JP6104677B2 - 耐熱スチレン系樹脂組成物、押出シート及び成形品 - Google Patents
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すなわち、本発明は以下の通りのものである。
前記共重合樹脂(a)、前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)、及び前記共重合樹脂(c)の合計質量を100質量%としたときに、前記共重合樹脂(a)の含有量が40〜90質量%、前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)の含有量が5〜30質量%、及び前記共重合樹脂(c)の含有量が5〜30質量%であり、
前記共重合樹脂(a)が、スチレン単量体単位、メタクリル酸単量体単位、及びメタクリル酸メチル単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、スチレン単量体単位を69〜90質量%含有し、且つメタクリル酸単量体単位を9〜16質量%含有し、且つメタクリル酸メチル単量体単位を1〜15質量%含有し、
前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)中のゴム含有量が7〜15質量%であり、且つ前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)がゴム粒子径0.5〜5.0μmを有し、
前記共重合樹脂(c)が、スチレン単量体単位、及びメタクリル酸単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、スチレン単量体単位を91〜94質量%含有し、且つメタクリル酸単量体単位を6〜9質量%含有し、
前記耐熱スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度が110℃以上である、耐熱スチレン系樹脂組成物。
[2] 前記耐熱スチレン系樹脂組成物全質量に対して、スチレン二量体及びスチレン三量体の残存量の合計が0.6質量%以下であり、且つスチレン単量体の残存量が700ppm以下である、上記[1]に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
[3] 前記共重合樹脂(a)及び前記共重合樹脂(c)の重量平均分子量が、それぞれ100,000〜350,000である、上記[1]又は[2]に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
[4] 前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)のトルエン不溶分の膨潤指数が8.0〜14.0であり、且つ前記トルエン不溶分中のゴム含有量に対する前記トルエン不溶分の質量比(トルエン不溶分/トルエン不溶分中のゴム含有量)が1.5〜4.0である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
[5] ブタジエン単量体単位からなるゴム状粒子にメタクリル酸メチル単量体単位とスチレン単量体単位とを主成分とする共重合体がグラフトしてなるMBS樹脂(d)を、前記耐熱スチレン系樹脂組成物の全質量100質量%に対して14質量%以下の量で更に含有する、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
[6] マレイン化スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体である共重合樹脂(e)を、前記耐熱スチレン系樹脂組成物の全質量100質量%に対して14質量%以下の量で更に含有する、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
[7] メタクリル酸メチル単量体単位とアクリル酸ブチル単量体単位との共重合体である、重量平均分子量が1,000,000以上の共重合樹脂(f)を、前記耐熱スチレン系樹脂組成物の全質量100質量%に対して3.0質量%以下の量で更に含有する、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
[8] 凝固点が−10℃以下であり、且つ炭素数が14以上である脂肪族第1級アルコールを、前記耐熱スチレン系樹脂組成物中の前記脂肪族第1級アルコール以外の成分の合計100質量部に対して0.02〜1.0質量部の量で更に含有する、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
[9] 上記[1]〜[8]のいずれかに記載の耐熱スチレン系樹脂組成物を用いて形成された非発泡押出シート。
[10] 上記[1]〜[8]のいずれかに記載の耐熱スチレン系樹脂組成物を用いて形成された発泡押出シート。
[11] 上記[9]に記載の非発泡押出シート又は上記[10]に記載の発泡押出シートを用いて形成された成形品。
本発明の耐熱スチレン系樹脂組成物は、スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体である共重合樹脂(a)、ゴム変性スチレン系樹脂(b)、並びにスチレン−メタクリル酸共重合体である共重合樹脂(c)、を含有する耐熱スチレン系樹脂組成物であって、該共重合樹脂(a)、該ゴム変性スチレン系樹脂(b)、及び該共重合樹脂(c)の合計質量を100質量%としたときに、該共重合樹脂(a)の含有量が40〜90質量%、該ゴム変性スチレン系樹脂(b)の含有量が5〜30質量%、及び該共重合樹脂(c)の含有量が5〜30質量%であり、共重合樹脂(a)がスチレン単量体単位、メタクリル酸単量体単位、及びメタクリル酸メチル単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、スチレン単量体単位を69〜90質量%含有し、且つメタクリル酸単量体単位を9〜16質量%含有し、且つメタクリル酸メチル単量体単位を1〜15質量%含有し、ゴム変性スチレン系樹脂(b)中のゴム含有量が7〜15質量%であり、且つゴム変性スチレン系樹脂(b)がゴム粒子径0.5〜5.0μmを有し、共重合樹脂(c)がスチレン単量体単位、及びメタクリル酸単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、スチレン単量体単位を91〜94質量%含有し、且つメタクリル酸単量体単位を6〜9質量%含有し、該耐熱スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度が110℃以上である、耐熱スチレン系樹脂組成物(以下、単に「本発明の樹脂組成物」ということもある)である。
スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体である共重合樹脂(a)の含有量は、共重合樹脂(a)、ゴム変性スチレン系樹脂(b)、及び共重合樹脂(c)の合計質量100質量%に対して、40〜90質量%であり、好ましくは50〜80質量%、より好ましくは60〜80質量%である。この含有量が40質量%未満では、耐熱性が大きく低下する傾向がある。一方、90質量%を超えるとゴム変性スチレン系樹脂(b)及び共重合樹脂(c)の合計使用量が減少し、機械的強度の向上効果が十分得られない。
本発明におけるゴム変性スチレン系樹脂(b)は、スチレン系樹脂のマトリックス中にゴム状重合体の粒子を分散して、ゴム状重合体の存在下でスチレン系単量体を重合させることにより製造することができる。ゴム変性スチレン系樹脂(b)の含有量は、共重合樹脂(a)、ゴム変性スチレン系樹脂(b)、及び共重合樹脂(c)の合計質量100質量%に対して、5〜30質量%であり、好ましくは10〜25質量%、より好ましくは10〜20質量%である。ゴム変性スチレン系樹脂(b)の含有量が5質量%未満では、ゴム変性スチレン系樹脂(b)の使用量が減少し、機械的強度の向上効果が十分得られない。一方、30質量%を超えるとブタジエン含有量が多くなり、発泡時にガス抜け等で発泡が難しくなり、得られる発泡体の物性が低下する。また得られる成形品の剛性が低下する傾向、及びシート等の外観が低下する傾向がある。
スチレン−メタクリル酸共重合体である共重合樹脂(c)は、共重合樹脂(a)とゴム変性スチレン系樹脂(b)との相溶化剤として働くことができる。共重合樹脂(c)の含有量は、共重合樹脂(a)、ゴム変性スチレン系樹脂(b)、及び共重合樹脂(c)の合計質量100質量%に対して、5〜30質量%、好ましくは10〜25質量%、より好ましくは10〜20質量%である。この含有量が5質量%未満では、共重合樹脂(c)とゴム変性スチレン系樹脂(b)との相溶効果が薄れ、機械的強度が低下する傾向がある。一方、30質量%を超えると耐熱性の低下が大きくなる傾向がある。更にはゴム変性スチレン系樹脂(b)の含有量を多くすることができずに、機械的強度も低下する傾向がある。
本発明の樹脂組成物は、ブタジエン単量体単位からなるゴム状粒子にメタクリル酸メチル単量体単位とスチレン単量体単位とを主成分とする共重合体がグラフトしてなるMBS樹脂(d)を含有できる。MBS樹脂(d)の含有量は樹脂組成物全質量に対して14質量%以下であることが好ましく、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。樹脂組成物がMBS樹脂(d)を含有することで樹脂組成物の機械的強度を向上させることができるが、含有量が14質量%以下である場合、樹脂組成物のブタジエン単量体単位含有量が多くなり過ぎず、発泡成形時のガス抜け等で発泡が難しくなることを防止でき、得られる発泡体の物性の低下を防止できる。また得られる成形品の剛性の低下を防止できる。一方、機械的強度向上の効果を良好に得る観点から、含有量は1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは2質量%以上である。
本発明の樹脂組成物は、マレイン化スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体である共重合樹脂(e)を含有できる。共重合樹脂(e)の含有量は樹脂組成物全質量に対して14質量%以下であることが好ましく、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。樹脂組成物が共重合樹脂(e)を含有することで樹脂組成物の機械的強度を向上させることができるが、含有量が14質量%以下である場合、発泡成形時のガス抜け等で発泡が難しくなることを防止でき、得られる発泡体の物性の低下を防止できる。また得られる成形品の剛性の低下を防止できる。一方、機械的強度向上の効果を良好に得る観点から、含有量は1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは2質量%以上である。
本発明の樹脂組成物は、メタクリル酸メチル単量体単位とアクリル酸ブチル単量体単位との共重合体である、重量平均分子量が1,000,000以上の共重合樹脂(f)を含有できる。本発明の樹脂組成物が共重合樹脂(f)を含有する場合、樹脂組成物の溶融張力が向上して延伸が掛かり、機械的強度が向上し、好ましい。共重合樹脂(f)の含有量は、樹脂組成物全質量に対して3.0質量%以下が好ましく、より好ましくは2.5質量%以下、更により好ましくは2.0質量%以下である。この含有量が3.0質量%以下の場合は溶融張力が向上しすぎず、二次成形時の成形性が低下しにくい。また、機械的強度向上の効果を良好に得る観点から、この含有量は0.3質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上である。共重合樹脂(f)はメタクリル酸メチル単量体単位及びアクリル酸ブチル単量体単位以外の単量体単位を、本発明の効果を損なわない範囲で更に含有することを排除しないが、典型的にはメタクリル酸メチル単量体単位とアクリル酸ブチル単量体単位とからなる。
本発明の樹脂組成物は、凝固点が−10℃以下であり、且つ炭素数が14以上である脂肪族第1級アルコールを、耐熱スチレン系樹脂組成物中の脂肪族第1級アルコール以外の成分の合計100質量部に対して0.02〜1.0質量部含有できる。脂肪族第1級アルコールの配合は、前述の特許文献1又は2に記載されるようにメタクリル酸の脱水反応によるゲル化反応を抑制するために有効であり、特に共重合樹脂(a)や共重合樹脂(c)製造時に脂肪族第1級アルコールを系中に添加することが望ましい。炭素数が14未満のアルコールは、共重合樹脂(a)又は共重合樹脂(c)の製造時、シートの押出時等に、残留モノマー又は水分等の低揮発成分を除去する目的で高真空にした場合、揮発し易く、ゲル化反応の抑制効果が薄れる傾向がある。よって脂肪族第1級アルコールの炭素数は大きいほど好ましい。
本発明は、上述した本発明の樹脂組成物を用いて形成されて成る押出シートも提供する。押出シートは非発泡及び発泡のいずれでもよい。押出シートの製造方法としては、通常知られている方法を用いることができる。非発泡押出シートの製造方法としては、Tダイを取り付けた短軸又は二軸押出成形機で、一軸延伸機又は二軸延伸機でシートを引き取る装置を用いる方法等を挙げることができ、発泡押出シートの製造方法としては、Tダイ又はサーキュラーダイを備え付けた押出発泡成形機を用いる方法等を挙げることができる。
本発明は、上述した本発明の非発泡押出シート又は発泡押出シートを用いて形成された成形品も提供する。発泡押出シート又はこれを含む多層体を、例えば、真空成形により成形して、トレー等の容器を作製できる。また非発泡押出シートは、例えば、真空成形により成形して、弁当の蓋材又は惣菜等を入れる容器を作製できる。
(1)共重合樹脂(a)のスチレン、メタクリル酸及びメタクリル酸メチルの各々の単量体単位の含有量(質量%)の測定:
プロトン核磁気共鳴(1H−NMR)測定機で測定したスペクトルの積分比から、樹脂組成を定量した。
試料調製:樹脂ペレット30mgをd6−DMSO 0.75mlに60℃で4〜6時間加熱溶解した。
測定機器:日本電子(株)製 JNM ECA−500
測定条件:測定温度 25℃、観測核 1H、積算回数 64回、繰り返し時間 11秒。
(スペクトルの帰属)
ジメチルスルホキシド重溶媒中で測定されたスペクトルの帰属は、0.5〜1.5ppmのピークはメタクリル酸、メタクリル酸メチル及び六員環酸無水物のα−メチル基の水素、1.6〜2.1ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素、3.5ppmのピークはメタクリル酸メチルのカルボン酸エステル(−COOCH3)の水素、12.4ppmのピークはメタクリル酸のカルボン酸の水素である。また、6.5〜7.5ppmのピークはスチレンの芳香族環の水素である。なお、本発明の樹脂は六員環酸無水物の含有量が少ないため、本測定の方法では通常定量化は難しい。
上記(1)と同様に実施した。
ISO 306に準拠して測定した。荷重は49Nとした。
(4)重量平均分子量(万)の測定:
試料調製:テトラヒドロフランに樹脂約0.05質量%を溶解させた。
(測定条件)
機器:TOSOH HLC−8220GPC(ゲルパーミエイション・クロマトグラフィー)
カラム :super HZM−H
温度 :40℃
キャリア :THF 0.35ml/min
検出器 :RI、UV:254nm
検量線 :TOSOH製の標準PS使用
ISO 1133に準拠して測定した(200℃、荷重49N)。
(6)ゴム粒子径の測定:
ゴム粒子径の測定は、超薄切片法による透過型電子顕微鏡写真をとり、写真中の粒子1000個の粒子径を測定して次の式で求めた。
ゴム粒子径=Σni×Di4/Σni×Di3
(ただし、niは粒子径Diを有するゴム粒子の個数である。またDiは粒子の長径と短径の平均値で求めた)
沈殿管にゴム変性スチレン系樹脂1gを精秤し(この質量をW1とする)、トルエン20ミリリットルを加え23℃で2時間振とう後、遠心分離機((株)日立製作所製himac、CR−20(ローター:R20A2))にて10℃以下、20000rpmで60分間遠心分離した。沈殿管を約45度にゆっくり傾け、上澄み液をデカンテーションして取り除いた。不溶分(これはトルエンを伴った状態である)の質量を精秤し(この質量をW2とする)、引き続き、160℃、3kPa以下の条件で1時間真空乾燥し、デシケータ内で室温まで冷却後、トルエン不溶分の質量を精秤した(この質量をW3とする)。
下記式により、トルエン不溶分の膨潤指数を求めた。
トルエン不溶分の膨潤指数=(W2/W3)
ゴム変性スチレン系樹脂0.25gをクロロホルム50mlに溶解し、一塩化ヨウ素を加えてゴム成分中の二重結合を反応させた後、ヨウ化カリウムを加え、残存する一塩化ヨウ素をヨウ素に変え、チオ硫酸ナトリウムで逆滴定した(一塩化ヨウ素法)。この方法により、ゴム変性スチレン系樹脂中のゴム含有量(W4:質量%)を測定し、この値から上記(7)におけるゴム変性スチレン系樹脂(W1)中のゴム含有量、即ちトルエン不溶分中のゴム含有量(W5)を次式で求めた:
トルエン不溶分中のゴム含有量(W5)=W1×W4/100
トルエン不溶分中のゴム含有量に対するトルエン不溶分の質量比(トルエン不溶分/トルエン不溶分中のゴム含有量)は次式で求めた。
トルエン不溶分/トルエン不溶分中のゴム含有量=W3/W5
試料調製:樹脂組成物2.0gをメチルエチルケトン20mlに溶解後、更に標準物質入りのメタノール5mlを加え溶解した。
(測定条件)
機器 :島津製製作所製ガスクロマトグラフィー GC−17Apf
カラム :DB−1(100%ジメチルポリシロキサン) 30m、
膜厚0.1μm、0.25mmφ
カラム温度 :100℃で2分保持→5℃/分で260℃まで昇温→260℃で5分保持
注入口温度 :200℃
検出器温度 :200℃
キャリアガス :窒素
試料調製 :樹脂組成物1.0gを標準物質入りジメチルホルアミド25mlに溶解させた。
(測定条件)
機器 :島津製製作所製ガスクロマトグラフィー GC−14Bpf
カラム :SUS 3mmφ×3m(パックドカラム)
充填剤 :液相→PEG−20M 25%
担体→Chromosorb W(AW) 60〜80メッシュ
カラム温度 :110℃
注入口温度 :220℃
検出器温度 :220℃
キャリアガス :窒素
試料調製 :樹脂組成物0.5gをメチルエチルケトン20mlに溶解させた。
(測定条件)
機器 :島津製製作所製ガスクロマトグラフィー GC2010
カラム :DB−WAX 30m、0.25mmφ、df=0.5μm
温度 :100℃→5℃/分で130℃まで昇温→10℃/分で180℃まで昇温→180℃で12分保持→20℃/分で220℃まで昇温→220℃で20分保持
(12)シャルピー衝撃強さ(kJ/m2)の測定:
ISO 179に準拠して、ノッチ無しで測定した。
(13)曲げ強さ(MPa):
ISO 178に準拠して、測定した。
(14)曲げたわみ(mm):
上記(13)の曲げ強さの測定時に、最大のたわみ量を測定した。
150×150×2.5mmの短冊型の金型を使用して、充填5.0秒で射出成形時にショートショットさせた。70ショット終了後、15分間射出成形を停止し、金型を冷却して、成形体先端部に相当する金型面を目視で観察し、金型の汚れを確認しつつ、700ショットまで成形を繰り返した。以下の評価基準で金型汚れを判定した。
◎:700ショットで金型汚れなし。
○:420〜630ショットで金型汚れ発生。
なお、成形は、金型温度20℃、樹脂温度260℃で行なった。また、金型汚れの付着物の成分を前述の手順にてガスクロマトグラフィーで測定したところ、スチレン二量体及びスチレン三量体が大部分で、樹脂に練り込んだアルコールが僅かに含まれていた。
(16)非発泡シートインパクト強度(kgf・cm)の測定:
所定の条件で作製した0.1mm厚の延伸したシートにつき、東洋精機社製のフィルムインパクトテスター(A121807502)でインパクト強度を測定した。
所定の条件で作製した0.1mm厚の延伸シートにつき、108℃のシリコーン油のバスに30分間浸漬させた時のシート押出方向の5倍延伸の収縮率を測定し、以下の評価基準で判定した。収縮率3%未満が実用上好ましい。
◎:収縮率3%未満
○:収縮率3%以上6%未満
×:収縮率6%以上
所定の条件で作製した0.1mm厚の延伸シートから8cm×20cmの大きさのシートを3枚切り出し、シート3枚の表面において(長径+短径)/2の平均径が1mm以上の異物であるゲル物の個数を数え、以下の評価基準で外観を判定した。
◎:ゲル物の個数が2点以下
○:ゲル物の個数が3〜5点
×:ゲル物の個数が6点以上
シート押出時に、ダイス出口の臭気を確認し、以下の評価基準でダイス出口の臭気を判定した。
◎:臭いを殆ど感じない
○:臭いをわずかに感じた
(20)発泡シートのインパクト強度(kgf・cm)の測定:
所定の条件で作製した発泡シートにつき、東洋精機社製のフィルムインパクトテスター(A121807502)でインパクト強度を測定した。
[樹脂A]
スチレン71.3質量部、メタクリル酸7.3質量部、メタクリル酸メチル6.4質量部、エチルベンゼン15.0質量部、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.025質量部から成る重合原料組成液を、1.1リットル/時の速度で、容量が4リットルの完全混合型反応器に、次いで、2リットルの層流型反応器から成る重合装置に、次いで、未反応モノマー、重合溶媒等の揮発分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置に、連続的に順次供給し、樹脂を調製した。重合工程における重合反応条件は、完全混合反応器は重合温度122℃、層流型反応器は重合温度120〜142℃とした。脱揮された未反応ガスは−5℃の冷媒を通した凝縮器で凝縮し、未反応液として回収した。最終重合液中のポリマー分は、重合液を215℃、2.5kPaの減圧下で30分間乾燥後、式[(乾燥後の試料質量/乾燥前の試料質量)×100%]により測定したところ、65.6質量%であり、重量平均分子量は214,000(21.4万)であった。得られた樹脂の組成比、特性等を表1に示す。
表1及び表2に示す樹脂の性状になるように組成や重合温度条件等を調整し、樹脂Aと同様の方法で共重合樹脂(a)及び共重合樹脂(c)を得た。
[樹脂D]
攪拌機を備えた層流型反応器3基(1.5リットル)を直列に連結し、その後に二段ベント付き押出機を配置した重合装置を用いて、ゴム変性スチレン系樹脂を製造した。撹拌機付き原料タンクにスチレン82質量部、エチルベンゼン12質量部、ゴム成分として旭化成ケミカルズ社製ジエン55を6.7質量部、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.02質量部を投入、撹拌機でゴム成分を溶解後、この原料溶液を反応器に0.75リットル/hrの容量で供給し、第1段の反応機の温度を110〜120℃、第2段の反応機の温度を120〜130℃、第3段の反応機の温度140〜150℃で重合を行った。また押出機温度は210〜240℃、真空度は3kPa、最終反応器から出た重合液中の全固形分は77.9質量%であった。ゴム粒子径は第1段層流型反応機の撹拌機の回転数を115rpmに調整することで制御した。得られた樹脂の組成、特性を表3に示す。
表3に示す樹脂の性状になるように条件を調整し、樹脂Dと同様の方法でゴム変性スチレン系樹脂(b)を得た。なお、表3に示すゴム粒子径を得るために、樹脂F及び樹脂Gは第1段層流型反応機の撹拌機の回転数をそれぞれ250rpm、20rpmに調整した。
ブタジエン単量体単位からなるゴム状粒子にメタクリル酸メチル単量体単位とスチレン単量体単位と少量のアクリル酸ブチルの共重合体とがグラフトしてなるMBS樹脂(d)として、三菱レイヨン社製のメタブレンC−223A(ブタジエン単量体単位含有量:70質量%、メタクリル酸メチル単量体単位とスチレン単量体単位の合計含有量:29質量%、メタクリル酸メチル単量体/スチレン単量体の組成比=1/1、アクリル酸ブチル単量体単位:1%)を用いた。
マレイン化スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体である共重合樹脂(e)として、旭化成ケミカルズ社製のタフテックM1913(スチレン単量体単位含有量30質量%)を用いた。
メタクリル酸メチル単量体単位とアクリル酸ブチル単量体単位との共重合体である共重合樹脂(f)として、三菱レイヨン社製のメタブレンP−531A(重量平均分子量:4,500,000)を用いた。
以下の表4に示すように、共重合樹脂(a)としての樹脂Aの65質量%に対し、ゴム変性スチレン系樹脂(b)として樹脂Eを15質量%、共重合樹脂(c)として樹脂Hを20質量%の割合に混ぜ、更にイソ脂肪族第1級アルコールを添加した後、二軸押出機で押出して樹脂ペレットを作製した。以下の表4に示す樹脂組成物中のアルコール含有量(質量%)はガスクロマトグラフィーで定量した値である。なお、以下の表4中のイソ脂肪族第1級アルコールとしては日産化学社製の製品(ファインオキソコール180、凝固点:−30℃以下)を用いた。
以下の表4に示す割合で共重合樹脂(a)とゴム変性スチレン系樹脂(b)と共重合樹脂(c)と、必要に応じてMBS樹脂(d)、共重合樹脂(e)又は共重合樹脂(f)とを混ぜ、更にイソ脂肪族第1級アルコールを添加した後、二軸押出機で押出して樹脂ペレットを作製し、実施例1と同様に、非発泡押出物及び発泡押出物を作製し、それらの性状及び物性を評価した。評価結果を以下の表4に示す。なお、実施例1とのビカット軟化温度の差の分だけ、シートの延伸温度、及び液化炭酸ガス含有のシートの発泡温度を増減した。
共重合樹脂(a)としての樹脂Aの83質量%と、ゴム変性スチレン系樹脂(b)としての樹脂Eの15質量%と、共重合樹脂(c)としての樹脂Hの2質量%とを混ぜたことを除いて、実施例1と同様に実施し、非発泡押出物及び発泡押出物を調製した。得られたものの性状及び物性の評価結果を以下の表4に示す。比較例1では共重合樹脂(a)とゴム変性スチレン系樹脂(b)の相溶化剤としての働きのある共重合樹脂(c)の添加量を20質量%から2質量%と少なくした。実施例1に比較して、非発泡シート及び発泡シートのインパクト強度が劣るものとなった。
共重合樹脂(a)としての樹脂Aの65質量%と、ゴム変性スチレン系樹脂(b)の比較としての樹脂Fの15質量%と、共重合樹脂(c)としての樹脂Hの20質量%とを混ぜたことを除いて、実施例1と同様に実施し、非発泡押出物及び発泡押出物を調製した。得られたものの性状及び物性の評価結果を以下の表4に示す。比較例2ではゴム変性スチレン系樹脂の種類を樹脂Eから樹脂Fに変更することで、ゴム変性スチレン系樹脂中のゴム量を12.1質量%から5.0質量%に低減した。実施例1に比較して、シャルピー衝撃強さ、非発泡シート及び発泡シートのインパクト強度等の機械的強度が劣るものとなった。
共重合樹脂(a)の比較としての樹脂Cの65質量%と、ゴム変性スチレン系樹脂(b)としての樹脂Eの15質量%と、共重合樹脂(c)としての樹脂Hの20質量%とを混ぜたことを除いて、実施例1と同様に実施し、非発泡押出物及び発泡押出物を調製した。得られたものの性状及び物性の評価結果を以下の表4に示す。比較例3では共重合樹脂(a)を樹脂Aから樹脂Cに変更することで、メタクリル酸含有量の多い樹脂を使用した。実施例1に比較して、非発泡シートの外観が劣るものとなった。
共重合樹脂(a)としての樹脂Aの30質量%と、ゴム変性スチレン系樹脂(b)としての樹脂Eの35質量%と、共重合樹脂(c)としての樹脂Hの35質量%とを混ぜたことを除いて、実施例1と同様に実施し、非発泡押出物及び発泡押出物を調製した。得られたものの性状及び物性の評価結果を以下の表4に示す。比較例4ではビカット軟化温度が106℃と低く非発泡シートの耐熱性が劣るものとなった。またゴム変性スチレン系樹脂(b)の含有量が30質量%超で、非発泡シート外観、及び発泡シートのインパクト強度が劣るものとなった。
共重合樹脂(a)としての樹脂Aの68質量%と、ゴム変性スチレン系樹脂(b)の比較としての樹脂Gの12質量%と、共重合樹脂(c)としての樹脂Hの20質量%とを混ぜたことを除いて、実施例8と同様に実施し、非発泡押出物及び発泡押出物を調製した。得られたものの性状及び物性の評価結果を以下の表4に示す。比較例5ではゴム変性スチレン系樹脂を樹脂Eから樹脂Gに変更したことで、ゴム粒子径が1.8μmから6.5μmと大きくなった。実施例8に比較して、非発泡シートの外観が劣るものとなった。
Claims (11)
- スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体である共重合樹脂(a)、ゴム変性スチレン系樹脂(b)、並びにスチレン−メタクリル酸共重合体である共重合樹脂(c)、を含有する耐熱スチレン系樹脂組成物であって、
前記共重合樹脂(a)、前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)、及び前記共重合樹脂(c)の合計質量を100質量%としたときに、前記共重合樹脂(a)の含有量が40〜90質量%、前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)の含有量が5〜30質量%、及び前記共重合樹脂(c)の含有量が5〜30質量%であり、
前記共重合樹脂(a)が、スチレン単量体単位、メタクリル酸単量体単位、及びメタクリル酸メチル単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、スチレン単量体単位を69〜90質量%含有し、且つメタクリル酸単量体単位を9〜16質量%含有し、且つメタクリル酸メチル単量体単位を1〜15質量%含有し、
前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)中のゴム含有量が7〜15質量%であり、且つ前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)がゴム粒子径0.5〜5.0μmを有し、
前記共重合樹脂(c)が、スチレン単量体単位、及びメタクリル酸単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、スチレン単量体単位を91〜94質量%含有し、且つメタクリル酸単量体単位を6〜9質量%含有し、
前記耐熱スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度が110℃以上である、耐熱スチレン系樹脂組成物。 - 前記耐熱スチレン系樹脂組成物全質量に対して、スチレン二量体及びスチレン三量体の残存量の合計が0.6質量%以下であり、且つスチレン単量体の残存量が700ppm以下である、請求項1に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
- 前記共重合樹脂(a)及び前記共重合樹脂(c)の重量平均分子量が、それぞれ100,000〜350,000である、請求項1又は2に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
- 前記ゴム変性スチレン系樹脂(b)のトルエン不溶分の膨潤指数が8.0〜14.0であり、且つ前記トルエン不溶分中のゴム含有量に対する前記トルエン不溶分の質量比(トルエン不溶分/トルエン不溶分中のゴム含有量)が1.5〜4.0である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
- ブタジエン単量体単位からなるゴム状粒子にメタクリル酸メチル単量体単位とスチレン単量体単位とを主成分とする共重合体がグラフトしてなるMBS樹脂(d)を、前記耐熱スチレン系樹脂組成物の全質量100質量%に対して14質量%以下の量で更に含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
- マレイン化スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体である共重合樹脂(e)を、前記耐熱スチレン系樹脂組成物の全質量100質量%に対して14質量%以下の量で更に含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
- メタクリル酸メチル単量体単位とアクリル酸ブチル単量体単位との共重合体である、重量平均分子量が1,000,000以上の共重合樹脂(f)を、前記耐熱スチレン系樹脂組成物の全質量100質量%に対して3.0質量%以下の量で更に含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
- 凝固点が−10℃以下であり、且つ炭素数が14以上である脂肪族第1級アルコールを、前記耐熱スチレン系樹脂組成物中の前記脂肪族第1級アルコール以外の成分の合計100質量部に対して0.02〜1.0質量部の量で更に含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物を用いて形成された非発泡押出シート。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の耐熱スチレン系樹脂組成物を用いて形成された発泡押出シート。
- 請求項9に記載の非発泡押出シート又は請求項10に記載の発泡押出シートを用いて形成された成形品。
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