JP2022076298A - スチレン系樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、植物由来の材料をスチレン系樹脂に配合することにより、環境負荷を低減することができ、スチレン系樹脂の本来の成形性を失わずに、実用的な衝撃強度、優れた熱安定性及び優れた低吸水性を兼ね備えた、臭気の少ないスチレン系樹脂組成物を提供することを目的とする。【解決手段】本発明は、(A)スチレン系樹脂、(B)澱粉系ポリマー及び(C)スチレン二量体とスチレン三量体を含有するスチレン系樹脂組成物であって、前記(A)スチレン系樹脂と、前記(B)澱粉系ポリマーとの合計100質量部に対して、前記(A)スチレン系樹脂を5~95質量部と、前記(B)でんぷん澱粉系ポリマーを5~95質量部に対してと、前記(C)スチレン二量体とスチレン三量体の合計含有量が0.05~0.7質量部と、とを含有するスチレン系樹脂組成物である。【選択図】なし

Description

本発明は、スチレン系樹脂組成物に関する。
近年、持続可能な社会を実現する観点から再生可能資源を利用が求められており、石油を原料としない非石油系樹脂が注目されている。非石油系樹脂の一種として澱粉組成物がある。澱粉組成物を構成する澱粉は、トウモロコシ、ジャガイモ、タピオカ、米又は麦などの農作物から採取することができ、かつ澱粉中の炭素原子は、大気中の炭酸ガスを光合成して固定化されたものであるために、たとえ焼却廃棄しても炭酸ガス総量を増加させることのない、いわゆる「カーボンニュートラル」な材料と言える。すなわち、石油から採取される原料と異なり枯渇するおそれがないため、永続的な使用可能性が期待されている。
このような植物由来の環境維持可能な材料を石油系樹脂に配合して使用することにより、石油系樹脂の使用量を削減する技術について、種々の検討が行われている(特許文献1、特許文献2参照)。石油系樹脂の代表格であるスチレン系樹脂の使用量が多いだけに、上記材料をスチレン系樹脂に配合して使用することができれば、石油系樹脂の削減量も多大であると考えられる。そのため、スチレン系樹脂の使用量を削減することは、石油使用量及び炭酸ガス総量を減らし、かつ環境負荷の低減につながる技術として注目されている。
特開2005-48067号公報 特開2018-48248号公報
ところで、石油系樹脂及び植物由来の環境維持可能な材料を混合した混合組成物を使用する場合において、当該混合組成物から得られた成形品の耐衝撃性又はヒンジ特性等の機械的強度が、石油系樹脂と比べ著しく低下するため、改善の余地があった。また、スチレン系樹脂中の残留スチレン単量体の量、又はスチレン二量体及びスチレン三量体の量が多いと、組成物自体の臭気だけでなく、樹脂の射出成形時、非発泡又は発泡シートの押出時、或いはこれらのシートの加工時に臭気が発生する場合がある。特に食品容器においては、これらの臭気が容器内容物へ移行する場合があることから、樹脂中のスチレンの単量体又はスチレン二量体若しくはスチレン三量体の低減が求められている。
そこで本発明は、植物由来の材料をスチレン系樹脂に配合することにより環境負荷を低減することができ、スチレン系樹脂の本来の成形性を失わずに、実用的な衝撃強度、優れた熱安定性及び優れた低吸水性を兼ね備えた臭気の少ないスチレン系樹脂組成物を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究し、実験を重ねた結果、特定組成のスチレン系樹脂と、澱粉系ポリマーを特定の含有量で配合することにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]本発明は、(A)スチレン系樹脂、(B)澱粉系ポリマー及び(C)スチレン二量体とスチレン三量体を含有するスチレン系樹脂組成物であって、
前記(A)スチレン系樹脂と、前記(B)澱粉系ポリマーとの合計100質量部に対して、前記(A)スチレン系樹脂を5~95質量部と、
前記(B)澱粉系ポリマーを5~95質量部と、
前記(C)スチレン二量体とスチレン三量体の合計含有量が0.05~0.7質量部と、を含有するスチレン系樹脂組成物である。
[2]本発明において、前記(A)スチレン系樹脂が、ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びスチレン-(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
[3]本発明において、前記(A)スチレン系樹脂と前記(B)澱粉系ポリマーとの合計100質量部に対して、(C)流動パラフィンを0.1~3質量部含有することが好ましい。
[4]本発明において、スチレン単量体の含有量が、200μg/g以下であることが好ましい。
[5]本発明において、前記(A)スチレン系樹脂と(B)澱粉系ポリマーとの合計100質量部に対して、酸化防止剤を0.001~0.3質量部含有することが好ましい。
[6]請求項1~5のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物の全体の質量が5%減少する温度である、5%質量減少温度が、250℃以上360℃以下であることが好ましい。
本発明により、環境負荷を低減し、実用的な耐衝撃性、優れた熱安定性及び優れた低吸水性を有する、臭気の少ないスチレン系樹脂組成物を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
<スチレン系樹脂組成物>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、(A)スチレン系樹脂、(B)澱粉系ポリマー及び(C)スチレン二量体とスチレン三量体を含有する。そして、当該スチレン系樹脂組成物において、前記(A)スチレン系樹脂と、前記(B)澱粉系ポリマーとの合計100質量部とすると、前記(A)スチレン系樹脂を5~95質量部と、前記(B)澱粉系ポリマーを5~95質量部と、前記(C)スチレン二量体とスチレン三量体との合計が0.05~0.7質量部と、を含有する。
これにより、環境負荷を低減し、実用的な耐衝撃性、優れた熱安定性及び優れた低吸水性を有する、臭気の少ないスチレン系樹脂組成物を提供することができる。なお、臭気の少ないスチレン系樹脂組成物とは、スチレン系樹脂組成物自体の臭気と、スチレン系樹脂組成物を成型する際に生じる臭気との両方が少ないことをいう。
<(A)スチレン系樹脂:(A)成分>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、(A)スチレン系樹脂と、(B)澱粉系ポリマーとの合計を100質量部としたときに、(A)スチレン系樹脂の含有量は5~95質量部である。環境負荷を低減する場合は、スチレン系樹脂の含有量は、好ましくは5~50質量部、より好ましくは5~30質量部、更に好ましくは5~20質量部である。耐衝撃性を重視する場合は、スチレン系樹脂の含有量は、好ましくは50質量部超~90質量部、より好ましくは55~84質量部、更に好ましくは60~79質量部である。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、(A)スチレン系樹脂を必須に含有する。本実施形態で用いることができる(A)スチレン系樹脂は、スチレン系単量体(a1)と、必要に応じて当該スチレン系単量体(a1)と共重合可能な別のビニル系単量体とを重合して得られる樹脂であることが好ましい。換言すると、(A)スチレン系樹脂は、スチレン系単量体単位(a1)(スチレン系単量体(a1)が重合して形成される繰り返し単位)を有する重合体であることが好ましく、スチレン系単量体単位(a1)を必須に含み、かつ当該スチレン系単量体単位(a1)に対して共重合可能な別のビニル系単量体を任意成分として有する重合体又はゴム変性ポリスチレン系樹脂であることがより好ましい。本実施形態のスチレン系樹脂組成物に含まれる(A)スチレン系樹脂を構成するスチレン系単量体(a1)としては、スチレンの他に、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、t-ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン系誘導体が挙げられる。中でも特に、スチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体(a1)は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、本発明の効果を損なわない範囲で有れば、上記のスチレン系単量体(a1)と共重合可能な別の単量体を含有する共重合体であってもよく、スチレン系単量体(a1)を10質量%以上含む共重合体であることが好ましい。
上記共重合可能な別の単量体としては、1,3-ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、セチルメタクリレート等のアクリル酸及びメタクリル酸のエステル、或いはアクリロニトリル、ジメチルフマレート、エチルフマレート等の各種単量体が挙げられ、これらの単量体を1種単独でもしくは2種以上を混合して用いることができる。また、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の2官能性単量体を併用してもよい。
さらに、上記(A)スチレン系樹脂としては、スチレン単独重合体であるポリスチレンと1,3-ブタジエンとを含有するハイインパクトポリスチレン等のゴム質を含有するものであってもよい。
本実施形態の(A)スチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は,好ましくは10万~50万、より好ましくは15万~45万、更に好ましくは20万~40万である。重量平均分子量が10万未満では得られる樹脂組成物が脆くなり易い。また、重量平均分子量が50万を越えると、樹脂組成物の流動性低下による加工性低下が大となる傾向にある。
なお本開示で、(A)スチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、後述の実施例の欄に記載の条件を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
本実施形態のスチレン系樹脂の重合方法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法等の公知のスチレン重合方法が挙げられ、中でも、溶液重合或いは塊状重合がコストの点で好ましい。
上記重合において使用する反応器の形状は、特に制限はないが、完全混合型反応器、層流型反応器、及び循環型反応器を適宜組み合わせて使用することができる。
重合溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン等のアルキルベンゼン類、アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン類、並びにヘキサン及びシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等が使用できる。本実施形態のスチレン系樹脂を得るために重合原料を重合させる際には、重合原料中に、典型的には重合開始剤を含有させることが好ましい。
重合開始剤としては、有機過酸化物、例えば、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート等のペルオキシケタール類、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t-ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、t-ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類等を挙げることができる。分解速度と重合速度との観点から、中でも、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサンが好ましい。
重合開始剤は、スチレン系単量体(a1)に対して0.005~0.1質量%使用することが好ましい。
本実施形態において、(A)スチレン系樹脂を連続重合により製造する場合、重合工程終了後に未反応モノマーと重合溶媒とを除去するために、脱揮工程が設けられるが、一般的には予熱器付きの真空脱揮槽や脱揮押出機等が用いられる。例えば、予熱器付きの真空脱揮槽を1段のみ使用したもの、予熱器付きの真空脱揮槽を直列に2段接続したもの、又は予熱器付きの真空脱揮槽と脱揮押出機を直列に接続したものが挙げられるが、揮発分を極力低減するためには、予熱器付きの真空脱揮槽を直列に2段接続したもの又は予熱器付きの真空脱揮槽と脱揮押出機を直列に接続したものが好ましい。予熱器付きの真空脱揮槽を直列に2段接続する場合、1段目の真空脱揮槽での樹脂温度は180~250℃に調整し、1段目出口の未反応モノマーと重合溶剤の合計量が3~7質量%となるよう圧力を調整し(おおよそ5~10kPa)、2段目の真空脱揮槽では樹脂温度を200~250℃、圧力2kPa未満で脱揮することが好ましい。また、1段目の真空脱揮槽で揮発分を低減した後、ポリマー流量に対して0.2~1.0質量%の水を添加し、ミキサーにて混合した後、2段目真空脱揮槽にて圧力2kPa未満で脱揮する方法も適用できる。
-ゴム変性スチレン系樹脂-
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂は、マトリックス樹脂(スチレン系樹脂(a2))中にゴム状重合体の粒子が分散されたものであり、ゴム状重合体の存在下でスチレン系単量体(a1)を重合させることにより製造することができる。
上記ゴム変性スチレン系樹脂を構成するマトリックス樹脂であるスチレン系樹脂(a2)に使用されるスチレン系単量体(a1)としては、上述の通りである。
なお、必要に応じてスチレン系単量体(a1)に共重合可能なその他の単量体を本発明の目的を損なわない範囲で用いてもよい。ここで用いることが可能なその他の共重合可能な単量体としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン系ビニル単量体、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル単量体、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の無水物基含有単量体、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のジカルボン酸イミド含有単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有単量体等が挙げられる。上記スチレン系単量体(a1)に共重合可能なその他の単量体の量は、マトリックスを構成する単量体としては好ましくは25質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
上記ゴム状重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリクロロプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体等を使用できるが、工業的観点から、ポリブタジエン及びスチレン-ブタジエン共重合体が好ましい。ポリブタジエンには、シス含有率の高いハイシスポリブタジエン及びシス含有率の低いローシスポリブタジエンの双方を用いることができる。また、スチレン-ブタジエン共重合体の構造としては、ランダム構造及びブロック構造の双方を用いることができる。これらのゴム状重合体は1種又は2種以上使用することができる。また、ブタジエン系ゴムを水素添加した飽和ゴムを使用することもできる。
ゴム変性スチレン系樹脂に含まれるゴム状重合体は、内側にスチレン系樹脂を内包し、かつ、外側にスチレン系樹脂がグラフトされたものであってよい。
このようなゴム変性スチレン系樹脂の例としては、HIPS(高衝撃ポリスチレン)、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル-エチレンプロピレンゴム-スチレン共重合体)等が挙げられる。本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂に含まれるゴム状重合体は、内側にスチレン系樹脂を内包(サラミ構造、及びコアシェル構造を含む。)し、かつ、外側にスチレン系樹脂がグラフトされたものであってよい。
本実施形態におけるゴム変性スチレン系樹脂中に含まれるゴム成分の含有量は、特に限定されないが、ゴム変性スチレン系樹脂100質量%に対して、2~15質量%が好ましく、更に好ましくは2.5~12質量%である。ゴム成分の含有量が2質量%より少ないと耐衝撃性が低下し、成形体が割れ易くなる。また、ゴム状重合体の含有量が15質量%を超えると樹脂組成物の流動性が低下する傾向がある。
上記ゴム変性スチレン系樹脂中に含まれるゴム状重合体分散粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、0.5~5.0μmであることが好ましく、更に好ましくは1.0~4.0μmである。ゴム状重合体分散粒子の平均粒子径が0.5μmより小さいと樹脂組成物の耐衝撃性が得られにくい傾向があり、5.0μmより大きい場合も樹脂組成物の耐衝撃性が低下する傾向にある。
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂の製造方法の例を示す。
典型的な態様において、ゴム変性スチレン系樹脂は、スチレン系単量体(a1)を、ゴム状重合体の存在下で重合させて、スチレン系重合体中にゴム状重合体が分散している海島構造を形成することを含む方法によって製造できる。ゴム変性スチレン系樹脂の重合方法に関しては特に制約はなく、スチレン系単量体(a1)にゴムを溶かした溶液を用いて、通常の塊状重合、溶液重合、懸濁重合等を行うことができる。また、メルトマスフローレイト調整のために、溶媒や連鎖移動剤を適宜選択して使用することが好ましい。溶媒としてはトルエン、エチルベンゼン、キシレン等を使用できる。溶媒の使用量は特に限定されるものではないが、重合原料液の全量100質量%に対して、0~50質量%の範囲が好ましい。連鎖移動剤としては、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、α-メチルスチレンダイマー等が用いられ、α-メチルスチレンダイマーが好ましい。連鎖移動剤の使用量は、重合原料液の全量100質量%に対して好ましくは0.01~2質量%、より好ましくは0.03~1質量%、さらに好ましくは0.05~0.2質量%の範囲である。重合反応温度は好ましくは80~200℃、さらに好ましくは90~180℃の範囲である。反応温度が80℃以上であれば生産性が良好で、工業的に適当であり、一方200℃以下であれば、低分子量重合体が多量に生成することを回避でき好ましい。スチレン系重合体の目標分子量が重合温度のみで調整できない場合は、開始剤量、溶媒量、連鎖移動剤量等で制御すればよい。反応時間は一般に0.5~20時間、好ましくは2~10時間である。反応時間が0.5時間以上であれば反応が良好に進行し、一方、20時間以下であれば、生産性が良好で工業的に適当である。
上記の製造方法において、ゴム変性スチレン系樹脂中のゴム状重合体の分散粒子の粒子径については、反応器内の撹拌機の回転数により制御が可能であり、トルエン不溶分の量については開始剤量による制御が可能であり、トルエン不溶分のトルエンに対する膨潤指数は回収系の押出機の温度により制御が可能である。
上記ゴム変性スチレン系樹脂のゴム状重合体の量は、目標とする含有量になるように原材料中のゴム状重合体の含有量や重合率を調整することによって制御することができる。本実施形態において、ゴム変性スチレン系樹脂は、前記製造法により製造できるが、別の方法として、前記の製造方法により得られたゴム変性スチレン系樹脂に、ゴム状重合体を含有しないポリスチレン樹脂等のスチレン系樹脂を混合し希釈することによっても製造することができる。
重合開始剤として用いられる有機過酸化物としては、パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシエステル類、ケトンパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類などが挙げられる。
本実施形態において、(A)スチレン系樹脂は、ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体又はスチレン-(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体であることが好ましい。
<(B)澱粉系ポリマー:(B)成分>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、(A)スチレン系樹脂と、(B)澱粉系ポリマーとの合計を100質量部としたときに、(B)澱粉系ポリマーの含有量は5~95質量部であり、好ましくは10~90質量部、より好ましくは15~80質量部、更に好ましくは15~60質量部である。(B)澱粉系ポリマーの含有量が5質量部より少ないと環境負荷を低減する効果が十分に得られず、95質量部より多いと熱安定性を向上させる効果が十分に得られない。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、(B)澱粉系ポリマーを必須に含有する。スチレン系樹脂組成物中の澱粉系ポリマーとしては、従来からの公知の澱粉を使用することができる。当該澱粉は、例えば、未加工澱粉及び加工澱粉のいずれであっても良い。未加工澱粉としては、例えば馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉等の地下澱粉及び小麦澱粉、コーンスターチ、サゴ澱粉、米澱粉等の地上澱粉、ワキシースターチ、ハイアミローススターチ等の特殊澱粉を挙げることが出来る。加工澱粉としては、白色デキストリン、黄色デキストリン、ブリテイシュガムなどの焙焼デキストリン、酸化澱粉、低粘度変性澱粉等の分解産物とアルファー澱粉を挙げることが出来る。さらに、澱粉誘導体としては酢酸エステル、若しくはリン酸エステル等の澱粉エステル;あるいは、カルボキシエチルエーテル、ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシプロピルエーテル、若しくは陽性澱粉等の澱粉エーテル;を挙げることができる。
本実施形態において使用する澱粉系ポリマーには2つの形、すなわち、α-アミロース及びアミロペクチンがある。アミロースとアミロペクチンのモル比は、約0.1:1から約10:1の範囲であることが好ましく、約0.5:1から約5:1の範囲であることがより好ましく、又は約1:2から約2:1の範囲にあることがさらに好ましい。本実施形態において、澱粉系ポリマーの重量に対して、少なくとも50%、65%、70%、75%、80%、又は85%のアミロースに由来する繰返し単位を含むものであることが好ましい。
本実施形態において、アミロースの含有量は、アミロース-ヨウ素反応物を形成させアミロースの要素結合能を電位差測定または電流測定または比色測定すること等により測定することができる
本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、必要に応じて澱粉用可塑剤をさらに含有してもよい。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、(A)スチレン系樹脂と、(B)澱粉系ポリマーとの合計を100質量部としたときに、澱粉用可塑剤の含有量は0.1~20質量部であり、好ましくは0.5~18質量部、より好ましくは1~15質量部、更に好ましくは1.5~10質量部である。澱粉用可塑剤の含有量が0.1質量部より少ないと十分に可塑化されず成形時に高い熱を要するためスチレン二量体とスチレン三量体とが分解してスチレン単量体が生成しうるため臭気を低減する効果が十分に得られず、20質量部より多いと樹脂組成物全体の熱安定性が低くなる。
上記澱粉用可塑剤としては、水及び公知の可塑剤から適宜選択することができる。当該公知の可塑剤としては、例えば、生分解性を有する高沸点可塑剤を挙げることができる。そのような可塑剤の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコ-ル、ポリプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、イソデシルアルコール、n-デシルアルコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、ポリグリセリン、ジプロピレングリコール、n-オクチルアルコール等を挙げることができる。また、公知の可塑剤として、非生分解性を有する高沸点可塑剤を挙げることができる。そのような可塑剤の例としては、例えばフタル酸エステル、リン酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、グリコール誘導体、ポリエステル系可塑剤、エポキシ化合物系可塑剤等を挙げることができる。
本実施形態において、澱粉系ポリマーを製造するのに使用される澱粉(複数可)の分子量は、一般的には非常に大きく、500ダルトンを超える場合がある(例えば500ダルトンを超え、少なくとも1000ダルトン、少なくとも10,000ダルトン、少なくとも25,000ダルトン、少なくとも40,000ダルトンなど)。換言すると、澱粉系ポリマーを形成するのに使用される澱粉材料(例えば、天然澱粉)は、“環境負荷が低減される”持続可能ポリマー材料を製造するのに使用されるモノマー又は他の重合性成分よりも複雑な分子である。例えば、コーンスターチ(トウモロコシ由来の澱粉)は、約693ダルトンの分子量を有し得る。馬鈴薯澱粉は、例えば約20,000ダルトン~約400,000,000ダルトンの範囲で広く変動し得る分子量を有し得る(例えば、アミロースは約20,000ダルトン~約2,000,000ダルトンの範囲であり得るが、一方、アミロペクチンは、約65,000ダルトン~約400,000,000ダルトンの範囲であり得る)。タピオカ澱粉は、約40,000ダルトン~約340,000ダルトンの範囲の分子量を有し得る。
本実施形態における澱粉系ポリマーの重量平均分子量の測定は、GPC-LALLS法等により求めることができる。澱粉系末端の数平均分子量は、浸透圧の測定や、分子の還元性末端基の化学的定量法等により求めることができる。
本実施形態において、スチレン系樹脂組成物中の澱粉系ポリマーの含有量は、たとえば以下の通り測定している。
スチレン系樹脂組成物を1g(精秤しWa(g)とする)とり、テトラヒドロフラン30gに溶解・分散させ遠心分離により不溶分(A)を分離する。そして、不溶分(A)を130℃にて2時間真空乾燥を行い、恒量としたのち、凍結粉砕を行う。粉砕物に対して100mLの水を加え、撹拌しながら80℃で3時間加熱する。濾別により、ここでの不要分(B)を取り除き、ロータリーエバポレーター等を用いてろ液から水分を除去し、その後130℃において2時間で真空乾燥を行い、恒量としたのち、残渣の重量(Wb)を測定する。この際、(Wb/Wa)×100を、スチレン系樹脂組成物中に含まれる澱粉系ポリマーの量とする。
<(C)スチレン二量体及びスチレン三量体:(C)成分>
本実施形態において、スチレン系単量体の二量体であるスチレン二量体及びスチレン系単量体の三量体であるスチレン三量体は、(A)スチレン系樹脂の不純物として含まれるものであり、主に(A)スチレン系樹脂を重合する際に生じるスチレン系単量体の二量体(ダイマーとも称する。)及び三量体(トリマーとも称する。)をいう。これら二量体及び三量体の合計含有量が所定量を超える範囲となると、ダイマー又はトリマーの熱分解物が、臭気の原因となりうる。一方、ダイマー及びトリマーの含有量が所定量存在すると、スチレン系樹脂組成物の流動性が向上する。これによりスチレン系樹脂組成物の成型温度を低減できるため、成型時におけるダイマー又はトリマーの熱分解物の量も低減でき臭気の少ないスチレン系樹脂組成物を提供できる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、スチレン二量体及びスチレン三量体の合計含有量は、前記(A)スチレン系樹脂と、前記(B)澱粉系ポリマーとの合計100質量部に対して、0.05~0.7質量部であり、好ましくは0.05~0.6質量部、より好ましくは0.06~0.5質量部であり、さらに好ましくは0.065~0.45質量部であり、よりさらに好ましくは0.07~0.4質量部である。
ダイマー及びトリマーの含有量が0.7質量部超であると、ダイマー及びトリマーの熱分解物(スチレン単量体、トルエン、エチルベンゼンなど)の量が増大し、臭気の原因となる。一方、ダイマー及びトリマーの含有量が0.05質量部未満であると、スチレン系樹脂組成物自体の流動性が低下するため、スチレン系樹脂組成物の成型温度を上げざるを得ず、それに伴い成型時におけるダイマー又はトリマーの熱分解物の量が増大して臭気の原因となる。
また、スチレン二量体及びスチレン三量体の化学構造は、上述の通り、使用する(A)スチレン系樹脂に含まれるスチレン系単量体(a1)の化学構造に依存する。
なお、本実施形態において、スチレン二量体及びスチレン三量体の合計量は、ガスクロマトグラフィーを用いて測定している。具体的には、以下の測定状を使用している。
装置:Agilent 6850series GC system
試料:樹脂組成物1gをMEK10mlに溶解後、3mlのメタノールを加えて重合体を沈降させ、溶液中の成分濃度を測定した。
カラム:Agilent 19091Z-413E
入り口温度:250℃
検出器温度:280℃
なお、(A)スチレン系樹脂中のスチレン二量体及びスチレン三量体の量を所定値にする方法としては、(A)スチレン系樹脂を蒸留精製する手段が挙げられる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物に含まれるスチレン二量体とスチレン三量体との合計含有量(スチレン系樹脂組成物1g当たりの量)は、好ましくは10~7000μg/gであり、より好ましくは10~5000μg/g以下、更に好ましくは10~4500μg/g以下である。7000μg/g以下にすることにより臭気への影響が少なくなる。また、射出成形時の金型や、樹脂組成物の押出時のダイス出口での析出による付着物が少なく、好ましい。10μg/g以下では、臭気への影響は飽和する。また、成形品である食品包装容器から容器内容物等へのスチレン二量体と三量体の移行の点でも、スチレン二量体と三量体はより少ない方が望ましい。
本実施形態において、スチレン二量体と三量体を例示すると、二量体としては、1,3-ジフェニルプロパン、2,4-ジフェニル-1-ブテン、1,2-ジフェニルシクロブタン、1-フェニルテトラリンが挙げられ、三量体としては、2,4,6-トリフェニル-1-ヘキセン、1-フェニル-4-(1’-フェニルエチル)テトラリン等が挙げられる。
<スチレン系樹脂組成物に含まれるスチレン単量体の含有量>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物に含まれるスチレン単量体の含有量(スチレン系樹脂組成物1g中に残留する残留スチレン単量体)は、好ましくは200μg/g以下であり、より好ましくは140μg/g以下である。200μg/g以下にすることにより臭気の点で大幅に改善される。また、成形品である食品包装容器から容器内容物等へのスチレン単量体の移行の点でも、スチレン単量体はより少ない方が好ましい。
<流動パラフィン>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、流動パラフィンを必要により含有してもよい。本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、(A)スチレン系樹脂と、(B)澱粉系ポリマーとの合計を100質量部としたときに、流動パラフィンの含有量は0.1~3質量部であり、好ましくは0.3~2.4質量部、より好ましくは0.4~1.9質量部、更に好ましくは0.5~1.7質量部である。流動パラフィンの添加量が0.1質量部未満であると、十分な耐衝撃強度が発揮されにくくなり、3質量部よりも大きいと耐熱性が低下したり、金型が汚れやすくなったりする。
本発明における流動パラフィンは、石油の潤滑油留分に含まれる芳香族炭化水素や硫黄化合物等の不純物を無水硫酸や発煙硫酸で取り除き、精製された飽和炭化水素である。
上記流動パラフィンは、例えば、食品衛生法、食品、添加物等の規格基準で定められた流動パラフィンから選択することができる。この種の流動パラフィンの具体例としては、以下に限定されないが、エクソンモービル社から市販されているクリストールN52、クリストールN62、クリストールN72、クリストールN82、クリストールN122、クリストールN172、クリストールN262、クリストールN352、プライモールN542等が挙げられる。また、(株)松村石油研究所から市販されているモレスコホワイトP-40、モレスコホワイトP-55、モレスコホワイトP-60、モレスコホワイトP-70、モレスコホワイトP-80、モレスコホワイトP-85、モレスコホワイトP-100、モレスコホワイトP-120、モレスコホワイトP-150、モレスコホワイトP-200、モレスコホワイトP-230、モレスコホワイトP-260、モレスコホワイトP-300、モレスコホワイトP-350、モレスコホワイトP-350P等が挙げられる。更に、三光化学工業(株)から市販されている流動パラフィン40-S、60-S、70-S、80-S、90-S、100-S、120-S、150-S、260-S、350-S等が挙げられる。更にまた、CK Witco Corporationから市販されているホワイトミネラルオイルが挙げられる。
上記流動パラフィンの分子量は通常、動粘度で規定される。本実施形態における流動パラフィンとしては、例えば、試験方法JIS K2283で規定される40℃の動粘度が0.1~78mm/秒の範囲のものを用いることができ、1~40mm/秒のものが好ましい。また、流動パラフィンの好ましい重量平均分子量は、150~500の範囲であり、より好ましくは180~450の範囲であり、更に好ましくは200~350の範囲である。重量平均分子量は、例えばガスクロマトグラフィーを用い、流動パラフィンの各分子量成分の重量平均値をとることで求められる。この粘度範囲あるいはこの分子量範囲の流動パラフィンを用いる場合、より高粘度あるいはより高分子量の流動パラフィンに比較して、得られるスチレン系樹脂組成物を大きく可塑化し、スチレン系樹脂と(B)澱粉系ポリマーの混練性を向上させスチレン系樹脂組成物の耐衝撃性を向上させる傾向にある。なお、粘度0.1mm/秒以上あるいは重量平均分子量150以上の流動パラフィンを用いることは、得られるスチレン系樹脂組成物の成形加工時に、金型汚染や成形品表面へのブリードを効果的に抑制する傾向があるため、好ましい。
本実施形態の流動パラフィンの添加方法は、特に制限はないが、スチレン系樹脂の製造時に重合反応器や脱揮工程に添加する方法、或いは重合して得られたスチレン系樹脂に添加して混合する方法等が挙げられる。
<酸化防止剤>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、必要により、酸化防止剤1種又は2種以上を含有してもよい。本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、(A)スチレン系樹脂と、(B)澱粉系ポリマーとの合計を100質量部としたときに、酸化防止剤の含有量は0.01~0.4質量部であり、好ましくは0.03~0.35質量部、より好ましくは0.06~0.28質量部、更に好ましくは0.1~0.21質量部である。酸化防止剤の添加量が0.01質量部未満であると、押出加工時、二次成形加工時の熱分解によるスチレン単量体(残留スチレン単量体)と、スチレン二量体及びスチレン三量体との生成抑制効果が不十分となり、スチレン系樹脂組成物から臭気の抑えられたシート又は成形品等を得ることができない。一方、0.40質量部を越える場合、含有量に見合うスチレン単量体(残留スチレン単量体)と、スチレン二量体及びスチレン三量体との生成の抑制効果が得られない。
本実施形態における酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、フェノール/チオエーテル系酸化防止剤、又はヒンダードフェノール系酸化防止剤等である。
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2-t-ブチル-6-(3’-t-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,4-ジ-t-アミル-6-(3’,5’-ジ-t-アミル-2’-ヒドロキシ-α-メチルベンジル)フェニルアクリレート、2-t-ブチル-6-(3’-t-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-メチル-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,5-ジ-t-ブチル-6-(3’-5’-ジ-t-ブチル-2’-ヒドロキシメチルベンジル)-フェニルアクリレート等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。飛散性の観点からは、2,4-ジ-t-アミル-6-(3’,5’-ジ-t-アミル-2’-ヒドロキシ-α-メチルベンジル)フェニルアクリレートが特に好ましい。
本実施形態において、フェノール系酸化防止剤の含有量は、(A)スチレン系樹脂と、(B)澱粉系ポリマーとの合計を100質量部としたときに、0.01~0.40質量部であり、好ましくは0.05~0.37質量部、より好ましくは0.08~0.34質量部、更により好ましくは0.10~0.30質量部である。含有量が0.01質量部未満の場合、押出加工時、二次成形加工時の熱分解によるスチレン単量体(残留スチレン単量体)と、スチレン二量体及びスチレン三量体との生成抑制効果が不十分となり、スチレン系樹脂組成物から臭気の抑えられたシート又は成形品等を得ることができない。一方、0.40質量部を越える場合、含有量に見合うスチレン単量体(残留スチレン単量体)と、スチレン二量体及びスチレン三量体との生成の抑制効果が得られない。
本実施形態におけるフェノール/チオエーテル系酸化防止剤は、例えば、2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール、2,4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェノール等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。汎用性の観点から、2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノールが好ましい。
本実施形態のフェノール/チオエーテル系酸化防止剤は、スチレン系樹脂(A)と、(B)澱粉系ポリマーとの合計を100質量部としたときに、0.01~0.12質量部であり、好ましくは0.02~0.10質量部、より好ましくは0.02~0.08質量部、更により好ましくは0.03~0.05質量部である。添加量が0.01質量部未満の場合、押出加工、二次成形加工時の熱分解によるスチレン単量体(残留スチレン単量体)と、スチレン二量体及びスチレン三量体との生成抑制効果が不十分となり、スチレン系樹脂組成物から臭気の抑えられたシート又は成形品等を得ることができない。一方、0.12質量部を越える場合、スチレン単量体(残留スチレン単量体)と、スチレン二量体及びスチレン三量体との生成の抑制効果が得られるが、イオウ臭により臭気に劣る。
本実施形態におけるヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ぺンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-t-ブチル-4ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート等を挙げることができる。これらの中でも、好ましくはオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートである。
本実施形態のヒンダードフェノール系酸化防止剤は、(A)スチレン系樹脂と、(B)澱粉系ポリマーとの合計を100質量部としたときに、0.01~0.12質量部であり、好ましくは0.02~0.10質量部、より好ましくは0.02~0.08質量部、更により好ましくは0.03~0.05質量部である。添加量が0.01質量部未満の場合、押出加工、二次成形加工時の熱分解によるスチレン単量体(残留スチレン単量体)と、スチレン二量体及びスチレン三量体との生成抑制効果が不十分となり、スチレン系樹脂組成物から臭気の抑えられたシート又は成形品等を得ることができない。一方、0.12質量部を越える場合、スチレン単量体(残留スチレン単量体)と、スチレン二量体及びスチレン三量体との生成の抑制効果は飽和する。
なおフェノール系熱劣化防止剤とフェノール/チオエーテル系酸化防止剤とヒンダードフェノール酸化防止剤の含有量の合計は、(A)スチレン系樹脂と、(B)澱粉系ポリマーとの合計を100質量部としたときに、0.5質量部以下が好ましい。0.5質量部を超える場合は、含有量に見合うスチレン単量体(残留スチレン単量体)と、スチレン二量体及びスチレン三量体との生成抑制効果とスチレン系樹脂の分子量低減の抑制効果が得られず、またスチレン系樹脂組成物の耐熱性が低下する傾向にある。
本実施形態のフェノール系酸化防止剤及びフェノール/チオエーテル系酸化防止剤及びヒンダードフェノール系酸化防止剤の添加方法は、特に制限はないが、スチレン系樹脂の製造時に重合反応器や脱揮工程に添加する方法、或いは重合して得られた(A)スチレン系樹脂に添加して混合する方法等が挙げられる。
<添加剤等>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物には、所望に応じて、通常用いられている添加剤、例えば、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、可塑剤、染料、顔料、各種充填剤等を添加することができる。また、他の樹脂、例えば、一般のポリスチレン、メカニカルリサイクルされたポリスチレン、スチレン-ブタジエン共重合エラストマー、部分的に又は完全に水素添加されたスチレン-ブタジエン共重合エラストマー、ポリフェニレンエーテル、ポリ乳酸やポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル等を配合することもできる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物における添加剤の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、他の樹脂の含有量は、30質量%以下であることが好ましい。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物の全体の質量が5%減少する温度である、5%質量減少温度が、250℃以上360℃以下であることが好ましい。
上記5%質量減少温度が、250℃以上360℃以下であると、より優れた耐熱性を有するスチレン系樹脂組成物を提供できる。なお、熱分解又はスチレン系樹脂組成物中に含有されている低沸点成分(水分や流動パラフィン、可塑剤等)の蒸発により質量が減少している。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、各成分を任意の方法で溶融混練することによって製造することができる。例えば、ヘンシェルミキサーに代表される高速撹拌機、バンバリーミキサーに代表されるバッチ式混練機、単軸又は二軸の連続混練機、ロールミキサー等を単独で、又は組み合わせて用いる方法が挙げられる。混練の際の加熱温度は、通常、180~250℃の範囲で選択される。
本発明の成形品は、上記のスチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする。本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、上記の溶融混練成形機により、あるいは、得られたスチレン系樹脂組成物のペレットを原料として、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法、及び発泡成形法等により、成形品を製造することができる。
本発明は、上述した本実施形態のスチレン系樹脂組成物を用いて形成されてなる成形体又はシートを提供する。当該シートは非発泡及び発泡のいずれでもよい。前記シートの製造方法としては、通常知られている方法を用いることができる。非発泡シートの製造方法としては、Tダイを取り付けた単軸又は二軸押出成形機で、一軸延伸機又は二軸延伸機でシートを引き取る装置を用いる方法等を用いることができ、発泡シートの製造方法としては、Tダイ又はサーキュラーダイを備え付けた押出発泡成形機を用いる方法等を用いることができる。
本実施形態において、発泡シートを形成する場合、押出発泡時の発泡剤及び発泡核剤としては通常用いられる物質を使用できる。発泡剤としてはブタン、ペンタン、フロン、二酸化炭素、水等を使用することができ、ブタンが好適である。また発泡核剤としてはタルク等を使用できる。
本実施形態において、発泡シートは、厚み0.5mm~5.0mmであることが好ましく、見かけ密度50g/L~300g/Lであることが好ましく、また坪量80g/m~300g/mであることが好ましい。本発明の発泡押出シートは、例えばフィルムを更にラミネートすること等によって多層化してもよい。使用するフィルムの種類は、一般のポリスチレンに使用されるもので差し支えない。
本実施形態において、非発泡シートの厚みは、例えば、0.1~1.0mm程度であることが剛性及び熱成形サイクルの観点から好ましい。また、一軸シートは、通常の低倍率のロール延伸のみで形成してもよく、二軸延伸シートは、ロールで流れ方向(MD)に1.3倍から7倍程度延伸した後、テンターで垂直方向(TD)に1.3倍から7倍程度延伸することが強度の面で好ましい。また、非発泡シートは、スチレン系樹脂組成物以外のポリスチレン樹脂等のスチレン系樹脂と多層化して用いてもよい。更にスチレン系樹脂以外の樹脂と多層化して用いてもよい。当該スチレン系樹脂以外の樹脂としては、PET樹脂、ナイロン樹脂等が挙げられる。
本発明の別の態様は、上述した本発明のシートを用いて形成されてなる成形品を提供する。発泡シート又はこれを含む多層体は、例えば真空成形により成形してトレイ等の容器を作製できる。また非発泡シートは、例えば真空成形により成形して弁当の蓋材又は惣菜等を入れる容器を作製できる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記例に限定されることは無く、適宜変更を加えることができる。
以下、本発明を実施例及び比較例に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されると解されるべきでない。
[(A)スチレン系樹脂]
本実施例と比較例において、(A)スチレン系樹脂は以下のPS-1~PS-5を用いた。
<PS-1:スチレン単独重合体>
スチレン88.0質量部、エチルベンゼン14.975質量部及び1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.025質量部を混合してなる重合原料組成液を、0.8リットル/時の速度で、容量が4リットルの完全混合型反応器に、更には未反応モノマー、重合溶媒など揮発分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置に連続的に順次供給し、7日間の連続重合を行った。重合工程における重合反応条件は、完全混合反応器は重合温度134℃、脱揮された未反応ガスは-5℃の冷媒を通した凝縮器で凝縮し、未反応液として回収した。7日間の連続重合した後、樹脂組成物をペレットとして採取し、評価した。残留スチレンは214ppm、スチレン二量体とスチレン三量体の合計量は7220ppmであった。
<PS-2:ゴム変性スチレン系樹脂>
スチレン87.553質量部、ポリブタジエンゴム(旭化成株式会社製ジエン55AE)4.7質量部、エチルベンゼン6.0質量部、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.007質量部、流動パラフィン1.6質量部、イルガノックス1076を0.1質量部、及びα-メチルスチレンダイマー0.04質量部を混合溶解した重合液を、攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器-1に、3.2リットル/Hrで連続的に仕込み、温度を124℃/132℃/135℃に調整した。攪拌機の回転数は毎分80回転とした。
そして、前記層流型反応器-1と直列に接続された、攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器-2に反応液を送った。攪拌機の回転数は毎分20回転とし、温度は135℃/140℃/145℃に設定した。
さらに続いて、攪拌機を備え、かつ3ゾーンで温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器-3に反応液を送った。攪拌機の回転数は毎分10回転とし、温度は145℃/146℃/151℃に設定した。
その後、前記層流型反応器-3からの反応液を220℃、1.0~1.5kPaに調整された2段真空ベント付き押出機に供給して、未反応モノマーや溶媒等の揮発成分を取り除き、ストランド状に押し出した樹脂をカッティングしてペレット状のゴム変性ポリスチレンを得た。
得られたゴム変性スチレン系樹脂は、重量平均分子量(Mw)が23万、メルトマスフローレイトが1.5g/10分、ゴム成分の含有量が6.2質量%、ゴム状重合体粒子の平均粒径が2.3μm、流動パラフィンが1.5質量%、イルガノックス1076が0.05質量%、残留スチレンが189ppm、スチレン二量体とスチレン三量体の合計量が6380ppmであった。
<PS-3;スチレン-アクリル酸ブチル共重合体>
スチレン75.0質量部、アクリル酸ブチル16.0質量部、エチルベンゼン9.0質量部及び1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.025質量部を混合してなる重合原料組成液を、1リットル/時の速度で、容量が4リットルの完全混合型反応器に、次いで2リットルの層流型反応器からなる重合装置に、更には未反応モノマー、重合溶媒など揮発分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置に連続的に順次供給し、7日間の連続重合を行った。また、前記完全混合型反応器、前記重合装置及び前記脱揮装置の3つの装置を直列につないでおり、完全混合型反応器で反応させた溶液をラインで層流型反応器からなる重合装置に送り、それから出てきたものを脱揮装置に送るようにしている。重合工程における重合反応条件は、完全混合反応器は重合温度110℃、層流型反応器は温度120~140℃であった。脱揮された未反応ガスは-5℃の冷媒を通した凝縮器で凝縮し、未反応液として回収した。7日間の連続重合した後、樹脂組成物をペレットとして採取し、評価した。樹脂ペレット中、アクリル酸ブチル単量体単位の含有量は18.0質量%、残留スチレンは137ppm、スチレン二量体とスチレン三量体の合計量は4621ppmであった。
<PS-4;スチレン-メタクリル酸共重合体>
スチレン79.0質量部、メタクリル酸6.0質量部、エチルベンゼン15.0質量部、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.02質量部及び日産化学工業社製ファインオキソコール1600(7-メチル-2-(3-メチルブチル)-1-オクタノール)0.32質量部を混合してなる重合原料組成液を、1リットル/時の速度で、容量が4リットルの完全混合型反応器に、次いで2リットルの層流型反応器からなる重合装置に、更には未反応モノマー、重合溶媒など揮発分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置に連続的に順次供給し、7日間の連続重合を行った。重合工程における重合反応条件は、完全混合反応器は重合温度120~125℃、層流型反応器は温度120~140℃。脱揮された未反応ガスは-5℃の冷媒を通した凝縮器で凝縮し、未反応液として回収した。7日間の連続重合した後、樹脂組成物をペレットとして採取し、評価した。樹脂ペレット中、メタクリル酸単量体単位の含有量は8.3質量%、7-メチル-2-(3-メチルブチル)-1-オクタノール含有量は0.1質量%、残留スチレンは185ppm、スチレン二量体とスチレン三量体の合計量は6545ppmであった。
<PS-5:スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体>
スチレン74.0質量部と、メタクリル酸9.0質量部と、メタクリル酸メチル5.0質量部と、エチルベンゼン15.0質量部と、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.02質量部と、日産化学工業社製ファインオキソコール180(5,7,7-トリメチル-2-(1,3,3-トリメチルブチル)-1-オクタノール)0.66質量部とを混合してなる重合原料組成液を、1.2リットル/時の速度で、容量が4リットルの完全混合型反応器に、次いで2リットルの層流型反応器からなる重合装置に、次いで未反応モノマー及び重合溶媒等の揮発分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置に連続的に順次供給し、7日間の連続重合を行った。重合工程における重合反応条件は、完全混合反応器は重合温度122~127℃、層流型反応器は温度125~140℃とした。脱揮された未反応ガスは-5℃の冷媒を通した凝縮器で凝縮し、未反応液として回収した。7日間の連続重合の後、本発明に係るスチレン-メタクリル酸-メタクリル酸メチル樹脂を樹脂ペレットとして採取して評価した。樹脂ペレット中、メタクリル酸単量体単位の含有量は8.2質量%、メタクリル酸メチル単量体単位の含有量は5.8質量%、5,7,7-トリメチル-2-(1,3,3-トリメチルブチル)-1-オクタノール含有量は0.2質量%、残留スチレンは147ppm、スチレン二量体とスチレン三量体の合計量は4974ppmであった。
<PS-6:スチレン単独重合体>
スチレン88.0質量部、エチルベンゼン14.975質量部及び1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.025質量部を混合してなる重合原料組成液を、0.8リットル/時の速度で、容量が4リットルの完全混合型反応器に、更には未反応モノマー、重合溶媒など揮発分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置に連続的に順次供給し、7日間の連続重合を行った。重合工程における重合反応条件は、完全混合反応器は重合温度85℃、脱揮された未反応ガスは-5℃の冷媒を通した凝縮器で凝縮し、未反応液として回収した。7日間の連続重合した後、樹脂組成物をペレットとして採取し、評価した。残留スチレンは150ppm、スチレン二量体とスチレン三量体の合計量は503ppmであった。
[(B)澱粉系ポリマー(Sta-1)の製造]
ハイアミロースコーンスターチ250gをジメチルスルホキシド(DMSO)2000gに懸濁させ、攪拌しながら90℃まで昇温し、20分間その温度に保持して糊化させる。この溶液に重炭酸ナトリウム200gを触媒として添加し、90℃を維持して酢酸ビニル399gを添加し1時間反応させた。その後、反応液を純水中に流し込んで高速攪拌・粉砕を行い、濾過・脱水乾燥して澱粉エステルを調製した。さらに、トリアセチンを20部添加し二軸押し出し機で混錬し可塑化することで、澱粉系ポリマーを製造した。なお、ハイアミロースコーンスターチ中のアミロース含量は50%~70%の範囲内にあることが分かった。これにより得られた澱粉系ポリマーも同様のアミロース含量である。
[(B)澱粉系ポリマー(Sta-2)の製造]
コーンスターチ(水分13%)70質量部、グリセリン30質量部をヘンシェルーミキサー(三井三池化工機製)で1000rpm、10分間混合した後、二軸押し出し機で混錬し可塑化することで澱粉系ポリマー(Sta-2)を製造した。
なお、コーンスターチ中のアミロース含量は20%~30%の範囲内にあることが分かった。これにより得られた澱粉系ポリマーも同様のアミロース含量である。
[流動パラフィン]
流動パラフィンとして、出光興産社製「CP-68N」を使用した。
(当該流動パラフィンの動粘度は、68mm/秒であった。)
[スチレン系樹脂組成物の製造]
実施例のスチレン系樹脂組成物及び比較例の樹脂組成物(以下、単に組成物とも称する。)の製造は、表1に記載の組成物の組成に基づいて、上記で製造した澱粉系ポリマー(種類:Sta-1、Sta-2)とスチレン系樹脂(種類:PS-1~PS-5)と流動パラフィンとを混合した後、20mmφの二軸押出機(ナカタニ機械社製、AS-20-2二軸押出機)を用いて160℃~200℃の樹脂温度で、吐出量2kg/hr、回転数100rpmでストランド状に押出し、冷却後、ペレット化した。
得られたスチレン系樹脂組成物及び樹脂組成物の物性を表1に示す。また、実施例2では、用いた(A)スチレン系樹脂に含有される流動パラフィンを0.75質量%、酸化防止剤(イルガノックス1076)を0.03質量%とした。また、実施例12も同様に、用いたスチレン系樹脂に含有される流動パラフィンと添加された流動パラフィンとを合わせて0.95質量%とし、酸化防止剤(イルガノックス1076)を0.02質量%とした。また、本発明及び比較例の組成物の評価方法は以下のとおりである。
[シャルピー衝撃試験]
上記の実施例・比較例で得られた組成物から220℃でJIS K 7152に準拠して射出成形片を作製し、JIS K 7111に準拠して、当該成形片(試験片)のシャルピー衝撃強さ(kJ/m)を測定した。試験条件は1eAとした。
[吸水性試験]
表1に記載の組成で製造した組成物のペレットを利用し、プラスチック円板(径50mm×肉厚3mm)に射出成形し、23℃の水道水に24時間浸漬した後の吸水量を測定して求めた。
[熱安定性]5%質量減少温度
熱重量天秤試験(TGA法)を用いて測定し、熱安定性の指標とした。熱量測定装置TGA-50(島津製作所製)を用い、窒素20ml/分の気流下、20℃/分にて昇温し、実施例のスチレン系樹脂組成物及び比較例の樹脂組成物それぞれの質量が5%減少する温度(=スチレン系樹脂組成物の5%質量減少温度及び樹脂組成物の5%質量減少温度)を測定した。5%質量減少が起こる温度が高いほど耐熱性に優れていることを表す。
[組成物中のアルコールの測定]
試料調製 :組成物0.5gをメチルエチルケトン20mlに溶解
測定条件
検出方法 :FID
測定機器 :島津製製作所 GC2010
カラム :DB-WAX
30m、0.25mmφ、df=0.5μm
カラム温度 :100℃→5℃/分→130℃ →10℃/分→180℃(12分)
→20℃/分→220℃-20分
[組成物中のメタクリル酸、メタクリル酸メチル及びアクリル酸ブチルの測定]
プロトン核磁気共鳴(H-NMR)測定機で測定したスペクトルの積分比から、樹脂組成を定量した。
試料調製 :スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸メチル樹脂の場合、樹脂ペレット30mgをd-DMSO0.75mlに60℃、4~6時間加熱溶解させた。スチレン-アクリル酸ブチル樹脂の場合、樹脂ペレット30mgをCDCl 0.75mlに40℃、4~6時間加熱溶解させた。
測定機器 :日本電子 JNM ECA-500
測定条件 :測定温度 25℃、観測核 1H、積算回数 64回 繰り返し時間 11秒
ジメチルスルホキシド重溶媒中で測定されたスペクトルの帰属は、0.5~1.5ppmのピークは、スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸メチル樹脂中のメタクリル酸単位、メタクリル酸メチル単位及び六員環酸無水物のα-メチル基の水素、1.6~2.1ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素、3.5ppmのピークはメタクリル酸メチル単位のカルボン酸エステル(-C(=O)OCH)の水素、12.4ppmのピークはメタクリル酸単位のカルボン酸の水素である。6.5~7.5ppmのピークはスチレン単位の芳香族環の水素である。なお、本発明で得られるスチレン-メタクリル酸-メタクリル酸メチル樹脂中の六員環酸無水物の含有量は、通常本測定の方法での定量限界未満である。
クロロホルム重溶媒中で測定されたスペクトルの帰属は、0.5~1.0ppmのピークは、スチレン-アクリル酸ブチル樹脂中のアクリル酸ブチル単位の側鎖のブチル基中CHの水素、1.0~2.5ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素とメチン基の水素とアクリル酸ブチル単位の側鎖のブチル基中(CHの水素、3.2~4.0ppmのピークはメタクリル酸メチル単位のカルボン酸エステル(-C(=O)OCH-)の水素である。6.5~7.5ppmのピークはスチレン単位の芳香族環の水素である。
[スチレン単量体の含有量(残留スチレン単量体)、スチレンの二量体及び三量体、並びに酸化防止剤の含有量の測定]
スチレン系樹脂、スチレン系樹脂組成物における、スチレン単量体の含有量(残留スチレン単量体)、スチレン二量体及びスチレン三量体、並びに酸化防止剤の含有量(質量%)を、下記の条件や手順で、測定した。
・試料調製:スチレン系樹脂、スチレン系樹脂組成物、シート、又は成形品2.0gをメチルエチルケトン20mLに溶解後、更に標準物質入りのメタノール5mLを加え溶解した。スチレン系樹脂組成物を析出・静置後、上澄み液を採取し、測定液とした。
・測定条件
機器:Agilent社製ガスクロマトグラフィー GC6850
カラム:HP-1 30m、膜厚0.25μm、0.32mmφ
カラム温度:40℃で1分保持→20℃/分で320℃まで昇温→320℃で10分保持
注入口温度:250℃
検出器温度:280℃
キャリアガス:窒素
[流動パラフィン含有量の測定]
流動パラフィンの含有量(質量%)は、以下の条件や手順で測定した。
(試料調製)
ゴム変性スチレン系樹脂組成物2gを精秤し、メチルエチルケトン40mLを加えて23℃で40分間振とうし、メタノール200mL中に滴下し、60℃で10分間加温した後、23℃に冷却し、穴径0.45μmのメンブランフィルターで濾過した。濾別した濾液を減圧蒸留濃縮し、80℃で30分間乾燥した後、23℃に冷却し、ノルマルヘキサンに溶解させ、10mLの試料を得た。
(測定条件)
機器: 島津製作所製高速液体クロマトグラフィー LC-10A
カラム:平均粒子径5μmの全多孔性シリカゲル、内径4.6mm、長さ250mm
溶媒:ノルマルヘキサン
温度:23℃
溶媒流量:2g/min
注入量:200μm
[臭気の有無]
実施例・比較例のスチレン系樹脂組成物及び当該スチレン系樹脂組成物を200℃~220℃でJIS K 7152に準拠して射出成形片を作製し、射出成形直後の成形品の切片を直径50mm、高さ100mmのガラスの円筒容器にそれぞれ30g入れ、金属キャップで密閉、50℃で3時間、恒温槽で加熱後、キャップを外し、以下の基準でそれぞれの臭気の有無を判定した。
◎:スチレン臭が感じられない。
○:スチレン臭がほとんど感じられない。
△:スチレン臭がやや感じられる。
上記実施例・比較例で得られた組成物の組成比及び実験結果を表1及び表2に示す。
Figure 2022076298000001
Figure 2022076298000002
[実施例1~13]
実施例1~実施例13のスチレン系樹脂組成物は、澱粉系ポリマーにスチレン系樹脂(PS1-5)を所定量配合し、溶融混合して得られたスチレン系組成物であり、シャルピー衝撃強度が2.0kJ/m以上で高く耐衝撃性に優れる。更に吸水率も0.2%以下で低い。さらに、熱安定性が260℃以上であり、耐熱性にも優れる。特に、実施例11及び12の可塑剤の流動パラフィンを1質量部添加した組成では、シャルピー衝撃強度が可塑剤を添加していない実施例1及び実施例7と比べて高くなり、耐衝撃性がさらに向上していた。また、スチレン二量体及び三量体の合計含有量(スチレンオリゴマー量)が7000μg/g以下であったため、臭気に優れていた。また、上記の臭気の有無の評価において、実施例1~実施例13のスチレン系樹脂組成物を用いて射出成形した際に、いずれもスチレン臭が感じられなかった。
[比較例1~7]
比較例1~比較例7の樹脂組成物は、表2に示す組成比により澱粉系ポリマーにスチレン系樹脂を所定量配合し、溶融混合して得られた組成物である。
比較例1の澱粉系ポリマーのみからなる樹脂は、シャルピー衝撃強度が低く、さらに吸水性も10%以上で高く、さらには熱安定性が低かった。スチレン単量体(残留スチレン単量体)と、スチレン二量体及び三量体とを含まないため、臭気に優れていた。
比較例2の樹脂は吸水性が低く、熱安定性は高いものの、シャルピー衝撃強度が1.2kJ/mと低く耐衝撃性が低い。また、スチレン単量体(残留スチレン単量体)と、スチレン二量体及び三量体とを一定量以上含むため、わずかに臭気を有していた。
比較例3の樹脂は吸水性が低く、熱安定性は高いものの、シャルピー衝撃強度が1.5kJ/mと低く耐衝撃性が低く、スチレン単量体(残留スチレン単量体)と、スチレン二量体及び三量体とを一定量以上含むため、わずかに臭気を有していた。これより、耐衝撃性を付与するためには一定量以上の澱粉系ポリマーをスチレン系樹脂に配合する必要があることが分かる。
比較例4の樹脂はシャルピー衝撃強度が低く、さらに吸水性も10%以上で高く、さらには熱安定性が低く、スチレン単量体(残留スチレン単量体)と、スチレン二量体及び三量体とを含まないため、臭気に優れていた。これより、耐衝撃性が高く、吸水性が低く、熱安定性が高い樹脂組成物とするためには一定量以上のスチレン系ポリマーを含有する必要があることが分かる。
比較例1と比較例5に示すように、澱粉系ポリマーに可塑剤を添加した場合には耐衝撃性の向上が認められない。また、比較例2と比較例6に示すように、スチレン系樹脂に流動パラフィンを添加した場合には耐衝撃性の向上は認められない。つまり、流動パラフィンは、スチレン樹脂と澱粉系ポリマーとの混合樹脂に対して、耐衝撃性を向上させる効果を示す。また、流動パラフィンの添加は、樹脂組成物の臭気に関して影響を与えないことが分かる。
比較例7の組成物を用いて作製した成形品の成型直後の臭気と実施例10の成形品の成型直後の臭気とを比較すると、実施例10では、組成物自体の臭気と成形時の臭気がどちらともなく臭気にすぐれていた。しかし、比較例7の組成物自体には臭気がなかったが、成型直後の成形品には、スチレン臭が確認された。その理由としては、比較例7の組成物の流動性が他の比較例及び実施例より低いため、射出成形温度を20℃高くしたことが原因だと考えられる。すなわち、比較例7の組成物にはいわゆる可塑剤として役割を担う(C)スチレン二量体とスチレン三量体の含有量が少なく流動性が低下する。そのため、当該流動性を確保するために成形時の加熱温度を高くしたことにより、スチレン系樹脂(A)が熱分解し、スチレン単量体を生成したため、臭気に劣っていたと考えられる。
本発明のスチレン系樹脂組成物は、低環境負荷であり、低吸水性であり、耐衝撃性に優れ、優れた熱安定性を有するため、食品トレイや包装ラップ等の容器包装分野に加えてOA機器や家電部品等の家電分野での利用が有利になる。

Claims (6)

  1. (A)スチレン系樹脂、(B)澱粉系ポリマー及び(C)スチレン二量体とスチレン三量体を含有するスチレン系樹脂組成物であって、
    前記(A)スチレン系樹脂と、前記(B)澱粉系ポリマーとの合計100質量部に対して、
    前記(A)スチレン系樹脂を5~95質量部と、
    前記(B)澱粉系ポリマーを5~95質量部と、
    前記(C)スチレン二量体とスチレン三量体の合計含有量が0.05~0.7質量部と、を含有するスチレン系樹脂組成物。
  2. 前記(A)スチレン系樹脂が、ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びスチレン-(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選択される少なくとも1種以上である、請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物。
  3. 前記(A)スチレン系樹脂と、前記(B)澱粉系ポリマーとの合計100質量部に対して、(C)流動パラフィンを0.1~3質量部含有する、請求項1又は2のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
  4. スチレン単量体の含有量が、200μg/g以下である、請求項1~3のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
  5. 前記(A)スチレン系樹脂と、(B)澱粉系ポリマーとの合計100質量部に対して、酸化防止剤を0.001~0.3質量部含有する、請求項1~4のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物の全体の質量が5%減少する温度である、5%質量減少温度が、250℃以上360℃以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
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