JP6806088B2 - 粉末材料、立体造形物の製造方法および立体造形装置 - Google Patents

粉末材料、立体造形物の製造方法および立体造形装置 Download PDF

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Description

本発明は、粉末材料、立体造形物の製造方法および立体造形装置に関する。
近年、複雑な形状の立体造形物を比較的容易に製造できる様々な方法が開発されている。これら立体造形物を製造する方法の一つとして、粉末床溶融結合法が知られている。粉末床溶融結合法は、造形精度が高く、かつ、積層された層間の接着強度が高いという特徴を有する。そのため、粉末床溶融結合法は、最終製品の形状または性質を確認するための試作品の製造のみならず、最終製品の製造への適用も期待されている。
粉末床溶融結合法では、樹脂材料または金属材料からなる粒子を含む粉末材料を平らに敷き詰めて薄膜を形成し、薄膜上の所望の位置にレーザを照射して、上記粒子を選択的に溶融結合させることで、立体造形物を厚さ方向に微分割した層(以下、単に「造形物層」ともいう。)のひとつを形成する。こうして形成された層の上に、さらに粉末材料を敷き詰め、レーザを照射して粒子を選択的に溶融結合させることで、次の造形物層を形成する。この手順を繰り返して、造形物層を積み上げていくことで、所望の形状の立体造形物が製造される。このとき、より短時間あるいはより小さいエネルギーのレーザ照射で粒子を溶融結合させる目的で、レーザを照射する前に粉末材料を予備加熱することがある。
造形される立体造形物の精度を向上させることができる粉末床溶融結合法用の粉末材料の例が、特許文献1、2に記載されている。
特許文献1には、樹脂を含む材料からなるコア粒子と、極性を有する材料(ポリビニルピロリドンおよびアクリルポリマーなど)でコア粒子を被覆してなる第1の被覆層と、界面活性剤で上記第1の被覆層をさらに被覆してなる第2の被覆層と、を有する粒子からなる粉末材料が記載されている。特許文献1には、コアの軟化点はその上の層の軟化点よりも十分高くするべきであると記載されている。特許文献1によれば、この粒子は、最外層である第2の被覆層において、上記界面活性剤の非極性部分が粒子外部を向いているため、空気から水を吸収することによる粒子の流動性の低下および凝集が生じにくい。そのため、この粒子及び結合液を用いて立体造形を行えば、粒子同士が造形前に凝集することによる立体造形物の収縮が生じにくいとされている。
特許文献2には、被覆層を有する粒子からなる粉末材料であって、粉体材料よりも低い焼結温度またはガラス転移温度を有する細粒材料を含有する被覆層を有する粒子からなる粉末材料が記載されている。特許文献2によれば、この粉末材料を適当な温度に加熱すると、上記細粒材料が焼結して粒子間にブリッジが形成される。そのため、この粒子と結合液を用いて立体造形を行えば、造形物を乾燥する間における粒子の収縮による立体造形物の造形精度の低下を抑制できるとされている。
特表2005−533877号公報 特表2006−521264号公報
粉末床溶融結合法によって造形される立体造形物の用途が広がるにつれ、既に粉末床溶融結合法用として実用化されている樹脂材料とは異なる種類の樹脂材料を用いる立体造形物の製造への要求が高まっている。しかし、樹脂材料は、造形プロセスにおいて高温になったときに粒子の変形が生じやすいものが多く、造形精度を高めにくいという問題があった。そのため、粉末床溶融結合法によって、様々な樹脂材料によって構成される立体造形物を高精細に製造できる技術が求められている。
上述したように、特許文献1、2には、樹脂粒子に被覆層を設けた積層造形用の粉末材料が記載されている。具体的には、特許文献1には、コアの軟化点をその上の層の軟化点よりも十分高くするべきであると記載されている。また、特許文献2には、細粒材料の焼結温度またはガラス転移温度は粉末材料よりも低いことが好ましいと記載されている。しかし、これらの文献に記載される粉末材料は、造形物を乾燥させて結合液を除去する際の粒子の収縮を防止することを主眼として設計されており、上述の予備加熱が考慮されたものではない。従って、これらの文献に記載される粉末材料を用いて粉末床溶融結合法による立体造形を行うと、予備加熱の際に粒子の変形が発生しやすくなることが想定され、様々な樹脂材料を用いて造形を行うことも難しい。
また、特許文献1および特許文献2に記載の粉末材料を用いて製造した立体造形物には、粒子が有する被覆層に由来する化合物が残存するため、製造に用いようとする樹脂材料が有する特性が、製造される立体造形物では十分に発揮できないことがある。
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、樹脂によって構成される立体造形物を製造するための粉末床溶融結合法用の粉末材料であって、より高精細な立体造形物を製造でき、かつ、立体造形物の材料となる粒子に被覆層を設けても、立体造形物中に残存する不純物の量を低減できる粉末材料を提供することをその目的とする。本発明はさらに、そのような粉末材料を用いた立体造形物の製造方法、および立体造形物の製造装置を提供することを、その目的とする。
本発明の第一は、以下の粉末材料に関する。
[1]複数の粒子を含む粉末材料の薄層にレーザ光を選択的に照射して、前記粒子が溶融結合してなる造形物層を形成し、前記造形物層を積層することによる立体造形物の製造に使用される粉末材料であって、
前記粒子は、コア樹脂と、コア樹脂を被覆するシェル樹脂とを有する被覆粒子を含み、
前記シェル樹脂を構成する材料のガラス転移温度(Tgs)は、前記コア樹脂を構成する材料が溶融する温度(Tmc)よりも高く、
前記シェル樹脂を構成する材料は、前記レーザ光の照射による加熱により溶融して熱分解する材料である、粉末材料。
[2]前記コア樹脂を構成する材料が溶融する温度(Tmc)は、50℃以上300℃以下である、[1]に記載の粉末材料。
[3]前記シェル樹脂を構成する材料のガラス転移温度(Tgs)は、100℃以上350℃以下である、[1]または[2]に記載の粉末材料。
[4]前記シェル樹脂を構成する材料のガラス転移温度(Tgs)は、前記コア樹脂を構成する材料が溶融する温度(Tmc)よりも5℃以上50℃以下高い、[1]〜[3]のいずれかに記載の粉末材料。
[5]前記コア樹脂の平均粒子径は、1μm以上200μm以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載の粉末材料。
[6]前記被覆粒子が含有する前記シェル樹脂の量は、前記コア樹脂100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下である、[1]〜[5]のいずれかに記載の粉末材料。
本発明の第二は、以下の立体造形物の製造方法に関する。
[7][1]〜[6]のいずれかに記載の粉末材料の薄層を形成する工程と、
前記形成された粉末材料の薄層を予備加熱する工程と、
前記予備加熱された薄層にレーザ光を選択的に照射して、前記粉末材料に含まれる被覆粒子が溶融結合してなる造形物層を形成する工程と、
前記薄層を形成する工程と、前記予備加熱する工程と、前記造形物層を形成する工程と、をこの順に複数回繰り返し、前記造形物層を積層する工程と、
を含む立体造形物の製造方法。
[8]前記予備加熱する工程において、前記薄層は、前記薄膜の表面の温度と、前記コア樹脂を構成する材料が溶融する温度(Tmc)と、の差が5℃以上25℃以下となる温度に加熱される、[7]に記載の立体造形物の製造方法。
本発明の第三は、以下の立体造形装置に関する。
[9]造形ステージと、
[1]〜[6]のいずれかに記載の粉末材料の薄層を前記造形ステージ上に形成する薄層形成部と、
前記形成された粉末材料の薄層を予備加熱する予備加熱部と、
前記薄層にレーザを照射して、前記被覆粒子が溶融結合してなる造形物層を形成するレーザ照射部と、
前記造形ステージを、その鉛直方向の位置を可変に支持するステージ支持部と、
前記薄層形成部、前記予備加熱部、前記レーザ照射部および前記ステージ支持部を制御して、前記造形物層を繰り返し形成させて積層させる制御部と、
を備える、立体造形装置。
[10]前記形成された粉末材料の薄層の表面温度を測定する温度測定器をさらに備え、
前記制御部は、前記薄層の表面のうち、造形物層を形成すべき領域の温度の情報を前記温度測定器から受け取り、前記造形物層を形成すべき領域の前記薄層表面の温度と、前記コア樹脂を構成する材料が溶融する温度(Tmc)との、温度差が5℃以上25℃以下となる温度に、前記予備加熱部による加熱を制御する、[9]に記載の立体造形装置。
本発明によれば、樹脂からなる立体造形物を製造するための粉末床溶融結合法用の粉末材料であって、より高精細な立体造形物を製造でき、かつ、立体造形物の材料となる粒子に被覆層を設けても、立体造形物中に残存する不純物の量を低減できる粉末材料、そのような粉末材料を用いた立体造形物の製造方法、および立体造形物の製造装置が提供される。
図1Aは本発明の一実施形態における樹脂粒子の模式的な断面図である。図1Bは本発明の別の実施形態における樹脂粒子の模式的な断面図である。 図2は本発明の一実施形態における立体造形装置の構成を概略的に示す側面図である。 図3は本発明の一実施形態における立体造形装置の制御系の主要部を示す図である。
前述の課題を解決すべく、本発明者らは粉末床溶融結合法用の粉末材料について鋭意検討および実験を行った。その結果、本発明者らは、コアシェル構造を有する被覆粒子であって、シェル樹脂を構成する材料のガラス転移温度(以下、単に「Tgs」ともいう。)が、コア樹脂を構成する材料が溶融する温度(以下、単に「Tmc」ともいう。)よりも高く、かつ、上記シェル樹脂を構成する材料が加熱により溶融して熱分解する材料である、被覆粒子を含む粉末材料であれば、より高精細な立体造形物の製造ができ、かつ、立体造形物中に残存するシェル樹脂の量を低減できることを見出し、本発明をなすに至った。
本発明者らが得た新たな知見によれば、樹脂材料からなる粒子(以下、単に「樹脂粒子」ともいう。)を用いて粉末床溶融結合法による立体造形を行うときに生じる立体造形の精度の低下は、レーザ照射前の予備加熱時に生じる樹脂粒子の変形および凝集によって生じる。
粉末床溶融結合法に用いる樹脂粒子は、温度が高くなると軟化する性質を有する。そのため、予備加熱温度を高めると、樹脂粒子が軟化しすぎるため、上の層に積層した樹脂粒子の重みによって下の層に含まれる樹脂粒子がつぶれ、変形および凝集しやすくなる。このとき、特に積層方向に粒子の形状が変形および凝集すると、樹脂粒子を溶融結合させて形成する造形物層の形状も積層方向に大きく変形してしまうため、立体造形の精度が低下することになる。一方で、予備加熱温度を低くすると、樹脂粒子が溶融結合する温度まで加熱したときの樹脂の比容積変化率が大きくなるため、レーザ照射時に樹脂粒子の体積が大きく変動し、やはり樹脂粒子の変形によって立体造形の精度が低下してしまう。
本発明者らは上記知見に基づいてさらに検討した結果、樹脂粒子がコアシェル構造を有し、シェルとなる樹脂(以下、単に「シェル樹脂」ともいう。)には、コアとなる樹脂(以下、単に「コア樹脂」ともいう。)よりも高い温度で溶融する材料を採用すると、コア樹脂を構成する材料が溶融する温度(Tmc)付近まで粉末材料を予備加熱しても、シェル樹脂は変形しにくいため、樹脂粒子の変形および凝集が生じにくいことを見出した。
さらに、本発明者らは、上記シェル樹脂を構成する材料として、加熱により溶融して熱分解する材料を用いると、シェル樹脂はレーザ照射時の加熱によって熱分解して立体造形物内に残存しにくいため、立体造形物に残存する不純物の量を低減できることを見出した。
本発明に係る粉末材料は、上記特徴を有するコアシェル構造を持つ樹脂粒子を含み、レーザ照射前の待機中に、コア樹脂を構成する材料が溶融する温度(Tmc)付近の温度(以下、単に「待機温度」ともいう。)に予備加熱することができる。シェル樹脂を構成する材料のガラス転移温度(Tgs)は上記待機温度より高いため、上記待機温度付近において、シェル樹脂を構成する材料はまだ変形しにくい。そのため、待機中にはシェル樹脂が形成する外膜が硬さを保つため、上の層に積層した樹脂粒子の重みによる下の層に含まれる樹脂粒子の変形および凝集が生じにくいと考えられる。一方で、予備加熱によって、樹脂粒子は、コア樹脂を構成する材料が溶融する温度(Tmc)付近にまで加熱できるため、より少ない量のエネルギー照射で樹脂粒子が溶融結合する温度まで粉末材料を加熱することができ、立体造形物の製造をより短時間で行うことが可能となる。さらには、コア樹脂は上記比較的高い温度まで加熱されているため、レーザの照射によって樹脂粒子が溶融結合する温度まで加熱されても、コア樹脂の比容積はさほど変化せず、レーザ照射時の体積変化による樹脂粒子の変形も生じにくいと考えられる。
なお、本発明に係る粉末材料は、予備加熱中に粒子が変形および凝集しにくいため、予備加熱後の粒子の流動性が高く、より容易に薄膜を形成できる。また、本発明に係る粉末材料は、予備加熱中に粒子が変形および凝集しにくいため、レーザを照射されなかった粉末材料を再利用して立体造形物を製造しても、造形精度が低下しにくいと考えられる。
以下、本発明の代表的な実施形態を詳細に説明する。
1.粉末材料
本実施形態は、被覆粒子を含む粉末材料の薄層にレーザ光を選択的に照射して、前記被覆粒子が溶融結合してなる造形物層を形成し、前記造形物層を積層することによる立体造形物の製造に使用される粉末材料(以下、単に「粉末材料」ともいう。)に係る。上記粉末材料は、被覆粒子として、上記特徴を持つコアシェル構造を有する樹脂粒子を含む。上記粉末材料は、レーザ照射による溶融結合を妨げない範囲において、レーザ吸収剤およびフローエージェントを含む、上記コアシェル構造を有する樹脂粒子以外の材料をさらに含んでもよい。
1−1.コアシェル構造を有する樹脂粒子
本発明に係る粉末材料に含まれるコアシェル構造を有する樹脂粒子は、コア樹脂とコア樹脂の表面を覆うシェル樹脂とを含む。シェル樹脂を構成する材料のガラス転移温度(Tgs)は、コア樹脂を構成する材料が溶融する温度(Tmc)になる温度よりも高い。
なお、本明細書において、コアシェル構造とは、コア樹脂から基本的に構成されるコア粒子の表面のうちシェル樹脂によって被覆されている部分の面積の割合(以下、単に「被覆率」ともいう。)が90%以上であることを意味する。実用上は、多数の樹脂粒子の断面を透過電子顕微鏡(TEM)で撮像して得た画像中で、任意に選択した10個のコア粒子について、コア粒子の表面のうちシェル樹脂によって被覆されている部分の割合を実測し、それらの平均値が90%以上であれば、それらの樹脂粒子がコアシェル構造を有するものとみなす。
コア樹脂を構成する材料は、加熱によって軟化および溶融するものである限り、いかなる樹脂であってもよい。コア樹脂を構成する材料の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニルサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのポリエーテル、およびポリ乳酸などの結晶性ポリエステルを含む結晶性の樹脂、ならびにポリスチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレンコポリマ(ABS)、ポリカーボネート、エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA)、スチレン・アクリロニトリルコポリマー(SAN)、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテルおよびポリカプロラクトンを含む非結晶性の樹脂が含まれる。コア樹脂を構成する材料は、これらの複合樹脂であってもよい。
また、これらのうち、非結晶性の樹脂は、従来の方法では造形精度を高くすることが難しかったが、本実施形態のコアシェル構造を有する樹脂粒子によれば、造形精度をより高めることが可能となる。上記観点からは、コア樹脂の材料は非結晶性の樹脂であることが好ましい。
シェル樹脂を構成する材料は、造形時のレーザ光の照射による加熱により溶融して熱分解するものである限り、いかなる樹脂であってもよい。シェル樹脂を構成する材料の例には、アクリル樹脂、脂肪族ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ブチラール樹脂およびエチルセルロース、ならびにこれらの複合樹脂が含まれる。
加熱により溶融して熱分解するとは、コア樹脂が熱分解しないことを前提として、示差熱天秤(リガク社製、差動型示差熱天秤TG8120)を用いて、10mgの造形物サンプルを大気雰囲気下で常温から10℃/minの速度で300℃まで昇温したときの、加熱前の造形物サンプルの質量に対する加熱後の造形物サンプルの質量の比率(以下、単に「分解率」ともいう。)が90%以上であることを意味する。シェル樹脂を造形物中に残存しにくくし、かつ、残存したシェル樹脂による造形精度の低下を抑制する観点からは、シェル樹脂を構成する材料の分解率は95%以上であることが好ましい。本実施形態の被覆粒子を用いて造形を行うと、シェル樹脂が造形物に残存しにくくなり、造形物を構成する樹脂がコア樹脂の有する特性から離れたものになったり、造形物を構成する樹脂が不均一なものになったりすることが防止され、製造に用いようとする樹脂材料が本来有している特性が、製造される立体造形物において十分に発揮されやすい。
また、シェル樹脂でコア樹脂が被覆された被覆粒子を用いてシェル樹脂の熱分解のしやすさを見積もる場合は、示差熱天秤(リガク社製、差動型示差熱天秤TG8120)を用いて、10mgの被覆粒子を大気雰囲気下で常温から10℃/minの速度で300℃まで昇温したときの、加熱前の被覆粒子に含まれるシェル樹脂の質量に対する加熱後のシェル樹脂の質量の比率は、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。なお、被覆粒子のシェル樹脂の上記比率は、予め上記手順で昇温を行う前の造形物サンプルの質量(質量A)を測定しておき、さらに、上記手順で昇温を行った後の造形物サンプルから、シェル樹脂のみを溶解する溶媒で昇温後の造形物サンプルのシェル樹脂を溶解してその質量を定量することで、昇温によって減少したシェル樹脂の質量(質量B)とコア樹脂の質量(質量C)とを算出し、B/(A−C)によって算出することができる。
シェル樹脂を構成する材料のガラス転移温度(Tgs)は、コア樹脂を構成する材料が溶融する温度(Tmc)よりも高い。
上記コア樹脂を構成する材料が溶融する温度(Tmc)は、粉末床溶融結合法に用いる公知の装置で予備加熱を行うことによりコア樹脂を調温可能な範囲に含まれることが好ましい。上記観点からは、Tmcは50℃以上300℃以下であることが好ましく、70℃以上250℃以下であることがより好ましく、100℃以上200℃以下であることがさらに好ましく、100℃以上150℃以下であることがさらに好ましい。
また、上記シェル樹脂を構成する材料のガラス転移温度(以下、ガラス転移温度のことを単に「Tg」ともいい、シェル樹脂を構成する材料のTgを単に「Tgs」ともいう。)は、コア樹脂の選択の自由度を確保しつつ、レーザ光の照射によってシェル樹脂が溶融しやすくするような温度範囲にあることが好ましい。上記観点からは、Tgsは100℃以上350℃以下であることが好ましく、110℃以上250℃以下であることがより好ましく、120℃以上200℃以下であることがさらに好ましく、130℃以上150℃以下であることがさらに好ましい。このようなTgsを持つシェル樹脂を用いることにより、予備加熱時に粉末材料を待機温度に加熱しても、シェル樹脂がゴム状態になりにくく、シェル樹脂の変形による樹脂粒子の変形がより生じにくくなると考えられる。上記待機温度でのシェル樹脂の変形を生じにくくする観点からは、TgsとTmcとの差は、5℃以上50℃以下であることが好ましく、10℃以上50℃以下であることがさらに好ましい。
また、上記シェル樹脂を構成する材料が熱分解する温度(以下、単に「Ps」ともいう。)は、コア樹脂の選択の自由度を確保しつつ、レーザ光の照射によってシェル樹脂が熱分解しやすくするような温度範囲にあることが好ましい。上記観点からは、Psは150℃以上350℃以下であることが好ましく、180℃以上300℃以下であることがより好ましく、200℃以上270℃以下であることがさらに好ましく、230℃以上270℃以下であることがさらに好ましい。
コア樹脂を構成する材料およびシェル樹脂を構成する材料は、たとえばフーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)などで樹脂粒子を測定して、特定することができる。このとき、コア樹脂のみを溶解する溶媒に樹脂粒子を浸漬するなどしてコア樹脂とシェル樹脂とを分離して、分離したコア樹脂とシェル樹脂のそれぞれについて樹脂の特定を行うことが好ましい。TmcおよびTgsは、JIS K 7121に記載の入力補償示差走査熱量測定(DSC)によって求めることができるが、それぞれの材料について文献等で公知の温度としてもよい。Psは、たとえば、示差熱天秤を用いて、10mgのサンプルを常温から10℃/minの速度で300℃まで昇温したときの、サンプルの質量が減少しはじめた温度とすることができる。なお、樹脂粒子を顕微鏡等で観察しながら加熱して、コア樹脂が溶融し始める温度をTmcとしてもよい。
コアシェル構造を有する樹脂粒子は、その一態様を示す模式的な断面図である図1Aに示すように、シート状のシェル樹脂102がコア粒子101を被覆した樹脂粒子100としてもよいし、別の一態様を示す模式的な断面図である図1Bに示すように、粒子状のシェル樹脂102がコア粒子101を被覆した樹脂粒子100としてもよい。
コア樹脂の平均粒子径は、1μm以上200μm以下であることが好ましい。上記平均粒子径が1μm以上であると、粉末材料が十分な流動性を有するため、立体造形物を製造する際の粉末材料の取り扱いが容易になる。また、上記平均粒子径が1μm以上であると、コア樹脂の作製が容易であり、粉末材料の製造コストが高くならない。上記平均粒子径が200μm以下であると、より高精細な立体造形物を製造することが可能となる。上記観点からは、コア樹脂の平均粒子径は、2μm以上150μm以下であることがより好ましく、5μm以上100μm以下であることがさらに好ましく、5μm以上70μm以下であることがさらに好ましく、10μm以上60μm以下であることがさらに好ましい。本明細書においては、多数の樹脂粒子の断面をTEMで撮像して得た画像中で、ランダムに選択した10個の樹脂粒子についてコア樹脂の平均粒子径を実測し、それらの平均値をコア樹脂の平均粒子径とする。
シェル樹脂の平均厚みは、コア樹脂の平均粒子径よりも小さくすることが好ましく、コア樹脂の平均粒子径の半分以下とすることがより好ましい。具体的には、0.5μm以上50μm以下であることが好ましい。上記平均粒子径が0.5μm以上であると、予備加熱時に樹脂粒子間の凝集が生じることを抑制しやすくなる。また、上記平均粒子径が50μm以下であると、シェル樹脂が熱分解して消失して造形物に反り等の変形が生じることを抑制しやすくなる。シェル樹脂の平均厚みは、0.5μm以上10μm以下であることがより好ましく、1.0μm以上5.0μm以下であることがさらに好ましい。本明細書においては、多数の樹脂粒子の断面をTEMで撮像して得た画像中で、ランダムに選択した10個の樹脂粒子について、シェル樹脂の厚みを10点実測し、それらの平均値をシェル樹脂の平均厚みとする。
コア樹脂およびシェル樹脂の量は、上記コアシェル構造の樹脂粒子が形成される量であればよい。たとえば、コア樹脂100質量部に対するシェル樹脂の量は、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上15質量部以下であることがさらに好ましく、1質量部以上15質量部以下であることがさらに好ましく、1質量部以上10質量部以下であることがさらに好ましい。
1−2.その他の材料
粉末材料は、立体造形物が許容される特性を有する限りにおいて、レーザ吸収剤およびフローエージェントを含む、上記樹脂粒子以外の材料を含んでもよい。
1−2−1.レーザ吸収剤
レーザの光エネルギーをより効率的に熱エネルギーに変換する観点から、粉末材料は、レーザ吸収剤をさらに含んでもよい。レーザ吸収体は、使用する波長のレーザを吸収して熱を発する材料であればよい。このようなレーザ吸収体の例には、カーボン粉末、ナイロン樹脂粉末、顔料および染料が含まれる。これらのレーザ吸収体は、一種類のみ用いても、二種類を組み合わせて用いてもよい。
レーザ吸収体の量は、コアシェル構造を有する樹脂粒子の溶融結合が容易になる範囲で適宜設定することができ、たとえば、粉末材料の全質量に対して、0質量%より多く3質量%未満とすることができる。
1−2−2.フローエージェント
粉末材料の流動性を向上させ、立体造形物の製造時における粉末材料の取り扱いを容易にする観点から、粉末材料は、フローエージェントをさらに含んでもよい。フローエージェントは、摩擦係数が小さく、自己潤滑性を有する材料であればよい。このようなフローエージェントの例には、二酸化ケイ素および窒化ホウ素が含まれる。これらのフローエージェントは、一種類のみ用いても、二種類を組み合わせて用いてもよい。
フローエージェントの量は、粉末材料の流動性が向上し、かつ、コアシェル構造を有する樹脂粒子の溶融結合が十分に生じる範囲で適宜設定することができ、たとえば、粉末材料の全質量に対して、0質量%より多く2質量%未満とすることができる。
2.粉末材料の製造方法
本実施形態は、前記粉末材料の製造方法に係る。コアシェル構造を有する樹脂粒子は、そのまま前記粉末材料として用いることができる。粉末材料が前記その他の材料を含む場合、粉末状にした前記その他の材料とコアシェル構造を有する樹脂粒子とを撹拌混合して粉末材料を得ることができる。
2−1.コアシェル構造を有する樹脂粒子の製造方法
コアシェル構造を有する樹脂粒子は、樹脂材料からコアシェル構造を有する粒子を製造するための公知の方法を利用して製造することができる。
上記方法の例には、シェル樹脂を溶解した塗布液を用いる湿式コート法、およびコア樹脂とシェル樹脂とを撹拌混合して機械的衝撃により結合させる乾式コート法、ならびにこれらの組み合わせなどによって行うことができる。湿式コート法を採用する場合、コア樹脂の表面に上記塗布液をスプレー塗布してもよいし、コア樹脂を上記塗布液の中に浸漬してもよい。湿式コート法によれば、図1Aに示すような、シート状のシェル樹脂がコア粒子を被覆した樹脂粒子が得られる。乾式コート法によれば、図1Bに示すような、粒子状のシェル樹脂がコア粒子を被覆した樹脂粒子が得られる。湿式コート法は、均一な厚みのシェル層を形成しやすく、乾式コート法は乾燥工程が不要で製造工程を簡素化できる。
コア樹脂およびシェル樹脂は、シェル樹脂を構成する材料のガラス転移温度(Tgs)がコア樹脂を構成する材料が溶融する温度(Tmc)よりも高くなるように選択される。コア樹脂およびシェル樹脂は、市販のものを用いてもよいし、いずれか一方または双方の樹脂を、適当なモノマーやプレポリマーなどから合成してもよい。
3.立体造形物の製造方法
本実施形態は、前記粉末材料を用いた、立体造形物の製造方法に係る。本実施形態に係る方法は、前記粉末材料を用いるほかは、通常の粉末床溶融結合法と同様に行い得る。具体的には、本実施形態に係る方法は、(1)前記粉末材料の薄層を形成する工程と、(2)形成された粉末材料の薄層を予備加熱する工程と、(3)予備加熱された薄層にレーザ光を選択的に照射して、前記粉末材料に含まれるコアシェル構造を有する樹脂粒子が溶融結合してなる造形物層を形成する工程と、(4)工程(1)〜工程(3)をこの順に複数回繰り返し、前記造形物層を積層する工程、とを含む。工程(3)により、立体造形物を構成する造形物層のひとつが形成され、さらに工程(4)で工程(1)〜工程(3)を繰り返し行うことで、立体造形物の次の層が積層されていき、最終的な立体造形物が製造される。
3−1.粉末材料からなる薄層を形成する工程(工程(1))
本工程では、前記粉末材料の薄層を形成する。 たとえば、粉末供給部から供給された前記粉末材料を、リコータによって造形ステージ上に平らに敷き詰める。薄層は、造形ステージ上に直接形成してもよいし、すでに敷き詰められている粉末材料またはすでに形成されている造形物層の上に接するように形成してもよい。
薄層の厚さは、造形物層の厚さと同じとする。薄層の厚さは、製造しようとする立体造形物の精度に応じて任意に設定することができるが、通常、0.01mm以上0.30mm以下である。薄層の厚さを0.01mm以上とすることで、次の層を形成するためのレーザ照射によって下の層の樹脂粒子が溶融結合されることを防ぐことができる。薄層の厚さを0.30mm以下とすることで、レーザのエネルギーを薄層の下部まで伝導させて、薄層を構成する粉末材料に含まれる樹脂粒子を、厚み方向の全体にわたって十分に溶融結合させることができる。前記観点からは、薄層の厚さは0.01mm以上0.10mm以下であることがより好ましい。また、薄層の厚み方向の全体にわたってより十分に樹脂粒子を溶融結合させ、積層間の割れをより生じにくくする観点からは、薄層の厚さは、後述するレーザのビームスポット径との差が0.10mm以内になるよう設定することが好ましい。
3−2.形成された粉末材料の薄層を予備加熱する工程(工程(2))
本工程では、前記形成された粉末材料の薄層を予備加熱する。予備加熱の温度は任意に設定できるが、レーザの照射による温度変化に伴う樹脂の比容積変化率を低くして、造形精度の低下を抑制する観点からは、予備加熱された上記の表面の温度と、コア樹脂を構成する材料が溶融する温度(Tmc)と、の温度差が5℃以上25℃以下となる温度に加熱することが好ましい。
3−3.コアシェル構造を有する樹脂粒子が溶融結合してなる造形物層を形成する工程(工程(3))
本工程では、予備加熱された薄層のうち、造形物層を形成すべき位置にレーザを選択的に照射し、照射された位置の樹脂粒子を溶融結合させる。溶融結合した樹脂粒子は、隣接する粉末と溶融し合って溶融結合体を形成し、造形物層となる。このとき、レーザのエネルギーを受け取った樹脂粒子は、すでに形成された層の樹脂とも溶融結合するため、隣り合う層間の接着も生じる。
レーザの出力条件は、シェル樹脂がその溶融温度以上に加熱されるように設定すればよく、シェル樹脂が分解してその質量が減少し始める温度(熱分解温度)以上に加熱されるように設定することが好ましい。
レーザの波長は、シェル樹脂を構成する材料が吸収する範囲内で設定すればよい。このとき、レーザの波長と、シェル樹脂を構成する材料の吸収率が最も高くなる波長との差が小さくなるようにすることが好ましいが、樹脂は様々な波長域の光を吸収し得るので、COレーザ等の波長帯域の広いレーザを用いることが好ましい。たとえば、レーザの波長は、0.8μm以上12μm以下であることが好ましい。
レーザの出力時のパワーは、後述するレーザの走査速度において、前記シェル樹脂を構成する材料が十分に溶融結合する範囲内で設定すればよい。具体的には、5.0W以上60W以下とすることができる。レーザのエネルギーを低くして、製造コストを低くし、かつ、製造装置の構成を簡易なものにする観点からは、レーザの出力時のパワーは30W以下であることが好ましく、20W以下であることがより好ましい。
レーザの走査速度は、製造コストを高めず、かつ、装置構成を過剰に複雑にしない範囲内で設定すればよい。具体的には、1mm/秒以上100mm/秒以下とすることが好ましく、1mm/秒以上80mm/秒以下とすることがより好ましく、2mm/秒以上80mm/秒以下とすることがさらに好ましく、3mm/秒以上80mm/秒以下とすることがさらに好ましく、3mm/秒以上50mm/秒以下とすることがさらに好ましい。
レーザのビーム径は、製造しようとする立体造形物の精度に応じて適宜設定することができる。
3−4.その他
溶融結合中の樹脂粒子の酸化等による、立体造形物の強度の低下を防ぐ観点からは、少なくとも工程(3)は減圧下または不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。減圧するときの圧力は10−2Pa以下であることが好ましく、10−3Pa以下であることがより好ましい。本実施形態で使用することができる不活性ガスの例には、窒素ガスおよび希ガスが含まれる。これらの不活性ガスのうち、入手の容易さの観点からは、窒素(N)ガス、ヘリウム(He)ガスまたはアルゴン(Ar)ガスが好ましい。製造工程を簡略化する観点からは、工程(1)〜工程(3)のすべてを減圧下または不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
4.立体造形装置
本実施形態は、前記粉末材料を用いて、立体造形物を製造する装置に係る。本実施形態に係る装置は、前記粉末材料を用いるほかは、粉末床溶融結合法による立体造形物の製造を行う公知の装置と同様の構成とし得る。具体的には、本実施形態に係る立体造形装置200は、その構成を概略的に示す側面図である図2に記載のように、開口内に位置する造形ステージ210、コアシェル構造を有する樹脂粒子を含む粉末材料の薄膜を前記造形ステージ上に形成する薄膜形成部220、前記造形ステージ上に形成される薄膜を予備加熱する予備加熱部230、薄膜にレーザを照射して、前記樹脂粒子が溶融結合してなる造形物層を形成するレーザ照射部240、鉛直方向の位置を可変に造形ステージ210を支持するステージ支持部250、および上記各部を支持するベース290を備える。
立体造形装置200は、その制御系の主要部を示す図3に記載のように、薄膜形成部220、予備加熱部230、レーザ照射部240、およびステージ支持部250を制御して、前記造形物層を繰り返し形成させて積層させる制御部260、各種情報を表示するための表示部270、ユーザーからの指示を受け付けるためのポインティングデバイス等を含む操作部275、制御部260の実行する制御プログラムを含む各種の情報を記憶する記憶部280、ならびに外部機器との間で立体造形データ等の各種情報を送受信するためのインターフェース等を含むデータ入力部285を備えてもよい。また、立体造形装置は、造形ステージ210上に形成された薄層の表面のうち、造形物層を形成すべき領域の温度を測定する温度測定器235を備えてもよい。立体造形装置200には、立体造形用のデータを生成するためのコンピュータ装置300が接続されてもよい。
造形ステージ210には、薄膜形成部220による薄層の形成、予備加熱部230による薄層の予備加熱およびレーザ照射部240によるレーザの照射によって造形物層が形成され、この造形物層が積層されることにより、立体造形物が造形される。
薄膜形成部220は、たとえば、造形ステージ210が昇降する開口の縁部と、水平方向にほぼ同一平面上にその縁部がある開口、開口から鉛直方向下方に延在する粉末材料収納部、および粉末材料収納部の底部に設けられ開口内を昇降する供給ピストンを備える粉末供給部221、ならびに供給された粉末材料を造形ステージ210上に平らに敷き詰めて、粉末材料の薄層を形成するリコータ222aを備えた構成とすることができる。
なお、粉末供給部221は、造形ステージ210に対して鉛直方向上方に設けられた粉末材料収納部、およびノズルを備えて、前記造形ステージと水平方向に同一の平面上に、粉末材料を吐出する構成としてもよい。
予備加熱部230は、薄層の表面のうち、造形物層を形成すべき領域を加熱し、その温度を維持できるものであればよい。たとえば、予備加熱部230は、造形ステージ210上に形成された薄層の表面を加熱可能な第1のヒータ231を備えた構成としてもよいし、造形ステージ上に供給される前の粉末材料を加熱する第2のヒータ232をさらに備えた構成としてもよい。また、予備加熱部230は、上記造形物層を形成すべき領域を選択的に加熱する構成であってもよいし、装置内の全体を予め加熱しておいて、上記形成された薄膜の表面を所定の温度に調温する構成であってもよい。
温度測定器235は、上記造形物層を形成すべき領域の表面温度を非接触で測定できるものであればよく、たとえば、赤外線センサまたは光高温計とすることができる。
レーザ照射部240は、レーザ光源241およびガルバノミラー242aを含む。レーザ照射部240は、レーザを透過させるレーザ窓243およびレーザの焦点距離を薄層の表面にあわせるためのレンズ(不図示)を備えていてもよい。レーザ光源241は、前記波長のレーザを、前記出力で出射する光源であればよい。レーザ光源241の例には、YAGレーザ光源、ファイバレーザ光源およびCOレーザ光源が含まれる。ガルバノミラー242aは、レーザ光源241から出射したレーザを反射してレーザをX方向に走査するXミラーおよびY方向に走査するYミラーから構成されてもよい。レーザ窓243は、レーザを透過させる材料からなるものであればよい。
ステージ支持部250は、造形ステージ210を、その鉛直方向の位置を可変に支持する。すなわち、造形ステージ210は、ステージ支持部250によって鉛直方向に精密に移動可能に構成されている。ステージ支持部250としては、種々の構成を採用できるが、例えば、造形ステージ210を保持する保持部材と、この保持部材を鉛直方向に案内するガイド部材と、ガイド部材に設けられたねじ孔に係合するボールねじ等で構成することができる。
制御部260は、中央処理装置等のハードウェアプロセッサを含んでおり、立体造形物の造形動作中、立体造形装置200全体の動作を制御する。
また、制御部260は、たとえばデータ入力部285がコンピュータ装置300から取得した立体造形データを、造形物層の積層方向について薄く切った複数のスライスデータに変換するよう構成されてもよい。スライスデータは、立体造形物を造形するための各造形物層の造形データである。スライスデータの厚み、すなわち造形物層の厚みは、造形物層の一層分の厚さに応じた距離(積層ピッチ)と一致する。
表示部270は、たとえば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等で構成することができる。
操作部275は、たとえばキーボードやマウスなどのポインティングデバイスを含むものとすることができ、テンキー、実行キー、スタートキー等の各種操作キーを備えてもよい。
記憶部280は、たとえばROM、RAM、磁気ディスク、HDD、SSD等の各種の記憶媒体を含むものとすることができる。
立体造形装置200は、制御部260の制御を受けて、装置内を減圧する、減圧ポンプなどの減圧部(不図示)、または、制御部260の制御を受けて、不活性ガスを装置内に供給する、不活性ガス供給部(不図示)を備えていてもよい。
4−1.立体造形装置200を用いた立体造形
制御部260は、データ入力部285がコンピュータ装置300から取得した立体造形データを、造形物層の積層方向について薄く切った複数のスライスデータに変換する。その後、制御部260は、立体造形装置200における以下の動作の制御を行う。
粉末供給部221は、制御部260から出力された供給情報に従って、モーターおよび駆動機構(いずれも不図示)を駆動し、供給ピストンを鉛直方向上方(図2中矢印方向)に移動させ、前記造形ステージと水平方向同一平面上に、粉末材料を押し出す。
その後、リコータ駆動部222は、制御部260から出力された薄膜形成情報に従って水平方向(図2中矢印方向)にリコータ222aを移動して、粉末材料を造形ステージ210に運搬し、かつ、薄層の厚さが造形物層の1層分の厚さとなるように粉末材料を押圧する。
予備加熱部230は、制御部260から出力された温度情報に従って形成された薄層の表面または装置内の全体を加熱する。上記温度情報は、たとえば、データ入力部285から入力されたコア樹脂を構成する材料が溶融する温度(Tmc)のデータに基づいて制御部260が記憶部280から引き出した、上記温度との差が5℃以上50℃以下となる温度に薄層の表面を加熱するための情報とすることができる。予備加熱部230は、薄層が形成された後に加熱を開始してもよいし、薄層が形成される前から形成されるべき薄層の表面に該当する箇所または装置内の加熱を行っていてもよい。
その後、レーザ照射部240は、制御部260から出力されたレーザ照射情報に従って、薄膜上の、各スライスデータにおける立体造形物を構成する領域に適合して、レーザ光源241からレーザを出射し、ガルバノミラー駆動部242によりガルバノミラー242aを駆動してレーザを走査する。レーザの照射によって粉末材料に含まれる樹脂粒子が溶融結合し、造形物層が形成される。
その後、ステージ支持部250は、制御部260から出力された位置制御情報に従って、モーターおよび駆動機構(いずれも不図示)を駆動し、造形ステージ210を、積層ピッチだけ鉛直方向下方(図2中矢印方向)に移動する。
表示部270は、必要に応じて、制御部260の制御を受けて、ユーザーに認識させるべき各種の情報やメッセージを表示する。操作部275は、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、その入力操作に応じた操作信号を制御部260に出力する。たとえば、形成される仮想の立体造形物を表示部270に表示して所望の形状が形成されるか否かを確認し、所望の形状が形成されない場合は、操作部275から修正を加えてもよい。
制御部260は、必要に応じて、記憶部280へのデータの格納または記憶部280からのデータの引き出しを行う。
また、制御部260は、薄層の表面のうち、造形物層を形成すべき領域の温度の情報を温度測定器235から受け取り、前記造形物層を形成すべき領域の温度と、前記コア樹脂を構成する材料が溶融する温度(Tmc)と、の温度差が5℃以上50℃以下、好ましくは5℃以上25℃以下になるように、予備加熱部230による加熱を制御してもよい。
これらの動作を繰り返すことで、造形物層が積層され、立体造形物が製造される。
以下において、本発明の具体的な実施例を説明する。これらの実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。なお、実施例において「部」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」を表す。
1.粉末材料の作製
コア樹脂の材料として、それぞれ粒子状の、ポリプロピレン(サンアロマー株式会社製、PM970W、以下、単に「PP」あるいは「PP粒子」ともいう。)、ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製、F022NH、以下、単に「PE」あるいは「PE粒子」ともいう。)、および結晶性ポリエステル(東洋紡株式会社製、GA−5310、以下、単に「PEs」あるいは「PEs粒子」ともいう。)を用いた。
PP粒子の平均粒子径は50μmであり、溶融温度は125℃であった。PE粒子の平均粒子径は50μmであり、溶融温度は110℃であった。PEs粒子の平均粒子径は50μmであり、溶融温度は110℃であった。
なお、上記平均粒子径は、それぞれの材料の断面をTEMで撮像して得た画像中で、ランダムに選択した10個の粒子について実測した平均粒子径の平均値である。ただし、上記算出された平均粒子径が表1に記載の数値よりも大きいときは、レーザ回折式粒度分布測定装置(シンパティック(SYMPATEC)社製、ヘロス(HELOS))で測定した平均粒子径が表1に記載の値になるまで、機械的粉砕法で樹脂微粒子を粉砕した。上記溶融温度は、パーキンエルマー社製、DiamondDSCを用いて昇温速度10分/℃で0℃から200℃までそれぞれの材料を昇温して示差走査熱量分析を行ったときの、吸熱ピークのピークトップ温度である。
シェル樹脂の材料として、アクリル樹脂(綜研化学株式会社製、SPB−TE1、以下、単に「PA1」ともいう。)、アクリル樹脂(重量平均分子量が100,000以上のポリアクリルアミド(ポリサイエンス社製、02806−250)、以下、単に「PA2」ともいう。)、下記手順で合成したアクリル樹脂(重量平均分子量が約100,000のポリフェニルメタクリレート(以下、単に「PA3」ともいう。)、エチルセルロース(ダウ・ケミカル・カンパニー製、ETHOCEL STD 4、「ETHOCEL」は同社の登録商標、以下、単に「EC」ともいう。)、ポリフェニレンエーテル(旭化成株式会社製、XYRON S201A、以下、単に「PPE」ともいう。)を用いた。
PA3は、以下の手順で作製した。単量体であるメタクリル酸フェニル(和光純薬工業株式会社製)に、重合開始剤としてラウリルパーオキサイドを単量体成分の総和に対して0.2部と、連鎖移動剤として1−ドデシルメルカプタンを単量体成分の総和に対して0.3部とを添加し、これらを溶解させて溶解液を得た。一方、イオン交換水100部に対し懸濁安定剤としてポリアクリル酸ナトリウムを0.05部、無水第一リン酸ナトリウムを0.24部ならびに第二リン酸ナトリウム7水和物を0.28部溶解させ懸濁重合水相を得た。上記単量体成分100部に対し上記水相が150部となるように、上記溶解液に上記水相を添加した。得られたスラリー状の反応液を脱水機により脱水、洗浄したのち、乾燥し、ビーズ状の樹脂を得て、PA3とした。
PA1のTgは140℃であり、熱分解温度は265℃であり、分解率は99%であり、平均粒子径は50μmであった。PA2のTgは165℃であり、熱分解温度は227℃であり、分解率は99%であった。PA3のTgは110℃であり、熱分解温度は240℃であり、分解率は99%であった。ECのTgは135℃であり、熱分解温度は200℃であり、分解率は90%であった。PPEのTgは220℃であり、加熱しても殆ど分解せず、分解率は10%未満であった。
なお、上記平均粒子径は、それぞれの材料の断面をTEMで撮像して得た画像中で、ランダムに選択した10個の粒子について実測した平均粒子径の平均値である。ただし、上記算出された平均粒子径が表1に記載の数値よりも大きいときは、レーザ回折式粒度分布測定装置(シンパティック(SYMPATEC)社製、ヘロス(HELOS))で測定した平均粒子径が表1に記載の値になるまで、機械的粉砕法で樹脂微粒子を粉砕した。上記Tgは、パーキンエルマー社製、DiamondDSCを用いて昇温速度10分/℃で0℃から200℃までそれぞれの材料を昇温して示差走査熱量分析(DSC)を行ったときの、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度である。上記溶融温度は、上記DSCにおける吸熱ピークのピークトップ温度である。上記熱分解温度は、示差熱天秤(リガク社製、差動型示差熱天秤TG8120)を用いて、10mgのサンプルを常温から10℃/minの速度で300℃まで昇温したときの、サンプルの質量が減少しはじめた温度である。上記分解率は、上記示差熱天秤による測定における、加熱前のサンプルの質量に対する加熱後のサンプルの質量の比率である。
1−1.粉末材料1
気中懸濁被覆装置(パウレック株式会社製、MP−01)を用いて、20部のトルエンに1部のPA1を溶解させた溶液を、10部のPP粒子に263分間噴霧して、粉末材料1を得た。
1−2.粉末材料2
PA1に代えてPA2を用いた以外は粉末材料1と同じ手順で粉末材料2を得た。
1−3.粉末材料3
PA1に代えてPA3を用いた以外は粉末材料1と同じ手順で粉末材料3を得た。
1−4.粉末材料4
PA1に代えてECを用いた以外は粉末材料1と同じ手順で粉末材料4を得た。
1−5.粉末材料5
100部のPP粒子および5部のPA1を混合し、ハイブリダイザー(奈良機械製作所製、ハイブリダイゼーションシステム(NHS))に投入して回転数16000rpmで10分間撹拌して、粉末材料5を得た。
1−6.粉末材料6
気中懸濁被覆装置(パウレック株式会社製、MP−01)を用いて、20部のトルエンに1部のPA1を溶解させた溶液を、10部のPE粒子に263分間噴霧して、粉末材料6を得た。
1−7.粉末材料7
気中懸濁被覆装置(パウレック株式会社製、MP−01)を用いて、20部のトルエンに1部のPA1を溶解させた溶液を、10部のPEs粒子に263分間噴霧して、粉末材料7を得た。
1−8.粉末材料8
PP粒子をそのまま用いて、粉末材料8とした。
1−9.粉末材料9
気中懸濁被覆装置(パウレック株式会社製、MP−01)を用いて、20部のトルエンに1部のPPEを溶解させた溶液を、10部のPP粒子に263分間噴霧して、粉末材料9を得た。
2.粉末材料の測定
2−1.平均粒子径の測定
レーザ回折式粒度分布測定装置(シンパティック(SYMPATEC)社製、ヘロス(HELOS))で、各粉末材料の平均粒子径を測定した。
2−2.コアシェル構造の判定
樹脂粒子を光硬化性樹脂(日本電子株式会社製、D−800)に分散させた後、光硬化させ、ブロックを形成した。ダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用い、上記ブロックから厚さ100〜200nmの薄片状のサンプルを切り出し、透過電子顕微鏡観察用の支持膜付きグリッドに載せた。上記グリッドを走査型透過電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM−7401F)に設置して、以下の条件で明視野像を撮像した。
(撮像条件)
加速電圧 :30kV
倍率 :10000倍
各粉末材料について、多数の樹脂粒子の断面をTEMで撮像し、得られた画像の中からランダムに選択した10個の樹脂粒子のコア樹脂とシェル樹脂の界面を確認し、各樹脂粒子のシェル樹脂の厚みを実測し、それらの平均を求めてシェル樹脂の平均厚みとした。また、コア樹脂の表面のうちシェル樹脂に被覆されている部分の割合を実測し、それらの平均を求めて、各粉末材料の被覆率とした。被覆率が90%以上であるとき、その粉末材料はコアシェル構造を有する粒子からなると判定した。
表1に、粉末材料1〜9の作製に用いた材料、それぞれの粉末材料の平均粒子径、上記コアシェル構造の判定結果、および上記耐熱性の判定結果を示す。なお、表1中、「粒径」の欄には、それぞれコア樹脂、シェル樹脂および粉末材料の平均粒子径を示す。また、表1中、「コアシェル」の欄には、粉末材料がコアシェル構造を有する粒子からなると判定されたときに「○」、判定されなかったときに「×」と記載している。
Figure 0006806088
3.粉末材料の評価
各粉末材料を1g斤量して敷き詰めた直径5cmのアルミホイル皿を、ホットプレート(アズワン株式会社製、ND−02)の上に置き、コア樹脂が溶融する温度との差が5℃となる温度(表2に記載の温度)に加熱した。加熱開始から30分後に、アルミホイル皿上の各粉末材料を構成する被覆粒子のうち、任意に選択した10個の被覆粒子が溶融して変形または凝集しているかを、目視で確認した。について、溶融または凝集している樹脂が認められなかった場合に、耐熱性が良好であると判定した。
上記目視による確認の結果に基づいて、被覆粒子の耐熱性を以下の基準により評価した。
○ 変形または凝集している被覆粒子はなかった
× 変形または凝集している被覆粒子があった
4.造形物の製造
粉末材料1〜粉末材料9を大型の電気炉内に設置した造形ステージ上に敷き詰めて厚さ0.1mmの薄層を形成し、電気炉の温度を調整することで、表2に記載の予備加熱温度にそれぞれの薄層の表面を加熱した。この薄層に、以下の条件で、YAG波長用ガルバノメータスキャナを搭載した50Wファイバレーザ(SPI Lasers社製)から縦15mm×横20mmの範囲にレーザを照射して、造形物層を作製した。上記工程を10回繰り返し、10層からなる積層された造形物1〜9をそれぞれ製造した。
[レーザの出射条件]
レーザ出力 :20W
レーザの波長 :1.07μm
ビーム径 :薄層表面で170μm
[レーザの走査条件]
走査速度 :3.0mm/sec
走査間隔 :0.2mm
[周囲雰囲気]
温度 :常温
ガス :アルゴン(Ar) 100%
5.造形物の評価
5−1.造形精度の評価
造形物1〜造形物9のそれぞれについて、デジタルノギス(株式会社ミツトヨ製、スーパキャリパCD67−S PS/PM、「スーパキャリパ」は同社の登録商標)で縦方向および横方向の寸法を測定した。製造しようとした寸法(縦15mm×横20mm)と測定された縦横の寸法との差を平均して、造形精度のずれとした。造形精度のずれが0.2mm以内であるとき、造形精度が良好であると判定した。
上記造形精度のずれに基づいて、造形物の造形精度を以下の基準により評価した。
○ 造形精度のずれは0.2mm以内であった
△ 造形精度のずれは0.2mmより大きく0.5mm以内であった
× 造形精度のずれは0.5mmより大きかった
5−2.シェル樹脂の分解性の評価
それぞれのコア樹脂を10mg斤量して示差熱天秤(株式会社リガク社製、TG8120)に設置し、毎分10℃の割合で10℃から300℃まで加熱したときの質量の減少分を測定して、コア樹脂を加熱したときの質量減少量(Wd)とした。同様に、10mg斤量した粉末材料1〜9および10mgとなるように削り取った造形物1〜9一部を、毎分10℃の割合で10℃から300℃まで加熱したときの質量の減少分を測定して、それぞれ、粉末材料を加熱したときの質量減少量(Pd)および造形物を加熱したときの質量減少量(Md)とした。
上記PdからWdを減算して、粉末材料を加熱したときのシェル樹脂の質量減少量(PSd)を求めた。上記MdからWdを減算して、造形物を加熱したときのシェル樹脂の質量減少量(MSd)を求めた。MSdをPSdで除算して得られた値を、造形物を製造する際のシェル樹脂の減少による、シェル樹脂の質量減少量の変化率(Sdc)とみなした。1からSdcを減算して得られた値を、造形物を製造する際のシェル樹脂の減少率(%)として、この値をシェル樹脂の消失率とした。
上記シェル樹脂の消失率に基づいて、シェル樹脂の分解性を以下の基準により評価した。
◎: シェル樹脂の消失率は90%以上であった
○: シェル樹脂の消失率は80%以上90%未満であった
△: シェル樹脂の消失率は70%以上80%未満であった
×: シェル樹脂の消失率は70%未満であった
表2に、粉末材料1〜9の耐熱性の評価、ならびに造形物1〜9の造形精度およびシェル樹脂の分解性の評価結果を示す。
Figure 0006806088
粉末材料がコア樹脂とコア樹脂を被覆するシェル樹脂とを含み、シェル樹脂を構成する材料のガラス転移温度(Tgs)が、コア樹脂を構成する材料が溶融する温度(Tmc)よりも高く、シェル樹脂を構成する材料が加熱により溶融して熱分解する材料である粉末材料(粉末材料1、2、4〜7)によって造形物を作製すると、造形精度が高く、かつ、シェル樹脂が造形物に残存しにくかった。
また、粉末材料1、2、4〜7では、耐熱性が高いことが確認された温度よりも低い温度に予備加熱したため、予備加熱温度でも粒子の変形または凝集は生じなかった。
また、シェル樹脂を構成する材料の分解率が95%以上である粉末材料(粉末材料1、2、5〜7)によって造形物を作製すると、造形精度が高くなりやすく、かつ、シェル樹脂が造形物に残存しにくかった。
また、コア樹脂を構成する材料が溶融する温度(Tmc)と、予備加熱温度と、の差を5℃以上25℃以下として作製した造形物1、2、5、6では、造形精度がより高かった。
一方で、シェル樹脂を構成する材料のガラス転移温度(Tgs)が、コア樹脂を構成する材料が溶融する温度(Tmc)よりも低い粉末材料(粉末材料3)、では、コア樹脂が溶融しないように予備加熱温度を設定しても、粒子の変形または凝集が生じてしまい、造形精度はより低かった。
また、コアシェル構造を有しない粒子からなる粉末材料(粉末材料8)では、粒子が加熱により変形または凝集しやすく、造形精度はより低かった。
また、コアシェル構造を有するが、シェル樹脂が溶融しても熱分解しない粒子からなる粉末材料(粉末材料9)では、造形物にシェル樹脂の残渣が多く残っており、また、そのため造形精度がより低かった。
本出願は、2016年1月5日出願の日本国出願番号2016−000593号に基づく優先権を主張する出願であり、当該出願の明細書および図面に記載された内容は本出願に援用される。
本発明に係る方法および装置によれば、粉末床溶融結合法によってより精度の高い造形が可能となる。そのため、本発明は、粉末床溶融結合法のさらなる普及に寄与するものと思われる。
100 樹脂粒子
101 コア粒子
102 シェル樹脂
200 立体造形装置
210 造形ステージ
220 薄膜形成部
221 粉末供給部
222 リコータ駆動部
222a リコータ
230 予備加熱部
231 第1のヒータ
232 第2のヒータ
235 温度測定器
240 レーザ照射部
241 レーザ光源
242 ガルバノミラー駆動部
242a ガルバノミラー
243 レーザ窓
250 ステージ支持部
260 制御部
270 表示部
275 操作部
280 記憶部
285 データ入力部
290 ベース
300 コンピュータ装置

Claims (10)

  1. 複数の粒子を含む粉末材料の薄層にレーザ光を選択的に照射して、前記粒子が溶融結合してなる造形物層を形成し、前記造形物層を積層することによる立体造形物の製造に使用される粉末材料であって、
    前記粒子は、コア樹脂と、コア樹脂を被覆するシェル樹脂とを有する被覆粒子を含み、
    前記シェル樹脂を構成する材料のガラス転移温度(Tgs)は、前記コア樹脂を構成する材料が溶融する温度(Tmc)よりも高く、
    前記シェル樹脂を構成する材料は、前記レーザ光の照射による加熱により溶融して熱分解する材料である、粉末材料。
  2. 前記コア樹脂を構成する材料が溶融する温度(Tmc)は、50℃以上300℃以下である、請求項1に記載の粉末材料。
  3. 前記シェル樹脂を構成する材料のガラス転移温度(Tgs)は、100℃以上350℃以下である、請求項1または2に記載の粉末材料。
  4. 前記シェル樹脂を構成する材料のガラス転移温度(Tgs)は、前記コア樹脂を構成する材料が溶融する温度(Tmc)よりも5℃以上50℃以下高い、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉末材料。
  5. 前記コア樹脂の平均粒子径は、1μm以上200μm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉末材料。
  6. 前記被覆粒子が含有する前記シェル樹脂の量は、前記コア樹脂100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の粉末材料。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の粉末材料の薄層を形成する工程と、
    前記形成された粉末材料の薄層を予備加熱する工程と、
    前記予備加熱された薄層にレーザ光を選択的に照射して、前記粉末材料に含まれる被覆粒子が溶融結合してなる造形物層を形成する工程と、
    前記薄層を形成する工程と、前記予備加熱する工程と、前記造形物層を形成する工程と、をこの順に複数回繰り返し、前記造形物層を積層する工程と、
    を含む立体造形物の製造方法。
  8. 前記予備加熱する工程において、前記薄層は、前記薄層の表面の温度と、前記コア樹脂を構成する材料が溶融する温度(Tmc)と、の差が5℃以上25℃以下となる温度に加熱される、請求項7に記載の立体造形物の製造方法。
  9. 造形ステージと、
    請求項1〜6のいずれか1項に記載の粉末材料の薄層を前記造形ステージ上に形成する薄層形成部と、
    前記形成された粉末材料の薄層を予備加熱する予備加熱部と、
    前記薄層にレーザを照射して、前記被覆粒子が溶融結合してなる造形物層を形成するレーザ照射部と、
    前記造形ステージを、その鉛直方向の位置を可変に支持するステージ支持部と、
    前記薄層形成部、前記予備加熱部、前記レーザ照射部および前記ステージ支持部を制御して、前記造形物層を繰り返し形成させて積層させる制御部と、
    を備える、立体造形装置。
  10. 前記形成された粉末材料の薄層の表面温度を測定する温度測定器をさらに備え、
    前記制御部は、前記薄層の表面のうち、造形物層を形成すべき領域の温度の情報を前記温度測定器から受け取り、前記造形物層を形成すべき領域の前記薄層表面の温度と、前記コア樹脂を構成する材料が溶融する温度(Tmc)と、との、温度差が5℃以上25℃以下となる温度に、前記予備加熱部による加熱を制御する、請求項9に記載の立体造形装置。
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