JP7263117B2 - 耐熱スチレン系樹脂組成物、シート、及び成形品 - Google Patents
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すなわち、本発明は以下の通りのものである。
前記共重合樹脂(a)と前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)との合計含有量を100質量%としたときに、前記共重合樹脂(a)の含有量が80~91質量%で、前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)の含有量が9~20質量%であり、
前記共重合樹脂(a)は、前記スチレン系単量体単位と前記不飽和カルボン酸系単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、前記スチレン系単量体単位の含有量が86~94質量%で、前記不飽和カルボン酸系単量体単位の含有量が6~14質量%であり、且つ、重量平均分子量が15万~24万であり、
前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)は、前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)の全質量を100質量%としたときにゴム含有量が8~15質量%であり、且つ、ゴム粒子径が2.7~5.3μmであることを特徴とする、耐熱スチレン系樹脂組成物。
(2)樹脂の溶融温度が240℃で、且つせん断速度が400(1/s)のときの前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)の溶融粘度と前記共重合樹脂(a)の溶融粘度の比(樹脂(b)/樹脂(a))が0.6~1.4である、上記(1)に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
(3)前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)のトルエン不溶分の膨潤指数が8~15であり、且つ、該トルエン不溶分と該トルエン不溶分中のゴム含有量の質量比(トルエン不溶分/トルエン不溶分中のゴム含有量)が2.0~3.4である、上記(1)又は(2)に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
(4)前記耐熱スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度が109℃以上である、上記(1)~(3)のいずれか1項に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
(5)前記共重合樹脂(a)と前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)との合計含有量を100質量部としたときに、凝固点が-10℃以下であり、且つ、炭素数が14以上である脂肪族第1級アルコールを0.01~1.0質量部含有する、上記(1)~(4)のいずれか1項に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
(6)前記共重合樹脂(a)と前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)との合計含有量を100質量部としたときに、可塑剤を0.01~1.0質量部含有する、上記(1)~(5)のいずれか1項に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
(7)上記(1)~(6)のいずれか1項に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物を用いて形成された非発泡押出シート。
(8)上記(1)~(6)のいずれか1項に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物を用いて形成された発泡押出シート。
(9)上記(7)に記載の非発泡押出シート又は上記(8)に記載の発泡押出シートを用いて形成された成形品。
[耐熱スチレン系樹脂組成物]
本実施形態の耐熱スチレン系樹脂組成物は、スチレン系単量体単位と不飽和カルボン酸系単量体単位とを含む共重合樹脂(a)と、ゴム変性スチレン系樹脂(b)とを含み、共重合樹脂(a)とゴム変性スチレン系樹脂(b)との合計含有量を100質量%としたときに、共重合樹脂(a)の含有量が80~91質量%で、ゴム変性スチレン系樹脂(b)の含有量が9~20質量%である。また、本実施形態の耐熱スチレン系樹脂組成物において、共重合樹脂(a)は、スチレン系単量体単位と不飽和カルボン酸系単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、スチレン系単量体単位の含有量が86~94質量%で、不飽和カルボン酸系単量体単位の含有量が6~14質量%であり、且つ、重量平均分子量が15万~24万である。さらに、本実施形態の耐熱スチレン系樹脂組成物において、ゴム変性スチレン系樹脂(b)は、ゴム変性スチレン系樹脂(b)の全質量を100質量%としたときにゴム含有量が8~15質量%であり、且つ、ゴム粒子径が2.7~5.3μmである。
なお、以下、耐熱スチレン系樹脂組成物を樹脂組成物と、共重合樹脂(a)を(a)成分と、ゴム変性スチレン系樹脂(b)を(b)成分と、も称す。
本実施形態の樹脂組成物は、共重合樹脂(a)を、(a)成分と(b)成分との合計含有量を100質量%としたときに、80~91質量%含有し、好ましくは81~90質量%、より好ましくは共重合樹脂(a)82~89質量%含有する。本実施形態において、(a)成分の含有量を80質量%以上とすることにより、耐熱性や剛性を向上させることができる。また、(a)成分の含有量を91質量%以下とすることにより、機械的強度を向上させることができる。
本実施形態の樹脂組成物は、ゴム変性スチレン系樹脂(b)を、(a)成分と(b)成分との合計含有量を100質量%としたときに、9~20質量%含有し、好ましくは10~19質量%、より好ましくは共重合樹脂(a)11~18質量%含有する。本実施形態において、(b)成分を9~20質量%含むことにより、耐熱性、機械的強度、外観、耐油性、及び成形性に優れた樹脂組成物が得られる。また、(b)成分の含有量を9質量%以上とすることにより、機械的強度を向上させることができる。また、(a)成分の含有量を20質量%以下とすることにより、耐熱性や剛性を向上させることができる。
なお、上記の溶融粘度は、測定する樹脂の溶融温度が240℃で、且つ、せん断速度が400(1/s)のときに測定した値である。
本実施形態の樹脂組成物には、所望に応じて、通常用いられている添加剤、例えば、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、可塑剤、染料、顔料、各種充填剤等を添加することができ、このような添加剤が添加された樹脂組成物を各種成形に用いることができる。上記添加剤は、共重合樹脂(a)の製造時に予め添加されていてもよい。
本実施形態の樹脂組成物は、ビカット軟化温度が109℃以上であることが好ましく、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは111℃以上である。ビカット軟化温度が109℃以上であれば、沸騰水以上の温度でもシートの変形が小さく、良好である。ビカット軟化温度は、用いる共重合樹脂(a)のビカット軟化温度と用いるゴム変性スチレン系樹脂(b)のビカット軟化温度と、両方の混合比を調整することにより達成できる。ゴム変性スチレン系樹脂(b)はゴム含有量が少ないほど製造し易いが、機械的強度を高めるには添加量を増やす必要があり、この場合耐熱性が低下して好ましくない。より耐熱性が高く、且つ機械的強度の優れる樹脂組成物を得るためには、より耐熱性の高い共重合樹脂(a)と、よりゴム含有量の多いゴム変性スチレン系樹脂(b)とを混合することが好ましい。しかし、耐熱性の高い共重合樹脂(a)は製造する上で限界がある。不飽和カルボン酸系単量体の増加で、流動性の低下とゲル物の生成増加で品質が低下する。また、ゴム含有量の多いゴム変性スチレン系樹脂(b)も製造する上で限界がある。ゴム濃度の増加で重合系の粘度上昇などで製造が極めて難しくなる。本実施形態の樹脂組成物のビカット軟化温度は、好ましくは130℃以下で、より好ましくは125℃以下である。ビカット軟化温度が高すぎると、熱加工時に樹脂温度を高くする必要があり、このときにゲル物が発生しやすくなり、機械的強度の低下や外観不良を招く傾向となる。
耐熱スチレン系樹脂組成物の製造方法としては、特に限定しないが、共重合樹脂(a)とゴム変性スチレン系樹脂(b)とを押出機等で混合(溶融混練)することで例えばペレットの形態で、得ることができる。また、耐熱スチレン系樹脂組成物を用いて非発泡押出シートや発泡押出シートなどを製造したり、又は、共重合樹脂(a)とゴム変性スチレン系樹脂(b)を直接シート押出機のポッパーに投入、混合して、非発泡押出シートや発泡押出シートなどを製造したりすることもできる。
本実施形態の非発泡押出シートおよび発泡押出シートは、上述した本発明の実施形態の樹脂組成物を用いて形成される。
押出シートの製造方法としては、通常知られている方法を用いることができる。非発泡押出シートの製造方法としては、Tダイを取り付けた短軸又は二軸押出成形機で、一軸延伸機又は二軸延伸機でシートを引き取る装置を用いる方法等を挙げることができる。また、発泡押出シートの製造方法としては、Tダイ又はサーキュラーダイを備え付けた押出発泡成形機を用いる方法等を挙げることができる。
本実施形態の成形品は、上述した本発明の実施形態の非発泡押出シート又は発泡押出シートを用いて形成される。具体的には、成形品は、非発泡押出シートもしくはこれを含む多層体、または、発泡押出シートもしくはこれを含む多層体を、例えば真空成形することにより得られる。成形品としては、発泡押出シート又はこれを含む多層体を用いる場合には、例えば、トレー等の容器が挙げられる。また、非発泡押出シート又はこれを含む多層体を用いる場合には、成形品としては、例えば弁当の蓋材又は惣菜等を入れる容器を作製できる。
プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)測定機で測定したスペクトルの積分比から、樹脂組成を定量した。
試料調製:樹脂ペレット30mgをd6-DMSO 0.75mlに60℃で4~6時間加熱溶解した。
測定機器:日本電子 JNM ECA-500
測定条件:測定温度 25℃、観測核 1H、積算回数 64回、繰り返し時間 11秒
(スペクトルの帰属)
ジメチルスルホキシド重溶媒中で測定されたスペクトルの帰属は、0.5~1.5ppmのピークはメタクリル酸のα-メチル基の水素、1.6~2.1ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素、12.4ppmのピークはメタクリル酸のカルボン酸の水素である。また、6.5~7.5ppmのピークはスチレンの芳香族環の水素である。
ISO306に準拠して、荷重50N、昇温速度50℃/hの条件で測定した。
共重合樹脂(a)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、以下の条件で測定し、ポリスチレン換算で求めた。
装置 :東ソー製HLC―8220
分別カラム:東ソー製TSK gel Super HZM-H
ガードカラム:東ソー製TSK guard column Super HZ-H
測定溶媒:テトラヒドロフラン
試料濃度:測定試料5mgを10mLの溶媒に溶解
注入量 :10μL
測定温度:40℃
流速 :0.35mL/分
検出 :UV検出器
検量線の作成は東ソー製のTSK標準ポリスチレン11種類(F-850、F-450、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000)を用いた。
ISO 1133に準拠して測定した(200℃、荷重49N)。
Malvern Instruments社製、型式RH10のツインキャピラリーレオメータを用いて、樹脂温度240℃、せん断速度400(1/s)で、樹脂組成物の溶融粘度を測定した。
ゴム粒子径の測定は、ゴム変性スチレン系樹脂0.01gを電解液(1質量%チオシアン酸アンモニウム/99質量%ジメチルホルムアミド溶液)20ミリリットルに溶解させ、30μm径のアパーチャーチューブを装着したベックマンコールター株式会社製COULTER MULTISIZER III (商品名)にて測定した。求めた体積基準の粒子径分布曲線の体積50%のメジアン径をゴム粒子径とした。
沈殿管にゴム変性スチレン系樹脂1gを精秤し(W1)、トルエン20ミリリットルを加え23℃で2時間振とう後、遠心分離機((株)佐久間製作所製SS-2050A(ローター:6B-N6L))にて4℃以下、20000rpm(遠心加速度45100G)で60分間遠心分離する。沈殿管を約45度にゆっくり傾け、上澄み液をデカンテーションして取り除く。トルエンを含んだ不溶分の質量を精秤し(W2)、引き続き、160℃、3kPa以下の条件で1時間真空乾燥し、デシケータ内で室温まで冷却後、トルエン不溶分の質量を精秤する(W3)。
下記式により、トルエン不溶分の膨潤指数、及びトルエン不溶分を求める。
トルエン不溶分の膨潤指数=(W2/W3)
トルエン不溶分の含有量(質量%)=((W3)/(W1))×100
ゴム変性スチレン系樹脂0.25gをクロロホルム50mlに溶解し、一塩化ヨウ素を加えてゴム成分中の二重結合を反応させた後、ヨウ化カリウムを加え、残存する一塩化ヨウ素をヨウ素に変え、チオ硫酸ナトリウムで逆滴定した(一塩化ヨウ素法)。当該一塩化ヨウ素法を用いて測定された、ゴム変性スチレン系樹脂中のゴム含有量(W4:質量%)から、上記(7)のゴム変性スチレン系樹脂(W1)中のゴム含有量を次式で求めた:
トルエン不溶分中のゴム含有量(W5)=W1×W4/100
トルエン不溶分中のゴム含有量に対するトルエン不溶分の質量比(トルエン不溶分/トルエン不溶分中のゴム含有量)は次式で求めた:
トルエン不溶分/トルエン不溶分中のゴム含有量=W3/W5
樹脂組成物0.5gをメチルエチルケトン20mlに溶解させ、下記の条件下でガスクロマトグラフィーにより、脂肪族第1級アルコールの含有量を定量した。
(測定条件)
機器 :島津製製作所製ガスクロマトグラフィー GC2010
カラム :DB-WAX 30m、0.25mmφ、df=0.5μm
温度 :100℃→5℃/分→130℃→10℃/分→180℃-12分→
20℃/分→220℃-20分
樹脂組成物2gを精秤し、メチルエチルケトン40mlを加え23℃で40分間振とうし、メタノール200ml中に滴下し、60℃で10分間加温した後、23℃に冷却し、穴径0.45μmのメンブランフィルターで濾過した。濾別した濾液を減圧蒸留濃縮し、80℃で30分間乾燥した後、23℃に冷却し、ノルマルヘキサンに溶解させ、10mlの試料を得た。得られた試料について、下記の条件下で液体クロマトグラフィーにより、流動パラフィンの含有量を定量した。
(測定条件)
機器 :高速液体クロマトグラフ (株)島津製作所製(商品名)LC-10A
カラム :平均粒子径5μmの全多孔性シリカゲル、内径4.6mm、長さ250mm
溶媒 :ノルマルヘキサン
温度 :23℃
溶媒流量:2g/min
注入量 :200μm
25mm単軸シート押出機で作製した約1mmのシートを143℃(ビカット軟化温度+30℃)、10分間加熱して、シート押出方向に2.8倍、シート押出直角方向に2.8倍延伸し、厚さ0.12mmの延伸シートを作製し、東洋精機社製のフィルムインパクトテスター(A121807502)でインパクト強度を測定した。
(11)で作製した延伸シートから100mm×100mmのシートを3枚切り出し、105℃のシリコーンオイルのバス中に30分間浸漬させた。浸漬後の3枚のシートについて、縦方向の収縮率、横方向の収縮率を測定し、全ての収縮率から平均収縮率を算出し、以下の評価基準で判定した。収縮率3%未満が実用上好ましい。
◎:収縮率1%未満
○:収縮率1%以上3%未満
×:収縮率3%以上
(11)で作製した延伸シートから150mm×150mmのシートを3枚切り出し、このシート3枚の表面において(長径+短径)/2の平均径が1mm以上の異物であるゲル物の個数を数え、シート3枚中のゲル物の合計の個数より以下の評価基準で外観を判定した。
◎:ゲル物の個数が2点以下
○:ゲル物の個数が3~5点
×:ゲル物の個数が6点以上
発泡押出シート機で作製した厚さ2.1mmの発泡シートを用いて、縦50mm、横50mmに切り出し、東洋精機社製のフィルムインパクトテスター(A121807502)でインパクト強度を測定した。
発泡押出シート機で作製した厚さ2.1mm発泡シートを用いて、縦200mm、横200mmに切り出し、その後、シート容器成型機を用いて、発泡シートをシート成型機の固定枠に挟み、ヒータの平均温度を樹脂組成物のビカット軟化温度+105℃、雰囲気温度を140℃に設定し、20秒間加熱した。次いで、容器の形状として深さ(H)と開口部(W)の比(深さ(H)/開口部(W))が0.6となる容器を30個成形した。開口部の径は約85mm。この成形で、深絞りにするにつれて生ずる表面破れを、深絞り性として評価した。評価方法は、成形品30個の目視により、深絞り性を下記の3段階で評価した。
◎:良好(表面の破れなし)
○:表面破れ5個未満
×:表面破れ5個以上
圧縮成形機で、樹脂温度200℃、6分加熱で長さ120mm、幅30mm、厚さ1.1mmの非発泡シートを作製した。このシートを熱風乾燥器で80℃にて3時間加熱した後、シート片端を長さ方向に20mm固定し、固定位置から長さ方向に10mm空け、10mmの位置から幅30mm、長さ方向に20mmの範囲にサラダ油を浸した布を貼り付け、もう一方のシートの片端に250gの加重を吊り下げて、25℃の温度でシートの破断時間を測定した(シートはサラダ油を浸した布の位置で破断した)。なお、サラダ油は日清オイリオグループ株式会社製を使用した。
[共重合樹脂(a)の製造方法]
[樹脂A1]
スチレン82.7質量部、メタクリル酸5.3質量部、エチルベンゼン12.0質量部、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.02質量部から成る重合原料組成液を、0.8リットル/時の速度で、容量が4リットルの完全混合型反応器からなる重合装置に、次いで、未反応モノマー、重合溶媒等の揮発分を除去するため、単軸押出機を2台連結してなる脱揮装置に、連続的に、順次供給した。重合工程の条件は、完全混合反応器の重合温度133~136℃、脱揮工程の1台目の単軸押出機の条件は、樹脂溶融ゾーンの温度を190~210℃、真空度10kPa、2台目の単軸押出機の条件は、樹脂溶融ゾーンの温度を220~250℃、真空度2.5kPaにした。完全混合型反応器出のポリマー分は、重合液を215℃、2.5kPaで30分間乾燥後、〔乾燥後の試料質量/乾燥前の試料質量×100%〕により測定した。ポリマー分は66質量%、樹脂の重量平均分子量は21.7万であった(以下、表1参照)。
以下の表1に示す樹脂の性状になるよう樹脂A1と同様に、条件を調整した。なお、樹脂の分子量は、重合溶媒のエチルベンゼンの量と重合温度などで調整した。
[樹脂B1]
攪拌機を備えた層流型反応器3基(1.5リットル)を直列に連結し、その後に二段ベント付き押出機を配置した重合装置を用いて、ゴム変性スチレン系樹脂を製造する。撹拌機付き原料タンクにスチレン82質量部、エチルベンゼン11質量部、ゴム成分として宇部興産社製ウベポールBR15HBを7質量部、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.015質量部を投入し、撹拌機でゴム成分を溶解させた。その後、この原料溶液を反応器に0.75リットル/hrの容量で供給し、第1段の反応機の温度を110~125℃、第2段の反応機の温度を125~140℃、第3段の反応機の温度140~155℃で重合を行った。また押出機温度は200~240℃、真空度は2.5kPa、最終反応器から出た重合液中の全固形分は78質量%であった。ゴム粒子径は第1段層流型反応機の撹拌機の回転数を40rpmにすることで調整した(以下、表2参照)。
以下の表2に示す樹脂の性状になるよう樹脂B1と同様に、条件を調整した。なお、ゴム粒子径は、第1段層流型反応機の撹拌機の回転数で調整した。樹脂B8と樹脂B9は回転数を100rpmと30rpmに調整した。またトルエン不溶分は、重合開始剤の1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンの量で調整し、樹脂B5は当該開始剤を0.04質量部に変更して調整した。
[実施例1]
表3に示すように、共重合樹脂(a)として樹脂A1を89質量%、ゴム変性スチレン系樹脂(b)として樹脂B2を11質量%の割合に混ぜ、更にイソ脂肪族第1級アルコールと流動パラフィンを添加した後、二軸押出機で押出して樹脂ペレットを作製した。なお、表3中のイソ脂肪族第1アルコールは、日産化学社製の製品(ファインオキソコール180、凝固点:-30℃以下)を用い、また、流動パラフィンは、出光興産社製CP-68Nを用いた。表3中のイソ脂肪族第1級アルコールと流動パラフィン含有量は、共重合樹脂(a)とゴム変性スチレン系樹脂(b)の合計質量100質量部に対する測定値である。
得られた非発泡シート、発泡シート及び圧縮シートの物性及び性状の評価結果を、それぞれ、表3に示す。
表3に示す割合で共重合樹脂(a)とゴム変性スチレン系樹脂(b)を混ぜ、更にイソ脂肪族第1級アルコールと流動パラフィンなどを混合し、実施例1と同様に、非発泡シート、発泡シート及び圧縮シートを作製した。得られた非発泡シート、発泡シート及び圧縮シートの物性及び性状の評価結果を、それぞれ、表3に示す。なお、実施例6のみイソ脂肪族第1級アルコールを添加しなかった。また実施例9のみ流動パラフィンを添加しなかった。
実施例4において共重合樹脂(a)として樹脂A2を85質量%、ゴム変性スチレン系樹脂(b)として樹脂B3を15質量%の割合に混ぜたのに対し、比較例1では、共重合樹脂(a)として樹脂A2を95質量%、ゴム変性スチレン系樹脂(b)として樹脂B3を5質量%の割合に変更して混ぜた。残余の事項については実施例4と同様に実施し、非発泡シート、発泡シート及び圧縮シートを作製した。得られた非発泡シート、発泡シート及び圧縮シートの物性及び性状の評価結果を表3に示す。
比較例1ではゴム変性スチレン系樹脂(b)に用いた樹脂B3の添加量が5質量%と少なく、実施例4に比較して、非発泡シート及び発泡シートのインパクト強度と深絞り性が、劣るものとなった。
実施例4において共重合樹脂(a)として樹脂A2を85質量%、ゴム変性スチレン系樹脂(b)として樹脂B3を15質量%の割合に混ぜたのに対し、比較例2では、共重合樹脂(a)として樹脂A2を74質量%、ゴム変性スチレン系樹脂(b)として樹脂B3を26質量%の割合に変更して混ぜた。残余の事項については実施例4と同様に実施し、非発泡シート、発泡シート及び圧縮シートを作製した。得られた非発泡シート、発泡シート及び圧縮シートの物性及び性状の評価結果を表3に示す。
比較例2ではゴム変性スチレン系樹脂(b)に用いた樹脂B3の添加量が26質量%と多く、実施例4に比較して、ビカット軟化温度が低く、非発泡シートの耐熱性が劣るものとなった。
実施例4において共重合樹脂(a)として樹脂A2を85質量%、ゴム変性スチレン系樹脂(b)として樹脂B3を15質量%の割合に混ぜたのに対し、比較例3では、共重合樹脂(a)として樹脂A2を95質量%、ゴム変性スチレン系樹脂(b)として樹脂B6を5質量%の割合に変更して混ぜた。残余の事項については実施例4と同様に実施し、非発泡シート、発泡シート及び圧縮シートを作製した。得られた非発泡シート、発泡シート及び圧縮シートの物性及び性状の評価結果を表3に示す。
比較例3ではゴム変性スチレン系樹脂(b)に用いた樹脂B6の添加量が5質量%と少なく、実施例4に比較して、非発泡シート及び発泡シートのインパクト強度と深絞り性が、劣るものとなった。
実施例3において共重合樹脂(a)として樹脂A2を85質量%、ゴム変性スチレン系樹脂(b)として樹脂B2を15質量%の割合に混ぜたのに対し、比較例4では、共重合樹脂(a)として樹脂A6を85質量%、ゴム変性スチレン系樹脂(b)として樹脂B2を15質量%の割合に変更して混ぜた。残余の事項については実施例3と同様に実施し、非発泡シート、発泡シート及び圧縮シートを作製した。得られた非発泡シート、発泡シート及び圧縮シートの物性及び性状の評価結果を表3に示す。
比較例4では共重合樹脂(a)に用いた樹脂A6のメタクリル酸の含有量が4.8質量%と少なく、実施例3に比較して、ビカット軟化温度が低く、非発泡シートの耐熱性が劣るものとなった。
実施例1において共重合樹脂(a)として樹脂A1を89質量%、ゴム変性スチレン系樹脂(b)として樹脂B2を11質量%の割合に混ぜたのに対し、比較例5では、共重合樹脂(a)として樹脂A7を89質量%、ゴム変性スチレン系樹脂(b)として樹脂B2を11質量%の割合に変更して混ぜた。残余の事項については実施例1と同様に実施し、非発泡シート、発泡シート及び圧縮シートを作製した。得られた非発泡シート、発泡シート及び圧縮シートの物性及び性状の評価結果を表3に示す。
比較例5では共重合樹脂(a)に用いた樹脂A7の重量平均分子量が29.2万と高く、実施例1に比較して、非発泡シートの外観と発泡シートの深絞り性が、劣るものとなった。
実施例2において共重合樹脂(a)として樹脂A2を88質量%、ゴム変性スチレン系樹脂(b)として樹脂B2を12質量%の割合に混ぜたのに対し、比較例6では、共重合樹脂(a)として樹脂A8を88質量%、ゴム変性スチレン系樹脂(b)として樹脂B2を12質量%の割合に変更して混ぜた。残余の事項については実施例2と同様に実施し、非発泡シート、発泡シート及び圧縮シートを作製した。得られた非発泡シート、発泡シート及び圧縮シートの物性及び性状の評価結果を表3に示す。
比較例6では重合樹脂(a)に用いた樹脂A8のメタクリル酸単量体の含有量が15.3質量%と多く、実施例2に比較して、非発泡シート及び発泡シートのインパクト強度と非発泡シートの外観と発泡シートの深絞り性が、劣るものとなった。
実施例2において共重合樹脂(a)として樹脂A2を88質量%、ゴム変性スチレン系樹脂(b)として樹脂B2を12質量%の割合に混ぜたのに対し、比較例7では、共重合樹脂(a)として樹脂A2を88質量%、ゴム変性スチレン系樹脂(b)として樹脂B7を12質量%の割合に変更して混ぜた。残余の事項については実施例2と同様に実施し、非発泡シート、発泡シート及び圧縮シートを作製した。得られた非発泡シート、発泡シート及び圧縮シートの物性及び性状の評価結果を表3に示す。
比較例7ではゴム変性スチレン系樹脂(b)に用いた樹脂B7のゴム含有量が5.9質量%と少なく、実施例2に比較して、非発泡シート及び発泡シートのインパクト強度と発泡シートの深絞り性が、劣るものとなった。
実施例2において共重合樹脂(a)として樹脂A2を88質量%、ゴム変性スチレン系樹脂(b)として樹脂B2を12質量%の割合に混ぜたのに対し、比較例8では、共重合樹脂(a)として樹脂A2を88質量%、ゴム変性スチレン系樹脂(b)として樹脂B8を12質量%の割合に変更して混ぜた。残余の事項については実施例2と同様に実施し、非発泡シート、発泡シート及び圧縮シートを作製した。得られた非発泡シート、発泡シート及び圧縮シートの物性及び性状の評価結果を表3に示す。
比較例8ではゴム変性スチレン系樹脂(b)に用いた樹脂B8のゴム粒子径が2.1μmと小さく、実施例2に比較して、非発泡シート及び発泡シートのインパクト強度と圧縮シートの耐油性が、劣るものとなった。
実施例2において共重合樹脂(a)として樹脂A2を88質量%、ゴム変性スチレン系樹脂(b)として樹脂B2を12質量%の割合に混ぜたのに対し、比較例9では、共重合樹脂(a)として樹脂A2を88質量%、ゴム変性スチレン系樹脂(b)として樹脂B9を12質量%の割合に変更して混ぜた。残余の事項については実施例2と同様に実施し、非発泡シート、発泡シート及び圧縮シートを作製した。得られた非発泡シート、発泡シート及び圧縮シートの性状及び物性の評価結果を表3に示す。
比較例9ではゴム変性スチレン系樹脂(b)に用いた樹脂B9のゴム粒子径が6.2μmと大きく、実施例2に比較して、非発泡シート及び発泡シートのインパクト強度と非発泡シートの外観が、劣るものとなった。
Claims (9)
- スチレン系単量体単位と不飽和カルボン酸系単量体単位とを含む共重合樹脂(a)と、ゴム変性スチレン系樹脂(b)とを含む耐熱スチレン系樹脂組成物であって、
但し、前記耐熱スチレン系樹脂組成物中に含まれる成分から、ブタジエン単量体単位からなるゴム状粒子にメタクリル酸メチル単量体単位とスチレン単量体単位とを主成分とする共重合体がグラフトしてなるMBS樹脂及びマレイン化スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体である共重合樹脂を除く、
前記共重合樹脂(a)と前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)との合計含有量を100質量%としたときに、前記共重合樹脂(a)の含有量が80~91質量%で、前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)の含有量が9~20質量%であり、
前記共重合樹脂(a)は、前記スチレン系単量体単位と前記不飽和カルボン酸系単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、前記スチレン系単量体単位の含有量が86~94質量%で、前記不飽和カルボン酸系単量体単位の含有量が6~14質量%であり、且つ、重量平均分子量が15万~24万であり、
前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)は、前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)の全質量を100質量%としたときにゴム含有量が8~15質量%であり、且つ、ゴム粒子径が2.7~5.3μmであることを特徴とする、耐熱スチレン系樹脂組成物。 - 樹脂の溶融温度が240℃で、且つせん断速度が400(1/s)のときの前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)の溶融粘度と前記共重合樹脂(a)の溶融粘度の比(樹脂(b)/樹脂(a))が0.6~1.4である、請求項1に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
- 前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)のトルエン不溶分の膨潤指数が8~15であり、且つ、該トルエン不溶分と該トルエン不溶分中のゴム含有量の質量比(トルエン不溶分/トルエン不溶分中のゴム含有量)が2.0~3.4である、請求項1又は2に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
- 前記耐熱スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度が109℃以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
- 前記共重合樹脂(a)と前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)との合計含有量を100質量部としたときに、凝固点が-10℃以下であり、且つ、炭素数が14以上である脂肪族第1級アルコールを0.01~1.0質量部含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
- 前記共重合樹脂(a)と前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)との合計含有量を100質量部としたときに、可塑剤を0.01~1.0質量部含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
- 請求項1~6のいずれか1項に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物を用いて形成された非発泡押出シート。
- 請求項1~6のいずれか1項に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物を用いて形成された発泡押出シート。
- 請求項7に記載の非発泡押出シート又は請求項8に記載の発泡押出シートを用いて形成された成形品。
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