) * 2019-02-27 2020-09-03 セイコーエプソン株式会社 三次元造形物の造形方法
JP7263838B2 (ja) 2019-02-27 2023-04-25 セイコーエプソン株式会社 三次元造形物の造形方法
WO2020213606A1 (ja) * 2019-04-17 2020-10-22 キヤノン株式会社 光造形用樹脂組成物及び立体造形物
KR20210067295A (ko) * 2019-11-29 2021-06-08 한국생산기술연구원 난용접성 소재 층 예열 적층 장치 및 그 방법
KR102264467B1 (ko) 2019-11-29 2021-06-15 한국생산기술연구원 난용접성 소재 층 예열 적층 장치 및 그 방법

Also Published As

Publication number Publication date
JP6798326B2 (ja) 2020-12-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6791165B2 (ja) 粉末材料、立体造形物の製造方法および立体造形装置
JP6798326B2 (ja) 粉末材料、およびこれを用いた立体造形物の製造方法、ならびに立体造形装置
JP6662381B2 (ja) 立体造形物の製造方法
JPWO2018154917A1 (ja) 粉末材料およびこれに用いる被覆粒子の製造方法、粉末材料を用いた立体造形物の製造方法、ならびに立体造形装置
JP7014174B2 (ja) 立体造形物の製造方法
JP6680061B2 (ja) 粉末材料、粉末材料の製造方法、立体造形物の製造方法および立体造形装置
WO2017163834A1 (ja) 粉末材料、および立体造形物の製造方法
Van den Eynde et al. 3D Printing of Poly (lactic acid)
JP2015180537A (ja) 三次元造形物の製造方法
JPWO2017179139A1 (ja) 樹脂粉末、樹脂造形物およびレーザ粉末造形装置
JP6806088B2 (ja) 粉末材料、立体造形物の製造方法および立体造形装置
JP2018141224A (ja) 三次元造形物製造用組成物、三次元造形物の製造方法および三次元造形物製造装置
JP2017206738A (ja) 粉末材料、粉末材料の製造方法、立体造形物の製造方法および立体造形装置
JP6680114B2 (ja) 粉末材料、粉末材料の製造方法、立体造形物の製造方法および立体造形装置
WO2019013069A1 (ja) 粉末材料、および立体造形物の製造方法
JP2018199283A (ja) 立体造形物の製造方法、それに用いる粉末材料、および結合用流体
JP6866602B2 (ja) 粉末材料、立体造形物の製造方法
US20220403134A1 (en) Resin powder for three-dimensional additive manufacturing, method for producing resin powder for three-dimensional additive manufacturing, three-dimensional additive manufacturing product, and method for producing three-dimensional additive manufacturing product
WO2019117016A1 (ja) 立体造形物の製造方法、およびそれに用いる粉末材料
JP6958149B2 (ja) 粉末材料、およびこれから得られる立体造形物
JP7205492B2 (ja) 立体造形物の製造方法、およびそれに用いる粉末材料

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190620

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20190708

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20191011

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200529

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200714

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200911

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20201020

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20201102

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6798326

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150