JP2018199283A - 立体造形物の製造方法、それに用いる粉末材料、および結合用流体 - Google Patents

立体造形物の製造方法、それに用いる粉末材料、および結合用流体 Download PDF

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Abstract

【課題】得られる寸法精度が高い立体造形物を製造する方法、これに用いる粉末材料、および結合用流体を提供する。【解決手段】立体造形物の製造方法は、熱可塑性樹脂を含む粉末材料を含む薄層を形成する薄層形成工程と、エネルギー吸収剤を含む結合用流体、および前記結合用流体の拡散を抑制するための剥離用流体を、前記薄層の互いに隣接する領域に塗布する流体塗布工程と、前記流体塗布工程後の前記薄層にエネルギーを照射し、前記結合用流体を塗布した領域の前記熱可塑性樹脂を溶融させて造形物層を形成するエネルギー照射工程と、を含む。前記粉末材料および/または前記結合用流体は多糖類のナノファイバーを含み、前記結合用流体は、比誘電率が20〜50である流体を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、立体造形物の製造方法、それに用いる樹脂組成物、および結合用流体に関する。
近年、複雑な形状の立体造形物を比較的容易に製造できる様々な方法が開発されており、このような手法を利用したラピッドプロトタイピングやラピッドマニュファクチュアリングが注目されている。立体造形物の作製方法として、熱溶解積層方式や、粉末床溶融結合法が知られている。
熱溶解積層方式では、例えば、樹脂組成物をフィラメント状に溶融押出しし、ステージ上に、立体造形物を厚さ方向に微分割した薄層を形成する。そして、溶融押出しおよび薄層の形成を繰り返すことで、所望の形状の立体造形物を得る。
一方、レーザ焼結粉末積層方式では、樹脂材料または金属材料からなる粒子を平らに敷き詰めて薄層を形成する。そして、当該薄層の所望の位置にレーザ光を照射して、隣り合う粒子を選択的に焼結または溶融結合させる。つまり、当該方法においても、立体造形物を厚さ方向に微分割した造形物層を形成する。こうして形成された造形物層上に、さらに粉末材料を敷き詰め、レーザ光照射を繰り返すことで、所望の形状の立体造形物を製造する。
また近年、新たな造形手法についても盛んに検討がなされている。例えば、樹脂材料または金属材料等からなる粉末材料の薄層を形成し、当該薄層の所望の位置に粉末材料を結合させるための結合用流体(接着剤等)を塗布し、結合用流体を塗布しない領域には、結合用流体の拡散を抑制するための剥離用流体を塗布する。そして、結合用流体を塗布した領域の粉末材料のみを硬化させて造形物層を得る。さらにこれらの工程を繰り返し、造形物層を積層することで、所望の形状の立体造形物を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
一方、ナノセルロース含む薄層を形成し、当該薄層の所望の領域に結着液を塗布し、結着液を塗布した領域のみの薄層を固化させて、立体造形物を形成する方法も提案されている(特許文献2)。
特開2004−262243号公報 特開2015−212060号公報
上記特許文献1の方法では、造形物の精度が、結合用流体と剥離用流体との混和性に大きく依存している。そして、結合用流体および剥離用流体に、混和し難い溶媒を含めただけでは、これらの混和や拡散を十分に抑制することは難しく、造形物層とそれ以外の領域との界面が曖昧になりやすかった。したがって、得られる立体造形物の寸法精度が低下しやすかった。
また近年、上記結合用流体に赤外光吸収剤等を含め、結合用流体および剥離用流体の塗布後、赤外光照射を行うことにより結合用流体を塗布した領域の粉末材料のみを加熱溶融させる手法も提案されている(HP JET FUSION 3D(登録商標)方式)。当該方法では、赤外光等の一括照射により結合用流体を塗布した領域の粉末材料(熱可塑性樹脂等)を部分的に加熱溶融させることができ、従来の方法に比べて格段に速い造形が可能となっている。しかしながら、当該手法でも、結合用流体および剥離用流体との混和を十分に抑制することは難しい。そして、結合用流体に含まれる赤外線吸収剤等が、溶媒等と共に造形物層を形成しない領域まで入り込むと、造形物層を形成する領域とそれ以外の領域との界面が曖昧になりやすく、得られる立体造形物の寸法精度が低下しやすかった。
一方、特許文献2の方法においても、結着液が拡散しやすく、立体造形物の寸法精度が低下しやすいとの課題があった。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものである。すなわち本発明は、得られる立体造形物の寸法精度が高い立体造形物の製造方法、それに用いる粉末材料、および結合用流体を提供することを目的とする。
本発明の第1は、以下の立体造形物の製造方法にある。
[1]熱可塑性樹脂を含む粉末材料を含む薄層を形成する薄層形成工程と、エネルギー吸収剤を含む結合用流体、および前記結合用流体の拡散を抑制するための剥離用流体を、前記薄層の互いに隣接する領域に塗布する流体塗布工程と、前記流体塗布工程後の前記薄層にエネルギーを照射し、前記結合用流体を塗布した領域の前記熱可塑性樹脂を溶融させて造形物層を形成するエネルギー照射工程と、を含む、立体造形物の製造方法であって、前記粉末材料および/または前記結合用流体が多糖類のナノファイバーを含み、前記結合用流体は、比誘電率が20〜50である溶媒を含む、立体造形物の製造方法。
[2]前記剥離用流体は、比誘電率が1〜5である溶媒を含む、[1]に記載の立体造形物の製造方法。
[3]前記薄層形成工程、前記流体塗布工程、および前記エネルギー照射工程を複数回繰返すことで、前記造形物層を積層し、立体造形物を形成する、[1]または[2]に記載の立体造形物の製造方法。
[4]前記流体塗布工程において、前記結合用流体および前記剥離用流体をインクジェット法で塗布する、[1]〜[3]のいずれかに記載の立体造形物の製造方法。
[5]前記エネルギー吸収剤が赤外光吸収剤であり、前記エネルギー照射工程で、赤外光を照射する、[1]〜[4]のいずれかに記載の立体造形物の製造方法。
本発明の第2は、以下の粉末材料および結合用流体にある。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の立体造形物の製造方法に用いる粉末材料であって、熱可塑性樹脂と、多糖類のナノファイバーとを含む、粉末材料。
[7]前記多糖類のナノファイバーの平均繊維径が3〜30nmであり、平均繊維長が200〜10000nmである、[6]に記載の粉末材料。
[8]前記多糖類のナノファイバーが、セルロースのナノファイバーを含む、[6]または[7]に記載の粉末材料。
[9]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の立体造形物の製造方法に用いられる結合用流体であって、エネルギー吸収剤と、多糖類のナノファイバーと、比誘電率が20〜50である溶媒と、を含む、結合用流体。
[10]前記多糖類のナノファイバーの平均繊維径が3〜30nmであり、かつ平均繊維長が200〜10000nmである、[9]に記載の結合用流体。
[11]前記多糖類のナノファイバーが、セルロースのナノファイバーを含む、[9]または[10]に記載の結合用流体。
本発明によれば、得られる立体造形物の寸法精度が高い、立体造形物の製造方法、それに用いる粉末材料、および結合用流体を提供できる。
図1は本発明の一実施形態における立体造形装置の構成を概略的に示す側面図である。 図2は本発明の一実施形態における立体造形装置の制御系の主要部を示す図である。
前述のように、従来、粉末材料からなる薄層に、当該粉末材料を結合させるための結合用流体、および結合用流体の拡散を抑制するための剥離用流体を、互いに隣接するように塗布し、結合用流体を塗布した領域の粉末材料のみを結合させて、立体造形物を得る手法が提案されている。当該方法では、2つの混和し難い流体を粉末材料からなる薄層上で塗り分けている。
しかしながら、従来、結合用流体および剥離用流体の混和性は、これらが含む溶媒の種類で調整しており、このような方法では、結合用流体および剥離用流体の混和を十分に抑制することは難しかった。したがって、従来の方法では、結合用流体を塗布した領域と剥離用流体を塗布した領域との境界が曖昧になりやすく、得られる立体造形物の寸法精度が低くなりやすい、との課題があった。
これに対し、本発明者らが鋭意検討を行ったところ、上記粉末材料および/または上記結合用流体に多糖類のナノファイバーを含めること、さらに結合用流体に比誘電率が比較的高い溶媒(以下、「極性溶媒」とも称する)を含めることで、得られる立体造形物の寸法精度が格段に高まることを見出した。多糖類のナノファイバーは、水酸基等の極性基を比較的多く有しており、極性溶媒(比誘電率が高い溶媒)との親和性が高い。そのため、粉末材料が多糖類のナノファイバーを含む場合、当該粉末材料に塗布された結合用流体(特に極性溶媒)が多糖類のナノファイバーに引き寄せられる。その結果、結合用流体中の成分が剥離用流体を塗布した側に拡散し難くなり、結合用流体を塗布した領域の粉末材料のみを溶融させやすくなる。
一方、結合用流体が、多糖類のナノファイバーを含む場合、粉末材料に結合用流体を塗布すると、ナノファイバーは固体であり、かつ繊維状であるため、拡散せずにその場に留まりやすい。一方、結合用流体中の極性溶媒等は比較的移動しやすい性質を有するが、ナノファイバーと極性溶媒との親和性によって、ナノファイバー側に引き寄せられる。したがって、この場合も、結合用流体中の成分が、剥離用流体を塗布した側に拡散し難く、結合用流体を塗布した領域の粉末材料のみを溶融させやすくなる。
したがって、本発明の製造方法によれば、高い寸法精度で立体造形物を形成することが可能となる。以下、立体造形物の製造方法について、多糖類のナノファイバーを粉末材料に含める態様(第1の実施形態)、および結合用流体に含める態様(第2の実施形態)にわけて説明する。
1−1.第1の実施形態について
本実施形態の立体造形物の製造方法は、熱可塑性樹脂および多糖類のナノファイバーを少なくとも含む粉末材料を含む薄層を形成する薄層形成工程と、結合用流体および剥離用流体を、薄層の互いに隣接する領域に塗布する流体塗布工程と、流体塗布工程後の薄層にエネルギーを照射し、結合用流体の塗布領域の熱可塑性樹脂を溶融させて造形物層を形成するエネルギー照射工程と、を含む。なお、本実施形態の製造方法は、必要に応じて、他の工程を有していてもよい。
(1)薄層形成工程
本実施形態の薄層形成工程では、熱可塑性樹脂および多糖類のナノファイバーを少なくとも含む粉末材料を主に含む薄層を形成する。薄層の形成方法は、所望の厚みの層を形成可能であれば特に制限されない。例えば、本工程は、立体造形装置の粉末供給部から供給された粉末材料を、リコータによって造形ステージ上に平らに敷き詰める工程とすることができる。薄層は、造形ステージ上に直接形成してもよいし、すでに敷き詰められている粉末材料またはすでに形成されている造形物層の上に接するように形成してもよい。
薄層の厚さは、所望の造形物層の厚さと同じとする。薄層の厚さは、製造しようとする立体造形物の精度に応じて任意に設定することができるが、通常、0.01mm以上0.30mm以下である。薄層の厚さを0.01mm以上とすることで、新たな造形物層を形成するためのエネルギー照射(後述のエネルギー照射工程におけるエネルギー照射)によって、既に作製した造形物層が溶融することを防ぐことができる。また、薄層の厚さが0.01mm以上であると、粉末材料を均一に敷き詰めやすくなる。また、薄層の厚さを0.30mm以下とすることで、後述のエネルギー照射工程において、エネルギー(例えば赤外光)を薄層の下部まで伝導させることが可能となる。これにより、所望の領域(結合用流体を塗布する領域)の熱可塑性樹脂を、厚み方向の全体にわたって溶融させることが可能となる。前記観点からは、薄層の厚さは0.01mm以上0.20mm以下であることがより好ましい。
薄層の形成後、必要に応じて予備加熱を行ってもよい。予備加熱を行うことで、後述のエネルギー照射工程で照射するエネルギー量を少なくすることが可能となる。またさらに、短時間で効率良く造形物層を形成することが可能となる。予備加熱温度は、薄層が含む熱可塑性樹脂が溶融する温度より低い温度であり、さらに後述の流体塗布工程で塗布する結合用流体や剥離用流体が含む溶媒の沸点より低い温度であることが好ましい。具体的には、熱可塑性樹脂の融点または、結合用流体や剥離用流体が含む溶媒の沸点のうち、融点、または沸点の低い側の温度に対して、−50℃以上〜−5℃以下であることが好ましく、−30℃以上〜−5℃以下であることがより好ましい。またこのとき、加熱時間は1〜60秒とすることが好ましく、3〜20秒とすることがより好ましい。加熱温度および加熱時間を上記範囲とすることで、エネルギー照射工程におけるエネルギー照射量を低減することができる。
本工程に用いる粉末材料は、熱可塑性樹脂と、多糖類のナノファイバーとを少なくとも含んでいればよく、必要に応じて各種添加剤や、フローエージェント、充填材等を含んでいてもよい。ここで、粉末材料は、熱可塑性樹脂からなる粒子と、多糖類のナノファイバーとを別々に含んでいてもよく、熱可塑性樹脂および多糖類のナノファイバーを含む粒子を含んでいてもよい。また、粉末材料は、これらの両方を含んでいてもよい。
熱可塑性樹脂と多糖類のナノファイバーとが同一の粒子に含まれている場合、粒子の表面に多糖類のナノファイバーの少なくとも一部が露出していることが好ましい。多糖類のナノファイバーの一部が露出していることで、後述の流体塗布工程で塗布される結合用流体が当該ナノファイバーに引き寄せられて拡散し難くなる。
熱可塑性樹脂からなる粒子、もしくは、熱可塑性樹脂と多糖類のナノファイバーとを含む粒子の平均粒子径は、10μm以上100μm以下であることがより好ましい。これらの粒子の平均粒子径が当該範囲であると、複雑な形状の立体造形物も作製することが可能となる。上記粒子の平均粒子径は、動的光散乱法により測定した体積平均粒子径とする。体積平均粒径は、湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置(マイクロトラックベル社製、MT3300EXII)により測定することができる。
ここで、粉末材料が含む熱可塑性樹脂は、後述のエネルギー照射工程で溶融可能な樹脂であれば特に制限されず、所望の立体造形物の種類や、立体造形物の形成方法に応じて適宜選択される。粉末材料は、熱可塑性樹脂を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
当該熱可塑性樹脂としては、一般的な立体造形用の粒子に含まれる樹脂等を用いることができるが、熱可塑性樹脂の溶融温度が高すぎると、後述のエネルギー照射工程において必要なエネルギー照射量が多くなり、造形物層の形成に時間がかかったり、多糖類のナノファイバーが劣化すること等がある。そこで、熱可塑性樹脂の溶融温度は、300℃以下であることが好ましく、230℃以下であることがより好ましい。一方、得られる立体造形物の耐熱性等の観点から、熱可塑性樹脂の溶融温度は100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。溶融温度は、熱可塑性樹脂の種類等によって調整することができる。
熱可塑性樹脂の例には、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12等のポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミドエラストマー樹脂、熱可塑性ポリウレタン等が含まれる。
粉末材料は、熱可塑性樹脂を40〜99.5質量%含むことが好ましく、50〜99質量%含むことがより好ましく、70〜99質量%含むことがさらに好ましい。粉末材料が、熱可塑性樹脂を40質量%以上含むと、得られる立体造形物の強度が十分に高くなる。一方で、熱可塑性樹脂の量が99.5質量%以下であると、相対的にナノファイバー等の量が十分となり、得られる立体造形物の寸法精度が高まりやすくなる。
一方、多糖類のナノファイバーは、前述のように、熱可塑性樹脂と一体化されていてもよく、熱可塑性樹脂とは別に含まれていてもよい。このような多糖類のナノファイバーは、平均径が10000nm以下である多糖類由来の繊維であれば特に制限されない。多糖類のナノファイバーは、単糖がグリコシド結合した多糖類またはその誘導体が集合したナノフィブリルを含む、平均繊維径が10000nm以下の集合体とすることができる。粉末材料は、多糖類のナノファイバーを、一種のみ含んでいてもよく、二種以上が含んでいてもよい。
多糖類のナノファイバーは、上述の熱可塑性樹脂や、後述の結合用流体との親和性を高めるため化学的に修飾されていてもよい。例えば、アセチル化処理やカルボキシメチル化処理、シランカップリング剤処理等、各種方法で処理されたものであってもよい。また、多糖類のナノファイバーは、上記処理が施されていない、未処理の多糖類のナノファイバーであってもよい。
また、多糖類のナノファイバー中には、本発明の目的を損なわない範囲で、多糖類またはその誘導体以外の成分を含んでいてもよいが、多糖類またはその誘導体がナノファイバーの全質量に対して50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。
ここで、多糖類のナノファイバーの構造は特に制限されず、一本鎖からなるものであってもよく、枝分かれ構造を有するものであってもよい。枝分かれ構造を有するとは、ナノフィブリルを主成分とする主鎖に対し、側方に突出した分岐鎖が存在することを意味する。
また、多糖類のナノファイバーの平均繊維径は3nm以上30nm以下であることが好ましい。上記平均繊維径が3nm以上であると、均一に分散されやすくなる。一方、上記平均繊維径が30nm以下であると、得られる立体造形物の強度が高まりやすくなる。多糖類のナノファイバーの平均繊維径は、3nm以上20nm以下であることがより好ましく、5nm以上20nm以下であることがさらに好ましい。
一方、多糖類のナノファイバーの平均繊維長は200nm以上10000nm以下であることが好ましく、250nm以上10000nm以下であることがより好ましい。上記平均繊維長10000nm以下であると、立体造形物から多糖類のナノファイバーがはみ出しにくくなり、外観が良好な立体造形物が得られやすくなる。一方、上記平均繊維長が200nm以上であると、後述する流体塗布工程において結合用流体が拡散し難くなり、得られる立体造形物の寸法精度がさらに高まりやすくなる。上記多糖類のナノファイバーの平均繊維長は、300nm以上10000nm以下であることがさらに好ましく、500nm以上10000nm以下であることが特に好ましい。なお、多糖類のナノファイバーが枝分かれ構造を有する場合には、当該ナノファイバーが最長となる場合の長さを繊維長とする。
上記多糖類のナノファイバーのアスペクト比(平均繊維長を平均繊維径で除算して得られる値)は5以上3500以下であることが好ましく、10以上3500以下であることがより好ましい。アスペクト比が当該範囲であると、後述の流体塗布工程で結合用流体が拡散し難くなる。
多糖類のナノファイバーの平均繊維径、および平均繊維長は、以下のように特定することができる。まず、粉末材料から上述の樹脂を溶剤等で除去し、ナノファイバーのみを取り出す。そして、これを走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像して得られた画像から、任意に選択した100本のナノファイバーの繊維径や繊維長の加算平均とすることができる。
尚、SEMの倍率は、100本以上のナノファイバーが撮像できる程度に調整すればよい。
ここで、ナノファイバーを構成する多糖類の例には、セルロース、ヘミセルロース、リグノセルロース、キチンおよびキトサンなどが含まれる。これらの中でも、強度が高く、熱膨張率が小さく、軽量であるとの観点から、セルロースもしくはその誘導体のナノファイバー(以下、「ナノセルロース」とも称する)が好ましく用いられる。
ナノセルロースは、植物由来の繊維質もしくは植物の細胞壁の機械的な解繊、酢酸菌による生合成、2,2,6,6−tetramethylpiperidine−1−oxyl radical(TEMPO)などのN−オキシル化合物による酸化または電解紡糸法などによって得られる、繊維状のナノフィブリルを主成分とするセルロースナノファイバーであってもよい。また、ナノセルロースは、植物由来の繊維質もしくは植物の細胞壁を機械的に解繊した後に酸処理などをして得られる、ウィスカー状(針状)に結晶化した、ナノフィブリルを主成分とするセルロースナノクリスタルであってもよい。また、ナノセルロースは、その他の形状を有するものであってもよい。
また、ナノセルロースには、セルロースと共にリグニンやヘミセルロースなどが含まれていてもよい。脱リグニン処理を行わず、疎水性であるリグニンを含有するナノセルロースは、熱可塑性樹脂との親和性が高いため好ましい。
なお、多糖類のナノファイバーの形状(枝分かれ構造の有無や、平均繊維径、平均繊維長およびアスペクト比等)は、多糖類のナノファイバーの製造方法等によって調整することができる。たとえば、多糖類のナノファイバーがナノセルロースであるときは、解繊または合成の方法(解繊の強さ等)や、解繊の回数などを調整することで、平均繊維径や平均繊維長等を調整することができる。
粉末材料は、多糖類のナノファイバーを0.5〜60.0質量%含むことが好ましく、1〜30質量%含むことがより好ましい。多糖類のナノファイバーを0.5質量%以上含むと、後述の流体塗布工程において、結合用流体が拡散し難くなる。一方、多糖類のナノファイバーの含有量が60.0質量%以下であると、相対的に熱可塑性樹脂の量が十分になり、得られる立体造形物の強度等が高まる。
また、粉末材料は、各種添加剤を含んでいてもよい。各種添加剤の例には、酸化防止剤、酸性化合物及びその誘導体、滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、核剤、難燃剤、衝撃改良剤、発泡剤、着色剤、有機過酸化物、展着剤、粘着剤等が含まれる。粉末材料は、これらを一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
さらに、粉末材料は、充填材を含んでいてもよい。充填材の例には、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、ガラスカットファイバー、ガラスミルドファイバー、ガラスフレーク、ガラス粉末、炭化ケイ素、窒化ケイ素、石膏、石膏ウィスカー、焼成カオリン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウィスカー、金属粉、セラミックウィスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維等の無機充填材;上記多糖類のナノファイバー以外の有機充填剤;各種ポリマー等が含まれる。粉末材料は、これらを一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
また、粉末材料は、フローエージェントを含んでいてもよい。フローエージェントは、摩擦係数が小さく、自己潤滑性を有する材料であればよい。このようなフローエージェントの例には、二酸化ケイ素および窒化ホウ素が含まれる。これらのフローエージェントは、一種のみ用いてもよく、二種を組み合わせて用いてもよい。フローエージェントの量は、粉末材料の流動性が向上し、かつ粉末材料の溶融結合が十分に生じる範囲で適宜設定することができ、たとえば、粉末材料の全質量に対して、0質量%より多く2質量%未満とすることができる。
ここで、粉末材料は、100〜300℃に溶融温度を有することが好ましく、120〜230℃に溶融温度を有することがより好ましい。溶融温度が当該範囲にあると、後述のエネルギー照射工程において、過度なエネルギー照射を行うことなく、造形物層を形成することが可能となる。粉末材料の溶融温度は、上記熱可塑性樹脂の種類等によって、調整することが可能である。
粉末材料の溶融温度は、以下のように特定することができる。まず、ホットプレートを例えば180℃、185℃、190℃、195℃、および200℃にそれぞれ保つ。そして、粉末材料を直径5cmのアルミホイル皿に1g敷き詰め、各温度に設定したホットプレート上に置く。そして、粉末材料の融着状態を確認し、融着開始が認められた温度を、粉末材料の溶融温度として特定する。なお、上記では、粉末材料の溶融温度が180℃以上200℃未満にある場合を例に説明しているが、粉末材料の溶融温度が当該範囲以外である場合には、ホットプレートの温度を適宜変更する。
また、粉末材料の溶融温度±20℃の範囲における損失弾性率の最大値は、溶融温度±20℃の範囲における損失弾性率の最小値の30〜500倍であることが好ましく、50〜200倍であることがより好ましい。溶融温度±20℃の範囲における損失弾性率の最大値および最小値の比が当該範囲であると、溶融した粉末材料の変形が適度になる。したがって、得られる立体造形物の寸法精度がさらに高まる。なお、損失弾性率は、後述の実施例で示す方法で特定することができる。
上記粉末材料の調製方法は特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂と、多糖類のナノファイバーと、必要に応じて他の成分とを、所望の比率で混合する方法とすることができる。また、例えば熱可塑性樹脂と、多糖類のナノファイバーと、必要に応じて他の成分とを加熱しながら攪拌混合し、冷却する方法とすることもできる。この場合、粉末材料を構成する粒子の平均粒子径を揃えるため、必要に応じて機械的粉砕や、分級等を行ってもよい。
(2)流体塗布工程
本実施形態の流体塗布工程では、上記薄層形成工程で形成した薄層の互いに隣接する領域に、結合用流体および剥離用流体をそれぞれ塗布する。具体的には、造形物層を形成すべき位置に選択的に結合用流体を塗布し、造形物層を形成しない領域には、剥離用流体を塗布する。結合用流体を塗布する領域の周囲に隣接して剥離用流体を塗布することで、結合用流体が薄層内で拡散することをある程度抑制することができる。本実施形態では、結合用流体および剥離用流体のうち、どちらを先に塗布してもよいが、得られる立体造形物の寸法精度の観点から、結合用流体を先に塗布することが好ましい。
結合用流体および剥離用流体の塗布方法は特に制限されず、例えばディスペンサーによる塗布や、インクジェット法による塗布、スプレー塗布等とすることができるが、高速で所望の領域に結合用流体および剥離用流体を塗布可能であるとの観点から少なくとも一方を、インクジェット法で塗布することが好ましく、両方をインクジェット法で塗布することがより好ましい。
結合用流体および剥離用流体の塗布量は、それぞれ薄層1mm当たり、0.1〜50μLであることが好ましく、0.2〜40μLであることがより好ましい。結合用流体および剥離用流体の塗布量が当該範囲であると、造形物層を形成する領域、および造形物層を形成しない領域の粉末材料に、それぞれ結合用流体および剥離用流体を十分に含浸させることができ、寸法精度の良好な立体造形物を形成することができる。
本工程で塗布する結合用流体は、エネルギー吸収剤と、比誘電率が特定の範囲である溶媒と、を少なくとも含む。結合用流体は、必要に応じて公知の分散剤等を含んでいてもよい。
エネルギー吸収剤は、後述するエネルギー照射工程において照射されるエネルギーを吸収し、結合用流体が塗布された領域の温度を効率的に高めることが可能なものであれば特に制限されない。エネルギー吸収剤の具体例には、カーボンブラック、ITO(スズ酸化インジウム)、ATO(アンチモン酸化スズ)等の赤外線吸収剤、シアニン色素,アルミニウムや亜鉛を中心に持つフタロシアニン色素,各種ナフタロシアニン化合物,平面四配位構造を有するニッケルジチオレン錯体,スクアリウム色素,キノン系化合物,ジインモニウム化合物,アゾ化合物等の赤外線吸収色素が含まれる。これらの中でも、汎用性や結合用流体が塗布された領域の温度を効率的に高めることができるとの観点から、赤外線吸収剤が好ましく、カーボンブラックであることがさらに好ましい。
エネルギー吸収剤の形状は特に制限されないが、粒子状であることが好ましい。また、その平均粒子径は0.1〜1.0μmであることが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。エネルギー吸収剤の平均粒子径が過度に大きいと、結合用流体を薄膜上に塗布した際、エネルギー吸収剤が熱可塑性樹脂やナノファイバー等の隙間に入り込み難くなる。これに対し、平均粒子径が1.0μm以下であれば、エネルギー吸収剤が、薄膜内に入り込みやすくなる。一方、エネギー吸収剤の平均粒子径が0.1μm以上であると、後述するエネルギー照射工程で、効率良く熱可塑性樹脂に熱を伝えることができ、周囲の熱可塑性樹脂を溶融させることが可能となる。
結合用流体は、エネルギー吸収剤を0.1〜10.0質量%含むことが好ましく、1.0〜5.0質量%含むことがより好ましい。エネルギー吸収剤の量が0.1質量%以上であると、後述のエネルギー照射工程で、結合用流体が塗布された領域の温度を十分に高めることが可能となる。一方、エネルギー吸収剤の量が10.0質量%以下であると、結合用流体内でエネルギー吸収剤が凝集すること等が少なく、結合用流体の塗布安定性が高まりやすくなる。
一方、溶媒は、比誘電率が20.0〜50.0であり、エネルギー吸収剤を分散可能であり、さらに粉体材料中の成分(例えば熱可塑性樹脂)を溶解し難い溶媒であれば特に制限されない。比誘電率は、多糖類のナノファイバーとの親和性との観点から20.0〜45.0であることがより好ましく、20.0〜40.0であることがさらに好ましい。比誘電率の値は、化学便覧 基礎編II 改訂5版等、公知文献から参照することができ、測定温度20℃における値を用いる。なお、溶媒の比誘電率が過度に大きい(50超である)と、溶媒と多糖類のナノファイバーとの親和性が過度に高まり、毛管現象等が生じ、かえって造形精度が低下しやすくなる。また、溶媒の比誘電率が過度に小さい(20未満である)と、溶媒と多糖類ナノファイバーとの親和性が低く、上述のような造形精度向上効果が得られ難い。
また、溶媒の沸点は、100〜300℃であることが好ましく、125〜300℃であることがより好ましい。溶媒の沸点が高すぎると、得られる立体造形物中に溶媒が残存しやすくなり、立体造形物の強度等が低下しやすくなる。一方、溶媒の沸点が低すぎると、結合用流体の塗布時に溶媒が揮発してしまい、結合用流体の塗布安定性が低下することがある。
溶媒の具体例としては、トリエチレングリコール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、等が含まれる。これらの中でも、比誘電率が大きく、結合用流体の塗布安定性が高い等の観点から、トリエチレングリコール、エチレングリコールが好ましい。
結合用流体は、上記溶媒を90.0〜99.9質量%含むことが好ましく、95.0〜99.0質量%含むことがより好ましい。結合用流体中の溶媒量が90.0質量%以上であると、結合用流体の流動性が高くなり、例えばインクジェット法等で塗布しやすくなる。
結合用流体の粘度は、0.5〜50.0mPa・sであることが好ましく、1.0〜20.0mPa・sであることがより好ましい。結合用流体の粘度が0.5mPa・s以上であると、結合用流体を薄層に塗布した際の拡散がさらに抑制されやすくなる。一方で、結合用流体の粘度が50.0mPa・s以下であると、結合用流体の塗布安定性が高まりやすくなる。
一方、本工程で塗布する剥離用流体は、結合用流体と混和し難く、かつ粉末材料中の成分を溶解し難い溶媒を含んでいれば特に制限されない。剥離用流体が含む溶媒の比誘電率は、1.0〜5.0であることが好ましく、1.0〜3.0であることがより好ましい。また、結合用流体中の溶媒の比誘電率と、剥離用流体中の溶媒の比誘電率との差は、25.0以上であることが好ましく、30.0以上であることがより好ましい。これらの差が大きいほど、結合用流体と剥離用流体とが混和し難くなり、より寸法精度の高い立体造形物が得られやすくなる。
また、当該溶媒の沸点は、100〜300℃であることが好ましく、125〜300℃であることがより好ましい。剥離用流体が含む溶媒の沸点が低すぎると、剥離用流体の塗布時に溶媒が揮発してしまい、剥離用流体の塗布安定性が低下することがある。
このような溶媒の例には、n−デカン、n−ドデカン、シクロオクタン等の無極性炭化水素、キシレン等の芳香族炭化水素等が含まれる。
剥離用流体は、上記溶媒を90質量%以上含むことが好ましく、95質量%以上含むことがより好ましい。剥離用流体中の溶媒量が90質量%以上であると、剥離用流体の流動性が高くなり、例えばインクジェット法等で塗布しやすくなる。
剥離用流体の粘度は、0.5〜50.0mPa・sであることが好ましく、0.5〜30.0mPa・sであることがより好ましい。剥離用流体の粘度が0.5mPa・s以上であると、剥離用流体が、結合用流体側に拡散し難くなる。一方で、剥離用流体の粘度が30.0mPa・s以下であると、剥離用流体の塗布安定性が高まりやすくなる。
(3)エネルギー照射工程
本実施形態のエネルギー照射工程では、上記流体塗布工程後の薄層、すなわち結合用流体および剥離用流体が塗布された薄層に、エネルギーを一括照射する。このとき、結合用流体が塗布された領域では、エネルギー吸収剤がエネルギーを吸収し、当該領域の温度が部分的に上昇する。そして、当該領域の熱可塑性樹脂のみが溶融し、造形物層が形成される。
本工程で照射するエネルギーの種類は、結合用流体が含むエネルギー吸収剤の種類に応じて適宜選択される。当該エネルギーの具体例には、赤外光、白色光等が含まれる。これらの中でも、結合用流体を塗布した領域では、効率よく熱可塑性樹脂を溶融させることが可能である一方で、剥離用流体を塗布した領域では、薄層の温度が上昇し難いとの観点から赤外光であることが好ましく、波長780〜3000nmの光であることがより好ましく、波長800〜2500nmの光であることがより好ましい。
また、本工程でエネルギーを照射する時間は、粉末材料が含む熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜選択されるが、通常、5〜60秒であることが好ましく、10〜30秒であることがより好ましい。エネルギー照射時間を5秒以上とすることで、十分に熱可塑性樹脂を溶融させて、これらを結合させることが可能となる。一方で、60秒以下とすることで、効率よく立体造形物を製造することが可能となる。
1−2.第2の実施形態
本実施形態の立体造形物の製造方法は、熱可塑性樹脂を少なくとも含む粉末材料を含む薄層を形成する薄層形成工程と、結合用流体および剥離用流体を、薄層の互いに隣接する領域に塗布する流体塗布工程と、流体塗布工程後の薄層にエネルギーを照射し、結合用流体の塗布領域の熱可塑性樹脂を溶融させて造形物層を形成するエネルギー照射工程と、を含む。本実施形態では、上記結合用流体が、エネルギー吸収剤、多糖類のナノファイバー、および比誘電率が特定の範囲である溶媒を含む。なお、本実施形態の製造方法は、必要に応じて、他の工程を有していてもよい。
ここで、本実施形態の立体造形物の製造方法は、粉末材料の組成、および結合用流体の組成以外は、第1の実施形態と同様である。そこで以下、粉末材料の組成および結合用流体の組成についてのみ説明し、これら以外の説明は省略する。
本実施形態の薄層形成工程で使用する粉末材料は、熱可塑性樹脂を少なくとも含んでいればよく、例えば熱可塑性樹脂のみからなるものであってもよい。また、粉末材料は必要に応じて各種添加剤や、フローエージェント、充填材等を含んでいてもよい。
本実施形態で使用する粉末材料が含む熱可塑性樹脂の種類や平均粒子径、溶融温度等は、第1の実施形態の粉末材料が含む熱可塑性樹脂と同様とすることができる。ここで、本実施形態では、粉末材料が熱可塑性樹脂を40質量%以上含むことが好ましく、50質量%以上含むことがさらに好ましい。粉末材料が、熱可塑性樹脂を40質量%以上含むと、得られる立体造形物の強度が十分に高まる。
一方、粉末材料が含む各種添加剤やフローエージェント、充填材等の種類や含有量は、第1の実施形態の粉末材料が含む各種添加剤やフローエージェント、充填材等と同様とすることができる。なお、本実施形態の粉末材料にも、必要に応じて多糖類のナノファイバーを含んでいてもよい。
一方、流体塗布工程で使用する結合用流体は、エネルギー吸収剤と、多糖類のナノファイバーと、比誘電率が20〜50である溶媒と、を少なくとも含む。結合用流体は、必要に応じて公知の分散剤等を含んでいてもよい。本実施形態の結合用流体が含むエネルギー吸収剤や溶媒は、それぞれ第1の実施形態の流体塗布工程で塗布する結合用流体が含むエネルギー吸収剤や溶媒と同様とすることができる。一方、本実施形態の結合用流体が含む多糖類のナノファイバーは、第1の実施形態の粉末材料が含む多糖類のナノファイバーと同様とすることができる。
本実施形態の結合用流体は、エネルギー吸収剤を0.1〜10.0質量%含むことが好ましく、1.0〜5.0質量%含むことがより好ましい。エネルギー吸収剤の量が0.1質量%以上であると、エネルギー照射工程で、結合用流体が塗布された領域の温度を十分に高めることが可能となる。一方、エネルギー吸収剤の量が10.0質量%以下であると、結合用流体内でエネルギー吸収剤が凝集すること等が少なく、結合用流体の塗布安定性が高まりやすくなる。
また、結合用流体は、多糖類のナノファイバーを0.1〜10.0質量%含むことが好ましく、0.1〜5.0質量%含むことがより好ましい。多糖類のナノファイバーの量が当該範囲であると、結合用流体が薄層上に塗布された際、多糖類のナノファイバーと結合用流体中の溶媒との親和性によって、溶媒が移動し難くなる。これにより、エネルギー吸収剤も移動し難くなり、寸法精度の高い立体造形物が得られやすくなる。
一方、結合用流体は、上記溶媒を80.0〜99.8質量%含むことが好ましく、90.0〜99.8質量%含むことがより好ましい。結合用流体中の溶媒量が80.0質量%以上であると、結合用流体の流動性が高くなり、例えばインクジェット法等で塗布しやすくなる。
本実施形態の結合用流体の粘度は、0.5〜50.0mPa・sであることが好ましく、1.0〜20.0mPa・sであることがより好ましい。結合用流体の粘度が0.5mPa・s以上であると、結合用流体の拡散がさらに抑制されやすくなる。一方で、結合用流体の粘度が50.0mPa・s以下であると、結合用流体の塗布安定性が高まりやすくなる。
2.立体造形装置
上記立体造形物の製造方法に使用可能な立体造形装置について説明する。本実施形態に用いることが可能な立体造形装置は、公知の立体造形装置と同様の構成とすることができる。具体的には、本実施形態に係る立体造形装置200は、図1の概略側面図に示すように、開口内に位置する造形ステージ210、粉末材料からなる薄膜を形成するための薄膜形成部220、薄膜を予備加熱するための予備加熱部230、薄膜に結合用流体および剥離用流体を塗布するための流体塗布部300、薄膜に赤外光を照射するための赤外照射部240、鉛直方向の位置を可変に造形ステージ210を支持するステージ支持部250、および上記各部を支持するベース290を備える。
一方、立体造形装置200の制御系の主要部を図2に示す。図2に示すように、立体造形装置200は、薄膜形成部220、予備加熱部230、流体塗布部300、赤外線照射部240、およびステージ支持部250を制御して、造形物の形成および積層を行う制御部260、各種情報を表示するための表示部270、ユーザーからの指示を受け付けるためのポインティングデバイス等を含む操作部275、制御部260の実行する制御プログラムを含む各種の情報を記憶する記憶部280、ならびに外部機器との間で立体造形データ等の各種情報を送受信するためのインターフェース等を含むデータ入力部285を備えてもよい。また、立体造形装置200は、造形ステージ210上に形成された薄層の表面温度を測定する温度測定器235を備えてもよい。また立体造形装置200には、立体造形用のデータを生成するためのコンピュータ装置310が接続されてもよい。
造形ステージ210は、昇降可能に制御され、当該造形ステージ210上で、薄膜形成部220による薄層の形成、予備加熱部230による薄層の予備加熱、流体塗布部300による結合用流体および剥離用流体の塗布、および赤外光照射部240による赤外光の照射が行われる。そして、これらによって形成された造形物が積層されて、立体造形物が形成される。
薄膜形成部220は、粉末材料を収納する粉末材料収納部221aと、粉末材料収納部221aの底部に設けられ開口内を昇降する供給ピストン221bとを備える粉末供給部221、および粉末供給部221から供給された粉末材料を造形ステージ210上に平らに敷き詰めて、粉末材料の薄層を形成するリコータ222aを備えた構成とすることができる。本実施形態では、粉末材料収納部221aの開口部の上面が、造形ステージ210を昇降させる(立体造形物を形成するための)開口部の上面と、ほぼ同一平面上に配置される。
なお、粉末供給部221は、造形ステージ210に対して鉛直方向上方に設けられた粉末材料収納部(不図示)と、当該粉末材料収納部に収納された粉末材料を、所望の量ずつ吐出するためのノズル(不図示)と、を備える構成としてもよい。この場合、ノズルから造形ステージ210上に、均一に粉末材料を吐出することで、薄層を形成することが可能となる。
予備加熱部230は、薄層の表面のうち、造形物層を形成すべき領域を加熱し、その温度を維持できるものであればよい。本実施形態では、予備加熱部230が、造形ステージ210上に形成された薄層の表面を加熱可能な第1のヒータ231と、造形ステージ上に供給される前の粉末材料を加熱する第2のヒータ232とを備えるが、これらはいずれか一方のみであってもよい。また、予備加熱部230は、上記造形物層を形成すべき領域を選択的に加熱する構成であってもよい。また、装置内の全体を予め加熱しておいて、上記薄膜の表面を所定の温度に調温する構成であってもよい。
温度測定器235は、薄層の表面温度、特に造形物層を形成すべき領域の表面温度を非接触で測定できるものであればよく、たとえば、赤外線センサまたは光高温計とすることができる。
流体塗布部300は、結合用流体塗布部301および剥離用流体塗布部302を備える。結合用流体塗布部301および剥離用流体塗布部302は、それぞれ結合用流体または剥離用流体を貯留するための貯留部(不図示)と、これに接続されたインクジェットノズル(不図示)とを備えるものとすることができる。
赤外光照射部240は、赤外ランプを含む構成とすることができる。赤外ランプは所望のタイミングで赤外光を照射可能な光源であればよい。
ステージ支持部250は、造形ステージ210の鉛直方向の位置を可変に支持するものであればよい。すなわち、造形ステージ210は、ステージ支持部250によって鉛直方向に精密に移動可能に構成されている。ステージ支持部250としては、種々の構成を採用できるが、例えば、造形ステージ210を保持する保持部材と、この保持部材を鉛直方向に案内するガイド部材と、ガイド部材に設けられたねじ孔に係合するボールねじ等で構成することができる。
制御部260は、中央処理装置等のハードウェアプロセッサを含んでおり、立体造形物の造形動作中、立体造形装置200全体の動作を制御する。
また、制御部260は、たとえばデータ入力部285がコンピュータ装置310から取得した立体造形データを、造形物層の積層方向について薄く切った複数のスライスデータに変換するよう構成されてもよい。スライスデータは、立体造形物を造形するための各造形物層の造形データである。スライスデータの厚み、すなわち造形物層の厚みは、造形物層の一層分の厚さに応じた距離(積層ピッチ)と一致する。
表示部270は、たとえば液晶ディスプレイ、モニタとすることができる。
操作部275は、たとえばキーボードやマウスなどのポインティングデバイスを含むものとすることができ、テンキー、実行キー、スタートキー等の各種操作キーを備えてもよい。
記憶部280は、たとえばROM、RAM、磁気ディスク、HDD、SSD等の各種の記憶媒体を含むものとすることができる。
立体造形装置200は、制御部260の制御を受けて、装置内を減圧する、減圧ポンプなどの減圧部(不図示)、または、制御部260の制御を受けて、不活性ガスを装置内に供給する、不活性ガス供給部(不図示)を備えていてもよい。
ここで、本実施形態の立体造形装置200を用いた立体造形方法について、具体的に説明する。制御部260は、データ入力部285がコンピュータ装置310から取得した立体造形データを、造形物層の積層方向について薄く切った複数のスライスデータに変換する。その後、制御部260は、立体造形装置200における以下の動作の制御を行う。
粉末供給部221は、制御部260から出力された供給情報に従って、モーターおよび駆動機構(いずれも不図示)を駆動し、供給ピストンを鉛直方向上方(図1の矢印方向)に移動させ、前記造形ステージと水平方向同一平面上に、粉末材料を押し出す。
その後、リコータ駆動部222は、制御部260から出力された薄膜形成情報に従って水平方向(図中矢印方向)にリコータ222aを移動させて、粉末材料を造形ステージ210に運搬し、かつ、薄層の厚さが造形物層の1層分の厚さとなるように粉末材料を押圧する。
予備加熱部230は、制御部260から出力された温度情報に従って形成された薄層の表面または装置内の全体を加熱する。予備加熱部230は、薄層が形成された後に加熱を開始してもよいし、薄層が形成される前から形成されるべき薄層の表面に該当する箇所または装置内の加熱を行っていてもよい。
その後、流体塗布部240が、制御部260から出力された流体塗布情報に従って、各スライスデータにおける立体造形物を構成する領域の薄膜上に結合用流体塗布部301から結合用流体を塗布する。一方、立体造形物を構成しない領域の薄膜には、剥離用流体塗布部302から剥離用流体を塗布する。
その後、赤外光照射部240が、制御部260から出力された赤外光照射情報に従って、薄膜全体に赤外光を照射する。赤外光の照射によって結合用流体が塗布された領域の温度が部分的に大きく上昇し、粉末材料に含まれる熱可塑性樹脂が溶融する。これにより、造形物層が形成される。
その後、ステージ支持部250は、制御部260から出力された位置制御情報に従って、モーターおよび駆動機構(いずれも不図示)を駆動し、造形ステージ210を、積層ピッチだけ鉛直方向下方(図中矢印方向)に移動する。
表示部270は、必要に応じて、制御部260の制御を受けて、ユーザーに認識させるべき各種の情報やメッセージを表示する。操作部275は、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、その入力操作に応じた操作信号を制御部260に出力する。たとえば、形成される仮想の立体造形物を表示部270に表示して所望の形状が形成されるか否かを確認し、所望の形状が形成されない場合は、操作部275から修正を加えてもよい。
制御部260は、必要に応じて、記憶部280へのデータの格納または記憶部280からのデータの引き出しを行う。
これらの動作を繰り返すことで、造形物層が積層され、立体造形物が製造される。
以下において、本発明の具体的な実施例を説明する。なお、これらの実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
<ナノセルロースの作製>
スギノマシン製カルボキシメチルセルロースを、吉田機械興業製ナノヴェイダでナノセルロースのサイズが、表1に示す平均繊維径および平均繊維長になるまで繰り返し解繊を行い、乾燥させた。
<粉末材料の調製>
・実施例1
Xplore Instruments社製小型混練機に、解繊したナノセルロースとポリアミド12樹脂((以下、「PA12」とも称する)ダイセル・エボニック社製、ダイアミドL1600)とを、ナノセルロースの割合が粉末材料全量に対して1質量%になるように混合して投入し、180℃、100rpmで加熱混合した。前記混合物を冷却後、日本ニューマチック工業(株)製ラボジェットを用いて粉砕し、平均粒子径50μmの粉末材料を得た。なお、平均粒子径はマイクロトラック・ベル社製MT−3000IIを用い、レーザー回折式測定法により測定した。
・実施例2
ナノセルロースの割合が粉末材料全量に対して30質量%になるように混合し、混練機に投入した以外は実施例1と同様の方法で粉末材料を得た。
・実施例3
ナノセルロースの割合が粉末材料全量に対して70質量%になるように混合し、混練機に投入した以外は実施例1と同様の方法で粉末材料を得た。
・実施例4
ナノセルロースの割合が粉末材料全量に対して75質量%になるように混合し、混練機に投入した以外は実施例1と同様の方法で粉末材料を得た。
・実施例5〜8
ナノセルロースの平均繊維径および平均繊維長が表1に示す値となるように解繊した以外は、それぞれ実施例2と同様の方法で粉末材料を得た。
・比較例1
ナノセルロースを混合しなかった以外は、実施例1と同様の方法で粉末材料を得た。
<立体造形物の作製>
上記実施例1〜8、および比較例1で作製した粉末材料を、ホットプレート上に設置した造形ステージ上に敷き詰めて厚さ0.1mmの薄層を形成し、160℃に予備加熱を行った。この薄層に、ISO527−2−1BAの試験片形状(最大長さ:75mm、最大幅:10mm)に結合用流体をインクジェット法にて塗布した。結合用流体は、トリエチレングリコール95質量部(比誘電率:23.7)と、赤外光吸収剤(カーボンブラック(キャボット社製Mogul−L))5質量部とを含むものを用いた。結合用流体の塗布量は、1mm当たり、30μLとした。次いで、当該結合用流体を塗布した以外の領域に剥離用流体をインクジェット法にて塗布した。剥離用流体は、n−デカン(比誘電率:2.0)とした。また、剥離用流体の塗布量は、1mm当たり、30μLとした。その後、薄層に赤外ランプから赤外光を照射して、結合用流体を塗布した領域の表面温度が220℃になるまで加熱した。これにより、結合用流体を塗布した領域の粉末材料が溶融結合し、造形物層が作製された。そして、当該工程を10回繰り返し、造形物層が10層積層された立体造形物を製造した。
<立体造形物における精度の評価>
各立体造形物について、デジタルノギス(株式会社ミツトヨ製、スーパキャリパCD67−S PS/PM、「スーパキャリパ」は同社の登録商標))で長さ方向の寸法を測定した。製造しようとした寸法(最大長さ75mm)と、作製した立体造形物の寸法との差を平均して、造形精度のずれとした。このとき、評価は以下の基準で行った。
◎:基準長75mmに対して誤差±0.05mm未満
〇:基準長75mmに対して誤差±0.05mm以上〜±0.15mm未満
△:基準長75mmに対して誤差±0.15mm以上〜±0.3mm未満
×:基準長75mmに対して誤差±0.3mm以上
<粉末材料の損失弾性率の特定>
・粉末材料の溶融温度の特定
ホットプレートを180℃、185℃、190℃、195℃、および200℃にそれぞれ保った。作製した粉末材料を直径5cmのアルミホイル皿に1g敷き詰め、各温度に設定したホットプレート上に置いた。そして、粉末材料の融着状態を確認し、融着開始が認められた温度を、粉末材料の溶融温度として特定した。
・損失弾性率の測定
(試料の調製)
加圧成型機(エヌピーエーシステム株式会社製、NT−100H)を用いて、常温で粉末材料を30kNで1分間加圧して、樹脂組成物を直径約8mm、高さ約2mmの円柱状試料に成型した。
(測定手順)
上記装置が有するパラレルプレートの温度を150℃に調温して、上記のように調製した円柱状の試料を加熱溶融させた。その後、axial forceが10g重)を超えないように垂直方向に荷重をかけて、パラレルプレートに上記試料を固着させた。この状態でパラレルプレートおよび該円柱状試料を測定開始温度250℃まで加熱し、徐冷しながら粘弾性データを測定した。測定されたデータを、Microsoft社製Windows7を搭載したコンピュータに転送し、ソフト(TRIOS)を通じて、上記コンピュータの制御、データ収集および解析を行い、上述の粉末材料の溶融温度±20℃の範囲における損失弾性率(Pa)の値を読み取った。
そして、粉末材料の溶融温度±20℃における損失弾性率の最小値に対する、粉末材料の溶融温度±20℃における損失弾性率の最大値(最大値/最小値)の値を算出した。
(測定条件)
測定周波数 :6.28ラジアン/秒
測定歪みの設定 :初期値を0.1%に設定し、自動測定モードにて測定を行った
試料の伸長補正 :自動測定モードにて調整した
測定温度 :250℃から100℃まで毎分5℃の割合で徐冷した
測定間隔 :1℃ごとに粘弾性データを測定した
Figure 2018199283
上記表1に示されるように、ナノセルロースを含む粉末材料からなる薄層に結合用流体および剥離用流体を塗布して立体造形物を作製した場合(実施例1〜8)、得られた立体造形物の寸法精度が良好であった。ただし、結合用流体が含む溶媒の比誘電率が50超である場合には、造形精度が低下した(比較例2)。結合用流体が含む溶媒の比誘電率が高すぎると、溶媒とナノセルロースとの親和性が過度に高まり、毛管現象が誘発されたこと等によって、かえって造形精度が低下したと推察される。また、結合用流体が含む溶媒の比誘電率が20未満である場合にも、造形精度が低かった(比較例3)。結合用流体が含む溶媒とナノセルロースとの親和性が低く、結合用流体中の成分の拡散を十分に防ぐことができなかったと推察される。
<結合用流体の調製>
・実施例9
エチレングリコール(比誘電率:38.7)94.5質量部と、ナノセルロース0.5質量部と、赤外光吸収剤5.0質量部とを、超音波分散機を用いて混合した。
・実施例10〜12および比較例4
溶媒を表2に示すものとし、結合用流体の全量に対する、ナノセルロースの量を表2に示す値となるように変更し、さらに平均繊維径および平均繊維長が表2に示すナノセルロースを用いた以外は、実施例7と同様に結合用流体を調製した。なお、赤外光吸収剤の量は一定とし、ナノセルロースの量は、溶媒の量によって調整した。また、比較例4では、ナノセルロースを混合しなかった。
<立体造形物の作製>
表2に示すように、平均粒子径50μmのPA12もしくはポリプロピレンからなる粉末材料を、ホットプレート上に設置した造形ステージ上に敷き詰めて厚さ0.1mmの薄層を形成し、160℃に予備加熱を行った。この薄層に、ISO527−2−1BAの試験片形状(最大長さ:75mm、最大幅:10mm)に、各実施例で調製した結合用流体をインクジェット法にて塗布した。結合用流体の塗布量は、1mm当たり、30μLとした。次いで、当該結合用流体を塗布した以外の領域に剥離用流体をインクジェット法にて塗布した。剥離用流体は、n−デカン(比誘電率:2.0)もしくはn−ドデカン(比誘電率:2.0)とした。剥離剤流体の塗布量は、1mm当たり、30μLとした。その後、薄層に赤外ランプから赤外光を照射して、結合用流体を塗布した領域の表面温度が220℃になるまで加熱した。上記工程を10回繰り返し、造形物層が10層積層された立体造形物を製造した。
<立体造形物における精度の評価および粉末材料の損失弾性率の特定>
上記実施例1等と同様に、作製した各立体造形物の精度を評価した。またさらに、立体造形物の作製に使用した粉末材料の溶融温度±20℃における損失弾性率の最小値に対する、粉末材料の溶融温度±20℃における損失弾性率の最大値(最大値/最小値)を算出した。結果を表2に示す。
Figure 2018199283
上記表2に示されるように、結合用流体がナノセルロースを含む場合にも、造形流体がナノセルロースを含まない場合(比較例4)と比較して造形精度が高まった(実施例9〜12)。
本発明によれば、寸法精度が高い、立体造形物を製造することができる。したがって、本発明は、立体造形法のさらなる普及に寄与するものと思われる。
200 立体造形装置
210 造形ステージ
220 薄膜形成部
221 粉末供給部
222 リコータ駆動部
222a リコータ
230 予備加熱部
231 第1のヒータ
232 第2のヒータ
235 温度測定器
240 赤外光照射部
250 ステージ支持部
260 制御部
270 表示部
275 操作部
280 記憶部
290 ベース
285 データ入力部
300 流体塗布部
301 結合用流体塗布部
302 剥離用流体塗布部
310 コンピュータ装置

Claims (11)

  1. 熱可塑性樹脂を含む粉末材料を含む薄層を形成する薄層形成工程と、
    エネルギー吸収剤を含む結合用流体、および前記結合用流体の拡散を抑制するための剥離用流体を、前記薄層の互いに隣接する領域に塗布する流体塗布工程と、
    前記流体塗布工程後の前記薄層にエネルギーを照射し、前記結合用流体を塗布した領域の前記熱可塑性樹脂を溶融させて造形物層を形成するエネルギー照射工程と、
    を含む、立体造形物の製造方法であって、
    前記粉末材料および/または前記結合用流体が多糖類のナノファイバーを含み、
    前記結合用流体は、比誘電率が20〜50である溶媒を含む、
    立体造形物の製造方法。
  2. 前記剥離用流体は、比誘電率が1〜5である溶媒を含む、
    請求項1に記載の立体造形物の製造方法。
  3. 前記薄層形成工程、前記流体塗布工程、および前記エネルギー照射工程を複数回繰返すことで、前記造形物層を積層し、立体造形物を形成する、
    請求項1または2に記載の立体造形物の製造方法。
  4. 前記流体塗布工程において、前記結合用流体および前記剥離用流体をインクジェット法で塗布する、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の立体造形物の製造方法。
  5. 前記エネルギー吸収剤が赤外光吸収剤であり、
    前記エネルギー照射工程で、赤外光を照射する、
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の立体造形物の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の立体造形物の製造方法に用いる粉末材料であって、
    熱可塑性樹脂と、
    多糖類のナノファイバーと、
    を含む、粉末材料。
  7. 前記多糖類のナノファイバーの平均繊維径が3〜30nmであり、平均繊維長が200〜10000nmである、
    請求項6に記載の粉末材料。
  8. 前記多糖類のナノファイバーが、セルロースのナノファイバーを含む、
    請求項6または7に記載の粉末材料。
  9. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の立体造形物の製造方法に用いられる結合用流体であって、
    エネルギー吸収剤と、
    多糖類のナノファイバーと、
    比誘電率が20〜50である溶媒と、
    を含む、結合用流体。
  10. 前記多糖類のナノファイバーの平均繊維径が3〜30nmであり、かつ平均繊維長が200〜10000nmである、
    請求項9に記載の結合用流体。
  11. 前記多糖類のナノファイバーが、セルロースのナノファイバーを含む、
    請求項9または10に記載の結合用流体。
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