JP2017214485A - スチレン系樹脂組成物、並びにそのシート及び成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐熱性、外観、透明性、強度および耐熱油性に優れたスチレン系樹脂組成物、並びに該脂組成物から構成されるシート及び成形品を提供すること。【解決手段】スチレン系単量体単位と、不飽和カルボン酸系単量体単位と、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位とを構成単位として含むスチレン系樹脂(a)であって、上記スチレン系単量体単位、上記不飽和カルボン酸系単量体単位、及び上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、上記スチレン系単量体単位の含有量が54質量%以上74質量%未満であり、上記不飽和カルボン酸系単量体単位の含有量が10質量%以上16質量%以下であり、上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の含有量が16質量%より多く30質量%以下である、スチレン系樹脂(a)と;ゴム状弾性体を含むハイインパクトポリスチレン(HIPS)樹脂(b)とを含む、スチレン系樹脂組成物であって、上記スチレン系樹脂(a)と上記HIPS樹脂(b)の合計量を100質量部としたとき、上記スチレン系樹脂組成物中の上記HIPS樹脂(b)由来のゴム状弾性体量が0.025質量部〜0.5質量部である、スチレン系樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、スチレン系樹脂組成物、並びにそのシート及び成形品に関する。
スチレン系樹脂、特にスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂は、一般に耐熱性、透明性、成型性、及び剛性に優れ、且つ比較的安価なことから、弁当、惣菜等の食品の容器包装材料、住宅の断熱材用の発泡ボード、拡散剤を入れた液晶テレビの拡散板等に広く用いられている。特に、電子レンジ等で加熱される包装容器の蓋材として使用されるスチレン−不飽和カルボン酸系樹脂は、耐熱性に優れること;外部から内容物が見えるように外観や透明性に優れること;スチレン−不飽和カルボン酸系樹脂をシートにしたとき、その巻き取り時にシート自体が破断したり、該シートから容器を成型する際に、製品の打ち抜き時にひび割れ又はクラック等が発生したりしないように、耐衝撃強度や耐折り曲げ強度に優れることが要求されている。さらに、近年では、電子レンジの加熱時間の長時間化に伴い、加熱時に食品の油が蓋材に付着しても白化や変形が生じにくいことが求められている。
しかしながら、従来のスチレン系樹脂は、加熱された食品油に対する耐熱油性が不十分であり、電子レンジ等で加熱される包装容器の蓋材として使用する場合、油分が少ない食品に対して使用したり、油が直接触れないように食品と蓋材との間にフィルムを入れる必要があるなど、使用環境が限られていた。特許文献1は、スチレン‐(メタ)アクリル酸‐アクリル酸メチルを使用した二軸延伸スチレン系樹脂シートを記載しており、特許文献2は、スチレン‐(メタ)アクリル酸‐アクリル酸メチル樹脂を共重合させた耐熱性ビニル系共重合体を記載している。また、特許文献3は、ゴム質重合体を含有するゴム変性スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合樹脂と有機ポリシロキサンとを含有する樹脂組成物を記載している。
特開2015−21074号公報 特開昭60−168709号公報 特開昭60−181157号公報
しかしながら、特許文献1に記載の二軸延伸スチレン系樹脂シートは耐熱油性に乏しく、特許文献2に記載の共重合体は強度が不十分であり、特許文献3に記載の樹脂組成物は透明性が不十分であった。かかる状況下で本発明が解決しようとする課題は、耐熱性、外観、透明性、強度および耐熱油性に優れたスチレン系樹脂組成物、並びに該脂組成物から構成されるシート及び成形品を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究し、実験を重ねた結果、スチレン系単量体と不飽和カルボン酸系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを構成単位として含む特定組成のスチレン系樹脂と、ゴム状弾性体を特定量含むハイインパクトポリスチレン(HIPS)樹脂とを特定比率で配合することにより、耐熱性、外観、強度、透明性及び耐熱油性のバランスに優れたスチレン系樹脂組成物、並びにそのシート及び成形品が得られること見出し、本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
スチレン系単量体単位と、不飽和カルボン酸系単量体単位と、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位とを構成単位として含むスチレン系樹脂(a)であって、上記スチレン系単量体単位、上記不飽和カルボン酸系単量体単位、及び上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、上記スチレン系単量体単位の含有量が54質量%以上74質量%未満であり、上記不飽和カルボン酸系単量体単位の含有量が10質量%以上16質量%以下であり、上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の含有量が16質量%より多く30質量%以下である、スチレン系樹脂(a)と;
ゴム状弾性体を含むハイインパクトポリスチレン(HIPS)樹脂(b)と
を含む、スチレン系樹脂組成物であって、
上記スチレン系樹脂(a)と上記HIPS樹脂(b)の合計量を100質量部としたとき、上記スチレン系樹脂組成物中の上記HIPS樹脂(b)由来のゴム状弾性体量が0.025質量部〜0.5質量部である、スチレン系樹脂組成物。
〔2〕
上記不飽和カルボン酸系単量体がメタクリル酸である、項目1に記載のスチレン系樹脂組成物。
〔3〕
上記HIPS樹脂(b)中の上記ゴム状弾性体の含有量が5〜15質量%であり、上記ゴム状弾性体の平均粒子径が0.2〜5.0μmである、項目1または2に記載のスチレン系樹脂組成物。
〔4〕
上記HIPS樹脂(b)におけるHIPSのマトリックスが、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体であり、屈折率が1.535〜1.575である、項目1〜3のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
〔5〕
上記スチレン系樹脂(a)と上記HIPS樹脂(b)の合計100重量部に対し、シリコーンオイルをケイ素量で0.5〜200.0質量ppm含む、項目1〜4のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
〔6〕
項目1〜5のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物から構成される、シート。
〔7〕
項目1〜5のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物から構成される、押出シート。
〔8〕
項目1〜5のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物から構成される、二軸延伸シート。
〔9〕
項目6〜8のいずれか一項に記載のシートから構成される、成形品。
〔10〕
項目6〜8のいずれか一項に記載のシートから構成される、容器。
〔11〕
項目6〜8のいずれか一項に記載のシートから構成される、食品包装用容器の蓋。
〔12〕
項目1〜5のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物から構成される、射出成形品。
本発明は、耐熱性、外観、透明性、強度に優れ、耐熱油性に優れたスチレン系樹脂組成物、並びに該スチレン系組成物のシート及び成形品を提供することができる。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)を詳細に説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
《スチレン系樹脂組成物》
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、スチレン系単量体単位と、不飽和カルボン酸系単量体単位と、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位とを構成単位として含むスチレン系樹脂(a)であって、上記スチレン系単量体単位、上記不飽和カルボン酸系単量体単位、及び上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、上記スチレン系単量体単位の含有量が54質量%以上74質量%未満であり、上記不飽和カルボン酸系単量体単位の含有量が10質量%以上16質量%以下であり、上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の含有量が16質量%より多く30質量%以下である、スチレン系樹脂(a)と;
ゴム状弾性体を含むハイインパクトポリスチレン(HIPS)樹脂(b)と
を含む、スチレン系樹脂組成物であって、
上記スチレン系樹脂(a)と上記HIPS樹脂(b)の合計量を100質量部としたとき、上記スチレン系樹脂組成物中の上記HIPS樹脂(b)由来のゴム状弾性体量が0.025質量部〜0.5質量部である。
〈スチレン系樹脂(a)〉
(単量体単位)
本実施形態において、スチレン系樹脂(a)は、スチレン系単量体単位と、(メタ)アクリル酸系単量体単位と、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位とを構成単位として含む共重合体である。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が挙げられる。これらは単独で又は混合して使用することができる。スチレン系単量体としては、工業的に安価で使用できることからスチレンが好ましい。
本実施形態においては、スチレン系樹脂(a)中のスチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位、及びメタクリル酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、スチレン系単量体の含有量は54質量%以上74質量%未満、好ましくは57質量%以上71質量%以下、より好ましくは60質量%以上68質量%以下である。スチレン系単量体の含有量が54質量%未満では、樹脂の流動性が低下し、一方74質量%を超えると、(メタ)アクリル酸系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を所望量で存在させることができないため、所望の効果が得られない。
本実施形態において、不飽和カルボン酸系単量体単位は、耐熱性の向上に寄与する。不飽和カルボン酸系単量体としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。これらは単独で又は混合して使用することができる。耐熱性の向上効果が大きく、常温にて液状でハンドリング性に優れることからメタクリル酸が好ましい。
スチレン系樹脂のスチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位、及びメタクリル酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、不飽和カルボン酸系単量体単位の含有量は10質量%以上16質量%以下である。好ましくは11質量%以上15質量%以下、より好ましくは12質量%以上14質量%以下の範囲である。この含有量が10質量%未満では耐熱性向上の効果の発現が不十分である。一方16質量%を超えると、スチレン系樹脂中のゲル化物が増加して外観不良となり、また、スチレン系樹脂の流動性及び機械的物性の低下を招来するため好ましくない。
本実施形態においては、(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、スチレン系樹脂(a)の製造において(メタ)アクリル酸系単量体との分子間相互作用で(メタ)アクリル酸系単量体が脱水反応することを抑制し、スチレン系樹脂(a)の機械的強度の向上に加え、耐熱油性の向上に寄与する。(メタ)アクリル酸エステル系単量体の添加は、耐候性、表面硬度等の樹脂特性の向上にも寄与する。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。これらは単独で又は混合して使用することができる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、耐熱性低下に対する影響が小さいことから(メタ)アクリル酸メチルが好ましい。
スチレン系樹脂(a)中のスチレン系単量体単位、(メタ)アクリル酸系単量体単位、及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、(メタ)アクリル酸エステル系単量体の含有量は16質量%より多く〜30質量%であり、好ましくは18質量%以上28質量%、より好ましくは20質量%以上26質量%以下の範囲である。(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の含有量が16質量%以下になると耐熱油性が低下する。一方30質量%を超えるとスチレン系樹脂の流動性が低下し、吸水性が増加する傾向があり好ましくない。
スチレン系樹脂(a)は、スチレン系単量体単位、(メタ)アクリル酸系単量体単位、及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位以外の単量体単位を、所望の効果を損なわない範囲で更に含有することができるが、典型的には、スチレン系単量体単位、(メタ)アクリル酸系単量体単位及び(メタ)アリル酸エステル系単量体単位からなる。
スチレン系樹脂(a)中のスチレン系単量体単位、(メタ)アクリル酸系単量体単位、及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の含有量は、それぞれ、スチレン系樹脂を核磁気共鳴(13C−NMR)測定装置で測定したときのスペクトルの積分比から求めることができる。
(透明性(曇り度))
スチレン系樹脂(a)の透明性は、曇り度によって評価できる。スチレン系樹脂(a)を厚さ2mmスチレン系樹脂プレートに成型したときの曇り度は、2.0%以下であることが好ましく、より好ましくは1.5%以下、更に好ましくは1.0%以下である。厚み2mmのスチレン系樹脂プレートは、鏡面加工された金属板にスチレン系樹脂(a)を挟んで200℃にて圧縮成型することにより得られる。曇り度が2.0%以下であれば、射出成形品用途、シート成形品用途等で、透明性をより高くすることができる。また、スチレン系樹脂組成物中にハイインパクトポリスチレン(HIPS)樹脂(b)を添加したとき、強度と透明性とのバランスに優れた成形品を得ることができる。曇り度は、ISO 14728に準拠して測定することができる。また、曇り度の下限は特にない。
(総揮発成分量)
本実施形態において、スチレン系樹脂(a)を100質量%としたとき、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体の残存量(すなわち、スチレン系樹脂(a)中に、スチレン系樹脂の構成単位としてではなく単量体として残存する量)と、残存する溶媒と、存在する場合他の揮発成分との合計量(以下、「総揮発成分量」という)は、好ましくは1000質量ppm以下、より好ましくは600質量ppm以下、更に好ましくは500質量ppm以下である。スチレン系樹脂(a)中の総揮発成分量が1000質量ppm以下であれば、シート押出時のダイス出口周りの臭気や、スチレン系樹脂(a)の色調の面で好ましい。ここで、スチレン系樹脂(a)中の総揮発成分量は、それぞれ、ガスクロマトグラフィーにより測定することができる。
(メルトフローレート(MFR))
本実施形態において、スチレン系樹脂(a)のメルトフローレート(MFR)は、成形性の観点から、好ましくは0.2(g/10min)以上2.0(g/10min)以下であり、より好ましくは0.3(g/10min)以上1.5(g/10min)以下、さらに好ましくは0.4(g/10min)以上1.0(g/10min)以下である。
(ビカット軟化温度)
本実施形態において、スチレン系樹脂(a)のビカット軟化温度は、電子レンジでの使用環境に耐える観点から、好ましくは116℃以上であり、より好ましくは119℃以上、さらに好ましくは122℃以上である。また、ビカット軟化温度の上限は特にない。ビカット軟化温度は、ISO 306に準拠して測定することができる。
(重量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz))
本実施形態において、スチレン系樹脂(a)の重量平均分子量(Mw)は8万〜30万であることが好ましく、Z平均分子量(Mz)の重量平均分子量(Mw)に対する比(Mz/Mw)は1.6〜3.5であることが好ましい。Mwは、より好ましくは10万〜25万、更により好ましくは12万〜20万である。Mwが8万〜30万であると、衝撃強度と流動性とのバランスに優れる樹脂が得られ、また、ゲル化物の混入も少ない。Mz/Mwの比は、より好ましくは1.7〜3.0、更に好ましくは1.7〜2.5である。Mz/Mwの比が1.6〜3.5であると、衝撃強度と流動性とのバランスに優れる樹脂が得られ、また、ゲル化物の混入も少ない傾向となる。Mz及びMwは、ゲルパーミエイション・クロマトグラフィーによりポリスチレン標準換算で測定することができる。
(スチレン系樹脂(a)の製造方法)
スチレン系樹脂(a)の重合方法については、特に制限はないが、ラジカル重合法として、塊状重合法又は溶液重合法を採用できる。重合方法は、一般的に、重合原料(単量体成分)を重合させる重合工程と、重合生成物から未反応モノマー及び重合溶媒等の揮発分を除去する脱揮工程とからなる。
スチレン系樹脂(a)を得るために重合原料を重合させる際には、重合原料組成物中に、典型的には重合開始剤及び連鎖移動剤を含有させる。重合開始剤としては、有機過酸化物、例えば、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4ービス(t−ブチルペルオキシ)バレレート等のペルオキシケタール類、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、t−ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類等が挙げられる。分解速度と重合速度との観点から、重合開始剤としては、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンが好ましい。
スチレン系樹脂(a)の重合時には必要に応じて連鎖移動剤を使用することもできる。連鎖移動剤としては、例えば、αメチルスチレンリニアダイマー、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等が挙げられる。
例えば、スチレン系樹脂(a)の原料であるスチレン、(メタ)アクリル酸、及び(メタ)アクリル酸メチルの重合時には、スチレンの2量体や3量体が生成する。このスチレンの2量体や3量体の生成量は、重合開始の方法で異なる。すなわち、重合開始剤として有機過酸化物若しくはアゾ系重合開始剤を使用した場合と、加熱のみにより重合を開始した場合とでは、それらの生成量は異なる。スチレンの2量体や3量体の生成量は、有機過酸化物を使用する場合が最も少なく、加熱のみにより重合を開始した場合が最も多くなる。スチレンの2量体や3量体は、スチレン系樹脂組成物を押出機で押し出した際にダイス出口に目やにとして付着し、また、スチレン系樹脂組成物を射出成形した際に金型に目やにとして付着して、不具合を生じさせる場合がある。従って、重合開始方法としては、重合開始剤として有機過酸化物を使用することが好ましい。スチレン系樹脂100質量%中のスチレンの2量体と3量体の合計量は低いほど好ましく、例えば好ましくは0.7質量%以下、より好ましくは0.6質量%以下である。スチレンの2量体と3量体としては、1,3−ジフェニルプロパン、2,4−ジフェニル−1ブテン、1,2−ジフェニルシクロブタン、1−フェニルテトラリン、2,4,6−トリフェニル−1−ヘキセン、1−フェニル−4−(1’−フェニルエチル)テトラリン等が挙げられる。
重合では、必要に応じて、重合溶媒を用いた溶液重合を採用できる。重合溶媒としては、芳香族炭化水素類、例えば、エチルベンゼン、ジアルキルケトン類、例えば、メチルエチルケトン等が挙げられ、それぞれ、単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合生成物の溶解性を低下させない範囲で、他の重合溶媒、例えば、脂肪族炭化水素類等を、芳香族炭化水素類に更に混合することができる。これらの重合溶媒は、全単量体100質量部に対して、30質量部を超えない範囲で使用するのが好ましい。全単量体100質量部に対して重合溶媒が30質量部以下であれば、重合速度の低下、及び得られる樹脂の機械的強度の低下が抑制されるため好ましい。重合前に、全単量体100質量部に対して5〜30質量部の割合で添加しておくことが、品質が均一化し易く、重合温度制御の点でも好ましい。
スチレン系樹脂(a)を得るための重合工程で用いる反応器は、特に制限はなく、用いる重合方法に応じて適宜選択すればよい。例えば、塊状重合による場合には、完全混合型反応器を1基、又は複数基連結した重合装置を用いることができる。
脱揮工程についても特に制限はなく、例えば、塊状重合で行う場合、最終的に未反応モノマーが好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下になるまで重合を進め、既知の方法にて脱揮処理して、未反応モノマー等の揮発分を除去することができる。脱気装置としては、例えば、フラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機等の通常の脱揮装置を用いることができ、滞留部の少ない脱揮装置を使用することが好ましい。なお、脱揮処理の温度は、通常、190〜280℃程度であり、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸メチルとの隣接による六員環酸無水物の形成を抑制する観点から、190〜260℃がより好ましい。また、脱揮処理の圧力は、通常0.13〜4.0kPa程度であり、好ましくは0.13〜3.0kPaであり、より好ましくは0.13〜2.0kPaである。脱揮方法としては、例えば、加熱下で減圧して揮発分を除去する方法、又は揮発分除去の目的に設計された押出機等を通して除去する方法が望ましい。
(耐熱油性)
本実施形態のスチレン系樹脂(a)は、様々な食用油に対する耐熱油性があってよい。食用油としては、大豆油やキャノーラ油、コーン油、オリーブ油、ごま油、紅花油、ひまわり油、パーム油、ヤシ油等の植物油や、牛脂や豚油、バター等の動物脂があげられる。中でも、特にスチレン系樹脂を侵し易い中鎖脂肪酸油を多く含んだヤシ油に対する耐熱油性があることが好ましい。
スチレン系樹脂(a)の耐熱油性は、厚み2mmのスチレン系樹脂プレートを110℃の食用油に15分間浸漬したときの、浸漬前後の曇り度の変化(Δ曇り度:試験後曇り度(%)−試験前曇り度(%))によって評価することができる。Δ曇り度は好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。Δ曇り度が10%以下であれば、油分の多い食品に対しても、電子レンジで加熱される包装容器として使用することができる。Δ曇り度の下限は特にない。
〈ハイインパクトポリスチレン(HIPS)樹脂(b)〉
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、ゴム状弾性体を含むハイインパクトポリスチレン(HIPS)樹脂(b)を含有する。ハイインパクトポリスチレン(HIPS)樹脂(b)中のゴム状弾性体は、スチレン系単量体又はスチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とから構成されるマトリックス中に、これらの単量体がグラフト重合したゴム状弾性体がオクルードを含んだサラミ状又はコアシェル状に分散粒子で存在する形態をとっていることが好ましい。HIPS樹脂(b)はゴム状重合体の存在下で上記単量体を塊状重合、溶液重合、又は塊状−懸濁重合することで製造することができる。
HIPS樹脂(b)は、スチレン系樹脂(a)とブレンドして用いることができる。HIPS樹脂(b)のブレンド量は、スチレン系樹脂(a)+HIPS樹脂(b)の合計含有量を100重量部としたとき、スチレン系樹脂組成物中のHIPS樹脂(b)由来のゴム状弾性体量が0.025質量部〜0.5質量部、より好ましくは0.5質量部〜0.4質量部、更により好ましくは0.1質量部〜0.3質量部となる量である。HIPS樹脂(b)由来のゴム状弾性体量が0.025質量部より低いと補強効果が不十分となり、一方、0.5質量部より高いと透明性が大きく低下する傾向がある。
(単量体単位)
HIPS樹脂(b)中に含まれるスチレン系単量体としては、スチレンの他に、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、ο−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、t−ブチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、インデンなどのスチレン誘導体が挙げられる。工業的観点からスチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、一種を単独で用いてもよく、又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。
HIPS樹脂(b)のマトリックス樹脂を、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体との共重合体にすることにより、スチレン系樹脂(a)の屈折率に近づけることができ、透明性に優れたスチレン系樹脂組成物を得ることができる。HIPS樹脂(b)に使用できる(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられ、耐熱性の観点から、エステル部が炭素数1〜4のアルキルであることが望ましい。
HIPS樹脂(b)の単量体としてスチレン単量体と(メタ)エステル系単量体とを使用し、HIPS樹脂(b)のマトリックスの屈折率を好ましくは1.535〜1.575に、より好ましくは1.550〜1.570に調整することで、スチレン系樹脂(a)とブレンドした際により透明性に優れたスチレン系樹脂組成物を得ることが可能である。
(ゴム状弾性体)
HIPS樹脂(b)中のゴム状弾性体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などが使用できるが、工業的観点から、ポリブタジエン及びスチレン−ブタジエン共重合体が好ましい。ポリブタジエンには、シス含有率の高いハイシスポリブタジエン、シス含有率の低いローシスポリブタジエン、又はこれらの両方を用いることができる。スチレン−ブタジエン共重合体の構造としては、ランダム構造であってもよく、ブロック構造であってもよく、これらの組合せであってもよい。これらのゴム状重合体は、一種を単独で用いてもよく、又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。ブタジエン系ゴムを水素添加した飽和ゴムを使用することもできる。
ゴム状弾性体の存在下でHIPS樹脂(b)の単量体を塊状重合、溶液重合、又は塊状−懸濁重合することで得られるHIPS樹脂(b)は、乳化重合で得られるHIPS樹脂に比べて、分散粒子が変形しやすく、延伸シートで面衝撃が発現され易く、乳化剤の残渣がないため外観により優れるため好ましい。
(HIPS樹脂(b)中のゴム状弾性体の含有量)
HIPS樹脂(b)中のゴム状弾性体の含有量は、好ましくは5〜15質量%、より好ましくは7〜14質量%、更により好ましくは10〜13質量%である。本願明細書において、HIPS樹脂(b)中のゴム状弾性体の含有量とは、HIPS樹脂(b)の合計量を100質量部としたときの、共役ジエン単量体の成分量(質量%)を指す。共役ジエン単量体とは、一対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。
該ゴム状弾性体の含有量が5質量%以上である場合、スチレン系樹脂(a)とブレンドしたときに、持ち込まれるマトリックス量が減少するため、透明性及び耐熱性の観点から好ましい。該含有量が15質量%以下であれば、HIPS樹脂(b)を製造する時に重合系の粘度が高くなり過ぎず、ゴム粒子が微細化しやすくなるため好ましい。したがって、ゴム状弾性体の含有量が5〜15質量%であることにより、スチレン系樹脂(a)とHIPS樹脂(b)とをブレンドする際、ゴム状弾性体成分が分散し易く、機械的強度及び外観により優れるため好ましい。ゴム状弾性体の含有量は、実施例の項に記載する手順、又はこれと等価な方法で測定することができる。
(ゴム状弾性体の平均粒子径)
HIPS樹脂(b)中のゴム状弾性体の平均粒子径は、好ましくは0.2〜5.0μm、より好ましくは0.8〜4.5μm、更に好ましくは1.0〜4.0μm、である。ゴム状弾性体の平均粒子径が0.2μm以上である場合、スチレン系樹脂組成物をシートにした際の面衝撃強度と耐折強度により優れる傾向がある。一方、平均粒子径が5.0μm以下であれば、スチレン系樹脂の外観により優れる傾向がある。HIPS樹脂(b)は、例えば、ゴム状重合体の存在下で撹拌機付きの反応器内でスチレン系単量体又はスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを重合させることにより得ることができる。HIPS樹脂(b)中のゴム状弾性体の粒子径は、撹拌機の回転数、及び用いるゴム状重合体の分子量などで調整することができる。
(膨潤指数)
HIPS樹脂(b)のトルエン不溶分の膨潤指数は、好ましくは8.0〜14.0であることが好ましい。また、トルエン不溶分中のゴム量に対するトルエン不溶分の質量比(トルエン不溶分/トルエン不溶分中のゴム量)は、好ましくは1.5〜4.0である。本願明細書において、トルエン不溶分中のゴム量とは、トルエン不溶分を100質量%としたとき、トルエン不溶分中の共役ジエン単量体に由来する成分量(質量%)を意味する。膨潤指数は、より好ましくは9.0〜13.0、更に好ましくは9.5〜12.5であり、トルエン不溶分/トルエン不溶分中のゴム量の比は、より好ましくは2.0〜3.5、更に好ましくは2.5〜3.5である。HIPS樹脂(b)のトルエン不溶分の膨潤指数が8.0〜14.0であり、且つ、トルエン不溶分/トルエン不溶分中のゴム量の比が1.5〜4.0であれば、特に機械的強度に優れる樹脂が得られる。トルエン不溶分の膨潤指数、及びトルエン不溶分/トルエン不溶分中のゴム量の比は、それぞれ実施例の項で説明する手順、又はこれと等価な手順で測定される値である。
(メルトフローレート(MFR))
本実施形態において、HIPS樹脂(b)のメルトフローレート(MFR)は、流動性の観点から、好ましくは1.0以上20.0以下であり、より好ましくは2.0以上10.0以下、さらに好ましくは3.0以上8.0以下である。
〈シリコーンオイル〉
本実施形態のスチレン系樹脂組成物にシリコーンオイルを添加することで、2軸延伸シートの折り曲げ強度をさらに改善することができるため好ましい。シリコーンオイルの添加量は、スチレン系樹脂(a)とHIPS樹脂(b)の合計量に対して、好ましくはSi(ケイ素)量換算で0.5質量ppm〜200.0質量ppm、より好ましくは2.0質量ppm〜30.0質量ppm、更により好ましくは5.0質量ppm〜10.0質量ppmである。シリコーンオイルの添加量はSi量換算で0.5質量ppm以上であると、補強効果がより優れる傾向がある。一方、200.0質量ppm以下であると、透明性の観点から好ましい。
シリコーンオイルは、スチレン系樹脂組成物中に分散したゴム状弾性体に作用し、スチレン系樹脂(a)と分散したゴム状弾性体粒子との親和性を向上させることにより、強度向上に寄与すると考えられる。
シリコーンオイルとしては、25℃における比重が0.9〜1.1g/cmの範囲であることが好ましい。シリコーンオイルの25℃における動粘度は、好ましくは20mm/s〜1000mm/s、より好ましくは30mm/s〜500mm/s、更により好ましくは50mm/s〜200mm/sである。このようなシリコーンオイルを使用することにより、少量の添加でその効果が発現し、より優れた強度物性を得ることができる。1000mm/sを超えると、シリコーンオイルの添加量に比較して補強効果が小さくなる傾向となる。一方、20mm/s未満では揮発性が高く、成型時の金型汚れが増加しやすい傾向となる。
シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルエチルポリシロキサン等が挙げられる。中でも、市販されており、安価である点から、ジメチルポリシロキサンが好ましい。
シリコーンオイルを樹脂組成物に添加する方法としては特に制限はなく、スチレン系樹脂(a)、HIPS樹脂(b)と個別に添加してもよく、スチレン系樹脂(a)、HIPS樹脂(b)製造時に予め添加し、ブレンドしてもよい。
〈ゲル化抑制剤〉
スチレン系樹脂組成物はゲル化抑制剤を含有してもよい。ゲル化抑制剤を含有することでゲル物の生成が抑制され、シートにした際の外観をより向上させることができる。ゲル化抑制剤としては、脂肪族モノアルコール、及びポリオキシエチレンモノアルキルエーテル等があげられる。ゲル化抑制剤の添加方法としては特に制限はなく、スチレン系樹脂(a)の重合前もしくは重合中に添加してもよく、製造されたスチレン系樹脂(a)のペレットに押出機で練り込む方法等があげられる。
(脂肪族モノアルコール)
スチレン系樹脂組成物は、C(炭素数)12〜20の脂肪族モノアルコールを含有することで、メタクリル酸の脱水縮合反応を抑え、外観により優れたスチレン系樹脂組成物を得ることができる。スチレン系樹脂組成物中の脂肪族モノアルコールの含有量としては、スチレン系樹脂(a)及びHIPS樹脂(b)の合計質量を100質量部としたとき、好ましくは0.05〜0.4質量部、より好ましくは0.1〜0.3質量部である。スチレン系樹脂組成物中の脂肪族モノアルコールの含有量が0.05質量部以上であると、外観の改善効果がより大きくなり、一方、0.3質量部以下であると、耐熱性により優れる傾向がある。また、成形時の金型汚れが低減される傾向がある。
脂肪族モノアルコールの炭素数としては、C12〜20であることが望ましい。C12以上であれば揮発性が低くなり、成形時の金型汚れが低減され、C20以下では脱水縮合反応の抑制効果が高くなり、少ない添加量でも耐熱性により優れる傾向がある。
(ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル)
スチレン系樹脂組成物は、下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンモノアルキルエーテルを含有することによって、メタクリル酸の脱水縮合反応がより効果的に抑えられ、外観により優れるスチレン系樹脂組成物を得ることができる。ポリオキシエチレンモノアルキルエーテルの含有量は、スチレン系樹脂(a)及びHIPS樹脂(b)の合計質量を100質量部としたとき、好ましくは0.05〜0.3質量部、より好ましくは0.1〜0.2質量部である。
R−O−(CH−CH−O)−H ・・・(1)
(RはC12〜20のアルキル基であり、Xはエチレンオキサイドの平均付加数であり、4〜12の整数である。)
ポリオキシエチレンモノアルキルエーテルの含有量が0.05質量部以上であると、外観の改善効果がより高くなる傾向があり、一方、0.3質量部以下であると、耐熱性により優れる傾向がある。
〈透明性(曇り度)〉
スチレン系樹脂組成物の透明性は、曇り度によって評価できる。スチレン系樹脂組成物を厚さ2mmスチレン系樹脂プレートに成型したときの曇り度は、25%以下であることが好ましく、より好ましくは15%以下である。厚み2mmのスチレン系樹脂プレートは、鏡面加工された金属板にスチレン系樹脂組成物を挟んで200℃にて圧縮成型することにより得られる。曇り度が25%以下であれば、非発泡シートに成型した際にも透明性をより高く保つことができるため好ましい。曇り度は、ISO 14728に準拠して測定することができる。また、曇り度の下限は特にない。
〈ビカット軟化温度〉
スチレン系樹脂組成物ビカット軟化温度は、電子レンジでの使用環境に耐える観点から115℃以上であり、好ましくは118℃以上、より好ましくは120℃以上である。また、ビカット軟化温度の上限は特にない。ビカット軟化温度は、ISO 306に準拠して測定することができる。
〈耐熱油性〉
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、様々な食用油に対する耐熱油性があってよい。食用油としては、大豆油やキャノーラ油、コーン油、オリーブ油、ごま油、紅花油、ひまわり油、パーム油、ヤシ油等の植物油や、牛脂や豚油、バター等の動物脂があげられる。中でも、特にスチレン系樹脂を侵し易い中鎖脂肪酸油を多く含んだヤシ油に対する耐熱油性があることが好ましい。
スチレン系樹脂組成物の耐熱油性は、厚み2mmのスチレン系樹脂プレートを110℃の食用油に15分間浸漬したときの、浸漬前後の曇り度の変化(Δ曇り度:試験後曇り度(%)−試験前曇り度(%))によって評価することができる。Δ曇り度は好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。Δ曇り度が10%以下であれば、油分の多い食品に対しても、電子レンジで加熱される包装容器として使用することができる。Δ曇り度の下限は特にない。
〈添加剤〉
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂において一般的に使用される各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、可塑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、鉱油等が挙げられる。また、スチレン−ブタジエンブロック共重合体やMBS樹脂等の補強材についても物性を損なわない範囲で添加してもよい。配合の方法については特に限定されず、例えば、スチレン系樹脂(a)の重合時に添加して重合する方法や、スチレン系樹脂組成物を得る際、ブレンダーで予め添加剤を混合し、押出機やバンバリーミキサー等にて溶融混錬する方法等が挙げられる。
《シート》
本実施形態のシートは、上記で説明したスチレン系樹脂組成物から構成されるシートである。シートの製造方法としては、通常知られている方法を用いることができる。例えば、本実施形態におけるシートは、一実施形態において、上記で説明したスチレン系樹脂組成物から構成される押出シートであってよく、他の実施形態において、上記で説明したスチレン系樹脂組成物から構成される二軸延伸シートであってもよい。
押出シートは、非発泡シートであってもよく、発泡シートであってもよい。非発泡シートは、Tダイを取り付けた単軸又は二軸押出成形機で押し出し、その後一軸延伸機又は二軸延伸機でシートを引き取ることによって、一軸延伸シート又は二軸延伸シートにすることができる。発泡シートは、Tダイ又はサーキュラーダイを備えた押出発泡成形機を用いて製造することができる。
非発泡シートの厚みは、例えば、0.1〜1.0mm程度であることが剛性及び熱成形サイクルの観点から好ましい。また、一軸シートは、通常の低倍率のロール延伸のみで形成してもよく、二軸延伸シートは、ロールで流れ方向(MD)に1.3倍から7倍程度延伸した後、テンターで垂直方向(TD)に1.3倍から7倍程度延伸することが強度の面で好ましい。また、非発泡シートは、ポリスチレン樹脂等のスチレン系樹脂と多層化して用いてもよい。更にスチレン系樹脂以外の樹脂と多層化して用いてもよい。スチレン系樹脂以外の樹脂としては、PET樹脂、ナイロン樹脂等が挙げられる。
発泡シートの厚みは0.5mm〜5.0mmであることが好ましく、見かけ密度は50g/L〜300g/Lであることが好ましく、坪量は80g/m〜300g/mであることが好ましい。発泡シートは、例えば更にフィルムをラミネートすること等によって多層化してもよい。ラミネートするフィルムの種類としては、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリスチレンの張り合せフィルム等が挙げられる。発泡シートを押出発泡する際に用いる発泡剤及び発泡核剤としては、通常用いられる物質を使用できる。発泡剤としては、例えばブタン、ペンタン、フロン、二酸化炭素、及び水等が挙げられ、ブタンが好適である。発泡核剤としては、例えばタルク等を使用できる。
《成形品》
本実施形態の成形品は、上記で説明したシートから構成される成形品である。成形品としては、限定されないが、容器、例えば食品包装用容器、及び食品包装用容器の蓋等が挙げられる。このような容器は、例えば、真空成形により成形して製造することができる。
本実施形態のスチレン系樹脂およびスチレン系樹脂組成物は、射出成形、圧縮成形等、目的に応じた他の成形方法で成形して、射出成形品、圧縮成形品等にすることができる。
以下、実施例により本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
《測定及び評価方法》
スチレン系樹脂組成物、及びシート等の各物性の測定及び評価方法は、下記のとおりである。
(1)メルトフローレート(MFR)の測定
ISO 1133に準拠して測定した(200℃、荷重49N)。
(2)ビカット軟化温度の測定
ISO 306に準拠して測定した。荷重は49N、昇温速度は50℃/hとした。
(3)スチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及びZ平均分子量(Mz)の測定
試料調製 :スチレン系樹脂約0.05質量%をテトラヒドロフランに溶解した。
測定条件
機器 :TOSOH HLC−8220GPC
(ゲルパーミエイション・クロマトグラフィー)
カラム :super HZM−H
温度 :40℃
キャリア :THF 0.35ml/min
検出器 :RI 、UV:254nm
検量線 :TOSOH製の標準PS使用
(4)スチレン系樹脂(a)中のスチレン単位、(メタ)アクリル酸単位、及び(メタ)アクリル酸単位の含有量の測定
核磁気共鳴(13C−NMR)装置で測定したスペクトルの積分比から樹脂組成を定量した。
試料調製:樹脂75mgをd6−DMSO 0.75mlに60℃で4〜6時間加熱溶解した。
測定機器:日本電子 JNM ECA−500
測定条件:測定温度 60℃、観測核 13C、積算回数 2万回、繰返し時間 45秒
(5)スチレン系樹脂の総揮発成分量の測定
スチレン系樹脂の質量を100質量%としたとき、スチレン単量体、(メタ)アクリル酸単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、残存する溶媒、及び他の揮発成分の残存量の合計を総揮発成分量として、ガスクロマトグラフィーにて測定した。
試料調製 :スチレン系樹脂1.0gを標準物質入りジメチルホルムアミド25mlに溶解した。
測定条件
機器 :島津製製作所製ガスクロマトグラフィー GC−14Bpf
カラム :SUS 3mmφ×3m(パックドカラム)
充填剤 :液相 PEG−20M 25%
担体 Chromosorb W(AW) 60〜80メッシュ
カラム温度 :110℃
注入口温度 :220℃
検出器温度 :220℃
キャリアガス :窒素
(6)スチレン系樹脂中のスチレンの2量体及び3量体の測定
定量は、スチレンの2量体と3量体の標準物質で行った。
試料調整 :スチレン系樹脂をメチルエチルケトンに溶解した。
測定条件
検出方法 :FID
機器 :島津製作所 GC17Apf
カラム :DB−1(100%ジメチルポリシロキサン)
30m、膜厚0.1μm、0.25mmφ
カラム温度 :100℃に2分間保持し、5℃/分で昇温させ、260℃で5分間保持した。
注入口温度 :200℃
検出器温度 :200℃
キャリアガス :窒素
(7)スチレン系樹脂組成物中のHIPS樹脂(b)由来のゴム状弾性体量の測定
スチレン系樹脂(a)とHIPS樹脂(b)の合計量を100質量部としたときのスチレン系樹脂組成物中のHIPS樹脂(b)由来のゴム状弾性体量(質量部)の測定は、熱分解GCにておこなった。
試料調整 :スチレン系樹脂組成物をクロロホルムに5質量%で溶解し、20μlをパイロホイルに塗布し、80℃で24時間真空乾燥した。
測定条件
Py−GC
機器 :日本分析工業社製 キュリーポイントインジェクター
パイロホイル温度 :590℃
高周波照射時間 :10秒

GC
機器 :アジレント・テクノロジー社製 HP−GC−6890
カラム : HP−5MS
30m、膜厚0.25mm、0.25mmφ
カラム温度 :50℃に5分間保持し、10℃/分で昇温させ、100℃からは70℃/分で昇温させ、300℃で10分間保持した。
注入口温度 :300℃
検出器温度 :300℃
スプリット比 :1/20
キャリアガス :ヘリウム
検出方法 :MSD
(8)HIPS樹脂中のゴム状弾性体の平均粒子径
HIPS樹脂中のゴム状弾性体の平均粒子径(μm)は、透過型電子顕微鏡による断面観察によって観察された200個のゴム状弾性体粒子について、下記式:
平均粒子径=Σ(ni×Di)/Σ(ni×Di
{式中、niは粒子径Diを有するゴム状弾性体粒子の個数であり、Diはゴム状弾性体粒子の長径と短径の平均値である。}により計算した。
(9)HIPS樹脂のトルエン不溶分の膨潤指数の測定
沈殿管にHIPS樹脂1gを精秤し(W1)、トルエン20ミリリットルを加えて23℃で2時間振とうした後、遠心分離機((株)日立製作所製himac、CR−20(ローター:R20A2))にて10℃以下、20000rpmで60分間遠心分離した。沈殿管を約45度にゆっくり傾け、上澄み液をデカンテーションして取り除いた。トルエンを含む不溶分の質量を精秤し(W2)、160℃、3kPa以下の条件で1時間真空乾燥した。乾燥させたトルエン不溶分をデシケータ内で室温まで冷却した後、質量を精秤した(W3)。
下記式により、トルエン不溶分の膨潤指数、及びトルエン不溶分を求めた。
トルエン不溶分(質量%)=((W3)/(W1))×100
トルエン不溶分の膨潤指数=(W2/W3)
(10)HIPS樹脂のマトリクスの屈折率の測定
HIPS樹脂のマトリクスの屈折率は、以下のようにして行った。沈殿管にHIPS樹脂1gを精秤しトルエン20ミリリットルを加えて23℃で2時間振とうした後、遠心分離機((株)日立製作所製himac、CR−20(ローター:R20A2))にて10℃以下、20000rpmで60分間遠心分離した。沈殿管を約45度にゆっくり傾け、上澄み液をデカンテーションして回収し、上澄み液に300mlのメタノールを加え、ポリマー分を再沈させた。回収した再沈ポリマーを230℃、1.3Kpa下の条件下で30分加熱して溶媒を除去し、鏡面加工された金属板にスチレン系樹脂組成物を挟んで200℃にて約4mm厚みになるように圧縮成型した後に、幅8m、長さ20mmに切出し、試料とした。JIS K7142 A法に準拠し、得られた試料の屈折率を測定した。
(11)スチレン系樹脂組成物中のケイ素量換算したシリコーンオイル量の測定
スチレン系樹脂組成物中のケイ素量換算したシリコーンオイル量は、プラズマ発光分光法(ICP法)にて定量した。
(12)透明性(曇り度)
鏡面加工された金属板にスチレン系樹脂又はスチレン系樹脂組成物を挟んで、200℃にて圧縮成型することにより厚み2mmのスチレン系樹脂プレートを作製した。ISO 14728に準拠し、該厚み2mmのスチレン系樹脂プレートの曇り度(HAZE)を測定することにより、透明性を評価した。
(13)樹脂組成物のダイス汚れの判定
スチレン系樹脂組成物を30mmφ短軸押出機で5kg/hの吐出量で連続3時間押し出した後、ステアリルアルコール等の低分子量物質によるストランド出口の汚れを目視で判定した。汚れが無い場合(ストランド出口の周りに付着した低分子量物質の厚みが1mm以下である場合)を○、汚れが有る場合(ストランド出口の周りに付着した低分子物質の厚みが1mm超である場合)を×とした。
(14)シートの外観判定
スチレン系樹脂又はスチレン系樹脂組成物を、創研社製の25mmφ単軸シート押出機で押し出して、厚さ0.3mmのシートを作製した。該シートから8cm×20cmの大きさの試料を3枚切り出し、3枚の試料の表面において、(長径+短径)/2の平均径が1mm以上の異物であるゲル物の個数を数え、以下の評価基準で外観を判定した:
◎:ゲル物の個数が2点以下
○:ゲル物の個数が5点以下
×:ゲル物の個数が6点以上
(15)衝撃強度、及びMIT耐折強度の測定
上記創研社製の25mmφ単軸シート押出機にて、スチレン系樹脂組成物から厚み1.5〜1.6mmのシートを作製した。作製したシートから10cm×10cmの大きさのシートを切出した。切出したシートを東洋精機製二軸延伸装置(EX6−S1)にて下記条件で同時二軸延伸を行い、厚み0.24mm〜0.26mmの二軸延伸シートを作製した。
延伸温度:Vicat軟化温度+20℃、
延伸速度:170%
延伸倍率:2.5倍
東洋精機社製のフィルムインパクトテスター(A121807502)を用いて、該二軸延伸シートの衝撃強度(kgf・cm)を測定した。
また、JIS P8115に準拠し、該二軸延伸シートのMIT耐折強度(回)を測定した。
(16)耐熱油性の評価
鏡面加工された金属板にスチレン系樹脂又はスチレン系樹脂組成物を挟んで、200℃にて圧縮成型することにより、厚み2mmのスチレン系樹脂プレートを作製した。該スチレン系樹脂プレートを110℃のヤシ油に15分間浸漬して、浸漬前後における曇り度の変化(Δ曇り度)を、以下の式により算出した。
Δ曇り度(試験後曇り度(%)−試験前曇り度(%))
評価基準
◎・・Δ曇り度が5%以下
○・・Δ曇り度が5%より大きく10%以下
×・・Δ曇り度が10%より大きい
《スチレン系樹脂(a)の製造例》
〈樹脂A〉
スチレン55.4質量部、メタクリル酸7.0質量部、メタクリル酸メチル12.8質量部、エチルベンゼン25.0質量部、及び1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.025質量部からなる重合原料組成液を、0.8リットル/時の速度で、容量が3.6リットルの完全混合型反応器に供給し、次に未反応モノマー及び重合溶媒等の揮発成分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置へと連続的に供給した。完全混合反応器の重合温度は128℃とした。単軸押出機の温度を200〜250℃、圧力を10torrに設定して、未反応モノマー及び重合溶媒等の揮発成分を脱揮した。脱揮された揮発成分を−5℃の冷媒を通した凝縮器で凝縮し、未反応液として回収し、スチレン系樹脂は樹脂ペレットとして回収した。上述の分析法によって得られたスチレン系樹脂(樹脂A)の物性を以下の表1に示す。
〈樹脂B〉
重合原料組成液をスチレン50.3質量部、メタクリル酸8.2質量部、メタクリル酸メチル15.5質量%、エチルベンゼン26.0質量部、及び1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.025質量部とし、完全混合型反応器の温度を130℃とした以外は樹脂Aと同様の製造条件で、スチレン系樹脂(樹脂B)を製造した。
〈樹脂C〉
重合原料組成液をスチレン43.4質量部、メタクリル酸9.2質量部、メタクリル酸メチル20.4質量%、エチルベンゼン27.0質量部、及び1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.025質量部とし、完全混合型反応器の温度を130℃とした以外は樹脂Aと同様の製造条件で、スチレン系樹脂(樹脂C)を製造した。
〈樹脂D〉
重合原料組成液をスチレン65.5質量部、メタクリル酸6.5質量部、メタクリル酸メチル7.0質量%、エチルベンゼン27.0質量部、及び1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.025質量部とし、完全混合型反応器の温度を134℃とした以外は樹脂Aと同様の製造条件で、スチレン系樹脂(樹脂D)を製造した。
〈樹脂E〉
重合原料組成液をスチレン51.1質量部、メタクリル酸11.9質量部、メタクリル酸メチル12.0質量%、エチルベンゼン25.0質量部、及び1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.0225質量部とし、完全混合型反応器の温度を132℃とした以外は樹脂Aと同様の製造条件で、スチレン系樹脂(樹脂E)を製造した。
〈樹脂F〉
重合原料組成液をスチレン49.9質量部、メタクリル酸4.8質量部、メタクリル酸メチル18.3質量%、エチルベンゼン31.0質量部、及び1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.0225質量部とし、完全混合型反応器の温度を133℃とした以外は樹脂Aと同様の製造条件で、スチレン系樹脂(樹脂F)を製造した。
Figure 2017214485
《ハイインパクトポリスチレン(HIPS)樹脂(b)の製造例》
〈樹脂G〉
スチレン系単量体としてスチレン77質量部、ゴム状弾性体としてポリブタジエンゴム(宇部興産社製BR15HB)9質量部、溶剤としてエチルベンゼン14質量部、重合開始剤として1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.004質量部、及び連鎖移動剤としてα−メチルスチレンダイマー0.2質量部を混合溶解した重合液を、攪拌機を備え、温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器1に、3.2リットル/Hrで連続的に供給した。層流型反応器1の温度は110〜130℃、攪拌機の回転数は毎分40回転とした。続いて層流型反応器1と直列に接続され、攪拌機を備え、温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器2へと反応液を送った。層流型反応器2の攪拌機の回転数は毎分15回転とし、温度は130〜150℃に設定した。続いて層流型反応器2と直列に接続され、攪拌機を備え、温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器3へと反応液を送った。層流型反応器3の攪拌機の回転数は毎分10回転とし、温度は140〜170℃に設定した。層流型反応器3から連続的に排出される重合体溶液を、真空ベントつき押出機に送り、10torrの減圧下で脱揮後、ペレタイズして、HIPS樹脂(樹脂G)を得た。押出機の温度は200〜250℃に設定した。樹脂Gの物性を以下の表2に示す。
〈樹脂H〉
ゴム状弾性体としてポリブタジエンゴム(旭化成ケミカルズ製ジエン35)を使用し、混合溶解した重合液の組成を、スチレン79質量部、ゴム状重合体7質量部、エチルベンゼン15質量部、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.06質量部、及びα−メチルスチレンダイマー0.05質量部とし、さらに層流型反応器1の回転数を毎分80回転とした以外は樹脂Gと同様の条件で、樹脂Hを製造した。
〈樹脂I〉
ゴム状弾性体としてスチレン−ブタジエン共重合体(旭化成ケミカルズ社製 アサプレン670A)を使用し、混合溶解した重合液の組成を、スチレン76質量部、ゴム状重合体9質量部、エチルベンゼン15質量部、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.04質量部、及びn−ドデシルメルカプタン0.03質量部とし、さらに層流型反応器1の回転数を毎分150回転とした以外は、樹脂Gと同様の条件で樹脂Iを製造した。
〈樹脂J〉
単量体としてさらにメタクリル酸メチルを加え、ゴム状弾性体としてスチレン−ブタジエン共重合体(旭化成ケミカルズ社製 アサプレン625A)を使用し、混合溶解した重合液の組成を、スチレン60.5質量部、アクリル酸ブチル17.5質量部、ゴム状重合体9質量部、エチルベンゼン13質量部、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.02質量部、及びα−メチルスチレンダイマー0.1質量部とし、また層流型反応器1の回転数を毎分100回転とした以外は、樹脂Gと同様の条件で樹脂Jを製造した。
樹脂G〜Jの組成および物性を以下の表2に示す。
Figure 2017214485
《スチレン系樹脂組成物の製造例》
〈実施例1〉
得られたスチレン系樹脂(樹脂A)98.5質量部と、HIPS(樹脂G)1.5質量部とを、30mmφの2軸押出機を用いて、220℃、80rpmで混練した後、ペレタイズして、スチレン系樹脂組成物を得た。スチレン系樹脂組成物について、評価結果を以下の表3に示す。
〈実施例2〜9〉
以下の表3に示す割合でスチレン系樹脂(a)、HIPS樹脂(b)、及びシリコーンオイルを、30mmφの2軸押出機を用いて、220℃、80rpmで混練した後、ペレタイズして、スチレン系樹脂組成物を得た。評価結果を表3に示す。
〈比較例1〉
スチレン系樹脂(a)を樹脂Aから樹脂Dに変更した以外は、実施例1と同様にスチレン系樹脂組成物を製造した。評価結果を以下の表4に示す。樹脂Dでは含有するメタクリル酸メチルの量が少なく、耐熱油性が不十分であった。
〈比較例2〉
スチレン系樹脂(a)を樹脂Aから樹脂Eに変更した以外は、実施例1と同様にスチレン系樹脂組成物を製造した。評価結果を以下の表4に示す。樹脂Eでは含有するメタクリル酸の量が多く、シートの外観が悪化した。
〈比較例3〉
スチレン系樹脂(a)を樹脂Aから樹脂Fに変更した以外は、実施例1と同様に実施し、得られたスチレン系樹脂を評価した。評価結果を以下の表4に示す。樹脂Eでは含有するメタクリル酸の量が少なく、耐熱性が不十分となった。
〈比較例4〉
スチレン系樹脂(a)としての樹脂BにHIPS樹脂(b)を添加せず、シリコーンオイルをSi換算で300.0質量ppm加えたこと以外は実施例1と同様の条件でスチレン系樹脂組成物を製造した。比較例4ではHIPSが添加されていないため強度が不足し、シリコーンオイルの添加量が多く透明性が悪化した。
Figure 2017214485
Figure 2017214485
本発明のスチレン系樹脂及びスチレン系樹脂組成物は、耐熱性、外観、強度、透明性、及び耐熱油性に優れたシート、更にその二次加工による成形品、例えば容器、例えば弁当、惣菜等の食品容器包装用容器の製造に好適に使用できる。また、耐熱油性を生かし、射出成形により成形される容器等にも幅広く使用可能である。

Claims (12)

  1. スチレン系単量体単位と、不飽和カルボン酸系単量体単位と、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位とを構成単位として含むスチレン系樹脂(a)であって、前記スチレン系単量体単位、前記不飽和カルボン酸系単量体単位、及び前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、前記スチレン系単量体単位の含有量が54質量%以上74質量%未満であり、前記不飽和カルボン酸系単量体単位の含有量が10質量%以上16質量%以下であり、前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の含有量が16質量%より多く30質量%以下である、スチレン系樹脂(a)と;
    ゴム状弾性体を含むハイインパクトポリスチレン(HIPS)樹脂(b)と
    を含む、スチレン系樹脂組成物であって、
    前記スチレン系樹脂(a)と前記HIPS樹脂(b)の合計量を100質量部としたとき、前記スチレン系樹脂組成物中の前記HIPS樹脂(b)由来のゴム状弾性体量が0.025質量部〜0.5質量部である、スチレン系樹脂組成物。
  2. 前記不飽和カルボン酸系単量体がメタクリル酸である、請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物。
  3. 前記HIPS樹脂(b)中の前記ゴム状弾性体の含有量が5〜15質量%であり、前記ゴム状弾性体の平均粒子径が0.2〜5.0μmである、請求項1または2に記載のスチレン系樹脂組成物。
  4. 前記HIPS樹脂(b)におけるHIPSのマトリックスが、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体であり、屈折率が1.535〜1.575である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
  5. 前記スチレン系樹脂(a)と前記HIPS樹脂(b)の合計100重量部に対し、シリコーンオイルをケイ素量で0.5〜200.0質量ppm含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物から構成される、シート。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物から構成される、押出シート。
  8. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物から構成される、二軸延伸シート。
  9. 請求項6〜8のいずれか一項に記載のシートから構成される、成形品。
  10. 請求項6〜8のいずれか一項に記載のシートから構成される、容器。
  11. 請求項6〜8のいずれか一項に記載のシートから構成される、食品包装用容器の蓋。
  12. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物から構成される、射出成形品。
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