JP6680114B2 - 粉末材料、粉末材料の製造方法、立体造形物の製造方法および立体造形装置 - Google Patents

粉末材料、粉末材料の製造方法、立体造形物の製造方法および立体造形装置 Download PDF

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Description

本発明は、粉末材料、粉末材料の製造方法、立体造形物の製造方法および立体造形装置に関する。
近年、複雑な形状の立体造形物を比較的容易に製造できる様々な方法が開発されている。立体造形物を製造する方法の一つとして、粉末床溶融結合法が知られている。粉末床溶融結合法は、造形精度が高く、かつ、積層された層間の接着強度が高いという特徴を有する。そのため、粉末床溶融結合法は、最終製品の形状または性質を確認するための試作品の製造のみならず、最終製品の製造にも用いることが可能である。
粉末床溶融結合法では、樹脂材料または金属材料を含む粒子を含む粉末材料を平らに敷き詰めて薄膜を形成し、薄膜上の所望の位置にレーザを照射して、粉末材料に含まれる粒子を選択的に焼結または溶融させて結合させる(以下、焼結または溶融によって粒子が結合することを単に「溶融結合」ともいう。)ことで、立体造形物を厚さ方向に微分割した層(以下、単に「造形物層」ともいう。)のひとつを形成する。こうして形成された層の上に、さらに粉末材料を敷き詰め、レーザを照射して粉末材料に含まれる粒子を選択的に溶融結合させることで、次の造形物層を形成する。この手順を繰り返して、造形物層を積み上げていくことで、所望の形状の立体造形物が製造される。
特許文献1には、熱可塑性樹脂からなる母粒子と、上記微小球体の表面の少なくとも一部を被覆することで凝集防止作用を奏する、ポリメタクリル酸メチルなどの有機材料からなる子粒子とを含む、粉末床溶融結合法に用いられる粉末材料が記載されている。特許文献1には、上記粉末材料は凝集性が低いことから流動性が高く、薄層を形成するときの充填密度を高めることができるため、立体造形物の精度や強度を高めることができると記載されている。
特開2006−321711号公報
特許文献1には、熱可塑性樹脂からなる微小球体の表面の少なくとも一部をポリメタクリル酸メチル等の有機材料で被覆すると、従来よりも薄層の充填密度を高めて、立体造形物の精度を高めることができると記載されている。しかし、立体造形が普及するにつれて、造形物に求められる精度も高くなっており、より高精細な立体造形物を製造するためにはまだ改善の余地がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、熱可塑性樹脂を含む母粒子と第2の樹脂を含む子粒子とを含有する複合粒子を含む粉末床溶融結合法用の粉末材料であって、より高精細な立体造形物を製造できる粉末材料を提供することをその目的とする。本発明はさらに、そのような粉末材料の製造方法、そのような粉末材料を用いた立体造形物の製造方法、およびそのような粉末材料を用いて立体造形物を製造することができる立体造形装置を提供することを、その目的とする。
本発明は、以下の粉末材料、粉末材料の製造方法、立体造形物の製造方法および立体造形物の製造装置に関する。
[1] 複合粒子を含む粉末材料の薄層にレーザ光を選択的に照射して、前記複合粒子が焼結または溶融結合してなる造形物層を形成し、前記造形物層を積層することによる立体造形物の製造に使用される粉末材料であって、
前記複合粒子は、平均粒子径が1μm以上100μm以下の熱可塑性樹脂を含む母粒子と、前記母粒子の表面に固着した、前記熱可塑性樹脂よりも体積抵抗率が低い第2の樹脂を含む子粒子と、を含み、
前記粉末材料は、100質量部の前記熱可塑性樹脂に対して0.5質量部以上10質量部以下の前記第2の樹脂を含有し、
前記粉末材料に対する、前記粉末材料を水中で超音波分散処理した後の前記第2の樹脂の残存率が、20質量%以上である、粉末材料。
[2] 前記子粒子の平均粒子径は、10nm以上500nm以下である、[1]に記載の粉末材料。
[3] 前記第2の樹脂の体積抵抗値は、前記熱可塑性樹脂の体積抵抗値の1/10以下である、[1]または[2]に記載の粉末材料。
[4] 前記第2の樹脂の体積抵抗値は、前記熱可塑性樹脂の体積抵抗値の1/100以下である、[1]または[2]に記載の粉末材料。
[5] 前記母粒子の平均粒子径は、5μm以上70μm以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載の粉末材料。
[6] 前記第2の樹脂の残存率は、30質量%以上である、[1]〜[5]のいずれかに記載の粉末材料。
[7] 前記熱可塑性樹脂が、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ポリカーボネートから選択される1種以上の樹脂である[1]〜[6]のいずれかに記載の粉末材料。
[8] 前記第2の樹脂は、前記熱可塑性樹脂よりもガラス転移点Tgの高い樹脂である[1]〜[7]のいずれかに記載の粉末材料。
[9] 前記第2の樹脂が前記熱可塑性樹脂とは主骨格の化学構造が異なる樹脂である[1]〜[8]のいずれかに記載の粉末材料。
[10] 前記第2の樹脂が前記熱可塑性樹脂とは主骨格の化学構造が同じ樹脂である[1]〜[8]のいずれかに記載の粉末材料。
[11] 複合粒子を含む粉末材料の薄層にレーザ光を選択的に照射して、前記複合粒子が焼結または溶融結合してなる造形物層を形成し、前記造形物層を積層することによる立体造形物の製造に使用される粉末材料の製造方法であって、
平均粒子径が1μm以上100μm以下の熱可塑性樹脂を含む粒子と、前記熱可塑性樹脂よりも体積抵抗率が低い第2の樹脂を含む微粒子とを用いて、100質量部の前記熱可塑性樹脂に対する前記第2の樹脂の量が0.5質量部以上10質量部以下となる質量比で、混合装置によって混合および撹拌する工程を含む、製造方法。
[12] 前記混合および撹拌する工程においては、平均粒子径が10nm以上500nm以下である前記第2の樹脂を含む微粒子を用いる、[11]に記載の製造方法。
[13] [1]〜[10]のいずれか一項に記載の粉末材料または[11]もしくは[12]に記載の製造方法で製造された粉末材料の薄層を形成する工程と、
前記形成された薄層にレーザ光を選択的に照射して、前記粉末材料に含まれる複合粒子が焼結または溶融結合してなる造形物層を形成する工程と、
前記薄層を形成する工程と、前記造形物層を形成する工程と、をこの順に繰り返し、前記造形物層を積層する工程と、
を含む立体造形物の製造方法。
[14] 造形ステージと、
[1]〜[10]のいずれかに記載の粉末材料の薄膜を前記造形ステージ上に形成する薄膜形成部と、
前記薄膜にレーザを照射して、前記粉末材料に含まれる前記複合粒子が焼結または溶融結合してなる造形物層を形成するレーザ照射部と、
前記造形ステージを、その鉛直方向の位置を可変に支持するステージ支持部と、
前記薄膜形成部、前記レーザ照射部および前記ステージ支持部を制御して、前記造形物層を繰り返し形成させて積層させる制御部と、
を備える、立体造形装置。
本発明によれば、実質的に樹脂からなる複合粒子を含む粉末床溶融結合法用の粉末材料であって、より高精細な立体造形物を製造できる粉末材料、そのような粉末材料の製造方法、そのような粉末材料を用いた立体造形物の製造方法、およびそのような粉末材料を用いて立体造形物を製造することができる立体造形装置が提供される。
図1は本発明の一実施形態における粉末材料の構成を模式的に示す図である。 図2は本発明の一実施形態における粉末材料の製造方法の各工程の流れを示す図である。 図3は本発明の一実施形態における立体造形装置の構成を概略的に示す側面図である。 図4は本発明の一実施形態における立体造形装置の制御系の主要部を示す図である。
前述の課題を解決すべく、本発明者らは粉末床溶融結合法による立体造形物の製造が可能な粉末材料について鋭意検討および実験を行った。その結果、本発明者らは、粉末材料の流動性を高めると、粒子と造形ステージとの間の摩擦や複数の粒子間の摩擦などで生じた電荷によって粒子が帯電し、帯電した粒子同士が電気的に反発しあいやすくなることを見出した。この電気的な反発は、薄層を形成するときに粒子間の隙間を生じやすくして、粒子の密な充填を阻害する。この知見に基づき、本発明者らは、粒子を帯電しにくくすることで、薄膜を形成するときに粒子をさらに密に充填させる方法を検討し、本発明を完成させた。
本発明の一実施形態に係る粉末材料は、熱可塑性樹脂を含む母粒子の表面に子粒子が固着した複合粒子を含む。上記子粒子は、母粒子を構成する熱可塑性樹脂(以下、母粒子を構成する熱可塑性樹脂を「第1の樹脂」ということがある。)よりも体積抵抗率が低い第2の樹脂を含む。このような構成とすることで、上記摩擦などで生じた電荷は、母粒子から、体積抵抗値がより低い第2の樹脂を含む子粒子を通して、複合粒子の外部に放出されやすくなるため、複合粒子がより帯電しにくくなると考えられる。
なお、本発明者らのさらに新たな知見によると、特許文献1では、粒子の流動性の改善に重きが置かれ、粒子間の静電的な反発については考慮されていない。更に特許文献1などに記載のように、熱可塑性樹脂を含む粒子および樹脂を含む微粒子を投入した袋を単に振とうさせるのみだと、樹脂を含む微粒子(以下、母粒子に固着していない上記微粒子(固着させる前の微粒子を含む。)を単に「微粒子」ということがある。)を十分に母粒子(熱可塑性樹脂を含む粒子)に固着させることができない。そのため、上記単に振とうさせるのみで作製した粉末材料中には、母粒子に付着しきれなかった微粒子が多量に遊離して存在する。この遊離して存在する微粒子は、複合粒子の転がり抵抗を減少させ、複合粒子と造形ステージとの間の相対的な移動や複数の複合粒子間の相対的な移動を補助する作用を有する。そのため、上記遊離した微粒子が粉末材料中に多量に存在すると、複合粒子が移動しやすくなり、上記粒子と造形ステージとの間の摩擦や複数の粒子間の摩擦による複合粒子の帯電が生じやすくなると考えられる。
これに対し、複合粒子を含む粉末材料を作製する際に、第2の樹脂を含む微粒子をより強固に母粒子に固着させることで、上記遊離した微粒子の量を少なくすることができるため、摩擦による上記複合粒子の帯電を抑制して、複合粒子をより密に充填させることができると考えられる。上記遊離した微粒子は通常ナノサイズの微粒子であるため、粉末材料から上記遊離した微粒子のみを分離して定量することは難しいが、上記方法によれば、遊離した微粒子を生じにくくして、その数を低減させることができる。なお、上記除去の困難性に基づけば、粉末材料中の第2の樹脂の含有量を測定することで、粉末材料を作製する際に用いた第2の樹脂を含む微粒子の量を見積もることができると考えられる。
上記粉末材料は、後述する条件で超音波分散処理した後の前記第2の樹脂の残存率が、処理前の粉末材料の質量に対して20質量%以上である。粉末材料を作製する際に、上記残存率が20質量%以上になる程度に母粒子と微粒子とを強固に固着させれば、母粒子に固着しきれず粉末材料中に遊離して存在する微粒子の数はより少なくなり、上記遊離した微粒子に由来する複合粒子の帯電を十分に抑制できる。そのため、上記残存率が20質量%以上である粉末材料は、薄層を形成するときに複合粒子をより密に充填させることができると考えられる。このような粉末材料を用いて粉末床溶融結合法で立体造形を行うと、薄層中に粒子が充填されずに生じた隙間に由来する造形物の欠損が生じにくいため、より高精度であり、かつ、より強度が強い立体造形物を製造することが可能になると考えられる。
本発明者らが確認したところ、上記残存率が20質量%以上である粉末材料を作製するためには、両者を機械的に撹拌する必要がある。これに対し、特許文献1に記載のように、熱可塑性樹脂を含む粒子および第2の樹脂を含む微粒子を投入した袋を単に振とうさせるのみだと、上記残存率は20質量%未満にしかならず、そのため、本発明の一実施形態に係る粉末材料と比べて、立体造形物の精度が十分に高まらない。これは、振とうによる撹拌のみで作製した粉末材料では、母粒子に固着できなかった微粒子が多量に遊離して存在するため、上記摩擦による複合粒子の帯電が生じやすく、複合粒子を密に充填しきれなかったためと考えられる。
以下、本発明の代表的な実施形態を詳細に説明する。
1.粉末材料
本実施形態は、複合粒子を含む粉末材料の薄層にレーザ光を選択的に照射して、前記複合粒子が溶融結合してなる造形物層を形成し、前記造形物層を積層することによる立体造形物の製造に使用される粉末材料(以下、単に「粉末材料」ともいう。)に係る。上記複合粒子は、熱可塑性樹脂を含む母粒子と、母粒子の表面に固着した第2の樹脂を含む子粒子とを含む。また、上記粉末材料は、100質量部の前記熱可塑性樹脂に対して0.5質量部以上10質量部以下の上記第2の樹脂を含有する。また、上記粉末材料を水中で超音波分散処理した後の前記第2の樹脂の残存率は、処理前の粉末材料に対して20質量%以上である。上記粉末材料は、レーザ照射による溶融結合および薄層を形成するときの複合粒子の密な充填を顕著に妨げず、立体造形物の精度を顕著に低下させない範囲において、レーザ吸収剤やフローエージェントなどの、上記母粒子や母粒子に固着している子粒子以外の材料や粒子をさらに含んでもよい。
1−1.複合粒子
上記粉末材料は、上記複合粒子として、熱可塑性樹脂(第1の樹脂)を含む母粒子と、前記母粒子の表面に固着した、前記熱可塑性樹脂よりも体積抵抗率が低い第2の樹脂を含む子粒子と、を含む。図1に、母粒子11と子粒子12とを含む粉末材料10を模式的に示す。
上記母粒子が含み得る熱可塑性樹脂は、加熱によって軟化および溶融するものであればよい。上記熱可塑性樹脂の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン(ナイロン6およびナイロン12など)、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニルサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、結晶性ポリエステルを含む結晶性の樹脂、ならびにポリスチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレンコポリマ(ABS)、アクリルポリマー、ポリカーボネート、エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA)、スチレン・アクリロニトリルコポリマー(SAN)、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテルおよびポリカプロラクトンを含む非結晶性の樹脂などが含まれる。樹脂を成型する際の温度や、加工の容易さの観点から、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ポリカーボネートが好ましい。
母粒子は、一種類の熱可塑性樹脂のみを含んでもよいし、二種類以上の熱可塑性樹脂を組み合わせて含んでもよい。母粒子が二種類以上の熱可塑性樹脂を組み合わせて含んでいる場合には、コアとなる樹脂粒子の周りに、シェルとなる他の樹脂を被覆したコアシェル形態の樹脂粒子でもよい。また、粉末材料は、母粒子を構成する熱可塑性樹脂が同一である単種類の複合粒子のみを含んでいてよいし、母粒子を構成する熱可塑性樹脂の種類が異なる二種類以上の複合粒子を組み合わせて含んでもよい。
熱可塑性樹脂(第1の樹脂)を含む母粒子は、実質的に熱可塑性樹脂のみからなることが好ましいが、立体造形物が所望の特性を有しうる程度であれば、上記母粒子を製造する際に用いられる成分の残渣などの、熱可塑性樹脂以外の成分を含んでいてもよい。
上記母粒子の平均粒子径は、1μm以上100μm以下である。上記平均粒子径が1μm以上であると、粉末材料の流動性が十分に高まり、立体造形物を製造する際の粉末材料の取り扱いが容易になる。また、上記平均粒子径が1μm以上であると、母粒子の作製が容易であり、粉末材料の製造コストが高くならない。上記平均粒子径が100μm以下であると、比較的精細の高い立体造形物を製造することが可能となる。粉末材料の取り扱いをより容易にし、粒子の製造をより容易にし、かつ、立体造形物の精度をより高くする観点からは、母粒子の平均粒子径は、5μm以上70μm以下であることがより好ましく、20μm以上60μm以下であることがさらに好ましい。立体造形物の精度をさらに高くする観点からは、母粒子の平均粒子径の上限を50μmとすることが好ましく、40μmとすることがより好ましく、30μmとすることがさらに好ましい。
本明細書において、粒子の平均粒子径は、動的光散乱法により測定した個数平均粒子径を意味する。体積平均粒子径は、たとえば湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置(シンパティック(SYMPATEC)社製、ヘロス(HELOS))により測定することができる。また、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)により撮像した樹脂の顕微鏡画像中から任意に選択した100個の粒子の粒子径を測定し、その平均値を粒子の平均粒子径としてもよい。
母粒子として使用可能なコアシェル形態の樹脂粒子は、コア樹脂と、コア樹脂を被覆するシェル樹脂とを含み、シェル樹脂を構成する材料の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度(以下、この温度を単にTS(65)と記載することがある。)は、コア樹脂を構成する材料の貯蔵弾性率G’が106.5Pa(以下、この温度を単にTC(65)と記載することがある。)になる温度よりも高いものが好ましい。
コア樹脂およびシェル樹脂の材料は、加熱によって軟化および溶融するものである限り、いかなる樹脂であってもよい。コア樹脂およびシェル樹脂の材料の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニルサルファイドおよびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、結晶性ポリエステルを含む結晶性の樹脂、ならびにポリスチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレンコポリマ(ABS)、アクリルポリマー、ポリカーボネート、エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA)、スチレン・アクリロニトリルコポリマー(SAN)、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテルおよびポリカプロラクトンを含む非結晶性の樹脂が含まれる。
これらのうち、非結晶性の樹脂は、従来の方法では造形精度を高くすることが難しかったが、上記貯蔵弾性率G’の関係を満たすコアシェル構造を有する樹脂粒子によれば、造形精度をより高めることが可能となる。上記観点からは、コア樹脂の材料は非結晶性の樹脂であることが好ましい。
上記貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度、および貯蔵弾性率G’が後述する各値になる温度は、公知の方法で測定して得た値とすることができる。本明細書では、貯蔵弾性率測定装置(ティー・エイ・インスツルメント社製、ARES−G2レオメータ)を用いて以下の方法で測定して得られた値を上記貯蔵弾性率G’とする。
(試料の調製)
コア樹脂およびシェル樹脂いずれか一方のみを溶解する溶剤で、樹脂粒子を構成するコア樹脂またはシェル樹脂を分離および抽出し、乾燥させて粉末状にする。加圧成型機(エヌピーエーシステム株式会社製、NT−100H)を用いて、得られた粉末を常温で30kNに1分間加圧して、直径約8mm、高さ約2mmの円柱状試料に成型する。
(測定手順)
上記装置が有するパラレルプレートの温度を150℃に温調して、上記調製した円柱状の試料を加熱溶融させた後、axial forceが10(g重)を超えないように垂直方向に荷重をかけて、パラレルプレートに上記試料を固着させる。この状態でパラレルプレートおよび該円柱状試料を測定開始温度250℃まで加熱し、徐冷しながら粘弾性データを測定する。測定されたデータは、Microsoft社製Windows7(「Windows」は同社の登録商標)を搭載したコンピュータに転送し、上記コンピュータ上で動作する制御、データ収集および解析ソフト(TRIOS)を通じてデータ転送し、各温度における貯蔵弾性率G’(Pa)の値を読み取る。
(測定条件)
測定周波数 :6.28ラジアン/秒。
測定歪みの設定 :初期値を0.1%に設定し、自動測定モードにて測定を行う。
試料の伸長補正 :自動測定モードにて調整する。
測定温度 :250℃から100℃まで毎分5℃の割合で徐冷する。
測定間隔 :1℃ごとに粘弾性データを測定する。
コアシェル構造有する樹脂粒子を母粒子として含む粉末材料は、コア樹脂を構成する材料の貯蔵弾性率G’が106.5Paの近辺となる温度に予備加熱したときの造形精度が、従来の粉末材料よりも高い。このとき、シェル樹脂を構成する材料の貯蔵弾性率G’は106.5Paよりも高いため、シェル樹脂が形成する樹脂粒子の外膜は軟化しにくく、樹脂粒子の変形は生じにくい。一方で造形時にレーザを照射すると、シェル樹脂を構成する材料は軟化、溶融または消失して、樹脂粒子は溶融し、結合する。レーザ照射時にシェル樹脂を軟化、消失または溶融しやすくして、コアシェル構造を有する樹脂粒子を溶融結合させやすくし、より短時間での立体造形物の製造を可能にする観点からは、シェル樹脂を構成する材料が軟化、溶融または消失する温度と、コア樹脂を構成する材料が軟化および溶融する温度と、の差は小さいことが好ましい。さらには、コア樹脂が加熱されて比容量が大きくなることによる体積変化を少なくする観点からも、上記温度の差は小さいほうが好ましい。さらには一方で、待機温度でシェル樹脂を構成する材料が軟化することによる樹脂粒子の変形を抑制する観点からは、上記温度の差は小さすぎないほうが好ましい。上記温度の差は、シェル樹脂を構成する材料の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TS(65)と、前記コア樹脂を構成する材料の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TC(65)との差から推測することができる。このような観点から、TS(65)とTC(65)との差は、5℃以上70℃以下であることが好ましく、10℃以上70℃以下であることがより好ましく、10℃以上60℃以下であることがさらに好ましく、30℃以上60℃以下であることがさらに好ましい。
また、上記コア樹脂を構成する材料の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TC(65)は、粉末床溶融結合法に用いる公知の装置で予備加熱を行うことによりコア樹脂を調温可能な範囲に含まれることが好ましい。上記観点からは、TC(65)は、50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上300℃以下であることがより好ましく、100℃以上250℃以下であることがさらに好ましく、140℃以上250℃以下であることがさらに好ましく、140℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。
また、上記シェル樹脂を構成する材料の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TS(65)は、コア樹脂の選択の自由度を確保しつつ、レーザ光の照射によって溶融しやすくするような温度範囲にあることが好ましい。上記観点からは、TS(65)は、100℃以上350℃以下であることが好ましく、150℃以上350℃以下であることがより好ましく、150℃以上330℃以下であることがさらに好ましく、250℃以上330℃以下であることがさらに好ましく、250℃以上300℃以下であることがさらに好ましい。
また、レーザ照射後の造形物の変形をより生じにくくする観点からは、コア樹脂は、レーザ照射後の冷却時により短い時間で固まることが好ましい。上記観点からは、コア樹脂を構成する材料が軟化する温度(貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TC(65))と、コア樹脂を構成する材料が変形しない程度に硬くなる温度(貯蔵弾性率G’が107.0Paになる温度(以下、TC(70)と記載することもある)との温度差は小さいほうがよい。具体的には、|TC(70)−TC(65)|は10℃以上100℃以下であることが好ましく、10℃以上80℃以下であることがより好ましく、15℃以上80℃以下であることがさらに好ましく、20℃以上80℃以下であることがさらに好ましく、20℃以上50℃以下であることがさらに好ましい。
コアシェル構造を有する樹脂粒子について、コア樹脂の貯蔵弾性率G’が特定の数値を示す温度を測定するには、当該コアシェル構造を有する樹脂粒子をそのまま上述の手順で粘弾性特性を測定すればよい。一方、コアシェル構造を有する樹脂粒子について、シェル樹脂の貯蔵弾性率G’が特定の数値を示す温度を測定するには、まず、コアのみを溶解する溶媒に樹脂粒子を溶解するなどしてコア成分を除去した上で、残ったシェル樹脂に対して上述の手順で粘弾性特性を行えばよい。
なお、本明細書において、コアシェル構造とは、コア樹脂から基本的に構成されるコア粒子の表面のうちシェル樹脂によって被覆されている部分の面積の割合が90%以上であることを意味する。実用上は、多数の樹脂粒子の断面を透過電子顕微鏡(TEM)で撮像して得た画像中で、任意に選択した10個のコア粒子について、コア粒子の表面のうちシェル樹脂によって被覆されている部分の割合を実測し、それらの平均値が90%以上であれば、それらの樹脂粒子がコアシェル構造を有するものとみなす。
コア樹脂の平均粒子径は、平均粒子径は、0.5μm以上75μm以下であることが好ましい。上記平均粒子径が0.5μm以上であると、粉末材料が十分な流動性を有するため、立体造形物を製造する際の粉末材料の取り扱いが容易になる。また、上記平均粒子径が0.5μm以上であると、コア樹脂の作製が容易であり、粉末材料の製造コストが高くならない。上記平均粒子径が75μm以下であると、より高精細な立体造形物を製造することが可能となる。上記観点からは、コア樹脂の平均粒子径は、1μm以上70μm以下であることがより好ましい。本明細書においては、多数の樹脂粒子の断面をTEMで撮像して得た画像中で、ランダムに選択した10個の樹脂粒子について、シェル樹脂の厚みを10点実測し、それらの平均値をシェル樹脂の平均厚みとする。
粒子状のシェル樹脂がコア樹脂を被覆するとき、シェル樹脂の平均厚みは、コア樹脂の平均粒子径よりも小さくすることが好ましく、コア樹脂の平均粒子径の半分以下とすることがより好ましい。具体的には、0.5μm以上30μm以下であることが好ましい。上記平均粒子径が0.5μm以上であると、予備加熱時に樹脂粒子間の凝集が生じることを抑制しやすくなる。また、上記平均粒子径が30μm以下であると、造形物に反り等の変形が生じるのを抑制しやすくなる。シェル樹脂の平均厚みは、0.5μm以上20μm以下であることがより好まし。本明細書においては、多数の樹脂粒子の断面をTEMで撮像して得た画像中で、ランダムに選択した10個の樹脂粒子について、シェル樹脂の厚みを10点実測し、それらの平均値をシェル樹脂の平均厚みとする。
コア樹脂およびシェル樹脂の量は、上記コアシェル構造の樹脂粒子が形成される量であればよい。たとえば、コア樹脂100質量部に対するシェル樹脂の量は、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上15質量部以下であることがさらに好ましく、1質量部以上15質量部以下であることがさらに好ましく、1質量部以上10質量部以下であることがさらに好ましい。
上記母粒子の表面に固着した子粒子が含む第2の樹脂は、母粒子の材料として選択した第1の樹脂よりも体積抵抗率が低いものであればよい。第2の樹脂の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン(ナイロン6およびナイロン12など)、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニルサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、アセチルセルロース、結晶性ポリエステルを含む結晶性の樹脂、ならびにポリスチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレンコポリマ(ABS)、スチレン・ブタジエンコポリマ、アクリルポリマー、ポリカーボネート、エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA)、スチレン・アクリロニトリルコポリマー(SAN)、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテルおよびポリカプロラクトンを含む非結晶性の樹脂などが含まれる。樹脂の体積抵抗値の観点から、ポリ塩化ビニルとアセチルセルロースが好ましい。
第2の樹脂は、母粒子の材料として選択した熱可塑性樹脂(第1の樹脂)とは主骨格の化学構造が異なる樹脂であっても、主骨格の化学構造が同じ樹脂であってもよい。樹脂の体積抵抗値を下げる観点からは、子粒子の材料として選択した第2の樹脂の主骨格の化学構造が、母粒子の材料として選択した第1の樹脂と異なることが好ましい。一方、実質的に単一の樹脂からなる造形物が得られるという観点からは、子粒子の材料として選択した第2の樹脂の主骨格の化学構造が、母粒子の材料として選択した第1の樹脂と同じであることが好ましい。
また、子粒子の耐熱性を高める観点から、第2の樹脂は、母粒子の材料として選択した第1の樹脂よりもガラス転移点(Tg)の高い樹脂であることが好ましい。第2の樹脂のガラス転移点Tgは、母粒子の材料として選択した第1の樹脂よりも5℃以上高いことが好ましく、10℃以上高いことがより好ましく、その上限は360℃程度である。第1の樹脂と第2の樹脂との間のガラス転移点Tg差が5℃以上あれば、造形中の待機温度が設定よりも若干高くなった場合でも、第2の樹脂は溶融しないため、粉末材料同士の付着を防ぐことが可能となる。
子粒子は、一種類の樹脂のみを含んでもよいし、二種類以上の樹脂を組み合わせて含んでもよい。また、粉末材料は、子粒子を構成する樹脂が同一である単種類の複合粒子のみを含んでいてよいし、子粒子を構成する樹脂の種類が異なる二種類以上の複合粒子を組み合わせて含んでもよい。子粒子が二種類以上の樹脂を含む場合は、いずれの樹脂も体積抵抗値が母粒子に含まれる熱可塑性樹脂の体積抵抗値より小さいことが好ましい。
上記子粒子は、実質的に上記樹脂のみからなることが好ましいが、立体造形物が所望の特性を有しうる程度であれば、上記子粒子を製造する際に用いられる成分の残渣などの、樹脂以外の成分を含んでいてもよい。
複合粒子をより帯電しにくくする観点からは、上記熱可塑性樹脂と第2の樹脂との体積抵抗率の差は大きいほうがよい。上記観点からは、第2の樹脂の体積抵抗率は、熱可塑性樹脂の体積抵抗率の1/10以下であることが好ましく、1/100以下であることがより好ましい。
本明細書において、熱可塑性樹脂および第2の樹脂の体積抵抗率は、たとえば以下の方法で測定した値とすることができる。ただし、各材料について公知の値またはメーカーが公表している値がある場合は、その値を採用してもよい。
(体積抵抗率の測定方法の例)
粉末状の材料に、3tの圧力をかけて、9cm×9cm×5cmの円筒状に成形する。この円筒状の材料の体積抵抗率を、三菱化学アナリテック社製、ハイレスターUX MCP−HT800で測定する。
上記子粒子の平均粒子径は、上記残存率を達成でき、かつ、粉末材料の流動性を顕著に損なわない程度であればよく、たとえば、10nm以上500nm以下とすることができる。上記平均粒子径が10nm以上であると、子粒子の作製がより容易であり、粉末材料の製造コストが高くならない。上記平均粒子径が500nm以下であると、母粒子への固着強度を高めやすく、上記残存率を達成しやすくなる。また、上記平均粒子径が500nm以下であると、複合粒子の形状をより球形に近けることができるため、粉末材料の流動性が低くなりにくい。母粒子への固着強度をより高める観点からは、上記子粒子の平均粒子径はより小さいことが好ましく、たとえば10nm以上100nm以下であることが好ましく、10nm以上55nm以下であることがより好ましい。本明細書においては、多数の複合粒子の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で撮像して得た画像中で、ランダムに選択した10個の樹脂粒子について、子粒子の粒子径を実測し、それらの平均値を複合粒子が含む子粒子の平均粒子径とする。
粉末材料は、100質量部の前記熱可塑性樹脂に対して0.5質量部以上10質量部以下の上記第2の樹脂を含有する。上記含有量が0.5質量部以上であると、複合粒子をより帯電しにくくして、立体造形物の造形精度をより高めることができる。上記含有量が10質量部以下であると、母粒子に固着した微粒子同士の間に適度な隙間が存在するため、粉末材料によって薄層を形成するときの充填密度を高めることができる。上記観点からは、100質量部の前記熱可塑性樹脂に対する前記第2の樹脂の量は、0.5質量部以上7.0質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上3.0質量部以下であることがより好ましい。
なお、上記第1の樹脂および第2の樹脂の含有量は、たとえば、粉末材料が含む第1の樹脂のみを溶解する溶媒に第1の樹脂を溶解させるなどして第1の樹脂と第2の樹脂とを分離した上で、分離された第1の樹脂および第2の樹脂の含有量をそれぞれ測定して、求めることができる。また、別の方法としては、各樹脂に固有の−NH基や−Cl基等を蛍光X線分析で測定することで、第1の樹脂および第2の樹脂のそれぞれの含有量を求めることもできる。
上記子粒子は、母粒子の表面に固着している。本明細書において、表面に固着するとは、子粒子の表面の一部が母粒子の表面または内部に接触しており、かつ、子粒子の表面の他の一部が母粒子とは接触せずに外部へ露出していることを意味する。図1には、子粒子12の一部が母粒子11内に埋め込まれることで、子粒子12が母粒子11に固着されている様子を示している。
上記固着の状態は、透過型電子顕微鏡(TEM)などの公知の手段で複合粒子を観察して判定することができる。
上記子粒子は、粉末材料を水中で超音波分散処理した後の第2の樹脂の残存率が20質量%以上となる強度で、母粒子に固着している。具体的には、子粒子は、3gの粉末材料に対して、常温の水中での19.5kHz±1hKzの超音波による分散処理を3分行ったときの残存率が20質量%以上となる強度で、母粒子に固着している。なお、上記水は微量の分散剤を含有していてもよい。本明細書において、上記残存率は、たとえば以下の方法で測定した値とすることができる。
(超音波分散処理の方法の例)
ポリオキシエチレンフェニルエーテルの0.2質量%水溶液を用意する。3gの粉末材料と、40gの上記水溶液と、を100mlのプラスチックカップ中に投入して、粉末材料を上記水溶液に湿潤させる。その後、超音波式ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製、US−1200)のチップを上記水溶液に挿入して、本体装置に附属の振動指示値を示す電流計の値が60μA(50W)を示すように調整した超音波エネルギーを3分間印加する。超音波の印加後、目開き1μmのフィルターを使用して上記水溶液から濾過した粉末材料を、60mlの純水を用いて洗浄し、その後、粒子を乾燥機にて80℃2時間の条件で乾燥させ、乾燥させた粒子の重量を、乾燥後重量として測定する。次に、下記数式(1)に基づき、乾燥前重量、乾燥後重量および子粒子総量から、粒子の残存率を求める。
残存率=(3g−乾燥後重量)/子粒子総量 (1)
尚、子粒子総量は、仕込み時の子粒子の量とする。
母粒子を形成する第1の樹脂と子粒子を形成する第2の樹脂とが異なる官能基を有する樹脂である場合には、次の方法でも、第2の樹脂の残存率(%)を求めることができる。
粉末材料が十分に乾燥したら、粉末材料を加圧してペレット化し、波長分散型蛍光X線分析装置(株式会社島津製作所製、LAB CENTER XRF−1700)を用いて測定して得られるKα分析線のうち、上記第2の樹脂に由来するピークのNet強度を求める。上記手順で求められた強度を、超音波処理を行わない粉末材料から同様にして得られる強度で除算して、上記第2の樹脂の残存率(%)を求める。
上記残存率が20質量%以上であれば、複合粒子をより密に充填させることが可能となり、立体造形物の精度を十分に高めることが可能である。上記遊離した微粒子に由来する複合粒子の帯電を抑制して粒子をより密に充填させ、立体造形物の精度をより低下しにくくする観点からは、上記残存率は30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。残存率は、粉末材料を作製する際の機械による撹拌および混合の強度を変更することにより、調整することが可能である。
1−2.その他の材料
1−2−1.レーザ吸収剤
レーザの光エネルギーをより効率的に熱エネルギーに変換する観点から、粉末材料は、レーザ吸収剤をさらに含んでもよい。レーザ吸収体は、使用する波長のレーザを吸収して熱を発する材料であればよい。このようなレーザ吸収体の例には、カーボン粉末、ナイロン樹脂粉末、顔料および染料が含まれる。これらのレーザ吸収体は、一種類のみ用いても、二種類を組み合わせて用いてもよい。
レーザ吸収体の量は、複合粒子の溶融および結合が容易になる範囲で適宜設定することができ、たとえば、粉末材料の全質量に対して、0質量%より多く3質量%未満とすることができる。
1−2−2.フローエージェント
粉末材料の流動性をより向上させ、立体造形物の製造時における粉末材料の取り扱いを容易にする観点から、粉末材料は、フローエージェントをさらに含んでもよい。フローエージェントは、摩擦係数が小さく、自己潤滑性を有する材料であればよい。このようなフローエージェントの例には、二酸化ケイ素および窒化ホウ素が含まれる。これらのフローエージェントは、一種類のみ用いても、二種類を組み合わせて用いてもよい。上記粉末材料は、フローエージェントによって流動性が高まっても、複合粒子が帯電しにくく、薄膜を形成するときに複合粒子をさらに密に充填させることができる。
フローエージェントの量は、粉末材料の流動性がより向上し、かつ、複合粒子の溶融結合が十分に生じる範囲で適宜設定することができ、たとえば、粉末材料の全質量に対して、0質量%より多く2質量%未満とすることができる。
2.粉末材料の製造方法
本実施形態は、前記粉末材料の製造方法に係る。本実施形態に係る製造方法は、図2の流れ図に示すように、平均粒子径が1μm以上100μm以下の熱可塑性樹脂を含む粒子を作製する工程(工程S201)と、前記熱可塑性樹脂よりも体積抵抗率が低い第2の樹脂を含む微粒子(子粒子)を準備する工程(工程S202)と、両者を、100質量部の前記熱可塑性樹脂に対する前記第2の樹脂の量が0.5質量部以上10質量部以下となる質量比で分取して混合装置に投入する工程(工程S203)と、混合装置によってこれらを混合および撹拌する工程(工程S204)とを含む。
2−1.熱可塑性樹脂を含む粒子を作製する工程(工程S201)
上記熱可塑性樹脂は、粉末材料から製造しようとする立体造形物に所望の特性を付与できるものであればよい。上記熱可塑性樹脂の例には、上述した粉末材料の母粒子が含み得る熱可塑性樹脂が含まれる。
上記平均粒子径を有する、熱可塑性樹脂を含む粒子は、機械的粉砕法および湿式法を含む公知の方法で作製してもよいし、市販のものを用いてもよい。
機械的粉砕法では、たとえば、熱可塑性樹脂を機械的に粉砕して、目的の平均粒子径を有する粒子を作製する。機械的粉砕法によれば、たとえば、以下の方法で熱可塑性樹脂を含む粒子を作製することができる。
熱可塑性樹脂は、凍結させてから粉砕してもよいし、常温のままで粉砕してもよい。機械的粉砕法は、熱可塑性樹脂を粉砕するための公知の装置によって行うことができる。このような装置の例には、ハンマーミル、ジェットミル、ボールミル、インペラーミル、カッターミル、ピンミルおよび2軸クラッシャーなどが含まれる。なお、機械的粉砕法では、粉砕時に熱可塑性樹脂から発せられる摩擦熱によって、熱可塑性樹脂同士が融着し、所望の粒子径の粒子が得られない場合がある。そのため、液体窒素等を用いて熱可塑性樹脂を冷却し、かつ脆化させたうえで、破砕することが好ましい。
機械的粉砕法によれば、熱可塑性樹脂に対する溶媒の量、または粉砕の方法もしくは速度などを適宜調節することで、作製される粒子の平均粒子径を所望の範囲に調整することができる。
湿式法では、たとえば、界面活性剤などによって熱可塑性樹脂を分散させた分散液を乾燥させて、目的の平均粒子径を有する粒子を得る。湿式法によれば、たとえば、以下の方法で熱可塑性樹脂を含む粒子を作製することができる。
(湿式法による、熱可塑性樹脂を含む粒子の作製方法の例)
10質量部の熱可塑性樹脂を100質量部の有機溶媒に溶解させて、樹脂溶解液を得る。2000質量部の水に100質量部の非イオン性界面活性剤(たとえば、花王株式会社製、エマノーンC−25(「エマノーン」は同社の登録商標)など)を溶解させた液体中に、上記樹脂溶解液を投入して超音波処理を10分行い、樹脂分散液を得る。上記樹脂分散液をエバポレーターに投入して、減圧して有機溶剤を除去した後、減圧濾過して、樹脂粉末を得る。
湿式法によれば、樹脂、界面活性剤および分散液の量比などを適宜調節することで、作製される粒子の平均粒子径を所望の範囲に調整することができる。
更に熱可塑性樹脂を含む粒子が二種類以上の熱可塑性樹脂を含むコアシェル構造を有する粒子である場合には、たとえば、上記機械的粉砕法や湿式法などの公知の方法でコアとなる粒子を作製するか、または市販の粒子を準備し、次に粒子の表面を他の樹脂で被覆することによって得ることができる。たとえば、樹脂材料からコアシェル構造を有する粒子を製造するための公知の方法によって製造することができる。このような公知の方法の具体例としては、シェル樹脂を溶解した塗布液を用いる湿式コート法、およびコア樹脂とシェル樹脂とを撹拌混合して機械的衝撃により結合させる乾式コート法、ならびにこれらの組み合わせなどが挙げられる。湿式コート法を採用する場合、コア樹脂の表面に、上記塗布液をスプレー塗布してもよいし、コア樹脂を上記塗布液の中に浸漬してもよい。
なお、上述した理由により、熱可塑性樹脂を含む粒子の平均粒子径は、5μm以上70μm以下であることがより好ましく、20μm以上60μm以下であることがさらに好ましい
2−2.第2の樹脂を含む微粒子(子粒子)を準備する工程(工程S202)
上記第2の樹脂を含む微粒子は、母粒子として使用する熱可塑性樹脂を含む粒子と同様に、機械的粉砕法および湿式法を含む公知の方法で作製してもよいし、市販のものを用いてもよい。
上記第2の樹脂は、上記熱可塑性樹脂よりも体積抵抗率が低いものであればよい。上記第2の樹脂の例には、上述した粉末材料の子粒子が含み得る第2の樹脂が含まれる。
上記第2の樹脂の体積抵抗率は、熱可塑性樹脂の体積抵抗率の1/10以下であることが好ましく、1/100以下であることがより好ましい。
上記第2の樹脂を含む微粒子の平均粒子径は、たとえば、10nm以上500nm以下とすることができる。前記子粒子について上述した理由により、第2の樹脂を含む微粒子の平均粒子径は、10nm以上100nm以下であることが好ましく、10nm以上55nm以下であることがより好ましい。
2−3.混合および撹拌(工程S203、S204)
上記熱可塑性樹脂を含む粒子および第2の樹脂を含む微粒子は、100質量部の前記熱可塑性樹脂に対する前記第2の樹脂の量が0.5質量部以上10質量部以下となる質量比で混合装置の内部に投入され、混合および撹拌される。
本実施形態においては、混合装置で上記熱可塑性樹脂を含む粒子および第2の樹脂を含む微粒子を混合および撹拌することで、熱可塑性樹脂を含む粒子と第2の樹脂を含む微粒子とを、前記残存率が20質量%以上となるように固着させることができる。これは、装置により機械的に混合および撹拌することで、熱可塑性樹脂を含む粒子の表面に第2の樹脂を含む微粒子を強い物理的力で埋め込むことが可能となり、熱可塑性樹脂を含む粒子への第2の樹脂を含む微粒子の固着率が高まったためと考えられる。これに対し、特許文献1に記載されているように単に両者を入れた袋を振とうするのみでは、前記残存率を20質量%以上とすることは困難である。
混合装置の例には、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、タービュラーミキサーおよびハイブリダイザーなどが含まれる。これらの混合装置は、粉末材料を作製する際の要求に応じて、任意に選択することができる。たとえば、より多量の粉末材料を一度に作製するときは、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサーおよびタービュラーミキサーなどが好ましく、同時に上記残存率をより高めたいときは、ヘンシェルミキサーなどの撹拌羽根を有する混合装置が好ましい。上記撹拌羽根を有する混合装置を用いるときは、混合時間を長くしたり、撹拌羽根の周速を速くしたりすることで、上記残存率を有する粉末材料を容易に製造することが可能である。また、上記残存率をより高めたいときや、より短時間で粉末材料を作製したいときは、ハイブリダイザーなどの、より強い力で混合できる混合装置が好ましい。また、同じ混合条件で比較した場合では、樹脂微粒子の粒子径が小さいほど樹脂粒子に埋め込まれるので付着強度を高くすることができる。また、これらの条件は、混合装置の形状や大きさ、撹拌羽根の形状、添加する樹脂粒子の量によっても変化する。
前記残存率が20質量%以上である粉末材料を得るための混合および撹拌の強度および時間は、用いる材料や混合装置の種類などによって異なるが、本発明者の知見によれば、混合装置を用いて混合および撹拌を行う通常の設定によって、両者を上記十分な強度で固着させることができる。上記撹拌の強度は、たとえば、ヘンシェルミキサーであれば25m/s以上55m/s以下であることが好ましく、30m/s以上45m/s以下であることがより好ましい。また、上記撹拌の強度は、たとえば、ハイブリダイザーであれば8000rpm以上16300rpm以下であることが好ましく、12000rpm以上16300rpm以下であることがより好ましい。上記混合および撹拌の強度および時間は、たとえば、ヘンシェルミキサーであればそれぞれ周速40m/sおよび20分とすることができ、ハイブリダイザーであればそれぞれ回転数16000rpmおよび5分とすることができる。
粉末材料が熱可塑性樹脂を含む粒子または第2の樹脂を含む微粒子以外の材料を含むとき、上記熱可塑性樹脂を含む粒子および第2の樹脂を含む微粒子と、上記その他の材料とは、一括で撹拌および混合してもよいし、上記その他の材料の種類に応じて複数回に分けて撹拌および混合してもよい。
3.立体造形物の製造方法
本実施形態は、前記粉末材料を用いる、立体造形物の製造方法に係る。本実施形態に係る方法は、前記粉末材料を用いるほかは、通常の粉末床溶融結合法と同様に行い得る。具体的には、本実施形態に係る方法は、(1)前記粉末材料の薄層を形成する工程と、(2)予備加熱された薄層にレーザ光を選択的に照射して、前記粉末材料に含まれる複合粒子が溶融結合してなる造形物層を形成する工程と、(3)工程(1)および工程(2)をこの順に回繰り返し、前記造形物層を積層する工程、とを含む。工程(2)により、立体造形物を構成する造形物層のひとつが形成され、さらに工程(3)で工程(1)および工程(2)を繰り返し行うことで、立体造形物の次の層が積層されていき、最終的な立体造形物が製造される。本実施形態に係る製造方法は、(4)形成された粉末材料の薄層を予備加熱する工程を、少なくとも工程(2)よりも以前にさらに含んでいてもよい。
3−1.粉末材料からなる薄層を形成する工程(工程(1))
本工程では、前記粉末材料の薄層を形成する。たとえば、粉末供給部から供給された前記粉末材料を、リコータによって造形ステージ上に平らに敷き詰める。薄層は、造形ステージ上に直接形成してもよいし、すでに敷き詰められている粉末材料またはすでに形成されている造形物層の上に接するように形成してもよい。
薄層の厚さは、造形物層の厚さに準じて設定できる。薄層の厚さは、製造しようとする立体造形物の精度に応じて任意に設定することができるが、通常、0.01mm以上0.30mm以下である。薄層の厚さを0.01mm以上とすることで、次の層を形成するためのレーザ照射によって下の層の複合粒子が溶融結合したり、下の層の造形層が再溶融したりすることを防ぐことができる。薄層の厚さを0.30mm以下とすることで、レーザのエネルギーを薄層の下部まで伝導させて、薄層を構成する粉末材料に含まれる複合粒子を、厚み方向の全体にわたって十分に溶融結合させることができる。前記観点からは、薄層の厚さは0.01mm以上0.10mm以下であることがより好ましい。また、薄層の厚み方向の全体にわたってより十分に複合粒子を溶融結合させ、積層間の割れをより生じにくくする観点からは、薄層の厚さは、後述するレーザのビームスポット径との差が0.10mm以内になるよう設定することが好ましい。
3−2.複合粒子が溶融結合してなる造形物層を形成する工程(工程(2))
本工程では、形成された薄層のうち、造形物層を形成すべき位置にレーザを選択的に照射し、照射された位置の複合粒子を溶融結合させる。これにより、隣接する複合粒子が溶融し合って溶融結合体を形成し、造形物層となる。このとき、レーザのエネルギーを受け取った複合粒子は、すでに形成された層とも溶融結合するため、隣り合う層間の接着も生じる。
レーザの波長は、前記熱可塑性樹脂が吸収する範囲内で設定すればよい。このとき、レーザの波長と、熱可塑性樹脂の吸収率が最も高くなる波長との差が小さくなるようにすることが好ましいが、樹脂は様々な波長域の光を吸収し得るので、COレーザ等の波長帯域の広いレーザを用いることが好ましい。たとえば、レーザの波長は、0.8μm以上12μm以下であることが好ましい。
たとえば、レーザの出力時のパワーは、後述するレーザの走査速度において、前記熱可塑性樹脂が十分に溶融結合する範囲内で設定すればよく、具体的には、5.0W以上60W以下とすることができる。レーザのエネルギーを低くして、製造コストを低くし、かつ、製造装置の構成を簡易なものにする観点からは、レーザの出力時のパワーは30W以下であることが好ましく、20W以下であることがより好ましい。
レーザの走査速度は、製造コストを高めず、かつ、装置構成を過剰に複雑にしない範囲内で設定すればよい。具体的には、1mm/秒以上100mm/秒以下とすることが好ましく、1mm/秒以上80mm/秒以下とすることがより好ましく、2mm/秒以上80mm/秒以下とすることがさらに好ましく、3mm/秒以上80mm/秒以下とすることがさらに好ましく、3mm/秒以上50mm/秒以下とすることがさらに好ましい。
レーザのビーム径は、製造しようとする立体造形物の精度に応じて適宜設定することができる。
3−3.造形物層を積層する工程(工程(3))
本工程では、工程(1)および工程(2)を繰り返して、工程(2)によって形成される造形物層を積層する。造形物層を積層していくことで、所望の立体造形物が製造される。
3−4.形成された粉末材料の薄層を予備加熱する工程(工程(4))
本工程では、工程(2)よりも以前に、粉末材料による薄層を予備加熱する。たとえば、ヒータ等により、薄層の表面を熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも15℃以下、好ましくは5℃以下に加熱することができる。
3−5.その他
溶融結合中の複合粒子を構成する材料の酸化等による、立体造形物の強度の低下を防ぐ観点からは、少なくとも工程(2)は減圧下または不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。減圧するときの圧力は10−2Pa以下であることが好ましく、10−3Pa以下であることがより好ましい。本実施形態で使用することができる不活性ガスの例には、窒素ガスおよび希ガスが含まれる。これらの不活性ガスのうち、入手の容易さの観点からは、窒素(N)ガス、ヘリウム(He)ガスまたはアルゴン(Ar)ガスが好ましい。製造工程を簡略化する観点からは、工程(1)〜工程(3)のすべて(工程(4)を含むときは、工程(1)〜工程(4)のすべて)を減圧下または不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
4.立体造形装置
本実施形態は、前記粉末材料を用いて、立体造形物を製造する装置に係る。本実施形態に係る装置は、前記粉末材料を用いるほかは、粉末床溶融結合法による立体造形物の製造を行う公知の装置と同様の構成とし得る。具体的には、本実施形態に係る立体造形装置300は、その構成を概略的に示す側面図である図3に記載のように、開口内に位置する造形ステージ310、複合粒子を含む粉末材料の薄膜を前記造形ステージ上に形成する薄膜形成部320、薄膜にレーザを照射して、前記複合粒子が溶融結合してなる造形物層を形成するレーザ照射部330、および鉛直方向の位置を可変に造形ステージ310を支持するステージ支持部340、上記各部を支持するベース345を備える。
立体造形装置300は、その制御系の主要部を示す図4に記載のように、薄膜形成部320、レーザ照射部330およびステージ支持部340を制御して、前記造形物層を繰り返し形成させて積層させる制御部350、各種情報を表示するための表示部360、ユーザーからの指示を受け付けるためのポインティングデバイス等を含む操作部370、制御部350の実行する制御プログラムを含む各種の情報を記憶する記憶部380、ならびに外部機器との間で立体造形データ等の各種情報を送受信するためのインターフェース等を含むデータ入力部390を備えてもよい。立体造形装置300には、立体造形用のデータを生成するためのコンピュータ装置400が接続されてもよい。
造形ステージ310には、薄膜形成部320による薄層の形成およびレーザ照射部330によるレーザの照射によって造形材層が形成され、この造形材層が積層されることにより、立体造形物が造形される。
薄膜形成部320は、たとえば、造形ステージ310が昇降する開口の縁部と、水平方向にほぼ同一平面上にその縁部がある開口、開口から鉛直方向下方に延在する粉末材料収納部、および粉末材料収納部の底部に設けられ開口内を昇降する供給ピストンを備える粉末供給部321、ならびに供給された粉末材料を造形ステージ310上に平らに敷き詰めて、粉末材料の薄層を形成するリコータ322aを備えた構成とすることができる。
なお、粉末供給部321は、造形ステージ310に対して鉛直方向上方に設けられた粉末材料収納部、およびノズルを備えて、前記造形ステージと水平方向に同一の平面上に、粉末材料を吐出する構成としてもよい。
レーザ照射部330は、レーザ光源331およびガルバノミラー332aを含む。レーザ照射部330は、レーザの焦点距離を薄層の表面にあわせるためのレンズ(不図示)を備えていてもよい。レーザ光源331は、前記波長のレーザを、前記出力で出射する光源であればよい。レーザ光源331の例には、YAGレーザ光源、ファイバレーザ光源およびCOレーザ光源が含まれる。ガルバノミラー332aは、レーザ光源331から出射されたレーザを反射してレーザをX方向に走査するXミラーおよびY方向に走査するYミラーから構成されてもよい。
ステージ支持部340は、造形ステージ310を、その鉛直方向の位置を可変に支持する。すなわち、造形ステージ310は、ステージ支持部340によって鉛直方向に精密に移動可能に構成されている。ステージ支持部340としては、種々の構成を採用できるが、例えば、造形ステージ310を保持する保持部材と、この保持部材を鉛直方向に案内するガイド部材と、ガイド部材に設けられたねじ孔に係合するボールねじ等で構成することができる。
制御部350は、立体造形物の造形動作中、立体造形装置300全体の動作を制御する。
また、制御部350は、中央処理装置等のハードウェアプロセッサを含んでおり、たとえばデータ入力部390がコンピュータ装置400から取得した立体造形データを、造形材層の積層方向について薄く切った複数のスライスデータに変換するよう構成されてもよい。スライスデータは、立体造形物を造形するための各造形材層の造形データである。スライスデータの厚み、すなわち造形材層の厚みは、造形材層の一層分の厚さに応じた距離(積層ピッチ)と一致する。
表示部360は、たとえば液晶ディスプレイ、モニタとすることができる。
操作部370は、たとえばキーボードやマウスなどのポインティングデバイスを含むものとすることができ、テンキー、実行キー、スタートキー等の各種操作キーを備えてもよい。
記憶部380は、たとえばROM、RAM、磁気ディスク、HDD、SSD等の各種の記憶媒体を含むものとすることができる。
立体造形装置300は、制御部350の制御を受けて、装置内を減圧する、減圧ポンプなどの減圧部(不図示)、または、制御部350の制御を受けて、不活性ガスを装置内に供給する、不活性ガス供給部(不図示)を備えていてもよい。また、立体造形装置300は、制御部350の制御を受けて、装置内、特には粉末材料による薄層の上面を加熱するヒータ(不図示)を備えていてもよい。
4−1.立体造形装置300を用いた立体造形の例
制御部350は、データ入力部390がコンピュータ装置400から取得した立体造形データを、造形材層の積層方向について薄く切った複数のスライスデータに変換する。その後、制御部350は、立体造形装置300における以下の動作の制御を行う。
粉末供給部321は、制御部350から出力された供給情報に従って、モーターおよび駆動機構(いずれも不図示)を駆動し、供給ピストンを鉛直方向上方(図中矢印方向)に移動させ、前記造形ステージと水平方向同一平面上に、粉末材料を押し出す。
その後、リコータ駆動部322は、制御部350から出力された薄膜形成情報に従って水平方向(図中矢印方向)にリコータ322aを移動して、粉末材料を造形ステージ310に運搬し、かつ、薄層の厚さが造形物層の1層分の厚さとなるように粉末材料を押圧する。
その後、レーザ照射部330は、制御部350から出力されたレーザ照射情報に従って、薄膜上の、各スライスデータにおける立体造形物を構成する領域に適合して、レーザ光源331からレーザを出射し、ガルバノミラー駆動部332によりガルバノミラー332aを駆動してレーザを走査する。レーザの照射によって粉末材料に含まれる複合粒子が溶融結合し、造形物層が形成される。
その後、ステージ支持部340は、制御部350から出力された位置制御情報に従って、モーターおよび駆動機構(いずれも不図示)を駆動し、造形ステージ310を、積層ピッチだけ鉛直方向下方(図中矢印方向)に移動する。
表示部360は、必要に応じて、制御部350の制御を受けて、ユーザーに認識させるべき各種の情報やメッセージを表示する。操作部370は、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、その入力操作に応じた操作信号を制御部350に出力する。たとえば、形成される仮想の立体造形物を表示部360に表示して所望の形状が形成されるか否かを確認し、所望の形状が形成されない場合は、操作部370から修正を加えてもよい。
制御部350は、必要に応じて、記憶部380へのデータの格納または記憶部380からのデータの引き出しを行う。
これらの動作を繰り返すことで、造形物層が積層され、立体造形物が製造される。
以下において、本発明の具体的な実施例を説明する。なお、これらの実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
1.粉末材料の作製
1−1.熱可塑性樹脂を含む粒子の作製
以下の手順で、熱可塑性樹脂を含む粒子を作製した。
住化スタイロンポリカーボネート株式会社製カリバー301−4を機械的粉砕法で平均粒子径50μmに処理して、ポリカーボネートを含む粒子(以下、「ポリカーボネート1」ともいう。)を得た。上記ポリカーボネート1の体積抵抗率は1×1015Ω・cmだった。
宇部丸善ポリエチレン株式会社製UBEポリエチレンF022NH(「UBE ポリエチレン」は同社の登録商標)を機械的粉砕法で平均粒子径50μmに処理して、ポリエチレンを含む粒子(以下、単に「ポリエチレン」ともいう。)を得た。上記ポリエチレンの体積抵抗率は1×1018Ω・cmだった。
東レ株式会社製アラミンCM1001を機械的粉砕法で平均粒子径50μmに処理して、ナイロン6を含む粒子(以下、単に「ナイロン6」ともいう。)を得た。上記ナイロン6の体積抵抗率は5×1013Ω・cmだった。
宇部興産株式会社製UBESTA3014U(「UBESTA」は同社の登録商標)を機械的粉砕法で平均粒子径50μmに処理し、ナイロン12を含む粒子(以下、単に「ナイロン12」ともいう。)を得た。上記ナイロン12の体積抵抗率は5×1013Ω・cmだった。
トルエン100部に、1質量部のポリカーボネートと2質量部の乳化剤(阪本薬品工業株式会社製、CRS−75)を2部溶解させ、さらに10質量部のナイロン12を分散させて、樹脂分散液1を得た。樹脂分散液1を、200質量部の水に10質量部の非イオン性界面活性剤(花王株式会社製、エマノーンC−25(「エマノーン」は同社の登録商標))を溶解させた液体中に入れて、超音波処理を10分行い、樹脂分散液2を得た。樹脂分散液2をエバポレーターに投入して、減圧してトルエンを除去し、樹脂分散溶液を得た。その後、得られた樹脂分散溶液を減圧濾過し、ナイロン12/ポリカーボネート被覆粒子を得た。上記ナイロン12/ポリカーボネート被覆粒子の体積抵抗率は1×1015Ω・cmだった。尚、ナイロン12のG’は5×10、ポリカーボネートのG’は1×10だった。
日本ユピカ株式会社製のGV−182を機械的粉砕法で樹脂微粒子に粉砕することによって、ポリエステルを含む粒子(以下、単に「ポリエステル1」ともいう。)を得た。上記ポリエステル1の体積抵抗率は1×1015Ω・cmだった。
なお、それぞれの材料の平均粒子径および体積抵抗率は、各メーカーが公表している値を参照した。公表している値がない場合は、以下の方法で測定した。また、上記いずれの粒子も、上記した熱可塑性樹脂以外の成分の含有量は無視できる程度だった。
(平均粒子径の測定)
透過型電子顕微鏡(TEM)により撮像した粉末状の材料の顕微鏡画像中から任意に選択した100個の粒子の粒子径を測定し、その平均値を粒子の平均粒子径とした。
(体積抵抗率の測定)
粉末状の材料に、3tの圧力をかけて、9cm×9cm×5cmの円筒状に成形した。この円筒状の材料の体積抵抗率を、三菱化学アナリテック社製、ハイレスターUX MCP−HT800で測定した。
1−2.第2の樹脂を含む微粒子の用意
第2の樹脂を含む微粒子として、以下の材料を用意した。
アセチルセルロース:アクロス・オーガニック製(17778−5000)
ポリ塩化ビニル:アクロス・オーガニック製(18331−1000)
ポリエステル2:日本ユピカ株式会社製(GV−110)
ポリカーボネート2:三菱ガス化学製(PCZ−200)
上記樹脂材料をそれぞれ機械的粉砕法で樹脂微粒子に粉砕し、表1および表2に示した体積抵抗率、ガラス転移温度(Tg)および平均粒径の微粒子を得た。
なお、それぞれの材料の体積抵抗率は、各メーカーが公表している値を参照した。また、ガラス転移点(Tg)については、各メーカーが公表しているガラス転移点Tgの値を参照した。平均粒径については、上記熱可塑性樹脂と同様の方法で測定した。
1−3.金属酸化物を含む微粒子の用意
金属酸化物を含む微粒子として、以下の材料を用意した。
シリカを含む微粒子(以下、単に「シリカ」ともいう。)として、日本アエロジル株式会社製、R805を用意した。この微粒子の平均粒子径は10nmであり、体積抵抗率は約1×1015Ω・cmだった。
なお、それぞれの材料の平均粒子径および体積抵抗率は、各メーカーが公表している値を参照した。公表している値がない場合は、上記熱可塑性樹脂と同様の方法で測定した。
1−3.混合および撹拌
1−3−1.粉末材料1
100質量部の上記ポリカーボネート1を含む粒子と、1質量部の上記アセチルセルロースを含む粒子とを、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製、FM20C/I型)に投入し、羽根先端周速が40m/sとなるようにして回転数を設定して20分間撹拌した。混合時の品温は40℃±1℃となるように設定し、41℃になった場合は、ヘンシェルミキサーの外浴に冷却水を5L/分の流量で流し、39℃になった場合は、1L/分となるように冷却水を流すことでヘンシェルミキサー内部の温度を制御した。このようにして得られた粉末を、粉末材料1とした。
1−3−2.粉末材料2
粉末材料1の作製において、アセチルセルロースの投入量を5.0質量部に変更した以外は同様にして、粉末材料2を得た。
1−3−3.粉末材料3
粉末材料1の作製において、アセチルセルロースの投入量を10.0質量部に変更した以外は同様にして、粉末材料3を得た。
1−3−4.粉末材料4
100質量部の上記ポリカーボネート1と、1.0質量部の上記アセチルセルロースとを、ハイブリダイザー(株式会社奈良機械製作所製、NHS−0型)に投入し、回転数16000rpmに設定して5分間撹拌した。混合時の品温は75℃±1℃となるように設定し、76℃になった場合は、ハイブリダイザーの外浴に冷却水を5L/分の流量で流し、74℃になった場合は、1L/分となるように冷却水を流すことでハイブリダイゼーションシステム内部の温度を制御した。このようにして得られた粉末を、粉末材料4とした。
1−3−5.粉末材料5
粉末材料4の作製において、アセチルセルロースの投入量を5.0質量部に変更した以外は同様にして、粉末材料5を得た。
1−3−6.粉末材料6
粉末材料4の作製において、アセチルセルロースの投入量を10.0質量部に変更した以外は同様にして、粉末材料6を得た。
1−3−7.粉末材料7
粉末材料1の作製において、アセチルセルロースを1.0質量部のポリ塩化ビニルに変更した以外は同様にして、粉末材料7を得た。
1−3−8.粉末材料8
粉末材料2の作製において、ポリカーボネート1を100質量部の上記ナイロン12/ポリカーボネート被覆粒子に変更した以外は同様にして、粉末材料8を得た。
1−3−9.粉末材料9〜15
粉末材料1〜7の作製において、ポリカーボネート1を100質量部の上記ポリエチレンに変更した以外は同様にして、粉末材料9〜15をそれぞれ得た。
1−3−10.粉末材料16〜21
粉末材料1〜6の作製において、ポリカーボネート1を100質量部の上記ナイロン6に変更した以外は同様にして、粉末材料16〜21をそれぞれ得た。
1−3−11.粉末材料22
粉末材料2の作製において、ポリカーボネート1を100質量部の上記ポリエステル1に変更し、アセチルセルロースを上記ポリエステル2に変更した以外は同様にして、粉末材料22を得た。
1−3−12.粉末材料23
粉末材料2の作製において、ポリカーボネート1を100質量部の上記ポリエステル1に変更した以外は同様にして、粉末材料23を得た。
1−3−13.粉末材料24
粉末材料1の作製において、アセチルセルロースを1.0質量部の上記ポリカーボネート2に変更した以外は同様にして、粉末材料24を得た。
1−3−14.粉末材料25
粉末材料4の作製において、アセチルセルロースを1.0質量部の上記ポリカーボネート2に変更した以外は同様にして、粉末材料25を得た。
1−3−15.粉末材料26
粉末材料1の作製において、アセチルセルロースの量を0.10質量部に変更した以外は同様にして、粉末材料26を得た。
1−3−16.粉末材料27
100質量部の上記ナイロン12をポリエチレン製の袋に分取し、これに5.0質量部の上記シリカを投入して、機械を用いずに手で約3分間振とうした。このようにして得られた粉末を、粉末材料27とした。
1−3−17.粉末材料28
粉末材料1の作製において、ポリカーボネート1を100質量部の上記ナイロン12に変更し、アセチルセルロースを5.0質量部の上記シリカに変更した以外は同様にして、粉末材料28を得た。
1−3−18.粉末材料29
100質量部の上記ポリエステル1をポリエチレン製の袋に分取し、これに5.0質量部の上記ポリエステル2を投入して、機械を用いずに手で約3分間振とうした。このようにして得られた粉末を、粉末材料29とした。
粉末材料1〜29の作製に用いた熱可塑性樹脂を含む粒子に含まれる熱可塑性樹脂の種類、熱可塑性樹脂の体積抵抗率および熱可塑性樹脂を含む粒子の平均粒子径と使用量、第2の樹脂を含む微粒子に含まれる第2の樹脂の種類、第2の樹脂の体積抵抗率および第2の樹脂を含む微粒子の平均粒子径と使用量、ならびに混合および撹拌の方法を、表1および表2に示す。
Figure 0006680114
Figure 0006680114
2.評価
2−1.残存率
3gの粉末材料1と、40gのポリオキシエチレンフェニルエーテルの0.2質量%水溶液を100mlのプラスチックカップ中に投入して、粉末材料1を上記水溶液に湿潤させた。その後、超音波式ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製、US−1200)のチップを上記水溶液に挿入して、本体装置に附属の振動指示値を示す電流計の値が60μA(50W)を示すように調整した超音波エネルギー(波長:19.5kHz±1hKz)を3分間印加した。超音波の印加後、目開き1μmのフィルターを使用して上記水溶液から濾過した粉末材料1を、60mlの純水を用いて洗浄した。その後、粒子を乾燥機にて80℃2時間の条件で乾燥させ、乾燥させた粒子の重量を、乾燥後重量として測定した。
下記数式(1)に基づき、乾燥前重量、乾燥後重量および子粒子総量から、粒子の残存率を求めた。
残存率=(3g−乾燥後重量)/子粒子総量 (1)
尚、子粒子総量は、仕込み時の子粒子の量とした。
粉末試料2〜29についても、同様にして、超音波処理後の第2の樹脂を含む子粒子またはシリカ粒子の残存率(%)を求めた。
2−2.造形物の欠損
粉末材料1〜29からそれぞれ作製した造形物を目視で確認し、造形物に見られる複合粒子の大きさ(約0.1mm)よりも大きい欠損(造形物が形成されず、空隙となった部分)の数が30個以上であるときは、造形物の欠損を「×」と評価した。
次に、上記欠損の数が30個未満であった場合には、上記方法で得た子粒子の残存率(%)に基づき、造形物の欠損を評価した。具体的には、粒子残存率が70%以上であるときは、造形物の欠損を「◎」と評価し、粒子残存率が50%以上70%未満であるときは、造形物の欠損を「○」と評価し、粒子残存率が20%以上50%未満であるときは、造形物の欠損を「△」と評価した。
粉末材料1〜29についての、上記残存率および造形物の欠損の評価結果を、表3に示す。
Figure 0006680114
熱可塑性樹脂を含む母粒子と、前記母粒子の表面に固着させた、前記熱可塑性樹脂よりも体積抵抗率が低い第2の樹脂を含む子粒子と、を含む複合粒子を含み、第2の樹脂の含有量が100質量部の前記熱可塑性樹脂に対して0.5質量部以上10質量部以下であり、粉末材料を水中で超音波分散処理した後の前記第2の樹脂の残存率が20質量%以上である、粉末材料1〜23を用いると、欠損の少ない立体造形物を作製することができた。これは、複合粒子の帯電を抑制して、粉末材料を密に充填した薄層が形成できたことが主な要因と考えられる。
また、ハイブリダイザーを用いて作製した粉末材料4〜6、12〜14、19〜21は、同じ組み合わせの材料でヘンシェルミキサーを用いて作製した粉末材料1〜3、9〜11、16〜18よりも、粉末材料を水中で超音波分散処理した後の前記第2の樹脂の残存率がより高くなった。
これに対し、混合機を用いずに振とうして作製した粉末材料27および29では、上記残存率が15質量%以上にはならなかった。また、上記残存率が15質量%以下である粉末材料27および29を用いて立体造形を行うと、造形物に欠損が生じやすかった。これは、機械を用いずに作製した粉末材料では、母粒子に固着しきれなかった第2の樹脂を含む微粒子が遊離して存在することにより、複合粒子が摩擦により帯電しやすく、薄層を形成するときに、粒子同士の電気的な反発により複合粒子が十分な密度で充填されなかったためと考えられる。
また、熱可塑性樹脂と体積抵抗率が同じ第2の樹脂を含む微粒子を含有する粉末材料24と25、第2の樹脂の含有量が0.5質量部未満である粉末材料26、熱可塑性樹脂よりも体積抵抗率が高い金属酸化物(シリカ)を含む微粒子を含有する粉末材料28は、いずれも子粒子の残存率は子粒子の残存率は比較的高いものの、立体造形物には30箇所以上の欠損が認められた。これは、粒子と造形ステージとの間の摩擦などによって粒子が帯電し、かつ、電荷が粒子から放出されにくかったことにより、複合粒子が帯電しやすく、薄層を形成するときに、粒子同士の電気的な反発により複合粒子が十分な密度で充填されなかったためと考えられる。
本発明に係る粉末材料によれば、粉末床溶融結合法によってより精度の高い造形が可能となる。また、本発明に係る粉末材料の製造方法によれば、上記より精度の高い造形を可能とする粉末材料を製造することができる。そのため、本発明は、粉末床溶融結合法のさらなる普及に寄与し得る。
10 粉末材料
11 母粒子
12 子粒子
300 立体造形装置
310 造形ステージ
320 薄膜形成部
321 粉末供給部
322 リコータ駆動部
322a リコータ
330 レーザ照射部
331 レーザ光源
332 ガルバノミラー駆動部
332a ガルバノミラー
340 ステージ支持部
345 ベース
350 制御部
360 表示部
370 操作部
380 記憶部
390 データ入力部
400 コンピュータ装置

Claims (12)

  1. 複合粒子を含む粉末材料の薄層にレーザ光を選択的に照射して、前記複合粒子が焼結または溶融結合してなる造形物層を形成し、前記造形物層を積層することによる立体造形物の製造に使用される粉末材料であって、
    前記複合粒子は、平均粒子径が1μm以上100μm以下の実質的に熱可塑性樹脂のみを含む母粒子と、前記母粒子の表面に固着した、平均粒子径が10nm以上500nm以下であり、実質的に前記熱可塑性樹脂よりも体積抵抗率が低い第2の樹脂のみを含む子粒子と、を含み、
    前記粉末材料は、100質量部の前記熱可塑性樹脂に対して0.5質量部以上10質量部以下の前記第2の樹脂を含有し、
    前記粉末材料に対する、前記粉末材料を水中で超音波分散処理した後の前記第2の樹脂の残存率が、20質量%以上である、粉末材料。
  2. 前記第2の樹脂の体積抵抗値は、前記熱可塑性樹脂の体積抵抗値の1/10以下である、請求項1に記載の粉末材料。
  3. 前記第2の樹脂の体積抵抗値は、前記熱可塑性樹脂の体積抵抗値の1/100以下である、請求項1に記載の粉末材料。
  4. 前記母粒子の平均粒子径は、5μm以上70μm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粉末材料。
  5. 前記第2の樹脂の残存率は、30質量%以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粉末材料。
  6. 前記熱可塑性樹脂が、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ポリカーボネートから選択される1種以上の樹脂である請求項1〜5のいずれか一項に記載の粉末材料。
  7. 前記第2の樹脂は、前記熱可塑性樹脂よりもガラス転移点(Tg)の高い樹脂である請求項1〜6のいずれか一項に記載の粉末材料。
  8. 前記第2の樹脂が前記熱可塑性樹脂とは主骨格の化学構造が異なる樹脂である請求項1〜7のいずれか一項に記載の粉末材料。
  9. 前記第2の樹脂が前記熱可塑性樹脂とは主骨格の化学構造が同じ樹脂である請求項1〜7のいずれか一項に記載の粉末材料。
  10. 複合粒子を含む粉末材料の薄層にレーザ光を選択的に照射して、前記複合粒子が焼結または溶融結合してなる造形物層を形成し、前記造形物層を積層することによる立体造形物の製造に使用される粉末材料の製造方法であって、
    平均粒子径が1μm以上100μm以下の実質的に熱可塑性樹脂のみを含む粒子と、実質的に前記熱可塑性樹脂よりも体積抵抗率が低い第2の樹脂のみを含む平均粒子径が10nm以上500nm以下微粒子とを用いて、100質量部の前記熱可塑性樹脂に対する前記第2の樹脂の量が0.5質量部以上10質量部以下となる質量比で、混合装置によって混合および撹拌し、前記粉末材料に対する、前記粉末材料を水中で超音波分散処理した後の前記第2の樹脂の残存率が、20質量%以上である粉末材料を形成する工程を含む、製造方法。
  11. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の粉末材料または請求項10に記載の製造方法で製造された粉末材料の薄層を形成する工程と、
    前記形成された薄層にレーザ光を選択的に照射して、前記粉末材料に含まれる複合粒子が焼結または溶融結合してなる造形物層を形成する工程と、
    前記薄層を形成する工程と、前記造形物層を形成する工程と、をこの順に繰り返し、前記造形物層を積層する工程と、
    を含む立体造形物の製造方法。
  12. 造形ステージと、
    請求項1〜9のいずれか一項に記載の粉末材料の薄膜を前記造形ステージ上に形成する薄膜形成部と、
    前記薄膜にレーザを照射して、前記粉末材料に含まれる前記複合粒子が焼結または溶融結合してなる造形物層を形成するレーザ照射部と、
    前記造形ステージを、その鉛直方向の位置を可変に支持するステージ支持部と、
    前記薄膜形成部、前記レーザ照射部および前記ステージ支持部を制御して、前記造形物層を繰り返し形成させて積層させる制御部と、
    を備える、立体造形装置。
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