JP2018044086A - ポリスチレン系樹脂発泡シート、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート及びポリスチレン系樹脂積層発泡成形体 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする発泡シートにおいて、
該ポリスチレン系樹脂は、スチレン−メタクリル酸共重合体と、粒径0.8μm以上1.8μm未満のゴムを含むと共にゲル分を含む耐衝撃性ポリスチレンとの混合物であり、
該ポリスチレン系樹脂中の該スチレン−メタクリル酸共重合体と該耐衝撃性ポリスチレンとの重量比が75:25〜90:10であり、
該ポリスチレン系樹脂中のゲル含有量が3〜6重量%であり、
該発泡シートの全体見掛け密度が50〜210kg/m3であり、
且つ該全体見掛け密度に対する発泡シートの一方の面側の表層部の見掛け密度の比が1.1〜1.8であると共に、
発泡シートの他方の面側の表層部の見掛け密度が前記一方の面側の表層部の見掛け密度よりも20kg/m3以上高いことを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡シート。
[2前記1に記載のポリスチレン系樹脂発泡シートの前記一方の面側に、ポリオレフィン系樹脂フィルムが接着積層されていることを特徴とする前記1に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
[3]前記ポリスチレン系樹脂発泡シートと前記ポリオレフィン系樹脂フィルムとの剥離強度が3.0N/25mm以上であることを特徴とする前記2に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
[4]前記2又は3に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シートを熱成形することにより得られたポリスチレン系樹脂積層発泡成形体。
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シート(以下、発泡シートまたは耐熱性発泡シートともいう。)を構成する基材樹脂はポリスチレン系樹脂であり、該ポリスチレン系樹脂は、スチレン−メタクリル酸共重合体と、粒径0.8μm以上1.8μm未満のゴムを含むと共にゲル分を含む耐衝撃性ポリスチレンとの混合物である。
ゴム粒径=ΣniDi2/ΣniDi ・・・(1)
上記(1)式中、niは粒径Diのゴム粒子の数である。
まず、試料約1.5gを精秤し、100mLの共栓付き三角フラスコに入れ、メチルエチルケトン(MEK)30mLを加えて一昼夜放置し、試料がMEKに溶解しているのを確認した後、10分間振とうする。これを精秤した遠心管に入れ、4000回転/分で40分間遠心分離する。デカンテーションにより遠心分離した上澄み液を捨て、遠心管内壁を少量のMEKで洗浄する。遠心管をドラフト内で1日予備乾燥した後、70℃の真空乾燥機で15時間以上乾燥する。乾燥後、デシケーター内で常温まで冷却した後、遠心管を精秤し、下記の(2)式によりゲル含有率を求める。尚、発泡シートのゲル含有率を測定する場合は、発泡シートから切り出した試験片を試料として使用し、耐衝撃性ポリスチレンのゲル含有率を測定する場合には、耐衝撃性ポリスチレンのペレットを使用する。
ゲル含有率(重量%)=(b−a)/S×100 ・・・(2)
ただし、S:試料の重量、a:遠心管の重量、b:乾燥ゲルと遠心管の合計重量
一方、該比が大きすぎると、表層の樹脂量が全体の樹脂量に対して相対的に多くなるために、後述するポリオレフィン系樹脂フィルムを積層する際に、発泡シート表面を熱融着させるのに適した温度まで伝熱させると発泡シートの気泡が破壊されやくなり、発泡シートの気泡を破壊せずに樹脂フィルムを積層することが難しくなり、熱融着の難度が高くなる。その結果、発泡シートとフィルムとの接着強度が不十分となり、電子レンジ加熱時のデラミネーションが発生し易くなる。かかる観点から、該比は1.2〜1.6であることが好ましい。なお、前記表層部とは、発泡シートの表面から厚み方向に200μmまでの部分を意味する。
発泡シートの表面から厚み方向200μmの部分をスライスし、幅5mm×長さ20mmの試験片に切りそろえるとともに、試験片の重量と厚みをゲージで測定する。試験片の重量を試験片の体積(幅×長さ×厚み)で割算し、単位換算して表層部の見掛け密度(以下、表層密度ともいう。)を求める。
上記測定を、発泡シートの幅方向に亘って等間隔の10箇所について行い、それらの算術平均値を発泡シートの表層密度とする。
該積層発泡シートは、前記ポリスチレン系樹脂発泡シートの表層部の見掛け密度が低い方の面側に、ポリオレフィン系樹脂フィルムが接着積層されたものである。
油分が多い食材用の容器など、特に高い耐熱性が要求される容器に用いられる場合には、耐衝撃性ポリスチレン層を介してポリオレフィン系樹脂フィルムが発泡シートに接着積層されることが好ましい。この場合、耐衝撃性ポリスチレン層の坪量は、70〜200g/m2とすることが好ましく、より好ましくは90〜180g/m2である。
S(%)=(Vx−W/ρ)×100/(Va−W/ρ) (3)
Va:測定に使用されたカットサンプルの外寸から計算されたカットサンプルの見掛け上の体積(cm3)。
W:測定に使用されたカットサンプル全重量(g)。
ρ:発泡シートを構成する樹脂の密度(g/cm3)
本発明の発泡シートは、従来公知の所謂押出発泡により得ることができる。即ち、押出機を用いて前記基材樹脂と必要に応じて添加される気泡調整剤等の各種の添加剤を加熱、溶融、混練し、物理発泡剤を圧入してさらに混練した後、目的とする樹脂温度に調整された発泡性溶融樹脂を、ダイを通して大気圧下に押出して発泡させることによって形成される。
ポリオレフィン系樹脂フィルムを発泡シートに接着層を介して積層する方法としては、(1)ポリオレフィン系樹脂フィルムに接着層が積層された多層フィルムをポリオレフィン系樹脂フィルム面側が表面となるように加熱融着させて積層する方法、(2)ポリオレフィン系樹脂フィルムとポリスチレン系樹脂フィルムとを予め接着層を介して積層接着したフィルム(PO/PSドライラミフィルム)を、ポリオレフィン系樹脂フィルム面側が表面となるように加熱融着させて積層する方法、(3)発泡シートに耐衝撃性ポリスチレン層を押出ラミネートにより形成し、その上にポリオレフィン系樹脂フィルムに接着層が設けられた多層フィルムを、ポリオレフィン系樹脂フィルム面側が表面となるように押圧接着する方法、(4)発泡シートに耐衝撃性ポリスチレン層を押出ラミネートにより形成し、その上にPO/PSドライラミフィルムを、ポリオレフィン系樹脂フィルム面側が表面となるように押圧接着する方法等が挙げられる。
熱成形方法としては、真空成形や圧空成形、更にこれらの応用としてフリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、リバースドロー成形、エアスリップ成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリバースドロー成形等やこれらを組み合わせた成形方法等が挙げられる。かかる熱成形法は、短時間に連続して容器を得ることができるので、好ましい方法である。尚、積層発泡シートを熱成形する場合、得られる成形体の内側に耐油性に優れるポリオレフィン系樹脂フィルムが位置するように成形することが好ましい。
製造装置として、第一押出機(スクリュー径115mm)と第二押出機(スクリュー径150mm)と第二押出機の出口に取付けられた口径180mmの環状ダイとを有するタンデム押出機を用いた。
次に示すスチレン−メタクリル酸共重合体を用いた。
(1)PSジャパン(株)製スチレン−メタクリル酸共重合体:製品名「G−9001」(略称G9001、ビカット軟化温度118℃)
(2)東洋スチレン(株)製スチレン−メタクリル酸共重合体:製品名「T080」(略称T080、ビカット軟化温度117℃)
次に示す耐衝撃性ポリスチレンを用いた。
(1)PSジャパン(株)製耐衝撃性ポリスチレン:製品名「H8117」(略称H8117、ゴム粒径1.3μm、ゲル含有量30重量%、ビカット軟化温度95℃)
(2)東洋スチレン(株)製耐衝撃性ポリスチレン:製品名「XL4」(略称KL4、ゴム粒径0.9μm、ゲル含有量21重量%、ビカット軟化温度94℃)
(3)東洋スチレン(株)製耐衝撃性ポリスチレン:製品名「475D」(略称475D、ゴム粒径2.3μm、ゲル含有量21重量%、ビカット軟化温度93℃)
なお、上記ビカット軟化温度は、JIS K7206:1999に基づきA50法により測定される値である。
(1)旭化成ケミカルズ(株)製スチレン−ブタジエンブロックコポリマー:製品名「タフプレン125」
表1に示す種類、量のスチレン−メタクリル酸共重合体と、表1に示す種類、量の耐衝撃性ポリスチレン又はスチレン−ブタジエンブロックコポリマーと、表1に示す配合量のタルク(気泡調整剤:松村産業社製ハイフィラー#12)を第一押出機のホッパー上にセットしたバッチ式連続混合装置にて均一に混和した後、第一押出機へ供給した。押出機のシリンダー温度は最高設定温度を240℃とし、混合樹脂を加熱、溶融させ、前記混合樹脂100重量部に対して表1に示す量の混合ブタン(ノルマルブタン35重量%とイソブタン65重量%との混合物)を発泡剤として圧入し、続いて第二押出機にて、表1に示す押出樹脂温度に冷却してから、環状ダイに供給し、ダイのスリットを通して300kg/時の吐出量で円筒状に押出して発泡させ、その直後に、円筒状発泡体の内側と外側に表1に示す量の吹きつけエアーを吹きかけて冷却した。その後、直径670mmの冷却装置(マンドレル)の外面に沿わせて更に冷却しながら引取り、さらに押出方向に沿って2枚に切り開いて幅1050mmの発泡シートを得た。得られた発泡シートの物性を表2に示す。
CPP25μm(サントックスKT)とCPS20μm(大石産業SPH)とがドライラミネートにより積層されたフィルム「CPP/PS45μm無地」と前記耐熱性発泡シートとを、190℃の熱ロールとバックアップロールの間を通して、該フィルムを発泡シートに圧着ラミネートし、積層発泡シートを得た。このとき、ライン速度は17m/min、熱ロールとバックアップロールの間隙を0.5mmに設定した。
得られた積層発泡シートの耐衝撃性、ポリオレフィン系樹脂フィルムの接着性、耐熱性の評価を表2に示す。
実施例、比較例で得られた積層発泡シートの耐衝撃性(靱性)について、下記の試験を行い、下記の基準で評価した。
積層発泡シートから60mm×60mmサイズの試験片11を切り出し、図1に示すように、内径40mmの円形状測定孔12aを有する筒状支持台12の上に、試験片11を表層密度の高い面側(表中、他方の面側)を下にして内径40mmの円形状測定孔13aが形成された固定具13で抑えて固定し、先端に直径20mmの半球を備え、ロードセルが接続されたロッド14を、上方から下降速度500m/minで降下させて試験片11を突き刺し、破壊時の荷重ならびに変位を記録した。得られた測定値について次の基準で評価した。
B:破壊時の荷重が30N以上40N未満
C:破壊時の荷重が20N以上30N未満
X:破壊時の荷重が20N未満
発泡シートとポリオレフィン系樹脂フィルムとの接着性は以下のようにして評価した。積層発泡シートからシートの幅方向に亘って等間隔に5箇所から押出方向に沿って長さ300mm×幅25mmの試験片を切り出し、各試験片に対してJIS Z0237に準拠した方法によりそれぞれの剥離強度を測定し、それらの測定値(n=5)を算術平均することにより剥離強度を求め、次の基準で評価した。
B:剥離強度が3.5N/25mm以上4.0N/25mm未満
C:剥離強度が3.0N/25mm以上3.5N/25mm未満
X:剥離強度が3.0N/25mm未満
積層発泡シートを熱成形して長辺190mm×短辺140mm×深さ25mmのトレー形状の成形体を得、得られた成形体を用いて電子レンジ試験を実施した。具体的には上記成形品に市販のレトルトカレー90gを入れ、蓋をして、600Wで1分30秒間加熱した。なお、蓋は、トレーのフランジと嵌合可能で、蒸気逃がしを備えた熱成形されたポリスチレン製の蓋を用いた。加熱前後の成形体の長辺寸法及び短辺寸法をそれぞれ測定し、加熱前の長辺寸法と加熱後の長辺寸法との差の絶対値(長辺寸法差)と、加熱前の短辺寸法と加熱後の短辺寸法との差の絶対値(短辺寸法差)とを求めた。長辺寸法差と短辺寸法差のうち大きい方の値を加熱寸法差とし、次の基準で評価した。
B:加熱寸法差が1mm以上3mm未満
X:加熱寸法差が3mm以上
上記変形評価の試験で、加熱後の成形体を観察し、次の基準で評価した。
A:デラミネーションの発生なし
B:注意深く観察しないと認識できないレベルのデラミネーションが発生
X:容易に認識可能なレベルのデラミネーションが発生
各発泡シートから試験を切り出し、JIS K7121−1987に基づく熱流束示差走査熱量測定法により、試験片の状態調節として「一定の熱処理を行なった後、ガラス転移温度を測定する場合」を採用し、加熱速度20℃/分で加熱してDSC曲線を得た
スチレン−メタクリル酸共重合体と耐衝撃性ポリスチレンとの混合物は、図2に示すように、低温側と高温側の2つのステージが現れる。低温側のステージは耐衝撃性ポリスチレンのガラス転移に基づいて現れるものであり、高温側のステージはスチレン−メタクリル酸共重合体のガラス転移に基づいて現れるものであり、これらのステージは、基材樹脂を構成するスチレン−メタクリル酸共重合体と、耐衝撃性ポリスチレンとは相容性に乏しいことにより現れるものである。
B 高温側ガラス転移温度
C 低温側ステージ
D 高温側ステージ
11 試験片
12 筒状支持台
12a 円形状測定孔
13 固定具
13a 円形状測定孔
14 ロッド
Claims (4)
- ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする発泡シートにおいて、
該ポリスチレン系樹脂は、スチレン−メタクリル酸共重合体と、粒径0.8μm以上1.8μm未満のゴムを含むと共にゲル分を含む耐衝撃性ポリスチレンとの混合物であり、
該ポリスチレン系樹脂中の該スチレン−メタクリル酸共重合体と該耐衝撃性ポリスチレンとの重量比が75:25〜90:10であり、
該ポリスチレン系樹脂中の前記耐衝撃性ポリスチレンに由来するゲル分の含有量が3〜6重量%であり、
該発泡シートの全体見掛け密度が50〜210kg/m3であり、
且つ該全体見掛け密度に対する発泡シートの一方の面側の表層部の見掛け密度の比が1.1〜1.8であると共に、
他方の面側の表層部の見掛け密度が前記一方の面側の表層部の見掛け密度よりも20kg/m3以上高いことを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡シート。
- 請求項1に記載のポリスチレン系樹脂発泡シートの前記一方の面側に、ポリオレフィン系樹脂フィルムが接着積層されていることを特徴とするポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
- 前記ポリスチレン系樹脂発泡シートと前記ポリオレフィン系樹脂フィルムとの剥離強度が3.0N/25mm以上であることを特徴とする請求項2に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
- 請求項2又は3に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シートを熱成形することにより得られたポリスチレン系樹脂積層発泡成形体。
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